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  • 特許-金属ベリリウム球の連続製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】金属ベリリウム球の連続製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20230517BHJP
   F27B 7/28 20060101ALI20230517BHJP
   F27B 7/06 20060101ALI20230517BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20230517BHJP
   B07B 1/00 20060101ALI20230517BHJP
   B01J 2/12 20060101ALI20230517BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230517BHJP
   B22F 1/148 20220101ALI20230517BHJP
   B22F 9/02 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B22F9/00 Z
F27B7/28
F27B7/06
F27D1/00 K
B07B1/00 B
B01J2/12
B22F1/00 R
B22F1/148
B22F9/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019191620
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021066908
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000140627
【氏名又は名称】株式会社化研
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 克嘉
(72)【発明者】
【氏名】名取 ゆり
(72)【発明者】
【氏名】池本 憲弘
(72)【発明者】
【氏名】赤津 孔明
(72)【発明者】
【氏名】米原 和男
(72)【発明者】
【氏名】川上 智彦
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155320(JP,A)
【文献】特開2006-265023(JP,A)
【文献】特開2013-209694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-9/30
F27B 7/00-7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベリリウム粉末を回転焼成炉に投入して造粒されたベリリウム球を回収する工程と、
前記ベリリウム球を自動篩で粒径ごとに分級する工程と、
粒径が対象外の前記ベリリウム球を粉砕して前記ベリリウム粉末に混合して再利用する工程と、を有し、
前記回転焼成炉は、アルミナ管の内側表面に、アルカリ性シリカ処理を施し、水酸化ベリリウムのスラリーをコーティングした上で、焼結させることにより、酸化ベリリウムが被覆された炉心管を有する、
ことを特徴とする金属ベリリウム球の連続製造方法。
【請求項2】
前記回転焼成炉は、炉心管に被覆された酸化ベリリウムの厚さが50~200μmであり、炉心管を5~10°傾斜させ、不活性ガス雰囲気で1300~1500℃に加熱され、毎分20~120回転させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属ベリリウム球の連続製造方法。
【請求項3】
前記自動篩は、0.5~2mmの粒径を対象とする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ベリリウム球の連続製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真球度の高い金属ベリリウムの微小球を連続で大量に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核融合炉燃料として使われるトリチウム(三重水素)は、中性子をリチウム(Li)に照射して生産されるが、中性子の数を増やして効率良く生産するための中性子増倍材として金属ベリリウム(Be)やベリリウム金属間化合物(ベリライド)等が挙げられる。ベリリウムは、医療用レントゲンのX線透過膜にも利用されているが、中性子反射材や増倍材としてウラン型原子炉やトリチウムを燃料とする核融合炉には欠かせない物質であり、ブロック状又は1mmφ程度の微小球として利用される。
【0003】
特許文献1に記載されているように、金属ベリリウムの製造方法には、塩化ベリリウム(BeCl)を融解させ電気分解することでフレーク(薄片)又はパウダー(粉末)状の金属ベリリウムを得る溶融塩電解法や、フッ化ベリリウム(BeF)をマグネシウム(Mg)で還元することでペブル(小球)状の金属ベリリウムを得るマグネシウム還元法などがある。
【0004】
しかし、マグネシウム還元法では、不純物元素を多く含み、真球度も低いことから、密閉容器内で円柱状の金属ベリリウムを電極としてプラズマを発生させ、電極を回転させることで溶融したベリリウム液滴を飛散させて凝固させることにより球状の金属ベリリウムペブルを得る回転電極法もある。
【0005】
なお、金属ベリリウムに中性子が照射されると、スエリング(体積膨張)により破損するおそれがある。そのため、特許文献2に記載されているように、スエリングの発生を防止し、トリチウム放出能を向上させた金属ベリリウムペブルの製造方法の発明も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-088102号公報
【文献】特許第3076068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、回転電極法においては、粒径を小さくすることができ真球度も高くなるが、大掛かりな設備を利用するため高コストで製造プロセスが煩雑となるにも関わらず、製造収率(歩留り)が高いとは言えない。
【0008】
そこで、本発明は、真球度の高い金属ベリリウムの微小球を簡単な方法で効率良く低コストで大量に製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明である金属ベリリウム球の連続製造方法は、ベリリウム粉末を回転焼成炉に投入して造粒されたベリリウム球を回収する工程と、前記ベリリウム球を自動篩で粒径ごとに分級する工程と、粒径が対象外の前記ベリリウム球を粉砕して前記ベリリウム粉末に混合して再利用する工程と、を有し、前記回転焼成炉は、アルミナ管の内側表面に、アルカリ性シリカ処理を施し、水酸化ベリリウムのスラリーをコーティングした上で、焼結させることにより、酸化ベリリウムが被覆された炉心管を有する、ことを特徴とする。
【0010】
前記金属ベリリウム球の連続製造方法において、前記回転焼成炉は、炉心管に被覆された酸化ベリリウムの厚さが50~200μmであり、炉心管を5~10°傾斜させ、不活性ガス雰囲気で1300~1500℃に加熱され、毎分20~120回転させる、ことを特徴とする。
【0011】
前記金属ベリリウム球の連続製造方法において、前記自動篩は、0.5~2mmの粒径を対象とする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真球度の高い金属ベリリウムの微小球を簡単な方法で効率良く低コストで大量に製造することができる。なお、ベリリウム粉末を回転焼成炉で造粒するにあたり、アルミナ(Al)製の炉心管の内側表面に高温で不活性な酸化ベリリウム(BeO)を被覆しておくことで、ベリリウム粉末が炉心管へ融着したり、ベリリウム粉末が酸化したりすることを防止することができる。この酸化ベリリウム被覆処理によって、円滑にベリリウム球を連続的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明である金属ベリリウム球の連続製造方法において原料となるベリリウムの生成方法の手順を示す図である。
図2】本発明である金属ベリリウム球の連続製造方法において使用する回転焼成炉の概観を示す図である。
図3】本発明である金属ベリリウム球の連続製造方法において使用する回転焼成炉の炉心管の状態を示す図である。
図4】本発明である金属ベリリウム球の連続製造方法の全体の流れを示す図である。
図5】本発明である金属ベリリウム球の連続製造方法と従来の方法を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0015】
まず、本発明である金属ベリリウム球の連続製造方法について説明する。図1は、金属ベリリウム球の連続製造方法において原料となるベリリウムの生成方法の手順を示す図である。図2は、金属ベリリウム球の連続製造方法において使用する回転焼成炉の概観を示す図である。図3は、回転焼成炉の炉心管の状態を示す図である。図4は、金属ベリリウム球の連続製造方法の全体の流れを示す図である。図5は、金属ベリリウム球の連続製造方法と従来の方法を比較した図である。
【0016】
図1に示すように、ベリリウムを生成する方法としては、マグネシウム還元法と溶融塩電解法などがある。マグネシウム還元法では、まず、ベリリウム鉱石を粉砕し、処理を施すことで不純物が含まれた水酸化ベリリウム(Be(OH))を得る。そして、水酸化ベリリウムにフッ化水素アンモニウム(NHF-HF)を反応させ、不純物を取り除き加熱などの処理を施すことでフッ化ベリリウム(BeF)を得る。さらに、フッ化ベリリウムをマグネシウムと一緒に1300℃に加熱して還元させることで、粒径1mm程度の凹凸の多いベリリウム球が得られる。
【0017】
また、溶融塩電解法では、同様に、ベリリウム鉱石を粉砕し、処理を施すことで水酸化ベリリウムを得る。そして、水酸化ベリリウムに塩素を炭素電極で電解反応させることにより塩化ベリリウム(BeCl)を得る。さらに、塩化ベリリウムを融解させ電気分解することでベリリウム片が得られる。これを粉砕しベリリウム粉末にして原料として利用すれば良い。
【0018】
図2に示すように、回転焼成炉100を用いて、原料であるベリリウム粉末110(粒径10~50μm)から、真球度の高いベリリウム球120(粒径0.5~2mm)を生成する。回転焼成炉100として、炉心管200が5~10°傾いたロータリーキルンを使用し、炉心管200に周りにヒータ等の加熱手段220を配置して、ベリリウムの融点が1287℃であることから1300~1500℃で加熱し、回転焼成炉100の回転速度と傾斜角度を制御すれば良い。
【0019】
炉心管200内には、酸化反応を防止するためにアルゴン(Ar)やヘリウム(He)などの不活性ガス210を導入し、回転手段230によって炉心管200を回転させながら、上側の投入部300(図4参照)から炉心管200内にベリリウム粉末110を投入する。炉心管200内で加熱されたベリリウム粉末110の集合体を固めて焼結させると共に、炉心管200内を螺旋状に転がることでベリリウム球120として成長し、造粒し焼結されたベリリウム球120が下側の回収部400(図4参照)で回収される。
【0020】
炉心管200には、アルミナ管などを使用するが、ベリリウムは、高温で化学的に活性なため、加熱された一般的にセラミックス製の炉心管200の内側表面(内壁)と反応しやすく、そのため投入したベリリウム粉末110又は生成されたベリリウム球120が炉心管200内壁に融着してしまい、スムーズなベリリウム球120の造粒が進行しなくなるおそれがある。
【0021】
それを防止するため、炉心管200内壁に酸化ベリリウムを膜状に形成させる。酸化ベリリウムは、高融点で蒸気圧も低く、耐火性材料として優れ、酸にもアルカリにも反応しない化学的に極めて安定な物質である。
【0022】
図3に示すように、炉心管200であるアルミナ管の内側表面に対して、まずアルカリ性シリカ処理を施す。そこに水酸化ベリリウムのスラリーをコーティングする。それを1400℃で焼成することにより、酸化ベリリウムの被覆(コーティング厚50~200μm)を施す。
【0023】
図4に示すように、不活性ガス210雰囲気で、投入部300から炉心管200に投入されたベリリウム粉末110が、酸化ベリリウムで被覆された炉心管200を転がりながら加熱されることでベリリウム球120として焼結され、回収部400において回収される。
【0024】
その後、ベリリウム球120は、自動篩500において、例えば、目開きサイズが0.5mm、0.8mm、1.2mm、2mmのように、目的とする粒径ごとに分級される。対象外の粒径(0.5mm未満又は2mmより大)の場合は、粉砕機600において粉砕した上で投入部300に投入することで、原料であるベリリウム粉末110と混合され再利用される。この処理により、原料ベリリウムの損失が抑制される。
【0025】
図5に示すように、従来のマグネシウム還元法では、ベリリウム球の表面に凹凸が多く不揃いであり、真球度も70~85%と低く、焼結密度も1.75~1.79g/cc(95~97%)とやや低く、製造コストも高い。また、従来の回転電極法では、真球度は95%以上と高く、表面も平滑ではあるが、孔が空いている場合があり、焼結密度も1.70~1.78g/cc(92~96%)と低く、製造時間も長く(1~3日以上)、製造コストもかなり高い上に、製造に伴う原料ベリリウムのロスも30%以上発生している。
【0026】
それに対し、本発明では、ベリリウム球の表面は波紋状で、真球度も90%以上と高く、焼結密度も1.85g/cc(98~100%)と高く、製造時間が短く(10~30分以下)、製造コストも低い上に、製造ロスも5%以下である。しかも、製造プロセスが簡単であり、大量生産も容易である。
【0027】
本発明によれば、真球度の高い金属ベリリウム球を簡単な方法で効率良く低コストで大量に製造することができる。ベリリウム粉末を回転焼成炉で造粒するにあたり、アルミナ(Al)製の炉心管の内側表面に高温で不活性な酸化ベリリウム(BeO)を被覆しておくことで、ベリリウム粉末が炉心管へ融着したり、ベリリウム粉末が酸化したりすることを防止することができる。この酸化ベリリウム被覆処理によって、円滑にベリリウム球を連続的に製造することができる。
【0028】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、核融合に欠かせない中性子増倍材(Be)だけでなく、トリチウム増殖材(LiTiOやLiO)の球体を製造する場合、あるいは他の金属やセラミックスの球体を製造する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100:回転焼成炉
110:ベリリウム粉末
120:ベリリウム球
200:炉心管
210:不活性ガス
220:加熱手段
230:回転手段
300:投入部
400:回収部
500:自動篩
600:粉砕機
図1
図2
図3
図4
図5