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特許7280692リチウム含有量が少ないガラスセラミック
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  • 特許-リチウム含有量が少ないガラスセラミック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】リチウム含有量が少ないガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/14 20060101AFI20230517BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20230517BHJP
   F24C 15/10 20060101ALI20230517BHJP
   H05B 6/12 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C03C10/14
C03B32/02
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018238386
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2019112295
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】10 2017 131 067.3
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2018 110 855.9
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エーフェリン ヴァイス
(72)【発明者】
【氏名】マイケ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ホーホライン
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ ズィーバース
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ドゥーデク
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ボックマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ビアギート デアク
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505136(JP,A)
【文献】特表2013-527102(JP,A)
【文献】特表2009-500282(JP,A)
【文献】特表2015-514655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶相として高温型石英固溶体(HQMK)および20~700℃の範囲で-1~+1ppm/Kの熱膨張を有する、透明で着色されたガラスセラミック、特にLASガラスセラミックであって、該ガラスセラミックが、構成成分として酸化リチウム(LiO)3.0~3.6重量%を含有し、かつ、酸化モリブデン(MoO)0.003~0.25重量%で着色されている、ガラスセラミック。
【請求項2】
着色酸化物CoO、NiO、Cr、CuOまたはNdを0~0.01重量%未満の量で含有し、かつMnOを0~0.3重量%未満の量で含有する、請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項3】
以下のアルカリ土類金属酸化物の構成成分およびZnOを重量%で含有する、請求項1または2記載のガラスセラミック:
BaO 1.2~2.8
MgO 0~1未満
CaO 0~1未満
ZnO 1.2~2.5。
【請求項4】
酸化スズ(SnO)0.1~0.6重量%で清澄されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項5】
以下の構成成分を重量%で含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のガラスセラミック:
SiO 62~68
Al 18.5~23
LiO 3.0~3.6、好ましくは3.2~3.6
oO 0.003~0.25
SnO 0.1~0.6
BaO 1.2~2.8
MgO 0~1未満、好ましくは0.3~1未満
ZnO 1.2~2.5
TiO 2.6~4.5
ZrO 0.9~1.7
0~2
0~4
NaO+KO 0~1.5未満、好ましくは1未満
CaO 0~1未満
SrO 0~1未満
Fe 0~0.2、好ましくは0.15まで。
【請求項6】
それぞれ重量%で示される(BaO+ZnO)/MgOの比が、2.2~35の範囲、好ましくは4.5~15の範囲である、請求項1から5までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項7】
ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、ハロゲン化物または硫黄(S)を含む化合物を、0~0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満の量で含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項8】
主結晶相として高温型石英固溶体(HQMK)を、存在する結晶相の80%超、好ましくは90%超で含有し、かつ更なる結晶相として核形成剤相またはキータイト固溶体(KMK)のみを結晶相割合の最大20%、好ましくは最大10%、特に好ましくは最大5%の量で含有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項9】
4mmの厚さで、0.5~70%、好ましくは0.5~40%、特に好ましくは0.5~30%、最も好ましくは0.5~20%の光透過率(τvis)を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項10】
前記ガラスセラミックの出発ガラスの溶融物が、1750℃未満で、好ましくは1700℃未満で200dPa・sの粘度に達する、請求項1から9までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項11】
20℃~700℃の範囲で、0~0.41ppm/K、好ましくは0~0.35ppm/K、特に好ましくは0~0.3ppm/Kの熱膨張を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項12】
調理面、暖炉覗き窓、グリル面または焙煎面、ガスグリル内の燃料要素のカバー、特に熱分解炉用のオーブン覗き窓、台所または実験室の作業面またはテーブルトップ、照明装置用カバーとしての、耐火性ウインドウにおける、かつ場合によっては積層複合材における安全ガラスとしての、熱プロセスにおけるキャリアプレートとしてもしくは炉内張りとしての、または携帯型電子機器用のバックカバーとしての、請求項1から11までのいずれか1項記載のガラスセラミックの使用。
【請求項13】
以下の工程:
- 原料-構成成分を溶融するにあたって、出発ガラスの溶融を、好ましくは1500~1700℃の温度で行う工程、
- 前記出発ガラスの溶融物を、好ましくはSnOで清澄する工程、
- 加工温度(V)の範囲の温度で、好ましくは10dPa・sの粘度で、特に好ましくは1350℃未満の温度で熱間成形してガラスセラミックパネルを形成するにあたって、前記加工温度(V)と上限失透温度との差(V-OEG)が好ましくは20~100℃である工程、
- 高温型石英固溶体(HQMK)からキータイト固溶体(KMK)への変換が回避される速度と温度を選択してセラミック化する工程
を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載のガラスセラミックを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理面としての使用に適した、透明で着色されたガラスセラミックに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミック調理面と、このために使用されるガラスセラミックとは何十年にもわたって知られている。一般に、リチウムアルミノシリケート(LAS)ガラスセラミックが使用され、このガラスセラミックは、主結晶相として、特に透明な材料のための高温型石英固溶体(Hochquartz-Mischkristall)、または特に半透明もしくは不透明材料のためのキータイト固溶体を含有する。調理面として使用するのに重要であるこれらの材料の特性は、室温から700℃以上までの範囲で非常に小さい熱膨張を示すことであり、これは負の熱膨張を示す結晶相と正の熱膨張を示す非晶質残留ガラス相との組合せによって得られる。これを達成するために、結晶相の含有量は十分に高く、一般に50%よりも大きく、好ましくは60%よりも大きくなければならない。これまで使用されてきたガラスセラミックにおいては、このために通常4~5重量%のリチウム割合が使用されている。
【0003】
主結晶相である高温型石英固溶体を有する透明なガラスセラミックが調理面に使用される場合、それらは着色酸化物の添加によって着色されるか、または調理面の下にある技術設備を視覚的に隠すために下面コーティングが施される。ガラスセラミックを着色するために使用することができる様々な着色酸化物があり、例えばCoO、NiO、Nd、またはCuOなどの、それらのうちのいくつかが、それらの高い原材料費のためにガラスセラミックのコストを著しく上昇させる可能性がある。
【0004】
ガラス工業から知られている清澄剤である酸化ヒ素および/または酸化アンチモンが過去に主に用いられてきたが、今日では酸化スズ(SnO)などの、他のより毒性の低い代替物を清澄剤として用いることが環境保護および労働保護の観点から好ましい。
【0005】
任意にVを用いて着色することができる透明なガラスセラミックが、独国特許出願公開第1796298号明細書(DE1796298A1)に記載されている。ここでは、着色酸化物NiOおよびCoOが好ましくは用いられ、赤色に着色されたガラスセラミックを作製することが予定されているため、Vのみを用いた着色の開示はZnSとの組合せに限られている。
【0006】
、CrおよびCoOまたはCuOによる着色が、米国特許第4526872号明細書(US4526872A)、特開昭60-86311号公報(JP6086311B4)および欧州特許第2435378号明細書(EP2435378B1)の各刊行物に記載されている。
【0007】
着色されたオーブン覗き窓を製造するために、リチウム含有量の少ない着色されたガラスセラミックが独国特許出願公開第3345316号明細書(DE3345316A1)に記載されている。ここでは、Vで着色され、かつSnOで清澄された調理面用のガラスセラミックを開示している独国特許発明第19939787号明細書(DE19939787C2)および欧州特許第1313675号明細書(EP1313675B2)と同様に、酸化バナジウムで着色される場合、少なくとも0.1重量%が用いられる。
【0008】
日本国特許出願11100229号明細書(JP11100229A)および同11100230号明細書(JP11100230A)には、SnOと任意にClを添加して清澄される、酸化バナジウムで着色されたガラスセラミックが記載されている。
【0009】
任意にVで着色されていてもよいガラスセラミックを製造するためのセラミック化可能なガラスが、欧州特許第1398303号明細書(EP1398303B1)からも知られている。そこに記載されている組成物は、AsまたはSbを用いて清澄される。
【0010】
SnOを用いた清澄を促進するための0.05~1重量%のフッ素の添加(米国特許出願公開第20070004578号明細書(US2007/0004578A1))および0.01~1重量%の臭素の添加(米国特許出願公開第20080026927号明細書(US2008/0026927A1))も同様に開示されている。しかしながら、ハロゲン化物の添加は不利である。なぜなら、それらは溶融温度で強く蒸発し、そのためHFなどの有毒な化合物を形成する可能性があるからである。
【0011】
SnOとCeOおよび/またはMnOとの組合せを用いた清澄は、米国特許出願公開第2007/129231号明細書(US2007129231A)に記載されている。しかしながら、このために0.7~1.5%のCeOまたはMnOが必要である。これら両成分の原料コストは、しかしながらSnOのそれよりもずっと高いので経済的利益が得られるか疑わしい。
【0012】
独国特許出願公告第102008040097号明細書(DE102008040097B4)には、0.003~0.7重量%の範囲のより少量のVを用いたガラスセラミックの着色が開示されている。
【0013】
特定の波長で特別に調整された光透過率を示す透明なガラスセラミックも、先行技術と同様に、例えば、独国特許出願公告第102008050263号明細書(DE102008050263B4)および独国特許出願公告第102009013127号明細書(DE102009013127B4)に記載されている。このために、CoO、Nd、NiOなどの種々の着色酸化物とVとの組合せが好ましい。
【0014】
着色酸化物としてのVと共着色剤としてのFe、NiOおよびMnOを有するガラスセラミックは、米国特許第8765619号明細書(US8765619)に開示されている。
【0015】
ガラスセラミック調理面を着色するための酸化バナジウムとCoOとの組合せも提案されている(国際公開第1013700号(WO1013700A1))。しかしながら、この場合も、CoOを添加しないVを用いた着色と比べて、より高いバッチコストを想定する必要がある。
【0016】
100~2000ppmのVおよび0.1~0.5重量%のSnOを含有していてもよいガラスセラミックを含むディスプレイ装置は、米国特許出願公開第2013070451号明細書(US2013070451A)に記載されている。LiOの低減は実施例に記載されているが、この場合、BaO含有量は0.8重量%と低く、MgO含有量は1.3重量%であることから、調理面用途には好ましくない膨張係数が生じる可能性がある。
【0017】
国際公開第11089220号(WO11089220A1)には、特にSnOによる清澄に関して最適化された高温型石英ガラスセラミックが開示されている。ここでは、共着色剤として、Vに加えてCoOが好ましくは用いられる。
【0018】
着色剤としてVおよび清澄剤としてSnOを含有し、リチウム含有量が3.5重量%である調理面用のガラスセラミックが、米国特許出願公開第2013098903号明細書(US2013098903A)に開示されている。このガラスセラミックは、69.9重量%のSiO割合を有する。このSiO割合は溶融温度を上昇させ、その結果、溶融物に対してより高いエネルギーコストが生じる。
【0019】
1.5~4.2重量%のリチウム含有量およびSnO清澄を有する着色された調理面もPCT出願の国際公開第12010278号(WO12010278A1)に提案されている。ここでは、少なくとも2種の着色酸化物の組合せが使用されている。
【0020】
米国特許第8722554号明細書(US8722554B)は、特にSnOで清澄するために最適化された、Vで着色されたガラスセラミックを開示している。このために、3.7重量%を上回るLiO含有量を有する組成物が例示的に挙げられている。
【0021】
本発明の課題
本発明の課題は、出発ガラス(Gruenglas)の良好な溶融特性を有し、かつ費用対効果が高く、同時にそれによって実用特性に制限が生じない、透明で着色されたガラスセラミックを提供することである。
【0022】
特に、このガラスセラミックは、調理面として使用するためのあらゆる要件、例えば、低い熱膨張、十分な耐薬品性、耐熱衝撃性および長期耐熱性ならびに適合された光透過率を満たすべきである。
【0023】
本発明の概要
本発明の課題は、請求項1の主題によって解決される。好ましい実施形態および更なる発展形態は、従属請求項に見出すことができる。
【0024】
本発明による透明で着色されたガラスセラミック、特にLASガラスセラミックは、主結晶相として高温型石英固溶体(HQMK)を含有し、かつ20℃~700℃の範囲で-1~+1ppm/K、好ましくは-0.6~+0.6ppm/K、特に好ましくは-0.5~+0.5ppm/Kの熱膨張を示す。
これにより十分な耐熱衝撃性が保証される。
【0025】
本発明によるガラスセラミックが主結晶相として高温型石英固溶体を含有するということは、結晶相としての高温型石英固溶体の割合が、存在する全結晶相の50%を上回ることを意味する。
【0026】
さらに、本発明によるガラスセラミックは、構成成分として3.0~3.6重量%の酸化リチウム(LiO)を含有する。そうすることでガラスセラミックの製造コストを下げることができる。
【0027】
さらに、本発明によるガラスセラミックは、着色酸化物として0.003~0.05重量%、好ましくは0.026~0.033重量%の酸化バナジウム(V)により暗色に着色されている。
【0028】
構成成分であるVの代わりに、0.003~0.25重量%の酸化モリブデン(MoO)が着色酸化物として用いられる。
【0029】
酸化モリブデン(MoO)を用いた費用対効果の高い製造も可能である。しかしながら、酸化バナジウム(V)は、酸化モリブデン(MoO)よりも強い着色剤である。したがって、同一の着色のためにMoOよりも必要とされるVは少なく、そのためVを使用することがより経済的である。他方で、酸化モリブデンは、可視領域でより平坦な透過率プロファイルを有し、このことは白色発光素子にとって有利である。
【0030】
他の着色酸化物、例えばCoO、NiO、NdまたはCuOは、それらの高い原料コストのためにガラスセラミックのコストを著しく上昇させる可能性があるので、本発明によるガラスセラミックでは、酸化バナジウム(V)または酸化モリブデン(MoO)のみを用いて着色されるのが好ましく、十分な着色のためには、前述の少ない量で十分である。
【0031】
したがって、更なる着色酸化物の使用は、一般にコストに鑑みて推奨されない。さらに、CoO、NiO、CrまたはCuOなどの非常に強い着色効果を有する着色酸化物の使用は、少量でさえも結果得られる着色に重大な影響を与えるので、望ましくない不純物または交差汚染を伴う問題を引き起こす可能性がある。これらの着色酸化物の量は、不純物によって導入された量に制限されるべきである。これは、それぞれ0~0.01重量%未満のCoO、NiO、Cr、CuO、またはNdの量に相当し、MnOについては0~0.03重量%未満に相当する。
【0032】
唯一の着色酸化物としてVまたはMoOを用いても十分な着色効果を達成することができるので、前述の着色酸化物の使用を省くことができる。
【0033】
従来のガラスセラミックと比較してLiO含有量が低いことにより、原料コストを下げることが可能になる。なぜなら、例えばリチウムイオン電池に対する需要の増加によりリチウム原料のコストが近年著しく上昇しているからである。それゆえ、特に調理面用のガラスセラミックの経済的に魅力的な製造のために、これに必要なリチウム割合を減らすことが有利である。
【0034】
しかしながら、リチウムアルミノシリケート(LAS)ガラスセラミック中のLiO含有量の減少は、結晶相含有量の減少、ひいては熱膨張の増加につながる可能性がある。
【0035】
これは、酸化マグネシウム(MgO)を、好ましくは1重量パーセント未満までの範囲で添加することによって補償することができる。特に好ましくは、ガラスセラミックは、0.3~1重量%未満のMgO、最も好ましくは0.77重量%までのMgOを含有する。
【0036】
好ましい実施形態では、熱膨張の増加をさらに抑えるために、酸化亜鉛(ZnO)を1.2~2.5重量パーセントの範囲で添加することができる。2.5重量%よりも高いZnOの添加は、望ましくない二次相としてのガーナイトの形成をもたらす。
【0037】
しかしながら、アルカリ土類酸化物の減少は、同時に溶融温度の望ましくない上昇を引き起こす可能性がある。この作用は、1.2~2.8重量%の範囲のBaOを有利には添加することによって減少させることができる。
【0038】
したがって、MgOならびにZnOおよびBaOの特定の添加に対する上記の最適な重量%範囲の選択を、粘度の調整および溶融温度の低下のために利用することができる。
【0039】
低いリチウム含有量と、VまたはMoOのみを用いた着色であって、好ましくは同時にMgO含有量を1重量%未満に減少させることとを組み合わせること、1.2~2.8重量%の含有量を有するBaOの最適な重量%範囲の潜在的な選択を行うこと、そして1.2~2.5重量%の範囲の酸化亜鉛(ZnO)を添加することによって、溶融温度および熱膨張の最適化ならびに特に良好な実用特性を有する経済的に特に有利なガラスセラミックが得られる。
【0040】
ガラスセラミックの特に有利な実施形態では、それぞれ重量%で示される(BaO+ZnO)/MgOの比は、2.2~35の範囲、好ましくは4.5~15の範囲である。
【0041】
有利には、ガラスセラミックは、0.1~0.6重量%の酸化スズ(SnO)で清澄される。0.6重量%よりも大きいSnO含有量は、溶融性に悪影響を与え、かつ失透傾向を増大させる。酸化スズの使用によって、健康を害する清澄剤の使用も省くことができる。
【0042】
特に好ましいガラスセラミックは、以下の構成成分を重量%で含有する:
SiO 62~68
Al 18.5~23
LiO 3.0~3.6、好ましくは3.2~3.6
0.03~0.05またはMoO 0.003~0.25
SnO 0.1~0.6
BaO 1.2~2.8
MgO 0~1未満、好ましくは0.3~1未満
ZnO 1.2~2.5
TiO 2.6~4.5
ZrO 0.9~1.7
0~2
0~4
NaO+KO 0~1.5未満、好ましくは1未満
CaO 0~1未満
SrO 0~1未満
Fe 0~0.2、好ましくは0.15まで。
【0043】
好ましいガラスセラミックにおいて、列挙した成分は、全組成物の少なくとも96重量%、一般に少なくとも98重量%を占める。さらに、ガラスセラミック中には、前述の成分に加えて、工業規模で使用される原料中に通常存在する不純物が含まれていてよい。
【0044】
成分SiOおよびAlは、LiOと共にガラスセラミック中で結晶相である高温型石英固溶体の主たる構成成分を形成する。同時に、それらは本質的にガラスセラミックの製造のための出発ガラスのガラス形成特性および粘度を決定する。Alの含有量は、好ましくは18.5~23重量%の範囲であり、それより少ない量だと粘度の望ましくない上昇がもたらされる。より高いAl割合は失透傾向を増大させ、ムライトの望ましくない形成を促進する。
【0045】
SiOの最適な範囲は、有利には62~68重量%である。より低いSiO含有量を有するガラスセラミックは、調理面にとって重要な実用特性、例えば耐薬品性および耐熱負荷性において欠点を示す可能性がある。それに対して、より高いSiO含有量を有する出発ガラスの場合、溶融温度が上昇し、そのためガラスセラミックの製造中により高いエネルギーコストが生じる可能性がある。
【0046】
核形成剤として作用するのは、有利には、TiO、ZrOおよび清澄のために好ましくは用いられるSnOである。短いセラミック化時間でも効果的な核形成を保証するために、ガラスセラミックは、有利には少なくとも2.6重量%のTiOおよび少なくとも0.9重量%のZrOを含有する。核形成剤の含有量の上限は、失透安定性および望ましくない異相を回避するための要件から出される。さらに、高い割合のZrOは、必要とされる溶融温度の著しい上昇をもたらす。核形成剤の総量は6重量%を超過しないことが望ましい。
【0047】
およびPはガラスの溶融性を改善することができるが、大量となるとガラスの熱膨張および耐熱負荷性に悪影響を及ぼす。さらに、特にリンは、セラミック化速度を低下させる可能性があり、そのためより長いセラミック化時間が必要とされる。
【0048】
アルカリ金属酸化物NaOおよびKOは、粘度を下げるために、好ましくは少量で、すなわち合計で最大1.5重量%、好ましくは最大1重量%で用いられる。同様に、1重量%未満までのCaOおよび/またはSrOの使用が有用な場合もある。しかしながら、大量のこれらの酸化物は、熱膨張を許容できないほど上昇させる異相の形成をもたらす。
【0049】
十分な着色効果はVまたはその代わりにMoOを用いても達成することができるので、着色酸化物CoO、NiO、Cr、CuO、NdまたはMnOの使用は上記のとおり省かれることが望ましい。
【0050】
例外となり得るのはFeであり、これは使用される原料の種類に応じて、0重量%~2重量%まで、好ましくは最大1.5重量%までの量で含まれていてよい。少量のFeは清澄を促し、安価な原料の使用を可能にする。つまり、それは前述の成分と上記範囲内で組み合わせられることで、溶融性および品質の改善だけでなくコストの低減にも寄与する。
【0051】
環境保護および労働保護の観点から、可能であれば有毒または憂慮すべき原料の使用は省かれる。それゆえ、ガラスセラミックは、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、ハロゲン化物および硫黄(S)などの環境有害物質を含まないことが有利であり、ただし、好ましくは0~0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、最も好ましくは0.05重量%未満の範囲の不可避の不純物は除く。ここで、重量%の数値は、酸化物ベースのガラス組成を指す。
【0052】
一般的に、天然に存在する原料または化学的に調製されたもしくは合成的に製造された原料を使用することができる。天然に存在する原料は、一般に、同等の化学的に調製されたまたは合成された原料よりも安価である。しかしながら、天然原料の有用性は、通常だと不純物の量が高いために制限されている。天然に存在する原料の例は、ケイ砂、スポジュメンおよびペタライトである。化学的に調製されたまたは合成的に製造された原料は、一般にごく僅かな不純物しか含まない。一般に使われている調製されたまたは合成された原料の例は、炭酸リチウムまたは二酸化チタン粉末である。
【0053】
構成成分に応じて、そのような不純物の特定の範囲を超えないことが望ましい。既に上述した構成成分に加えて、特にガラス組成物中のCrの割合は、0.02重量%未満、有利には0.01重量%未満、特に0.005重量%未満に制限されることが望ましい。
【0054】
好ましい実施形態では、ガラスセラミックが主結晶相として高温型石英固溶体(HQMK)を含有するという記載は、結晶相としての高温型石英固溶体の割合が、存在する全結晶相の80%を上回り、好ましくは90%を上回ることを意味する。キータイト固溶体、特にTi、ZrまたはSn含有核形成剤相は、熱膨張の要件が満たされる場合は、少量、すなわち結晶相の最大20%、または好ましくは最大10%、特に好ましくは最大5%が含まれていてよい。
【0055】
それに対して、他の、特に高膨張性の結晶相、例えばアルミノケイ酸ナトリウムもしくはアルミノケイ酸カリウムまたはケイ酸ナトリウムもしくはケイ酸カリウムの形成は回避されるのが好ましい。
【0056】
4mmの厚さを有する好ましいガラスセラミックでは、DIN EN 410に従って測定された光透過率(τvis)は、0.5~70%、好ましくは0.5~40%、特に好ましくは0.5~30%、最も好ましくは0.5~20%である。使用に応じて、0.5~5%、さらには0.9~2%の範囲も好ましい場合がある。
【0057】
これにより、調理面の下の技術部品が妨げになるものとして観察者によって知覚されないことが保証される。
【0058】
調理面の下の着色LEDなど、ディスプレイ素子の良好な視認性を得るために、透過率値は、450nmを上回る全波長範囲にわたって0.1%よりも大きく、好ましくは0.15%よりも大きい。
【0059】
0.5~10%の透過率範囲は、LEDベースのディスプレイおよび光源、例えば7セグメントディスプレイの使用にとって特に重要である。
【0060】
10~70%、好ましくは30~40%の透過率範囲は、TFTディスプレイの使用にとって特に有利である。
【0061】
つまり、これらのガラスセラミックは、発光ディスプレイ素子および他の発光素子と共に使用するのに特に良く適している。これらの例として、LED、7セグメントディスプレイ、TFTディスプレイ、特にLCDディスプレイおよびOLED-TFTディスプレイ、またはガラスセラミックを介して投影するためのイメージプロジェクターまたはビデオプロジェクターが挙げられる。そのような素子は、単色または多色であってよい。単色素子として特に考慮されるは、赤、緑、青または白色の素子である。多色素子には、少なくとも2つの原色を同時に表示することができるものだけでなく、少なくとも2つの色を変動表示することができるものも含まれる。そのような発光素子は、ガラスセラミックに取り付けられた散乱素子または拡散素子と組み合わせて提供されていてもよい。この場合、散乱素子および拡散素子は、例えば、光度の空間的均質化のために、または発光素子を知覚することができる視野角の拡大のために使用される。
【0062】
によって着色された実施形態は、単色赤色のディスプレイ素子および発光素子、特に赤色LED、赤色7セグメントディスプレイ、および赤色TFTディスプレイ用に特に適している。MoOによって着色された実施形態は、特に白色および多色のディスプレイ素子および発光素子、特に白色またはRGBのLED、白色またはRGBの7セグメントディスプレイ、およびカラーTFTディスプレイまたはカラープロジェクター用にも適している。
【0063】
赤外線では、透過率は良好な調理挙動を保証するのに十分高い。好ましくは、透過率は1600nmで45~85%である。
【0064】
好ましい実施形態では、ガラスセラミックの出発ガラスの溶融物は、1750℃未満、好ましくは1700℃未満で200dPa・sの粘度に達する。
【0065】
20℃~700℃の範囲の熱膨張は、特に好ましくは、0~0.41ppm/K、好ましくは0~0.35ppm/K、特に好ましくは0~0.3ppm/Kの範囲である。
【0066】
ガラスセラミックは、好ましくは、調理面、暖炉覗き窓、グリル面または焙煎面、ガスグリル内の燃料要素のカバー、特に熱分解炉用のオーブン覗き窓、台所または実験室の作業面またはテーブルトップ、照明装置用カバーとして、耐火性ウインドウにおいて使用され、かつ場合によっては積層複合材における安全ガラスとしての、熱プロセスにおけるキャリアプレートとしてもしくは炉内張りとして、または携帯型電子機器用のバックカバーとして使用される。
【0067】
ガラスセラミックは、特に、輻射ヒーター、ハロゲンヒーター、誘導加熱またはガスを用いた調理面として用いることができる。ここで、調理面には、上面および/または下面に、全体的にまたは部分的に装飾が施されていてもよい。同様に、調理面を操作するためのタッチセンサが下面に設けられていてもよい。これらは、例えば、調理面上に印刷、接着または圧着された容量センサであってよい。
【0068】
さらに、調理面は三次元で形成されていてもよく、すなわち、パネルは、角度を付けられていても湾曲されていてもよく、または例えば中華鍋の形をした領域を含んでいてもよい。例えばガスバーナーの運転のための切欠きも可能である。
【0069】
ガラスセラミックの製造は、好ましくは以下の工程で行われる。
【0070】
まず、バッチ原料の他に、有利にはガラス屑も溶融する。好ましくは、出発ガラスの溶融は、1500~1700℃の温度で行われる。
【0071】
出発ガラスの溶融物の清澄は、好ましくはSnOを用いて行われる。
【0072】
大規模工業的な製造の場合、これに続けて、ガラスセラミックパネルを製造するための熱間成形プロセス、好ましくは圧延または浮遊が行われる。成形は、加工温度の範囲内で、有利には10dPa・sの粘度で行われる。この温度は、有利には1350℃未満、特に好ましくは1330℃未満であることが望ましい。
成形中の結晶化を回避するために、加工温度(V)と上限失透温度との差(V-OEG)は、好ましくは20~100℃であることが望ましい。
【0073】
ガラスセラミックパネルのセラミック化は、好ましくは2段階のセラミック化プロセスで行われ、まず核形成が680~800℃で行われる。引き続き、シード上に高温型石英固溶体(HQMK)を成長させるために850~950℃に昇温する。このために、可能な限り素早いセラミック化が行われ、しかしながら、その段階で高温型石英固溶体(HQMK)からキータイト固溶体(KMK)への変換が起こらないように、十分に高い温度が選択される。高温型石英固溶体からキータイト固溶体への移行時に、結晶子サイズの増大により、熱膨張が増大し、散乱が増大する。本発明では両方の効果を回避するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】例12からの本発明による試料の分光透過率を示す図である。
【0075】
本発明を、実施例を使って、表1~5(それぞれaとbを伴う)を参照し、図1を使って以下で詳細に説明する。
【0076】
表1~5は、特に、好ましいガラスセラミックおよびそれに対応した表1~4(それぞれaとbを伴う)における例1~27としての出発ガラスならびに表5aおよび5bにおける本発明によらない比較例V1~V5の、重量%における分析による組成および特性を示す。
【0077】
【表1-1】
【0078】
【表1-2】
【0079】
【表2-1】
【0080】
【表2-2】
【0081】
【表3-1】
【0082】
【表3-2】
【0083】
【表4-1】
【0084】
【表4-2】
【0085】
【表5-1】
【0086】
【表5-2】
【0087】
表1~5に示した出発ガラスの構成成分(分析による重量%での組成を表している)を、焼結シリカガラスるつぼ中で1600~1650℃にて4時間溶融した。引き続き、それらを1550~1580℃でシリカガラスるつぼに注ぎ入れ、撹拌することによって30分間にわたり均質化した。酸化スズによる清澄は、1620~1640℃で2時間行った。
【0088】
ガラスを鋳物に鋳造し、これを徐冷窯で変態温度(Tg)よりも約20℃低い温度からゆっくりと室温まで冷却した。
【0089】
鋳物の一部をガラス状(質)特性の測定のために使用した。粘度10dPa・sにおける加工温度(V)および粘度200dPa・sに対応する温度を測定した。いくつかの場合では、上限失透温度(OEG)は、Pt接触において5時間後に測定した。
【0090】
表で使用した略語N/Aは、これらのデータを測定しなかったことを意味する。
【0091】
さらに、ガラスセラミック特性を測定するための試料を鋳物から製造してセラミック化した。
【0092】
以下の温度-時間プロファイルをセラミック化プログラムとして使用した:
a)26分以内に室温から740℃に急速加熱する。
b)18分以内に740から825℃まで温度を上昇させる(4.7℃/分の加熱速度)。
c)4分以内に825℃から930℃まで温度を上昇させ(26℃/分の加熱速度)、930℃の最高温度で4分間保持する。
d)16分以内に800℃に冷却し、次いで室温に急冷する。
【0093】
セラミック化された試料をXRD測定にかけ、リートベルト解析により結晶相および結晶子サイズを測定した。
【0094】
非晶質相の測定には不確実性が大いにつきものなので、表に示されている結晶相割合はガラスセラミックの全結晶相含有量に基づいている。
【0095】
透過率は、3~4mmの厚さを有する試料について測定し、比較可能性をより高めるために4mmの厚さに換算した。DIN EN 410に従って測定した光透過率(τvis)を表に記載している。
【0096】
熱膨張(α)は、20℃から700℃の範囲で測定した。
【0097】
さらに、いくつかのサンプルについては、セラミック化状態の密度も測定した。
【0098】
表1aおよび1b、表2aおよび2bならびに表3aおよび3bならびに4aおよび4bに示される実施例1~27は、本発明によるガラスセラミックの例であり、表5aおよび5bに示される実施例V1~V5は、本発明によらない比較例である。
【0099】
例1~27からの本発明によるガラスセラミックは、1281℃~1341℃の加工温度(V)を有する。上限失透温度(OEG)は、1226℃~1325℃である。
【0100】
組成の適切な選択によって、特に失透安定性の出発ガラスの溶融物、すなわち加工温度と上限失透温度との間で特に大きな差(V-OEG)を示す溶融物を得ることが可能である。これは、選択された熱間成形の要件に応じて必要になる場合がある。
【0101】
本発明による例において、出発ガラスの溶融物が200dPa・sの粘度を有する温度は、1591℃~1699℃である。
【0102】
本発明による例における全ての出発ガラスの溶融物は、上記セラミック化の後、主結晶相として、一般に全結晶相割合の90%超で高温型石英(HQMK)を含有する。更なる結晶相は、キータイト固溶体(KMK)および核形成剤相ZrTiOおよびルチル(TiO)である。同時に、結晶子サイズは33nmから73nmと非常に小さいので、ディスプレイ素子をガラスセラミックの下で使用した場合に妨げとなる散乱が生じない。
【0103】
4mmの厚さに換算した光透過率(τvis)は、実施形態では0.6%~38.5%である。
【0104】
図1は、例12からの本発明による試料の分光透過率を示す。
【0105】
例12の試料は、赤外線(1600nm)において74%の透過率を示す。470nmでのガラスセラミックの透過率は1.0%であり、それよりも高いすべての波長では、この値よりも大きいので、有色LEDについて良好な表示能力が与えられる。
【0106】
例12に従ったガラスセラミックスの光透過率(τvis)は3.7%である。
【0107】
例17は、可視領域でほぼ20%のより高い透過率を示す(表3b)。これは、下面コーティングの使用が予定される場合、またはディスプレイ素子をガラスセラミックの下に取り付けることが予定される場合に有利となり得る。
【0108】
例19は、より費用対効果の高い工業用原料と共に溶融した。それによって0.0041重量%のCrの不純物と、るつぼ接触を通して0.3232重量%のRhが導入された。表3aおよび3bに列挙した特性から分かるように、それでもなおガラスセラミック調理面のための所望の実用特性が得られる。
【0109】
例20は、MoOを用いた着色を例示する。この組成物は、0.16%のMoOを含有し(表3a)、セラミック化された状態で5%の光透過率(τvis)を有する(表3b)。
【0110】
表4aおよび4bには、MoOによる着色の更なる例を列挙している。MoOによって着色された例の光透過率(τvis)も同様に0.6%~38.5%の範囲である。組成を相応に適合させることによって、より高いおよびより低い光透過率も同様に調整することができる。
【0111】
実施例に従ったガラスセラミックの熱膨張(α)は、20~700℃の範囲で0.07~0.59ppm/Kであり(表1b、2bおよび3b)、つまり、これは温度安定性の調理面の要件を満たす。
【0112】
表5aにおける本発明によらない比較例V1~V5は、組成範囲の選択を例示する。
【0113】
比較例V1およびV2は、過度に高い割合のMgOを含有する(表5a)。表5bに示されるように、両方とも主結晶相としてのキータイト固溶体(KMK)と相応して高い熱膨張(α)を有する。これはまた、比較例V1における過度に高いSiO含有量とV2における過度に低いLiO含有量とに起因している(表5a)。
【0114】
比較例V3は、3.8%のリチウム含有量を有する(表5a)。ガラスセラミックは良好な特性を示すが、それはリチウム含有量が高いために、原料コストがより高くなり、それゆえ既知の先行技術に対する利点を有しない。
【0115】
比較例V4は、本発明によるガラスセラミックと比較して、表5aに見られるように、1.11重量%の過度に高いMgO含有量および過度に低いLiO含有量を有し、そのため熱膨張は20℃~700℃で0.6ppm/Kに増大する(表5a)。
【0116】
比較例V5は、過度に高いMgO含有量(表5a)が熱膨張に対して悪影響を及ぼし、これは例V5において0.91ppm/Kに増大する(表5b)。
図1