IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テイ・エス テック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-乗物用シート 図1
  • 特許-乗物用シート 図2
  • 特許-乗物用シート 図3
  • 特許-乗物用シート 図4
  • 特許-乗物用シート 図5
  • 特許-乗物用シート 図6
  • 特許-乗物用シート 図7
  • 特許-乗物用シート 図8
  • 特許-乗物用シート 図9
  • 特許-乗物用シート 図10
  • 特許-乗物用シート 図11
  • 特許-乗物用シート 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/60 20060101AFI20230517BHJP
   B62J 1/12 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B60N2/60
B62J1/12 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018222740
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020083156
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】内海 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】相澤 典行
(72)【発明者】
【氏名】本間 裕一
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093225(US,A1)
【文献】実開昭60-160765(JP,U)
【文献】特開2014-151788(JP,A)
【文献】実開平02-092756(JP,U)
【文献】特開2000-318667(JP,A)
【文献】実公昭45-030191(JP,Y1)
【文献】独国特許出願公開第102010020843(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - B60N 2/90
B62J 1/12
B62J 1/18 - B62J 1/20
A47C 31/02 - A47C 31/11
B68G 7/00 - B68G 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
クッション部材と、
該クッション部材を支持するベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられ、前記クッション部材を被覆する表皮と、を備え、
前記表皮は、前記乗物用シートの幅方向において、中央に配置される中央表皮と、該中央表皮の第1側部に配置される第1表皮と、前記中央表皮の前記第1側部とは反対側の第2側部に配置される第2表皮と、に分割されており、
前記中央表皮が、前記第1表皮及び前記第2表皮に対して着脱可能に構成されており、
前記中央表皮は、前記乗物用シートの幅方向の端部に線ファスナーを備え、
前記線ファスナーの前記乗物用シートの前後方向における両端部が、前記ベース部材の裏面に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記中央表皮の前記乗物用シートの前後方向における前端部及び後端部には、前記中央表皮を前記ベース部材に着脱可能に取り付ける第1固定部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に表皮の一部が他の部分から着脱可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートでは、シートフレームやボトムプレートなどのベース部材にクッション部材が載置され、クッション部材が表皮で被覆されている。表皮は、複数のパーツを縫製やウェルダー加工等で一体化されて形成されており、表皮の端末がベース部材の裏面に巻込まれ、ステイプルやタッカー等の固定部材で固定される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-151788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の乗物用シートでは、表皮の端末部がステイプルによってボトムプレートに対して固定されており、表皮を容易に着脱することはできず、表皮を張り替えることが困難であった。
【0005】
近年、ユーザーが自らの嗜好に合わせて、乗物用シートのデザインをカスタマイズすることがよく行われている。そのような状況下、ユーザーが自らの嗜好に合わせて、意匠の異なるパーツを自由に選択して組み合わせ、乗物用シートの表皮のデザインをカスタマイズすることが可能な乗物用シートが求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、表皮を構成するパーツを自由かつ容易に組替えることが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、乗物用シートであって、クッション部材と、該クッション部材を支持するベース部材と、前記ベース部材に取り付けられ、前記クッション部材を被覆する表皮と、を備え、前記表皮は、前記乗物用シートの幅方向において、中央に配置される中央表皮と、該中央表皮の第1側部に配置される第1表皮と、前記中央表皮の前記第1側部とは反対側の第2側部に配置される第2表皮と、に分割されており、前記中央表皮が、前記第1表皮及び前記第2表皮に対して着脱可能に構成されており、前記中央表皮は、前記乗物用シートの幅方向の端部に線ファスナーを備え、前記線ファスナーの前記乗物用シートの前後方向における両端部が、前記ベース部材の裏面に配置されていることにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、中央表皮を着せ替えることで、表皮の中央部の意匠を容易に変更することが可能となる。
また、上記の構成では、線ファスナーが乗員の着座位置と干渉しない位置に設けられるため、乗物用シートに乗員が乗り降りする際に妨げとならない。
【0009】
また、上記の構成において、前記中央表皮の前記乗物用シートの前後方向における前端部及び後端部には、前記中央表皮を前記ベース部材に着脱可能に取り付ける第1固定部材が設けられているとよい。
上記の構成では、中央表皮の両端部に設けられた第1固定部材をベース部材に対して着脱することで、表皮の中央部の意匠を容易に変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の乗物用シートによれば、中央表皮を着せ替えることで、表皮の中央部の意匠を容易に変更することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、中央表皮の両端部に設けられた第1固定部材をベース部材に対して着脱することで、表皮の中央部の意匠を容易に変更することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、中央表皮の前端部にシワが発生することを抑制するとともに、中央表皮の前端部に掛かる応力を分散させることで、中央表皮がベース部材に対してバランス良く固定される。
また、本発明の乗物用シートによれば、表皮にシワが発生することを抑制するとともに、中央表皮を容易に変更することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、中央表皮の前端部にシワが発生することが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、線ファスナーの開閉作業が容易なものとなる。
また、本発明の乗物用シートによれば、線ファスナーが乗員の着座位置と干渉しない位置に設けられるため、乗物用シートに乗員が乗り降りする際に妨げとならない。
また、本発明の乗物用シートによれば、表皮にシワが発生することを抑制しつつ、表皮に掛かる応力を分散させて、バランス良く表皮をベース部材に固定することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第1表皮及び第2表皮のシート前後方向における両端部がベース部材に取り付けられているため、第1表皮及び第2表皮にシワが発生することを抑制しつつ、第1表皮及び第2表皮に掛かる応力を分散させて、バランス良く第1表皮及び第2表皮をベース部材に固定することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、表皮全体がベース部材に対して着脱可能となるため、表皮を着せ替えることで、表皮の意匠を容易に変更することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の外観図である。
図2】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの斜視図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの上面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートが備える中央表皮の上面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートが備える中央表皮の下面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートが備える中央表皮の前端部の部分拡大図である。
図9】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの下面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの前端部の下面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの前端部における中央表皮と左側表皮の境界部分の部分拡大図である。
図12】本発明の一実施形態に係る自動二輪車用シートの後端部の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートとしての自動二輪車用シートSの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
自動二輪車用シートSは、乗員(着座者、運転者)が跨った状態で着座する鞍上型のシートである。自動二輪車用シートSは、自動二輪車Bに対して着脱可能に設けられるものであり、以下では自動二輪車Bから取り外した状態の自動二輪車用シートSについて説明する。
【0022】
本明細書における方向を示す用語に関し、図1及び2のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの前後方向を意味する。「シート幅方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、自動二輪車用シートの着座者から見たときの上下方向と一致する。
【0023】
なお、本実施形態の自動二輪車用シートSは、自動二輪車Bに対して着脱可能に構成されているが、自動二輪車用シートSが自動二輪車Bに対して取り付けられた状態で各方向を統一的に定義している。
【0024】
<自動二輪車用シートSの主要構成>
本実施形態に係る自動二輪車用シートSの主要構成について、説明をする。図2は、本実施形態に係る自動二輪車用シートSの斜視図であり、図3は、図2のA-A断面図である。また、図4及び5は、それぞれ、本実施形態に係る自動二輪車用シートSの上面図及び正面図である。
【0025】
本実施形態に係る自動二輪車用シートSは、図2及び図3に示すように、クッション部材Cと、クッション部材Cを支持するベース部材としてのボトムプレート1と、ボトムプレート1に取り付けられ、クッション部材Cを被覆する表皮Tと、によって構成されている。ここで、ボトムプレート1は、樹脂から形成され、クッション部材Cは、ウレタンフォームなどの弾性を有するクッション材から形成され、表皮Tは、合成皮革や布地などから形成されている。
【0026】
(ボトムプレート1)
図3に示すように、自動二輪車用シートSの底板(ベース部材)としてのボトムプレート1は、クッション部材Cが載置される上面2と、シート上下方向において上面2とは反対側の下面3とを備えている。また、ボトムプレート1は、後述するように、シート前後方向に前端部4及び後端部5を備え、シート幅方向に右側部6及び左側部7を備えている。
【0027】
(表皮T)
図4及び図5に示すように、表皮Tは、シート幅方向において、中央に配置される中央表皮10と、中央表皮10の右側(第1側部)に配置される右側表皮20(第1表皮)と、中央表皮10の左側(第2側部)に配置される左側表皮30(第2表皮)と、に分割されている。
【0028】
本実施形態の自動二輪車用シートSの表皮は、中央表皮10が、表皮Tを構成する他の部分、すなわち、右側表皮20(第1表皮)及び左側表皮30(第2表皮)に対して着脱可能に構成されている。
【0029】
(中央表皮10)
図4及び図5に示すように、中央表皮10は、自動二輪車用シートSの中央に配置され、前端部11と後端部12との間において、シート前後方向に延在している。図6乃至図8に示すように、中央表皮10のシート幅方向における右側部13(第1側部)は、線ファスナー13aを備え、左側部14(第2側部)は、線ファスナー14aを備えている。ここで、中央表皮10は、右側表皮20及び左側表皮30とは異なる色を有している。例えば、中央表皮10を赤色として、右側表皮20及び左側表皮30を黒色とすることが可能である。
【0030】
図6及び図7に示すように、中央表皮10は、シート前後方向において、前方から後方に向かうにつれて幅狭となるように形成されており、表皮Tにシワが発生することを抑制するとともに、中央表皮10を容易に変更することが可能となっている。
【0031】
また、図5乃至7に示すように、中央表皮10の前端部11は、シート幅方向における中央部分11bが、縫製によって取り付けられて形成されている。このような構成によれば、中央表皮10の前端部11にシワが発生することが抑制される。この中央部分11bを、中央表皮10の他の部分とは色が異なるようにすることも可能である。例えば、中央部分11bを、右側表皮20及び左側表皮30と同じく黒色とすることが可能である。
【0032】
図7に示すように、中央表皮10のシート前後方向における前方の前端部11には、中央表皮10の前端部11をボトムプレート1の前端部4に設けられた被固定部材4a(後述の図11)に着脱可能に取り付ける固定部材11aが設けられている。同様に、図7に示すように、中央表皮10のシート前後方向における後方の後端部12には、中央表皮10の後端部12をボトムプレート1の後端部5に設けられた不図示の被固定部材に着脱可能に取り付ける固定部材12aが設けられている。固定部材11a,12a及び被固定部材として、ホックを用いると好適である。
【0033】
ここで、図7に示すように、中央表皮10の前端部11には、固定部材11aが複数設けられている。より詳細には、複数の固定部材11aは、シート幅方向において放射状に配置されている。この構成によれば、中央表皮10の前端部11にシワが発生することを抑制するとともに、中央表皮10の前端部11に掛かる応力を分散させることで、中央表皮10がボトムプレート1に対してバランス良く固定される。
【0034】
また、図7に示すように、中央表皮10の前端部11が波形状に形成されており、固定部材11aが、波形状の前端部11の突出した部分に配置されているため、中央表皮10にシワが発生することを抑制しつつ、前端部11を容易にボトムプレート1の前端部4に巻込み固定することが可能である。
【0035】
図7及び図8に示すように、中央表皮10のシート幅方向の端部に設けられた線ファスナー13a,14aは、中央表皮10の前端部11においてU字状に折り返されている。より詳細には、線ファスナー13a,14aは、中央表皮10の前端部11において、中央表皮10の裏面(下面)に向かうように折り返されている。このような構成によれば、線ファスナーの開閉作業が容易なものとなる。
【0036】
図6及び図7に示すように、中央表皮10の左側部14の線ファスナー14aは、線ファスナー14a(及び後述の左側表皮30の線ファスナー33a)を閉鎖するための係合部材14bを備えている。なお、中央表皮10の右側部13の線ファスナー13aは、線ファスナー13a(及び後述の右側表皮20の線ファスナー23a)を閉鎖するための係合部材を備えていない。その代わりに、後述の右側表皮20の線ファスナー23aが、線ファスナー13a及び線ファスナー23aを閉鎖するための係合部材23bを備えている(図9及び図10)。
【0037】
(右側表皮20)
右側表皮20は、シート幅方向において、中央表皮10の右側(第1側部)に配置されており、前端部21と後端部22との間において、シート前後方向に延在している。図4及び図5に示すように、右側表皮20のシート幅方向における内側に配置される内側部23には、線ファスナー23aが設けられている。また、右側表皮20のシート幅方向における外側に配置される外側部24は、ホック等の着脱可能な固定部材又はステイプル等によってボトムプレート1の右側部6に着脱可能に固定されている。
【0038】
図9乃至図11に示すように、右側表皮20のシート前後方向における前方の前端部21には、右側表皮20の前端部21をボトムプレート1の前端部4に着脱可能に取り付ける固定部材21aが設けられている。同様に、図9及び図12に示すように、右側表皮20のシート前後方向における後方の後端部22には、右側表皮20の後端部22をボトムプレート1の後端部5に着脱可能に取り付ける固定部材22aが設けられている。
【0039】
また、図9及び図10に示すように、右側表皮20の内側部23に設けられた線ファスナー23aは、該線ファスナー23a及び中央表皮10の右側部13の線ファスナー13aを閉鎖するための係合部材23bを備えている。
【0040】
(左側表皮30)
左側表皮30は、シート幅方向において、中央表皮10の左側(第2側部)に配置されており、前端部31と後端部32との間において、シート前後方向に延在している。図4及び図5に示すように、左側表皮30のシート幅方向における内側に配置される内側部33には、線ファスナー33aが設けられている。また、左側表皮30のシート幅方向における外側に配置される外側部34は、ホック等の着脱可能な固定部材又はステイプル等によってボトムプレート1の左側部7に着脱可能に固定されている。
【0041】
図9乃至図11に示すように、左側表皮30のシート前後方向における前方の前端部31には、左側表皮30の前端部31をボトムプレート1の前端部4に着脱可能に取り付ける固定部材31aが設けられている。同様に、図9及び図12に示すように、左側表皮30のシート前後方向における後方の後端部32には、左側表皮30の後端部32をボトムプレート1の後端部5に着脱可能に取り付ける固定部材32aが設けられている。
【0042】
(表皮Tの取り付け態様について)
図4及び図5に示すように、表皮Tは、シート幅方向において、中央表皮10の右側に右側表皮20が配置され、中央表皮10の左側に左側表皮30が配置された状態で、中央表皮10の右側部13の線ファスナー13aが右側表皮20の内側部23の線ファスナー23aと係合し、中央表皮10の左側部14の線ファスナー14aが左側表皮30の内側部33の線ファスナー33aと係合している。
【0043】
このとき、中央表皮10の右側部13の線ファスナー13a及び右側表皮20の内側部23の線ファスナー23aは、シート前後方向における後端部12,22から前端部11、21に向かって係合部材23bスライドさせることで閉鎖される。同様に、中央表皮10の左側部14の線ファスナー14a及び左側表皮30の内側部33の線ファスナー33aは、シート前後方向における後端部12,32から前端部11、31に向かって係合部材14bスライドさせることで閉鎖される。このような構成によれば、幅の狭い後端部12,22から、幅の広い前端部11,21に向かって線ファスナーが閉鎖するように係合させるため、作業を容易に行うことが可能である。
【0044】
そして、中央表皮10、右側表皮20、左側表皮30が係合した状態で、図9乃至図12に示すように、中央表皮10の前端部11に設けられた固定部材11a、右側表皮20の前端部21に設けられた固定部材21a、左側表皮30の前端部31に設けられた固定部材31aが、ボトムプレート1の前端部4に設けられた被固定部材4aに着脱可能に取り付けられている。
【0045】
同様に、中央表皮10、右側表皮20、左側表皮30が係合した状態で、図9及び図12に示すように、中央表皮10の後端部12に設けられた固定部材12a、右側表皮20の後端部22に設けられた固定部材22a、左側表皮30の後端部32に設けられた固定部材32aが、ボトムプレート1の後端部5に設けられた不図示の被固定部材に着脱可能に取り付けられている。
【0046】
図9及び図10に示すように、表皮Tがボトムプレート1に対して取り付けられた状態において、線ファスナーの係合部材14b,23bが、ボトムプレート1の下面3、すなわち自動二輪車用シートSの裏面に隠れるように配置される。このような構成によれば、自動二輪車用シートSを自動二輪車Bに取り付けた状態において、線ファスナーの係合部材14b,23bが視認不可能となるため意匠性が向上するため好適である。
【0047】
以上のように構成された本実施形態の自動二輪車用シートSでは、中央表皮10を着せ替えることで、表皮Tの中央部の意匠を容易に変更することが可能である。また、中央表皮10のシート前後方向の前端部11及び後端部12に設けられた固定部材11a,12aをボトムプレート1に対して着脱することで、表皮Tの中央部の意匠を容易に変更することが可能である。
【0048】
また、本実施形態の自動二輪車用シートSでは、図2及び図4に示すように、線ファスナー13a,14a,23a,33aは、シート幅方向における着座面の中央付近の平滑面に配置されている。このような構成によれば、表皮Tにシワが発生することを抑制しつつ、表皮Tに掛かる応力を分散させて、バランス良く表皮Tをボトムプレート1に固定することが可能である。
【0049】
また、本実施形態の自動二輪車用シートSでは、図9乃至図12に示すように、線ファスナー13a,14a,23a,33aのシート前後方向における両端部が、ボトムプレート1の裏面に相当する下面3に配置されている。このような構成によれば、線ファスナーのシート前後方向における両端部が乗員の着座位置と干渉しない位置に設けられるため、自動二輪車用シートSに乗員が乗り降りする際に妨げとならない。
【0050】
また、本実施形態の自動二輪車用シートSでは、図9乃至図12に示すように、右側表皮20及び左側表皮30のシートの前後方向における両端部には、右側表皮20及び左側表皮30をボトムプレート1に対して着脱可能に取り付ける固定部材21a,22a,31a,32aが設けられている。このような構成によれば、右側表皮20及び左側表皮30にシワが発生することを抑制しつつ、右側表皮20及び左側表皮30に掛かる応力を分散させて、バランス良く右側表皮20及び左側表皮30をボトムプレート1に固定することが可能となる。また、中央表皮10又は表皮Tの全体がボトムプレート1に対して着脱可能となるため、中央表皮10又は表皮Tを着せ替えることで、表皮Tの意匠を容易に変更することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の自動二輪車用シートSでは、中央表皮10の前端部11の固定部材11a及び後端部12の固定部材12aは、シート幅方向において線ファスナー13a及び線ファスナー14aの間に配置されている。このような構成によれば、中央表皮10をボトムプレート1、右側表皮20及び左側表皮30に対してバランスよく取付けることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の自動二輪車用シートSでは、図6及び図7に示すように、中央表皮10の左側部14の線ファスナー14aにのみ、線ファスナーを閉鎖するための係合部材14bを備えている。このような構成によれば、中央表皮10を右側表皮20及び左側表皮30に対してバランスよく取付けることが可能となるとともに、表皮Tを組み立てる際の誤組みが防止される。
【0053】
また、本実施形態の自動二輪車用シートSでは、表皮Tがボトムプレート1に対して取り付けられた状態において、線ファスナーを係合させて閉鎖する係合部材14b,23bが乗員の着座位置(尻下)を避けた位置に配置される。このような構成によれば、乗員が自動二輪車用シートSに着座した時に、乗員の尻にファスナー係合部材14b,23bが当たらないため、乗員に違和感を与えることがない。さらに、図2乃至図5に示すように、線ファスナー13a,14a,23a,33aも乗員の着座位置(尻下)を避けた位置に配置されると、乗員の尻に線ファスナーが当たらないため、乗員に違和感を与えることが抑制される。
【0054】
<変形例>
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態では、図11に示すように、ボトムプレート1の前端部4に設けられた被固定部材4aが、ボトムプレート1とは別体の部品であったが、被固定部材をボトムプレート1と一体成形することも可能である。
【0055】
また、上記の実施形態では、線ファスナー13a,14a,23a,33aの色について述べてはいなかったが、線ファスナーを中央表皮10や、右側表皮20及び左側表皮30とは異なる色とすることも可能である。線ファスナーの色が周囲とは異なる配色である場合、アクセントラインとなり商品の意匠性が向上するとともに、線ファスナーの識別が容易となるため表皮Tの着脱時の作業性が向上する。
【0056】
また、上記の実施形態では、固定部材及び被固定部材として、ホックを用いた例を示したが、着脱可能な固定部材及び被固定部材であれば、ホック以外の構成を採用することも可能である。例えば、面ファスナーやバックル、フック部材等を用いることも可能である。
【0057】
また、上記の実施形態では、表皮Tが取り付けられるベース部材として、ボトムプレート1を例示したが、表皮が取り付けられるベース部材としては、乗物用シートを構成する他の部材であってもよい。例えば、ベース部材は、乗物用シートのシートフレーム、具体的には、シートクッションフレーム(着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションの骨格となるフレーム)やシートバックフレーム(着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックの骨格となるフレーム)などのシートフレームであってもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、中央表皮10の前端部11が波形状に形成されており、複数の固定部材11aが、波形状の前端部11の突出した部分に配置されていたが、中央表皮10の後端部12を波形状に形成し、複数の固定部材12aが、波形状の後端部12の突出した部分に配置されていてもよい。つまり、中央表皮10の前端部11及び後端部12の少なくとも一方に、複数の第1固定部材(固定部材11a,12a)がシート幅方向において放射状に配置されているとよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、中央表皮10が、シート前後方向において、前方から後方に向かうにつれて幅狭となるように形成されていたが、中央表皮10がシート前後方向において、後方から前方に向かうにつれて幅狭となるように形成されていてもよい。つまり、中央表皮10は、シート前後方向において一方の端部から他方の端部に向かうにつれて幅狭となるように形成されているとよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、中央表皮10の前端部11のシート幅方向における中央部分11bが、縫製によって取り付けられて形成されていたが、中央表皮10の後端部12のシート幅方向における中央部分が、縫製によって取り付けられて形成されていてもよい。つまり、中央表皮10の前端部11及び後端部12の少なくとも一方は、シート幅方向における中央部分が、縫製によって取り付けられて形成されているとよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、線ファスナー13a,14aが、中央表皮10の前端部11においてU字状に折り返されていたが、線ファスナー13a,14aも同様に、中央表皮10の前端部11においてU字状に折り返されていてもよい。つまり、線ファスナー13a,14aは、中央表皮10の前端部11及び後端部12の少なくとも一方においてU字状に折り返されているとよい。
【0062】
以上、本実施形態に係る乗物用シートを、主として二輪車に用いられる車両用シートを例に説明した。本実施形態に係る乗物用シートは、二輪車用の車両用シートに限定されるものではなく、例えば、スノーモービル、水上バイク、三輪バギー車、建機シート、四輪車用の車両用シート、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シート、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
B 自動二輪車
S 自動二輪車用シート(乗物用シート)
C クッション部材
T 表皮
1 ボトムプレート(ベース部材)
2 上面
3 下面
4 前端部
4a 被固定部材
5 後端部
6 右側部
7 左側部
10 中央表皮
11 前端部
11a 固定部材(第1固定部材)
11b 中央部分
12 後端部
12a 固定部材(第1固定部材)
13 右側部(第1側部)
13a 線ファスナー
14 左側部(第2側部)
14a 線ファスナー
14b 係合部材
20 右側表皮(第1表皮)
21 前端部
21a 固定部材(第2固定部材)
22 後端部
22a 固定部材(第2固定部材)
23 内側部
23a 線ファスナー
23b 係合部材
24 外側部
30 左側表皮(第2表皮)
31 前端部
31a 固定部材(第2固定部材)
32 後端部
32a 固定部材(第2固定部材)
33 内側部
33a 線ファスナー
34 外側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12