特許 7280656 車両用灯具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-05-16

(45)【発行日】2023-05-24

(54)【発明の名称】車両用灯具

(51)【国際特許分類】

   F21S 43/242 20180101AFI20230517BHJP

   F21S 43/237 20180101ALI20230517BHJP

   F21V 8/00 20060101ALI20230517BHJP

   F21Y 115/10 20160101ALN20230517BHJP

   F21W 103/35 20180101ALN20230517BHJP

【ＦＩ】

F21S43/242

F21S43/237

F21V8/00 340

F21V8/00 330

F21Y115:10

F21W103:35

【請求項の数】 5

(21)【出願番号】P 2020020455

(22)【出願日】2020-02-10

(65)【公開番号】P2021125444

(43)【公開日】2021-08-30

【審査請求日】2022-04-08

(73)【特許権者】

【識別番号】000003218

【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機

(73)【特許権者】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】000002303

【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000394

【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】扇谷 一慶

(72)【発明者】

【氏名】松村 直哉

(72)【発明者】

【氏名】村木 和史

【審査官】田中 友章

(56)【参考文献】

【文献】特開２００５－３２７６４９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１２－１６９１７０（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｆ２１Ｓ ４３／２４２

Ｆ２１Ｓ ４３／２３７

Ｆ２１Ｖ ８／００

Ｆ２１Ｙ １１５／１０

Ｆ２１Ｗ １０３／３５

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

車両用灯具であって、
光源と、
前記光源から前方に延設された前方延設部と、前記前方延設部の側部から前記光源よりも後方に延設された後方延設部を有する導光体と、
前記導光体の前面に凹設された切り欠き部と、
前記切り欠き部の後ろ面に位置し、前記光源からの光を前記導光体内において側方へ反射する側方反射面と、
前記切り欠き部に隣接するように前記導光体の前面に設けられて前記導光体内から外方へ光を散乱させる散乱レンズ面を有する車両用灯具。

【請求項2】

請求項１記載の車両用灯具であって、
前記散乱レンズ面が前記切り欠き部の両側に形成された車両用灯具。

【請求項3】

請求項１又は２記載の車両用灯具であって、
前記散乱レンズ面は、前記導光体の前記前面に凹設されかつ前記切り欠き部と同じ方向に並んで延出している車両用灯具。

【請求項4】

請求項１～３の何れか１つに記載した車両用灯具であって、
前記後方延設部には、前記側方反射面からの光を前記後方延設部に沿って後方へ反射させる後方反射面を有する車両用灯具。

【請求項5】

請求項１～４の何れか１つに記載した車両用灯具であって、
前記後方延設部は、前記光源に向けて背面を有し、
前記背面に対向しかつ前記背面に沿ってリフレクターが設けられる車両用灯具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、例えば車両のリヤコンビネーションランプ等の灯具に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１に、ＬＥＤ光源と導光体により、例えばテールランプを構成する灯具が開示されている。導光体は、ＬＥＤ光源の光軸に沿う入射部と、入射部から角度を有して配置される導光部を有する。入射部の端部には、光源から入射部を通った光を導光部へ反射させる反射部を備えている。これにより光源の光が導光体の入射部から導光部の末端まで導光される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１１－１９８５３６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

車両のデザインや板金部品の制約で光源の後方にまで光を伝えたい場合がある。この場合、光源に対向する面が光軸に平行に近い形状である場合にもインナーレンズの均一発光が要求される。このため、光源の前方部位に切り欠き部を設けて光を導光体全体に向けて反射させることで、導光体全体の均一発光を実現できる。しかしながら、この場合、切り欠き部が目視できて灯具の見栄えが損なわれる。

【0005】

そこで、光源の後ろ側へ導光体が伸びる灯具について、導光体の全体の均一発光を実現しつつ、良好な見栄えを確保する必要がある。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本開示の１つの特徴によると、車両用灯具は、光源と、光源の前方に配置されかつ前方に延在する導光体を有する。導光体の前面に凹設された切り欠き部を有する。切り欠き部の後ろ面に位置し、光源からの光を導光体内において側方へ反射する側方反射面を有する。切り欠き部に隣接するように導光体の前面に設けられて導光体内から外方へ光を散乱させる散乱レンズ面を有する。

【0007】

従って、切り欠き部により導光体の側面が均一に発光する。導光体の前面では、散乱レンズ面により均一発光されるとともに、切り欠き部が散乱レンズ面でぼかされて目立ちにくくなる。これにより、灯具の見栄えが良くなる。

【0008】

本開示の他の特徴によると、散乱レンズ面が切り欠き部の両側に形成される。従って、切り欠き部がより目立ちにくくなる。

【0009】

本開示の他の特徴によると、散乱レンズ面は、導光体の前面に凹設されかつ切り欠き部と同じ方向に並んで延出している。従って、切り欠き部の全体が効率よくぼかされる。

【0010】

本開示の他の特徴によると、導光体は、光源から前方に延設された前方延設部と、前方延設部の側部から光源よりも後方に延設された後方延設部を有する。従って、前方延設部の前面に設けられる切り欠き部の側方反射面により、光が側方へ反射されて後方延設部に光が入射される。

【0011】

本開示の他の特徴によると、後方延設部には、側方反射面からの光を後方延設部に沿って後方へ反射させる後方反射面を有する。従って、側方反射面から入射された光が後方反射面で反射されて後方延設部の全体が発光される。

【0012】

本開示の他の特徴によると、後方延設部は、光源に向けて背面を有する。後方延設部の背面に対向しかつ背面に沿ってリフレクターが設けられる。従って、リフレクターにより後方延設部がより均一に発光される。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】車両の後部の斜視図である。

【図2】車両右側の灯具の斜視図である。

【図3】灯具の図２中(III)-(III)線断面矢視図である。

【図4】本実施形態に係る導光体の全体斜視図である。

【図5】一般的なインナーレンズの平面図である。

【図6】別形態の側方反射面を有する導光体の前面図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

次に、本開示の実施形態を図１～図５に基づいて説明する。図１に示すように車両１の後部に左右一対の灯具２を有する。灯具２は、リヤコンビネーションランプとも称される。図２に示すように灯具２は、ストップランプ３、車幅灯４、リフレクター５をランプボディ６にアッセンブリ化した構成を有する。

【0015】

一般に、車両用灯具は、電球やＬＥＤ等の光源と、導光体としてのインナーレンズと、発光面となるアウターレンズを有する。インナーレンズは、光源とアウターレンズの間に配置される。インナーレンズには、点灯時は均一発光し、非点灯時にも明暗むらなく均一に見えることが要求される。このため、図５に示すように光源よりも前側４５°の範囲（光軸Ｊを中心にして９０°の範囲）でインナーレンズを構成することが一般になされている。

【0016】

また、一般にインナーレンズは、前面と後面それぞれに光を拡散させる散乱レンズ面（例えばステップ部、カット部）を有する。ステップ部は、複数の微小な凹凸で構成される。ステップ部は、例えば鋸歯状の凹凸を有するフレネルステップ、多面体の凹凸を有するプリズムステップ、円柱状の凹凸を有するシリンドリカルステップである。光源からの光は、放射状に拡がり、インナーレンズに到達する。インナーレンズのステップ部によって光が散乱される。これにより発光面を均一に光らせることができる。

【0017】

本実施形態では、図３，４に示すようにストップランプ３は、光源１０と、インナーレンズとしての導光体１１と、発光面としてのアウターレンズ１２を備えている。光源１０はＬＥＤ（発光ダイオード）である。

【0018】

導光体１１は、光源１０の光軸Ｊ方向の前方に配置され、かつ前方に延在する。導光体１１は、光源１０から光軸Ｊに沿って前方に延設された前方延設部１１ａと、前方延設部１１ａの側部から光源１０よりも後方に延設された後方延設部１１ｂを有する。

【0019】

導光体１１の前面であって前方延設部１１ａの前面に、１つの切り欠き部１３が凹設されている。切り欠き部１３は、導光体１１の前面上部から下部に至る全範囲（板厚方向）に連続して設けられる。切り欠き部１３の後ろ面に側方反射面１３ａが位置している。側方反射面１３ａは、光軸Ｊ上に位置される。側方反射面１３ａにより、光源１０からの光が導光体１１内において側方へ延びる後方延設部１１ｂに向けて反射される。

【0020】

側方反射面１３ａの右方であって後方延設部１１ｂの前部には、後方反射面１４が設定されている。後方反射面１４は、図４中格子状のハッチングを付して示す領域に設定されている。後方反射面１４により、側方反射面１３ａからの光が後方延設部１１ｂに沿って後方へ反射される。

【0021】

後方延設部１１ｂは、前方延設部１１ａの右側部から後方へ延設されている。後方延設部１１ｂは、光源１０よりも後方へ延びている。このため、後方延設部１１ｂの後面（背面）は、光源１０に向けられている。後方延設部１１ｂの後面には、光を散乱させるための散乱レンズ面１７が設けられる。後方反射面１４を経て後方延設部１１ｂに入射された光は、散乱レンズ面１７で散乱されて均一化される。

【0022】

後方延設部１１ｂの背面に沿って反射部材１６が設けられる。反射部材１６によって、光源１０から光が後方延設部１１ｂに直接入射されない。後方反射面１４を経て間接的に後方延設部１１ｂに入射された光は、反射部材１６によっても反射される。これにより、後方延設部１１ｂの発光がより均一化される。図３に示すように後方延設部１１ｂの後部は、反射部材１６の背面側に進入している。

【0023】

前方延設部１１ａの前面に、光源１０からの光を散乱させる散乱レンズ面１５が凹設される。散乱レンズ面１５により前方延設部１１ａの前面が均一発光される。散乱レンズ面１５は、切り欠き部１３の左右両側に隣接するように形成される。散乱レンズ面１５は、切り欠き部１３と同じく板厚方向に連続して設けられている。散乱レンズ面１５は、複数の断面半円形の突条１５ａを有する。各突条１５ａは切り欠き部１３と同じく板厚方向に連続して延出している。複数の突条１５ａは左右に並列に配置される。散乱レンズ面１５により光源１０の光が散乱されて、切り欠き部１３がぼかされる。

【0024】

以上のように構成した灯具２によれば、散乱レンズ面１５により、導光体１１の前方延設部１１ａの前面が均一発光される。また、切り欠き部１３の反射により後方延設部１１ｂの前面が均一発光される。これにより、導光体１１の全体が均一に発光する。また、切り欠き部１３が左右両側に配置された散乱レンズ面１５でぼかされて目立ちにくくなる。これにより、灯具２の見栄えが良くなる。

【0025】

前方延設部１１ａの前面に切り欠き部１３の側方反射面１３ａが設けられる。光源１０の光は、側方反射面１３ａで反射されて後方延設部１１ｂに入射される。後方延設部１１ｂには、側方反射面１３ａからの光を後方延設部１１ｂに沿って後方へ反射させる後方反射面１４を有する。これにより、側方反射面１３ａから入射された光が後方反射面１４で反射されて後方延設部１１ｂの全体が発光される。

【0026】

後方延設部１１ｂは、前方延設部１１ａの側部から後方へ回り込むように延びている。このため、後方延設部１１ｂは、光源１０側に背面を向けている。後方延設部１１ｂの背面に沿って反射部材１６が設けられる。従って、反射部材１６により後方延設部１１ｂがより均一に発光される。また、反射部材１６で遮られて後方延設部１１ｂに光源１０の光が直接入射されない。これによっても後方延設部１１ｂが均一に発光される。

【0027】

以上説明した第１実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、光軸Ｊ上に切り欠き部１３を有する構成を例示したが、光軸Ｊからずれて切り欠き部を配置する場合についても同様に適用することができる。

【0028】

また、第１実施形態では、導光体１１の前面上部から下部に至る全範囲（板厚方向）に連続して切り欠き部１３を設けた構成を例示した。第２実施形態では、例えば図６に示すように板厚方向の上部と下部は散乱レンズ面１５で、板厚方向の中央に切り欠き部１８を凹設する構成としてもよい。第２実施形態に係る切り欠き部１８の側方反射面１８ａによっても光源１０の光が後方反射面１４を経て後方延設部１１ｂに反射される。第２実施形態の側方反射面１８ａは、上下左右に配置された散乱レンズ面１５により一層目立ちにくくなって灯具の見栄えが向上する。また、板厚方向の中央に切り欠き１８を凹設する構成であることから、第１実施形態よりも導光体１１の強度を高めることができる。

【0029】

さらに、板厚方向の上部若しくは下部の散乱レンズ面１５を省略して板厚方向片側に切り欠きを延設する構成としてもよい。

【0030】

切り欠き部１３の左右両側に散乱レンズ面１５を配置する構成を例示したが、左右片側にのみ散乱レンズ面を配置する構成としてもよい。

【0031】

例示した切り欠き部１３及び散乱レンズ面１５は、後方延設部１１ｂが光源１０よりも後方まで至らない場合についても適用することができる。

【0032】

また、例示した灯具２は、車両後部のリヤコンビネーションランプに限らず、車両前部のヘッドランプに適用することができる。

【0033】

さらに、例示した灯具２は、自動車や鉄道車両の他、船舶、航空機あるいは建設物の灯具についても広く適用することができる。

【符号の説明】

【0034】

１…車両
２…灯具（リヤコンビネーションランプ）
３…ストップランプ
４…車幅灯
５…リフレクター
６…ランプボディ
１０…光源、Ｊ…光軸
１１…導光体
１１ａ…前方延設部、１１ｂ…後方延設部
１２…アウターレンズ
１３…切り欠き部（第１実施形態）
１３ａ…側方反射面
１４…後方反射面
１５…散乱レンズ面
１５ａ…突条
１６…反射部材
１７…散乱レンズ面
１８…切り欠き部（第２実施形態）
１８ａ…側方反射面

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】