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▶ アレグロ ファーマシューティカルズ エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ペプチド組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20230517BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230517BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/12
A61K31/185
A61K38/08
A61P9/00
A61P27/02
A61P9/10
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K38/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019570511
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 US2018038365
(87)【国際公開番号】W WO2018236931
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】62/521,984
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519341234
【氏名又は名称】アレグロ ファーマシューティカルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Allegro Pharmaceuticals,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ジョン ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】カラジョージアン、ハンパー エル.
(72)【発明者】
【氏名】カラジョージアン、ビッケン エイチ.
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-510863(JP,A)
【文献】特開2003-313119(JP,A)
【文献】RAPID COMMUNICATIONS IN MASS SPECTROMETRY,2005年,Vol.19,pp.23-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/00-7/66
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミノ酸配列R-G-Cys(酸)-G-G-G-D-Gを含むペプチドを含む物質の組成物であって、血管新生または病的もしくは異常な血管の発達を阻害するための組成物。
【請求項2】
前記ペプチドが、前記アミノ酸配列R-G-Cys(酸)-G-G-G-D-Gを含むペプチドの塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記塩が、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、および塩酸塩形態から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
タウリンをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、2017年6月19日に出願された、「Peptide Compositions and Related Methods」と題する米国仮特許出願第62/521,984号の優先権を主張するものであり、この仮出願の全開示内容は、参照により明確に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に生物学および医学の分野に関し、より具体的には、ペプチド組成物およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
37 CFR 1.71(e)に準拠して、本特許文書は、著作権保護の対象となる材料を含んでおり、本特許文書の所有者は、すべての著作権をいかなるものでも保有する。
本特許出願を通して、アミノ酸は、以下の名称、3文字コード、および1文字コードを用いて、互換的に参照され得る:
【0004】
【表1】
【0005】
出願人は、多数のインテグリンを阻害し、かつ有意な抗血管新生、抗炎症、神経保護および他の効果を有することが示されている合成オリゴペプチドグリシニル-アルギニル-グリシニル-システイン酸(酸)-スレオニル-プロリン(配列番号1)(ALG-1001またはLuminate(登録商標)、Allegro Ophthalmics、LLC)を開発している。眼へ投与された場合、ALG-1001は、硝子体索切断(vitreolysis)、後部硝子体網膜剥離(PVD)を引き起こし、滲出型黄斑変性症(WMD)、非滲出型黄斑変性症(DMD)、糖尿病性網膜症(PDR)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、および硝子体黄斑牽引(VMT)などの眼疾患の治療に使用可能である。ALG-1001および関連化合物に関するさらなる情報は、「Peptide Compositions and Therapeutic Uses Thereof」と題する米国特許第9,018,352号、「Compositions and Methods for Inhibiting Cellular Adhesion or Directing Diagnostic or Therapeutic Agents to RGD Binding Sites」と題する第9,872,886号、および「Integrin Receptor Antagonists and Their Methods of Use」と題する第9,896,480号、ならびに出願中の「Therapeutic and Neuroprotective Peptides」と題する米国特許出願第15/874,814号において見出され、かかる特許および特許出願の全開示内容は、参照により明確に本明細書に組み込まれる。
【0006】
下記するように、出願人は、多数の追加の新規ペプチドを合成し、かつ初期試験を実施し、その多くは、インビボ試験において治療効果を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、ペプチド化合物、およびヒトまたは動物対象において病的または異常な血管の発達の血管新生を阻害するための方法が提供される。
本発明の一態様に従って、式:
Y-X-Z
を有するアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含むペプチドを含む物質の組成物であって、
式中:
Y=R、H、K、Cys(酸)、G、またはDであり、
X=G、A、Cys(酸)、R、G、D、またはEであり、
Z=Cys(酸)、G、C、R、D、N、またはEである、組成物が提供される。かかるペプチドは、アミノ酸配列;R-G-Cys(酸)、R-R-Cys、R-Cys酸)-G、Cys(酸)-R-G、Cys(酸)-G-R、R-G-D、R-G-Cys(酸).H-G-Cys(酸)、R-G-N、D-G-R、R-D-G、R-A-E、K-G-D、R-G-Cys(酸)-G-G-G-D-G(配列番号2)、シクロ-{R-G-Cys(酸)-F-N-Me-V}(配列番号3)、R-A-Cys(酸)、R-G-C、K-G-D、Cys(酸)-R-G、Cys(酸)-G-R、シクロ-{R-G-D-D-F-NMe-V}(配列番号4)、H-G-Cys(酸)、およびそれらの塩を含むか、またはそれらからなり得る。可能な塩は、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩(TFA)、および塩酸塩を含むが、これらに限定されない。かかるペプチドは、少なくとも、ヒトまたは動物対象において病的または異常な血管の発達の血管新生を阻害するために有用である。
【0008】
さらに本発明に従って、本発明のペプチド、または合成オリゴペプチドグリシニル-アルギニル-グリシニル-システイン酸(酸)-スレオニル-プロリン(配列番号1)は、タウリンと組み合わされ、病的または異常な血管の発達の血管新生を阻害する目的のためにヒトまたは動物対象へ投与されてもよい。
【0009】
さらになお本発明に従って、病的または異常な血管の発達の血管新生の阻害を必要とするヒトまたは動物対象において病的または異常な血管の発達の血管新生を阻害するための方法であって、かかる対象に治療有効量の上記で要約したようなペプチドを含む組成物を投与する工程を含む方法が提供される。いくつかの場合では、かかる方法は、血管新生または病的または異常な血管の発達が生じる眼の疾患または障害を治療するために実施され得る。かかる眼の疾患または障害は、糖尿病性網膜症、血管新生性加齢性黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)、鎌状赤血球網膜症、網膜静脈閉塞症、虚血誘発性網膜症、および特定の眼の炎症性疾患を含むが、必ずしもこれらに限定される必要はない。
【0010】
さらになお本発明に従って、ヒトまたは動物対象の眼の外側の場所において血管新生または病的または異常な血管の発達を阻害するための方法が提供される。いくつかの場合では、かかる方法は、血管新生腫瘍の成長または転移を阻害するために実施され得る。
【0011】
本発明のなおさらなる態様および詳細は、本明細書で下記に示される詳細な説明および実施例を読むことで理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】His-Gly-Cys(酸)(試験化合物第14)または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図2】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Arg-Ala-Cys(試験化合物第3)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図3】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(試験化合物第1/陽性対照)、Arg-Ala-Asp(試験化合物第23)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図4】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Arg-Ala-Cys(酸)(試験化合物第3)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図5】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Arg-Gly-Cys(試験化合物第4)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図6】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Arg-Gly-Cys(酸)TFA(マスクされた)(試験化合物第1)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図7】Lys-Glys-Asp(試験化合物第20)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図8】His-Gly-Cys(酸)(試験化合物第14)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図9】Lys-Gly-Cys(酸)(試験化合物第6)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図10】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Arg-Cys(酸)-Gly(試験化合物第5)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図11】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Arg-Gly-Cys(酸)酢酸塩(試験化合物第2)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、CNVマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図12】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Arg-Gly-Cys(酸)酢酸塩(試験化合物第2)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図13】Asp-Gly-Arg(試験化合物第17)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図14】Arg-Gly-Asp(試験化合物第15)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図15】Arg-Cys(酸)-Gly(試験化合物第18)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図16】Arg-Gly-Cys(酸)-Gly-Gly-Gly-Asp-Gly(配列番号2)(試験化合物第7)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図17】Arg-Ala-Glu(試験化合物第19)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図18】Gly-Cys(酸)-Arg(試験化合物第11)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図19】Cys(酸)-Ala-Arg(試験化合物第10)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図20】Arg-Glu-Gly(試験化合物第22)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図21】Cys(酸)-Arg-Gly(試験化合物第8)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図22】Arg-Gly-Asn(試験化合物第16)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図23】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、シクロ-{R-G-D-D-F-NMe-V}(配列番号4)(試験化合物第13)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図24】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、シクロ-{R-G-Cys(酸)-F-N-Me-V}(配列番号3)(試験化合物第12)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図25】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、Cys(酸)-Gly-Arg(試験化合物第9)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図26】His-Gly-Cys(酸)(試験化合物第14)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
図27】Arg-Gly-Cys(酸)TFA(陽性対照)、タウリン(試験化合物第25)、Arg-Gly-Cys(酸).TFA+タウリン(試験化合物第24)、または対照ペプチド(Arg-Gly-Glu)のいずれかを用いて治療した後の、ROPマウス眼における網膜新生血管領域の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明およびそれが参照する添付の図面は、必ずしも本発明のすべての実施例または実施形態を記載する必要はなく、いくつかの実施例または実施形態を記載することが意図される。記載される実施形態は、すべての点において、単に説明的であり、限定的ではないことが考慮される。本発明の詳細な説明および添付の図面の内容は、本発明の範囲をいかなるようにも限定するものではない。
【0014】
糖尿病性網膜症、血管新生性加齢性黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)、鎌状赤血球網膜症、網膜静脈閉塞症、虚血誘発性網膜症、特定の眼の炎症性疾患、および血管新生腫瘍の成長または転移を含む、多数の疾患および障害は、血管新生または病的または異常な血管の発達を引き起こすことが知られている。出願人は、下記するように、抗血管新生マウスROPモデルにおいて活性があることが示されている多数の化合物を見出した。これに基づき、かかる化合物は、上記した疾患および障害を含むがこれらに限定されない、血管新生または病的もしくは異常な血管の発達を引き起こすことが知られている疾患および障害の治療において潜在的に有用である。
【0015】
各試験化合物を、注射用に、0.08mg/100μLの塩化ナトリウムおよび0.005mg/100μLのクエン酸三ナトリウムを含有する滅菌水中で調製し、ペプチドの濃度は、2.0mg/100μLの濃度、およびpH=2.7であり、滅菌濾過により、滅菌バイアル中に分配した。タウリン試験化合物をSigma Aldrich companyから入手し、これは、>99%の純度であり、以前に記載されたのと同じ方法で調製し、3.0mg/100μLの濃度を有した。2.0mg/100μLのR-G-Cys(酸)+3.0mg/100μLのタウリンを、上記と同じ方法で調製した。
【0016】
虚血誘発性網膜血管新生に対する活性について試験化合物をスクリーニングするために、マウスの未熟児網膜症(ROP)の十分に確立したモデルを用いた。C57BI/6マウスの同腹子を、出生後(P)7日目に75%の酸素中に置き、(P)12日目に室内空気へと戻した。子らは、1群あたり4~10匹の動物の治療群へと無作為に割り当てた。子らは以下のように治療された。治療用の眼は、20マイクログラムの試験化合物を含有する1.0マイクロリットルの溶液の硝子体内注射により治療された。
【0017】
出生後17日目、硝子体内注射の5日後に、動物を犠牲にし、網膜をフラットマウントし、各網膜中の血管新生領域を蛍光デキストラン画像分析により測定した。
出願人は、トリペプチドR-G-システイン酸(酸)をオリゴペプチドグリシニル-アルギニル-グリシニル-システイン酸(酸)-スレオニル-プロリン(配列番号1)(ALG-1001またはLuminate(登録商標)、Allegro Ophthalmics、LLC)のインテグリン結合モチーフとして同定した。R-G-システイン酸(酸)トリペプチド(試験化合物第1および第2)のトリフルオロ酢酸塩(TFA)および酢酸塩を、上記したようなROPマウスモデル、ならびにLambert、Vら、Laser-Induced Choroidal Neovascarization Model to Study Age Related Macular Degeneration in Mice、Nature Protocols、8;2197-2211(2013)により一般的に記載されているようなレーザー光凝固により誘発された脈絡膜新生血管のマウスモデル(「CNVマウスモデル」)の両方において試験した。「対照」群に割り当てられた動物は、不活性であることが知られているArg-Gly-Glu(対照ペプチド)の硝子体内注射により治療された。実験のいくつかには、さらなる「陽性対照」群が含まれた。「陽性対照」群に割り当てられた動物は、活性であることが知られているArg-Gly-Cys(酸)TFAの硝子体内注射により治療された。
【0018】
以下の表1は、試験した用量での各試験化合物の血管新生阻害効果を要約したものである。各場合において、具体的に「CNV」と記されている2つの表エントリを除き、データはROPマウスモデルを用いて得られた。「CNV」と記されている表エントリのもののみ、CNVマウスモデルから得られたデータを示す。表1で要約された試験結果を示す棒グラフはまた、図1~27として本明細書で提供される。図で示される場合、試験実施者が各試験化合物の正体または構造を知ることがないように、試験は盲検様式で実施された。
【0019】
【表2】
【0020】
試験化合物のいくつかでは、GRGCys(酸)TP(配列番号1)(ALG-1001)中の結合モチーフRGCys(酸)トリペプチドのアミノ酸配列は再編成され、および/または他の塩基性、酸性、および中性アミノ酸で置換された。上記で要約したROPおよびCNV試験の結果に基づくと、結果は、GRGCys(酸)TPペプチド(配列番号1)(ALG-1001/Luminate)中のアルギニン、アラニン、およびシステイン酸の存在、特に、R-G-CysおよびR-A-Cysの配列が、血管新生の抑制において重要な役割を果たしていることを示している。さらに、アルギニンの存在下で、中性アミノ酸によるシステイン酸(酸)の置換は、これらの実験において強力な抑制効果を示した。
【0021】
【化1】
【0022】
式中、
Y=R*、H、K、Cys(酸)、G、またはDであり、
X=G*、A、Cys(酸)、R、G、D、またはEであり、
Z=Cys*、G、システイン、R、D、N、またはEである。
【0023】
*は、陽性対照として使用されたGRGCys(酸)TP(配列番号1)(ALG-1001)中のトリペプチドのRGCys(酸)結合モチーフの構成要素を示す。
本明細書で示された初期データに基づくと、R-G-システイン酸結合モチーフに対してなされた特定の変化に関して、特定の構造/活性の関係が示唆される。例えば、R-G-システイン酸(酸)結合モチーフのアミノ酸R(すなわち、Y構成要素)が塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸により置換される場合、ペプチドの抗血管新生効果は軽減し、一方で、結合モチーフ中のアルギニンの存在下では、構成要素Yとしてのアスパラギン酸は、ペプチドの抗血管新生効果を促進するようだ。
【0024】
R-G-システイン酸結合モチーフのアミノ酸G(すなわち、X構成要素)が塩基性または酸性アミノ酸により置換される場合、ペプチドの抗血管新生効果は減少する。しかし、アルギニン(強い水素結合)の存在下では、疎水性相互作用(アラニンおよびアスパラギン酸)についての2つの炭素長スペースは、ペプチドの抗血管新生効果に影響を与えないだろう。
【0025】
R-G-システイン酸(酸)結合モチーフのCys(酸)(すなわち、Z構成要素)が中性アミノ酸により置換される場合、ペプチドの血管新生阻害活性は増大するが、一方で、酸性または塩基性アミノ酸によるZ構成要素の置換は、血管新生阻害活性の減少を引き起こす。
【0026】
すべては、オリゴペプチドグリシニル-アルギニル-グリシニル-システイン酸(酸)-スレオニル-プロリン(配列番号1)(ALG-1001またはLuminate(登録商標)、Allegro Ophthalmics、LLC)のR-G-システイン酸(酸)は血管新生の抑制のために重要であることを示している。また、グリシニル-アルギニル-グリシニル-システイン酸(酸)-スレオニル-プロリン(配列番号1)(ALG-1001)1部に対するタウリン3部の付加は、血管新生抑制活性を促進する。
【0027】
本発明は本発明の特定の実施例または実施形態を参照して本明細書で上記のように記載されてきたが、本発明の意図する精神および範囲から逸脱することなく、様々な付加、欠失、改変、および修飾が記載された実施例および実施形態に対してなされてもよいことが理解されるべきである。別に特定されない限り、またはその意図する用途に不適切となる実施形態または実施例を生み出さない限り、例えば、ある実施形態または実施例の任意の要素、工程、メンバー、構成要素、組成物、反応物質、部数、または部分は、別の実施形態または実施例に組み込まれてもよく、または別の実施形態または実施例と共に使用されてもよい。また、方法またはプロセスの工程が特定の順序で記載されているか、または列挙されている場合、別に特定されない限り、またはその意図する用途に不適切となる方法またはプロセスを生み出さない限り、そのかかる工程の順序は変更されてもよい。さらに、本明細書で記載された任意の発明または実施例の要素、工程、メンバー、構成要素、組成物、反応物質、部数、または部分は、別に注記されない限り、場合により存在してもよく、または任意の他の要素、工程、メンバー、構成要素、組成物、反応物質、部数、または部分の不在下、もしくは実質的な不在下で利用されてもよい。すべての合理的な付加、欠失、修飾、および改変は、記載された実施例および実施形態の等価物とみなされ、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
式:
Y-X-Z
を有するアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含むペプチドを含む物質の組成物であって、
式中、
Y=R、H、K、Cys(酸)、G、またはDであり、
X=G、A、Cys(酸)、R、G、D、またはEであり、
Z=Cys(酸)、G、C、R、D、N、またはEである、
組成物。
[付記2]
前記アミノ酸配列が、R-G-Cys(酸)である、付記1に記載の組成物。
[付記3]
前記ペプチドが、R-G-Cys(酸)を含む、付記2に記載の組成物。
[付記4]
前記ペプチドが、R-G-Cys(酸)を含む、付記2に記載の組成物。
[付記5]
前記ペプチドが、R-G-Cys(酸)-G-G-G-D-Gを含む、付記2に記載の組成物。
[付記6]
前記ペプチドが、シクロ-{R-G-Cys(酸)-F-N-Me-V}を含む、付記2に記載の組成物。
[付記7]
前記アミノ酸配列が、R-A-Cys(酸)である、付記1に記載の組成物。
[付記8]
前記アミノ酸配列が、R-G-システインである、付記1に記載の組成物。
[付記9]
前記アミノ酸配列が、R-Cys(酸)-Gである、付記1に記載の組成物。
[付記10]
前記アミノ酸配列が、Cys(酸)-R-Gである、付記1に記載の組成物。
[付記11]
前記アミノ酸配列が、Cys(酸)-G-Rである、付記1に記載の組成物。
[付記12]
前記アミノ酸配列が、R-G-Dである、付記1に記載の組成物。
[付記13]
前記ペプチドが、シクロ-{R-G-D-D-F-N-Me-V}を含む、付記12に記載の組成物。
[付記14]
前記アミノ酸配列が、H-G-Cys(酸)である、付記1に記載の組成物。
[付記15]
前記アミノ酸配列が、R-G-Nである、付記1に記載の組成物。
[付記16]
前記アミノ酸配列が、D-G-Rである、付記1に記載の組成物。
[付記17]
前記アミノ酸配列が、R-D-Gである、付記1に記載の組成物。
[付記18]
前記アミノ酸配列が、R-A-Eである、付記1に記載の組成物。
[付記19]
前記アミノ酸配列が、K-G-Dである、付記1に記載の組成物。
[付記20]
前記ペプチドが塩を含む、付記1~19のいずれか一項に記載の組成物。
[付記21]
前記塩が、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、および塩酸塩形態から選択される、付記20に記載の組成物。
[付記22]
タウリンをさらに含む、付記1~19のいずれか一項に記載の組成物。
[付記23]
タウリンと組み合わせてG-R-G-Cys(酸)-T-Pまたはその塩を含む、組成物。
[付記24]
血管新生または病的もしくは異常な血管の発達の阻害を必要とするヒトまたは動物対象において血管新生または病的もしくは異常な血管の発達を阻害するための方法であって、前記対象に治療有効量の付記1~19のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
[付記25]
前記組成物がタウリンをさらに含む、付記24に記載の方法。
[付記26]
前記方法が、眼内の血管新生または病的もしくは異常な血管の発達を阻害するために実施される、付記24または25のいずれかに記載の方法。
[付記27]
前記方法が、糖尿病性網膜症、血管新生性加齢性黄斑変性症、未熟児網膜症(ROP)、鎌状赤血球網膜症、網膜静脈閉塞症、虚血誘発性網膜症、および眼の炎症性疾患から選択される疾患または障害を治療するために実施される、付記26に記載の方法。
[付記28]
前記方法が、眼の外側の病的または異常な血管の血管新生発達を阻害するために実施される、付記24に記載の方法。
[付記29]
前記方法が、血管新生腫瘍の成長または転移を阻害するために実施される、付記28に記載の方法。
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