(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】棒状化粧料収納容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/00 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
A45D40/00 M
(21)【出願番号】P 2019121805
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2018127219
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(73)【特許権者】
【識別番号】000210573
【氏名又は名称】竹内工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幸司
(72)【発明者】
【氏名】尾上 秀之
(72)【発明者】
【氏名】平川 昌志
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-177409(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00、40/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状化粧料を保持する皿部材が繰り出し機構によって内筒部材の内部を上下方向に移動し、前記棒状化粧料が前記内筒部材から出没自在に収納される棒状化粧料収納容器において、前記皿部材の底部に形成された係合片と、上端部に前記係合片に係合する係合部を有する棒部材と、前記皿部材を上死点付近まで上昇させた際に、前記係合部の寸法を拡大させ前記係合片との係合状態を略解除状態とする係合解除機構を備え
、前記棒部材は、複数個の棒本体で構成されている棒状化粧料収納容器。
【請求項2】
棒状化粧料を保持する皿部材が繰り出し機構によって内筒部材の内部を上下方向に移動し、前記棒状化粧料が前記内筒部材から出没自在に収納される棒状化粧料収納容器において、前記皿部材の底部に形成された係合片と、上端部に前記係合片に係合する係合部を有する棒部材と、前記棒部材に設けられ、前記皿部材の上死点よりも下方の位置で係止状態となり該皿部材の上昇を停止させることができる係止手段と、前記係止手段を乗り越えることにより係止状態を解除できる解除手段と、前記皿部材を前記上死点付近まで上昇させた際に、前記係合部の寸法を拡大させ前記係合片との係合状態を略解除状態とする係合解除機構を備え、
前記棒部材は、複数個の棒本体で構成され、前記係止手段は、前記係合部と前記係合片の係合状態が略解除状態となる位置よりも下方で皿部材の上昇を停止させる棒状化粧料収納容器。
【請求項3】
前記係合解除機構は、前記棒本体の下端部付近に形成された拡径部と、棒本体の下端部に形成されたテーパー部又は凹部と、前記拡径部を押圧する押圧部とで構成され、皿部材を上死点付近まで上昇させた際に、前記拡径部が押圧され、前記棒本体の下端部が互いに接近することにより前記係合部の寸法が拡大することを特徴とする
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【請求項4】
前記棒部材には、被ガイド部が形成され、皿部材を上死点付近まで上昇させた際に、前記被ガイド部と係合するガイド部によって前記係合部の寸法を拡大させることを特徴とする
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【請求項5】
前記棒部材は、上端部付近の外周面にアーム状の結合片が形成された複数個の棒本体を用い、前記複数個の棒本体を組み合わせた際に、結合片が互いの外周面に当接し、結合状態を維持できることを特徴とする
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【請求項6】
前記繰り出し機構は、ネジ部が形成された前記棒部材と、前記ネジ部に螺合するメネジ部が形成された駆動部材とからなることを特徴とする請求項1乃至
請求項5のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【請求項7】
前記繰り出し機構は、内部に螺旋溝を備える螺旋部材と、この螺旋部材の螺旋溝と係合する係合ピンを備え、かつ内部にメネジ部が形成された駆動部材と、前記メネジ部と螺合するネジ部が形成された棒部材とからなることを特徴とする請求項1乃至
請求項6のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【請求項8】
前記繰り出し機構は、内部に螺旋溝を有する螺旋部材と、該螺旋部材の螺旋溝と螺合する螺旋部を外周部に有し、かつ内側にメネジ部を有する駆動部材と、該駆動部材と回転不能に連結され、かつ、前記螺旋部材に回転可能に係止されたハカマ部材と、前記メネジ部と螺合するネジ部が形成された棒部材とからなることを特徴とする請求項1乃至
請求項6のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅等の棒状化粧料を保持する棒状化粧料収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒状化粧料収納容器においては、皿部材に固定されたネジ棒等が、螺旋体や駆動部材と螺合して皿部材が上下移動し、棒状化粧料を出没させるものが知られている。(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている公知発明は、皿部材の下端部にネジ棒等の皿部材を上下移動させる部材が一体的に形成されており、一旦組み立ててしまった後は、棒状化粧料収納容器の全体を分解しなければ皿部材のみを着脱することができなかった。
【0004】
そのため、皿部材に棒状化粧料を充填する際に、充填ミスがあった場合には、皿部材を着脱して再充填することができず、また、棒状化粧料収納容器の全体を分解することは難しく、棒状化粧料収納容器を廃棄処分することとなり、製品ロスが多くなるという問題があった。
【0005】
一方、環境保全の観点では、製品ロスの減少とともに、分別廃棄も必要とされている。通常棒状化粧料及びそれに使用される収納容器は部品が多く、その分材料種も、内容物の他、金属、樹脂、紙等多種であり構造も複雑で、分解が困難であった。特に内容物と容器は分別廃棄が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、組み立て後においても容易に皿部材のみを着脱することができ、分別廃棄も改善された棒状化粧料用収納容器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の棒状化粧料収納容器は、棒状化粧料を保持する皿部材が繰り出し機構によって内筒部材の内部を上下方向に移動し、前記棒状化粧料が前記内筒部材から出没自在に収納される棒状化粧料収納容器において、前記皿部材の底部に形成された係合片と、上端部に前記係合片に係合する係合部を有する棒部材と、皿部材を上死点付近まで上昇させた際に、前記係合部の寸法を拡大させ前記係合片との係合状態を略解除状態とする係合解除機構を備え、前記棒部材は、複数個の棒本体で構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の棒状化粧料収納容器は、棒状化粧料を保持する皿部材が繰り出し機構によって内筒部材の内部を上下方向に移動し、前記棒状化粧料が前記内筒部材から出没自在に収納される棒状化粧料収納容器において、前記皿部材の底部に形成された係合片と、上端部に前記係合片に係合する係合部を有する棒部材と、前記棒部材に設けられ、前記皿部材の上死点よりも下方の位置で係止状態となり前記皿部材の上昇を停止させることができる係止手段と、前記係止手段を乗り越えることにより係止状態を解除できる解除手段と、前記皿部材を前記上死点付近まで上昇させた際に、前記係合部の寸法を拡大させ前記係合片との係合状態を略解除状態とする係合解除機構を備え、前記棒部材は、複数個の棒本体で構成さ、前記係止手段は、前記係合部と前記係合片の係合状態が略解除状態となる位置よりも下方で皿部材の上昇を停止させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の棒状化粧料収納容器の前記係合解除機構は、前記棒本体の下端部付近に形成された拡径部と、棒本体の下端部に形成されたテーパー部と、前記拡径部を押圧する押圧部とで構成され、皿部材を上死点付近まで上昇させた際に、前記拡径部が押圧され、前記テーパー部が当接することにより前記係合部の寸法が拡大することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の棒状化粧料収納容器の棒部材には、被ガイド部が形成され、皿部材を上死点付近まで上昇させた際に、前記被ガイド部と係合するガイド部によって前記係合部の寸法を拡大させることを特徴とする請求項2に記載の棒状化粧料収納容器。
【0012】
請求項5に記載の棒状化粧料収納容器の前記棒部材は、上端部付近の外周面にアーム状の結合片が形成された複数個の棒本体を用い、前記複数個の棒本体を組み合わせた際に、結合片が互いの外周面に当接し、結合状態を維持できることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の棒状化粧料収納容器の前記繰り出し機構は、ネジ部が形成された前記棒部材と、前記ネジ部に螺合するメネジ部が形成された駆動部材とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【0014】
請求項7に記載の棒状化粧料収納容器の前記繰り出し機構は、内部に螺旋溝を備える螺旋部材と、この螺旋部材の螺旋溝と係合する係合ピンを備え、かつ内部にメネジ部が形成された駆動部材と、前記メネジ部と螺合するネジ部が形成された棒部材とからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の棒状化粧料収納容器。
【0015】
請求項8に記載の棒状化粧料収納容器の前記繰り出し機構は、内部に螺旋溝を有する螺旋部材と、該螺旋部材の螺旋溝と螺合する螺旋部を外周部に有し、かつ内側にメネジ部を有する駆動部材と、該駆動部材と回転不能に連結され、かつ、前記螺旋部材に回転可能に係止されたハカマ部材と、前記メネジ部と螺合するネジ部が形成された棒部材とからなることを特徴とする
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、皿部材を上死点付近まで上昇させた際に、棒部材の係合部の内側の寸法が拡大するので、皿部材の係合片の係合状態を解除することができる。
したがって、組み立て後においても皿部材のみを着脱することができる。
(2)組み立て後においても皿部材のみを着脱することができるので、棒状化粧料収納容器全体を分解しなくても皿部材を容易に付け替えることができる。
そのため、たとえば口紅等の棒状化粧料の充填に失敗した場合も、再度棒状化粧料の充填を行うことができ、充填ミスによるロスを少なくすることができる。
(3)棒状化粧料を使い切った場合も、収納容器を分解せずに皿部材を交換するだけで再度新しい棒状化粧料をセットすることができるので、容易に再利用等することができる。
(4)分別廃棄をする場合にも、内容物を簡単に取り出すことができる。更に、容器の分解も内容物が先に取り除かれることで、殆ど手を汚さずに分解することが可能となる。
(5)請求項2に記載された発明も前記(1)~(4)と同様な効果が得られるとともに、係止手段を有しているので、通常使用時に皿部材の係合状態が解除されることがない。
【0017】
したがって、通常使用時に皿部材が脱落することを防止することができる。
(6)請求項3乃至請求項8に記載された各発明も前記(1)~(5)と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1乃至
図6は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7乃至
図9は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図10乃至
図12は本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
図13及び
図14は本発明の第4の実施形態を示す説明図である。
図15乃至
図18は本発明の第5の実施形態を示す説明図である。
【
図1】第1実施形態の棒状化粧料収納容器の縦断面図。
【
図4】皿部材、棒部材及び回転防止部材の分解斜視図。
【
図6】皿部材を上死点まで上昇させた状態の説明図。
【
図7】第2実施形態の棒状化粧料収納容器の縦断面図。
【
図9】皿部材を上死点まで上昇させた状態の説明図。
【
図10】第3実施形態の棒状化粧料収納容器の縦断面図。
【
図11】皿部材を上死点まで上昇させた状態の説明図。
【
図13】第4実施形態の棒状化粧料収納容器の縦断面図。
【
図14】皿部材を上死点まで上昇させた状態の説明図。
【
図15】第5実施形態の棒状化粧料収納容器の縦断面図。
【
図17】皿部材を係止点まで上昇させた状態の説明図。
【
図18】皿部材を上死点まで上昇させた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至
図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は棒状化粧料2を保持する皿部材3が繰り出し機構4によって上下方向に移動し、棒状化粧料2が出没自在に収納される本発明の棒状化粧料収納容器(以下、「収納容器」という)である。
【0020】
この収納容器1は全体として縦長の円筒状であり、例えば
図1に示すように、棒状化粧料2を保持するとともに、その底部3aの略中央部に係合片5を有する所定形状の皿部材3と、該皿部材3の下方に位置し、かつ、皿部材3の係合片5に係合する係合部6を上端部に有するとともに、ネジ部7が形成された棒部材8と、内部に皿部材3を収納するとともに、その上端部が開口された内筒部材9と、前記棒部材8のネジ部7と螺合するとともに、前記内筒部材9と係合する駆動部材10と、該駆動部材10の底面に固定状態でその内底面が取り付けられ、前記内筒部材9の下部を覆うハカマ部材11、該ハカマ部材11の上端部に嵌合するとともに、前記内筒部材9の上部を覆う蓋体12とで構成されている。
【0021】
ここで、本実施形態では収納容器は円筒形であるが、四角柱や六角注等の角柱であっても、流線型や左右非対称の形状であっても構わない。
【0022】
皿部材3は、
図2に示すように、本実施形態では樹脂製でやや短い円筒形状に形成され、内部に棒状化粧料2が収納される。なお、この皿部材3の内側の側壁に、上下方向に延在する線状の回り止めのリブ等(図示せず)を形成してもよい。
【0023】
皿部材3の底面の略中心部には、下方へ摘み状に突出する係合片5が形成されている。この係合片5は、底部3aに連続する小径の基端部と、この基端部にフランジ状に連続する下端大径部とを有している。換言すれば、この係合片5はホースジョイントのような返し部分を有する形状(断面視略台形状)に形成されている。
【0024】
この係合片5には、棒部材8の上端部に一体的に形成された凹所状の係合部6が係合する。この係合部6は、内側が断面リップ溝形鋼のような形状に形成されており、前記返し部分が係合部6に係合すると、係合片5と係合部6の両方は一体的に接続状態となる。
なお、この係合部6の内側側面に、ローレットのような溝を形成してもよい。
【0025】
棒部材8は、本実施形態では、略中央から軸芯方向(縦)に2分割された1対の棒本体13が組み合わされて形成された、全体として略円柱状の部材で、その外周面に軸芯方向(長手方向)にネジ部7が形成されているとともに、その外周面の対向する部位に、軸芯方向に1対の平坦部14が形成されている。すなわち棒部材8の断面形状が、略トラック形状に形成されている。
【0026】
1対の棒本体13の下端部付近は、これらの棒本体13の係合部が上死点付近で離間するようにテーパー部15が形成されており、棒本体13の下端部付近の外周面には、リング状の拡径部16が形成されている。
【0027】
ところで、棒部材8は1対(2本)の棒本体13で構成してもよいし、複数個の棒本体13を組み合わせて構成してもよい。
また、皿部材3の上死点とは、繰り出し機構4により皿部材3を上昇させた際に、皿部材3が最上部に位置する点であり、上死点付近とは、上死点を含み上死点からやや下方の位置までを含むものである。
【0028】
内筒部材9は、本実施形態では金属製で、皿部材3の外周部分を覆うパイプ状の部材である。この内筒部材9は、上部が斜めに切り欠かれた略円筒形状の部材で、その内側面には、前記棒部材8の平坦部14と係合し、棒部材8の回転を防止する回転防止部材17が設けられるとともに、その下端部付近の内側面には、駆動部材10の環状溝10aと係合するリング状の取付部9aが形成されている。
【0029】
回転防止部材17は、内筒部材9の上下方向の略中間部位に設けられており、前記棒部材8の平坦部14に当接するような形状(略トラック形状)の透孔17aを備え、この透孔17aに棒部材8を挿入することにより、透孔17aの壁面と平坦部14が干渉し棒部材8の回転を防止する。
【0030】
この回転防止部材17によって、棒部材8は、内筒部材9に対して回転不能で、かつ、上下移動可能な状態となる。
【0031】
駆動部材10は、外形が段付きで内部が空洞の円筒形状の部材で、その内部の上端部付近に、前記棒部材8のネジ部7と螺合するメネジ部18が形成されている。
前記繰り出し機構4は、本実施形態では、ネジ部7が形成された棒部材8と、該ネジ部7に螺合するメネジ部18が形成された駆動部材10とで構成されている。
また、このメネジ部18付近(駆動部材10の上端部付近)には、下端部付近よりも小径となる押圧部19が形成されている。
【0032】
この押圧部19は、
図6で示すように、皿部材3及び棒部材8を上死点付近まで上昇させた際に、棒部材8の下端部付近に形成された拡径部16に干渉し、拡径部を内側方向に押圧するものである。これにより、棒部材8の棒本体13はそれぞれ、軸芯方向に押圧され、棒本体13の下端部が互いに接近し、テーパー部15が当接する。そうすると、棒部材8の上端部に形成された係合部6の内側の寸法が拡大し、係合部6と係合片5の係合状態が略解除される。
【0033】
すなわち、前記棒本体13の下端部付近に形成された拡径部16と、棒本体13の下端部付近に形成されたテーパー部15と、前記拡径部16を押圧する押圧部19によって、係合解除機構20を構成しており、皿部材3を上死点付近まで上昇させた際に、前記拡径部16が押圧され、前記テーパー部15が当接することにより前記係合部6の内側寸法が拡大する。
【0034】
係合状態が略解除された際に、皿部材3の少なくとも上端部が内筒部材9の上端部から突出していることが望ましい。皿部材3の上端部が内筒部材9の上端部から突出していることにより、手や器具等で皿部材3の上端部付近を把持して容易に皿部材3を交換することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、テーパー部15同士が当接しているが、このテーパー部15や棒本体13の下端部が互いに当接する必要はなく、棒本体13の下端部が接近することで、棒本体13の上端部に形成されている係合部6の内側の寸法が拡大すればよい。
ところで、回転防止部材17の透孔17aは、係合部6の内側寸法が拡大できるように、拡大する方向(
図1における左右方向)に遊びを設けている。
【0036】
ここで「係合状態が略解除される」とは、係合状態が完全に解除されている状態及び、係合片5と係合部6が若干係合しているが、係合片5等が破損することなく容易に皿部材3を引き抜くことができ、かつ、皿部材3の係合片5を係合部6に再度挿入できる程度の状態をいうものである。
【0037】
ハカマ部材11は、本実施形態の説明では、有底の円筒形状に形成されており、駆動部材10の下端部がハカマ部材11内部に固定された状態で取り付けられる。
【0038】
このように取り付けることにより、内筒部材9及びハカマ部材11を手で持って、ハカマ部材11を周方向に回転させることによって、皿部材3に取り付けられた棒部材8のネジ部7とハカマ部材11と同調して動く駆動部材10のメネジ部18が相対的に回転し、棒部材8が上下方向に移動する。この時、棒部材8は、回転防止部材17に挿入された状態になっており、この回転防止部材17と、平坦部14が干渉し、棒部材8が回転することなく上下方向に移動する。
【0039】
また、ハカマ部材11の上端部付近には、蓋体12が取り付けられる蓋体取付部21が形成されている。
【0040】
蓋体12は、外径が略ハカマ部材11と同径に形成された樹脂製の有底の円筒形状の部材で、蓋体取付部21に外嵌合状態で取り付けられる。
【0041】
本願発明の収納容器1を使用する場合、蓋体12を外し、内筒部材9及びハカマ部材11を手で持って、ハカマ部材11を周方向に回転させることにより、皿部材3を上昇させ、皿部材3に充填された棒状化粧料2を内筒部材9から突出させて使用する。本発明においては、棒部材8を上昇させることにより、皿部材3を上死点付近まで上昇させた場合には、皿部材3と棒部材8の係合状態が略解除されるため、一般的な使用方法において使用する場合には、上死点付近まで上昇しない又は、上死点の手前で一旦止まるようなストッパー機能(図示せず)を設けることが望ましい。
【0042】
なお、製造段階等において、皿部材3を交換する場合には、皿部材3を上死点付近まで上昇させて皿部材3の係合片5と棒部材8の係合部6の係合状態を略解除し、皿部材3を交換する。
【0043】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図7乃至
図18に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図7乃至
図9に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、平坦部14にガイド溝22を形成した棒本体13Aを用いて形成した棒部材8Aと、このガイド溝22に挿入されるガイド片23を有する回転防止部材17Aを用い、皿部材3を上死点付近に位置させた時に、ガイド片23及びガイド溝22によって棒部材8Aの上端部の係合部6の寸法を拡大させる係合解除機構20Aを用いた点で、このような収納容器1Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態の収納容器と同様な作用効果が得られる。
【0044】
なお、棒本体8Aにガイド片23を形成し、回転防止部材17Aにガイド溝22を形成した係合解除機構20Aとしてもよい。
【0045】
図10乃至
図12に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、内部に螺旋溝24を備える螺旋部材25と、この螺旋部材25の螺旋溝24と係合する係合ピン26を備え、かつ内部にメネジ部18が形成された駆動部材10Aと、前記メネジ部18と螺合するネジ部7が形成されるとともに、上端部付近の外周面にアーム状の結合片31が形成された複数個の棒本体13Bを用い、前記複数個の棒本体13Bを組み合わせた際に、結合片31が互いの外周面に当接し、結合状態を維持できる棒部材8Bとで構成された繰り出し機構4Aを備えた点で、このような収納容器1Bにしても前記本発明を実施するための第1の形態の収納容器と同様な作用効果が得られる。
【0046】
本実施形態では、回転防止部材17Bは、駆動部材10Aに回転可能に取り付けられており、この回転防止部材17Bの外周部には突起27が設けられている。この突起27は、内筒部材9Aに形成された誘導溝28に挿入され、回転防止部材17Bは内筒部材9Aに対して回転不可能な状態で組み立てられる。
【0047】
螺旋部材25は、内筒部材9Aの下部外周を回転可能に覆うように取り付けられる。
前記棒部材8Bは、
図12に示すように、前記棒本体13Bの上端部に、外方に突出する結合片31が上下方向の位置をずらして1対設けられており、この結合片31同士が他方の棒部材の上端部の外周面に当接し、結合状態を維持する。この結合片31が当接する棒本体13Bの上端部は、内側へ傾斜するような傾斜面となっており、結合片31の内側部位も、この傾斜面に合わせて内側へ傾斜している。このように構成することにより、通常時や組立時においては、棒本体13Bの上端部が結合片31のバネ力(弾性力)により閉じる方向に力が働き結合状態となり、皿部材3が上死点付近まで移動した場合には、この傾斜面に当接している結合片31の弾性力に抗して棒本体13Bの上端部付近が互いに離れる方向に移動し、係合部6の寸法が拡大する。
【0048】
本実施形態の収納容器1Bを使用する場合は、内筒部材9Aとハカマ部材11を持って回転させると、駆動部材10Aの係合ピン26が螺旋溝24にガイドされて、駆動部材10Aが上昇し、駆動部材10Aが上死点まで到達すると、駆動部材10Aがハカマ部材11及び螺旋部材25と同調して回転することで、駆動部材10Aのメネジ部18が棒部材8のネジ部7と噛み合い、皿部材3が上方へ移動し、棒状化粧料2が露出する。
【0049】
図13及び
図14に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、上部に回転防止部材取付部30を備える棒本体13Cで形成した棒部材8Cを用いるとともに、内筒部材9Bの下部に取り付けられ、内部に螺旋溝24Aを有する螺旋部材25Aと、該螺旋部材25Aの螺旋溝24Aと螺合する螺旋部29を外周部に有し、かつ内側に棒部材8Cのネジ部7と螺合するメネジ部18を有する駆動部材10Bと、該駆動部材10Bと回転不能に連結され、かつ、前記螺旋部材25Aに回転可能に係止されたハカマ部材11Aとで構成された繰り出し機構4Bを備えた点で、このような収納容器1Cにしても前記本発明を実施するための第3の形態の収納容器と同様な作用効果が得られる。
【0050】
本実施形態では、内筒部材9Bの内壁に上下方向に延在するように形成された誘導溝28Aに係合し、かつ、回転防止部材取付部30に棒部材8Cに対して回転不能に取り付けられ設けられ、皿部材3及び棒部材8Cに同調して上下方向に移動するとともに、棒部材8Cの回転を防止する回転防止部材17Cを採用している。
【0051】
また、本実施形態では、ハカマ部材11Aと内筒部材9Bを持って回転させることにより、ハカマ部材11Aと回転不能に連結された駆動部材10Bが回転し、この駆動部材10Bの螺旋部29が螺旋部材25Aの螺旋溝24Aと、駆動部材10Bのメネジ部18が棒部材8Cのネジ部7とそれぞれ螺合しているので、二条ネジのような状態となり、少ない回転で棒状化粧料2を大きく上下移動させることができる。
【0052】
図15乃至
図18に示す本発明を実施するための第4の形態において、前記本発明を実施するための第3の形態と主に異なる点は、上死点よりも下方の位置で前記皿部材3の上昇を停止させることができる係止手段32を備える棒本体13Dで形成した棒部材8Dを用いるとともに、前記係止手段32により前記皿部材3の上昇を停止させた状態を、前記係止手段32を乗り越えることにより係止状態を解除できる解除手段33を備えた点で、このような収納容器1Dにしても前記本発明を実施するための第3の形態の収納容器と同様な作用効果が得られるとともに、上死点の手前で皿部材3の上昇を停止させることができるので、通常使用時に皿部材3が棒部材8Dから脱落することを防止することができる。
【0053】
本実施形態では、係止手段32は、1対の棒本体13Dのネジ部7の谷部分にそれぞれ形成された形成された略半球状の係止突起34とメネジ部18で構成され、この係止突起34がメネジ部18に当接することにより、棒部材8Dの回転を停止させ、皿部材3の上昇を停止させる。この係止突起34は、棒本体13Dの上下方向の中央部又は中央部よりやや下方に形成されており、テーパー部15よりも上方の位置に形成される。このような位置に係止突起34を設けることにより、係合部6と前記係合片5の係合状態が略解除状態となる位置よりも下方で皿部材3の上昇を停止させることができる。
【0054】
なお、この係止突起34とメネジ部18が当接して皿部材3の上昇が停止した位置を説明の便宜上、以後「係止点」という。
【0055】
この係止点は、通常棒状化粧料2を使用する際の仮の上死点となる位置で、
図14に示すように、皿部材3の上端部が内筒部材9の上端部からわずかに下方に位置する又は、皿部材3の上端部がわずかに内筒部材9から露出する程度の位置に設定することが望ましく、そのような位置に係止点が位置するように係止突起34を形成する。
【0056】
このような係止点を設けることにより、棒状化粧料2を使用する際に、皿部材3を上昇させても、一旦この係止点で上昇が停止するため、それ以上皿部材3を上昇させることがない。係止突起34はテーパー部15よりも上方の位置に形成されているため、係止点においては皿部材3の係合状態が解除されておらず、棒状化粧料2の使用時に意図せず皿部材3が脱落することを防止できる。
【0057】
また、解除手段33は、本実施形態においては、繰り出し機構4を係止点から更に操作する(通常使用時よりも強くハカマ部材11等を回す)ことでメネジ部18が前記係止突起34を乗り越えられる程度の大きさや形状に形成することによって構成している。
すなわち、係止突起34を略半球状でネジ部7より小さく形成することで解除手段33としている。
【0058】
なお、メネジ部18についても、係止突起34及びメネジ部18の弾性変形によりメネジ部18が前記係止突起34を乗り越えられる程度の大きさに形成する。
このようにして係止状態が解除される(係止突起34をメネジ部18が乗り越える)と、皿部材3は上死点付近まで上昇し、テーパー部15が略当接することにより、皿部材3と棒部材13Dの係合状態が略解除される。
【0059】
本実施形態においては、係止突起34の大きさをメネジ部18が乗り越えられる程度の大きさにすることで解除手段33としたが、例えば突起等の係止手段32を棒本体13Dからスプリング等の付勢力により出没するように構成してもよいし、メネジ部18に出没機構を備えてもよい。また、使用者等の操作により係止突起34等が出没するような出没機構を備えてもよい。
【0060】
なお、本願発明の実施形態においては、棒部材を軸芯方向に分割したもの(複数個の棒本体を用いるもの)について説明したが、例えば棒部材の上端部付近にのみスリット等の切込みを形成し、皿部材を上死点付近に上昇させた時に、このスリット等の切込みを広げて係合部の寸法を拡大するように棒部材や解除機構を構成してもよい。
【0061】
また、例えば、完全に分割されず下端部付近のみ連結された棒部材(本実施形態の棒本体のテーパー部の開始点付近のみが連結されているような状態の棒部材)を用いてもよい。
【0062】
本願発明の繰り出し機構として、棒部材の外周面にネジを用いて駆動部材等と螺合させて皿部材を上下移動させるものについて説明したが、その他の公知の繰り出し機構を用いることができる。
【0063】
さらに、本発明の実施形態では、棒本体の下端部付近にテーパー部を設けたものについて説明したが、例えば凹所を棒本体の下端部付近に形成し、棒本体の下端部が互いに接近して係合部の寸法が拡大するように係合解除機構を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の棒状化粧料収納容器は、口紅、リップクリーム、スチックアイシャドウ、スチックチーク、スチックファンデーション、コンシーラー、日焼け止め化粧料、アイクリーム、整髪料等の固形化した棒状化粧料を収納する容器を製造する分野や化粧品分野の産業で利用される。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B、1C、1D:棒状化粧料収納容器、
2:棒状化粧料、 3:皿部材、
4、4A、4B:繰り出し機構、 5:係合片、
6:係合部、 7:ネジ部、
8、8A、8B、8C、8D:棒部材、
9、9A、9B:内筒部材、
10、10A、10B:駆動部材、 11、11A:ハカマ部材、
12:蓋体、
13、13A、13B、13C、13D:棒本体、
14:平坦部、 15:テーパー部、
16:拡径部、
17、17A、17B、17C:回転防止部材、
18:メネジ部、 19:押圧部、
20、20A:係合解除機構、 21:蓋体取付部、
22:ガイド溝、 23:ガイド片、
24:螺旋溝、 25、25A:螺旋部材、
26:係合ピン、 27:突起、
28、28A:誘導溝、 29:螺旋部、
30:回転防止部材取付部、 31:結合片、
32:係止手段、 33:解除手段、
34:係止突起。