(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】電気コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20230517BHJP
H01R 43/20 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01R13/42 A
H01R43/20 Z
(21)【出願番号】P 2018239118
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-09-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山本 芳伸
(72)【発明者】
【氏名】小山 優太
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-133978(JP,U)
【文献】特開2016-054057(JP,A)
【文献】特開昭62-076176(JP,A)
【文献】特開平9-274958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 4/00
H01R 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の電線を有するケーブルの前端部に取り付けられる電気コネクタ
を製造する方法であって、
前記電気コネクタは、
前記ケーブルの前端部において前記電線に接続され且つ所定の端子長さ方向に延びる導電性の端子と、
前記端子を保持する絶縁性のハウジングと
を備え、
前記ハウジングは、
前記端子を前記端子長さ方向に沿って収容するための前記端子長さ方向に延びる端子収容部と、前記端子長さ方向に対して直交する方向に開口すると共に前記端子長さ方向に沿って形成され且つ前記端子収容部に連通する端子挿入開口部と、前記端子長さ方向における前記端子挿入開口部の一部に前記端子挿入開口部内に張り出すように形成された張り出し部とを有する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに装着され且つ前記端子挿入開口部を覆う第2ハウジングと
を含み、
前記端子挿入開口部は、前記張り出し部が存在しない位置において第1の開口幅を有し、前記張り出し部が存在する位置において前記第1の開口幅よりも狭い第2の開口幅を有し、
前記端子は、前記端子長さ方向に対して直交する方向に第1の端子幅を有する第1の部分と、前記第1の端子幅よりも狭い第2の端子幅を有する第2の部分とを有し、
前記第1の開口幅は、前記第1の端子幅よりも広く、
前記第2の開口幅は、前記第1の端子幅よりも狭く且つ前記第2の端子幅よりも広く、
前記第1ハウジングは、前記端子長さ方向における前方を向き且つ前記端子の前記第1の部分の後端部が突き当たり得る第1の突き当たり面を有し、
前記第2ハウジングは、前記端子長さ方向における後方を向き且つ前記端子の前記第1の部分の前端部が突き当たり得る第2の突き当たり面を有し、
前記端子長さ方向に対して直交する方向から見た場合に、前記第1の部分の少なくとも一部が前記張り出し部に重なるように前記端子収容部に収容され、
前記端子長さ方向において、前記第1の部分を前記張り出し部が存在しない位置に位置させた状態で、前記端子を、前記第1ハウジングの前記端子挿入開口部から前記端子収容部に挿入し、
前記端子挿入開口部の前記第1の開口幅および前記第2の開口幅に対して直交し且つ前記端子長さ方向に対して直交する方向から見た場合に、前記第1の部分の少なくとも一部が前記張り出し部に重なるように、前記端子を、前記第1ハウジングに対して前記端子長さ方向に相対的に移動し、
前記第1ハウジングに装着される前記第2ハウジングにより前記端子挿入開口部が覆われることで
、前記端子
を、前記端子収容部内に保持
する電気コネクタ
の製造方法。
【請求項2】
前記端子長さ方向に対して直交する方向から見た場合に、前記端子長さ方向において、前記第1の部分が前記張り出し部に重なる長さは、前記第1の部分が前記張り出し部に重ならない長さより短い請求項1に記載の電気コネクタ
の製造方法。
【請求項3】
前記第1ハウジングは、前記端子収容部内で且つ前記端子長さ方向における前記張り出し部の後端部に対応する位置に前記第1の突き当たり面を有する請求項1または2に記載の電気コネクタ
の製造方法。
【請求項4】
前記第2ハウジングは、前記端子長さ方向における前記第2ハウジングの前端部に、前記相手側コネクタの端子が挿入される前端開口部を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の電気コネクタ
の製造方法。
【請求項5】
前記端子挿入開口部は、前記端子長さ方向における前記張り出し部よりも前方のいずれの位置においても前記第1の開口幅を有し、前記端子長さ方向における前記張り出し部よりも後方の所定の位置において前記第2の開口幅よりも狭い最小の開口幅を有し、
前記端子の前記第2の端子幅は、前記最小の開口幅よりも狭い請求項1~4のいずれか一項に記載の電気コネクタ
の製造方法。
【請求項6】
前記端子の前記第1の部分は、前記端子長さ方向に延びる筒状部からなり、前記筒状部の内部に相手側コネクタの端子に接続される接点が形成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の電気コネクタ
の製造方法。
【請求項7】
前記端子の前記第2の部分は、前記電線が圧着される圧着部からなる請求項1~6のいずれか一項に記載の電気コネクタ
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気コネクタに係り、特に、電線の端部に接続された導電性の端子が絶縁性のハウジングに保持されている電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、
図30に示されるように、電線1の端部に接続された導電性の端子2を保持する電気コネクタの絶縁性のハウジング3が開示されている。端子2は、電線1の芯線が圧着される圧着部2Aと、圧着部2Aから電線1の延長線上に突き出る平板部2Bとを有している。平板部2Bの先端部分は、相手側コネクタの端子に接続される接触部2Cとなる部分で、平板部2Bの根本部分の一方の側縁には、平板部2Bの表面に沿って突出する刃形突起2Dが形成され、他方の側縁には、凹部2Eが形成されている。
【0003】
ハウジング3は、配列形成された複数の端子収容部3Aを有し、それぞれの端子収容部3Aに、端子2が収容されて保持される。
ハウジング3の端子収容部3Aは、端子2の圧着部2Aを収容する幅の広い第1の収容部3Bと、第1の収容部3Bに連通し且つ端子2の平板部2Bを収容する幅の狭い第2の収容部3Cとを有している。
図31に示されるように、第2の収容部3Cの一方の側縁には、開口部3Dが形成され、他方の側縁には、第2の収容部3C内に突出する突出部3Eが形成されている。
【0004】
端子2をハウジング3の端子収容部3Aに向けて押し込むと、端子2の刃形突起2Dがハウジング3の突出部3Eを弾性変形させながら、端子2の平板部2Bが第2の収容部3C内に挿入される。端子2の刃形突起2Dが第2の収容部3Cの開口部3Dにまで達すると、端子2の平板部2Bはハウジング3の突出部3Eを乗り越え、ハウジング3の突出部3Eは、端子2の凹部2E内に位置したところで弾性変形前の初期の状態に復帰する。このとき、端子2の圧着部2Aは、ハウジング3の第1の収容部3B内に収容される。
これにより、端子2がハウジング3の端子収容部3Aに収容され、ハウジング3の突出部3Eが存在することで、ハウジング3の端子収容部3Aから端子2が抜け出ることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年の電子機器の高密度化に伴い、電気コネクタおよび端子の小型化が図られると、特許文献1のように、ハウジング3の突出部3Eの弾性変形を利用した電気コネクタでは、端子2と共にハウジング3の突出部3Eも小型化されるため、端子2の保持力を十分に確保することができないという問題が生じる。
また、端子2をハウジング3の端子収容部3Aに収容する際に、端子2を所定の挿入力で押し込むことにより、ハウジング3の突出部3Eを弾性変形させながら端子2の平板部2Bを第2の収容部3C内に挿入する必要があるが、端子2が小型化されることで端子2の強度が低下するため、ハウジング3に対する端子2の組み込み作業性が低下するという問題もある。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、小型化された場合であっても十分な端子保持力を確保し且つ優れた作業性で端子を組み込むことができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る電気コネクタの製造方法は、少なくとも1本の電線を有するケーブルの前端部に取り付けられる電気コネクタを製造する方法であって、電気コネクタは、ケーブルの前端部において電線に接続され且つ所定の端子長さ方向に延びる導電性の端子と、端子を保持する絶縁性のハウジングとを備え、ハウジングは、端子を端子長さ方向に沿って収容するための端子長さ方向に延びる端子収容部と、端子長さ方向に対して直交する方向に開口すると共に端子長さ方向に沿って形成され且つ端子収容部に連通する端子挿入開口部と、端子長さ方向における端子挿入開口部の一部に端子挿入開口部内に張り出すように形成された張り出し部とを有する第1ハウジングと、第1ハウジングに装着され且つ端子挿入開口部を覆う第2ハウジングとを含み、端子挿入開口部は、張り出し部が存在しない位置において第1の開口幅を有し、張り出し部が存在する位置において第1の開口幅よりも狭い第2の開口幅を有し、端子は、端子長さ方向に対して直交する方向に第1の端子幅を有する第1の部分と、第1の端子幅よりも狭い第2の端子幅を有する第2の部分とを有し、第1の開口幅は、第1の端子幅よりも広く、第2の開口幅は、第1の端子幅よりも狭く且つ第2の端子幅よりも広く、第1ハウジングは、端子長さ方向における前方を向き且つ端子の第1の部分の後端部が突き当たり得る第1の突き当たり面を有し、第2ハウジングは、端子長さ方向における後方を向き且つ端子の第1の部分の前端部が突き当たり得る第2の突き当たり面を有し、端子長さ方向に対して直交する方向から見た場合に、第1の部分の少なくとも一部が張り出し部に重なるように端子収容部に収容され、端子長さ方向において、第1の部分を張り出し部が存在しない位置に位置させた状態で、端子を、第1ハウジングの端子挿入開口部から端子収容部に挿入し、端子挿入開口部の第1の開口幅および第2の開口幅に対して直交し且つ端子長さ方向に対して直交する方向から見た場合に、第1の部分の少なくとも一部が張り出し部に重なるように、端子を、第1ハウジングに対して端子長さ方向に相対的に移動し、第1ハウジングに装着される第2ハウジングにより端子挿入開口部が覆われることで、端子を、端子収容部内に保持する方法である。
【0009】
端子長さ方向に対して直交する方向から見た場合に、端子長さ方向において、第1の部分が張り出し部に重なる長さは、第1の部分が張り出し部に重ならない長さより短いことが好ましい。
第1ハウジングは、端子収容部内で且つ端子長さ方向における張り出し部の後端部に対応する位置に第1の突き当たり面を有することが好ましい。
さらに、第2ハウジングは、端子長さ方向における第2ハウジングの前端部に、相手側コネクタの端子が挿入される前端開口部を有することが好ましい。
【0010】
端子挿入開口部は、端子長さ方向における張り出し部よりも前方のいずれの位置においても第1の開口幅を有し、端子長さ方向における張り出し部よりも後方の所定の位置において第2の開口幅よりも狭い最小の開口幅を有し、端子の第2の端子幅は、最小の開口幅よりも狭いことが好ましい。
また、好ましくは、端子の第1の部分は、端子長さ方向に延びる筒状部からなり、筒状部の内部に相手側コネクタの端子に接続される接点が形成されている。
端子の第2の部分は、電線が圧着される圧着部からなるように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、端子を保持する絶縁性のハウジングは、端子を収容するための端子収容部と、端子長さ方向に対して直交する方向に開口すると共に端子長さ方向に沿って形成され且つ端子収容部に連通する端子挿入開口部と、端子長さ方向における端子挿入開口部の一部に端子挿入開口部内に張り出すように形成された張り出し部とを有する第1ハウジングと、第1ハウジングに装着され且つ端子挿入開口部を覆う第2ハウジングとを含み、端子挿入開口部は、張り出し部が存在しない位置において第1の開口幅を有し、張り出し部が存在する位置において第1の開口幅よりも狭い第2の開口幅を有し、端子は、端子長さ方向に対して直交する方向に第1の端子幅を有する第1の部分と、第1の端子幅よりも狭い第2の端子幅を有する第2の部分とを有し、第1の開口幅は、第1の端子幅よりも広く、第2の開口幅は、第1の端子幅よりも狭く且つ第2の端子幅よりも広いので、小型化された場合であっても十分な端子保持力を確保し且つ優れた作業性で端子を組み込むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る電気コネクタを斜め後方から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る電気コネクタを斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る電気コネクタを示す側面図である。
【
図5】ケーブルのシールド編組をスリーブの上に折り返した状態を示す斜視図である。
【
図6】ケーブルの複数の電線の前端部における導体部を露出させた状態を示す斜視図である。
【
図7】ケーブルの複数の電線に端子を接続した状態を示す斜視図である。
【
図8】ケーブルの複数の電線にハウジングを組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図9】実施の形態の電気コネクタに用いられる端子を斜め後方から見た斜視図である。
【
図10】実施の形態の電気コネクタに用いられる端子を斜め前方から見た斜視図である。
【
図11】実施の形態の電気コネクタに用いられる端子を示す側面図である。
【
図12】分解されたハウジングをケーブルの複数の電線に接続された端子に位置合わせした状態を示す斜視図である。
【
図13】第1ハウジングを斜め前方から見た斜視図である。
【
図14】第1ハウジングを斜め後方から見た斜視図である。
【
図16】第2ハウジングを斜め前方から見た斜視図である。
【
図17】第2ハウジングを斜め後方から見た斜視図である。
【
図20】ケーブルの複数の電線に接続された端子を第1ハウジングに位置合わせした状態を示す斜視図である。
【
図21】ケーブルの複数の電線に接続された端子を第1ハウジングの端子収容部に挿入した状態を示す斜視図である。
【
図22】ケーブルの複数の電線に接続された端子を第1ハウジングの端子収容部に挿入した状態を示す平面図である。
【
図23】ケーブルの複数の電線に接続された端子を第1ハウジングの端子収容部に収容した状態を示す斜視図である。
【
図24】ケーブルの複数の電線に接続された端子を第1ハウジングの端子収容部に収容した状態を示す平面図である。
【
図25】ケーブルの複数の電線に接続された端子を第1ハウジングの端子収容部に収容した状態を示す正面図である。
【
図27】ケーブルの複数の電線に接続された端子が収容された第1ハウジングに第2ハウジングを位置合わせした状態を示す斜視図である。
【
図28】ケーブルの複数の電線に接続された端子が収容された第1ハウジングに第2ハウジングを装着した状態を示す斜視図である。
【
図29】複数の端子が収容された第1ハウジングに第2ハウジングを装着した状態を示す平面断面図である。
【
図30】従来の電気コネクタのハウジングと端子を示す斜視図である。
【
図31】従来の電気コネクタのハウジングと端子を示す一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示されるように、この発明の実施の形態に係る電気コネクタ11は、ケーブル21の前端部に取り付けられるもので、導電性のシェル部材31を有している。シェル部材31は、上部が開放された樋形状のシールドシェル32と、シールドシェル32の上部を覆って閉じるカバーシェル33とから形成されており、ケーブル21とは反対側を向いたシェル部材31の前端部が開放されている。
【0014】
図2に示されるように、シェル部材31の開放された前端部を通して、ケーブル21の前端部に組み付けられている絶縁性のハウジング41と、ハウジング41に保持されている複数の導電性の端子51が露出している。
また、シェル部材31は、シェル部材31の後端部に配置されたバレル34を有している。バレル34は、ケーブル21の外周部上にスリーブ61を介して巻き付けられるもので、
図3に示されるように、シェル部材31のシールドシェル32の後端部に一体に形成されている。
【0015】
ここで、便宜上、シェル部材31の前端部から後端部に向かう方向を+Y方向、シェル部材31の幅方向をX方向、XY面に垂直で且つシールドシェル32からシールドシェル32の上部を覆うカバーシェル33へ向かう方向を+Z方向と呼ぶことにする。
図1~
図3において、ケーブル21は、シェル部材31の後端部から+Y方向に伸張している。
【0016】
図4に、XZ面で切断したケーブル21の横断面を示す。ケーブル21は、例えば、4本の電線22と、4本の電線22を束ねるための押さえテープ23と、4本の電線22の外周部を囲むように押さえテープ23の外周部を覆う金属製のシールド編組24と、シールド編組24の外周部を覆う樹脂製の絶縁被覆25とを有している。なお、4本の電線22は、それぞれ、導体部22Aの外周部が絶縁体部22Bにより覆われた構造を有している。
【0017】
このようなケーブル21の前端部に端子接続処理が施されることにより、4本の電線22の導体部22Aに、それぞれ端子51が接続されている。
この端子接続処理においては、まず、
図5に示されるように、ケーブル21の-Y方向端部から所定長さの絶縁被覆25が切除され、ケーブル21に残っている絶縁被覆25の-Y方向端部の上に金属製の円筒形状のスリーブ61が配置されると共に、絶縁被覆25の切除により露出したシールド編組24がスリーブ61の外周上に折り返され、さらに、
図6に示されるように、押さえテープ23の除去により露出した4本の電線22の-Y方向端部からそれぞれ所定長さの絶縁体部22Bが切除されて導体部22Aが露出される。
【0018】
さらに、
図7に示されるように、4本の電線22の導体部22Aにそれぞれ端子51が接続された後、
図8に示されるように、4本の電線22にそれぞれ接続された端子51を、ハウジング41に収容して保持させることにより、ケーブル21の-Y方向端部にハウジング41が組み付けられている。
【0019】
図9に端子51の構成を示す。端子51は、1枚の金属板から成形されたもので、ケーブル21が伸張するY方向に延びた全体形状を有している。ここで、端子51が延びるY方向を「端子長さ方向」と呼ぶことにする。
端子51は、-Y方向の前端部に配置され且つ端子長さ方向であるY方向に延びる筒状部52(第1の部分)と、筒状部52の+Y方向側に配置された導体部バレル53(第2の部分)と、導体部バレル53のさらに+Y方向側で且つ端子51の+Y方向の後端部に配置された絶縁体部バレル54とを有している。
【0020】
筒状部52は、それぞれXY面に沿って延び且つ互いにZ方向に対向する一対の側壁52Aと、それぞれYZ面に沿って延び且つ互いにX方向に対向する一対の側壁52Bとを有し、一対の側壁52Aには、それぞれ、側壁52AをU字状に切り込むことにより形成されたバネ接点52Cが配置されている。これらのバネ接点52Cは、電気コネクタ11に嵌合される図示しない相手側コネクタの端子に接続されるもので、筒状部52の内部に向かって突出し且つ互いにZ方向に対向している。
【0021】
導体部バレル53は、ケーブル21の電線22の導体部22Aが導体部バレル53の内側に配置された状態で、
図10に示されるように、かしめられることにより、電線22の導体部22Aに保持され且つ電気的に接続されるものである。
また、絶縁体部バレル54は、ケーブル21の電線22の絶縁体部22Bで覆われている部分が絶縁体部バレル54の内側に配置された状態で、
図10に示されるように、かしめられることにより、電線22に保持されるものである。
なお、
図10においては、電線22が省略されている。
【0022】
図11に示されるように、筒状部52(第1の部分)は、端子長さ方向であるY方向に対して直交するX方向に、第1の端子幅WA1を有し、かしめられた導体部バレル53(第2の部分)は、X方向に、筒状部52の第1の端子幅WA1よりも狭い第2の端子幅WA2を有している。
【0023】
ケーブル21の電線22の前端部に取り付けられた端子51は、ハウジング41に保持されることとなるが、ハウジング41は、
図12に示されるように、絶縁性の第1ハウジング71と、第1ハウジング71に装着される絶縁性の第2ハウジング81とから構成されている。
【0024】
図13および
図14に示されるように、第1ハウジング71は、それぞれYZ面に沿って延び且つ互いにX方向に離れた一対の側壁部72と、XY面に沿って延び且つ一対の側壁部72のZ方向の中央部を互いに連結する連結壁部73とを有している。さらに、第1ハウジング71は、X方向に離れた一対の側壁部72の中間位置において、一対の側壁部72に平行にYZ面に沿って延びる中間壁部74を有している。中間壁部74は、連結壁部73の+Z方向側および-Z方向側の双方に延びており、連結壁部73のX方向の中央部において連結壁部73に交差するように配置されている。
【0025】
このような連結壁部73と中間壁部74の存在に起因して、一対の側壁部72の間の空間は、Z方向とX方向にそれぞれ2分割され、連結壁部73の+Z方向側および-Z方向側と中間壁部74の+X方向側および-X方向側に分割された空間により、計4つの端子収容部75が形成されている。
4つの端子収容部75は、それぞれ、端子長さ方向であるY方向に延び、端子収容部75の-Y方向の前端部および+Y方向の後端部は開放されている。また、それぞれの端子収容部75は、Z方向に開口すると共に端子収容部75の全長にわたってY方向に延び且つ端子収容部75に連通する端子挿入開口部76を有している。連結壁部73の+Z方向側に配置された2つの端子収容部75は、+Z方向に開口する端子挿入開口部76を有し、連結壁部73の-Z方向側に配置された2つの端子収容部75は、-Z方向に開口する端子挿入開口部76を有している。
【0026】
それぞれの端子挿入開口部76のY方向の中間部には、対応する側壁部72から端子挿入開口部76の内部に向けてX方向に張り出す張り出し部77が形成されている。さらに、端子収容部75内には、張り出し部77の後端部(+Y方向端部)に対応する位置に、-Y方向を向いた第1の突き当たり面78が形成されている。第1の突き当たり面78は、張り出し部77のX方向における張り出し量に等しいX方向の幅を有している。
また、それぞれの端子収容部75には、第1の突き当たり面78よりも後方(+Y方向側)に、中間壁部74から端子収容部75の内部に向けてX方向に突出する突出部74Aが形成されている。
【0027】
図15に示されるように、張り出し部77よりも前方(-Y方向側)で且つ張り出し部77が存在しない、いずれのY方向位置においても、端子挿入開口部76は、X方向に第1の開口幅WB1を有し、端子収容部75も、端子挿入開口部76の第1の開口幅WB1と同じX方向の幅を有している。
張り出し部77が存在するY方向位置においては、端子挿入開口部76は、張り出し部77の存在に起因して、X方向に第1の開口幅WB1よりも狭い第2の開口幅WB2を有している。ただし、張り出し部77が存在するY方向位置において、端子収容部75は、張り出し部77よりも前方の位置における端子挿入開口部76の第1の開口幅WB1と同じX方向の幅を有している。すなわち、張り出し部77が存在するY方向位置では、端子挿入開口部76が、第1の開口幅WB1よりも狭い第2の開口幅WB2を有するのに対して、端子収容部75は、第1の開口幅WB1に相当する幅を有している。
【0028】
第1の突き当たり面78が存在するY方向位置においては、端子挿入開口部76は、X方向に第1の開口幅WB1よりも狭い第2の開口幅WB2を有し、端子収容部75も、端子挿入開口部76の第2の開口幅WB2と同じX方向の幅を有している。
張り出し部77よりも後方(+Y方向側)で且つ突出部74Aが形成されているY方向位置においては、端子挿入開口部76は、突出部74Aの存在に起因して、X方向に第2の開口幅WB2よりもさらに狭い最小の開口幅WB3を有し、端子収容部75も、端子挿入開口部76の最小の開口幅WB3と同じX方向の幅を有している。
なお、端子挿入開口部76の第1の開口幅WB1は、端子51の筒状部52の第1の端子幅WA1よりも広く設定され、端子挿入開口部76の第2の開口幅WB2および最小の開口幅WB3は、端子51の筒状部52の第1の端子幅WA1よりも狭く、且つ、端子51の、かしめられた導体部バレル53の第2の端子幅WA2よりも広く設定されているものとする。
また、それぞれの端子収容部75において、連結壁部73と張り出し部77との間のZ方向の距離は、端子51のYZ面に沿った側壁52BのZ方向の幅よりもわずかに広く設定されている。
【0029】
次に、第2ハウジング81の構成を
図16~
図18に示す。第2ハウジング81は、それぞれYZ面に沿って延び且つ互いにX方向に離れた一対の側壁部82と、一対の側壁部82の+Z方向端部を互いに連結する上壁部83と、一対の側壁部82の-Z方向端部を互いに連結する底壁部84とを有し、Y方向に沿って延びる筒形状を有している。さらに、第2ハウジング81は、一対の側壁部82と上壁部83と底壁部84の-Y方向端部に連結された前壁部85を有している。前壁部85には、4つの前端開口部86が形成されている。
【0030】
このような一対の側壁部82、上壁部83、底壁部84および前壁部85により、第2ハウジング81内に、第1ハウジング収容部87が形成されている。第1ハウジング収容部87は、第1ハウジング71の一対の側壁部72、連結壁部73および中間壁部74を収容することができる大きさを有している。
前壁部85の4つの前端開口部86は、それぞれ、電気コネクタ11に嵌合される図示しない相手側コネクタの端子が挿入されるものである。
【0031】
また、
図19に示されるように、前壁部85には、前端開口部86に隣接して、+Y方向を向いた第2の突き当たり面88が形成されている。なお、前端開口部86のX方向の幅は、端子51の筒状部52のX方向における第1の端子幅WA1よりも狭く設定されているものとする。
【0032】
次に、ケーブル21の前端部にハウジング41を組み付ける方法について説明する。
まず、
図20に示されるように、ケーブル21の4本の電線22の前端部に取り付けられた4つの端子51が第1ハウジング71に位置合わせされる。このとき、4つの端子51のうち2つの端子51が第1ハウジング71の対応する端子挿入開口部76の+Z方向側に位置し、4つの端子51のうち残る2つの端子51が第1ハウジング71の対応する端子挿入開口部76の-Z方向側に位置しながら、それぞれの端子51の-Y方向端部が、第1ハウジング71の-Y方向端部よりも-Y方向側に位置するように、ケーブル21および4つの端子51が配置される。より詳細には、それぞれの端子51の筒状部52のY方向位置が、第1ハウジング71の対応する端子挿入開口部76の張り出し部77よりも-Y方向側に位置するように、端子51と第1ハウジング71との位置合わせがなされる。また、4つの端子51は、それぞれの筒状部52の側壁52Aが、第1ハウジング71の対応する端子挿入開口部76に対向するような向きに配置される。
【0033】
この状態で、
図21および
図22に示されるように、それぞれの端子51が、第1ハウジング71の対応する端子挿入開口部76から、対応する端子収容部75内に挿入される。このとき、張り出し部77よりも-Y方向側の位置においては、端子挿入開口部76は、X方向に端子51の筒状部52の第1の端子幅WA1よりも広い第1の開口幅WB1を有すると共に、端子収容部75も、端子挿入開口部76の第1の開口幅WB1と同じX方向の幅を有しているため、端子51の筒状部52は、対応する端子収容部75内に円滑に挿入されることができる。
【0034】
また、
図22に示されるように、端子51の導体部バレル53は、第1ハウジング71の対応する端子挿入開口部76の張り出し部77が存在するY方向位置から突出部74Aが形成されているY方向位置にまで延びている。ただし、端子51の導体部バレル53の第2の端子幅WA2は、張り出し部77が存在するY方向位置における端子挿入開口部76の第2の開口幅WB2および突出部74Aが存在するY方向位置における端子挿入開口部76の最小の開口幅WB3よりも狭く設定されているため、端子51の導体部バレル53も、対応する端子収容部75内に円滑に挿入されることができる。
【0035】
このように、端子51の筒状部52のY方向位置を、第1ハウジング71の対応する端子挿入開口部76の張り出し部77よりも-Y方向側に位置させることにより、端子51は、第1ハウジング71のいずれの部分にも干渉されることなく、対応する端子収容部75内に円滑に挿入されることとなる。
このとき、端子収容部75内に挿入された端子51の-Y方向端部は、第1ハウジング71から-Y方向に突出した状態にある。
【0036】
その後、
図23および
図24に示されるように、第1ハウジング71が、4つの端子51に対して相対的に-Y方向に移動される。これにより、それぞれの端子51は、端子51の-Y方向端部が第1ハウジング71内に位置するまで第1ハウジング71に対して相対的に+Y方向に引き込まれ、第1ハウジング71の対応する端子収容部75内に収容される。
【0037】
端子51が、第1ハウジング71に対して+Y方向に引き込まれることにより、端子51の筒状部52の+Y方向端部は、対応する端子挿入開口部76の張り出し部77が存在するY方向位置となるが、張り出し部77が存在するY方向位置においては、端子収容部75は、端子挿入開口部76の第1の開口幅WB1と同じX方向の幅を有しており、また、張り出し部77と連結壁部73との間のZ方向の距離は、端子51の筒状部52のZ方向の厚さよりもわずかに広く設定されている。このため、
図25に示されるように、端子51の筒状部52の+Y方向端部は、第1ハウジング71により押さえ付けられることなく、対応する端子挿入開口部76の張り出し部77と連結壁部73との間に入り込み、張り出し部77に対してZ方向に重なる状態となる。
従って、例えば、ケーブル21の前端部から露出されて端子51に接続される電線22の曲がりにより電線22がバタついて、端子51が端子収容部75から外れることが防止され、端子51は、第1ハウジング71に保持される。
【0038】
また、端子収容部75内には、張り出し部77の+Y方向端部に対応する位置に、-Y方向を向いた第1の突き当たり面78が形成され、第1の突き当たり面78が形成されたY方向位置において、端子収容部75は、端子51の筒状部52の第1の端子幅WA1よりも狭い端子挿入開口部76の第2の開口幅WB2と同じX方向の幅を有している。従って、端子51が、第1ハウジング71に対して+Y方向に引き込まれることにより、
図26に示されるように、端子51の筒状部52の+Y方向端部は、第1の突き当たり面78に対してY方向に対向し、端子51がさらに+Y方向に引き込まれると、端子51の筒状部52の+Y方向端部は、第1の突き当たり面78に突き当たることとなる。
すなわち、第1の突き当たり面78により、第1ハウジング71に対する端子51の+Y方向への移動が規制される。
【0039】
このようにして、4つの端子51が、第1ハウジング71の4つの端子収容部75内に収容されると、
図27に示されるように、第1ハウジング71の-Y方向側から、第2ハウジング81を第1ハウジング71に対して相対的に+Y方向に移動させることにより、第2ハウジング81の第1ハウジング収容部87に第1ハウジング71が収容され、
図28に示されるように、第2ハウジング81が第1ハウジング71に装着されてハウジング41が形成される。
第2ハウジング81が第1ハウジング71に装着されることで、4つの端子51が収容されている第1ハウジング71の4つの端子挿入開口部76は、それぞれ、第2ハウジング81により覆われ、これにより、端子51は、第1ハウジング71の対応する端子収容部75内に堅固に保持されることとなる。
【0040】
第2ハウジング81には、前端開口部86に隣接して、+Y方向を向いた第2の突き当たり面88が形成されており、前端開口部86のX方向の幅は、端子51の筒状部52のX方向における第1の端子幅WA1よりも狭く設定されている。このため、第2ハウジング81が第1ハウジング71に装着されてハウジング41が形成されると、
図29に示されるように、端子51の筒状部52の-Y方向端部は、第2ハウジング81の第2の突き当たり面88に対してY方向に対向し、端子51が電線22と共に第2ハウジング81に対して-Y方向に移動しようとすると、端子51の筒状部52の-Y方向端部は、第2の突き当たり面88に突き当たることとなる。
すなわち、第2の突き当たり面88により、端子51は、第2ハウジング81に対する-Y方向への移動が規制される。
【0041】
このように、第1ハウジング71の第1の突き当たり面78と第2ハウジング81の第2の突き当たり面88の存在により、ハウジング41内における端子51のY方向の配置位置が固定される。
なお、第1ハウジング71の一対の側壁部72の外面にそれぞれX方向に突出する突起79が形成されると共に、第2ハウジング81の一対の側壁部82にそれぞれ嵌合孔89が形成されており、第1ハウジング71の突起79が第2ハウジング81の嵌合孔89に嵌り込むことで、第2ハウジング81の第1ハウジング71への装着がロックされる。
【0042】
このようにして、ケーブル21の前端部に組み付けられたハウジング41を、シールドシェル32の内部に収容し、シールドシェル32の上部をカバーシェル33により覆って、シェル部材31を組み立てることにより、
図1~
図3に示される電気コネクタ11が製造される。
【0043】
以上説明したように、端子51は、第1ハウジング71および第2ハウジング81により押さえ付けられることなく、第1ハウジング71の対応する端子収容部75内に収容されて保持されるので、電気コネクタ11の小型化に伴って、端子51も小型化され、端子51が薄い金属板から形成されても、十分な端子保持力を確保し且つ優れた作業性で端子51をハウジング41に組み込むことが可能となる。
【0044】
なお、上記の実施の形態においては、端子51の筒状部52が、X方向に第1の端子幅WA1を有する第1の部分を構成し、端子51の導体部バレル53が、X方向に第1の端子幅WA1よりも狭い第2の端子幅WA2を有する第2の部分を構成しているが、これに限るものではなく、端子51のいずれかの箇所が第1の端子幅WA1を有する第1の部分を構成し、端子51の他の箇所が第2の端子幅WA2を有する第2の部分を構成していれば、同様の効果が得られる。
【0045】
また、上記の実施の形態において、ケーブル21は、4本の電線22を有しているが、少なくとも1本の電線22を有していればよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電線、2 端子、2A 圧着部、2B 平板部、2C 接触部、2D 刃形突起、2E 凹部、3 ハウジング、3A 端子収容部、3B 第1の収容部、3C 第2の収容部、3D 開口部、3E 突出部、11 電気コネクタ、21 ケーブル、22 電線、22A 導体部、22B 絶縁体部、23 押さえテープ、24 シールド編組、25 絶縁被覆、31 シェル部材、32 シールドシェル、33 カバーシェル、34 バレル、41 ハウジング、51 端子、52 筒状部(第1の部分)、53 導体部バレル(第2の部分)、54 絶縁体部バレル、52A,52B 側壁、52C バネ接点、61 スリーブ、71 第1ハウジング、72 側壁部、73 連結壁部、74 中間壁部、74A 突出部、75 端子収容部、76 端子挿入開口部、77 張り出し部、78 第1の突き当たり面、79 突起、81 第2ハウジング、82 側壁部、83 上壁部、84 底壁部、85 前壁部、86 前端開口部、87 第1ハウジング収容部、88 第2の突き当たり面、89 嵌合孔、WA1 第1の端子幅、WA2 第2の端子幅、WB1 第1の開口幅、WB2 第2の開口幅、WB3 最小の開口幅。