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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】コンパス
(51)【国際特許分類】
   B43L 9/02 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
B43L9/02 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020121563
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018453
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593093423
【氏名又は名称】クツワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】橡尾 洋介
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06311404(US,B1)
【文献】登録実用新案第3191876(JP,U)
【文献】登録実用新案第3184844(JP,U)
【文献】特開平11-240293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に針を持つ中心脚と、筆記具を保持する筆記具保持機構を有し前記中心脚周りに回転させる回転脚と、前記回転脚及び前記中心脚を開閉自在に軸支する操作体と、を備えてなり、
前記中心脚は、中心脚本体と、前記中心脚本体の先端に設けられた針取付部と、を有し、
前記針取付部は、前記針の周囲を被覆する管部及び前記針取付部内に内挿されたガイド部を備えた針保護部と、前記針保護部を前記針の長手方向に沿って付勢力を備えた弾性部材によって昇降自在とする針保護部昇降機構と、を有し、
前記針保護部昇降機構は、前記針保護部と、前記針の基端部を固定して前記針取付部内に内装された針固定部と、前記針固定部と前記針保護部の前記ガイド部との間に介装された前記弾性部材と、を有し、前記針を突き刺すことで前記針保護部のみを上昇させ、前記弾性部材の付勢力により下降させることを特徴とするコンパス。
【請求項2】
針保護部の管部は、先端を先細り形状にすることを特徴とする請求項1記載のコンパス。
【請求項3】
針取付部は、中心脚本体に一体形成された筒状体であり、前記筒状体の中心軸方向は前記中心脚本体の長手方向に対して鋭角をなすように傾斜することを特徴とする請求項1記載のコンパス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円弧を描くためのコンパスであり、特に学習時の使用に適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンパスは、先端に針を持つ中心脚と、先端に鉛筆等の筆記具を保持して回転させる回転脚と、回転脚及び中心脚を開閉自在に軸支した取付体と、該取付体の上方に突出した細長い略円柱状の操作体と、からなるものである。
【0003】
作図作業において、定規や鉛筆をコンパスと取り替えながら行うため、机上にコンパスを中心脚の針及び筆記具の先端部が露出したまま置くことが頻繁にある。その際、コンパスの針が使用者に接触して怪我をしたり、他の物品に当たって針先が欠けたりするおそれがあるため、中心脚に内在するバネと、バネに連結された針を設けることで、中心脚内部から針を昇降させる機構を備えた種々のコンパスが提案されている(例えば特許文献1-3参照)。
【0004】
しかしながら、上述した特許文献に係るコンパスは、使用時のみ針の先端を露出させるために、ノック部と針に連結されたバネの付勢力によって針の先端部を突出させる出没機構によって、使用するたびに針を昇降させる必要があるため不便であった。また、この針は、バネと連結しているため、針を突き刺すために刺突力はバネの復元力に依存しており、一定の刺突力を与えることが難しく、円弧を描くのが難しくなってしまう欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3191876号
【文献】特開平11-240293号公報
【文献】実用新案登録第3184844号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、円弧を描くとき針の先端部のみが自動的に露出するとともに、紙面に対して一定の刺突力を発揮することができるコンパスが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンパスは、上記課題に鑑み、先端に針を持つ中心脚と、筆記具を保持する筆記具保持機構を有し前記中心脚周りに回転させる回転脚と、前記回転脚及び前記中心脚を開閉自在に軸支する操作体と、を備えてなり、
前記中心脚は、中心脚本体と、前記中心脚本体の先端に設けられた針取付部と、を有し、
前記針取付部は、前記針の周囲を被覆する管部及び前記針取付部内に内挿されたガイド部を備えた針保護部と、前記針保護部を前記針の長手方向に沿って付勢力を備えた弾性部材によって昇降自在とする針保護部昇降機構と、を有し、
前記針保護部昇降機構は、前記針保護部と、前記針の基端部を固定して前記針取付部内に内装された針固定部と、前記針固定部と前記針保護部の前記ガイド部との間に介装された前記弾性部材と、を有し、前記針を突き刺すことで前記針保護部のみを上昇させ、前記弾性部材の付勢力により下降させることを特徴とするコンパス。
【0008】
また、上述した構成に加え、針保護部の管部は、先端を先細り形状にすることが好ましい。
【0009】
また、上述した構成に加え、針取付部は、中心脚本体に一体形成された筒状体であり、前記筒状体の中心軸方向は前記中心脚本体の長手方向に対して鋭角をなすように傾斜することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1-記載の発明によれば、円弧を描くときに針の先端部のみが自動的に露出するとともに、紙面に対して一定の刺突力を発揮することができる針保護部昇降機構を備えたコンパスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るコンパスの一例を示す正面図である。
図2図1の針取付部の側面方向から見た分解図である。
図3図1の針取付部周辺の構造を示す拡大断面図である。
図4】針保護部昇降機構によって針保護部を上昇させて針の先端部のみ紙面に突き刺した状態を示す拡大断面図及び針の先端部周辺の部分拡大断面図である。
図5図1 のコンパスの中心脚及び回転脚を閉じた状態を示す正面図、及び、針と筆記具の先端部周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図1-5に基づいて詳細に説明する。
【0013】
本発明のコンパスは、図1に示すように、先端に針12を持つ中心脚10と、中心脚10周りに回転させる回転脚20と、回転脚20及び中心脚10を開閉自在に軸支する軸部31を有する操作体30と、を主体として構成されるものである。
【0014】
中心脚10は、亜鉛等の金属材を主体として鋳型製造された棒状の中心脚本体11と、中心脚本体11の先端に設けられた針取付部40と、を備えてなり、針取付部40は、針12の周囲を被覆する針保護部41と、針保護部41を昇降自在とする針保護部昇降機構を有する。
【0015】
回転脚20は、中心脚10と同様に、亜鉛等の金属材を主体として鋳型製造された内側を中空とする細長い溝状の回転脚本体21と、回転脚本体21の先端に筆記具50を保持するための筆記具保持部70と、を有する。なお、この筆記具保持部70は、図5に示すように、中心脚10の先端付近に取り付けられている針12のコンパス全体の中心軸に対する傾斜する角度αに対して同等かそれ以下の傾斜する角度βで筆記具を保持しうるようにしたものである。この角度βは、より具体的には、後述する針12の傾斜する角度αを20度とする場合に針12の先端部12aに対して筆記具50の先端を近傍に位置させるため、筆記具50の先端形状の太さを考慮して約19度程度とすることが好適である。
【0016】
針取付部40は、中心脚本体11の外側面に一体形成した筒状体であり、この筒状体の中心軸方向は前記中心脚本体の長手方向に対して鋭角の角度αをなすように傾斜するものである。また、針取付部40の先端において針12の先端部12aを突出させるとともに、後述する針保護部昇降機構を設けるために両端を開孔して形成されているものである。なお、この角度αは、半径0.5cmから15cmの間の円弧を描く際に中心脚10と回転脚20を拡開した際に、針保護部41が針取付部40内で上昇して、適度に針12の先端部12aが露出するようにしたものである。この角度αは、より具体的には、半径が4cmから8cmの範囲の半径の円弧を描くときに、筆記具50の先端及び針12の先端部12aが紙面Sに対して同時におおよそ垂直となるように、約20度程度とすることが最も好適である。
【0017】
また、この針取付部40の上端付近の側面には、図2に示すように、後述する針固定部42の爪部42c、42cと係合するための略方形状の係合孔40a、40aを有する。
【0018】
針12は、安全性を考慮した従来の学習用コンパスに比べて非常に細くて鋭利な先端部12aを有するものであり、一例として、先端角度が約20度で傾斜面を約2mm程度の長さとする先端部12aと、約1mm程度の直径と、針取付部40の先端から少なくとも約3mm程度突出する突出長さと、することが好適である。この針12は、針保護部41によって強度を補強することができるため、直径の小さいものを採用することができ、従来の学習用コンパスのように安全性や耐久性を考慮した太い針に比べ、針先が紙面に突き刺しやすく、小さい刺突力で紙面Sから外れにくくすることが可能である。また、紙面Sに対して突き刺したときにできる穴あきの形状を小さくすることも可能である。
【0019】
針保護部41は、図3に示すように、紙面Sに針12の先端部12aを押し付けていないときに針12の周囲全体を被覆する程度の長さを備えた合成樹脂材を主体として細長い管状の管部41aと、針取付部40内に内挿されるガイド部41bと、が一体形成されるものである。
【0020】
管部41aは、針12の先端部12a側が開放されており、針取付部40の先端から突出した針12の周囲全体を被覆するものであり、針12の先端部12aを露出させない程度の長さを下限とし、針取付部40内に管部41aの一部を上昇させた状態において針12の先端部12aの斜面の途中までを露出する程度の長さを上限とする範囲の全長を備えるものである。より具体的には、この管部41aの長さは、上述した範囲において、針12の先端部12aより上述した針保護部41の凹部41cにおける隙間の半分程度(約0.6mm程度)長くすることが好適である。また、この管部41aは針12の先端部12aを露出させない代わりに、作図作業における円弧の中心点の位置を決めやすいように先端を先細り形状とすることが好適である。
【0021】
ガイド部41bは、針固定部42の埋入部42bを挿入する深さを備えた凹部41cと、凹部41c内の内周面上に弾性部材60の端部を受けるために形成された段部41dと、を有する。
【0022】
ガイド部41bの凹部41cは、管部41aの他端側に形成された柱状体であり、この柱状体の上端から長手方向に切り欠いて断面略U字状に形成され、針固定部42の埋入部42bを挿入しうる程度の深さを有する。この凹部41cの底面から埋入部42bの先端に当接するまでの距離は、図3に示すように、針保護部41の管部41aの昇降する移動距離であるストローク長Lを規定するものであり、本実施形態のような針12の場合、針12の先端部12aの一部のみを露出するようにするため、最大で約1.2mm程度のストローク長Lからなる隙間を設けることが好適である。
【0023】
(針保護部昇降機構)
次に、上述した針保護部41の管部41aを針取付部40から針12の長手方向に沿って昇降自在とする針保護部昇降機構を図1-4に基づいて説明する。この針保護部昇降機構は、針保護部41を紙面Sに押し付けたときに、針保護部41を針取付部40内に上昇させることで針12の先端部12aの一部のみを露出させるものであって、針12の基端部12bを固定して針取付部40内に内装された針固定部42と、針固定部42と針保護部41のガイド部41bとの間に介装された弾性部材60と、を主要部として構成されるものである(特に図3、4参照)。
【0024】
針固定部42は、針取付部40の上端に嵌合する蓋部42aと、針12の基端部12bから中間位置付近までを埋入して固定する埋入部42bと、の別体からなり、この蓋部42aには、蓋部42aの裏面から下方に突出する凸状の挿入片42a1を有し、また、この埋入部42bは、蓋部42aの挿入片42a1を嵌挿するための挿入孔42b1を有することで、容易に組み立てることが可能である。
【0025】
針固定部42の埋入部42bの外側面には、針取付部40の係合孔40aに対して係合して、針取付部40の外側面方向に突出する爪部42c、42cを有することで、針取付部40内に固定される。これに対して、針保護部41は、針取付部40内に固定されておらず、針固定部42との間に介装された弾性部材60によって針取付部40から突出するようにガイド部41bが付勢されているため針12の長手方向に沿って昇降自在とすることが可能である。
【0026】
弾性部材60は、コンパスの使用者が紙面Sに針12の先端部12aを突き刺すことができる程度の刺突力を加えることで針保護部41のみを針取付部40内で上昇させるとともに、紙面Sに押し付けてない状態において針保護部41の管部41aを下降させるように円滑な昇降移動を行うことが可能な付勢力を備えたものである。この弾性部材60は、より具体的には、金属材からなる線径0.3mm程度の線材を巻数7から9とし、付勢力を生じない状態で全長5.5mm、直径3.0mm程度のコイルばねとすることが好適である。
【0027】
上述した針保護部昇降機構による針保護部41が針取付部40内に上及び下降した状態について図3、4、5に基づいて説明する。
【0028】
図4に示すように、円弧の描き始めの場合には、コンパスを紙面Sに対してほぼ垂直に針保護部41の管部41aの先端を押し付ける。そのとき、針12の先端部12aを紙面Sに当接するまで、針保護部昇降機構における弾性部材60の付勢力に抗しながら針取付部40内で管部41aの基端側を上昇させることで、針12の先端部12aの露出した部分で紙面Sに突き刺すことが可能である。
【0029】
また、図3、5に示すように、中心脚10や回転脚20を閉じた状態の場合においては、針12の先端部12aを紙面Sから離すと同時に、針保護部昇降機構における弾性部材60によって針12の先端部12aまで被覆するように針保護部41の管部41aを下降させる。これによって、不使用時において針12の先端部12aを露出せず、針12の周囲全体を被覆することが可能である。
【0030】
したがって、上述した針保護部昇降機構によって、不使用時には針12の先端部12aまで針保護部41の管部41aを被覆することで安全に使用することができるとともに、針12の先端部12aを露出するためにノック等の手順を要することなく、針12の先端部12aを押し付ける動作と連動して針12の先端部12aを露出させることができるため、従来のコンパスと同様に、円弧の作図作業を行うことが可能である。
【0031】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、弾性部材60をコイルばねの代わりにゴムなどからなる弾性筒状体とすることや、中心脚本体11及び回転脚本体21の途中を折り曲げ自在とすることも可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 中心脚、11 中心脚本体、12 針、12a 先端部、12b 基端部、
20 回転脚、21 回転脚本体、
30 操作体、31 軸部、
40 針取付部、40a 係合孔、
41 針保護部、41a 管部、41b ガイド部、41c 凹部、41d 段部、
42 針固定部、42a 蓋部、42a1 挿入片、42b 埋入部、42b1 挿入孔、42c 爪部、
L ストローク長、
50 筆記具(鉛筆)、
60 弾性部材、
70 筆記具保持部、
S 紙面、α、β 角度。
図1
図2
図3
図4
図5