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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】創傷治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
A61F13/02 345
A61F13/02 350
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020009747
(22)【出願日】2020-01-24
(62)【分割の表示】P 2018542985の分割
【原出願日】2016-10-28
(65)【公開番号】P2020062519
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】62/248,422
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519352676
【氏名又は名称】アートラ・メディカル、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AATRU MEDICAL,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【弁理士】
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】ドンダ、ラッセル、エス
(72)【発明者】
【氏名】マニカム、サンダー
(72)【発明者】
【氏名】ミドー、リチャード、エル
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュ、トーマス、イー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイチェホフスキ、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター、ジョン、ディー
(72)【発明者】
【氏名】ブアン、ジョン
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】石田 智樹
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/151380(WO,A1)
【文献】特表2007-509639(JP,A)
【文献】特表2011-513003(JP,A)
【文献】米国特許第8439894(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/02
A61L15/16
A61M27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器ハウジング要素と、
酸素捕集材である反応器と、
皮膚と接する要素と、
シールと、
ガーゼ要素を具え、
前記反応器が前記反応器ハウジング要素の下に設けられた前記反応器の作動時に関連する組織部位において陰圧条件を作り出すためのものであり、
前記皮膚と接する要素が前記関連する組織部位を覆うために構成され、前記皮膚と接する要素が皮膚接触面、該皮膚接触面の反対側にある境界面、及び少なくとも1つの開口を有し、前記反応器が前記反応器ハウジング要素と皮膚と接する要素の間に配置され、
前記シールが前記反応器ハウジング要素と皮膚と接する要素の間に配置され、前記反応器ハウジング要素と前記皮膚と接する要素の間に実質的な気密シールを設け、
前記ガーゼ要素が前記皮膚と接する要素の下に設けられた、
創傷治療装置。
【請求項2】
前記反応器ハウジング要素が薄いシート状の膜である、請求項1の創傷治療装置。
【請求項3】
前記皮膚と接する要素が薄いシート状の膜である、請求項1の創傷治療装置。
【請求項4】
前記皮膚と接する要素の前記皮膚接触面に設けられた貼付剤及びガスケットをさらに具え、前記貼付剤が前記ガスケットの外側の全周に設けられた、請求項1の創傷治療装置。
【請求項5】
パッケージをさらに具え、該パッケージが該パッケージから選択的に取除き可能な少なくとも1つの気密バリアを含み、前記反応器が前記パッケージ内に配置され、前記少なくとも1つの気密バリアが前記パッケージから取除かれるまで空気が前記反応器に近づくことを妨げる、請求項1の創傷治療装置。
【請求項6】
前記反応器ハウジング要素の下側面を覆って設けられた反応器ハウジング剥離層をさらに具える、請求項1の創傷治療装置。
【請求項7】
前記反応器ハウジング剥離層が前記反応器を露出するために取除かれ、前記反応器を周囲に露出することによって前記反応器が作動する、請求項6の創傷治療装置。
【請求項8】
創傷接触要素をさらに具え、前記ガーゼ要素が前記皮膚と接する要素と前記創傷接触要素の間に設けられた、請求項1の創傷治療装置。
【請求項9】
前記創傷接触要素が裂けた皮膚組織に最小限貼り付き、及び/又は、抗菌性成分を具える、請求項8の創傷治療装置。
【請求項10】
前記皮膚と接する要素の前記皮膚接触面を覆って設けられた皮膚と接する要素剥離層をさらに具え、前記皮膚と接する要素の前記皮膚接触面に設けられた貼付剤を露出させるために前記皮膚と接する要素剥離層が取除き可能な、請求項1の創傷治療装置。
【請求項11】
前記反応器が酸素に対して予め決められた捕集容量(SC)を有するように構成され、前記反応器が収容された前記反応器ハウジング要素によって画定された密閉空間が決められた容量(DV)を有し、前記創傷治療装置が前記密閉空間に入る空気の最大漏れ速度(LR)を有するように構成され、前記創傷治療装置が最低摩耗時間(MWT)を有するように構成され、SC>DV*(空気中の酸素の%)+LR*(空気中の酸素の%)*MWTが成立つ、請求項1の創傷治療装置。
【請求項12】
前記反応器ハウジング要素の取外し、及び前記反応器並びに前記反応器ハウジング要素のうちの1つ又は両方の交換ができるように、前記反応器ハウジング要素が前記皮膚と接する要素に取外し可能に取付けられた、請求項1の創傷治療装置。
【請求項13】
前記反応器ハウジング要素に設けられた圧力解放バルブをさらに具える、請求項1の創傷治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、引用することによってその全体が明示的に一体化される2015年10月30日に出願された米国仮特許出願番号第62/248,422号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
陰圧(negative pressure)とは、大気圧より低い圧力を表現するために用いられる用語である。室温の海水面では、一定の体積の空気にはランダムな方向に動く分子が含まれ、動いているこれらの分子には、約756mmHg(およそ1バール)の大気圧に等しい力が掛かっている。例えば、損傷部位において吸引ポンプ等によって、関心領域から空気を除くことにより、陰圧が達成される。対象の皮膚表面に局所的な陰圧を発生させるための装置が、人体を治療するために何百年も用いられてきた。例えば、高温の空気を含む剛性の器の口を人体の皮膚に配置することに関する吸い玉技術(cupping technique)は、周知の技術である。ばね動力付きシリンジ及び吸着カップは、人体の組織に真空を作り出すために用いられてきた他の機械技術である。吸い玉と同じように、他の機械技術は、限られた局所的な陰圧を作り出し、大気圧から陽圧の圧力範囲を殆ど作り出さない。これは設計上の制約によるもので、吸い玉技術及び他の機械的技術は、自己完結型(self‐contained)ではなく、使用者の動きを妨げ得る。
【0003】
既知の局所的な陰圧装置は、扱いにくいしわ取り吸引装置から、液体透過性創腔充填材、被覆包帯材、皮膚を密閉するのに理にかなった気密手段、及び液体収集容器を介して真空源と創傷部及び創腔充填材をつなぐ排液管を含む創傷治療までに及ぶ。この種の装置の作用様式は、組織部位に陰圧を加えることであり、これにより、皮膚に対して装置を密閉することによってできる空洞に被包化した組織が拡がる。治療された組織部位が創傷である場合、滲出液は、浸透性空洞充填材を介して周辺組織から排液管、その後、離れたところにある収集容器へと吸い上げられる。この種の既知の装置において考慮すべき事柄は、陰圧で圧縮された場合の創腔充填材の性能についてであり、液体が対象組織から排液管又は吸引管(aspirant tube)へと運ばれるように十分な浸透性を持続させる必要がある。
【0004】
局所的な陰圧をより長時間加えることを可能にするために、ポンプのような真空発生源を具える電力システムが開発され、今日、このようなシステムの多くの例が、皮膚治療及び一時的なしわの除去のような回復目的に用いられている。しかしながら、これらのシステムの多くは、使用者にとって使い易くない。この種の既知のシステムは、大きく、重く、うるさく、心地よくなく、コントロールされた圧力条件をシステムに加えて起動させる使用者にとっては、単純ではない。この種の既知のシステムはまた、局所的な陰圧条件を作り出すために、外部電力又は真空源が必要である。
【0005】
この種の組織治療、手術及び他の高度な技術による処置は、免疫不全患者人口の増加だけでなく、高齢化により、より一般的になってきている。この傾向は、続くものと考えられる。創傷治療では、例えば、医療専門家は、今日、複雑な治療課題に対応するのが困難な創傷に遭遇しやすくなっている。組織部位に対して局所的な陰圧を加えることが可能なより単純な機械的装置を作り出す試みが実行された。この種の医療装置では、相対的に単純な設計であるため、材料費及び組立て費が減るということが理解される。例えば、組織部位において局所的な陰圧を加えるために手動ポンプシステムを使用する試みが実行された。しかしながら、この種のシステムは、使用者にとって簡単に使える物ではないし、別々に使用することもできず、局所的な陰圧を長時間都合よく加えることもできず、実際、再吸引がしばしば必要である。特に、多くのこの種のシステムは、例えば、終夜等、長時間理想的に使用可能であるので、これらは深刻な欠陥になり得る。
【発明の概要】
【0006】
1つの態様によれば、創傷治療装置は、皮膚と接する要素、反応器、及び反応器ハウジング要素を具える。皮膚と接する要素は関連する組織部位を覆うために構成され、反応器はその作動時に関連する組織部位において圧力条件を作り出すために構成され、反応器ハウジング要素は反応器を収容するために構成される。皮膚と接する要素は、皮膚接触面、及び皮膚接触面の反対側にある境界面を有する。反応器ハウジング要素は、下側取付面、及び下側取付面の反対側にある上面を有する。反応器ハウジング要素は、反応器の作動後に皮膚と接する要素に取付けられるように構成される。
【0007】
他の態様によれば、創傷治療装置は、皮膚と接する要素、反応器、反応器ハウジング要素、及び通気性液体不透過性膜を具える。皮膚と接する要素は関連する組織部位を覆うために構成され、反応器はその作動時に関連する組織部位において圧力条件を作り出すために構成され、反応器ハウジング要素は反応器を収容するために構成される。皮膚と接する要素は、皮膚接触面、及び皮膚接触面の反対側にある境界面を有する。反応器ハウジング要素は、下側取付面、及び下側取付面の反対側にある上面を有する。反応器ハウジング要素が皮膚と接する要素に取付けられた場合に、反応器と皮膚と接する要素の間に通気性液体不透過性膜が配置されるように、通気性液体不透過性膜は、反応器の露出面側に配置される。
【0008】
さらに別の態様によれば、創傷治療装置は、皮膚と接する要素、反応器、及び反応器ハウジング要素を具える。皮膚と接する要素は関連する組織部位を覆うために構成され、反応器はその作動時に関連する組織部位において圧力条件を作り出すために構成され、反応器ハウジング要素は反応器を収容するために構成される。皮膚と接する要素は、皮膚接触面、及び皮膚接触面の反対側にある境界面を有する。反応器ハウジング要素は、下側取付面、及び下側取付面の反対側にある上面を有する。反応器ハウジング要素は、反応器ハウジング要素を取外し、反応器及び反応器ハウジング要素のうちの1つ又は両方を取替えることができるように、皮膚と接する要素に取外し可能に取付けられる。
【0009】
更なる態様によれば、組織部位にコントロールされた圧力を加える方法には、組織部位を皮膚と接する要素で覆うこと、反応器ハウジング要素を皮膚と接する要素に取付けること、そして、組織部位において圧力条件を作り出すために反応器を作動させることが含まれる。皮膚と接する要素は、皮膚接触面、及び皮膚接触面の反対側にある境界面を有する。皮膚と接する要素で組織部位を覆うと、皮膚接触面は組織部位と面するように配置される。反応器ハウジング要素は、その中に収容された反応器を具える。反応器ハウジング要素はまた、下側取付面、及び下側取付面の反対側にある上面を有する。反応器の作動後に、反応器ハウジング要素を皮膚と接する要素に取付ける。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、例示的な実施例の圧力制御装置の概略的な分解斜視図。
図1A図1Aは、他の例示的な実施例の皮膚と接する要素の概略的な分解斜視図。
図2図2は、図1に示される圧力制御装置の概略的な断面図。
図2A図2Aは、他の例示的な実施例の図2に示された装置と類似の圧力制御装置の概略的な断面図。
図3-4】図3及び4は、他の例示的な実施例の反応器の概略図。
図5-7】図5-7は、図1の圧力制御装置とともに用いる他の例示的な実施例の動力部品の概略図。
図8図8は、例示的な実施例のコントロールされた圧力を組織部位に加える方法のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には例示的な実施例の圧力制御装置が示され、それは、創傷治療装置、又は自己完結型創傷治療装置と呼ばれてもよい。創傷治療装置10は、皮膚と接する要素12、反応器ハウジング要素14、及び反応器16を具える。さらに図2を参照して、創傷治療装置10は、組織部位20、特に組織部位20の創傷部、すなわち、治療部20aと直接接する創傷接触要素18を具えてもよい。より詳細に後述するように、創傷治療装置10は組織部位20に配置されてもよく、これにより、これらに限られるものではないが、創傷を癒し(例えば、創傷部20aの治癒)、皮膚のしわ及び他の皮膚病等を減らすことを含む組織の治療が進む。より詳細に後述するように、皮膚と接する要素12は、関連する組織部位20、特に組織部位20の創傷部20aを覆うために構成される。組織部位自体(及び組織部位の創傷部20a)が創傷治療装置10の構成要素とみなされないように、本明細書では、組織部位は関連する組織部位と称される。反応器ハウジング要素14は反応器16を収容するために設けられる。反応器16は、創傷部20aに作用するために、反応器の作動時(すなわち、反応器16の作動時)に関連する組織部位20において圧力条件を作り出すために設けられる。創傷接触要素18は、組織部位20の創傷部20aに直接接するように設けられる(すなわち、創傷接触要素18は、皮膚と接する要素12及び創傷部20aの間に配置される。)。
【0012】
1つの実施例では、反応器ハウジング要素14は、反応器16を作動させた後に皮膚と接する要素12に取付けられるように構成される。同一又は他の実施例では、組織部位20から吸引された滲出液が反応器16に達することを妨げる又は制限すべく、液体不透過通気性膜(例えば、膜100)が設けられてもよい。これら又は更なる実施例では、例えば反応器16が十分に使い果たされ、新しい反応器16が望まれる場合等、反応器ハウジング要素14が交換される場合、皮膚と接する要素12は組織部位のあるそのままの場所に留まるように構成される。これら及び他の実施例では、創傷治療装置10は、多くの従来装置とは対照的に、外部電源及び/又は真空源に接続される必要はないという点で、自己完結型である。
【0013】
皮膚と接する要素12は、対象の皮膚(例えば、創傷部20aの周辺)に貼付け可能な皮膚接触面30、及び皮膚接触面30と反対側の境界面32を具える。図示された実施例では、皮膚と接する要素12は、反応器ハウジング要素14とは別の要素として示される。他の構成では、皮膚と接する要素12は反応器ハウジング要素14の一部として設けられてもよく、例えば、皮膚と接する要素12が反応器ハウジング要素14と一体的に形成されていてもよいし、又は製造施設において反応器ハウジング要素14と連結されてもよいし、皮膚と接する要素12及び反応器ハウジング要素14が一緒に組織部位20に当てられてもよい。図示された実施例では、皮膚と接する要素12は、創傷治療装置10によって組織部位20及び/又はその周辺の対象の皮膚の痛みが和らぐ可撓性材料(例えば、薄いガス不透過性フィルム)である。皮膚と接する要素12は、例えば、ロールトゥロール法(roll‐to‐roll process)等を用いて、薄いシート状の膜(例えば、薄いガス不透過性フィルム)から作られてもよい。
【0014】
また、図示された実施例では、皮膚と接する要素12は1つ以上の開口34(本明細書において、皮膚と接する要素開口とも称される)を具え、開口34は、皮膚接触面30から境界面32まで皮膚と接する要素12を通って延びる。皮膚と接する要素開口34は、組織部位20、特に組織部位20の創傷部20aを覆って配置されるように構成されてもよく、さらに、反応器16によって作り出される圧力条件が、皮膚と接する要素開口34を通って組織部位20、特に創傷部20aに掛かるように構成されてもよい。1つ以上の開口34が、反応器16による空気変換スピードをコントロール又は制限するために用いられてもよい。例えば、開口34の数及び/又は開口34の大きさ(すなわち、開口34の表面積)は、反応器16に到達する空気量を効果的に制限することができ、これにより反応器16による消費速度をコントロールすることができる。反応器16によって作り出される圧力条件をコントロールすることに加えて、これにより、反応器16によって生じる熱の量又は熱の発生速度をコントロールすることもできる。
【0015】
また、図1Aに示されるように、皮膚と接する要素12aは、皮膚と接する要素12の替わりに用いられてもよく、皮膚接触面30aから境界面32aまで皮膚と接する要素12aを通って延びる単一の開口34aを具えてもよい。開口34aは、例えば、組織部位20を覆って、又は組織部位20の周りに配置されるように構成されてもよい。皮膚と接する要素12a及び/又は単一の開口34aは、任意で、組織部位20の創傷部20aの外周に嵌合するような大きさに形作られてもよい。1つの典型的な適用例では、ガーゼ要素36を(例えば、新しいガーゼ要素に)交換すること及び/又は反応器16を交換することが望まれた場合に、皮膚と接する要素12aはそのまま使用されてもよい。
【0016】
本明細書において創傷接触層とも称される創傷接触要素18は、孔を開けられてもよいし、又は裂けた皮膚組織(例えば、組織部位20の創傷部20a)に最小限貼り付く目の粗いメッシュとして形成されてもよい。1つの実施例では、創傷接触要素18は、創傷接触要素18の下側18aをコーティング22で覆われた目の粗いナイロン織物又は目の荒いポリウレタンのメッシュフィルム(例えば、1mmのポリウレタンフィルム)であり、コーティング22は、それ自身が裂けた皮膚組織に最小限貼り付き、及び/又は、(例えば、銀、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)等の)抗菌性成分を具えてもよい。例えば、コーティング22は、シリコーン、ナイロン等であってもよいし、又はシリコーン、ナイロン等を含んでもよい。
【0017】
創傷治療装置10は、さらにガーゼ要素36を具えてもよい。より詳細に後述されるように、ガーゼ要素36が組織部位20からの滲出液を吸収してもよい。圧力条件が組織部位20を部分的に真空にする(例えば、空気又は酸素を吸引する)陰圧状態である場合、ガーゼ要素36は組織部位20から滲出液を吸収する。ガーゼ要素36は、組織部位20からの滲出液を吸収するために適当な液体保持特性を有してもよい。1つの実施例では、ガーゼ要素36は、最高約3psi(すなわち、約0.2バール)の外気圧に耐えることが可能な適当なガーゼ素材で形成される。同一又は他の実施例では、ガーゼ素材36は、(例えば0.2バールの)被圧下でその形状を維持してもよく、滲出液を吸収するにつれて膨張してもよい。全ての実施例において、創傷治療装置10が組織部位20に当てられた場合に、ガーゼ要素36が反応器16と組織部位20の間に挟まれるように配置されてもよい。
【0018】
創傷治療装置10の他の要素に対するガーゼ要素36の位置は、違ってよい。例えば、ガーゼ要素36は、皮膚と接する要素12の上又は下に配置されてもよい。図2に示される実施例では、ガーゼ要素36は、皮膚と接する要素12より上で、且つ、反応器16の下に配置される。本実施例では、ガーゼ要素36は、例えば、反応器ハウジング要素14とともに設けられてもよく(例えば、剥離層70と反応器16の間に配置される)、又は、反応器14の一部として設けられてもよい(例えば、基質80と下層86の間に配置される)。また、ガーゼ要素36が皮膚と接する要素12より上に配置される実施例では、ガーゼ要素36が皮膚と接する要素12とともに設けられてもよいし(例えば、剥離層50と皮膚と接する要素12の境界面32の間に配置され、任意に、境界面32に貼付けられる)、又は、ガーゼ要素36が、皮膚と接する要素12上に組立てられる別の要素として設けられてもよい(例えば、ガーゼ要素36は、個々に包装され、その包装から取り出され、境界面32上に組立てられ又は積重ねられてもよい。)。図2Aに示される実施例では、ガーゼ要素36は、皮膚と接する要素12とともに設けられ、皮膚と接する要素12の下側30と創傷接触要素18の間に挟まれている。
【0019】
ガーゼ要素36は、1つ以上の開口34(又は皮膚と接する要素12aの開口34a)に対して寸法決めされてもよい。また、ガーゼ要素36を通して、すなわち、ガーゼ要素36を介して組織部位20、特に組織部位20の創傷部20aに圧力が掛かるように、ガーゼ要素36は配置、及び寸法決めされてもよい。例えば、ガーゼ要素36は、1つ以上の開口34により画定される領域よりも大きくてもよい。図1Aの別の実施例では、開口34及び皮膚と接する要素12aは、ガーゼ要素36と同じような形状であってもよいし、皮膚と接する要素12aがガーゼ要素36の外周に設けられるように配置されてもよい。例えば、ガーゼ要素36は、ガーゼ要素36と皮膚と接する要素12a(すなわち、開口34aを形成する皮膚と接する要素12aの部分)の間に締り嵌めを設けるように寸法を決められてもよいし、ガーゼ要素36の外周と皮膚と接する要素12aの間に隙間がないように寸法を決められてもよい。さらにまた、皮膚と接する要素12aの上又は下に重なるように、ガーゼ要素36が開口34aより大きくてもよい。
【0020】
皮膚接触面30及び境界面32は両方とも全体として平坦、すなわち、平面であってよい。ただし、上記にて示されたように、皮膚と接する要素12は可撓性でもよく、組織部位20の輪郭と同じになり得る。図示された実施例では、境界面32は皮膚と接する要素12の上側であり、皮膚接触面30は皮膚と接する要素12の下側である(すなわち、境界面32より下側、故に、境界面32よりも組織部位20により近い位置に配置される。)。同様に、創傷接触要素18は、ともに平坦、すなわち、平面でもよい下側18a及び上側18bを具えてもよい。ただし、下側18a及び上側18bは両方とも可撓性でもよく、組織部位20の輪郭と同じになり得る。
【0021】
創傷治療装置10は、組織部位20に、及び/又は、組織部位20の周りに皮膚と接する要素12を貼り付ける又は密閉するために、皮膚と接する要素12の皮膚接触面30に、又は皮膚接触面30に隣接して設けられた少なくともの1つの皮膚貼付要素又は皮膚密閉要素(例えば、シール40及び貼付剤42)を具える。示された実施例では、少なくとも1つの皮膚貼付要素又は皮膚密閉要素は、本明細書においてガスケットとも称される外周圧力シール40である、又は外周圧力シール40を具える。外周圧力シール40は、反応器16によって作り出される圧力条件が組織部位20に掛かるように組織部位20の周りを皮膚と接する要素12で密閉する。特に、図2に示されるように、外周圧力シール40は、組織部位20に対して創傷接触要素18及び皮膚と接する要素12を密閉してもよい。加えて、又は他に、少なくとも1つの皮膚貼付要素又は皮膚密閉要素は、組織部位20に、及び/又は、組織部位20の周りに皮膚と接する要素12を貼り付ける貼付剤42である、又は貼付剤42を具える。特に、図2に示されるように、貼付剤42は、組織部位20に皮膚と接する要素12を貼り付けるべく、外周圧力シール40の全周に設けられる。
【0022】
シール、すなわち、ガスケット40は、組織部位20の周りの密閉度を更に促すべく、ハイドロゲルから作られてもよく、これにより、組織部位20における圧力条件(例えば、局所的な陰圧)が促進される。貼付剤42は、皮膚と接する要素12の皮膚接触面30を覆う、例えば、生体適合性アクリル貼付剤でもよい。1つの実施例では、貼付剤42は皮膚と接する要素12の皮膚接触面30上に(例えば、その上に覆われた)層として形成され、創傷接触要素18は皮膚接触面30上に置かれ、シール40は創傷接触要素18の外周縁18cの位置において貼付剤42の上の外周ビーズ(例えば、ハイドロゲルのビーズ)として用いられる。シール40の大きさ及び/又は幅は、変更されてもよい。図示されていないが、別の実施例では、シール40は、例えば、複数の同心状リングのような、複数のシールとして設けられてもよい。
【0023】
皮膚と接する要素12、創傷接触要素18(及び、任意にガーゼ要素36)を保護し、及び/又は包むために、本明細書において裂け防止バリア要素とも称される、第一皮膚と接する要素剥離層44が、皮膚と接する要素12、創傷接触要素18の下側18a、及び任意にガーゼ要素36(すなわち、ガーゼ要素36が皮膚と接する要素12とともに設けられている場合に)を保護すべく、創傷治療装置10に設けられてもよい。特に、剥離層44は、皮膚と接する要素12の皮膚接触面30に亘って、及び創傷接触要素18に亘って設けられてもよい。皮膚と接する要素12の皮膚接触面30に設けられた貼付剤42及び/又は外周圧力シール40を露出させるために、剥離層44は、取除き可能でもよい。剥離層44は、既知の剥離層と類似していてもよく、皮膚と接する要素12の皮膚接触面30から剥離可能である上面46を具える。剥離層44は、上面46の反対側に下側48を具えてもよい。1つの実施例では、剥離層44は、ポリウレタンフィルム(図示せず。)を介して皮膚接触面30に取除き可能に貼付けられる。任意に、シール40は剥離層44の下には設けられないが、剥離層44が取除かれた後に付けられる。
【0024】
また、任意に、本明細書において境界面剥離層とも称される第二皮膚と接する要素剥離層50が、皮膚と接する要素12の境界面32及びガーゼ要素36を保護すべく創傷治療装置10に設けられてもよい。特に、剥離層50は、第二包装要素としてともに設けられてもよい反応器ハウジング要素14及び反応器16とは別の第一包装要素として皮膚と接する要素12を具えるべく、皮膚と接する要素12の境界面32上に設けられてもよい。例えば、剥離層50は皮膚と接する要素12とともに設けられてもよく、創傷接触要素18は反応器ハウジング要素14及び反応器16とは別に設けられてもよく、及び/又は、別に包まれてもよい。剥離層50は、剥離層44のようであってもよい。例えば、剥離層50は、皮膚と接する要素12の境界面32上に設けられてもよい。剥離層50は、境界面32を露出させるべく取除き可能でもよい。より詳しくは、剥離層50は、上面52及び上面52の反対側で、皮膚と接する要素12の境界面32から剥離可能な下面54を具えてもよい。任意に、ガーゼ要素36が皮膚と接する要素12とともに設けられ、及び/又は、包まれる場合に、剥離層50はガーゼ要素36を保護してもよい。
【0025】
皮膚と接する要素12の皮膚接触側30が対象の皮膚と接している場合(すなわち、組織位20、特に創傷部20aの周り、及び/又は創傷部20aに貼付けられた場合)に、組織部位20の周り、及び/又は、組織部位20において密閉空間56を画定すべく、反応器ハウジング要素14は皮膚と接する要素12と協働する。故に、示された実施例では、反応器ハウジング要素14は、反応器16が収容される密閉空間56を画定する。示された実施例の反応器ハウジング要素14は、フード、すなわちフード部分58、及び低外周部60を具える。示された実施例では、低外周部60はフード58を完全に囲み、フード58は皮膚と接する要素12が対象の皮膚と接する場合に組織部位20の周り、及び/又は組織部位20において密閉空間56を画定するように、低外周部60に対して持ち上げられる。反応器ハウジング要素14は、空気を通さない素材から作られてもよいし、又は、空気を部分的に通さない素材から作られてもよく、これにより、反応器16が密閉空間56内の1つ以上の選択されたガスを消費し、それ故密閉空間56内のガス圧が減少するように、空気が密閉空間56内に入り込むことが妨げられ、又は大幅に抑制される。
【0026】
別の実施例では、反応器ハウジング要素14は、特定のガス(例えば、酸素)を少なくとも部分的に通さない素材、及び他のガス(例えば、二酸化炭素、窒素など)を少なくとも部分的に通す素材から作られてもよい。例えば、反応器ハウジング要素14は、外気と直接つながって消失させるより高い割合で、他のガスに比べて特定のガスを、消失させる材料から作られてもよい。任意に、例えば、反応器ハウジング要素14は、組織部位20から大気に選択されたガスを排気、又はより排気すべく、他のガスと比較して選択されたガスに対して少なくとも部分的(又はより多く)にガス浸透性がある(例えば、窒素又は二酸化炭素ガス浸透性の)材料で形成されてもよい。
【0027】
反応器ハウジング要素14はフード58なしで形成されてもよく、すなわち、反応器ハウジング要素14は図1に示されるように少なくとも最初のうちは平面であってもよい。皮膚と接する要素12と同様に、反応器ハウジング要素14は、例えばロールトゥロール法を用いて、薄いシート状の膜から作られてもよい。反応器ハウジング要素14は、皮膚と接する要素12と類似の可撓性材料、又は同様な可撓性を有する可撓性材料から作られてもよく、これによって、創傷治療装置10は組織部位20の周りの皮膚と適合することができる。反応器ハウジング要素14が皮膚と接する要素12に取付けられると、反応器16は反応器ハウジング要素14と皮膚と接する要素12の間に配置される。上述されたように創傷治療装置10のいくつかの異なる位置の1つに配置され得るガーゼ要素36は、反応器16と皮膚と接する要素12の間に設けられる。反応器ハウジング要素14が可撓性材料から作られてもよいので、皮膚と接する要素12と接していない反応器ハウジング要素14の部分は、フード58を形成するように組織部位20から持上げられる又はずらされる。
【0028】
反応器ハウジング要素14は、下側取付表面、すなわち、下側取付面62、及び下側取付面62の反対側にある上面64を具える。以下により詳述するとおり、反応器ハウジング要素14と皮膚と接する要素12の間に実質的な気密シールを設けるように皮膚と接する要素12の境界面32に反応器ハウジング要素14を取付けてもよい。これにより、反応器ハウジング要素14の下面62と皮膚と接する要素12の境界面32間、又は反応器ハウジング要素14の下面62と皮膚と接する部材12の境界面32間の境界を沿う空気の移動が妨げられる。1つの実施例では、反応器ハウジング要素14は、皮膚と接する要素12とは別の構成要素として設けられる。他の実施形態では、反応器ハウジング要素14は、皮膚と接する要素12とともに既に組立てられて設けられる。
【0029】
反応器ハウジング要素14と皮膚と接する要素12の間の境界のために、創傷治療装置10は、皮膚と接する要素12に対して反応器ハウジング要素14を貼付け又は密閉するために、皮膚と接する要素12と反応器ハウジング要素14の間に設けられる少なくとも1つの反応器貼付要素、又は反応器密閉要素(例えば、外周圧力シール66及び/又は貼付剤68)をさらに具えてもよい。1つの実施例では、少なくとも1つの反応器貼付要素又は反応器密閉要素は、本明細書においてガスケットとも称される外周圧力シール66である、又は外周圧力シール66を具える。外周圧力シール66は、皮膚と接する要素12に対して反応器ハウジング要素24を密閉する。同一又は別の実施例では、少なくとも1つの反応器貼付剤又は反応器密閉材は、皮膚と接する要素12に対して反応器ハウジング要素14を貼付ける貼付剤68を具える。シール66は、シール40のようであってもよい(シール40に関して記載されている別の実施例を含む。)。例えば、シール66は、皮膚と接する要素12と反応器ハウジング要素14の間の密閉度をさらに促すために、ハイドロゲルから作られてもよく、これにより、組織部位20における圧力条件の掛かり具合が増す。また、貼付剤68は、貼付剤層の上の外周ビーズとして使用されるシール66を有する反応器ハウジング要素14の低外周部60の下側取付面62上の層として形成されてもよい。
【0030】
反応器ハウジング要素14が皮膚と接する要素12とは別に設けられ、及び/又は、包装される場合、創傷治療装置10は、下側取付面62を保護すべく反応器ハウジング要素14の下側取付面62、及び反応器16を保護すべく、及び/又は、反応器16の作動を妨げるべく反応器16に設けられた、反応器ハウジング剥離層70をさらに具えてもよい。剥離層70は、剥離層44、50と同じ、又は類似であってよい。以下に詳述されるように、剥離層70は、反応器16を作動させるために反応器ハウジング要素14に収容される反応器16を露出させるべく取除き可能である。剥離層70は、反応器ハウジング要素14の下側取付面62から剥離可能な上面72、及び上面72の反対側にある下面74を具えてもよい。
【0031】
反応器16は密閉空間56に配置されてもよく、密閉空間56内で少なくとも1つの選択されたガスを消費すべく空気中の少なくとも1つの選択されたガス(例えば、窒素、酸素、及び二酸化炭素等)と反応するように構成されてもよく、これにより、密閉空間56内のガス圧を減らすことができる。密閉空間56内のガス圧の減少により、密閉空間56内に形成される部分的な真空がもたらされる。このように、反応器16の作動によって反応器16により作り出される圧力条件は、組織部位20、特に組織部位20の創傷部20a(例えば、最初の作動スタートアップ期間後の0.2バール陰圧)に掛けられる局所的な陰圧であってもよい。1つの実施例では、局所的な陰圧は、組織部位20から酸素を吸収する部分的な酸素真空である。任意に、反応器16により作り出される圧力条件は、組織部位20(そして、特に創傷部20a)から酸素を除去又は吸引し、組織部位20からの酸素に加えて少なくとも1つの他のガス(例えば、二酸化窒素又は二酸化炭素)を除去する陰圧状態である。これは、組織部位20から滲出液をより効率的に引き出す効果を有することができる。また、反応器16により作り出される陰圧状態によって、反応器16、その結果、創傷治療装置10は組織部位20に向かって押される。また反応器16からの限られた熱が組織部位20の治癒(例えば、感染防止)を促すために有利に用いられてもよい。
【0032】
より詳しくは、反応器16は、密閉空間56に配置されてもよく、空気中の選択されたガスと反応するように構成されてもよい。1つの実施例では、反応器16が密閉空間56内で選択されたガスを消費するにつれて、密閉空間56内のガス圧は減少する。例えば、反応器16が酸素を消費する場合、密閉空間56内の気圧が約20%減少する。創傷治療装置10において用いられることが可能な反応器16の実施例は、引用することによって本明細書に一体化される米国2014/0109890A1に記載されている。米国2014/0109890A1には、酸素ベースのヒーターが記載されている。しかしながら、米国2014/0109890A1に記載された酸素ベースのヒーターは密閉空間56内で酸素を消費し、それ故、密閉空間56内で部分的な真空を作り出せる反応器16として用いられてもよい。この例では、反応器16は、反応器基質80に適用可能な、還元剤、炭素等の酸素の還元のための触媒剤、結合剤、及びイオン伝導溶液又は電解質溶液を具える。反応器基質80の還元剤は、例えば、亜鉛、アルミニウム又は鉄であってもよい。電流がそこでは流れていないという点において、これは、ケミカルポンプ及び/又は非電気化学セル反応器と考えられてもよい。
【0033】
反応器16が生体適合性(biocompatible)であると好都合である。例えば、反応器16は、対象の皮膚のすくそば、及び/又は対象の皮膚と接するように使用するのに適しているようなものであってもよい。また、例えば、反応器16は化学的に中性であってもよい。例えば、反応器16は約6と8の間のpHを有してもよい。任意に、反応器16(例えば、反応器基質80)は、可撓性反応器として設けられてもよい。例えば、基質80は、基質80の可撓性を高めるべく配置された又は設けられた薬剤を具えてもよい(例えば、薬剤は、横並びに配置されてもよい。)。上述されたように、反応器16は電解質溶液を具えてもよく、それは水性電解質溶液であってもよい。これにより、組織部位20、特にその創傷部20aにおける湿っぽい環境を有利に容易に維持することができる。加えて、又は、他に、水性電解質溶液は、(例えば、示されていないが、ゲルとして、又は、別々のスポンジに吸収されて)反応器ハウジング要素14内に設けられてもよい。
【0034】
反応器ハウジング要素14の下部62上の剥離層70は、示された実施例では、剥離層70である気密バリアが反応器ハウジング要素14から取除かれるまで、選択されたガス(例えば、窒素、酸素、二酸化炭素など)が反応器16に近づくことが妨げられるような、空気型バリアとして機能してもよい。また、反応器16は、上層84及び下層86を含むものとして図1に示されるパッケージとして設けられてもよい。上層84及び下層86の間に反応器基質80を囲むべく上層84は下層86に取付けられ、空気タイプのシールが設けられ、選択されたガスが反応器16に近づくことを妨げる。パッケージを含むこの例では、上層84及び/又は下層86は気密バリアとして機能してもよく、下層86から上層84が取除かれる、又はその逆によって、全体的又は部分的に、選択されたガス(例えば、酸素)は反応器16に近づくことができ、選択されたガスは反応器16により消費され得る。
【0035】
また、少なくとも1層(示された実施例の下層86)が開口88を具えてもよく、密封層90は開口88を覆う下層86に気密状態で取付けられてもよい。下層86から密封層90を取除くことにより、開口88を通る選択されたガスに反応器16がさらされ、これによって、反応器16は密閉空間56内の選択されたガスを消費することができる。開口88の表面積は、開口88を通る選択されたガスの流れをコントロールすべく適当に大きさを決められてもよい。所望の持続期間(例えば、12時間、24時間等)の間、組織部位20に所望の圧力条件を維持するための所望の制限時間まで、これにより、反応器16の化学反応を持続することができる。加えて、又は、他に、反応器16の消費速度をコントロール又は制限し、それ故、反応器16によって作り出される圧力条件をコントロールし、及び/又は、反応器16によって作り出される熱量をコントロールするために、開口88の数又はサイズが選択されてもよい。加えて、又は、他に、反応器16に向かう選択されたガスの流れを制限すべく密閉層90のうち1つ又は選択された少数の層(他の層は下層86に取付けられている)が取除かれるように、複数の密封層90は設けられてもよい。
【0036】
また、密閉空間56内で更に圧力をコントロールするために、創傷治療装置10は、反応器ハウジング要素14、特に反応器ハウジング要素14のフード58上に圧力解放バルブ92を具えてもよい。圧力解放バルブ92によって、密閉空間56と外気の間で選択されたやり取りができてもよい。予め決められた差圧が密閉空間56と外気の間に存在する場合に、圧力解放バルブ92が作動してもよい。
【0037】
1つの実施例において、必須ではないが、反応器ハウジング要素14及び反応器16が皮膚と接する要素12とは別に包装されるように、創傷治療装置10は包装されてもよい。このような実施例では、剥離層50及び70は、それぞれ、皮膚と接する要素12及び反応器ハウジング要素14から取除かれる。剥離層70が取除かれると、上記のように、反応器16が露出し、これにより反応器16は作動する。任意に、剥離層70は下層86に取付けられてもよく、これにより、応器ハウジング要素14から剥離層70を取除くと、上層84から下層86が取除かれ、反応器16を作動させるべく反応器16が露出する。または、剥離層70は密封層90に取付けられてもよく、これにより、反応器ハウジング要素14から剥離層70を取除くと、下層86から密封層又は層90が取除かれ、それ故、下層86に設けられた開口88を通る空気に反応器16がさらされる。反応器ハウジング要素14から剥離層70が取除かれた後、反応器ハウジング要素14と皮膚と接する要素12の間に略気密なシールを具えている皮膚と接する要素12の境界面32と反応器ハウジング要素14の下層62が接するようになってもよい(例えば、シール66及び貼付剤68を介して)。
【0038】
加えて、反応器ハウジング要素14は、本明細書において通気性液体不透過性膜とも称され、(例えば、反応器ハウジング要素14が皮膚と接する要素12に取付けられる場合に)反応器16と皮膚と接する要素12の間に配置されるように反応器16の露出面(すなわち、組織部位20と向かい合っている面)に設けられた、液体不透過通気性膜100を具えてもよい。膜100は、組織部位20から吸引された滲出液が反応器16、特に反応器基質80に達することを防ぐ又は制限すべく機能してもよく、それにより、反応器16の効力又は作動性が妨げられる。液体不透過通気性膜100の大きさ(すなわち、表面積)は、創傷治療装置10内の液体不透過通気性膜100の位置次第であってよい。仮に組織部位20からの滲出液が反応器基質80と接するようになった場合、選択されたガスと接すると反応器16の化学反応が損なわれる。このように、膜100によって滲出液が反応器16と接することが妨げられる、又は少なくとも抑制される一方で、膜100により組織部位20と反応器16の間に空気が流れる。例えば、膜100は、例えば、ゴアテックス(Gore-Tex(登録商標))又は類似の材料等、ポリテトラフルオロエチレンフィルムであってもよい。
【0039】
液体不透過通気性膜100は、創傷治療装置10の異なる位置にあってもよい。1つの実施例では、液体不透過通気性膜100は、反応器基質80と反応器16の気密パッケージを構成する下層86の間に配置されてもよい。そのため、下層86(又は密封層90)が一旦取除かれると、空気は反応器16に接近できるが、組織部位20からの滲出液が液体不透過通気性膜100を通って移動することは妨げられる、又は少なくとも抑制される。他の例では、液体不透過通気性膜100は、反応器16の気密パッケージを構成する下層86(又は密封層90)とガーゼ要素36の間に配置されてもよい。
【0040】
反応器ハウジング要素14及び反応器16が皮膚と接する要素12とは別に包装される実施例において、剥離層70は、反応器ハウジング要素14から取除かれてもよい。反応器ハウジング要素14から剥離層70を取除くと、下層86の除去によって、反応器16は空気にさらされ、密閉層90、又は剥離層70が気密状態で反応器ハウジング要素14に取付けられる。その結果、剥離層70が反応器ハウジング要素14から取除かれるまで、空気は反応器16へのアクセスを妨げられる。反応器ハウジング要素14から剥離層70を取除いた後、反応器ハウジング要素14の下面62は、皮膚と接する要素12に取付けられてもよい(例えば、剥離層50が皮膚と接する要素12から取除かれた後に)。
【0041】
別の実施例では、すでに皮膚と接する要素12に取付けられた反応器ハウジング要素14と予め組み立てられてもよい。本実施例では、剥離層70は取除かれてもよく、下層86を具える場合、下層86は、下層86を通って反応器16と連通するように設けられてもよい(例えば、密封層90は取除かれてもよい。)。剥離層44を取除くことによって、反応器16を作動させるべく機能してもよい。
【0042】
さらなる実施例では、組織部位20から皮膚と接する要素12を取除くことなく反応器ハウジング要素14及び反応器16を交換すべく、反応器ハウジング要素14及び反応器16は皮膚と接する要素12に取外し可能に取付けられてもよい。また、ガーゼ要素36の交換(例えば、既定量を越えた浸出液がガーゼ要素36に浸み込んだ場合等)のために皮膚と接する要素12が組織部位20にくっつけられた後、ガーゼ要素36は皮膚と接する要素12から取除かれてもよい。1つの実施例では、反応器ハウジング要素14、反応器16及びガーゼ要素36は、皮膚と接する要素12を交換することなく同時に交換されてもよい。他の実施例では、反応器ハウジング要素14(及び反応器16)又はガーゼ要素36の一方だけ又は他方だけが取除かれ、取替えられてもよい。
【0043】
いずれの実施例でも、創傷治療装置10は、特定の操作及び/又は設計パラメータを考慮するように設計され得る。この種のパラメータには、例えば、創傷治療装置10(例えば、ガーゼ要素36)に含まれる最大滲出液量、組織部位20から除かれた滲出液の割合、好適な陰圧(例えば、0.2バールの陰圧)に達するまでの時間、創傷治療装置10の提供時間(すなわち、包帯を交換する間の時間)、反応器基質80の還元剤(例えば、亜鉛)の予想される効率/利用、還元剤の量(及び、それ故、装置10のガスを排出可能量)等が含まれてもよい。例えば、組織部位20が約10cmのx20cmで、組織部位20からフード58(又は反応器ハウジング要素14の頂部)が約2.5cm離れていると仮定した場合、約500mLの密閉空間56になる。ガーゼ要素36及び密閉空間56内の他の個体要素(例えば、液体不透過通気性膜100)が密閉空間56内で100mLを占める(及び、密閉空間56にいずれの滲出液も引き入れられる前)と仮定した場合、密閉空間56内には400mLの空気があることになる。密閉空間56内で選択されたガスを消費する反応器16から部分的な吸引をされる前であって、いずれの滲出液も装置10に吸込まれる前は、400mLの空気には、密閉空間56内の標準温度及び圧力(STP)において、窒素が約320mL、酸素が約80mL含まれる。実際の適用では、組織部位20、フード58との距離、及び密閉空間の大きさは変更されてもよく、上記の実施例よりずっと小さくてもよい。
【0044】
1グラム(1g)の亜鉛(Zn)は、標準温度及び圧力で約170mLの酸素(O2)を消費する能力を有し、それは通常の乾燥した空気では約850mLの酸素の量である。シール40、66が設けられていてもよいが、シール40、66を通過して密閉空間56に周囲の空気が漏れ入ること、及び、反応器ハウジング要素14及び皮膚と接する要素12を介して拡散されることがあり得る。本明細書では、境界を通る漏れ(例えば、シール40の周りの漏れ)、及び拡散(例えば、反応器ハウジング要素14を介する拡散)を漏れと称する。シール40、66、皮膚と接する要素12及び反応器ハウジング要素14は、周囲から密閉空間56への空気の最大漏出速度を有するように構成されてもよい。例えば、周囲から密閉空間56への最大漏出速度が1mL(STP)/時間の空気では、0.2mL(STP)/時間の酸素になる。1gの亜鉛が170mLの酸素(STP)を消費するので、例えば、72時間以上の長時間、密閉空間56内の常気圧を20%減少させるべく適量の還元剤になる。これは、毎時約0.5mL~1mLの割合で組織部位20から装置10に吸い込まれている滲出液が原因である。当業者によって理解される通り、反応器16は与えられた還元剤量を完全に使い果たすべく機能せず、そのため、効率的な因子を明らかにする必要がある。
【0045】
上記及び示された実施例のみを考慮すると、創傷治療装置10は、以下の通りに構成されてもよい。反応器16は、予め決められた捕集容量(「SC」)を有するように構成されてよく、それは、反応器16が消費するように構成された選択されたガスの量に関係する。上述したとおり、例えば、1gの亜鉛は約170mLの(標準温度及び圧力の)酸素を消費するので、捕集容量は170mLである。密閉空間56は、組織部位20の領域、反応器ハウジング要素14の大きさ、組織部位20からのフード58(又は反応器ハウジング要素14の頂部)の距離に基づき、決められた容量(「DV」)を有してもよく、これは、密閉空間56内の反応器16及び他の如何なる固体要素の他にもガーゼ要素36が考慮されている。例えば、上述された400mLは決められた容量である。また、創傷治療装置10は、密閉空間56に入る空気の最大漏れ速度(LR)を有するように構成されてもよい。加えて、創傷治療装置10は最低摩耗時間(「MWT」)を有するように構成されてもよく、それは、創傷治療装置10が使い果たされるように構成された最低時間に関するものである。反応器16が最低摩耗時間の全てにおいて選択されたガスを消費、又は捕集することが望ましいと仮定した場合、創傷治療装置10は以下の関係を考慮して構成されてもよい:
【0046】
SC>DV*(空気中の選択されたガスの%)+LR*(空気中の選択されたガスの%)*MWT
【0047】
捕集容量は、反応器ハウジング要素14及び治療される組織部位20に対して比較的小さな反応器16を具えるべく決定されてよい。決められた容量は、治療される組織部位20を考慮して比較的小さな反応器16及び反応器ハウジング要素14を具えるべく決定されてよい。密閉空間56内に入る空気の最大漏れ速度を、実際に合わせて減少させてもよいが、例えば、密閉空間56内の圧力循環が望まれる等、予め決められた漏れ量が望ましいという状況もある。例えば、密閉空間56に入る空気の最大漏れ速度は、10mL/時間未満、好ましくは1又は2mL/時間未満であってもよい。局所的な陰圧が組織部位20に加えられるための所望時間に基づいて、最低摩耗時間が決定されてもよい。例えば、最低摩耗時間は、72時間以上、48時間以上、24時間以上、12時間以上、8時間以上、又は4時間以上であってもよい。製造公差、組織部位20及び組織部位20に創傷装置10を配置する人の違いに順応すべく、安全係数(例えば、上記の関係式の右側に乗数)を具えることが望まれる。
【0048】
反応器16が密閉空間56内の空気の中の選択されたガスを消費するにつれて、発熱反応が発生し、反応器16は密閉空間56内の選択されたガスを消費する。密閉空間56内のガス圧は減少する。例えば、反応器16が酸素を消費すると、密閉空間56内の気圧がおよそ20%減少する。反応器16のために選ばれた電解液は、密閉空間56内を最大8時間、好ましくは最大12時間、より好ましくは最大24乃至72時間0.8バールの圧力(0.2バール、すなわち、約150mmHgの減圧)を維持することが可能であるものであってよい。
【0049】
任意に、反応器ハウジング要素14はまた、当該部分が取外された場合に、反応器16に近づくことが可能な取外し可能な部分160を具えてもよい。これにより、反応器ハウジング要素14から独立して反応器16の交換が可能となってもよい。または、取外し可能な部分160によって、反応器16又は反応器ハウジング要素14の下に位置する追加の反応器に、付加的な周辺空気が近づくことが可能となってもよい。例えば、取外し可能な部分160は、反応器基質80が位置するパッケージの上層84に取付けられてもよい。取外し可能な部分160を取外すと、上層84の少なくとも一部が除かれ、それ故、反応器基質80は周辺空気にさらされ、熱反応が起こる。または、付加的な反応器(図示せず。)は反応器ハウジング要素14の下に配置されてもよい。取外し可能な部分160を取外すと、(上層84及び下層86からなるパッケージと同様な)パッケージの少なくとも一部が除かれ、それ故、付加的な反応器は周辺空気にさらされる。
【0050】
異なるタイプの反応器が、創傷治療装置10の密閉空間56内に局所的な陰圧を加えるために用いられてもよい。図3には、図1に示された反応器16の替わりに用いられてもよい反応器216が示される。反応器216は同じ反応器基質上に複数の反応器基質又は複数の領域を含んでもよく、それらは異なる化学的性質及び/又は特性を有する反応器要素80a、80b、及び80cとして示される。例えば、第一反応器要素80aは、例えば、略瞬間的な、非常に短い(第一)時間t1の間、酸素にさらされた後に酸素を消費し始めるよう構成されてもよい。第二反応器要素80bは、より長い(第二)時間t2の間、酸素にさらされた後に酸素を消費し始めるように構成されてもよく、第三反応器要素80cは、さらにより長い(第三)時間t3の間、酸素にさらされた後に酸素を消費し始めるように構成されてもよい。このような構成により、密閉空間56内の圧力の循環が可能となり得る。
【0051】
反応器基質80で作られた反応器16の替わりに、反応器16は、電気化学ポンプ、オンデマンド式真空装置(本明細書ではVODと言う。)、電気分解装置、固体減圧装置(pressure‐reducing solid state devices)、酸素吸着鉄の箱(oxygen absorbing iron packets)、又はジルコニウム・チタン、バナジウム鉄、リチウム、リチウム金属、マグネシウム、カルシウム、リチウム・バリウムの組合せ、空気亜鉛電池、空気亜鉛電池要素、若しくは、例えば、創傷のベッド環境で見つかる窒素、二酸化炭素及び酸素ガスのような選択されたガスと高い反応性を示すその他の材料のゲッターのうちの1つ又はいずれかの組合わせであってもよい。
【0052】
図4には、図1に示された反応器16の替わりに用いられてもよい他の反応器226が示される。引用することによって一体化された国際公開番号WO2015/054040A1には、空気、又は空気の希ガス以外の成分のようなガスを電気化学反応によって囲まれた内部で消費するように改造された電気化学電池が記載されている。このように密閉された囲まれた内部のガスを消費することによって、部分的な真空が形成される。創傷治療装置10は、電気化学電池228を有するこの種の反応器226を具えてもよい。電気化学電池228は、(図4において、図式的に示される)電力源230による電圧が電気化学的電池228に掛けられた場合に起こる電気化学反応によって、密閉空間56内の圧力を下げる。例えば、使用者によって操作されてもよいスウィッチ232を設けること等によって、電力源230によって電気化学的電池228に供給される電流をコントロールすることで、この例の電気化学電池228を作用させてもよい。電力源230は、密閉空間56内に配置されてもよいし、又は創傷治療装置10の外側に設けられてもよい(例えば反応器ハウジング要素14上)。スイッチ232は、創傷治療装置10の外側に設けられてもよい(例えば反応器ハウジング要素14上)。
【0053】
反応器がVOD装置である実施例において、VODは固体状態電気化学電池であり、弱電流が流れると、空気中に存在するガスを捕える反応性の高い材料を作り出し、空気中に閉じ込められると、気密システムが部分的な真空を形成してもよい。VOD装置において、VOD装置及びVOD装置に充電するリチウム塩電解液の電極全体に電圧が加えられると、金属は樹状突起を成長させるべく堆積する。電池の充電と同様に、電子は、金属リチウムを形成するべく層から層へと移動する。
【0054】
反応器がゲッターである実施例において、当技術分野において既知のとおり、ゲッターは、部分的な真空を開始して、維持するために用いられる反応器材料の堆積物である。ガス分子がゲッター材料にぶつかった場合、特殊ガス分子(すなわち、選択されたガスの分子)は化学的に、又は、吸着によってゲッターと結合する。このように、活性物質が排出されるまで、ゲッターは排出空間から選択されたガスを除く。
【0055】
反応器基質80で作られた上記の反応器16の替わりに、空気亜鉛電池技術によって電力が供給される自動制御酸素ゲッターを有する反応器が用いられてもよい。空気亜鉛電池は、密封された部位の酸素レベルをコントロール又は減らし、それ故、約0.8バールの部分的な真空圧を自己制御するために反応してもよい。空気亜鉛電池要素が動く空気亜鉛電池として構成される場合、酸素が減少し、所望の真空圧力に達すると、バッテリ電圧は低下する。この電圧の低下は、所望の部分的な真空が達成されたことを示すために用いられてもよい。例えば、サイズ675補聴器用空気亜鉛電池は、620mAhの容量で、体積0.5mLを占め、1.9gの重さである。675の空気亜鉛電池は、その体積の150倍以上の酸素を取除くことができる。
【0056】
創傷治療装置10は、図1に概略的に、電力要素240として示された電力要素をさらに具えてもよい。図5乃至7を参照して後述される、各動力要素240は、例えば、周囲にさらされた空気亜鉛電池で、動力要素240と電気的に接続されてもよい(図1に概略的に示される)電力源242と電気的に接続されてもよい。電力源242として空気亜鉛電池を用いる場合、電力源242は密閉空間56の外側に位置し、又は反応器ハウジング要素14若しくは皮膚と接する要素12の一部は周りの空気が空気亜鉛電池に接触できるように取外されてもよい。
【0057】
図5には、創傷治療装置10において用いられてもよく、電力源242と電気的に接続されてもよい動力要素240の1つの例であるヒーター250が示される。ヒーター250は、薄膜ヒーターであってもよい。ヒーター250は組織部位20での感染の可能性を減らすために熱を供給してもよい。スイッチ252はヒーター250への電力をコントロールするために設けられてもよい。
【0058】
図6には、電力源242と電気的に接続された第一電極260及び第二電極262が示される。第一及び第二電極260、262は、創傷治療装置10において用いられ得る動力要素240の他の例である。スイッチ252は、電極260、262への電力をコントロールするために設けられてもよい。第一電極260は組織部位20の第一側に皮膚と接するように配置され、第二電極262は組織部位20の第一側の反対側の第二側に皮膚と接するように配置される。電極260、262は、組織部位20に電気的な刺激を与えるべく用いられてもよい。
【0059】
図7には、創傷装置10において用いられ得る動力要素240の他の例である光源280が示される。光源280は可撓性基体284に搭載された複数のLED282を具えてもよい。LED282は電力源242と電気的に接続される。可撓性基体284は、光治療のための光の通過が可能なより大きな開口34を具え得る皮膚と接する要素12に隣接して配置されてもよい。また、光源は、部分的な真空状態が密閉空間56内に存在することを示すために用いられもよい。
【0060】
任意に、電気駆動装置240は、創傷治療装置10からの無線通信を可能にするトランシーバ、レシーバ又は送信器であってもよい。また、電気駆動装置240の替わりにRFID又は無動力表示器(両方とも示されない。)が反応器ハウジング要素14の中の反応器14に埋設されてもよい。
【0061】
任意に、示されないが、創傷治療装置10は、反応器16によって作り出せれる圧力条件の状態を示す表示器を具えてもよい。例えば、ガーゼ要素36、反応器16又は皮膚と接する要素12の1つ以上が、反応器ハウジング要素14を通って突出した表示部を突き出す又は持上げる剛性部を具えてもよい。例えば、反応器16が陰圧状態を作り出す場合、剛性部は、ハウジング要素14を通って突き出る又は示され、これにより、部分的な真空状態が密閉空間56内に存在することが示される。1つの実施例では、剛性部は、ガーゼ要素36(及び、ガーゼ要素36が反応器140の外周にはみ出る又は反応器16より上に設けられた)に設けられた1つ以上のビーズであってもよい。
【0062】
次に、創傷治療を組織部位に適用する方法を説明する。特に、上記の創傷治療装置10に関連する方法を後述する。ただし、他の創傷治療装置が用いられてもよいということを理解されたい。その方法では、図8を参照して、組織部位20は、S300において、皮膚と接する要素12で覆われる。すでに上述した通り、皮膚と接する要素12は皮膚接触面30及び皮膚接触面の反対側にある境界面32を有する。この組織部位20を皮膚と接する要素12で覆うと、皮膚接触面30は組織部位20に面するように配置される。
【0063】
S302では、反応器16が、組織部位20において圧力条件を作り出すように作動する。本明細書において既述したとおり、反応器16の働きには、組織部位20において陰圧状態を作り出すことが含まれてもよい。これにより、組織部位20は吸引され、又は部分的に真空の力が掛かり、滲出液が組織部位20から創傷治療装置10に真空引きされ、すなわち、吸引される。上述したとおり、皮膚と接する要素12は、滲出液が組織部位20から吸引され又は真空引きされた場合に、組織部位20からの滲出液を吸収するガーゼ要素36を含んでもよい。特に、圧力条件は、酸素が組織部位20から真空引きされる陰圧状態であってもよい。任意に、陰圧状態は、酸素以外の少なくとも1つの他のガス(例えば、窒素、二酸化炭素等、又はそれらのいずれかの組合わせ)を組織部位20から吸引してもよい。
【0064】
次のS304においては、まだ組立てられない場合に、その中に収容される反応器16を有する反応器ハウジング14が皮膚と接する要素12に取付けられる。本願明細書において既述したとおり、反応器ハウジング要素14は下側取付面62及び下側取付面62の反対側にある上面64を有する。1つの実施例では、反応器16の作動後に、反応器ハウジング要素14を皮膚と接する要素12に取付ける。
【0065】
前述したとおり、創傷治療装置10は膜100を具えてもよい。膜を具える場合、S306で示されるように、方法には、組織部位20から滲出液が反応器16と流体連通することを妨げることがさらに含まれてもよい。特に、膜100は、組織部位20からの滲出液が基質80及び反応器パッド82に(例えばガーゼ要素36を介して)吸引され、接触する可能性を妨げ、減少させ、及び/又は防ぐ。
【0066】
任意に、方法には、反応器ハウジング要素14及び反応器16を一緒に取除くこと及び交換することが含まれてもよい。加えて、又は、他に、方法には、ガーゼ要素36を取除くこと及び交換することが含まれてもよい。このことは、反応器ハウジング要素14及び反応器16と一緒に、又は、単独で行われてもよい。例えば、反応器ハウジング要素14及び反応器16が、一時的に皮膚と接する要素12から取外され、ガーゼ要素36が交換され、反応器ハウジング要素14及び反応器16が皮膚と接する要素12に再び取付けられてもよい。これらの実施例では、皮膚と接する要素12は、組織部位20にくっついたままであってもよく、組織部位20における望ましくない破壊を避け得る。また、上述したとおり、反応器16は単独で、又は、ガーゼ要素36と一緒に交換されてもよく、反応器ハウジング要素14は皮膚と接する要素12に再び取付けられてもよい。
【0067】
特定の実施例では、創傷治療装置10の使用は、以下の通りに行われてもよい。剥離層44は、貼付剤42及び任意に外周圧力シール40を露出させるために、皮膚と接する要素12から取除かれてもよい。または、剥離層44を取除いた後、外周圧力シール40が、皮膚と接する要素12の皮膚接触面30に追加されてもよい。S300において組織部位20を皮膚と接する要素12で覆うことには、組織部位20に及び/又はその周辺に皮膚と接する要素12を付着させること及び/又は封止することがさらに含まれてもよい。特に、このような付着させること及び/又は封止することには、外周圧力シール40及び貼付剤42によって封止及び付着させることの両方が含まれてもよい。
【0068】
皮膚と接する要素12が組織部位20に(又は組織部位20の周辺に)付着した状態で、剥離層50が皮膚と接する要素12の境界面32から取除かれてもよいし、剥離層70が反応器ハウジング要素14の下部62から取除かれてもよい。上述したとおり、剥離層70を取除くことにより、反応器ハウジング要素14に収容された反応器16が作動してもよい。反応器ハウジング要素14から剥離層70を取除くと、反応器ハウジング要素14及び任意に外周圧力シール66の下側62に設けられた貼付剤68を露出させるように機能してもよい。または、外周圧力シール66は、剥離層70が取除かれたあとに、反応器ハウジング要素14の下部62上へ適用される又は設けられてもよい。S304において反応器ハウジング要素14を皮膚と接する要素12に取付けることには、皮膚と接する要素12に反応器ハウジング要素14をくっつける、及び/又は、密閉することがさらに含まれてもよい。特に、このような皮膚接触要素12に対する反応器ハウジング要素14の付着、及び/又は、密閉には、外周圧力シール66及び貼付剤68による密閉及び付着が含まれてもよい。
【0069】
任意に、方法には、さらに、特定のガスに対して少なくとも部分的に気体透過性のある(例えば、少なくとも部分的に二酸化炭素又は窒素ガス透過性である)反応器ハウジング要素14から大気へのガス(例えば、窒素、二酸化炭素等、又はこれらのいずれかの組合わせ)の排出が含まれてもよい。
【0070】
上記の種々の開示、その他の特徴及び機能、すなわち、それらの改変又は変更が望ましく結びつけられて、他の異なる多くのシステム、すなわち、応用例になり得るということが理解されるであろう。また、現時点では思いつかない、若しくは想定外の様々な代替、修正、変更、又は改良が当業者によって後になされるであろうが、それもまた、添付の請求項に含まれることが意図されている
図1
図1A
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図8