(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25B 9/14 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
F25B9/14 520A
(21)【出願番号】P 2019068206
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】豊田 治
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-206353(JP,A)
【文献】特開平07-019639(JP,A)
【文献】特開2007-270718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に往復動可能に設けられた第1ディスプレーサ又は第1ピストンと、前記第1シリンダよりも低温の第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第1ディスプレーサ又は前記第1ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ピストンと、を含み、前記第1シリンダが前記第2シリンダの前記第2ピストンで区分けされる2つの空間のうちの一方の空間に連通したスターリングエンジンと、
前記第2シリンダと、前記第2ピストンと、前記第2シリンダの前記2つの空間のうちの他方の空間に連通した第3シリンダと、前記第3シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第2ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ディスプレーサ又は第3ピストンと、を含むスターリングクーラーと、を備え
、
前記スターリングエンジンは、前記第1ディスプレーサ又は前記第1ピストンに一端が接続された第1連結部材と、前記第1連結部材の他端に接続された第1クランクシャフトと、前記第2ピストンに一端が接続された第2連結部材と、前記第2連結部材の他端に接続された第2クランクシャフトと、前記第1クランクシャフトと前記第2クランクシャフトが接続した第1フライホイールと、を含む第1機構系を備え、
前記スターリングクーラーは、前記第2ピストンに一端が接続された第3連結部材と、前記第3連結部材の他端に接続された第3クランクシャフトと、前記第2ディスプレーサ又は前記第3ピストンに一端が接続された第4連結部材と、前記第4連結部材の他端に接続された第4クランクシャフトと、前記第3クランクシャフトと前記第4クランクシャフトが接続した第2フライホイールと、を含む第2機構系を備え、
前記第1機構系は、前記第1シリンダと前記第2シリンダの前記一方の空間に封入された作動気体と同じ作動気体が気密に封入された第1機構室内に配置され、
前記第2機構系は、前記第2シリンダの前記他方の空間と前記第3シリンダに封入された作動気体と同じ作動気体が気密に封入された第2機構室内に配置されている、冷却装置。
【請求項2】
前記第1機構室内に気密に封入された前記作動気体の圧力と前記第1シリンダと前記第2シリンダの前記一方の空間に封入された前記作動気体の圧力とは同じであり、
前記第2機構室内に気密に封入された前記作動気体の圧力と前記第2シリンダの前記他方の空間と前記第3シリンダに封入された前記作動気体の圧力とは同じである、請求項
1記載の冷却装置。
【請求項3】
前記スターリングエンジンと前記スターリングクーラーが動作する際に、前記第1フライホイールと前記第2フライホイールは反対方向に回転する、請求項
1または
2記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1シリンダと前記第2シリンダと前記第3シリンダは、前記第1ディスプレーサ又は前記第1ピストンと前記第2ピストンと前記第2ディスプレーサ又は前記第3ピストンが往復動する方向で直線上に並んで配置され、
前記第1機構室は、前記第1シリンダと前記第2シリンダの間に設けられ、前記第1シリンダと前記第2シリンダの前記一方の空間を連通させる第1連通管と前記第1及び第2シリンダに接合された接合部材とによって気密封止され、
前記第2機構室は、前記第2シリンダと前記第3シリンダの間に設けられ、前記第2シリンダの前記他方の空間と前記第3シリンダを連通させる第2連通管と前記第2及び第3シリンダに接合された接合部材とによって気密封止されている、請求項
1から
3のいずれか一項記載の冷却装置。
【請求項5】
第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に往復動可能に設けられた第1ディスプレーサ又は第1ピストンと、前記第1シリンダよりも低温の第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第1ディスプレーサ又は前記第1ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ピストンと、を含み、前記第1シリンダが前記第2シリンダの前記第2ピストンで区分けされる2つの空間のうちの一方の空間に連通したスターリングエンジンと、
前記第2シリンダと、前記第2ピストンと、前記第2シリンダの前記2つの空間のうちの他方の空間に連通した第3シリンダと、前記第3シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第2ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ディスプレーサ又は第3ピストンと、を含むスターリングクーラーと、
前記第1シリンダを加熱する加熱部と、
前記第2シリンダを冷却する冷却部と、を備え
る冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スターリング機構をモーターで強制的に駆動させることで低温部を形成するスターリングクーラーが知られている(例えば、特許文献1から3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-017867号公報
【文献】特開平6-159835号公報
【文献】特開2017-058050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スターリング機構をモーターで強制的に駆動させることで低温部を形成する場合、モーターの回転磁界によって冷却対象物に磁場の影響を与えることがある。冷却対象物が例えば超伝導量子干渉計のような磁気センサでは、モーターの回転磁界による磁場の影響によって検出精度の低下が生じてしまう。
【0005】
1つの側面では、磁場が発生し難い冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に往復動可能に設けられた第1ディスプレーサ又は第1ピストンと、前記第1シリンダよりも低温の第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第1ディスプレーサ又は前記第1ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ピストンと、を含み、前記第1シリンダが前記第2シリンダの前記第2ピストンで区分けされる2つの空間のうちの一方の空間に連通したスターリングエンジンと、前記第2シリンダと、前記第2ピストンと、前記第2シリンダの前記2つの空間のうちの他方の空間に連通した第3シリンダと、前記第3シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第2ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ディスプレーサ又は第3ピストンと、を含むスターリングクーラーと、を備え、前記スターリングエンジンは、前記第1ディスプレーサ又は前記第1ピストンに一端が接続された第1連結部材と、前記第1連結部材の他端に接続された第1クランクシャフトと、前記第2ピストンに一端が接続された第2連結部材と、前記第2連結部材の他端に接続された第2クランクシャフトと、前記第1クランクシャフトと前記第2クランクシャフトが接続した第1フライホイールと、を含む第1機構系を備え、前記スターリングクーラーは、前記第2ピストンに一端が接続された第3連結部材と、前記第3連結部材の他端に接続された第3クランクシャフトと、前記第2ディスプレーサ又は前記第3ピストンに一端が接続された第4連結部材と、前記第4連結部材の他端に接続された第4クランクシャフトと、前記第3クランクシャフトと前記第4クランクシャフトが接続した第2フライホイールと、を含む第2機構系を備え、前記第1機構系は、前記第1シリンダと前記第2シリンダの前記一方の空間に封入された作動気体と同じ作動気体が気密に封入された第1機構室内に配置され、前記第2機構系は、前記第2シリンダの前記他方の空間と前記第3シリンダに封入された作動気体と同じ作動気体が気密に封入された第2機構室内に配置されている、冷却装置である。また、第1シリンダと、前記第1シリンダの内部に往復動可能に設けられた第1ディスプレーサ又は第1ピストンと、前記第1シリンダよりも低温の第2シリンダと、前記第2シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第1ディスプレーサ又は前記第1ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ピストンと、を含み、前記第1シリンダが前記第2シリンダの前記第2ピストンで区分けされる2つの空間のうちの一方の空間に連通したスターリングエンジンと、前記第2シリンダと、前記第2ピストンと、前記第2シリンダの前記2つの空間のうちの他方の空間に連通した第3シリンダと、前記第3シリンダの内部に往復動可能に設けられ、前記第2ピストンに所定の位相だけ遅れて連動する第2ディスプレーサ又は第3ピストンと、を含むスターリングクーラーと、前記第1シリンダを加熱する加熱部と、前記第2シリンダを冷却する冷却部と、を備える冷却装置である。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面として、磁場が発生し難い冷却装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1に係る冷却装置を示す図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、実施例1に係る冷却装置の動作を説明する図(その1)である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、実施例1に係る冷却装置の動作を説明する図(その2)である。
【
図4】
図4は、実施例2に係る冷却装置を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)から
図5(d)は、実施例2に係る冷却装置の動作と第1作動気体及び第2作動気体の流動とを説明する図である。
【
図6】
図6は、第1作動気体及び第2作動気体の温度変化を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施例3に係る冷却装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1に係る冷却装置100を示す図である。
図1のように、冷却装置100は、スターリングエンジン1とスターリングクーラー2を備える。
【0011】
スターリングエンジン1は、第1シリンダ11と、第1シリンダ11内を往復動するディスプレーサ12と、第2シリンダ21と、第2シリンダ21内を往復動するパワーピストン22と、を有する。ディスプレーサ12は第1シリンダ11との間に隙間を有し、作動気体はこの隙間を通って流動が可能となっている。パワーピストン22は第2シリンダ21との間に隙間をほとんど有さず、作動気体は第2シリンダ21とパワーピストン22との間を流動することが難しくなっている。
【0012】
ディスプレーサ12は連結部材(コネクティングロッド)13によってクランクシャフト40に連結し、パワーピストン22は連結部材(コネクティングロッド)23によってクランクシャフト40に連結している。クランクシャフト40にはフライホイール41が取り付けられている。クランクシャフト40は、円盤形状のフライホイール41の中心に接続されている。パワーピストン22は、ディスプレーサ12よりも位相が90°遅れて往復動するように、ディスプレーサ12が接続するクランクピン42aよりも90°遅れて回転するクランクピン42bに連結されている。
【0013】
第1シリンダ11と第2シリンダ21は、連通管43により連通している。連通管43の一端は第1シリンダ11の一方の端部に接続され、他端は第2シリンダ21のパワーピストン22で区分けされる2つの空間のうちの一方の第1空間24に接続されている。第1シリンダ11内及び第2シリンダ21の第1空間24内には作動気体が封入されている。
【0014】
第1シリンダ11の他方の端部に、第1シリンダ11を加熱する加熱部44が取り付けられている。第2シリンダ21には、第2シリンダ21を冷却する冷却部45が取り付けられている。これにより、第2シリンダ21は第1シリンダ11よりも低温になっている。
【0015】
スターリングクーラー2は、第2シリンダ21と、第2シリンダ21内を往復動するパワーピストン22と、第3シリンダ31と、第3シリンダ31内を往復動するディスプレーサ32と、を有する。ディスプレーサ32は第3シリンダ31との間に隙間を有し、作動気体はこの隙間を通って流動が可能となっている。
【0016】
ディスプレーサ32は連結部材(コネクティングロッド)33によってクランクシャフト40に連結している。ディスプレーサ32は、パワーピストン22よりも位相が90°遅れて往復動するように、パワーピストン22が接続するクランクピン42bよりも90°遅れて回転するクランクピン42cに連結されている。
【0017】
第2シリンダ21と第3シリンダ31は、連通管46により連通している。連通管46の一端は第2シリンダ21のパワーピストン22で区分けされる2つの空間のうちの他方の第2空間25に接続され、他端は第3シリンダ31の端部に接続されている。第3シリンダ31内及び第2シリンダ21の第2空間25内には作動気体が封入されている。第3シリンダ31の体積は、例えば第1シリンダ11の体積と同じになっている。
【0018】
第3シリンダ31の表面に冷却対象物47が取り付けられる。冷却対象物47は、第3シリンダ31の表面に直接接して取り付けられてもよいし、冷却仲介部48を介して第3シリンダ31の表面に取り付けられてもよい。冷却仲介部48は、例えば液体窒素が封入された筐体であってもよい。
【0019】
ここで、冷却装置100の動作について説明する。
図2(a)から
図3(b)は、実施例1に係る冷却装置100の動作を説明する図である。スターリングエンジン1は、加熱、膨張、冷却、圧縮を繰り返し行い、スターリングクーラー2は、予冷、膨張、昇温、圧縮を繰り返し行う。
【0020】
図2(a)から
図2(b)に変化する工程は、スターリングエンジン1における加熱工程であり、スターリングクーラー2における予冷工程である。ディスプレーサ12は上死点(クランク角0°)の位置から下降する。パワーピストン22はディスプレーサ12よりも90°位相が遅れた位置(クランク角270°)から上昇し、ディスプレーサ32はパワーピストン22よりも90°位相が遅れた位置(下死点:クランク角180°)から上昇する。ディスプレーサ12が下降し、パワーピストン22が上昇することで、第2シリンダ21の第1空間24内の作動気体が第1シリンダ11に流入する。第1シリンダ11内の作動気体は、加熱部44により加熱されて温度が上昇し、膨張する。これにより、第1シリンダ11内及び第2シリンダ21の第1空間24内の圧力が上昇する。また、パワーピストン22とディスプレーサ32が上昇することで、第3シリンダ31内の作動気体が第2シリンダ21の第2空間25に流入する。
【0021】
図2(b)から
図3(a)に変化する工程は、スターリングエンジン1及びスターリングクーラー2の膨張工程である。第1シリンダ11内及び第2シリンダ21の第1空間24内の圧力が上昇することで、パワーピストン22が押し下げられる。ディスプレーサ12は下死点まで下降し、パワーピストン22はクランク角90°まで下降する。このときにスターリングエンジン1は駆動力を得る。パワーピストン22が押し下げられることで、クランクシャフト40は回転方向に90°回転し、ディスプレーサ32は上死点まで上昇する。このときに第3シリンダ31内の作動気体は最大体積に膨張して温度が低下する。このとき、第3シリンダ31の温度が冷却装置100で実現される最も低い温度となる。
【0022】
図3(a)から
図3(b)に変化する工程は、スターリングエンジン1の冷却工程であり、スターリングクーラー2の昇温工程である。フライホイール41に蓄えられたエネルギーを利用してクランクシャフト40が回転する。これにより、ディスプレーサ12は下死点の位置から上昇し、パワーピストン22はディスプレーサ12から90°遅れた位置(クランク角90°)から下降する。ディスプレーサ32は上死点の位置から下降する。パワーピストン22が下降することで、作動気体は第1シリンダ11から第2シリンダ21の第1空間24に流入して冷却され、第1シリンダ11内及び第2シリンダ21の第1空間24内の圧力が低下する。パワーピストン22及びディスプレーサ32が下降することで、第3シリンダ31内の作動気体は圧力が上昇して温度が上昇する。
【0023】
図3(b)から
図2(a)に変化する工程は、スターリングエンジン1及びスターリングクーラー2の圧縮工程である。第1シリンダ11及び第2シリンダ21の第1空間24内の圧力が低下することで、パワーピストン22が引き上げられる。パワーピストン22が引き上げられることでクランクシャフト40が回転方向に90°回転し、ディスプレーサ12は上死点の位置まで上昇し、パワーピストン22はクランク角270°の位置まで上昇し、ディスプレーサ32は下死点まで下降する。このときに、第3シリンダ31内の作動気体は最小体積に圧縮されて圧縮熱が発生する。
【0024】
実施例1によれば、冷却装置100は、スターリングエンジン1とスターリングクーラー2を備える。スターリングエンジン1は、第1シリンダ11と、第1シリンダ11の内部に往復動可能に設けられたディスプレーサ12と、第1シリンダ11よりも低温の第2シリンダ21と、第2シリンダ21の内部に往復動可能に設けられたパワーピストン22と、を含む。パワーピストン22はディスプレーサ12よりも位相が90°遅れて連動する。第1シリンダ11は第2シリンダ21がパワーピストン22で区分けされる2つの空間のうちの一方の第1空間24に連通している。スターリングクーラー2は、第2シリンダ21と、パワーピストン22と、第2シリンダ21の2つの空間のうちの他方の第2空間25に連通した第3シリンダ31と、第3シリンダ31の内部に往復動可能に設けられたディスプレーサ32と、を含む。ディスプレーサ32はパワーピストン22よりも位相が90°遅れて連動する。これにより、スターリングエンジン1から得られる駆動力によってスターリングクーラー2を駆動させることができる。スターリングエンジン1は、モーターよりも磁場が発生し難い。したがって、スターリングエンジン1を用いてスターリングクーラー2を駆動させることで、磁場が発生し難い冷却装置100を得ることができる。また、例えば内燃機関を用いてスターリングクーラー2を駆動させる場合では、内燃機関は爆発工程によって振動が発生することから、冷却対象物47が振動の影響を受けることになる。冷却対象物47がセンサの場合、振動の影響を受けることで検出精度の低下が生じてしまう。一方、スターリングエンジン1は外燃機関であり振動が小さい。このため、スターリングエンジン1を用いてスターリングクーラー2を駆動させることで、冷却対象物47への振動の影響も抑えることができる。
【実施例2】
【0025】
図4は、実施例2に係る冷却装置200を示す断面図である。
図4のように、冷却装置200では、スターリングエンジン1とスターリングクーラー2が一直線上に並んで配置されている。すなわち、第1シリンダ11と第2シリンダ21は、ディスプレーサ12とパワーピストン22が一直線上で往復動するように並んで配置されている。第2シリンダ21と第3シリンダ31は、パワーピストン22とディスプレーサ32が一直線上で往復動するように並んで配置されている。例えば、ディスプレーサ12の中心軸とパワーピストン22の中心軸とディスプレーサ32の中心軸とは一致している。
【0026】
第1シリンダ11、連通管43、及び第2シリンダ21の第1空間24内には第1作動気体が流動可能に封入されている。第1作動気体は、例えばヘリウムガスであるが、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガスなどの希ガス、又は空気などのその他のガスでもよい。第2シリンダ21の第2空間25、連通管46、及び第3シリンダ31内には第2作動気体が流動可能に封入されている。第2作動気体は、例えばヘリウムガスであるが、窒素ガス、水素ガス、アルゴンガスなどの希ガス、又は空気などのその他のガスでもよい。第1作動気体と第2作動気体は、異なる種類の気体であってもよいが、同じ種類の気体であることが好ましい。
【0027】
パワーピストン22はディスプレーサ12よりも位相が90°遅れて往復動するが、これは機構系60によって実現されている。機構系60は、連結部材13、23aとクランクシャフト40a、40bとフライホイール41aを含む。連結部材13の一端はディスプレーサ12に接続され、他端はクランクシャフト40aの一端に接続されている。クランクシャフト40aの他端はフライホイール41aに接続されている。連結部材13は、第1シリンダ11の壁部を貫通して、ディスプレーサ12とクランクシャフト40aに接続されている。クランクシャフト40aと連結部材13はピンジョイント64で角度自在に結合されている。連結部材23aの一端はパワーピストン22に接続され、他端はクランクシャフト40bの一端に接続されている。クランクシャフト40bの他端はフライホイール41aに接続されている。連結部材23aは、第2シリンダ21の壁部を貫通して、パワーピストン22とクランクシャフト40bに接続されている。クランクシャフト40bと連結部材23aはピンジョイント64で角度自在に結合されている。クランクシャフト40bは、クランクシャフト40aがフライホイール41aに接続する箇所よりもフライホイール41aの回転方向とは反対方向に90°ずれて接続されている。これにより、パワーピストン22はディスプレーサ12よりも位相が90°遅れて往復動するようになる。
【0028】
連通管43は、第1シリンダ11と第2シリンダ21の間に機構系60を配置することが可能となるように、第1シリンダ11と第2シリンダ21よりも外側を延在している。第1シリンダ11と第2シリンダ21の間に形成された空間は、機構系60が配置された機構室62となる。機構室62は、連通管43と、第1シリンダ11及び第2シリンダ21に接合された接合部材65と、により気密封止されている。接合部材65は、機構室62の気密性を良好にするために金属部材であることが好ましいが、その他の部材であってもよい。
【0029】
機構室62内には、第1シリンダ11、連通管43、及び第2シリンダ21の第1空間24内に封入された第1作動気体と同じ第1作動気体が気密に封入されている。第1作動気体が封入された機構室62内の圧力と、第1作動気体が封入された第1シリンダ11、連通管43、及び第2シリンダ21の第1空間24内の圧力と、は同じである場合が好ましい。なお、同じとは、完全に同じ圧力である場合に限られず、機構室62内の圧力と第1シリンダ11、連通管43、及び第2シリンダ21の第1空間24内の圧力との差が±10%以下の場合であればよい。
【0030】
ディスプレーサ32はパワーピストン22よりも位相が90°遅れて往復動するが、これは機構系61によって実現されている。機構系61は、連結部材23b、33とクランクシャフト40c、40dとフライホイール41bを含む。連結部材23bの一端はパワーピストン22に接続され、他端はクランクシャフト40cの一端に接続されている。クランクシャフト40cの他端はフライホイール41bに接続されている。連結部材23bは、第2シリンダ21の壁部を貫通して、パワーピストン22とクランクシャフト40cに接続されている。クランクシャフト40cと連結部材23bはピンジョイント64で角度自在に結合されている。連結部材33の一端はディスプレーサ32に接続され、他端はクランクシャフト40dの一端に接続されている。クランクシャフト40dの他端はフライホイール41bに接続されている。連結部材33は、第3シリンダ31の壁部を貫通して、ディスプレーサ32とクランクシャフト40dに接続されている。クランクシャフト40dと連結部材33はピンジョイント64で角度自在に結合されている。クランクシャフト40dは、クランクシャフト40cがフライホイール41bに接続する箇所よりもフライホイール41bの回転方向とは反対方向に90°ずれて接続されている。これにより、ディスプレーサ32はパワーピストン22よりも位相が90°遅れて往復動するようになる。
【0031】
連通管46は、第2シリンダ21と第3シリンダ31の間に機構系61を配置することが可能となるように、第2シリンダ21と第3シリンダ31よりも外側を延在している。第2シリンダ21と第3シリンダ31の間に形成された空間は、機構系61が配置された機構室63となる。機構室63は、連通管46と、第2シリンダ21及び第3シリンダ31に接合された接合部材65と、により気密封止されている。なお、
図4では、第1シリンダ11と第2シリンダ21と第3シリンダ31に1つの接合部材65が接合されて、機構室62、63が気密封止されている場合を例に示しているが、この場合に限られない。第1シリンダ11と第2シリンダ21に接合されて機構室62を気密封止する接合部材と、第2シリンダ21と第3シリンダ31に接合されて機構室63を気密封止する接合部材とが、分離された別々の接合部材であってもよい。
【0032】
機構室63内には、第2シリンダ21の第2空間25、連通管46、及び第3シリンダ31内に封入された第2作動気体と同じ第2作動気体が気密に封入されている。第2作動気体が封入された機構室63内の圧力と、第2作動気体が封入された第2シリンダ21の第2空間25、連通管46、及び第3シリンダ31内の圧力と、は同じである場合が好ましい。なお、同じとは、完全に同じ圧力である場合に限られず、機構室63内の圧力と第2シリンダ21の第2空間25、連通管46、及び第3シリンダ31内の圧力との差が±10%以下の場合であればよい。
【0033】
加熱部44は、例えば第1シリンダ11の側壁のうちの機構室62とは反対側の側壁に取り付けられている。加熱部44は、例えば電熱ヒータであるが、温水又は廃熱などの熱源を用いた場合など、その他の場合でもよい。冷却部45は、例えば第2シリンダ21に対応する位置で接合部材65の表面に取り付けられているが、第2シリンダ21の表面に直接接して取り付けられていてもよい。冷却部45は、例えば冷却水が循環する配管であるが、放熱フィンなど、その他の場合でもよい。冷却対象物47は、例えば第3シリンダ31の側壁のうちの機構室63とは反対側の側壁に直接接して又は冷却仲介部を介して取り付けられる。
【0034】
ここで、
図5(a)から
図5(d)及び
図6を用いて、冷却装置200の動作による第1作動気体及び第2作動気体の流動と温度変化について説明する。
図5(a)から
図5(d)は、冷却装置200の動作と第1作動気体及び第2作動気体の流動とを説明する図である。なお、
図5(a)から
図5(d)では、第1作動気体及び第2作動気体の流れを太矢印で示している。
図6は、第1作動気体及び第2作動気体の温度変化を説明する図である。
図6の横軸は時間であり、
図5(a)のタイミングをI、
図5(b)のタイミングをII、
図5(c)のタイミングをIII、
図5(d)のタイミングをIVとしている。
図6の縦軸は温度である。
図6では、第1シリンダ11での第1作動気体の温度変化を点線、第2シリンダ21の第1空間24での第1作動気体の温度変化を一点鎖線、第2シリンダ21の第2空間25での第2作動気体の温度変化を破線、第3シリンダ31での第2作動気体の温度変化を実線で示している。なお、
図6は、第1作動気体及び第2作動気体の温度が安定状態まで低下し、スターリングエンジン1及びスターリングクーラー2のエネルギー変換効率が40%程度であるときの第1作動気体及び第2作動気体の温度変化を図示している。
【0035】
図5(a)から
図5(b)への変化は、スターリングエンジン1における加熱工程、スターリングクーラー2における予冷工程である。
図5(b)の状態では、スターリングエンジン1においては、第1シリンダ11で温められた第1作動気体が膨張して第2シリンダ21に流れるとともに、第2シリンダ21では第1作動気体が圧縮されて第1シリンダ11に流れる。このため、
図6のように、IからIIへの変化において、第1シリンダ11では第1作動気体の温度が低下し、第2シリンダ21の第1空間24では第1作動気体の温度が上昇する。スターリングクーラー2においては、第3シリンダ31では膨張によって第2作動気体の温度が低下し、第2シリンダ21では第2空間25の体積が増大するとともに第3シリンダ31から温度が低下した第2作動気体が流れ込む。このため、
図6のように、IからIIへの変化においては、第2シリンダ21の第2空間25及び第3シリンダ31では第2作動気体の温度が低下する。
【0036】
図5(b)から
図5(c)への変化は、スターリングエンジン1及びスターリングクーラー2の膨張工程である。
図5(c)の状態では、スターリングエンジン1においては、第1シリンダ11で温められた第1作動空気が膨張して第2シリンダ21に流れて冷却部45で冷却され、第2シリンダ21で冷やされた第1作動気体は第1シリンダ11に流れる。また、フライホイール41aの回転によって第1シリンダ11及び第2シリンダ21の第1空間24の体積が増大する。このため、
図6のように、IIからIIIへの変化においては、第1シリンダ11及び第2シリンダ21の第1空間24では第1作動気体の温度が低下する。スターリングクーラー2においては、第2シリンダ21から冷却水温程度に温められた第2作動気体が第3シリンダ31に流れるとともに、第2シリンダ21の第2空間25では第2作動気体が圧縮される。第3シリンダ31では膨張による第2作動気体の体積が最大となる。このため、
図6のように、IIからIIIへの変化においては、第2シリンダ21の第2空間25では第2作動気体の温度は上昇し、第3シリンダ31では第2作動気体の温度が最低温度まで低下する。
【0037】
図5(c)から
図5(d)への変化は、スターリングエンジン1の冷却工程であり、スターリングクーラー2の昇温工程である。
図5(d)の状態では、スターリングエンジン1においては、第1シリンダ11から第2シリンダ21に温められた第1作動気体が流れるとともに、第1シリンダ11では第1作動気体に圧縮が生じる。第2シリンダ21の第1空間24ではフライホイール41aの回転によって第1作動気体に強制的に膨張が生じる。このため、
図6のように、IIIからIVへの変化においては、第1シリンダ11では第1作動気体の温度は上昇し、第2シリンダ21の第1空間24では第1作動気体の温度は低下する。スターリングクーラー2において、第2シリンダ21から冷却水温程度に温められた第2作動気体が第3シリンダ31に流れるとともに、第3シリンダ31から低温に冷やされた第2作動気体が第2シリンダ21に流れる。また、第2シリンダ21の第2空間25及び第3シリンダ31では第2作動気体に圧縮が生じる。このため、
図6のように、IIIからIVへの変化においては、第2シリンダ21の第2空間25及び第3シリンダ31では第2作動気体の温度は上昇する。
【0038】
図5(d)から
図5(a)への変化は、スターリングエンジン1及びスターリングクーラー2の圧縮工程である。
図5(a)の状態では、スターリングエンジン1においては、第2シリンダ21から第1シリンダ11に第1作動気体が流れる。また、第1シリンダ11及び第2シリンダ21の第1空間24では第1作動気体に圧縮が生じる。このため、
図6のように、IVからIへの変化においては、第1シリンダ11及び第2シリンダ21の第1空間24では第1作動気体の温度は上昇する。スターリングクーラー2においては、第2シリンダ21から第3シリンダ31に第2作動気体が流れるとともに、第3シリンダ31から第2シリンダ21に第2作動気体が流れる。また、第2シリンダ21の第2空間25ではフライホイール41aの回転によって第2作動気体に強制的に膨張が生じ、第3シリンダ31では第2作動気体に圧縮が生じる。このため、
図6のように、IVからIへの変化においては、第2シリンダ21の第2空間25では第2作動気体の温度が低下し、第3シリンダ31では第2作動気体の温度が上昇する。
【0039】
次に、冷却装置200で得られる冷却温度の例について説明する。例えば、加熱部44の温度が1350℃、冷却部45の温度が20℃であり、スターリングエンジン1及びスターリングクーラー2のエネルギー変換効率が40%である場合を想定する。この場合、スターリングエンジン1では、第1シリンダ11と第2シリンダ21の温度差1350℃-20℃=1330℃とエネルギー変換効率40%とにより算出される532℃に相当する温度差分の運動エネルギーが生じる。したがって、スターリングクーラー2では、エネルギー変換効率が40%であることを考慮すると、(20℃-532℃)×0.4で表される運動エネルギーからの熱変換が生じて-205℃程度の冷却温度が得られる。
【0040】
したがって、冷却装置200で取得したい冷却温度が予め決まっている場合には、この冷却温度が得られるように加熱部44と冷却部45の温度を適切に設定すればよい。すなわち、加熱部44の温度をX、冷却部45の温度をY、スターリングクーラー2で取得したい冷却温度をZとし、スターリングエンジン1のエネルギー変換効率をm%、スターリングクーラー2のエネルギー変換効率をn%とする。この場合に、{Y-((X-Y)×m%)}×n%=Zを満たすようにすればよい。m%、n%はスターリングエンジン1、スターリングクーラー2の性能を示す特定の値であり、Zは冷却装置200で取得したい値であることから、予め決定されている。したがって、加熱部44の温度Xと冷却部45の温度Yを適切な関係になるようにすることで、冷却温度Zが得られる。また、冷却部45が冷却水を循環するような場合では冷却部45の温度Yは決定されているため、加熱部44の温度Xを適切な値にすればよい。
【0041】
実施例2によれば、スターリングエンジン1は機構系60を備える。機構系60は、ディスプレーサ12に一端が接続された連結部材13と、連結部材13の他端に接続されたクランクシャフト40aと、を含む。また、機構系60は、パワーピストン22に一端が接続された連結部材23aと、連結部材23aの他端に接続されたクランクシャフト40bと、クランクシャフト40a、40bが接続したフライホイール41aと、を含む。機構系60は、第1シリンダ11と第2シリンダ21の第1空間24に封入された第1作動気体と同じ第1作動気体が気密に封入された機構室62内に配置されている。このように、スターリングエンジン1の機構系60が、第1作動気体が気密封入された機構室62内に配置されていることで、第1シリンダ11と第2シリンダ21の第1空間24に封入された第1作動気体が冷却装置200の外部へ漏れることを抑制できる。例えば、第1シリンダ11の壁部と連結部材13の間のシール性及び第2シリンダ21の壁部と連結部材23aの間のシール性が劣化した場合でも、第1シリンダ11と第2シリンダ21の第1空間24に封入される第1作動気体の量の減少が抑制される。これにより、スターリングエンジン1の効率の低下を抑制できる。
【0042】
同様に、スターリングクーラー2は機構系61を備える。機構系61は、パワーピストン22に一端が接続された連結部材23bと、連結部材23bの他端に接続されたクランクシャフト40cと、を含む。また、機構系61は、ディスプレーサ32に一端が接続された連結部材33と、連結部材33に他端が接続されたクランクシャフト40dと、クランクシャフト40c、40dが接続したフライホイール41bと、を含む。機構系61は、第2シリンダ21の第2空間25と第3シリンダ31に封入された第2作動気体と同じ第2作動気体が気密に封入された機構室63内に配置されている。このように、スターリングクーラー2の機構系61が、第2作動気体が気密封入された機構室63内に配置されていることで、第2シリンダ21の第2空間25と第3シリンダ31に封入された第2作動気体が冷却装置200の外部へ漏れることを抑制できる。例えば、第2シリンダ21の壁部と連結部材23bの間のシール性及び第3シリンダ31の壁部と連結部材33の間のシール性が劣化した場合でも、第2シリンダ21の第2空間25と第3シリンダ31に封入される第2作動気体の量の減少が抑制される。これにより、スターリングクーラー2の効率の低下を抑制できる。
【0043】
機構室62内に気密封入された第1作動気体の圧力と第1シリンダ11と第2シリンダ21の第1空間24に封入された第1作動気体の圧力とは同じである場合が好ましい。これにより、第1シリンダ11と第2シリンダ21の第1空間24に封入された第1作動気体の漏れを効果的に抑制できる。同様に、機構室63内に気密封入された第2作動気体の圧力と第2シリンダ21の第2空間25と第3シリンダ31に封入された第2作動気体の圧力とは同じである場合が好ましい。これにより、第2シリンダ21の第2空間25と第3シリンダ31に封入された第2作動気体の漏れを効果的に抑制できる。なお、圧力が同じとは、完全に同じ場合に限られず、圧力の差が±10%以下である場合でもよく、±5%以下の場合でもよく、±3%以下の場合でもよい。
【0044】
図4のように、スターリングエンジン1とスターリングクーラー2が動作する際に、フライホイール41aとフライホイール41bは反対方向に回転することが好ましい。これにより、フライホイール41a、41bは互いに回転モーメントを打ち消す方向に回転するため、振動の発生を抑制することができる。
【0045】
図4のように、第1シリンダ11と第2シリンダ21と第3シリンダ31は、ディスプレーサ12とパワーピストン22とディスプレーサ32が往復動する方向で一直線上に並んで配置されていることが好ましい。そして、機構室62は、第1シリンダ11と第2シリンダ21の間に設けられ、連通管43と接合部材65によって気密封止されていることが好ましい。機構室63は、第2シリンダ21と第3シリンダ31の間に設けられ、連通管46と接合部材65によって気密封止されていることが好ましい。これにより、冷却装置200が大型になることを抑制できるとともに、機構室62、63を容易に気密封止することができる。つまり、第1シリンダ11と第2シリンダ21の第1空間24に封入された第1作動気体及び第2シリンダ21の第2空間25と第3シリンダ31に封入された第2作動気体の漏れが抑制される構造を容易に得ることができる。
【0046】
図4のように、第1シリンダ11を加熱する加熱部44と、第2シリンダを冷却する冷却部45と、を備えることが好ましい。これにより、第1シリンダ11と第2シリンダ21の温度差を大きく取ることが可能となり、冷却装置200の第3シリンダ31で実現し得る冷却温度を低くすることができる。
【0047】
冷却装置200で冷却される冷却対象物47は、磁場を検出する磁気センサである場合が好ましい。冷却装置200は磁場が発生し難いことから、磁気センサの検出精度の低下を抑制できる。例えば、冷却対象物47は、極めて弱い磁場を検出する超伝導量子干渉計である場合が好ましい。超伝導量子干渉計は、ニオブ系合金又はイットリウム系合金などの物質を超伝導状態にして用いられるが、これらは臨界磁場が低い。冷却装置200は磁場が発生し難いことから、ニオブ系合金又はイットリウム系合金などの物質が超伝導状態でなくなることを抑制できる。
【0048】
冷却装置200において、連通管43に蓄熱式再生器が設けられていてもよい。蓄熱式再生器は、第1シリンダ11から第2シリンダ21に第1作動気体が流れる際に第1作動気体を冷却するとともにその熱を蓄熱する。また、第2シリンダ21から第1シリンダ11に第1作動気体が流れる際に蓄熱された熱を放熱するとともに自身を冷却する。同様に、連通管46に蓄熱式再生器が設けられていてもよい。
【実施例3】
【0049】
図7は、実施例3に係る冷却装置300を示す断面図である。
図7のように、冷却装置300では、第1シリンダ11内にはディスプレーサ12の代わりにピストン14が設けられ、第3シリンダ31内にはディスプレーサ32の代わりにピストン34が設けられている。連通管43は、ピストン14に対して連結部材13とは反対側で第1シリンダ11に接続されている。連通管46は、ピストン34に対して連結部材33とは反対側で第3シリンダ31に接続されている。その他の構成は、
図4の冷却装置200と同じであるため説明を省略する。
【0050】
実施例2の冷却装置200のように、第1シリンダ11内に往復動可能にディスプレーサ12が設けられていてもよいし、実施例3の冷却装置300のように、第1シリンダ11内に往復動可能にピストン14が設けられていてもよい。同様に、実施例2の冷却装置200のように、第3シリンダ31内に往復動可能にディスプレーサ32が設けられていてもよいし、実施例3の冷却装置300のように、第3シリンダ31内に往復動可能にピストン34が設けられていてもよい。なお、上述したように、ディスプレーサはシリンダとの間に隙間を有し、作動気体はこの隙間を通って流動が可能となっている。ピストンはシリンダとの間に隙間をほとんど有さず、作動気体はシリンダとピストンとの間を流動することが難しくなっている。
【0051】
実施例1及び実施例2では、パワーピストン22は、ディスプレーサ12又はピストン14に位相が90°遅れて往復動する場合を例に示したが、この場合に限られない。例えば、パワーピストン22は、ディスプレーサ12又はピストン14に位相が85°から95°の範囲内で遅れて往復動する場合でもよい。同様に、ディスプレーサ32又はピストン34は、パワーピストン22に位相が90°遅れて往復動する場合に限られず、85°から95°の範囲内で遅れて往復動する場合でもよい。
【0052】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 スターリングエンジン
2 スターリングクーラー
11 第1シリンダ
12 ディスプレーサ
13 連結部材
14 ピストン
21 第2シリンダ
22 パワーピストン
23、23a、23b 連結部材
24 第1空間
25 第2空間
31 第3シリンダ
32 ディスプレーサ
33 連結部材
34 ピストン
40、40a、40b、40c、40d クランクシャフト
41、41a、41b フライホイール
42a、42b、42c クランクピン
43、46 連通管
44 加熱部
45 冷却部
47 冷却対象物
60、61 機構系
62、63 機構室
65 接合部材
100、200、300 冷却装置