(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】電子錠
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
E05B47/00 H
E05B47/00 J
(21)【出願番号】P 2019070310
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】597064425
【氏名又は名称】株式会社 フキ
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】村田 健司
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-037747(JP,A)
【文献】特開2014-084696(JP,A)
【文献】特開2018-204393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を用いて錠の開閉を行う電子錠であって、
回転軸を回動させ、施錠位置と開錠位置とにデッドボルトをスライドさせるターン部と、
錠の開閉に必要な電力の供給を行う電源となる電力供給部と、
前記ターン部を回転させ、施錠及び開錠を切り替えるボタンと、
前記ターン部を覆うターン側カバーと、
前記電力供給部を覆う電源側カバーと、
を備え、
電子錠本体の前記ボタンが配置される面に、前記ターン側カバーと前記電源側カバーとが固定され、
前記ターン側カバーと前記電源側カバーは、前記ボタンを中心に対称であることを特徴とする電子錠。
【請求項2】
前記電子錠の本体を、前記ターン部の回転軸の軸方向が扉の表面に対して垂直となるように固定するため
のアタッチメントを有し、
前
記アタッチメントには、前記電子錠本体を扉の高さ方向に沿うように取り付ける際に用いるネジ孔のグループと、
前記電子錠本体を扉の幅方向に沿うように取り付ける際に用いるネジ孔のグループと、
が設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子錠。
【請求項3】
前記電子錠本体は、
扉に対して固定する際に扉と対向する固定面を備え、
前記ターン側カバーと前記電源側カバーは、
前記固定面と平行にスライドすることで、前記電子錠本体に対して固定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子錠。
【請求項4】
前記ターン側カバーと前記電源側カバーの形状は、同一であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電子錠。
【請求項5】
前記ターン部は、前記電子錠本体の表面から露出する先端部を備え、
前記ターン側カバーは、前記先端部が露出する貫通孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電子錠。
【請求項6】
前記電源側カバーは、いたずら防止ネジにより前記電子錠本体に固定されることを特徴とする請求項5に記載の電子錠。
【請求項7】
前記電子錠本体に固定された電源側カバーの内部には、前記電子錠の設定を変更する
設定ボタンが配置されることを特徴とする請求項6に記載の電子錠。
【請求項8】
扉の開閉を検出する
開閉検出用センサと、
前記
開閉検出用センサに基づいて扉の開閉を判定する扉開閉判定部を更に備え、
前記扉開閉判定部は前記扉が閉まっていると判定した場合に、施錠を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の電子錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子錠に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ対策の一環として、電気の力で施錠や開錠を行う錠前が登場している。電子錠には、金属の鍵の代わりにリモコンやカードを使うタイプ、予め設定した暗証番号を入力することで開錠を行うタイプ、登録した指紋を読み取り開錠を行うタイプなど様々なタイプがある。
【0003】
電子錠の中には、既存のシリンダーとサムターンを組み合わせた錠のシリンダーとサムターンとを取り外し、電子錠本体を後付けするタイプも存在している。このような、後付けが可能なタイプの電子錠では、施錠や開錠の動力源となるモータや、モータに電力を供給する電池やバッテリーなどを収容する電力供給部を電子錠本体に収容する。この電子錠本体は、扉の内部ではなく、扉の室内側に設置されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後付けするタイプの電子錠では、既に扉に取り付けられているデッドボルトやラッチボルトを備えるケースを流用することが多い。ケースに、デッドボルトと連動するサムターンとラッチボルトと連動するドアノブとが別々に設けられている場合には、ケースの大きさの範囲でスペーシングの長さが決まる。そのため、通常の扉では、ドアノブの近くに電子錠本体が位置することになる。
【0006】
一方、前述の通り、電子錠本体には電力供給部やモータなどを内蔵することが必要であるため、電子錠本体のサイズが大きくなりがちである。故に、電子錠本体の形状や取り付け向きによっては、電子錠本体がドアノブと干渉する。また、ドアノブ以外でも、チェーンやドアガードと干渉し、電子錠を取り付けすることができなくなる場合がある。
【0007】
また、電子錠本体は扉に対して確実に固定する必要がある。電子錠本体を取り付ける場合には、電子錠本体の設置面積と同程度の平らな面を有するスペースが扉の室内側に必要となる。デザイン性を重視した扉の場合には、ドアノブの周囲にも飾りや凹凸が設けられている。そのような場合には、電子錠本体は、飾りや凹凸を避ける向きで固定する必要がある。しかしながら、電子錠本体は、定められた1つの方向での設置が想定されている場合が多い。そのような電子錠を想定されていない向きに配置すると、違和感を与えるデザインになったり、電子錠の使い勝手が悪くなる。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、電子錠本体を扉の高さ方向及び扉の幅方向に沿うように取り付けた場合にも、デザイン的に違和感を与えることなく、使い勝手の良い電子錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の電子錠は、電力を用いて錠の開閉を行う電子錠であって、回転軸を回動させ、施錠位置と開錠位置とにデッドボルトをスライドさせるターン部と、錠の開閉に必要な電力の供給を行う電力供給部と、前記ターン部を回転させ、施錠及び開錠を切り替えるボタンと、前記ターン部を覆うターン側カバーと、前記電力供給部を覆う電源側カバーと、を備え、電子錠本体の前記ボタンが配置される面に、前記ターン側カバーと前記電源側カバーとが固定され、前記ターン側カバーと前記電源側カバーは、前記ボタンを中心に対称であることを特徴とする。
【0010】
前記電子錠の本体を、前記ターン部の回転軸の軸方向が扉の表面に対して垂直となるように固定するためのアタッチメントを有し、前記アタッチメントには、前記電子錠本体を扉の高さ方向に沿うように取り付ける際に用いるネジ孔のグループと、前記電子錠本体を扉の幅方向に沿うように取り付ける際に用いるネジ孔のグループと、が設けられるようにしてもよい。
【0011】
前記電子錠本体は、扉に対して固定する際に扉と対向する扉固定面を備え、前記ターン側カバーと前記電源側カバーは、前記扉固定面と平行にスライドすることで、前記電子錠本体に対して固定されていてもよい。
【0012】
前記ターン側カバーと前記電源側カバーの形状は、同一であってもよい。
【0013】
前記ターン部は、前記電子錠本体の表面から露出する先端部を備え、前記ターン側カバーは、前記先端部が露出する貫通孔を有してもよい。
【0014】
前記電源側カバーは、いたずら防止ネジにより前記電子錠本体に固定されてもよい。
【0015】
前記電子錠本体に固定された電源側カバーの内部には、前記電子錠の設定を変更するボタンが配置されていてもよい。
【0016】
扉の開閉を検出する開閉検出用センサと、前記開閉検出用センサに基づいて扉の開閉を判定する扉開閉判定部を更に備え、前記扉開閉判定部は前記扉が閉まっていると判定した場合に、施錠を行うとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、開錠及び施錠を切り替えるボタンを中心として同一形状のターン側カバーと電源側カバーとを電子錠本体に対して固定する。これにより、電子錠本体を垂直方向や水平方向に取り付けた際にも違和感のあるデザインとなることはなく、良好な使い勝手とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の電子錠の構成を示す斜視図であり、ターン側カバーと電源側カバーが電子錠本体に固定された状態を示す。
【
図2】第1実施形態の電子錠の構成を示す斜視図であり、ターン側カバーと電源側カバーが電子錠本体から外れた状態を示す。
【
図3】第1実施形態の電子錠の制御部を構成する各部の関係を示す機能ブロック図である。
【
図4】第1実施形態のアタッチメントの構成を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態の電子錠の構成を示す分解斜視図である。
【
図6】第1実施形態のアタッチメントの取り付け向きを示す正面図である。
【
図7】第1実施形態の電子錠の取り付け向きを示す正面図である。
【
図8】第2実施形態の電子錠の構成を示す斜視図である。
【
図10】第3実施形態の電子錠の取り付け状態を示す正面図である。
【
図11】第3実施形態の電子錠の制御部を構成する各部の関係を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図面に表された部材は、発明の理解をし易くするための形状やサイズとなっており、必ずしも実際の製品と一致するものではない。以下説明のために、電子錠を取り付ける扉の高さ方向を垂直方向、扉の幅方向を水平方向と称する。
【0020】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1、2を参照して、本実施形態の電子錠を説明する。説明のために本実施形態の電子錠は、既存のシリンダーとサムターンとを組み合わせた錠に代えて後付けした電子錠とする。既存のシリンダーとサムターンとを組み合わせた錠は、デッドボルトとラッチボルトを備えるケースを有している。
【0021】
デッドボルトはスライドし、扉から突出すると共に扉に対して埋没する部材であり、デッドボルトにより開錠と施錠が行われる。施錠位置にあるデッドボルトは扉から突出し、扉枠に設けられた受けに入る。デッドボルトが一種のカンヌキとなり、扉の施錠を行う。開錠位置にあるデッドボルトは扉内部に埋没し、扉枠に設けられた受けより退避する。これにより、扉はデッドボルトにより扉枠に対して固定されることなく、ドアノブを回すことで、扉が開く。
【0022】
ラッチボルトは、扉を扉枠に対して固定する部材である。ラッチボルトは、ドアノブと連動しドアノブの回転に伴って、扉からの突出と扉への埋没とを切り替える。ラッチボルトは、扉を扉枠に固定する際には、扉から突出している。突出したラッチボルトは、扉枠側の受けに入り、扉を扉枠に対して固定する。扉を開ける際には、ドアノブが回転されることで、ラッチボルトが扉内部に埋没し、扉枠に設けられた受けより退避する。デッドボルトが開錠位置にあり、ラッチボルトが扉に埋没すると、扉を扉枠に対して固定する部材がなくなり、扉が開くことになる。
【0023】
本実施形態の電子錠のケースは、シリンダー及びサムターンの代わりにターン部6を設け、ターン部6が回転することにより、デッドボルトをスライドさせて開錠と施錠を行う。サムターンは、表側に使用者が指でつまんで回動させるツマミと、ツマミと連動して回動するサムターン軸とを有する。サムターン軸は、ツマミに加わった力をデッドボルトへ伝える伝達機構の一部である。ターン部6は、ツマミに代えて天面が平らな先端部と、先端部と連動して回動する回転軸を備える。ここで天面とは、電子錠を扉に取り付けた際に、扉の接触面とは反対側の面とする。回転軸は、後述のモータにより回動し、モータの駆動力をデッドボルトへ伝達する。回転軸は、先端と共に回動するため、ターン部6の先端部に加わった力によりデッドボルトをスライドさせることも可能である。
図1に示すように、本実施形態の電子錠1は、ターン側カバー2a、電源側カバー2b、電子錠本体3、ボタン4、裏蓋5を備える。
【0024】
ターン側カバー2aは、電子錠本体3に対して着脱可能の構造を有するカバーである。ターン側カバー2aは、板状の部材を組み合わせて構成された部材であり、平板状の天板と、天板の3つの辺より垂直に立設する3つの側壁より構成される。電子錠本体に固定した場合には、天板の電子錠本体3側に空隙が形成され、この空隙にターン部6の先端部が位置する。つまり、ターン側カバー2aは、電子錠本体3に固定された場合には、ターン部6の先端部を覆う。
【0025】
電源側カバー2bは、ターン側カバー2aと同様、電子錠本体3に対して着脱可能の構造を有するカバーであり、ターン側カバー2aと同一形状である。故に、電子錠本体3に固定した場合には、天板の電子錠本体3側に空間が形成される。電源側カバー2bは、開閉することで電力供給部内部にアクセス可能な蓋7を覆う。
【0026】
電子錠本体3は、内部にターン部6を回転させる動力となるモータ、モータに対して電力を供給する電力供給部、開錠/施錠信号に基づいてモータの制御を行う制御部を内蔵する。電子錠本体3の形状は略直方体であり、直方体の一の面が扉に固定される時に、扉と対向する面となる固定面となる。固定面と対向する表面の中心部分には、ボタン4が設けられる。ボタン4は、ユーザーが押圧することで、制御部に対して開錠/施錠信号を出力する押圧スイッチである。
【0027】
電子錠本体3の天面には、ボタン4を中心としてターン側カバー2aと電源側カバー2bとが対称となるように固定される。ここで対称とは、ボタン4を通る線分を基準とした線対称でも、ボタン4の中心を基準とした点対称でも良い。
【0028】
ターン側カバー2aと電源側カバー2bとは、電子錠本体3の固定面に対して平行にスライドすることで、電子錠本体3に対して固定される。例えば、電子錠本体3に固定面に対して平行な溝、及びターン側カバー2aと電源側カバー2bには、当該溝に嵌まる凸部をそれぞれ設けておき、それぞれのカバー2a、2bを、電子錠本体3の固定面に対して平行にスライドさせて、溝と凸部を嵌め合わせることで、ターン側カバー2aと電源側カバー2bを電子錠本体3に対して固定しても良い。
【0029】
裏蓋5は、電子錠本体3の固定面よりも一回り大きめに形成された板状の部材であり、周囲に縁を設けることにより、電子錠本体3の保持を行う。さらに、電子錠本体3と裏蓋5には、互いを固定する固定部を設けておき、それぞれの固定部により裏蓋5に対して電子錠本体3を固定してもよい。
【0030】
電力供給部は、電池やバッテリーに蓄えられた電力をターン部6の回動用のモータ、制御部、ボタン4に対して供給する電源である。電力供給部は、電子錠本体3の表面側に、蓋7を設け、蓋7を開けることで電池やバッテリーを取り出し可能にしても良い。
【0031】
[制御部の機能ブロック図]
図3は、電子錠本体3内部の制御部の機能を示す機能ブロック図である。制御部20は、モータに開錠指令及び施錠指令を出力する開錠/施錠指令部21を備える。
【0032】
制御部20は、電子錠本体3に内蔵される受信部22と、ボタン4と電気的に接続される。受信部22は、扉の外側に設けられた入力インタフェースから出力される開錠/施錠信号を受信する。扉の外側に設けられた入力インタフェースとしては、予め登録したICカードを用いるもの、対応するリモコンからの信号を受信するもの、予め設定した暗証番号の入力を受け付けるもの、登録した指紋を読み取るものなど、種々なものを採用することができる。また、受信部22は、入力インタフェースを介さず直接受信部22に対して送信された開錠/施錠信号を受信しても良い。例えば、Wi-Fi(登録商標)、Bluetооth(登録商標)、赤外線通信の通信モジュールを電子錠本体3の内部に備え、各通信モジュールから出力される開錠/施錠信号を受信部22で受信しても良い。
【0033】
開錠/施錠指令部21は、受信部22やボタン4から出力される開錠/施錠信号に基づいて、モータ23に対して開錠指令や施錠指令を出力する。モータ23が駆動することで、デッドボルトがスライドし、電子錠1の開錠/施錠が行われる。
【0034】
[アタッチメントの構成]
図4は、アタッチメントの構成を示す平面図である。アタッチメント8は、裏蓋5より一回り小さい板状の部材である。
図5に示すように、アタッチメント8は、左右に1つずつのターン部6の回転軸が貫通する回転軸孔8aを有する。1つの回転軸孔8aの周囲には、6つのネジ孔8bが設けられる。ネジ孔8bに、アタッチメント8の固定用のネジが挿入され、固定用のネジがケース側のネジ穴にねじ込まれることにより、アタッチメント8が固定される。ネジ孔8bは、ケース側のネジ穴と対応した位置に設けられる。一般的なケースには、サムターンを固定するためのネジ穴が設けられていて、サムターン用取り付けネジでサムターンをケースに対して固定している。ケースのネジ穴の位置はケースの製造メーカ毎により位置が異なっており、ネジ孔8bはメーカ毎に異なる位置あるネジ穴に対応する位置にそれぞれ設けられる。つまり、
図4においては、ネジ孔8bの数を6としたが、数は6に限らず、他の個数でも良いのは言うまでもない。アタッチメント8に設けられた何れかのネジ孔8bを用いることで、ケースに設けられたサムターン用のネジ穴を流用してアタッチメント8を扉に対して固定することが可能となる。
【0035】
それぞれの回転軸孔8aは、6つのネジ孔8bと組になり1つのネジ孔グループGを形成する。一方のネジ孔グループG1は、電子錠本体3を垂直方向に取り付ける際に用いるネジ孔8bを含むグループであり、他方のネジ孔グループG2は、電子錠本体3を水平方向に取り付ける際に用いるネジ孔8bを含むグループである。ここで垂直方向とは、電子錠本体3を扉に固定した場合に、電子錠本体3の固定面における長辺が、扉の高さ方向と沿う向きとする。また、水平方向とは、電子錠本体3の固定面における長辺が、扉幅方向と沿う向きとする。ネジ孔グループG1のネジ孔8bを用いることで電子錠本体3を垂直に取り付けることができ、ネジ孔グループG2のネジ孔8bを用いることで電子錠本体3を水平に取り付けることができる。
【0036】
ネジ孔グループG1とネジ孔グループG2は、向きが90°ずれて配置されている。すなわち、ネジ孔グループG1の回転軸孔8aの中心を基準として、グループ内の各ネジ孔8bの相対位置を保ったまま90°回転させると、回転されたネジ孔グループG1のネジ孔8bの配置は、ネジ孔グループG2のネジ孔8bの配置と一致する。
【0037】
[電子錠本体の扉への取り付け方法]
図5を参照し、電子錠本体3の扉への固定方法について説明する。アタッチメント8を用いて扉に裏蓋5を固定する。そして、裏蓋5に対して電子錠本体3を固定することで、電子錠本体3が扉に対して固定される。
【0038】
初めに、サムターンとシリンダーを備える錠に代えて電子錠を付ける場合に、作業者は、ケースからサムターンとシリンダーを取り外す。サムターンは、図示しないサムターン用取り付けネジによりケースに対して固定されているので、サムターン用取り付けネジを外すことでサムターンをケースから外すことができる。
【0039】
次に、扉に対してアタッチメント8を重ねた裏蓋5を配置する。配置の際は、アタッチメント8のネジ孔8bの位置が、サムターン用取り付けネジが使用していたネジ穴の位置と合うようにする。また、裏蓋5と扉の接触面には、隙間が存在しないことが望ましいため、扉の凹凸がない部分に裏蓋5を配置することが望ましい。また、裏蓋5の接触面全体が扉よりはみ出さないようにする。
【0040】
そして、アタッチメント8のネジ孔8bの位置を、サムターン用取り付けネジが使用していたネジ穴の位置と合わせる。位置合わせをしたネジ孔8bとネジ穴に、サムターン用取り付けネジを入れてネジ締めし、裏蓋5とアタッチメント8とを扉に対して固定する。ここで、固定用にサムターン用取り付けネジを使用したが、ケースのネジ穴に対応する他のネジを用いても良い。
【0041】
そして、扉に対して固定された裏蓋5に対して電子錠本体3を固定することで、電子錠全体の扉への固定が行なわれる。
【0042】
[1-2.作用効果]
以上のような構成を有する本実施形態の電子錠では、電子錠本体3を垂直方向及び水平方向に固定する際にも1つのアタッチメント8を用いる。前述の通り、アタッチメント8は、各種のサムターン用のネジ穴に対応する孔と孔の組み合わせを2組有している。それぞれの組は、90゜回転した位置関係になっているので、いずれかの組を使用することで、アタッチメント8を縦位置と横位置に固定することができる。
【0043】
図6は、本実施形態のアタッチメント8の取り付け向きを示す正面図である。
図6(a)~(c)において、黒く塗りつぶした孔8bを使いアタッチメント8を固定する。
図6(a)は、アタッチメント8を縦位置に固定する際に用いる孔8bを示した図である。
図6(a)に示すように、アタッチメント8を扉に対して縦位置に固定する際には、孔8aを挟むように配置される2つの孔8bを使用する。この2つの孔8bは、縦位置固定用の孔の組の中でサムターン用のネジ穴の位置に対応する孔である。
【0044】
図6(b)は、アタッチメント8を横位置に固定する際に用いる孔8bを示した図である。
図6(b)に示すように、アタッチメント8を扉に対して縦位置に固定する際には、
図6(a)の場合と同様に、サムターン用のネジ穴の位置に対応する孔を使用するが、
図6(b)においては、
図6(a)のアタッチメント8を裏返し、さらに90゜回転させた状態で固定する。このようにすることで、アタッチメント8の横位置固定用の孔の組の中で、サムターン用のネジ穴と対応する孔8bを使用することなる。
【0045】
図6(c)も、
図6(b)と同様にアタッチメント8を横位置に固定する際に用いる孔8bを示した図であるが、
図6(b)が右開きの扉の室内側に電子錠本体3を設置する場合に適したアタッチメント8の固定向きであり、
図6(c)は左開きの扉の室内側に電子錠本体3を設置する場合に適したアタッチメント8の固定向きである。アタッチメント8を
図6(c)の位置にするためには、
図6(b)の向きで配置したアタッチメント8を、アタッチメント8の短辺を基準として裏返せばよい。
図6(c)の向きでアタッチメント8を固定することで、左開きの扉でも、電子錠本体3を扉に対して無理なく固定することが可能となる。
【0046】
本実施形態の電子錠は、以下のような効果を奏することが可能である。
(1)電子錠本体3は、ターン側カバー2aと電源側カバー2bとをボタン4を中心に対称に配置する。そのため、例え電子錠本体3を上下さかさまに扉に固定したとしても、デザイン上の違和感が無いことはもちろんのこと、使い勝手の変わらない電子錠を提供することが可能となる。また、例えば、
図7に示すように、ドアノブNや扉表面の凹凸を避けて電子錠本体3を水平方向に固定した場合にでも、同様にデザイン上の違和感のない、使い勝手に優れた電子錠を提供することが可能となる。
【0047】
(2)ターン側カバー2aと電源側カバー2bとを同一形状とした。これにより、それぞれ異なる形状のカバーを製造する場合と比較して、製造コストを抑えることが可能となる。また、商品パッケージ内に、予備のパーツとしてカバーを含める場合においても、ターン側カバー2aと電源側カバー2bの予備パーツとして1つのカバーで済ますというオプションを採用することも可能となる。
【0048】
(3)ターン側カバー2aと電源側カバー2bは、電子錠本体3の固定面に対して平行にスライドすることで、電子錠本体3の固定部に固定されるように構成した。扉には、開閉時に開閉方向に対して大きな衝撃が加わることがある。カバーを電子錠本体3の固定面に対して平行にスライドして固定することで、扉に衝撃が加わった場合にでも、カバーが電子錠本体3より脱落する可能性を少なくすることが可能となる。
【0049】
[2.第2実施形態]
次に、本発明に係る車載機器の第2の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
[2-1.構成]
図8に示すように、本実施形態では、ターン側カバー2aと電源側カバー2bの形状を一部変更したものである。すなわち、ターン側カバー2aにターン部6の先端部が貫通する貫通孔10を設け、電源側カバー2bに固定用ネジ孔13を設けたものである。
【0051】
図8(a)は、本実施形態の電子錠において、それぞれのカバーを外した状態を示す斜視図であり、
図8(b)は本実施形態の電子錠において、それぞれのカバーを固定した状態である。
図8(a)(b)に示すように、ターン側カバー2aには、貫通孔10が設けられている。貫通孔10は、ターン部6の先端部の外周よりも大きな内径である。
図8(b)に示すように、ターン側カバー2aを電子錠本体3に固定した場合には、この貫通孔10より、ターン部6の先端部が露出する。
【0052】
また、電源側カバー2bには、ネジ穴13が設けられている。また、電子錠本体3には、ネジ穴13が設けられ、電子錠本体3に固定した電源側カバー2bのネジ穴13にねじ込んだネジがネジ穴13にねじ込まれる。
【0053】
[2-2.作用効果]
本実施形形態の構成を有する電子錠では、
図8(a)に示すように、ターン側カバー2aを固定した場合に、貫通孔10よりターン部6の先端部が露出する。
【0054】
ターン部6は、電子錠本体3に内蔵するモータの力により回動しデッドボルトをスライドさせるだけでなく、ユーザーがターン部6を捻って回転させることでデッドボルトをスライドさせることが可能となる。しかしながら、ターン部6の先端部は、電子錠本体3と面一であるため、ユーザーが直接ターン部6を手で捻り、ターン部6を回動させることができない。
【0055】
そこで、ターン部6を回動させるツマミを用意することもできる。例えば、ターン部6の先端とツマミの内部に磁石を配置し、磁力により相対位置が固定された状態で、ツマミを回転させることでターン部6を回動させても良い。これにより、ターン側カバー2aに貫通孔10を設けることにより、カバーを付けた状態でターン部をユーザーの力により回転させることができる。また、単に磁力により相対位置を固定するのではなく、ターン部6とツマミとに溝や突起を設けておき、それそれを勘合させてもよい。これにより勢いよくツマミを回転させたとしても、ツマミとターン部6がずれにくくすることが出来る。このような構成とすることで、ツマミを使用する人を限定することで、ターン部を使用した開錠/施錠の管理をすることができる。
【0056】
本実施形態では、
図8に示すように、電源側カバー2bの固定にネジを用いる。電源側カバー2bの固定にネジを用いることで、電源側カバー2bをより強固に電子錠本体3に固定することができる。さらに、固定に用いるネジに、いたずら防止ネジを用いても良い。いたずら防止ネジとは、通常のプラスドライバやマイナスドライバ以外の異形溝を有する特殊ネジであり、取り外しに特殊な工具が必要となる。いたずら防止ネジには、六角ネジ、トルクスネジ、トライウィングネジ、ワンサイドネジなどを使用することができる。
【0057】
図8(b)に示すように、電源側カバー2bは電力供給部にアクセス可能な蓋7を覆う。不特定多数の人が使用する扉に電子錠本体3を固定した場合に、ネジによる電源側カバー2bの固定を行わない場合には、簡単に電源側カバー2bを外し蓋7を開け、電池やバッテリーを抜き取ることが可能となる。そこで、とり外しに特殊工具が必要となるネジを用いて、電源側カバー2bを固定することで、その様ないたずらを防止することが可能となる。
【0058】
いたずら防止ネジを用いた電源側カバー2b内は、一定のセキュリティが保たれた場所と言い換えることができるので、電子錠1の設定を変更する設定ボタン12を設ける場合にも都合が良い。このような設定ボタン12を、不特定多数の人がアクセス可能な場所に設けると、いたずらの対象となりやすいが、いたずら防止ネジを用い固定した電源側カバー2b内に設けることで一定のセキュリティを確保することが可能となる。
【0059】
[3.第3実施形態]
次に、本発明に係る車載機器の第3の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
[3-1.構成]
図9に示すように、本実施形態では、電子錠本体3に開閉検出用センサ13aを追加した構成である。開閉検出用センサ13aは、扉枠側に設置される開閉検出用センサ13bと対のセンサであり、2つのセンサにより扉の開閉の検出を行う。
【0061】
開閉検出用センサ13aは、電子錠本体3の側面4か所に設置可能な構成とする。つまり、
図9(a)に示すように電子錠本体3の長辺や、
図9(b)に示すように電子錠本体3の短辺に設置してもよい。開閉検出用センサ13aは、制御部の扉開閉判定部に対して信号を出力する。
【0062】
図10は、本実施形態の電子錠本体の取り付け状態を示す図である。
図10に示すように、扉には開閉検出用センサ13aが扉枠側に位置する用に電子錠本体3を固定する。そして、扉枠には、開閉検出用センサ13bを配置する。
【0063】
[3-2.作用効果]
図11は、本実施形態の制御部の機能を示す機能ブロック図である。本実施形態の制御部20には、扉開閉判定部24を新たに設ける。そして、制御部20がモータ23に対して開錠指令を出力する際の条件として、扉開閉判定部24の扉が閉まっているとの判定を用いる。
【0064】
扉が確実に閉まっていない状態、例えば、扉が閉まる位置から若干開いていた状態で、モータ23に対して施錠指示が出力されると、デッドボルトが扉枠側の受けに対して突出し扉枠を傷つけたり、デッドボルトをスライドさせる機構に負荷を与える可能性がある。また、扉が完全に空いた状態で、モータに対して施錠指示が出力されデッドボルトが扉から突出した状態で、扉を閉めるとデッドボルトが扉枠に衝突し、扉を閉めることができなくなる。
【0065】
制御部20がモータ23に対して開錠及び施錠指令を出す条件として、開閉検出用センサ13a、13bに基づく扉の開閉状態の判定を用いることで、電子錠の誤作動を防止することが可能となる。また、開閉検出用センサ13aの取り付け位置も、電子錠本体3が縦位置、横位置のどちらの場合でも対応する位置に設置可能であり、使い勝手に優れた電子錠を提供することが可能となる。
【0066】
[4.他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0067】
例えば、各実施形態では、電子錠本体3を縦位置に配置する態様として、ドアノブNが電子錠本体3よりも下に来る例を示したが、ドアノブNと電子錠本体3の位置はこれに限らない。例えば、ドアノブNが上に位置し、電子錠本体3が下に位置しても良い。
【0068】
また、電子錠本体3の形状を立方体としたがこれに限らない。例えば、電子錠の固定面が円、楕円、三角形、正方形であっても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 …電子錠
2a…ターン側カバー
2b…電源側カバー
3 …電子錠本体
4 …ボタン
5 …裏蓋
6 …ターン部
7 …蓋
8 …アタッチメント
8a…回転軸孔
8b…ネジ孔
10…貫通孔
12…設定ボタン
12…段差チップ
13…ネジ穴
13a…開閉検出用センサ
13b…開閉検出用センサ
20…制御部
21…開錠/施錠指令部
22…受信部
23…モータ
24…扉開閉判定部