(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】コラーゲン線維の結束度を指標とする、低酸素条件及び/又は加齢による、コラーゲン構造の悪化を抑制する成分のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20230517BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230517BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230517BHJP
A61K 36/185 20060101ALN20230517BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20230517BHJP
A61Q 19/08 20060101ALN20230517BHJP
A61K 8/9789 20170101ALN20230517BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
A61K36/185
A61P43/00 105
A61Q19/08
A61K8/9789
(21)【出願番号】P 2018180803
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼中 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】水越 興治
(72)【発明者】
【氏名】望月 麻友
(72)【発明者】
【氏名】栗林 麻里
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-120577(JP,A)
【文献】国際公開第1998/040045(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/108155(WO,A1)
【文献】特開2005-034350(JP,A)
【文献】特開2004-359603(JP,A)
【文献】特開2004-359632(JP,A)
【文献】特表昭60-500955(JP,A)
【文献】特表2018-508778(JP,A)
【文献】特表2018-508521(JP,A)
【文献】特開2016-216395(JP,A)
【文献】特許第5689552(JP,B1)
【文献】特開2009-108010(JP,A)
【文献】特開平11-228382(JP,A)
【文献】特表2007-507528(JP,A)
【文献】Stimulation of Dermal and Epidermal Metabolism: An Approach to Anti-aging,Cosmetics & Toiletries,2009年02月16日,Vol.120, No.6,p.97-98,100,102,104
【文献】日本家政学会誌,1989年,Vol.40, No.8,p.725-731
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/02
G01N 33/50
G01N 33/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を分散させたコラーゲン含有組成物に、被検成分を添加して、低酸素条件でインキュベーションしたときの、コラーゲン線維の結束度の上昇低減効果を指標とすることを特徴とし、
前記被検成分の存在下及び非存在下で、前記コラーゲン含有組成物を低酸素条件下でインキュベーションし、
被検成分の存在下でインキュベーションした後のコラーゲン線維の結束度が、被検成分の非存在下でインキュベーションした後のコラーゲン線維の結束度よりも低い場合に、
前記被検成分が、低酸素条件及び/又は加齢による、コラーゲン構造の悪化を抑制する成分であると判定する、低酸素条件及び/又は加齢による、コラーゲン構造の悪化を抑制する成分のスクリーニング方法。
【請求項2】
前記コラーゲン構造が、結合組織のコラーゲン構造であることを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記細胞が結合組織細胞であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記インキュベーション後のコラーゲン線維の顕微鏡撮影画像に基づき、前記コラーゲン線維の結束度を評価することを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
前記顕微鏡撮影画像に対して画像解析処理を施し、前記コラーゲン線維の結束度を定量化した画像解析処理結果に基づき、前記コラーゲン線維の結束度を評価することを特徴とする、請求項4に記載のスクリーニング方法。
【請求項6】
前記画像解析処理において、前記顕微鏡撮影画像に対してフーリエ変換処理を施して2次元空間周波数パワースペクトルを表すフーリエ変換画像を取得し、
該フーリエ変換画像の少なくとも原点を通過する直線を設定し、該直線の長さ方向について、該直線上における該フーリエ変換画像のパワーをプロットして得られる波形、又は、
該フーリエ変換画像から、少なくともその原点を含む略矩形領域画像を切り出し、切り出された略矩形領域画像の短径方向のパワーの平均値を、該略矩形領域画像の長径方向についてプロットして得られる波形、
を得ることを特徴とする、請求項5に記載のスクリーニング方法。
【請求項7】
前記波形の傾斜部分の少なくとも一部を切り出し、前記傾斜部分の近似直線を作成し、該近似直線に対する前記波形を構成するデータのばらつきの程度が小さいほど、前記コラーゲン構造の悪化を抑制する効果に優れるものと判断することを特徴とする、請求項6に記載のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記ばらつきの程度を標準偏差により評価することを特徴とする、請求項7に記載のスクリーニング方法。
【請求項9】
前記低酸素条件が、細胞培養雰囲気中の酸素濃度が5%以下の条件であることを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項10】
抗老化成分のスクリーニング方法であることを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載のスクリーニング方法。
【請求項11】
加齢に伴うシワ、たるみ又はハリの低下の改善又は予防成分のスクリーニング方法であることを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン構造の悪化抑制成分のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢に伴う人体の各組織の機能低下、すなわち老化現象を抑制することを目的とするアンチエイジングに関する研究が盛んに行われている。特に美容、化粧料の技術分野においては加齢に伴う肌のしわ、たるみ、しみなどの老化現象を抑制する有効成分の探索がされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、真皮の構造形成の制御に関わる遺伝子の発現を指標とすることで、皮膚のシワ、たるみ、ハリの低下を改善する素材をスクリーニングする方法が開示されている。
特許文献2には、細胞の核膜異常状態を指標として、シワの予防又は改善効果を有する成分をスクリーニングする方法が開示されている。
【0004】
ところで、血液ガス分析による解析により、動脈血のpO2(酸素分圧)が低下することが知られている(非特許文献1)。これは加齢に伴い人体の各組織が低酸素の状態に置かれることを示している。
このような知見により、低酸素状態と老化現象の関連が示唆されているが、低酸素状況下でどのような生理学的変化が起こることで老化が起こるのか、そのメカニズムの全容は明らかとなっていない。
【0005】
一方、加齢に伴い結合組織が次第に柔軟性、弾力性を失い硬くなっていくことが知られている。これは、結合組織の主要成分であるコラーゲン線維が加齢とともに架橋し、結束してしまうことに起因していると考えられている(非特許文献2)。
しかし、加齢に伴うコラーゲン線維の結束がどのようなメカニズムで生じるのかについては明らかとなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-093743号公報
【文献】特開2013-257347号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】日本老年医学会雑誌/15巻(1978)1号、「健康老年者の動脈血ガス分析値」、田口悦子ら、1978年
【文献】Connective Tissue,Vol.16,No.1,25-28(1984)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生体より採取した組織片は、新規の素材を探索する際のツールとして用いられることがある。生体におけるコラーゲン構造に影響を与える成分の探索に当たっても、コラーゲン構造を含む真皮組織等の組織片を生体より採取し、これをモデルとして用いることは理論上可能である。
しかし、組織片は生体より採取されたものであるが故、その品質の均一性が担保されておらず、再現性に悖るという問題点がある。
【0009】
このような問題に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、生体におけるコラーゲン構造の悪化を抑制する効果のある成分をスクリーニングするための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
細胞を分散させたコラーゲン含有組成物を低酸素条件下でインキュベーションしたところ、驚くべきことにコラーゲン線維の結束度が上昇することが、発明者の鋭意研究努力により判明した。
この結果は、加齢に伴い人体の各組織が低酸素条件にさらされること(非特許文献1)、並びに、加齢に伴い結合組織におけるコラーゲン線維の結束が昂進すること(非特許文献2)、という2つの知見と合致するものである。
つまり、本発明者が構築した上記試験系は、人体の結合組織におけるコラーゲン線維の加齢に伴う結束度の向上を再現できる良好なモデルとして活用できることが明らかとなった。
【0011】
かかる知見に基づき、本発明者は本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、細胞を分散させたコラーゲン含有組成物に、被検成分を添加して、低酸素条件でインキュベーションしたときの、コラーゲン線維の結束度の上昇低減効果を指標とすることを特徴とする、低酸素条件及び/又は加齢による、コラーゲン構造の悪化を抑制する成分のスクリーニング方法である。
本発明によれば、低酸素条件や加齢に伴うコラーゲン構造の悪化を抑制する成分を簡便にスクリーニングすることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記被検成分の存在下及び非存在下で、前記コラーゲン含有組成物を低酸素条件下でインキュベーションし、
被検成分の存在下でインキュベーションした後のコラーゲン線維の結束度が、被検成分の非存在下でインキュベーションした後のコラーゲン線維の結束度よりも低い場合に、
前記被検成分が、低酸素条件及び/又は加齢による、コラーゲン構造の悪化を抑制する成分であると判定することを特徴とする。
このように対照試験を実施する形態とすることにより、より正確なスクリーニングが可能となる。
【0013】
本発明は、低酸素条件や加齢に伴う結合組織のコラーゲン構造の悪化を抑制する成分のスクリーニングに応用することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記細胞が結合組織細胞である。結合組織を構成する結合組織細胞を用いることで、結合組織におけるコラーゲン構造の悪化抑制成分をより精度よくスクリーニングすることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記インキュベーション後のコラーゲン線維の顕微鏡撮影画像に基づき、前記コラーゲン線維の結束度を評価することを特徴とする。
顕微鏡撮影画像に基づく形態とすることで、コラーゲン線維の結束度の評価を容易に行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記顕微鏡撮影画像に対して画像解析処理を施し、前記コラーゲン線維の結束度を定量化した画像解析処理結果に基づき、前記コラーゲン線維の結束度を評価することを特徴とする。
このように定量的に評価する形態とすることにより、より精度の高いスクリーニングが実現できる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記画像解析処理において、前記顕微鏡撮影画像に対してフーリエ変換処理を施して2次元空間周波数パワースペクトルを表すフーリエ変換画像を取得し、
該フーリエ変換画像の少なくとも原点を通過する直線を設定し、該直線の長さ方向について、該直線上における該フーリエ変換画像のパワーをプロットして得られる波形、又は、
該フーリエ変換画像から、少なくともその原点を含む略矩形領域画像を切り出し、切り出された略矩形領域画像の短径方向のパワーの平均値を、該略矩形領域画像の長径方向についてプロットして得られる波形、
を得ることを特徴とする。
フーリエ変換を用いることにより、複雑な顕微鏡撮影画像の定量的な評価が容易となる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記波形の傾斜部分の少なくとも一部を切り出し、前記傾斜部分の近似直線を作成し、該近似直線に対する前記波形を構成するデータのばらつきの程度が小さいほど、前記コラーゲン構造の悪化を抑制する効果に優れるものと判断することを特徴とする。
データのばらつきの程度という一次元的な尺度に基づきコラーゲン構造の結束度を評価することで、より簡便なスクリーニングが可能である。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記ばらつきの程度を標準偏差により評価することを特徴とする。
標準偏差により評価することにより、統計学的観点から精度の高い評価が可能となる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記低酸素条件が、細胞培養雰囲気中の酸素濃度が5%以下の条件であることを特徴とする。
このような条件下でインキュベーションを行うことにより、より効果的にスクリーニングを行うことができる。
【0021】
本発明は抗老化成分のスクリーニング方法に応用することができる。
【0022】
また本発明は、加齢に伴うシワ、たるみ又はハリの低下の改善又は予防成分のスクリーニング方法に応用することができる。
【0023】
また、本発明は、アオイ科ゼニアオイ属(Malvaceae Malva)に属する植物の抽出物を有効成分として含む、低酸素条件及び/又は加齢による、コラーゲン構造の悪化の抑制剤にも関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低酸素条件及び/又は加齢によるコラーゲン構造の悪化を抑制する成分を容易にスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】フーリエ変換画像(上段)の原点を通過する直線を設定し、その直線の長さ方向について、直線上におけるフーリエ変換画像のパワーをプロットして得た波形(下段)。
【
図2】フーリエ変換画像(上段)から、その原点を中心に含む矩形領域画像を切り出し、切り出された矩形領域画像の短径(縦)方向のパワーの平均値を、略矩形領域画像の長径(横)方向についてプロットして得た波形(下段)。
【
図3】波形データ(上段)の傾斜部分を切り出し(下段)、波形を構成するデータについて近似直線を作成することを表す概略図。
【
図4】通常酸素状態、または低酸素状態においてインキュベーションしたコラーゲン含有組成物におけるコラーゲン線維を撮影した電子顕微鏡撮影画像。
【
図5】2次元空間周波数パワースペクトルを表すフーリエ変換画像である。画像に表された長方形領域を選択し、この領域について波形データを得る。
【
図6】フーリエ変換画像より選択された領域における、2次元空間周波数パワースペクトルのパワーを表す波形である。
【
図7】波形の傾斜部分における波形を構成するデータと、そのデータについて算出された近似直線を表す。
【
図8】
図7に示した近似直線と波形を構成するデータとのパワーの差分(Δpower)を縦軸にプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<1>スクリーニング方法
本発明は低酸素条件において進行するコラーゲン線維の架橋化による、コラーゲン構造の悪化を抑制する成分をスクリーニングする方法である。また、加齢に伴い組織が低酸素条件に置かれることから(非特許文献1)、本発明は、加齢によるコラーゲン構造の悪化を抑制する成分をもスクリーニングの対象とすることができる。
【0027】
なお、骨、歯、軟骨、脂肪、腱、靱帯、真皮、皮下組織などの結合組織の主成分はコラーゲンである。よって、本発明は結合組織のコラーゲン構造の悪化を抑制する成分のスクリーニング方法に応用することができる。
【0028】
特に、真皮組織のコラーゲン線維の架橋が進み、コラーゲン構造が悪化すると、皮膚のシワ、たるみ又はハリの低下に代表される老化が進む。
したがって、本発明は、抗老化成分、より具体的には、加齢に伴うシワ、たるみ又はハリの低下の改善又は予防成分のスクリーニング方法に応用することが好ましい。
以下、本発明の構成について詳述する。
【0029】
(1)コラーゲン含有組成物
本発明においては、細胞を分散させたコラーゲン含有組成物を用いる。コラーゲン含有組成物は、コラーゲンを含有する組成物であり、細胞培養を阻害するような組成のものでなければ、その具体的構成は限定されない。
【0030】
コラーゲン含有組成物は、細胞培養のための各種成分を含んでいることが好ましい。例えば、MEM(Minimum Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、DMEM(Dulbecco´s Modified Eagle Medium)、EMEM(Eagle´s minimal essential medium)、IMDM(Iscove´s Modified Dulbecco´s Medium)、GMEM(Glas- gow´s MEM)、F12(Ham´s F12 Medium)、DMEM/F12、RPMI1640、BMOC-3(Brinster´s BMOC-3 Medium)、CMRL-1066、L-15培地(Leibovitz´s L-15 medium)、McCoy’s 5A、Media 199、MEM αMedia、MCDB105、MCDB131、MCDB153、MCDB201、Williams’ medium Eなど細胞培養に常用される基本培地;FBSなどの血清;KSRなどの血清代替品;NaHCO3、HEPESなどの緩衝剤;pH調製の目的でのアルカリや酸;FGFなどの各種成長因子などを例示できる。
コラーゲン含有組成物に分散させる細胞の種類により、上記任意成分の種類及びその濃度を適宜選択することができる。
【0031】
コラーゲン含有組成物は、液体状であってもゲル状であってもよい。生体内におけるコラーゲンの存在態様、より具体的には結合組織の態様に近づけるという観点から、コラーゲン含有組成物はコラーゲンゲルの形態とすることが好ましい。
【0032】
コラーゲン含有組成物に含まれるコラーゲンの種類は特に限定されないが、I型~III型、V型、XI型などの線維性コラーゲンが好適に例示できる。コラーゲンは、動物の皮膚などの結合組織より抽出することにより得ることができる。
【0033】
コラーゲンとしては、市販品を特に制限なく用いることができる。例えば、Atelocollagen/Native Collagen Acidic Solutions(株式会社高研社製)、Cellmatrix Type I-A(新田ゼラチン株式会社製)、コラーゲンタイプIIIウシ真皮由来(株式会社ニッピ製)などが挙げられる。
【0034】
コラーゲン含有組成物におけるコラーゲンの濃度は特に限定されないが、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~8質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.3~2質量%、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0035】
(2)細胞
コラーゲン含有組成物に分散させる細胞の種類は特に限定されず、生体から採取した初代培養細胞や、株化された培養細胞を用いることができる。
なお、コラーゲンは結合組織の主要成分である。よって、生体における結合組織を再現したモデルとしての精度を向上させる観点からは、線維芽細胞、細網細胞、組織球、形質細胞、リンパ球、脂肪細胞、肥満細胞、顆粒白血球、色素細胞などの結合組織細胞を用いることが好ましく、中でも線維芽細胞を用いることが特に好ましい。
これら細胞については、初代培養細胞や株化細胞が市販されており、これを本発明のために制限無く使用することができる。
【0036】
コラーゲン含有組成物に分散させる細胞の数は特に限定されない。コラーゲン含有組成物の1mL当たりの細胞数としては、好ましくは1×102個~1×106個、より好ましくは1×103個~1×105個、さらに好ましくは5×103個~5×104個を目安とすることができる。
【0037】
コラーゲン含有組成物の調製方法は特に限定されない。
まず、コラーゲン含有組成物を構成するコラーゲン溶液を調製し、これに別途用意した細胞の懸濁液を加えて混合することでコラーゲン含有組成物を調製することが好ましい。
【0038】
(3)被検成分
被検成分をコラーゲン含有組成物に添加する際の態様は限定されない。好ましくは被検成分を含む溶液をコラーゲン含有組成物に添加する形態とする。被検成分を含む溶液は、コラーゲン含有組成物の調製に使用したものと同じ基本培地や血清などの培地成分を含むことが好ましい。
【0039】
コラーゲン含有組成物をコラーゲンゲルの形態として本発明を実施する場合には、コラーゲン含有組成物がゲル化する前の溶液を培養容器に充填し、CO2インキュベーター内で数時間静置し、完全にゲル化した状態となってから、被検成分を添加することが好ましい。
また、被検成分の添加前に、ゲル化したコラーゲン含有組成物を培養容器の内壁から剥離させてから被検成分を添加することが好ましい。
【0040】
コラーゲン含有組成物に対する、被検成分の溶液の添加量も特に限定されない。コラーゲン含有組成物に対する被検成分の溶液の体積比は、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~5、さらに好ましくは0.3~2を目安とすることができる。
【0041】
(4)インキュベーション
被検成分の添加の後、コラーゲン含有組成物を低酸素条件下でインキュベーションする。
通常の細胞培養におけるCO2インキュベーターにおいて酸素濃度は18~19%程度であるので、これよりも低い酸素濃度でインキュベーションする。具体的には、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下の酸素濃度でインキュベーションする。
酸素濃度の下限は、コラーゲン含有組成物に分散された細胞が死滅しなければ特に制限されないが、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上の酸素濃度である。
【0042】
低酸素条件でのインキュベーションにおいては、炭酸ガスの他に窒素ガスや混合ガスなどのボンベを併設した低酸素濃度培養用CO2インキュベーター(例えば、池本理化工業社製)を用いてもよいし、ガス濃度調節剤を備えるガスバリア性パウチからなる低酸素培養器具(例えば、スギヤマ技研製)を用いてもよい。
【0043】
インキュベーション期間は特に制限されず、コラーゲン含有組成物に分散した細胞の種類や数、これに基づき予想されるコンフルエントに達する時間等を考慮して適宜設計することができる。具体的には、好ましくは12時間~10日、より好ましくは1日~9日、さらに好ましくは3日~8日を目安とすることができる。
このインキュベーションの期間中、被検成分を含む培地を用いて培地交換をしてもよい。
【0044】
なお、対照として、被検成分を添加せずにコラーゲン含有組成物をインキュベーションすることが好ましい。対照との比較によって、後述するコラーゲン線維の結束度の上昇低減効果の確認が容易となるからである。
【0045】
(5)コラーゲン線維の結束度の観察
生体内では加齢に伴い結合組織のコラーゲンの架橋が進み、コラーゲン線維の結束度が向上する。細胞が分散されたコラーゲン含有組成物を低酸素条件下でインキュベーションしたときにも、この生体内での事象と同じく、コラーゲン含有組成物中のコラーゲン線維の結束度が上昇する。
本発明においては、被検成分を添加したときのコラーゲン含有組成物におけるコラーゲン線維の結束度の上昇低減効果を指標とする。
【0046】
インキュベーション後のコラーゲン含有組成物におけるコラーゲン線維の結束度の確認方法は特に限定されないが、顕微鏡、特に電子顕微鏡による観察を好適に例示することができる。
電子顕微鏡としては走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、及び走査型透過電子顕微鏡(STEM)の何れを用いても構わない。
【0047】
本発明においては顕微鏡撮影画像に基づき、コラーゲン含有組成物におけるコラーゲン線維の結束度を評価する形態とすることが好ましい。
顕微鏡で観察したとき、コラーゲン線維が束になって凝集しているように見える箇所が、コラーゲン線維の結束部分である。この結束部分の数や大きさなどを観察し、その程度が大きい場合に、結束度が高いと評価することができる。
【0048】
顕微鏡撮影画像に基づく評価の実施の形態は特に制限されない。
例えば、予め用意しておいた基準写真を基に官能的に結束度を評価する形態としてもよい。
また、顕微鏡撮影画像に対して画像解析処理を施し、コラーゲン線維の結束度を定量化した画像解析処理結果に基づいて、結束度を評価する形態としてもよい。
【0049】
ここでいう画像解析処理の手法は特に限定されない。顕微鏡撮影画像において結束部分は高強度(高光度、高明度、高輝度など)で表示される傾向がある。そのため、画像解析処理によって、強度(光度、明度、輝度など)のパラメータを計算処理することで、結束度を定量的に評価することができる。
【0050】
以下、画像解析処理としてフーリエ変換処理による手法を具体的に説明する。
フーリエ変換は周期性の評価手法である。2次元の画像に対してフーリエ変換を行った場合、パワーが濃淡で表された2次元空間周波数パワースペクトルを表すフーリエ変換画像が得られる。このフーリエ変換画像の中心は波数0の原点であり、原点より離れた位置ほど高波数を表す。
【0051】
フーリエ変換の手法としては、離散フーリエ変換(DFT)や、演算量を減らした高速フーリエ変換(FFT)などが挙げられる。
なお、フーリエ変換で扱えるのは通常グレースケールの画像なので、顕微鏡撮影画像をグレースケールに変換してからフーリエ変換することが好ましい。
【0052】
次に、フーリエ変換画像に基づき、パワーの波形に関するデータを得る。
パワーの波形は、以下の何れかの方法により算出することができる。
(i)フーリエ変換画像の少なくとも原点を通過する直線を設定し、該直線の長さ方向について、該直線上における該フーリエ変換画像のパワーをプロットして得る(
図1に概略図を示す)。
(ii)フーリエ変換画像から、少なくともその原点を含む略矩形領域画像を切り出し、切り出された略矩形領域画像の短径方向のパワーの平均値を、該略矩形領域画像の長径方向についてプロットして得る(
図2に概略図を示す)。
【0053】
図1及び
図2の下段において、縦軸はパワーであるが、フーリエ変換画像においてパワーは濃淡により表現される。したがって、パワーについてはフーリエ変換画像の光度や輝度、明度に基づき算出することができる。
【0054】
また、
図1及び
図2の下段において、横軸は周波数であるが、フーリエ変換画像はデジタル画像としてコンピュータ上で処理されるため、画素(pixel)に基づく位置情報として取得される。
【0055】
元データである顕微鏡撮影画像においては、上述した通り、コラーゲン構造の結束部分は高光度、高明度又は高輝度で表示される傾向がある。すなわち、コラーゲン構造の結束度が高い場合には、顕微鏡撮影画像において高光度、高明度又は高輝度の領域が高頻度に出現することとなる。そのため、これをフーリエ変換した2次元空間周波数パワースペクトルにおいては、周波数ごとのパワーにばらつきが生じやすい傾向となる。
したがって、波形で表されるパワーのばらつきの程度が高いほど、元データである顕微鏡撮影画像に表されたコラーゲン線維の結束度は高いと評価することができる。
【0056】
このばらつきの程度は、波形の傾斜部分における近似直線(
図3)に対する、波形を構成するデータのばらつきにより評価可能である。
例えば、近似直線と波形を構成するデータとのパワーの差分(Δパワー)を算出し、Δパワーのデータ集合についての標準偏差によって、波形を構成するデータのばらつきを客観的に評価することができる。
【0057】
<2>コラーゲン構造の悪化の抑制剤
アオイ科ゼニアオイ属(Malvaceae Malva)に属する植物の抽出物には、低酸素条件や加齢による、コラーゲン構造の悪化を抑制する効果がある。
つまり、アオイ科ゼニアオイ属に属する植物の抽出物は、コラーゲンを主成分とする組織である、骨、歯、軟骨、脂肪、腱、靱帯、真皮、皮下組織などの結合組織の機能低下の改善又は予防に効果を奏する。
【0058】
また、真皮組織のコラーゲン構造が悪化すると、皮膚のシワ、たるみ又はハリの低下に代表される老化が進む。
したがって、アオイ科ゼニアオイ属に属する植物の抽出物には、コラーゲン構造の悪化を抑制する効果に付随して、抗老化作用、より具体的には、加齢に伴う皮膚のシワ、たるみ又はハリの低下の改善又は予防効果があると言える。
【0059】
本発明の有効成分であるアオイ科ゼニアオイ属に属する植物としては、Malva aegyptia L.、Malva alcea L.、Malva alcea var. fastigiata (Cav.) K. Koch、Malva arborea (L.) Webb & Berthel.、Malva assurgentiflora (Kellogg) M.F.Ray、Malva borealis Wallman、Malva canariensis M.F.Ray、Malva cathayensis M.G. Gilbert, Y. Tang & Dorr、Malva cretica Cav.、Malva cretica subsp. althaeoides (Cav.) Dalby、Malva durieui Spach、Malva erecta J. Presl & C. Presl、Malva hispanica L.、Malva iljinii Riedl、Malva lindsayi (Moran) M.F.Ray、Malva moschata L.(ジャコウアオイ)、Malva multiflora (Cav.) Soldano, Banfi & Galasso、Malva neglecta Wallr.、Malva nicaeensis All.、Malva occidentalis (S.Watson) M.F.Ray、Malva pacifica M.F.Ray、Malva parviflora L.(ウサギアオイ)、Malva preissiana Miq.、Malva pseudolavatera Webb & Berthel.、Malva pusilla Sm.、Malva stipulacea Cav.、Malva subovata (DC.) Molero & J.M.Monts.、Malva sylvestris L.(ウスベニアオイ)、Malva sylvestris var. mauritiana (L.) Boiss.(ゼニアオイ)、Malva tournefortiana L.、Malva verticillata L.(フユアオイ)、Malva vidalii (Pau) Molero & J.M.Monts.などが挙げられる。
特に好ましくはゼニアオイ(Malva sylvestris var. mauritiana (L.) Boiss.)を例示できる。
【0060】
アオイ科ゼニアオイ属に属する植物の抽出物を得る際の抽出部位は、特に限定されず、植物の花、葉、茎、根、種から選ばれる1種又は2種以上を用いて、抽出物を得ることができる。このなかでも、特に花から得られる抽出物が好ましい。
【0061】
本発明における前記の植物の抽出物は、日本において自生又は生育された植物、漢方生薬原料などとして販売される日本産のものを用い抽出物を作製することもできるし、丸善株式会社などの植物抽出物を扱う会社より販売されている市販の抽出物を購入し、使用することもできる。
【0062】
抽出に際し、植物は予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物は、植物またはその乾燥物1質量に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去することができる。その後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ-などで分画精製し、所望の抽出物を得ることができる。
【0063】
抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、水、エタノ-ル、イソプロピルアルコ-ル、ブタノ-ルなどのアルコ-ル類、1,3-ブタンジオ-ル、ポリプロピレングリコ-ルなどの多価アルコ-ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ-テル、テトラヒドロフランなどのエ-テル類から選択される1種乃至は2種以上が好適に例示できる。
【0064】
本発明は外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。
外用剤としては化粧料、医薬部外品、医薬品などが好適に例示でき、本発明の効果を損ねない限度において、通常使用される任意成分を含有することもできる。
【0065】
このような任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4-ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0066】
経口剤としては、例えば、菓子やパン、麺などの一般食品、ドリンク製剤、カプセル剤や錠剤の形態をとる健康増進の目的を有する食品群(例えば、特定保健用食品等)、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤や、錠剤の形態をとる経口投与医薬品等が例示できる。
【0067】
経口剤の形態とする場合においては、許容される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、食品であれば、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酢等の調味成分、着色成分、フレーバー等の矯臭成分、増粘剤、乳化・分散剤、保存料、安定剤、各種ビタミン類等が好適に例示でき、健康増進の目的を有する食品群や医薬品であれば、結晶セルロース、乳糖等の賦形剤、アラビヤガムやヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、矯味、矯臭剤、着色剤、各種ビタミン類等が好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、本発明の経口投与組成物を製造することができる。
【0068】
経口剤における前記植物の抽出物の総含有量は、固形分として、0.05~100質量%、より好ましくは30~80質量%とすることができる。
また、固形分として前記植物の抽出物を1日あたり10~1000mgを1回又は数回に分けて飲用する形態とすることが好ましい。
【実施例】
【0069】
<1>コラーゲン含有組成物の調製
表1上段に示した成分を同表に示した質量比で氷冷しながら混合し、コラーゲン溶液Aを調製した。コラーゲン溶液Aと水を表1中段に示す質量比で混合し、コラーゲン溶液Bを調製した。24wellプレートにコラーゲン溶液Bを250μL/well添加し、CO2インキュベーター内で15分静置した。
一方、予め培養していた細胞を回収し、1×105cells/mLに調製した細胞懸濁液と、コラーゲン溶液Aとを表1下段に記載の割合で混合し、細胞を含むコラーゲン溶液Cを得た。
コラーゲン溶液Cを上で説明した250μL/wellのコラーゲン溶液Bが入ったwellに1mL/well添加し、CO2インキュベーター内で4時間静置することで、細胞が分散されたゲル状のコラーゲン含有組成物を調製した。
【0070】
【0071】
マイクロスパーテルでコラーゲン含有組成物をプレートの内壁から剥離した。ここへ被検成分を含有する溶液(10%FBS DMEM)を750μL/well添加した。
脱酸素剤を備えた低酸素培養器具(BIONIX、スギヤマ技研製)に、この24wellプレートを封入し、酸素濃度1%に調整した状態で、CO2インキュベーター内でのインキュベーション(低酸素状態)を開始した。
インキュベーション開始から72時間後、well内の培地を再び被検成分を含有する溶液(10%FBS DMEM)750μL/wellで交換した。その後、再びプレートを低酸素培養器具に封入し、96時間インキュベーション(低酸素状態)した。
【0072】
なお、本試験例においては被検成分としてゼニアオイ花エキスを用いた。
また、対照試験として、被検成分溶液に代えて培地(10%FBS DMEM)を添加したコラーゲン含有組成物を、低酸素培養器具へ封入(低酸素状態)又は未封入(通常酸素状態)の状態で同様にインキュベーションした。
【0073】
<2>顕微鏡観察
インキュベーション後のゲル状のコラーゲン含有組成物を回収し、表2に示すフローで固定、脱水、真空凍結乾燥を行い、走査型電子顕微鏡(SEM)によりコラーゲン構造を観察した。電子顕微鏡撮影画像を
図4に示す。
【0074】
【0075】
図4に示すように、通常酸素状態でインキュベーションしたものと比較し、低酸素状態でインキュベーションしたコラーゲン含有組成物においては、コラーゲン線維が結束し凝集した部分(
図4の矢印で示す部分)が顕著に観察された。
一方、ゼニアオイ花エキスを添加したコラーゲン含有組成物は、同エキス非添加のものに比べてコラーゲン線維の顕著な結束が見られなかった。
【0076】
この結果は、細胞を分散させたコラーゲン含有組成物に、被検成分を添加して、低酸素条件でインキュベーションしたときの、コラーゲン線維の結束度の上昇低減効果を指標とすることで、低酸素条件によるコラーゲン構造の悪化を抑制する成分をスクリーニングできることを示している。
【0077】
また、加齢に伴い組織が低酸素条件に置かれることから(非特許文献1)、上記試験系は、加齢によるコラーゲン構造の悪化を抑制する成分のスクリーニングにも応用できることを示している。
【0078】
また、本試験例の結果は、アオイ科ゼニアオイ属に属する植物の抽出物には、低酸素条件におけるコラーゲン構造の悪化を抑制する効果があることを示している。
【0079】
<3>画像解析
図4に示す顕微鏡撮影画像について画像解析ソフト(ImageJ)を用いて高速フーリエ変換(FFT)を施し、2次元空間周波数パワースペクトルを表す、フーリエ変換画像(FFT画像)を取得した(
図5)。
FFT画像の中心(すなわち2次元空間周波数パワースペクトルの波数0の原点)を中心とした矩形領域を選択した(
図5)。
選択した領域の縦方向の強度(つまり2次元空間周波数パワースペクトルのパワーに相当)を平均した数値を、同領域の横方向についてプロットした波形データを抽出した(
図6)。
【0080】
この波形データにおける傾斜部分の一部(
図6における254pixel~381pixelの領域)を切り出し、この傾斜部分の波形を構成するデータについて近似直線を作成した(
図7)。
【0081】
この近似直線と波形を構成するデータとのパワーの差分(Δパワー、Δpower)を算出し(
図8)、標準偏差を計算した(表3)。
【0082】
【0083】
表3に示す通り、低酸素状態でインキュベーションしたコラーゲン含有組成物の電子顕微鏡撮影画像の解析により算出された標準偏差は、通常酸素状態でインキュベーションしたものと比較し、顕著に大きかった。
一方、ゼニアオイ花エキスを添加したコラーゲン含有組成物においては、同エキス非添加のものに比べて、顕著に標準偏差が小さかった。
【0084】
この結果は、顕微鏡撮影画像より得られたフーリエ変換画像に表された、2次元空間周波数パワースペクトルのパワーの値のばらつきに基づき、被検成分のコラーゲン線維の結束度の向上低減効果を評価できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明はアンチエイジングに関する有効成分の探索に応用することができる。