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特許7280674冷却構造体および冷却構造体を備える発熱回収システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】冷却構造体および冷却構造体を備える発熱回収システム
(51)【国際特許分類】
   F25D 9/00 20060101AFI20230517BHJP
   F28F 3/12 20060101ALI20230517BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
F25D9/00 B
F28F3/12 B
H05K7/20 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018164947
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020038028
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000129231
【氏名又は名称】株式会社ガスター
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関根 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 尭
(72)【発明者】
【氏名】岩村 卓嗣
(72)【発明者】
【氏名】信藤 邦太
(72)【発明者】
【氏名】島袋 大介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 寿久
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-164197(JP,U)
【文献】特開2008-014579(JP,A)
【文献】特開2015-200492(JP,A)
【文献】特開2005-026124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 9/00
F28F 3/12
F16L 59/00
F28F 3/00
F24D 3/12-3/16
H05K 7/20
F28F 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体により形成される取付面を有する発熱体に取り付けられる冷却構造体であって、
内部に冷媒を流通させる冷媒管と、
前記冷媒管を収容する溝部と該溝部の両端に配置される一対の平面部を有する金属製の集熱板と、
前記溝部の外周面に接触した状態で配置されるとともに断熱材料により形成された断熱部と、
前記一対の平面部が前記取付面に近接した状態を磁力により保持する磁石と、を備え、
前記溝部の内周面の少なくとも一部は、前記冷媒管の外周面の少なくとも一部と対応する形状となっており、
前記冷媒管は、前記溝部に接触した状態で配置され、
前記集熱板は、前記取付面と対応する形状に形成された第2被取付面を有するパネル状に形成されており、
前記第2被取付面には、前記磁石を収容する凹部が形成されており、
前記断熱部は、前記集熱板の少なくとも一部が外部へ露出した状態で配置されていることを特徴とする冷却構造体。
【請求項2】
前記一対の平面部の板厚よりも薄い厚さを有する金属製の表面シートを有し、
前記表面シートは、前記一対の平面部に接触するとともに前記冷媒管が収容された前記溝部を覆うように配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷却構造体。
【請求項3】
前記断熱部は、柔軟性を有する材料により形成されており、
前記磁石は、弾性を有する材料により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷却構造体。
【請求項4】
直線状に延びる複数の前記溝部を有し、
前記複数の溝部が同一方向に沿って所定間隔を空けて配置されており、
樹脂製の前記冷媒管が、
前記集熱板に接触した状態で配置される複数の直線部と、
隣接する前記直線部を連結する複数の曲線部と、を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却構造体。
【請求項5】
前記曲線部の曲率半径の2倍が前記所定間隔よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の冷却構造体。
【請求項6】
前記曲率半径が前記冷媒管に座屈が生じる最小曲率半径よりも大きくなるように前記所定間隔が設定されていることを特徴とする請求項5に記載の冷却構造体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の冷却構造体と、
前記冷却構造体により冷却される前記発熱体と、
前記発熱体が設置された空間の温度調節を行う空調機と、を備えることを特徴とする発熱回収システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却構造体および冷却構造体を備える発熱回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子基板上のLSI等の高発熱密度の被冷却体を冷却する冷却器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示される冷却器は、被冷却体の表面に熱セメントを塗布して取り付けられており、水の蒸発を利用して被冷却体を冷却するものである。冷却器は、それぞれシート状の不透過部材と透過部材の間の供給路に毛細管現象により水を供給し、透過部材側に空気を流して供給路内の水を蒸発させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-244397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される冷却器は、水の蒸発を利用して被冷却体を冷却するためにシート状の透過部材を用いており、製造コストが増大してしまう。
また、冷却器が熱セメントにより被冷却体に取り付けられているため冷却器を被冷却体から取り外すことが困難であり、被冷却体のメンテナンス性が損なわれてしまう。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、発熱体のメンテナンス性を損なうことなく比較的安価な構成により発熱体を効率よく冷却し、発熱体が設置される空間の空調負荷を低減することができる冷却構造体およびそれを備えた発熱回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明によれば、磁性体により形成される取付面を有する発熱体に取り付けられる冷却構造体であって、内部に冷媒を流通させる冷媒管と、前記冷媒管を収容する溝部と該溝部の両端に配置される一対の平面部を有する金属製の集熱板と、前記溝部の外周面に接触した状態で配置されるとともに断熱材料により形成された断熱部と、前記一対の平面部が前記取付面に近接した状態を磁力により保持する磁石と、を備え、前記溝部の内周面の少なくとも一部は、前記冷媒管の外周面の少なくとも一部と対応する形状となっており、前記冷媒管は、前記溝部に接触した状態で配置され、前記集熱板は、前記取付面と対応する形状に形成された第2被取付面を有するパネル状に形成されており、前記第2被取付面には、前記磁石を収容する凹部が形成されており、前記断熱部は、前記集熱板の少なくとも一部が外部へ露出した状態で配置されていることを特徴とする冷却構造体により解決される。
【0007】
本発明に係る冷却構造体は、集熱板の一対の平面部が発熱体の取付面に近接した状態を磁石の磁力により保持している。集熱板と取付面との間に隙間が形成されることが磁力により抑制されるため、発熱体から冷却構造体へ効率よく熱を伝達することができる。また、作業者が磁力の保持力を上回る力を冷却構造体に与えることにより、冷却構造体を発熱体から容易に取り外すことができる。よって、発熱体のメンテナンス性が損なわれることはない。さらに、発熱体の取付面から集熱板の一対の平面部に熱伝達が行われ、集熱板の溝部の内周面から冷媒管の外周面に熱伝達が行われ、冷媒管から冷媒への熱伝達が行われる。そのため、集熱板の溝部に冷媒管を収容した比較的安価な構成により発熱体の熱を冷媒へ伝達することができる。さらに、断熱部が溝部の外周面に接触した状態で配置されるため、集熱板へ伝達された熱が集熱板の外周面から外部へ放熱されることが抑制される。
このように、本発明によれば、発熱体のメンテナンス性を損なうことなく比較的安価な構成により発熱体を効率よく冷却し、発熱体が設置される空間の空調負荷を低減すること
ができる冷却構造体を提供することができる。
また、前記構成によれば、金属製の集熱板がパネル状に形成されており集熱板の少なくとも一部が外部へ露出した状態となっているため、発熱体から集熱板に伝達された熱が外部へ放熱される。よって、冷媒の流れがポンプの故障等により停止した場合に、発熱体の熱が外部へ放熱されない不具合を抑制することができる。
【0008】
本発明に係る冷却構造体は、好ましくは、前記一対の平面部の板厚よりも薄い厚さを有する金属製の表面シートを有し、前記表面シートは、前記一対の平面部に接触するとともに前記冷媒管が収容された前記溝部を覆うように配置されることを特徴とする。
一対の平面部の板厚よりも薄い金属製の表面シートを有するため、表面シートが冷媒管の形状に沿うように変形して表面シートと冷媒管の接触面積が増大する。これにより、発熱体から冷媒管へ伝達される熱量が増大する。また、表面シートが溝部を覆うように広範囲に配置されるため、表面シートを介して発熱体から集熱板へ伝達される熱量が増大する。
【0010】
本発明に係る冷却構造体において、好ましくは、前記断熱部は、柔軟性を有する材料により形成されており、前記磁石は、弾性を有する材料により形成されていることを特徴とする。
断熱部および磁石がそれぞれ取付面の形状に対応するように変形可能であるため、例えば、取付面の形状が曲率を持った曲面形状であっても、発熱体との接触面積を十分に確保することができる。よって、取付面の形状が曲面形状であっても、発熱体を効率よく冷却することができる。
【0012】
本発明に係る冷却構造体は、好ましくは、直線状に延びる複数の前記溝部を有し、前記複数の溝部が同一方向に沿って所定間隔を空けて配置されており、樹脂製の前記冷媒管が、前記集熱板に接触した状態で配置される複数の直線部と、隣接する前記直線部を連結する複数の曲線部と、を有することを特徴とする。
直線状に延びる複数の溝部が同一方向に所定間隔を空けて配置されているため、複数の直線部の各々において略均等に発熱体の取付面を冷却することができる。また、隣接する直線部を曲線部により連結しているため、冷媒管の内部で流体が滞留する不具合を抑制することができる。
【0013】
以上の冷却構造体は、好ましくは、前記曲線部の曲率半径の2倍が前記所定間隔よりも大きいことを特徴とする。
曲線部の曲率半径を十分に大きくすることで、所定間隔を短くした場合であっても曲線部の曲率半径が小さくなって冷媒管に座屈が生じる不具合を抑制することができる。
【0014】
以上の冷却構造体は、好ましくは、前記曲率半径が前記冷媒管に座屈が生じる最小曲率半径よりも大きくなるように前記所定間隔が設定されていることを特徴とする。
このように複数の溝部の所定間隔を設定することで、冷媒管に座屈が生じる不具合をより確実に抑制することができる。
【0015】
本発明に係る発熱回収システムは、上記のいずれか一項に記載の冷却構造体と、前記冷却構造体により冷却される前記発熱体と、前記発熱体が設置された空間の温度調節を行う空調機と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る発熱回収システムによれば、発熱体のメンテナンス性を損なうことなく比較的安価な構成により発熱体を効率よく冷却し、発熱体が設置される空間の空調負荷を低減することができる発熱回収システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発熱体のメンテナンス性を損なうことなく比較的安価な構成により発熱体を効率よく冷却し、発熱体が設置される空間の空調負荷を低減することができる冷却構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る液冷パネルを含む液冷発熱回収システムの概略構成図である。
図2】第1実施形態の液冷パネルを発熱体の取付面に取り付けられる被取付面側からみた平面図である。
図3図2に示す液冷パネルの冷媒管を示す平面図である。
図4図2に示す液冷パネルのI-I矢視断面図である。
図5図4に示す液冷パネルの基材を示す断面図である。
図6】第2実施形態の液冷パネルを発熱体の取付面に取り付けられる被取付面側からみた平面図である。
図7図6に示す液冷パネルの冷媒管を示す平面図である。
図8】第3実施形態の液冷パネルの断面図である。
図9図8に示す集熱板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る液冷パネル100の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る液冷パネル100を含む液冷発熱回収システム400の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態の液冷発熱回収システム400は、液冷パネル(冷却構造体)100と、液冷パネル100により冷却される発熱体200と、発熱体200が設置された空間Sの空気の温度調節を行う空調機300と、を備える。
【0020】
液冷パネル100は、発熱体200に取り付けられるとともに発熱体200を冷却する構造体である。液冷パネル100は、ポンプPuにより流入配管410に供給される冷媒を内部で流通させ、発熱体200が放熱する熱を冷媒へ伝達することにより発熱体200を冷却する。液冷パネル100の内部を流通する冷媒は、流出配管420から空間Sの外部へ流出する。液冷パネル100の詳細については後述する。
ここで、冷媒としては、例えば水を用いることができるが、不凍液等の他の冷媒を用いてもよい。
【0021】
発熱体200は、内部に熱源を有する装置であり、液冷パネル100が取り付けられる平坦状の取付面210を有する。発熱体200は、例えば、ゴム材料と配合剤を混錬する混錬機や、大型の冷凍庫等である。発熱体200の内部の熱源が発生させる熱は、取付面210を含む外周面から空間Sの室内空気に伝達される。液冷パネル100が取り付けられる取付面210は、発熱体200の外周面のうち、熱源が発生する熱により最も高温となる位置に配置するのが望ましい。
【0022】
空調機300は、空間Sの室内空気の温度調節を行う装置である。空調機300は、空間Sの室内空気の温度が予め設定された設定温度よりも高い場合、室内空気を設定温度まで低下させて温度調節を行う。この場合、空調機300は、室内空気を熱交換器(図示略)が設置された内部に吸い込み、熱交換器で低温の冷媒との熱交換により冷却された室内空気を空間Sへ吹き出す。
【0023】
なお、発熱体200の外周面に液冷パネル100が取り付けられていない場合、空間Sの室内空気が発熱体200により加熱されてしまう。そのため、空調機300は、空間Sの室内空気の温度を設定温度に維持するために、発熱体200の発熱量に応じた分だけ高い負荷で運転する必要がある。本実施形態では、発熱体200の外周面に液冷パネル100が取り付けられているため、液冷パネル100が取り付けられていない場合に比べて、空調機300の運転負荷が低下する。
【0024】
次に、本実施形態の液冷パネル100について、図面を参照して詳細に説明する。
図2は、パネル状に形成される液冷パネル100を発熱体200の取付面210に取り付けられる被取付面側からみた平面図である。図3は、図2に示す液冷パネル100の冷媒管10を示す平面図である。図4は、図2に示す液冷パネル100のI-I矢視断面図である。図5は、図4に示す液冷パネル100の基材30を示す断面図である。
【0025】
なお、図2には、発熱体200の取付面210と接触するアルミシート50が設置されていない状態が示されている。発熱体200の取付面210に取り付けられる液冷パネル100の被取付面の全面には、図3に示すアルミシート50が貼り付けられる。
【0026】
図2および図3に示すように、液冷パネル100は、内部に液体を流通させる冷媒管10と、冷媒管10を収容する複数の集熱板20と、断熱材料により形成された基材(断熱部)30と、複数の磁石40と、液冷パネル100の被取付面の全面に貼り付けられるアルミシート(表面シート)50と、を備える。
【0027】
冷媒管10は、流入口から流入する冷媒を流通させて流出口へ導く管体である。冷媒管10は、変形可能な柔軟性を有する樹脂材料により形成されており、例えば、架橋ポリエチレン管である。架橋ポリエチレン管は、安価であり、かつ耐熱性,耐久性,柔軟性に優れている。また例えば、ポリブテン管等の他の樹脂材料により形成された管体を用いてもよい。冷媒管10の内径D1は、例えば、3.5mm以上かつ6.0mm以下のものを用いるのが望ましい。
【0028】
冷媒管10は、集熱板20に接触した状態で配置される複数の直線部11と、隣接する直線部11を連結する複数の曲線部12と、を有し、これらを一体に形成した管体である。図3に示すように、本実施形態の冷媒管10の直線部11は、同一方向に沿ってピッチ(所定間隔)P1を空けて配置されている。ここで、軸線X1は、冷媒管10の流入口10bに最も近接した位置に配置される直線部11が延びる軸線を示す。同様に、軸線X2,X3,X4,X5,X6,X7,X8は、それぞれ他の直線部11が延びる軸線を示す。
【0029】
図3に示すように、本実施形態の冷媒管10の曲線部12は、冷媒管10の中心位置における曲率半径がR1となる半円形状の部分である。直線部11が配置される間隔であるピッチP1は、曲率半径R1の2倍と一致している。
【0030】
集熱板20は、冷媒管10を収容するとともに板状部材を加工して形成された金属製(例えば、アルミニウム製)の部材である。集熱板20の板厚T1は、例えば、0.07mm以上かつ0.15mm以下とするのが望ましい。
集熱板20は、冷媒管10を収容するとともに冷媒管10が延びる方向に沿って直線状に延びる溝部21と、冷媒管10が延びる方向に対して直交する幅方向Wの両端に配置される一対の平面部22,23を有する。
【0031】
図2に示すように、液冷パネル100は、それぞれが溝部21を有する複数の集熱板20を有し、図3に示す複数の溝部21が同一方向に沿ってピッチ(所定間隔)P1を空けて配置されている。ここで、軸線X1は、冷媒管10の流入口10bに最も近接した位置に配置される集熱板20の溝部21が延びる軸線を示す。同様に、軸線X2,X3,X4,X5,X6,X7,X8は、それぞれ他の集熱板20の溝部21が延びる軸線を示す。
【0032】
溝部21は、円筒状の冷媒管10の外周面10aの一部と対応する形状となるように、内周面21bの一部が半円筒状に形成されている。溝部21は、冷媒管10の外径と略一致した深さを持ち、幅方向Wにおいて冷媒管10の外径と略一致した開口幅を持っている。そのため、図2に示すように、冷媒管10の外周面10aの下半部は、溝部21の内周面21bの半円筒状の部分に接触した状態で配置されている。
【0033】
一対の平面部22,23は、発熱体200の取付面210と対応する平坦状に形成されており、冷媒管10が延びる方向と同方向に延びるように形成されている。
【0034】
基材30は、溝部21の外周面21aに接触した状態で配置されるとともに断熱材料により形成された部材である。図1および図2に示すように、基材30は、発熱体200の取付面210と対応する平坦形状に形成された被取付面(第1被取付面)30aを有するパネル状に形成された最大厚さが厚さT3の部材である。厚さT3は、例えば、15mm以下とするのが望ましい。基材30には、集熱板20を収容する第1収容溝31と、磁石40を収容する第2収容溝32が形成されている。
【0035】
基材30の断熱材料として、例えば、熱伝導率が低い(例えば、0.03~0.04W/mK)の発泡ポリスチレンや、発泡ポリプロピレンや、発泡ウレタン等を用いるのが望ましい。発泡ポリスチレンを用いることにより、液冷パネル100の製造コストを安価にすることができる。また、発泡ポリプロピレンが柔軟性を有する材料であるため、発泡ポリプロピレンを用いることにより液冷パネル100に柔軟性を持たせることができる。
【0036】
磁石40は、一対の平面部22,23が発熱体200の取付面210に近接した状態を磁力により保持する永久磁石により形成されたものである。液冷パネル100に柔軟性を持たせるため、磁石40をゴム材料やPVC(ポリ塩化ビニル)樹脂等に磁力を持たせた弾性を有する材料により形成するのが望ましい。磁石40は、接着剤41により基材30の第2収容溝32に接合されている。
【0037】
アルミシート50は、一対の平面部22,23の板厚T1よりも薄い厚さT2を有する薄膜部材である。アルミシート50の厚さT2は、磁力を十分に透過させるため、例えば、0.025mm以上かつ0.05mm以下とするのが望ましい。アルミシート50は、金属材料により形成されており、例えば、アルミニウム製とするのが望ましい。熱伝導性が高い金属材料を用いることにより、取付面210から平面部22,23への熱伝導率を向上させることができる。また、磁力を透過させる金属材料を用いることにより、磁石40が液冷パネル100を取付面210に保持する保持力を向上させることができる。
【0038】
図2に示すように、アルミシート50は、一対の平面部22,23に接触するとともに冷媒管10が収容された溝部21の開口部21cを覆うように配置されている。アルミシート50の厚さT2が十分に薄いため、アルミシート50が冷媒管10との接触位置において冷媒管10の形状に沿うように変形し、アルミシート50と冷媒管10の接触面積が増大する。これにより、発熱体200の取付面210から冷媒管10へ伝達される熱量が増大する。
【0039】
ここで、本実施形態のように液冷パネル100を磁石40による磁力により取付面210に近接した状態を保持する場合と、磁石40を用いずに液冷パネル100の端部をクランプにより取付面210に挟んで取り付けた場合の冷媒への抜熱量の実験結果について説明する。本実験では、発熱体200の取付面210の温度と液冷パネル100に流入する冷媒の温度差が35℃であるものとする。また、冷媒管10の内径D1が5mmであり、冷媒管10の中立線の全長が4500mmであり、ピッチP1が75mmであり、冷媒の流量が1.0L/minであるものとする。
【0040】
磁石40による磁力により取付面210に近接した状態を保持する場合、液冷パネル100と取付面210との間に隙間が形成されにくいため、発熱体200から冷媒への抜熱量は約360W/mであった。一方、磁石40を用いずに液冷パネル100の端部をクランプにより取付面210に挟んで取り付けた場合、液冷パネル100と取付面210との間に隙間が形成され易いため、発熱体200から冷媒への抜熱量は約260W/m2であった。磁石40により液冷パネル100と取付面210との間に隙間を少なくすることにより、抜熱量が約40%上昇する。
【0041】
以上説明した本実施形態の液冷パネル100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の液冷パネル100は、集熱板20の一対の平面部22,23が発熱体200の取付面210に近接した状態を磁石40の磁力により保持している。集熱板20と取付面210との間に隙間が形成されることが磁力により抑制されるため、発熱体200から液冷パネル100へ効率よく熱を伝達することができる。また、作業者が磁力の保持力を上回る力を液冷パネル100に与えることにより、液冷パネル100を発熱体200から容易に取り外すことができる。よって、発熱体200のメンテナンス性が損なわれることはない。
【0042】
さらに、発熱体200の取付面210から集熱板20の一対の平面部22,23に熱伝達が行われ、集熱板20の溝部21の内周面21bから冷媒管10の外周面10aに熱伝達が行われ、冷媒管10から冷媒への熱伝達が行われる。そのため、集熱板20の溝部21に冷媒管10を収容した比較的安価な構成により発熱体200の熱を冷媒へ伝達することができる。さらに、基材30が溝部21の外周面21aに接触した状態で配置されるため、集熱板20へ伝達された熱が集熱板20の外周面21aから空間Sへ放熱されることが抑制される。
このように、本実施形態によれば、発熱体200のメンテナンス性を損なうことなく比較的安価な構成により発熱体200を効率よく冷却し、発熱体200が設置される空間Sの空調負荷を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態の液冷パネル100によれば、一対の平面部22,23の板厚T1よりも薄い厚さT2のアルミシート50を有するため、アルミシート50が冷媒管10の形状に沿うように変形してアルミシート50と冷媒管10の接触面積が増大する。これにより、発熱体200から冷媒管10へ伝達される熱量が増大する。また、アルミシート50が集熱板20の溝部21を覆うように広範囲に配置されるため、アルミシート50を介して発熱体200から集熱板20へ伝達される熱量が増大する。
【0044】
また、本実施形態の液冷パネル100によれば、基材30がパネル状に形成されており、集熱板20と磁石40の双方を収容するため、取付面210から集熱板20および磁石40に伝達された熱が空間Sへ放熱されることを確実に抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態の液冷パネル100によれば、基材30および磁石40がそれぞれ取付面210の形状に対応するように変形可能であるため、例えば、取付面210の形状が曲率を持った曲面形状であっても、発熱体200との接触面積を十分に確保することができる。よって、取付面の形状が曲面形状であっても、発熱体を効率よく冷却することができる。
【0046】
また、本実施形態の液冷パネル100によれば、直線状に延びる複数の溝部21が同一方向にピッチP1を空けて配置されているため、冷媒管10の複数の直線部11の各々において略均等に発熱体200の取付面210を冷却することができる。また、隣接する直線部11を曲線部12により連結しているため、冷媒管10の内部で流体が滞留する不具合を抑制することができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係る液冷パネル100の第2実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除いて第1実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0048】
第1実施形態の液冷パネル100は、冷媒管10の直線部11が配置される間隔であるピッチP1が、冷媒管10の曲線部12の中心位置における曲率半径R1の2倍と一致しているものであった。それに対して、本実施形態の液冷パネル100Aは、冷媒管10Aの直線部11Aが配置される間隔であるピッチP2が、冷媒管10Aの曲線部12Aの中心位置における曲率半径R2の2倍よりも大きくなるものである。
【0049】
図6は、本実施形態の液冷パネル100Aを発熱体200の取付面210に取り付けられる被取付面側からみた平面図である。図7は、図6に示す液冷パネル100Aの冷媒管10Aを示す平面図である。
なお、図6には、発熱体200の取付面210と接触するアルミシート50が設置されていない状態が示されている。発熱体200の取付面210に取り付けられる液冷パネル100Aの被取付面の全面には、第1実施形態と同様にアルミシート50が貼り付けられる。
【0050】
図6および図7に示すように、冷媒管10Aは、集熱板20に接触した状態で配置される複数の直線部11Aと、隣接する直線部11Aを連結する複数の曲線部12Aと、を有し、これらを一体に形成した管体である。図7に示すように、本実施形態の冷媒管10Aの直線部11Aは、同一方向に沿ってピッチ(所定間隔)P2を空けて配置されている。ここで、軸線X11は、冷媒管10Aの流入口10Abに最も近接した位置に配置される直線部11Aが延びる軸線を示す。同様に、軸線X12,X13,X14,X15,X16,X17,X18,X19,X20は、それぞれ他の直線部11Aが延びる軸線を示す。
【0051】
図7に示すように、本実施形態の冷媒管10Aの曲線部12Aは、冷媒管10Aの中心位置における曲率半径がR2となる半円形状の部分である。直線部11Aが配置される間隔であるピッチP2は、曲率半径R2の2倍よりも大きくなっている。ピッチP2を曲率半径R2の2倍よりも大きくしているのは、冷媒管10Aに座屈が生じることを回避するためである。
【0052】
図7に示すように、直線部11Aが配置される間隔であるピッチP2を短くすると、それに伴って曲線部12Aの曲率半径R2を小さくする必要がある。これは、隣接して配置される複数の曲線部12Aが接触することを避けるためである。本実施形態では、曲率半径R2が冷媒管10Aに座屈が生じる最小曲率半径よりも大きくなるようにピッチP2が設定されている。
【0053】
ここで、本実施形態のように液冷パネル100Aを磁石40による磁力により取付面210に近接した状態を保持する場合と、磁石40を用いずに液冷パネル100Aの端部をクランプにより取付面210に取り付けた場合の冷媒への抜熱量の実験結果について説明する。本実験では、発熱体200の取付面210の温度と液冷パネル100Aに流入する冷媒の温度差が35℃であるものとする。また、冷媒管10の内径D1が5mmであり、冷媒管10Aの中立線の全長が5650mmであり、ピッチP2が58mmであり、冷媒の流量が1.0L/minであるものとする。
【0054】
磁石40による磁力により取付面210に近接した状態を保持する場合、液冷パネル100Aと取付面210との間に隙間が形成されにくいため、発熱体200から冷媒への抜熱量は約460W/mであった。一方、磁石40を用いずに液冷パネル100Aの端部をクランプにより取付面210に挟んで取り付けた場合、液冷パネル100Aと取付面210との間に隙間が形成され易いため、発熱体200から冷媒への抜熱量は約330W/mであった。磁石40により液冷パネル100Aと取付面210との間に隙間を少なくすることにより、抜熱量が約40%上昇する。
【0055】
また、第1実施形態の液冷パネル100の抜熱量と本実施形態の液冷パネル100Aの抜熱量を比較すると、前者が約360W/mであるのに対し、後者が約460W/mとなっている。これは、第1実施形態の液冷パネル100の集熱板20が配置されるピッチP1が75mmであるのに対し、本実施形態の液冷パネル100Aの集熱板20が配置されるピッチP2が58mmと狭くなっているためである。なお、冷媒管10Aの曲線部12Aに座屈が生じる最小半径よりも大きくなるようにピッチP2の最小値は、内径D1が5mmの冷媒管10Aの場合、47mmである。
【0056】
ピッチP2を47mmとした場合において、磁石40による磁力により取付面210に近接した状態を保持する場合、液冷パネル100と取付面210との間に隙間が形成されにくいため、発熱体200から冷媒への抜熱量は約570W/mであった。一方、磁石40を用いずに液冷パネル100の端部をクランプにより取付面210に挟んで取り付けた場合、液冷パネル100と取付面210との間に隙間が形成され易いため、発熱体200から冷媒への抜熱量は約380W/mであった。磁石40により液冷パネル100と取付面210との間に隙間を少なくすることにより、抜熱量が約50%上昇する。なお、本実験結果において、冷媒管10Aの中立線の長さは6811mmとした。
【0057】
以上で説明した本実施形態の液冷パネル100によれば、曲線部12Aの曲率半径R2を十分に大きくすることで、ピッチP2を短くした場合であっても曲線部12Aの曲率半径R2が小さくなって冷媒管10Aに座屈が生じる不具合を抑制することができる。また、曲率半径R2が冷媒管10Aに座屈が生じる最小曲率半径よりも大きくなるようにピッチP2を設定することで、冷媒管10Aに座屈が生じる不具合をより確実に抑制することができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
以下、本発明に係る液冷パネル100の第3実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態の変形例であり、以下で特に説明する場合を除いて第1実施形態および第2実施形態と同様であるものとし、以下での説明を省略する。
【0059】
第1実施形態の液冷パネル100および第2実施形態の液冷パネル100Aは、集熱板20を収容する第1収容溝31と磁石40を収容する第2収容溝32が形成された基材30を備えるものであった。
それに対して、本実施形態の液冷パネル100Bは、集熱板20Bをパネル状に形成して第1実施形態および第2実施形態の基材30の機能を持たせたものである。
【0060】
図8は、本実施形態の液冷パネル100Bの断面図である。図9は、図8に示す集熱板20Bの断面図である。
図8に示すように、液冷パネル100Bは、冷媒管10Bと、冷媒管10を収容する複数の集熱板20と、断熱材料により形成された基材(断熱部)30と、複数の磁石40と、液冷パネル100の被取付面の全面に貼り付けられるアルミシート(表面シート)50と、を備える。
【0061】
集熱板20Bは、冷媒管10Bを収容するとともに板状部材を加工して形成された金属製(例えば、アルミニウム製)の部材である。図9に示すように、集熱板20Bは、発熱体200の取付面210と対応する形状に形成された第2被取付面20Baを有するパネル状に形成されている。集熱板20Bは、冷媒管10Bを収容するとともに冷媒管10が延びる方向に沿って直線状に延びる溝部21と、冷媒管10が延びる方向に対して直交する幅方向Wの両端に配置される一対の平面部22,23と、磁石40を収容する凹部24と、を有する。集熱板20Bの第2被取付面20Baには、凹部24が形成されており、凹部24は一対の平面部22,23と連結されている。
【0062】
断熱シート(断熱部)30Bは、溝部21の外周面21aに接触した状態で配置されるとともに断熱材料により形成された部材である。図8に示すように、断熱シート30Bは、集熱板20Bの溝部21の外周面21aと一対の平面部22,23の一部に接着剤等により接合した状態で配置されている。断熱シート30Bは、集熱板20Bの凹部24と一対の平面部22,23の一部が空間Sへ露出した状態で配置されている。
【0063】
本実施形態の液冷パネル100Bによれば、金属製の集熱板20Bがパネル状に形成されており集熱板20Bの少なくとも一部が空間Sへ露出した状態となっているため、発熱体200から集熱板20Bに伝達された熱が空間Sへ放熱される。よって、冷媒の流れがポンプPuの故障等により停止した場合に、発熱体200の熱が空間Sへ放熱されない不具合を抑制することができる。
【0064】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、発熱体200の取付面210および液冷パネル100の被取付面は平坦状であるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、発熱体200の取付面210および液冷パネル100の被取付面を所定の曲率を持った円筒面やその他の曲面形状としてもよい。この場合、液冷パネル100の基材30を柔軟性のある発泡ポリプロピレンにより形成し、磁石40を弾性のあるゴム材料やPVC樹脂等により形成するのが望ましい。円筒面や曲面形状であっても、液冷パネル100が発熱体200の取付面210の形状に沿って変形するため、発熱体200の取付面210と液冷パネル100の被取付面の接触面積を十分に確保することができる。これにより、液冷パネル100による発熱体200の冷却性能を維持することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,10B・・・冷媒管、 10a・・・外周面、 10b,10Ab・・・流入口、 10c,10Ac・・・流出口、 11,11A・・・直線部、 12,12A・・・曲線部、 20,20B・・・集熱板、 20Ba・・・被取付面(第2被取付面) 21・・・溝部、 21a・・・外周面、 21b・・・内周面、 21c・・・開口部、 22,23・・・平面部、 24・・・凹部、 30・・・基材(断熱部)、 30B・・・断熱シート(断熱部)、 30a・・・被取付面(第1被取付面)、 31・・・第1収容溝、 32・・・第2収容溝、 40・・・磁石、 41・・・接着剤、 50・・・アルミシート(表面シート)、 100,100A,100B・・・液冷パネル(冷却構造体)、 200・・・発熱体、 210・・・取付面、 300・・・空調機、 400・・・液冷発熱回収システム、 410・・・流入配管、 420・・・流出配管、 D1・・・内径、 Pu・・・ポンプ、 P1,P2・・・ピッチ、 R1,R2・・・曲率半径、 S・・・空間、 T1・・・板厚、 T2,T3・・・厚さ、 X1~X8,X11~X20・・・軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9