IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 独立行政法人理化学研究所の特許一覧 ▶ ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図1
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図2
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図3
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図4
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図5
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図6
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図7
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図8
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図9
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図10
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図11
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図12
  • 特許-永久電流スイッチ及び超電導装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】永久電流スイッチ及び超電導装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/30 20230101AFI20230517BHJP
   H01F 6/00 20060101ALI20230517BHJP
   H01B 12/02 20060101ALI20230517BHJP
   H10N 60/81 20230101ALI20230517BHJP
【FI】
H10N60/30 ZAA
H01F6/00 160
H01B12/02
H10N60/81
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019171567
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021048365
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-09-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「高温超電導線材接合技術の超高磁場NMRと鉄道き電線への社会実装」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】502147465
【氏名又は名称】ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 高史
(72)【発明者】
【氏名】大木 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】永石 竜起
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 吉紀
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 衞
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-283437(JP,A)
【文献】特開2003-142744(JP,A)
【文献】特開平10-107333(JP,A)
【文献】特開2003-069093(JP,A)
【文献】特開2017-069358(JP,A)
【文献】特開2018-006493(JP,A)
【文献】特開昭61-214588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/30
H01F 6/00
H10N 60/81
H01B 12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材と、
前記超電導線材の一部に設けられているヒータと、
前記超電導線材を保持する保持部材と、
前記保持部材の周囲に第1空間を空けて配置されている第1ケースと、
前記第1空間に連通している液体冷媒流入管と、
前記液体冷媒流入管に設けられている弁と、
前記第1空間に連通している液体冷媒流出管と、
前記液体冷媒流出管に設けられている逆止弁とを備え、
前記超電導線材の前記一部及び前記ヒータは、前記第1ケースの内部空間の鉛直方向における上部に配置されており、
前記液体冷媒流出管は、前記鉛直方向における前記第1ケースの下部に配置されている、永久電流スイッチ。
【請求項2】
超電導線材と、
前記超電導線材の一部に設けられているヒータと、
前記超電導線材を保持する保持部材と、
前記保持部材の周囲に第1空間を空けて配置されている第1ケースと、
前記第1空間に連通している液体冷媒流入管と、
前記液体冷媒流入管に設けられている弁と、
前記第1空間に連通している液体冷媒流出管と、
前記液体冷媒流出管に設けられている逆止弁と
前記第1ケースの周囲に第2空間を空けて配置されている第2ケースとを備え、
前記液体冷媒流入管及び前記液体冷媒流出管は、前記第2空間から流体的に分離されている、永久電流スイッチ。
【請求項3】
前記第2ケースは、樹脂で形成されている、請求項2に記載の永久電流スイッチ。
【請求項4】
前記第2ケースは、第2樹脂固定部材を用いて、前記第1ケースに固定されている、請求項2または請求項3に記載の永久電流スイッチ。
【請求項5】
前記超電導線材は、超電導層を含み、
前記超電導層は、RE1Ba2Cu3y(6.0≦y≦8.0、REは希土類元素を表す)で形成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項6】
前記超電導線材は、前記超電導層を覆う保護層をさらに含み、
前記超電導線材の前記一部において、前記超電導層は前記保護層から露出しており、
前記ヒータは、前記保護層から露出している前記超電導層上に設けられている、請求項5に記載の永久電流スイッチ。
【請求項7】
超電導線材と、
前記超電導線材の一部に設けられているヒータと、
前記超電導線材を保持する保持部材と、
前記保持部材の周囲に第1空間を空けて配置されている第1ケースと、
前記第1空間に連通している液体冷媒流入管と、
前記液体冷媒流入管に設けられている弁と、
前記第1空間に連通している液体冷媒流出管と、
前記液体冷媒流出管に設けられている逆止弁とを備え、
前記超電導線材は、超電導層と、前記超電導層を覆う保護層とを含み、
前記超電導層は、RE 1 Ba 2 Cu 3 y (6.0≦y≦8.0、REは希土類元素を表す)で形成されており、
前記超電導線材の前記一部において、前記超電導層は前記保護層から露出しており、
前記ヒータは、前記保護層から露出している前記超電導層上に設けられている、永久電流スイッチ。
【請求項8】
前記第1ケースは、樹脂で形成されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項9】
前記保持部材は、第1樹脂固定部材を用いて、前記第1ケースに固定されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の永久電流スイッチ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の前記永久電流スイッチと、
前記永久電流スイッチに接続されている超電導コイルと、
前記永久電流スイッチと前記超電導コイルとを収容する容器とを備える、超電導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久電流スイッチ及び超電導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-40036号公報(特許文献1)は、永久電流スイッチを開示している。特許文献1に開示された永久電流スイッチは、超電導コイルとともに、冷却容器の中に収容されており、液体ヘリウムによって冷却されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-40036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様の目的は、より低い消費電力でかつより高速に動作し得る永久電流スイッチを提供することである。本発明の一態様の目的は、このような永久電流スイッチを含む超電導装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る永久電流スイッチは、超電導線材と、ヒータと、保持部材と、第1ケースと、液体冷媒流入管と、弁と、液体冷媒流出管と、逆止弁とを備える。ヒータは、超電導線材の一部に設けられている。保持部材は、超電導線材を保持している。第1ケースは、保持部材の周囲に第1空間を空けて配置されている。液体冷媒流入管は、第1空間に連通している。弁は、液体冷媒流入管に設けられている。液体冷媒流出管は、第1空間に連通している。逆止弁は、液体冷媒流出管に設けられている。
【0006】
本発明の一態様に係る超電導装置は、本発明の一態様に係る永久電流スイッチと、この永久電流スイッチに接続されている超電導コイルとを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、永久電流スイッチ及び超電導装置は、より低い消費電力でかつより高速に動作し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1及び実施の形態2に係る超電導装置の概略図である。
図2】実施の形態1に係る永久電流スイッチ(オン状態)の概略部分断面図である。
図3】実施の形態1に係る永久電流スイッチの、図2に示される断面線III-IIIにおける概略断面図である。
図4】実施の形態1に係る永久電流スイッチの、図2に示される断面線IV-IVにおける概略断面図である。
図5】実施の形態1に係る永久電流スイッチ(オフ状態)の概略部分断面図である。
図6】実施の形態1に係る超電導装置の回路図である。
図7】実施の形態1に係る超電導装置の回路図である。
図8】実施の形態1に係る超電導装置の回路図である。
図9】実施の形態1に係る超電導装置の回路図である。
図10】実施の形態1に係る超電導装置の回路図である。
図11】実施の形態1に係る超電導装置の回路図である。
図12】実施の形態2に係る永久電流スイッチ(オン状態)の概略部分断面図である。
図13】実施の形態2に係る永久電流スイッチ(オフ状態)の概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本発明の一態様に係る永久電流スイッチ1,1bは、超電導線材10と、ヒータ16と、保持部材20と、第1ケース24と、液体冷媒流入管30と、弁32と、液体冷媒流出管34と、逆止弁36とを備える。ヒータ16は、超電導線材10の一部に設けられている。保持部材20は、超電導線材10を保持している。第1ケース24は、保持部材20の周囲に第1空間22を空けて配置されている。液体冷媒流入管30は、第1空間22に連通している。弁32は、液体冷媒流入管30に設けられている。液体冷媒流出管34は、第1空間22に連通している。逆止弁36は、液体冷媒流出管34に設けられている。
【0011】
永久電流スイッチ1,1bをオン状態からオフ状態に切り替えるために、超電導線材10の一部がヒータ16によって加熱される。第1空間22内にある液体冷媒3の少なくとも一部もまた、ヒータ16によって加熱されて、ガス5になる。第1空間22の少なくとも一部が、ガス5で充填される。ガス5の熱伝導率は、液体冷媒3の熱伝導率よりも低い。ガス5は、第1ケース24とヒータ16との間の熱伝導率を下げる。ガス5は、ヒータ16で発生した熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1,1bに含まれる超電導線材10(超電導層13)の一部は、より少ない被加熱量でかつより短時間で、超電導状態から常電導状態に転移する。そのため、永久電流スイッチ1,1bは、より低い消費電力でかつより高速に、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0012】
永久電流スイッチ1,1bをオフ状態からオン状態に切り替えるために、弁32を開いて、液体冷媒3を第1空間22内に流入させる。第1空間22内に流入した液体冷媒3は、ヒータ16の残熱を吸収する。超電導線材10(超電導層13)の一部は、短時間で、超電導状態に転移する。そのため、永久電流スイッチ1,1bは、より高速に、オフ状態からオン状態に切り替わる。こうして、永久電流スイッチ1,1bは、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0013】
(2)上記(1)に係る永久電流スイッチ1,1bでは、超電導線材10の一部及びヒータ16は、第1ケース24の内部空間23の鉛直方向における上部に配置されている。液体冷媒流出管34は、鉛直方向における第1ケース24の下部に配置されている。
【0014】
ヒータ16の周りで発生したガス5は、鉛直方向における上方に向けて、第1空間22内を移動する。超電導線材10の一部及びヒータ16は、第1ケース24の内部空間23の鉛直方向における上部に配置されているため、ガス5が第1ケース24の上側内表面に到達するまでの距離が短くなる。ガス5が、第1ケース24の上側内表面に到達するまでの間に、第1空間22内にある液体冷媒3によって冷却されて、再び液体冷媒3に戻る可能性が減少され得る。液体冷媒流出管34は、鉛直方向における第1ケース24の下部に配置されているため、第1空間22内にガス5が発生したときに、ガス5よりも、第1空間22内にある液体冷媒3が、液体冷媒流出管34から優先的に排出される。ガス5は、第1空間22内に溜まりやすい。ガス5は、ヒータ16で発生した熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。そのため、永久電流スイッチ1,1bは、より低い消費電力でかつより高速に、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0015】
(3)上記(1)または(2)に係る永久電流スイッチ1,1bでは、第1ケース24は、樹脂で形成されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。樹脂製の第1ケース24は、ヒータ16で発生する熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1,1bは、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに係る永久電流スイッチ1,1bでは、保持部材20は、第1樹脂固定部材25を用いて、第1ケース24に固定されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。第1樹脂固定部材25は、ヒータ16で発生する熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1,1bは、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0017】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに係る永久電流スイッチ1,1bでは、超電導線材10は、超電導層13を含む。超電導層13は、RE1Ba2Cu3y(6.0≦y≦8.0、REは希土類元素を表す)で形成されている。一般的に、RE1Ba2Cu3yのような酸化物超電導材料は、NbTiのような金属超電導材料よりも、高い超電導転移温度を有している。そのため、永久電流スイッチ1,1bの冷却構造及び運転制御がより簡素化され得る。また、高磁場中における超電導線材10の臨界電流が大きいため、永久電流スイッチ1,1bの設置位置に対する制約を少なくすることができる。
【0018】
(6)上記(5)に係る永久電流スイッチ1,1bでは、超電導線材10は、超電導層13を覆う保護層14をさらに含む。超電導線材10の一部において、超電導層13は保護層14から露出している。ヒータ16は、保護層14から露出している超電導層13上に設けられている。そのため、超電導線材10の一部が超電導状態から常電導状態に転移したときに、超電導層13を流れていた電流が保護層14にバイパスされることなく、超電導層13を流れ続ける。ヒータ16で発生する熱によって、永久電流スイッチ1,1bの抵抗を、より短い時間で、より高くすることができる。
【0019】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに係る永久電流スイッチ1bは、第2ケース44をさらに備える。第2ケース44は、第1ケース24の周囲に第2空間42を空けて配置されている。液体冷媒流入管30及び液体冷媒流出管34は、第2空間42から流体的に分離されている。第1ケース24と第2ケース44との間の第2空間42は、ヒータ16で発生した熱が第2ケース44の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。そのため、永久電流スイッチ1bは、より低い消費電力でかつより高速に、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0020】
(8)上記(7)に係る永久電流スイッチ1bでは、第2ケース44は、樹脂で形成されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。樹脂製の第2ケース44は、ヒータ16で発生する熱が第2ケース44の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1bは、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0021】
(9)上記(7)または(8)に係る永久電流スイッチ1bでは、第2ケース44は、第2樹脂固定部材45を用いて、第1ケース24に固定されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。第2樹脂固定部材45は、ヒータ16で発生する熱が第2ケース44の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1bは、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0022】
(10)本発明の一態様に係る超電導装置50は、上記(1)から(9)のいずれかに係る永久電流スイッチ1,1bと、超電導コイル40と、容器51とを備える。超電導コイル40は、永久電流スイッチ1,1bに接続されている。容器51は、永久電流スイッチ1,1bと超電導コイル40とを収容している。そのため、超電導装置50は、より低い消費電力でかつより高速に動作し得る。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
図面に基づいて、実施の形態の詳細を以下説明する。なお、図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。以下に記載する実施の形態の少なくとも一部の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0024】
(実施の形態1)
図1を参照して、実施の形態1の超電導装置50を説明する。超電導装置50は、例えば、超電導マグネット、核磁気共鳴(NMR)装置または磁気共鳴イメージング(MRI)装置などである。超電導装置50は、永久電流スイッチ1と、超電導コイル40と、容器51とを備える。超電導コイル40は、永久電流スイッチ1に並列に接続されている。容器51は、永久電流スイッチ1と超電導コイル40とを収容している。容器51は、クライオスタットのような断熱容器である。容器51は、液体ヘリウムのような液体冷媒3を含んでいる。液体冷媒3は、超電導コイル40と、永久電流スイッチ1とを冷却している。
【0025】
図2に示されるように、実施の形態1の永久電流スイッチ1は、超電導線材10と、ヒータ16と、保持部材20と、第1ケース24と、液体冷媒流入管30と、弁32と、液体冷媒流出管34と、逆止弁36とを主に備える。
【0026】
図3及び図4に示されるように、超電導線材10は、基材11と、中間層12と、超電導層13と、保護層14とを含む。
【0027】
基材11は、好ましくは、第1層11aと、第2層11bと、第3層11cとを含んでいる。第2層11bは、第1層11a上に形成されている。第3層11cは、第2層11b上に形成されている。第1層11aは、例えば、ステンレス鋼またはハステロイ(登録商標)で構成されている。第2層11bは、例えば、銅(Cu)または銅合金で構成されている。第3層11cは、ニッケル(Ni)で構成されている。本実施の形態では基材11は三層基材であるが、基材11は、単層基材または二層基材であってもよい。
【0028】
中間層12は、基材11(第3層11c)上に形成されている。中間層12は、絶縁材料で構成されている。中間層12は、特に限定されないが、例えば、安定化ジルコニア(YSZ)、酸化イットリウム(Y23)、酸化セリウム(CeO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ランタンマンガン(LaMnO)、ジルコン酸ガドリニウム(Gd2Zr27)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO)からなる群から選ばれた少なくとも一つによって構成されている。
【0029】
超電導層13は、中間層12上に形成されている。超電導層13は、例えば、酸化物超電導体により構成されている。超電導層13は、例えば、RE1Ba2Cu3y(6.0≦y≦8.0)である。希土類元素REは、例えば、イットリウム(Y)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロビウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、ホルミウム(Ho)またはイッテルビウム(Yb)からなる群から選ばれた少なくとも一つの元素である。
【0030】
保護層14は、超電導層13を覆っている。特定的には、保護層14は、基材11とは反対側の超電導層13の主面を覆っている。ただし、超電導線材10の一部において、超電導層13は保護層14から露出している。特定的には、超電導線材10の一部において、基材11とは反対側の超電導層13の主面は、保護層14から露出している。超電導線材10の長手方向において、保護層14は、超電導線材10の一部で分断されている。超電導線材10の一部は、超電導線材10の長手方向における超電導線材10の両端部以外の部分である。保護層14は、例えば、銀(Ag)または銅(Cu)等の金属または合金等で構成されている。
【0031】
図2及び図4に示されるように、ヒータ16は、超電導線材10の一部に設けられている。ヒータ16は、例えば、保護層14から露出している超電導層13上に設けられている。具体的には、ヒータ16は、絶縁シート17上に設けられている。ヒータ16は、例えば、蛇行した電熱線である。電熱線は、例えば、ニクロム線で構成されている。絶縁シート17は、接着部材(図示せず)を用いて、超電導線材10に貼り付けられてもよい。本実施の形態の変形例では、ヒータ16は、絶縁膜で被覆された電熱線であり、超電導線材10の周りに巻き付けられてもよい。超電導線材10の一部及びヒータ16は、第1ケース24の内部空間23の鉛直方向(z方向)における上部に配置されている。本明細書において、鉛直方向(z方向)は、重力方向を意味する。
【0032】
図2に示されるように、保持部材20は、超電導線材10を保持している。超電導線材10は、例えば、保持部材20に設けられた溝(図示せず)内に配置されている。超電導線材10は、保持部材20の内部に埋め込まれてもよい。保持部材20は、例えば、巻枠であってもよく、超電導線材10は巻枠に巻回されてもよい。保持部材20は、低い熱伝導率を有する材料で形成されている。保持部材20は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のような繊維強化プラスチック(FRP)で形成されている。
【0033】
第1ケース24は、保持部材20の周囲に第1空間22を空けて配置されている。第1空間22は、第1ケース24の内部空間23の一部である。第1ケース24は、低い熱伝導率を有する樹脂で形成されている。第1ケース24は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のような繊維強化プラスチック(FRP)で形成されている。保持部材20は、第1樹脂固定部材25を用いて、第1ケース24に固定されている。第1樹脂固定部材25は、例えば、エポキシ樹脂で形成されている。第1ケース24には、超電導線材10が貫通する孔が設けられている。孔は、第1封止部材26で封止されている。第1封止部材26は、エポキシ樹脂、パラフィン樹脂またはシリコーン樹脂のような樹脂で形成されている。
【0034】
液体冷媒流入管30は、第1空間22に連通している。液体冷媒流入管30は、鉛直方向(z方向)における第1ケース24の上部に配置されている。具体的には、液体冷媒流入管30は、第1ケース24の上面に接続されている。弁32は、液体冷媒流入管30に設けられている。弁32が開状態にあるとき、弁32は、第1ケース24の外側にある液体冷媒3が、液体冷媒流入管30を通って、第1空間22内に流入することを可能にする。弁32が閉状態にあるとき、弁32は、第1ケース24の外側にある液体冷媒3が、液体冷媒流入管30を通って、第1空間22内に流入することを阻止する。
【0035】
液体冷媒流出管34は、第1空間22に連通している。液体冷媒流出管34は、鉛直方向(z方向)における第1ケース24の下部に配置されている。具体的には、液体冷媒流出管34は、第1ケース24の下面に接続されている。逆止弁36は、液体冷媒流出管34に設けられている。逆止弁36は、第1ケース24の外側にある液体冷媒3が、液体冷媒流出管34を通って、第1空間22内に流入することを防止する。逆止弁36は、第1空間22内の圧力が所定の圧力を超えると、第1空間22内に充填されていた液体冷媒3を、液体冷媒流出管34から排出させるように構成されている。
【0036】
図2及び図5から図11を参照して、永久電流スイッチ1の動作を説明する。図6から図11に示されるように、永久電流スイッチ1は、超電導コイル40に並列に接続されている。超電導コイル40及び永久電流スイッチ1は、電流源39に接続されている。
【0037】
超電導コイル40及び永久電流スイッチ1を、超電導転移温度以下の温度になるように冷却する。具体的には、図2に示されるように、超電導コイル40及び永久電流スイッチ1を、液体ヘリウムのような液体冷媒3中に浸漬する。弁32を開いて、液体冷媒流入管30から、液体冷媒3を第1空間22内に流入させる。第1空間22が液体冷媒3によって充填されると、弁32を閉じる。ヒータ16に電流が流れておらず、ヒータ16はオフ状態にある。永久電流スイッチ1に含まれる超電導層13は超電導状態に転移し、永久電流スイッチ1はゼロの電気抵抗を有する(永久電流スイッチ1のオン状態、図6を参照)。超電導コイル40も、超電導状態に転移する。電流源39から流れる電流Iは、ゼロである。
【0038】
それから、ヒータ16に電流を流して、ヒータ16をオン状態(発熱状態)とする。超電導線材10(超電導層13)の一部は、常電導状態に転移し、永久電流スイッチ1はRの電気抵抗を有する(永久電流スイッチ1のオフ状態、図7を参照)。電流源39から流れる電流Iは、依然として、ゼロである。
【0039】
図5に示されるように、ヒータ16をオン状態(発熱状態)とすると、第1空間22内にある液体冷媒3(例えば、液体ヘリウム)の少なくとも一部は、ヒータ16によって加熱されて、ガス5(例えば、ヘリウムガス)になる。第1空間22の上端部から第1空間22の下端部に向けて、第1空間22の少なくとも一部が、ガス5で充填される。ガス5の熱伝導率は、液体冷媒3の熱伝導率よりも低い。ガス5は、第1ケース24とヒータ16との間の熱伝導率を下げる。ガス5は、ヒータ16を第1ケース24から断熱してもよい。
【0040】
また、ガス5の体積は、ガス5に気化される前の液体冷媒3の体積よりもはるかに大きい。そのため、ガス5は、第1空間22内の圧力を上昇させる。第1空間22内の圧力が所定の圧力を超えると、逆止弁36は、第1空間22内に充填されていた液体冷媒3の少なくとも一部を、液体冷媒流出管34から排出させる。逆止弁36は、第1空間22内の液体冷媒3の少なくとも一部が気化されてガス5になるときに、第1ケース24が破裂することを防止する。
【0041】
それから、図8に示されるように、電流源39から電流Iを流し始める。電流源39から流れる電流Iを、ゼロから、電流Iの時間変化ΔI/Δtで次第に増加させる。超電導コイル40は、インダクタンスLを有している。電流源39から流れる電流Iを次第に増加させると、超電導コイル40に、電流Iの時間変化ΔI/Δtに応じたコイルインピーダンスZが発生する。電流源39から流れる電流Iのゼロからの増加電流は、永久電流スイッチ1の電気抵抗R及び超電導コイル40のコイルインピーダンスZに応じて永久電流スイッチ1と超電導コイル40とに分配されて、永久電流スイッチ1と超電導コイル40とに流れる。この増加電流は、電流Iの時間変化ΔI/Δtの時間積分ΣΔI/Δtで与えられる。
【0042】
図9に示されるように、電流源39から流れる電流Iが、永久電流モードにおいて超電導コイル40に流す運転電流I0に達すると、電流源39から流れる電流Iを運転電流I0に維持する。電流源39から流れる電流Iの時間変化ΔI/Δtはゼロとなり、超電導コイル40のコイルインピーダンスZもゼロになる。永久電流スイッチ1を流れる電流は次第に減少し、超電導コイル40に流れる電流が次第に増加する。電流源39から流れる運転電流I0は、もっぱら超電導コイル40に流れるようになる。こうして、超電導コイル40は、励磁される。
【0043】
ヒータ16に電流を流すことを停止して、ヒータ16をオフ状態とする。図2に示されるように、弁32を開いて、液体冷媒流入管30から、液体冷媒3を第1空間22内に流入させる。ガス5は、弁32または逆止弁36から排出される。第1空間22が液体冷媒3によって充填されると、弁32を閉じる。第1空間22内に流入した液体冷媒3は、ヒータ16の残熱を吸収する。超電導線材10(超電導層13)の一部は、超電導状態に転移し、永久電流スイッチ1はゼロの電気抵抗を有する(永久電流スイッチ1のオン状態、図10を参照)。
【0044】
図10に示されるように、電流源39から流れる電流Iを、電流Iの時間変化-ΔI/Δtで運転電流I0から次第に減少させる。図10における電流Iの時間減分-ΔI/Δtの絶対値は、図8における電流Iの時間増分ΔI/Δtに等しくてもよいし、異なってもよい。電流源39から流れる電流Iの運転電流I0からの減少電流は、永久電流スイッチ1に流れる。この減少電流は、電流Iの時間変化-ΔI/Δtの時間積分-ΣΔI/Δtで与えられる。図11に示されるように、電流源39から流れる電流をゼロにすると、運転電流I0は、永久電流スイッチ1と超電導コイル40とを循環する。こうして、永久電流スイッチ1は、超電導装置50を永久電流モードで動作させることができる。
【0045】
本実施の形態の永久電流スイッチ1及び超電導装置50の効果を説明する。
【0046】
本実施の形態の永久電流スイッチ1は、超電導線材10と、ヒータ16と、保持部材20と、第1ケース24と、液体冷媒流入管30と、弁32と、液体冷媒流出管34と、逆止弁36とを備える。ヒータ16は、超電導線材10の一部に設けられている。保持部材20は、超電導線材10を保持している。第1ケース24は、保持部材20の周囲に第1空間22を空けて配置されている。液体冷媒流入管30は、第1空間22に連通している。弁32は、液体冷媒流入管30に設けられている。液体冷媒流出管34は、第1空間22に連通している。逆止弁36は、液体冷媒流出管34に設けられている。
【0047】
永久電流スイッチ1をオン状態からオフ状態に切り替えるために、超電導線材10の一部がヒータ16によって加熱される。第1空間22内にある液体冷媒3の少なくとも一部もまた、ヒータ16によって加熱されて、ガス5になる。第1空間22の少なくとも一部が、ガス5で充填される。ガス5の熱伝導率は、液体冷媒3の熱伝導率よりも低い。ガス5は、第1ケース24とヒータ16との間の熱伝導率を下げる。ガス5は、ヒータ16で発生した熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1に含まれる超電導線材10(超電導層13)の一部は、より少ない被加熱量でかつより短時間で、超電導状態から常電導状態に転移する。そのため、永久電流スイッチ1は、より低い消費電力でかつより高速に、オン状態からオフ状態に切り替わる。逆止弁36は、第1空間22内の液体冷媒3の少なくとも一部が気化されてガス5になるときに、第1ケース24が破裂することを防止する。
【0048】
永久電流スイッチ1をオフ状態からオン状態に切り替えるために、弁32を開いて、液体冷媒3を第1空間22内に流入させる。第1空間22内に流入した液体冷媒3は、ヒータ16の残熱を吸収する。超電導線材10(超電導層13)の一部は、短時間で、超電導状態に転移する。そのため、永久電流スイッチ1は、より高速に、オフ状態からオン状態に切り替わる。こうして、永久電流スイッチ1は、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0049】
本実施の形態の永久電流スイッチ1では、超電導線材10の一部及びヒータ16は、第1ケース24の内部空間23の鉛直方向(z方向)における上部に配置されている。液体冷媒流出管34は、鉛直方向(z方向)における第1ケース24の下部に配置されている。
【0050】
ヒータ16の周りで発生したガス5は、鉛直方向(z方向)における上方に向けて、第1空間22内を移動する。超電導線材10の一部及びヒータ16は、第1ケース24の内部空間23の鉛直方向(z方向)における上部に配置されているため、ガス5が第1ケース24の上側内表面に到達するまでの距離が短くなる。ガス5が、第1ケース24の上側内表面に到達するまでの間に、第1空間22内にある液体冷媒3によって冷却されて、再び液体冷媒3に戻る可能性が減少され得る。液体冷媒流出管34は、鉛直方向(z方向)における第1ケース24の下部に配置されているため、第1空間22内にガス5が発生したときに、ガス5よりも、第1空間22内にある液体冷媒3が、液体冷媒流出管34から優先的に排出される。ガス5は、第1空間22内に溜まりやすい。ガス5は、ヒータ16で発生した熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。そのため、永久電流スイッチ1は、より低い消費電力でかつより高速に、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0051】
本実施の形態の永久電流スイッチ1では、第1ケース24は、樹脂で形成されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。樹脂製の第1ケース24は、ヒータ16で発生する熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1は、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0052】
本実施の形態の永久電流スイッチ1では、保持部材20は、第1樹脂固定部材25を用いて、第1ケース24に固定されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。第1樹脂固定部材25は、ヒータ16で発生する熱が第1ケース24の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1は、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0053】
本実施の形態の永久電流スイッチ1では、超電導線材10は、超電導層13を含む。超電導層13は、RE1Ba2Cu3y(6.0≦y≦8.0、REは希土類元素を表す)で形成されている。一般的に、RE1Ba2Cu3yのような酸化物超電導材料は、NbTiのような金属超電導材料よりも、高い超電導転移温度を有している。そのため、永久電流スイッチ1の冷却構造及び運転制御がより簡素化され得る。また、高磁場中における超電導線材10の臨界電流が大きいため、永久電流スイッチ1の設置位置に対する制約を少なくすることができる。超電導装置50の構造が簡素化されて、小型化され得る。
【0054】
本実施の形態の永久電流スイッチ1では、超電導線材10は、超電導層13を覆う保護層14をさらに含む。超電導線材10の一部において、超電導層13は保護層14から露出している。ヒータ16は、保護層14から露出している超電導層13上に設けられている。そのため、超電導線材10の一部が超電導状態から常電導状態に転移したときに、超電導層13を流れていた電流が保護層14にバイパスされることなく、超電導層13を流れ続ける。ヒータ16で発生する熱によって、永久電流スイッチ1の抵抗を、より短い時間で、より高くすることができる。永久電流スイッチ1は、永久電流スイッチ1を流れていた電流を、より短い時間で、超電導コイル40に移行させることを可能にする。
【0055】
本実施の形態の超電導装置50は、永久電流スイッチ1と、超電導コイル40と、容器51とを備える。超電導コイル40は、永久電流スイッチ1に接続されている。容器51は、永久電流スイッチ1と超電導コイル40とを収容している。そのため、超電導装置50は、より低い消費電力でかつより高速に動作し得る。
【0056】
(実施の形態2)
図1を参照して、実施の形態2の超電導装置50bを説明する。本実施の形態の超電導装置50bは、実施の形態1の超電導装置50と同様の構成を備えているが、実施の形態1の永久電流スイッチ1に代えて、実施の形態2の永久電流スイッチ1bを備えている。
【0057】
図12及び図13を参照して、実施の形態2の永久電流スイッチ1bを説明する。本実施の形態の永久電流スイッチ1bは、実施の形態1の永久電流スイッチ1と同様の構成を備えるが、以下の点で主に異なる。
【0058】
永久電流スイッチ1bは、第2ケース44をさらに備える。第2ケース44は、第1ケース24の周囲に第2空間42を空けて配置されている。第2空間42は、閉鎖空間である。室温において、第2空間42の雰囲気は、空気雰囲気であってもよいし、真空のような減圧雰囲気であってもよい。第2ケース44は、低い熱伝導率を有する樹脂で形成されている。第2ケース44は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)のような繊維強化プラスチック(FRP)で形成されている。第2ケース44は、第2樹脂固定部材45を用いて、第1ケース24に固定されている。第2樹脂固定部材45は、例えば、エポキシ樹脂で形成されている。第2ケース44には、超電導線材10が貫通する孔が設けられている。孔は、第2封止部材46で封止されている。第2封止部材46は、エポキシ樹脂のような樹脂で形成されている。
【0059】
液体冷媒流入管30及び液体冷媒流出管34は、第2空間42に連通しておらず、第2空間42から流体的に分離されている。液体冷媒流入管30は、鉛直方向(z方向)における第2ケース44の上部に配置されている。具体的には、液体冷媒流入管30は、第2ケース44の上面に接続されている。液体冷媒流出管34は、鉛直方向(z方向)における第2ケース44の下部に配置されている。具体的には、液体冷媒流出管34は、第2ケース44の下面に接続されている。
【0060】
本実施の形態の永久電流スイッチ1b及び超電導装置50bの効果を説明する。本実施の形態の永久電流スイッチ1bは、実施の形態1の永久電流スイッチ1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0061】
永久電流スイッチ1bは、第2ケース44をさらに備える。第2ケース44は、第1ケース24の周囲に第2空間42を空けて配置されている。液体冷媒流入管30及び液体冷媒流出管34は、第2空間42から流体的に分離されている。第1ケース24と第2ケース44との間の第2空間42は、ヒータ16で発生した熱が第2ケース44の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。そのため、永久電流スイッチ1bは、より低い消費電力でかつより高速に、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0062】
本実施の形態の永久電流スイッチ1bでは、第2ケース44は、樹脂で形成されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。樹脂製の第2ケース44は、ヒータ16で発生する熱が第2ケース44の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1bは、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0063】
本実施の形態の永久電流スイッチ1bでは、第2ケース44は、第2樹脂固定部材45を用いて、第1ケース24に固定されている。一般的に、樹脂は、金属よりも低い熱伝導率を有する。第2樹脂固定部材45は、ヒータ16で発生する熱が第2ケース44の外側にある液体冷媒3に放散されることを抑制する。永久電流スイッチ1bは、より低い消費電力でかつより高速に動作する。
【0064】
本実施の形態の超電導装置50bは、永久電流スイッチ1bと、超電導コイル40と、容器51とを備える。超電導コイル40は、永久電流スイッチ1bに接続されている。容器51は、永久電流スイッチ1bと超電導コイル40とを収容している。そのため、超電導装置50bは、より低い消費電力でかつより高速に動作し得る。
【0065】
今回開示された実施の形態1から実施の形態3はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1,1b 永久電流スイッチ
3 液体冷媒
5 ガス
10 超電導線材
11 基材
11a 第1層
11b 第2層
11c 第3層
12 中間層
13 超電導層
14 保護層
16 ヒータ
17 絶縁シート
20 保持部材
22 第1空間
23 内部空間
24 第1ケース
25 第1樹脂固定部材
26 第1封止部材
30 液体冷媒流入管
32 弁
34 液体冷媒流出管
36 逆止弁
39 電流源
40 超電導コイル
42 第2空間
44 第2ケース
45 第2樹脂固定部材
46 第2封止部材
50,50b 超電導装置
51 容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13