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  • 特許-耐震構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】耐震構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230517BHJP
   E04B 1/98 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
E04H9/02 321Z
E04B1/98 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019145633
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021025353
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔展示会名〕 のいちひかりタウン構造見学会 〔開催日〕 令和1年7月27日~28日
(73)【特許権者】
【識別番号】519289154
【氏名又は名称】有限会社三谷工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】三谷 壽信
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-91778(JP,A)
【文献】特開平11-303414(JP,A)
【文献】特開2004-285817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/98
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として、コンクリート基礎の立ち上がりの上面に配設される複数の柱材及び該柱材間に架け渡される複数の横架材によって構築される木造建築物の耐震構造であって、
木造建築物の壁面において、開口部が配設される位置の開口部立ち上がりの上面が、該開口部が配設される位置以外の立ち上がりの上面より低くなるように段差を設け、
前記開口部立ち上がりの上面における両端に一対の柱材を立設し、
前記一対の柱材間に位置する前記開口部立ち上がりの上面に開口部土台を配設し、
前記一対の柱材の柱脚が、前記段差によって形成される前記立ち上がりの側面と前記開口部土台とで挟み込まれることを特徴とする木造建築物の耐震構造。
【請求項2】
前記一対の柱材間の上方にまぐさが配設されることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物の耐震構造。
【請求項3】
前記開口部土台の上方に窓台を配設し、前記立ち上がりの上面に配設される土台の上面と、前記窓台の上面とを同じ高さに調整したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の木造建築物の耐震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の耐震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物においては、耐力壁を多く設けることによって耐震性を向上することができる。しかし、近年は狭小間口の住宅も多く、建物の南側にできるだけ大きな開口部を確保しようとすると、建築基準法の関係で耐力壁が北側に多く配置されることとなる。従って、耐力壁をバランスよく配置することが困難になるとともに、耐力壁の偏りは耐震性に影響を及ぼすことにもなる。その結果、建物の南側に大きな開口部を設けることが困難となったり、設計の自由度が阻害されたりする場合がある。
【0003】
そこで、木造建築物の耐震構造に関する種々の発明が開示されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照。)。特許文献1に開示された木造構造物の耐震構造は、コンクリート基礎上に構築した木造骨組み体を有する木造建造物において、上記木造骨組み体が上記コンクリート基礎上に固定された土台、該土台上に固定されて上下方向に延びる通し柱又は管柱、及び該通し柱又は管柱に固定されて水平方向に延びる胴差又は桁を少なくとも含み、上記コンクリート基礎には上記通し柱又は管柱の側面の下端から所定高さまでの部分と接するコンクリート補強壁面が一体的に形成され、該コンクリート補強壁面には上記通し柱又は管柱の側面と接する箇所に少なくとも1本のアンカーボルトが埋設され、該少なくとも1本のアンカーボルトが上記通し柱又は管柱を挿通してナットに螺締されていることを特徴とする。
【0004】
上記の構成を備える特許文献1に係る木造構造物の耐震構造によると、金具工法の特徴を利用し、コンクリート基礎に補強壁面を設け、補強壁面にアンカーボルトを埋設し、補強壁面に通し柱又は管柱を沿わせてアンカーボルトを挿通してナットに螺合して締結するようにした点にある。
これにより、二階建て以上の木造建造物の場合には一階の通し柱、平屋の木造建造物の場合には管柱が補強壁面にアンカーボルトによって強固に固定され、アンカーボルトがいわゆるホールダウン金物としても機能するので、横方向の揺ればかりでなく、上下方向の揺れに対しても許容し得る大きさ以上に揺れることがなくなる結果、木造建造物が大地震によって破損し倒壊するおそれを確実に解消できる、と記載されている。
【0005】
また、特許文献2に開示された木造建築物における開口部用耐震フレームは、基礎と、この基礎の上面に並立された一対の柱と、これら柱の上面に横架された胴差及びマグサで形成された正面方形の開口部内に嵌込まれた正面方形に構成された耐震フレーム本体から構成され、耐震フレーム本体は、内方に向けL字状に構成された左枠と、内方に向けL字状に構成された右枠とを正面門形に連結して構成され、耐震フレーム本体の柱などの軸材への取付けは、ラグスクリューなどのコネクターで行われ、基礎への取付けは、アンカーボルトで行われていることを特徴とする。
【0006】
上記の構成を備える特許文献2に係る木造建築物における開口部用耐震フレームによると、木質構造体である縦部材、横架材(土台、胴差、梁、桁など)に、耐震フレーム本体を強固に取付けることにより構造体と一体に作用し、筋交い、構造用合板などを用いた耐力壁と同等またはそれ以上の効果を有する、と記載されている。また、耐震フレーム本体を正面方形の開口部に設けることにより、その正面方形の開口部が耐力壁となるため、建築物に正面方形の開口部を南面に大きく集中して設けたり、車庫、カーポート、店舗組込みによる大きな正面方形の開口部を設けても、耐震フレーム本体を組込むことにより建物全体のX方向、Y方向に対して全ての面がバランスの取れた建物となり、阪神大震災時のような地震による大きな偏心モーメントを発生させず、建物の倒壊、崩壊を防ぐことにより人命を守ることができる、とも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3823269号公報
【文献】特許第2946299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された木造構造物の耐震構造によると、コンクリート基礎に通し柱または管柱の側面の下端から所定高さまでの部分と接するコンクリート補強壁面が一体的に形成されているため、耐震性の向上が図られるものと思料する。しかし、コンクリート補強壁面も従来の耐力壁と同様に壁面を構成するため、設計の自由度が低くなるとともに、建物の南側の間口が狭小の場合、大きな開口部を配置することが困難となる。
【0009】
また、特許文献2に開示された木造建築物における開口部用耐震フレームによっても、耐震性の向上が図られるものと思料する。しかし、別部材によって構成される開口部用耐震フレームを設置する場合、建築コストの増大を招くおそれがある。
【0010】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、建物の南側が狭小であってもできるだけ大きな開口部を配置することができ、低コストでも耐震性を十分に確保することが可能な木造建築物の耐震構造を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の木造建築物の耐震構造は、主として、コンクリート基礎の立ち上がりの上面に配設される複数の柱材及び該柱材間に架け渡される複数の横架材によって構築される木造建築物の耐震構造であって、木造建築物の壁面において、開口部が配設される位置の開口部立ち上がりの上面が、該開口部が配設される位置以外の立ち上がりの上面より低くなるように段差を設け、前記開口部立ち上がりの上面における両端に一対の柱材を立設し、前記一対の柱材間に位置する前記開口部立ち上がりの上面に開口部土台を配設し、前記一対の柱材の柱脚が、前記段差によって形成される前記立ち上がりの側面と前記開口部土台とで挟み込まれることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の木造建築物の耐震構造において、前記一対の柱材間の上方にまぐさが配設されることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の木造建築物の耐震構造において、前記開口部土台の上方に窓台を配設し、前記立ち上がりの上面に配設される土台の上面と、前記窓台の上面とを同じ高さに調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の木造建築物の耐震構造によると、建物の南側が狭小であっても、耐震性を確保しつつ、できるだけ大きな開口部を配置することが可能となる。特に、一対の柱材の柱脚が、段差によって形成される立ち上がりの側面と開口部土台とで挟み込まれるため、一対の柱材が強固に、且つ横方向の揺れにしっかりと耐えうる態様で立設することができ、木造建築物の耐震性を確保しつつ、大きな開口部を設けることができる。
【0015】
また、基本的には従来の在来工法(木造軸組工法)であるため、設計の自由度も高く、低コストであっても耐震性に優れた木造建築物を提供することができる。
【0016】
更に、本発明の木造建築物の耐震構造において、一対の柱材間の上方にまぐさを配設することによって、壁面における開口部の割合が大きくなっても、一対の柱材、開口部土台及びまぐさによって耐震枠組を形成することができ、木造建築物の耐震性を十分に確保することが可能となる。
【0017】
また更に、本発明の木造建築物の耐震構造において、開口部土台の上方に窓台を配設することによって、立ち上がりの上面に配設される土台の上面と、窓台の上面とを同じ高さに調整することができ、木造建築物Bの床面の高さを一定にすることができるとともに、開口部の両側に配設された一対の柱材のそれぞれの柱脚を、立ち上がりの側面と、開口部土台及び窓台とで挟み込むことができ、一対の柱材をより強固に、横方向の揺れにも十分に耐えうる態様で立設することができる。更には、壁面における開口部の割合がより大きくなっても、一対の柱材、開口部土台、窓台及びまぐさによって更に強固な耐震枠組を形成することができ、木造建築物の耐震性をより一層、向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る木造建築物の耐震構造の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の木造建築物の耐震構造の実施形態について、図面に基づいて詳述する。図1は本発明の一実施形態に係る木造建築物の耐震構造10の要部を示す側面図である。同図に示すように、本実施形態の木造建築物Bの耐震構造10は、主として、コンクリート基礎11の立ち上がり12の上面12aに配設される複数の柱材13,13及び柱材13,13間に配設される複数の横架材14によって構築される。
【0020】
本実施形態における木造建築物Bの基本的な構造は、通常の木造建築物における軸組構造が採用される。即ち、コンクリート基礎11の立ち上がり12上に立設される複数の柱材13,13、及び柱材13,13間に配設される土台15や胴差16等の複数の横架材14によって構築される。なお、同図中に符号17で示すのは基礎パッキンであり、立ち上がり12の上面12aや、後述する開口部立ち上がり20の上面20aに敷設される。
【0021】
そして、本実施形態の耐震構造に係る木造建築物Bの壁面Wにおいて、開口部Oが配設される位置には、開口部立ち上がり20の上面20aが、開口部Oが配設される位置以外の立ち上がり12の上面12aより低くなるように段差21が設けられている。
【0022】
開口部立ち上がり20の上面20aにおける両端には、一対の柱材22,22が立設される。通常であれば、柱材13は立ち上がり12の上面12aに配設された土台15上に立設されるが、本実施形態に係る開口部Oの位置に配設される一対の柱材22,22は、開口部立ち上がり20の上面20aに直接、立設されている。そして、この一対の柱材22,22間に位置する開口部立ち上がり20の上面20aに、開口部土台24が配設されている。
【0023】
以上のように、コンクリート基礎11に段差21を設け、開口部立ち上がり20の上面20aの両端に一対の柱材22,22を立設し、この一対の柱材22,22間に開口部土台24を配設することによって、一対の柱材22,22のそれぞれ柱脚22a,22aを、段差21によって形成される立ち上がり12の側面12bと開口部土台24とで挟み込むことができる。
【0024】
つまり、開口部Oの両側に立設される一対の柱材22,22のそれぞれ柱脚22a,22aが、段差21によって形成される立ち上がり12の側面12bと開口部土台24とで挟み込まれることによって、一対の柱材22,22が強固に、且つ横方向の揺れにしっかりと耐えることができる態様で立設されるため、木造建築物Bの耐震性を確保しつつ、開口部Oを設けることができる。
【0025】
以上、本発明の一実施形態に係る耐震構造10について説明したが、開口部Oの配設位置において、一対の柱材22,22間の上方には、まぐさ25(横架材14)を配設することがより好ましい。まぐさ25を配設することによって、壁面Wにおける開口部Oの割合が大きくなっても、一対の柱材22,22、開口部土台24及びまぐさ25によって耐震枠組を形成することができ、木造建築物Bの耐震性を十分に確保することが可能となる。なお、まぐさ25の配設位置は、開口部Oの高さ方向の寸法によって決定されるが、まぐさ25と胴差16との間には、必要に応じて開口部上部たて枠(不図示)が配設されてもよい。
【0026】
また、本実施形態の耐震構造10において、開口部Oの配設位置における開口部立ち上がり20の上面20aに配設された開口部土台24の上面24aは、段差21が形成されていることによって、開口部Oの配設位置以外の立ち上がり12の上面12aに配設された土台15の上面15aより下側に位置している。
【0027】
そこで、開口部土台24の上方に窓台26を配設することによって、立ち上がり12の上面12aに配設される土台15の上面15aと、窓台26の上面26aとを同じ高さに調整してもよい。このように、開口部土台24の上方に窓台26を配設し、土台15の上面15aと、窓台26の上面26aとを同じ高さに調整することによって、木造建築物Bの床面の高さを一定にすることができるとともに、開口部Oの両側に配設された一対の柱材22,22のそれぞれの柱脚22a,22aを立ち上がり12の側面12bと、開口部土台24及び窓台26とで挟み込むことができ、一対の柱材22,22をより強固に立設することができる。更には、壁面Wにおける開口部Oの割合がより大きくなっても、一対の柱材22,22、開口部土台24、窓台26及びまぐさ25によって更に強固な耐震枠組を形成することができ、木造建築物Bの耐震性をより一層、向上することができる。
【0028】
なお、開口部土台24の上方に配設される窓台26は、その寸法に応じて、開口部土台24の上方に直接配設されてもよく、図1に示すように、開口部下部たて枠27を介して配設されてもよい。また、立ち上がり12の上面12aに配設される土台15の上面15aと、開口部Oに配設される開口部土台24の上面24aとの高さを合わせるべく、開口部土台24そのものの高さ方向の寸法を調整してもよい。
【0029】
以上に例示した本発明の実施形態に係る木造建築物の耐震構造10は、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0030】
10:耐震構造
11:コンクリート基礎
12:立ち上がり
12a:立ち上がりの上面
12b:立ち上がりの側面
13,22:柱材
14:横架材
15:土台
15a:土台の正面
16:胴差
17:基礎パッキン
20:開口部立ち上がり
20a:開口部立ち上がりの上面
21:段差
22a:柱脚
24:開口部土台
24a:開口部土台の上面
25:まぐさ
26:窓台
26a:窓台の上面
27:開口部下部たて枠
B:木造建築物
W:壁面
O:開口部
図1