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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】エアゾール容器の定量噴射機構
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/54 20060101AFI20230517BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B65D83/54
B05B9/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018248092
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020104931
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】久保田 遼
(72)【発明者】
【氏名】森若 博文
(72)【発明者】
【氏名】平原 穂積
(72)【発明者】
【氏名】菅野 博史
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/032638(WO,A1)
【文献】特開2012-200690(JP,A)
【文献】特開2002-177830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/42-83/54
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に対する噴射操作に基づき、内容物噴射用の流出弁が閉じ、この流出弁閉状態で内容物通路態様のステムからなる流入弁が開くことによりこの流入弁と前記流出弁との間の定量室に容器本体側から内容物が流入し、かつ、前記噴射操作の終り段階で前記流入弁が閉じて前記流出弁が開くことにより前記定量室への流入済み内容物が外部へ噴射されるエアゾール容器の定量噴射機構において、
前記ステムを前記流入弁の閉状態に付勢する第一の弾性部材と、
前記噴射操作に連動する被駆動部材と、
前記被駆動部材に従動して、前記ステムとの間の前記流出弁の開閉状態を設定するとともに前記ステムを前記流入弁の開状態に移動させる従動部材と、
前記被駆動部材および前記従動部材を双方の一体化状態で連結移動させるための第二の弾性部材からなる連結作用部と、を備え、
前記流出弁は、
前記噴射操作にともなう前記従動部材の前記一体化状態での前記ステムに対する移動により閉状態に設定され、これが前記噴射操作の終り段階での前記連結作用部の連結解消状態への移行まで継続し、
前記流入弁は
前記噴射操作にともなう、前記一体化状態での前記従動部材および前記ステムの移動により開状態に設定され、前記連結作用部の連結解消状態への移行にともなう前記第一の弾性部材のステム復帰作用により閉状態へ変化する、
ことを特徴とするエアゾール容器の定量噴射機構。
【請求項2】
前記従動部材は、
内側筒状部およびその外側筒状部からなり、
前記内側筒状部が前記ステムとの間で相対移動して前記流出弁の開閉状態が設定され、
前記外側筒状部に前記連結作用部が配設されている、
ことを特徴とする請求項1記載のエアゾール容器の定量噴射機構。
【請求項3】
前記連結作用部は、
前記第二の弾性部材の付勢作用により前記一体化状態に設定され、前記噴射操作の終り段階におけるカム主動部とのカム作用にともない前記一体化状態を解消する連結設定部分を有している、
ことを特徴とする請求項2記載のエアゾール容器の定量噴射機構。
【請求項4】
前記カム主動部は、
前記被駆動部材に形成されたカム面であり、
前記連結設定部分は、
前記カム面に従動する球面である、
ことを特徴とする請求項3記載のエアゾール容器の定量噴射機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器の内容物噴射操作により流入弁開状態(流出弁閉状態)の定量室に内容物を充填し、この内容物噴射操作自体の終り段階で流出弁開状態(流入弁閉状態)の定量室から充填内容物を外部空間域に噴射させる形の定量噴射機構に関する。
【0002】
押下げ操作などの内容物噴射操作において、その終了後の操作部の初期状態復帰動作により定量室内容物が噴射されるのではなく、利用者の噴射操作そのものの終り段階でこの定量室内容物が外部空間域に噴射されるようにしたものである。
【0003】
すなわち、噴射操作に基づき先ず内容物噴射用の流出弁が閉じてステム対応の流入弁が開くことによりこれら弁間の定量室に容器側の内容物が流入し、噴射操作終り段階で流入弁が閉じて流出弁が開くことにより定量室内容物が噴射される定量噴射機構に関する。
【0004】
本発明では、このように利用者の内容物噴射操作にともなって定量室に充填される噴射対象内容物を、この噴射操作自体の終り段階で「定量室流入弁:閉,定量室流出弁:開」の状態を設定している。
【0005】
これにより、利用者は、例えば押下げの噴射操作そのもので定量室内容物が噴射されるといった自然な噴射操作感覚を得ることができる。
【0006】
なお、本明細書において「上」,「下」の用語はそれぞれ図示のエアゾール式製品の倒立状態における位置関係を示している。
【背景技術】
【0007】
本件出願人は、例えば噴射操作部を押下げ操作したとき、「流入弁開,流出弁閉」の定量室に容器本体内容物を充填し、押下げ操作終了後の操作部復帰時に「流入弁閉,流出弁開」として定量室内容物を噴射する定量噴射機構を提案済みである(特許文献1参照)。
【0008】
この定量噴射機構は、一回の押下げ操作およびその後の操作部復帰ごとに、略一定量の内容物が定量室にいったん収容されてから外部空間域に噴射されるといった利便性を備えたものである。
【0009】
ただ、定量室の収容済み内容物が外部空間域に噴射されるのは、利用者が押下げ操作を終了して操作部から手を離した後の静止モード位置への操作部復帰作動時である。すなわち押下げ操作の状態では内容物は外部空間域に噴射されない。
【0010】
そのため、このような定量噴射態様のエアゾール式製品に不慣れな利用者が、押下げ操作をしてもそれだけでは内容物が噴射されないという違和感を抱きかねない、という点で改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2012/032638号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、内容物噴射操作にともない「流入弁開,流出弁閉」の定量室に容器本体内容物を充填してこの定量室内容物が外部空間域に噴射される定量噴射機構の場合、噴射操作終了後の操作部初期状態復帰時に「流入弁閉,流出弁開」状態を設定している。
【0013】
そのため利用者は例えば操作部を押下げるなどの内容物放出操作自体(操作部を押下げたまま)では定量室内容物が噴射されないなどの違和感を持つこともある。
【0014】
本発明では流入弁および流出弁の間の定量室において、押下げる、押上げるなどといった各種噴射操作自体により、容器本体内容物の定量室充填からこの充填内容物の噴射までの一連の動作をおこない、内容物噴射操作上での違和感をなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器に対する噴射操作に基づき、内容物噴射用の流出弁(例えば後述の外向き環状テーパ面4fおよび環状上縁部分7b,8b,11b)が閉じ、この流出弁閉状態で内容物通路態様のステム(例えば後述のステム4)からなる流入弁(例えば後述の横孔部4cおよび環状ガスケット4d)が開くことによりこの流入弁と前記流出弁との間の定量室(例えば後述の定量室A)に容器本体側から内容物が流入し、かつ、前記噴射操作の終り段階で前記流入弁が閉じて前記流出弁が開くことにより前記定量室への流入済み内容物が外部へ噴射されるエアゾール容器の定量噴射機構において、
前記ステムを前記流入弁の閉状態に付勢する第一の弾性部材(例えば後述の縦内側コイルスプリング4h)と、
前記噴射操作に連動する被駆動部材(例えば後述の被駆動部材6,10)と、
前記被駆動部材に従動して、前記ステムとの間の前記流出弁の開閉状態を設定するとともに前記ステムを前記流入弁の開状態に移動させる従動部材(例えば後述の従動部材7,8,11)と、
前記被駆動部材および前記従動部材を双方の一体化状態で連結移動させるための第二の弾性部材(例えば後述の横コイルスプリング7g,8h,11h)からなる連結作用部(例えば後述のボール体C,カム体8f,11fおよび内向き環状テーパ面6a,上向き環状面10a)と、を備え、
前記流出弁は、
前記噴射操作にともなう前記従動部材の前記一体化状態での前記ステムに対する移動により閉状態に設定され、これが前記噴射操作の終り段階での前記連結作用部の連結解消状態への移行まで継続し、
前記流入弁は
前記噴射操作にともなう、前記一体化状態での前記従動部材および前記ステムの移動により開状態に設定され、前記連結作用部の連結解消状態への移行にともなう前記第一の弾性部材のステム復帰作用により閉状態へ変化する、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記従動部材は、
内側筒状部(例えば後述の最内縦筒状部7c,8c,11c)およびその外側筒状部(例えば後述の最外縦筒状部7d,8d,11d)からなり、
前記内側筒状部が前記ステムとの間で相対移動して前記流出弁の開閉状態が設定され、
前記外側筒状部に前記連結作用部が配設された、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(2)において、
前記連結作用部は、
前記第二の弾性部材の付勢作用により前記一体化状態に設定され、前記噴射操作の終り段階におけるカム主動部(例えば後述の内向き環状テーパ面6a,上向き環状面10a)とのカム作用にともない前記一体化状態を解消する連結設定部分(例えば後述のボール体C,カム体8f,11f)を備えた、
構成態様のものを用いる。
(4)上記(3)において、
前記カム主動部は、
前記被駆動部材に形成されたカム面(例えば後述の内向き環状テーパ面6a)であり、
前記連結設定部分は、
前記カム面に従動する球面(例えば後述のボール体C,球面状凸部8g)である、
構成態様のものを用いる。
【0016】
このような構成からなるエアゾール容器の定量噴射機構を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上の構成をとることにより、例えば頭皮押付けなどの一回の噴射操作そのもので略一定量の内容物が定量室にいったん収容されてから外部空間域に噴射されることになり、利用者の自然な噴射操作感覚の実現化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のボール体使用の定量噴射機構の静止モード(流入弁:閉,流出弁:開)を示す説明図である。
図2図1に続く噴射操作初期モード(被駆動部材6および従動部材7:図示上方へ連結移動,流入弁:閉,流出弁:閉)を示す説明図である。
図3図2に続く噴射操作中間モード(被駆動部材6および従動部材7:図示上方へ連結移動,流入弁:開,流出弁:閉)を示す説明図である。
図4図3に続くステム上死点モード(被駆動部材6および従動部材7:図示上方への連結移動終了直後,流入弁:開,流出弁:閉)を示す説明図である。
図5図4に続くステム下死点復帰モード(従動部材7:図示下方への単独移動,流入弁:閉,流出弁:閉)を示す説明図である。
図6図5に続く噴射モード・噴射操作終りモード(流入弁:閉,流出弁:開)を示す説明図である。
図7】本発明のカム体使用(その1)の定量噴射機構の静止モード(流入弁:閉,流出弁:開)を示す説明図である。
図8】本発明のカム体使用(その2)の定量噴射機構の静止モード(流入弁:閉,流出弁:開)を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至図8を用いて、本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
上述したように「上」,「下」の用語はそれぞれ図示のエアゾール式製品の倒立使用における位置関係を示している。例えばステムはコイルスプリングによって上方ではなく下方に付勢される、といった記載になる。
【0021】
図1図8において以下の符号を用いる。
なお、ボール体Cおよび従動部材7は図1図6のみで用い、従動部材8は図7のみで用い、肩カバー9,被駆動部材10および従動部材11は図8のみで用いる。
【0022】
ここで、
Aは流入弁から流出弁までの間に連続設定される定量の内部空間域であって、その内部に噴射対象内容物が収容される定量室,
Bは定量室Aの収容内容物が噴射される頭皮などの噴射対象部位,
Cはエアゾール容器1の外側に配設されて、噴射操作自体の終り段階で、定量室Aの流入弁(後述の横孔部4cおよびステムガスケット4d)が閉じ、流出弁(後述の外向き環状テーパ面4fおよび環状上縁部分7b)が開いた状態を設定して、定量室Aの収容済み内容物を外部空間域に噴射するためのボール体(後述の従動部材7参照),
をそれぞれ示している。
【0023】
また、
1は噴射対象としての内容物および噴射剤としての液化ガスなどを収容したエアゾール容器,
2はエアゾール容器の下開口部に取り付けられたマウンティングカップ,
3はマウンティングカップ2に嵌合固定された内容物通過用のハウジング,
3aはハウジング3の周面に形成された内容物流入用の開口部,
をそれぞれ示している。
【0024】
また、
4はその上側部分がハウジング3の内部に配設されて周知の流入弁作用および後述の従動部材7の環状上縁部分7bとの間の流出弁作用を呈するステム,
4aは流入弁作用を呈するステム上部分,
4bはステム上部分4aと嵌合して流出弁作用を呈するステム下部分,
4cはステム上部分4aに形成されて流入弁を構成する計二個の横孔部,
4dは横孔部4cの外開口側との間で流入弁を構成する周知の環状ガスケット,
4eはステム下部分4bに形成された内容物通過用の計二個の縦孔部,
4fはステム下部分4bの下端側に形成されて後述の環状上縁部分7bとの間で流出弁を構成する下狭まりの外向き環状テーパ面,
4gはステム下部分4bの外周面上側に形成されて後述の従動部材7の相対的な略下動限界を設定する上向き環状段部,
4hはハウジング3の内部に配設されてステム4(流入弁)を閉状態に付勢するステム付勢用の縦内側コイルスプリング,
をそれぞれ示している。
【0025】
また、
5はマウンティングカップ2に嵌合固定された肩カバー(上肩カバー5a+下肩カバー5b),
5aはマウンティングカップ2に直接嵌合している上肩カバー,
5bは上肩カバー5aに嵌合している下肩カバー,
5cは上肩カバー5aの一部であって、常時、後述の縦外側コイルスプリング6dの上端側を受ける下向き環状面,
5dは下肩カバー5bの一部であって、図1の静止モードのとき後述の被駆動部材6を受ける上向き環状面,
をそれぞれ示している。
【0026】
また、
6は図1の静止モードのとき下肩カバー5bの上向き環状面5dに保持されて、内容物噴射操作により図示上方へ駆動される外筒状の被駆動部材,
6aは被駆動部材6の筒状部上端部分に内方下り態様で形成されて、静止モードなどにおける(図1図3参照)ボール体Cとの当接作用を呈する内向き環状テーパ面,
6bは内向き環状テーパ面6aからその下方に連続する環状内周面,
6cは環状内周面6bの外下側で下向き環状面5cとの対向部分に形成された外下側環状面,
6dは下向き環状面5cと外下側環状面6cとの間に配設された被駆動部材付勢用の縦外側コイルスプリング,
6eは静止モードにおいて、縦外側コイルスプリング6dの下方向弾性力により下肩カバー5bの上向き環状面5dに当接する環状下端面,
6fは内容物噴射操作のとき例えば頭皮などの噴射対象部位Bに当接して、被駆動部材6全体を下肩カバー5bに対し図示上方向に移動させるための中央環凸状部,
をそれぞれ示している。
【0027】
また、
7は被駆動部材6に従動する態様でその内側に配設され、全体として、内容物噴射操作によりステム上部分4aの横孔部(流入弁)4cを開状態へと駆動する内筒状の従動部材,
7aは定量室Aの底部分中央に形成された内容物噴射用の縦孔部,
7bは縦孔部7aの上開口側であって外向き環状テーパ面4fとの間の流出弁作用を呈する環状上縁部分,
7cはステム下部分4bの外周面(上向き環状段部4gなど)と係合して、この外周面との間で上下方向の相対移動が可能な最内縦筒状部,
7dは横断面が最内縦筒状部7cと略同心円状の最外縦筒状部,
7eは最外縦筒状部の外周面に周方向等間隔のそれぞれ外向き突出状態で形成された計四個の横筒状部,
7fは横筒状部7eに嵌合保持されて、ボール体Cの案内保持作用を呈するジョイントカバー,
7gは横筒状部7eの内部に配設されて、ボール体Cを内向き環状テーパ面6aおよび環状内周面6bの方に付勢するボール体付勢用の横コイルスプリング,
をそれぞれ示している。
【0028】
また、図7において、
8は被駆動部材6に従動する態様でその内側に配設され、全体として、内容物噴射操作によりステム上部分4aの横孔部(流入弁)4cを開状態へと駆動する内筒状の従動部材,
8aは定量室Aの底部分中央に形成された内容物噴射用の縦孔部,
8bは縦孔部8aの上開口側であって外向き環状テーパ面4fとの間の流出弁作用を呈する環状上縁部分,
8cはステム下部分4bの外周面(上向き環状段部4gなど)と係合して、この外周面との間で上下方向の相対移動が可能な最内縦筒状部,
8dは横断面が最内縦筒状部8cと略同心円状の最外縦筒状部,
8eは最外縦筒状部の外周面に周方向等間隔のそれぞれ外向き突出状態で形成された計四個の横方向片部,
8fは横方向片部8eの先端に回動支持されたカム体,
8gはカム体8fの外面に設けられた球面状凸部,
8hはカム体8fの内面と最外縦筒状部8dの外面との間に配設されて、カム体8fの球面状凸部8gを内向き環状テーパ面6aおよび環状内周面6bの方に付勢する球面状凸部付勢用の横コイルスプリング,
をそれぞれ示している。
【0029】
また、図8において
9はマウンティングカップ2に嵌合固定された肩カバー(上肩カバー9a+下肩カバー9b),
9aはマウンティングカップ2に直接嵌合している上肩カバー,
9bは上肩カバー9aに嵌合している下肩カバー,
9cは上肩カバー9aの一部であって、常時、後述の縦外側コイルスプリング10dの上端側を受ける下向き環状面,
9dは下肩カバー9bの一部であって、図8の静止モードのとき後述の被駆動部材10を受ける上向き環状面,
9eは下向き環状面9cの内側に設けられた内向き環状テーパ面,
【0030】
また、図8において
10は図1の静止モードのとき下肩カバー5bの上向き環状面5dに保持されて、内容物噴射操作により図示上方へ駆動される外筒状の被駆動部材,
10aは被駆動部材10の筒状部上端部分であって、静止モードなどにおける後述の下向き段部11gとの係止用を呈する上向き環状面,
10bは上向き環状面10aからその下方内側に連続する環状内周面,
10cは環状内周面10bの外下側で下向き環状面9cとの対向部分に形成された外下側環状面,
10dは下向き環状面9cと外下側環状面10cとの間に配設された被駆動部材付勢用の縦外側コイルスプリング,
10eは静止モードにおいて、縦外側コイルスプリング10dの下方向弾性力により下肩カバー9bの上向き環状面9dに当接する環状下端面,
10fは内容物噴射操作のとき例えば頭皮などの噴射対象部位に当接して、被駆動部材10全体を下肩カバー9bに対し図示上方向に移動させるための中央環凸状部,
【0031】
また、図8において
11は被駆動部材10に従動する態様でその内側に配設され、全体として、内容物噴射操作によりステム上部分4aの横孔部(流入弁)4cを開状態へと駆動する内筒状の従動部材,
11aは定量室Aの底部分中央に形成された内容物噴射用の縦孔部,
11bは縦孔部11aの上開口側であって外向き環状テーパ面4fとの間の流出弁作用を呈する環状上縁部分,
11cはステム下部分4bの外周面(上向き環状段部4gなど)と係合して、この外周面との間で上下方向の相対移動が可能な最内縦筒状部,
11dは横断面が最内縦筒状部11cと略同心円状の最外縦筒状部,
11eは最外縦筒状部の外周面に周方向等間隔のそれぞれ外向き突出状態で形成された計四個の横方向片部,
11fは横方向片部11eの先端に回動支持されたカム体,
11gはカム体11fの外面に設けられた下向き段部,
11hはカム体11fの内面と最外縦筒状部11dの外面との間に配設されて、カム体11fの下向き段部11gを環状内周面6bの方に付勢する横コイルスプリング,
をそれぞれ示している。
【0032】
ここで、縦内側コイルスプリング4h,縦外側コイルスプリング6d,10dおよび横コイルスプリング7g,8h,11hを除き、ハウジング3,ステム4,肩カバー5,9,被駆動部材6,10および従動部材7,8,11は例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0033】
また、エアゾール容器1,ボール体C,縦内側コイルスプリング4h,縦外側コイルスプリング6d,10dおよび横コイルスプリング7g,8h,11hは例えばプラスチック製,金属製のものである。マウンティングカップ2は例えば金属性のものである。
【0034】
図1の静止モードのとき、
(11)ボール体C,ステム4および被駆動部材6は、それぞれ横コイルスプリング7g,縦内側コイルスプリング4hおよび縦外側コイルスプリング6dの弾性力により個々の最外位置または最下位置へと移動し、
(12)このときボール体Cは被駆動部材6の内向き環状テーパ面6aに当接し、ステム4はそれを保持する環状ガスケット4d全体が略環状平面態様でステム4の横孔部4cを閉じた状態に設定され、また被駆動部材6はその環状下端面6eが下肩カバー5bの上向き環状面5dに当接した状態に設定され、
(13)定量室Aは、その流入弁(横孔部4cおよび環状ガスケット4d)が閉じ、その流出弁(外向き環状テーパ面4fおよび環状上縁部分7b)が開いた状態に設定され、すなわち定量室Aは流入弁が閉じ、開状態の流出弁および従動部材7の縦孔部7aを介した外部空間域との連通状態に設定されている。
【0035】
図2は、静止モードの被駆動部材6の中央環凸状部6fを噴射対象部位Bに押し当てた直後の状態を示している。
【0036】
このとき、被駆動部材6と従動部材7とはボール体Cおよび横コイルスプリング7gを介した一体物として図示上方向へ移動し、環状上縁部分7bがステム下部分4bの外向き環状テーパ面4fに当接している。すなわち流出弁が閉状態にシフトしている。ステム上部分4aの流入弁は静止モードと同じく閉じたままである。
【0037】
図3は、被駆動部材6の中央環凸状部6fをさらに噴射対象部位Bに押し当てたときの定量室への内容物流入状態を示している。
【0038】
このとき、被駆動部材6および従動部材7は図2の一体のまま図示上方向に連結移動してステム4も従動部材7との当接状態で上方向に連動する。ステム4はこの連動にともない周知の流入弁作用を呈する。すなわち、環状ガスケット4dの内側部分が上方に変位してそれまでの横孔部4cへの閉作用がなくなる。
【0039】
図3のように定量室Aの流入弁が開き、かつ流出弁が閉じることにより、エアゾール容器1の内容物がハウジング3の周面開口部3aやステム上部分4aの横孔部4cなどを経て定量室Aに流入し、収容される。
【0040】
定量室Aは概略、流入弁より下流側のステム内部空間域および流出弁より上流側で最内縦筒状部7cの外側環状空間域などである。
【0041】
被駆動部材6および従動部材7が図2の一体のまま連結移動しえるのは、ボール体Cに対する横コイルスプリング7gの弾性力がステム4に対する縦内側コイルスプリングのそれよりも大きいからである。
【0042】
すなわちこの弾性力の大小関係により、内容物噴射操作時の被駆動部材6の上動において、ステム4は、その図示上死点に移動するまでステム従動部材7と一体化した状態で移動する。このときボール体Cに対する横コイルスプリング7gは略変位しない。
【0043】
そして、ステム4が上死点に移動した後の内容物噴射操作(被駆動部材6の上動)により、ボール体Cは、上動する被駆動部材6の内向き環状テーパ面6aに案内されて横コイルスプリング7gの付勢力に抗しながら内方へと移動し、このテーパ面から環状内周面6bに離脱する。
【0044】
図4は、ボール体Cが、内容物放出操作の略終り段階で被駆動部材6の内向き環状テーパ面6aから環状内周面6bに離脱した直後の状態を示している。
【0045】
このとき、ステム4はまだ縦内側コイルスプリング4hの弾性力に抗した形の流入弁開状態になっている。
【0046】
図5は、図4に続く内向き環状テーパ面6aからのボール体Cの離脱にともないステム4が縦内側コイルスプリング4hの弾性力で初期位置に復帰し、環状ガスケット4dとの間のステム流入弁が閉状態に移行したことを示している。
【0047】
このとき、まだ内容物噴射操作自体の終り段階であり、定量室Aには噴射対象内容物が収容された閉状態になっている。
【0048】
図6は、図5と同じく(噴射操作を終了した後ではなく)内容物噴射操作自体の終り段階で定量室Aの収容内容物が外部空間域に噴射されることを示している。
【0049】
定量室Aを構成する従動部材7の内面部分が受ける内容物圧力は単位面積あたり一様であり、その上内面および下内面が受ける全圧力は面積の多い下内面が大きくなる。
【0050】
そのため従動部材7は、全体として図示下方への内容物圧力を受けて下動し、その環状上縁部分7bがステム下部分4bの外向き環状テーパ面4fから離間する。すなわち流出弁が開き定量室Aの収容内容物がこの流出弁から縦孔部7aを介して噴射される。
【0051】
その後、中央環凸状部6fの噴射対象部位Bヘの押し当てを解除すると、被駆動部材6が縦外側コイルスプリング6dの作用で図1の静止モード位置に復帰する。このとき、ボール体Cも環状内周面6bから内向き環状テーパ面6aに復帰する。
【0052】
図7の定量噴射機構は、図1図6のボール体Cおよび従動部材7を従動部材8に置き換えたものである。
【0053】
カム体8fはその内側凹部に横方向片部8eの先端が差し込まれ、横方向片部8eの先端下側が回動軸となるように支持されている。
【0054】
従動部材8に設けられたカム体8fの球面状凸部8gが、内向き環状テーパ面6a,環状内周面6bに対し図1図6のボール体Cと同じ作用を呈することを除き、図1図6の定量噴射機構と同じ押下げ操作およびその後の操作部復帰をする。
【0055】
図8定量噴射機構は、図1図6のボール体C,肩カバー5,被駆動部材6および従動部材7を、肩カバー9,被駆動部材10および従動部材11に置き換えて、内向き環状テーパ面9eを新たに設け、ボール体Cの代わりに下向き段部11gを設け、内向き環状テーパ面6aの代わりに上向き環状面10aを設けたものである。
【0056】
カム体11fはその下端側孔部に横方向片部11eの先端が差し込まれ、カム体11fと横方向片部11eのそれぞれに設けた円弧状段部同士の倣い作用によって、横方向片部11eの先端下側が回動軸となるように支持されている。
【0057】
図8の静止モードから、被駆動部材10の中央環凸状部10fを噴射対象部位に押し当てて、ステム上死点モード(図4に相当)に至るまでは、カム体11fの下向き段部11gが上向き環状面10aに係止するので、被駆動部材10と従動部材7とが一体となって上動する。
【0058】
ステム上死点モード(図4に相当)に至ると、カム体11fが内向き環状テーパ面9eに当接し、下向き段部11gが内方に変位して上向き環状面10aとの係止状態が解除され、従動部材11はステム4による付勢力で下方に移動し、ステム下死点復帰モード(図5に相当)を経て噴射モード・噴射操作終りモード(図6に相当)になり、内容物が縦孔部11aより噴射される。
【0059】
その後、中央環凸状部10fの噴射対象部位ヘの押し当てを解除すると、被駆動部材10が縦外側コイルスプリング10dの作用で静止モード位置に復帰する。このとき、カム体11fの下向き段部11gと上向き環状面10aとの係止状態も復帰する。
【0060】
このように本発明では、内容物噴射操作の一部としての操作終り段階で定量室内容物の噴射動作が行われる。内容物噴射操作を終えたことを契機として噴射動作が行われるものではない。
【0061】
図示の定量噴射機構は頭皮などへの倒立使用を対象としているが、本発明がこれに限定されるものではなく肩カバー5,9が上側になる正立使用の場合も適用対象とするのは勿論である。この場合、上下の位置関係が本明細書の記載とは逆になる。
【0062】
以上の定量噴射機構を備えたエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,忌避剤,殺虫剤,医薬品,医薬部外品,化粧品,洗濯のりなどの各種用途のものがある。
【0063】
エアゾール容器に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0064】
エアゾール容器に収容される噴射剤としては、液化石油ガス,ジメチルエーテルなどの液化ガス、または、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気、酸素ガス、亜酸化窒素、これらの混合ガスなどの圧縮ガスを用いる。
【符号の説明】
【0065】
A:定量室
B:噴射対象部位
C:ボール体(従動部材7参照)
【0066】
1:エアゾール容器
2:マウンティングカップ
3:ハウジング
3a:周面開口部
【0067】
4:ステム
4a:ステム上部分
4b:ステム下部分
4c:横孔部
4d:環状ガスケット
4e:縦孔部
4f:外向き環状テーパ面
4g:上向き環状段部
4h:縦内側コイルスプリング
【0068】
5:肩カバー
5a:上肩カバー
5b:下肩カバー
5c:下向き環状面
5d:上向き環状面
【0069】
6:被駆動部材
6a:内向き環状テーパ面
6b:環状内周面
6c:外下側環状面
6d:縦外側コイルスプリング
6e:環状下端面
6f:中央環凸状部
【0070】
7:従動部材
7a:縦孔部
7b:環状上縁部分
7c:最内縦筒状部
7d:最外縦筒状部
7e:横筒状部
7f:ジョイントカバー
7g:横コイルスプリング
【0071】
図7
8:従動部材
8a:縦孔部
8b:環状上縁部分
8c:最内縦筒状部
8d:最外縦筒状部
8e:横方向片部
8f:カム体
8g:球面状凸部
8h:横コイルスプリング
【0072】
図8
9:肩カバー
9a:上肩カバー
9b:下肩カバー
9c:下向き環状面
9d:上向き環状面
9e:内向き環状テーパ面
【0073】
図8
10:被駆動部材
10a:上向き環状面
10b:環状内周面
10c:外下側環状面
10d:縦外側コイルスプリング
10e:環状下端面
10f:中央環凸状部
【0074】
図8
11:従動部材
11a:縦孔部
11b:環状上縁部分
11c:最内縦筒状部
11d:最外縦筒状部
11e:横方向片部
11f:カム体
11g:下向き段部
11h:横コイルスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8