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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ガス漏れ警報器
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/16 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G08B21/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019062896
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020161071
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】江幡 弘道
(72)【発明者】
【氏名】岡安 克也
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健治
(72)【発明者】
【氏名】和田 俊介
【審査官】松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-161089(JP,A)
【文献】特開2017-067389(JP,A)
【文献】特開2016-122274(JP,A)
【文献】特開2001-160187(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061092(WO,A1)
【文献】特開平04-365194(JP,A)
【文献】特開2010-078333(JP,A)
【文献】特開平05-346996(JP,A)
【文献】特開2016-218775(JP,A)
【文献】特開平08-194878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N5/00-9/36
G08B17/02-21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の監視対象ガスを検知するガス検知手段と、
前記監視対象ガスに加えられた所定の付臭剤の匂いを検知する匂い検知手段と、
前記ガス検知手段の検知出力と前記匂い検知手段の検知出力に基づいてガス漏れ判定してガス漏れ警報を出力するガス漏れ判定手段と、
が設けられたことを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項2】
請求項1記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記匂い検知手段は、
複数の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値を出力する匂いセンサーと、
前記匂いセンサーから出力された前記複数種類の匂い検知値を入力して前記所定の付臭剤の匂いを判定する匂い判定部と、
を備えたことを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項3】
請求項2記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記匂い判定部は、多層式ニューラルネットワークによって構成され、入力情報である前記匂いセンサーの前記複数種類の匂い検知値と、出力期待値である前記付臭剤の匂いの組み合わせを学習情報として入力してディープラーニングにより学習し、前記匂いセンサーからの前記複数種類の匂い検知値を入力情報として入力した場合に前記所定の付臭剤の匂いを推定して出力することを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項4】
請求項3記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記ガス漏れ判定手段は、前記ガス検知手段による前記監視対象ガスの検知出力と、前記匂い検知手段による前記付臭剤の匂いの検知出力の両方を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力することを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項5】
請求項3記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記ガス漏れ判定手段は、前記ガス検知手段による前記監視対象ガスの検知出力と、前記匂い検知手段による前記付臭剤の匂いの検知出力の何れか一方を判別したときに、ガス漏れ注意を判定してガス漏れの予備警報を出力することを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項6】
請求項1記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記ガス漏れ判定手段は、前記ガス検知手段による前記監視対象ガスの検知出力、又は、前記匂い検知手段による前記付臭剤の匂いの検知出力を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力することを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項7】
請求項3記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記多層式ニューラルネットワークは、結合ニューラルネットワークであり、
前記学習情報を入力した場合に出力される値と所定値の期待値との誤差に基づくバックプロパゲーションにより学習することを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項8】
監視対象ガスに含まれる監視対象ガス及び前記監視対象ガスに加えられた付臭剤の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値を出力する匂い検知手段と、
多層式ニューラルネットワークによって構成され、入力情報である前記匂い検知手段の前記複数種類の匂い検知値と、出力期待値である前記監視対象ガス及び前記付臭剤の匂いとの各々の組み合わせを学習情報として入力してディープラーニングにより学習し、前記匂い検知手段の前記複数種類の匂い検知値を入力情報として入力した場合に前記監視対象ガス及び付臭剤の匂いの有無を判定して出力する匂い判別手段と、
前記匂い判別手段による前記監視対象ガスと前記付臭剤の匂いの判定結果に基づいてガス漏れ判定してガス漏れ警報を出力するガス漏れ判定手段と、
が設けられたことを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項9】
請求項8記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記ガス漏れ判定手段は、前記匂い判定手段による前記監視対象ガスの検知と前記付臭剤の匂いの検知の両方を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力することを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項10】
請求項9記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記ガス漏れ判定手段は、前記匂い判定手段による前記監視対象ガスの検知と前記付臭剤の匂いの検知の何れか一方を判別したときに、ガス漏れ注意を判定してガス漏れの予備警報を出力することを特徴とするガス漏れ警報器。
【請求項11】
請求項8記載のガス漏れ警報器に於いて、
前記ガス漏れ判定手段は、前記匂い判定手段による前記監視対象ガスの検知、又は、前記付臭剤の匂いの検知を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力することを特徴とするガス漏れ警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知素子の出力に基づいて都市ガスやLPガスのガス漏れを検知して警報するガス漏れ警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅等で使用している都市ガスやLPガス(プロパンガス)のガス漏れを検知して警報するガス漏れ警報器が広く利用されている。
【0003】
ガス警報器は、監視対象ガスとしてCOガスと炭化水素ガスを検知するものであり、ガス検知素子のヒータによる過熱温度を、COガスの検知温度と炭化水素ガスの検知温度を周期的に切り替えた状態で、COガス又は炭化水素ガスを交互に監視し、COガスを検知したときはCOガス警報ランプを点灯又は点滅し、炭化水素ガスを検知したときは炭化水素ガス警報ランプを点灯又は点滅し、更に、警報ランプの点灯又は点滅に合わせてスピーカから警報音を出力させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-228613号公報
【文献】特開2002-230661号公報
【文献】WO2016-136434号公報
【文献】WO2016-031080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、都市ガスやLPガスの原料である天然ガスは臭いがなく、微量な漏れでもいち早く発見できるよう保安上の目的から付臭剤を加えている。このため台所等で僅かなガス漏れが起きても、人がいればガス漏れ特有の匂いに気付いて迅速且つ適切に対処することが可能となる。
【0006】
しかしながら、従来のガス漏れ警報器にあっては、都市ガスやLPガスについては、主成分である炭化水素ガスを検知して警報するものであり、ガス漏れを検知するためには、漏れ出した炭化水素ガスのガス濃度が所定濃度を超える必要があり、また、ガス漏れ警報は台所の天井面や天井面に近い壁面に設置されていることから、ガス漏れを検知して警報するまでに時間がかかる場合がある。
【0007】
ところで、近年にあっては、人間の嗅覚のように、複雑な匂いの集合体から特定の匂いを検出、峻別することを可能とする匂いセンサーが実用化されている(特許文献3,4)。このように人間の嗅覚に相当する匂いを検知して峻別できるセンサーがあれば、都市ガスやLPガスに保安上の目的で加えられた付臭剤の匂いといった従来に見られない判断要素をガス漏れ監視に組み合わせることができ、ガス漏れを迅速且つ確実に判断して警報することでき、また、監視対象ガス以外の雑ガスによる誤報を確実に防止することができる。
【0008】
本発明は、ガス漏れ判断に匂いという要素を組み合わせることで、高い精度でガス漏れを判定可能とするガス漏れ警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(ガス漏れ警報器)
本発明は、ガス漏れ警報器であって、
所定の監視対象ガスを検知するガス検知手段と、
監視対象ガスに加えられた所定の付臭剤の匂いを検知する匂い検知手段と、
ガス検知手段の検知出力と匂い検知手段の検知出力に基づいてガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力するガス漏れ判定手段と、
が設けられたことを特徴とする。
【0010】
(匂いセンサーと匂い判定部)
匂い検知手段は、
複数の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値を出力する匂いセンサーと、
匂いセンサーから出力された複数種類の匂い検知値を入力して付臭剤の匂いを判定する匂い判定部と、
を備える。
【0011】
(多層式ニューラルネットワークによる匂い種別の判定)
匂い判定部は、多層式ニューラルネットワークによって構成され、入力情報である匂いセンサーの複数種類の匂い検知値と、出力期待値である付臭剤の匂いの組み合わせを学習情報として入力してディープラーニングにより学習し、匂いセンサーからの複数種類の匂い検知値を入力情報として入力した場合に付臭剤の匂いを推定して出力する。
【0012】
(ガス検知と匂い検知の両方でガス漏れ警報)
ガス漏れ判定手段は、ガス検知手段による監視対象ガスの検知出力と、匂い検知手段による付臭剤の匂いの検知出力の両方を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力する。
【0013】
(ガス検知又は匂い検知で予備警報)
ガス漏れ判定手段は、ガス検知手段による監視対象ガスの検知出力と、匂い検知手段による付臭剤の匂いの検知出力の何れか一方を判別したときに、ガス漏れ注意を判定してガス漏れの予備警報を出力する。
【0014】
(ガス検知又は匂い検知でガス漏れ警報)
ガス漏れ判定手段は、ガス検知手段による監視対象ガスの検知出力、又は、匂い検知手段による付臭剤の匂いの検知出力を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力する。
【0015】
(多層式ニューラルネットワークの構成と学習による効果)
多層式ニューラルネットワークは、結合ニューラルネットワークであり、
学習情報を入力した場合に出力される値と所定値の期待値との誤差に基づくバックプロパゲーションにより学習する。
【0016】
(匂い検知部のみを用いたガス漏れ警報器)
本発明の別の形態にあっては、ガス漏れ警報器であって、
監視対象ガスに含まれる監視対象ガス及び監視対象ガスに加えられた付臭剤の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値を出力する匂い検知手段と、
多層式ニューラルネットワークによって構成され、入力情報である匂い検知手段の複数種類の匂い検知値と、出力期待値である監視対象ガス及び付臭剤の匂いとの各々の組み合わせを学習情報として入力してディープラーニングにより学習し、匂い検知手段の複数種類の匂い検知値を入力情報として入力した場合に監視対象ガス及び付臭剤の匂いの有無を判定して出力する匂い判別手段と、
匂い判別手段による監視対象ガスと付臭剤の匂いの判定結果に基づいてガス漏れ判定してガス漏れ警報を出力するガス漏れ判定手段と、
が設けられたことを特徴とする。
【0017】
(ガス漏れ警報の判別)
ガス漏れ判定手段は、
匂い判定手段による監視対象ガスの検知と付臭剤の匂いの検知の両方を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力し、
この場合、監視対象ガスの検知と付臭剤の匂いの検知の何れか一方を判別したときには、ガス漏れ注意を判定してガス漏れの予備警報を出力する。
【0018】
またガス漏れ判定手段は、匂い判定手段による監視対象ガスの検知、又は、付臭剤の匂いの検知を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力するようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
(基本的な効果)
本発明は、ガス漏れ警報器であって、所定の監視対象ガスを検知するガス検知手段と、監視対象ガスに加えられた所定の付臭剤の匂いを検知する匂い検知手段と、ガス検知手段の検知出力と匂い検知手段の検知出力に基づいてガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力するガス漏れ判定手段とが設けられたため、都市ガスやLPガスの主成分となる炭化水素ガスを監視対象ガスとして検知したときに、これに加えて監視対象ガスに加えられた所定の付臭剤による匂いを検知してガス漏れの有無を判定することで、雑ガスに影響されることなく、高い精度でガス漏れを判断することができる。
【0020】
(匂いセンサーと匂い判定部の効果)
また、匂い検知手段は、複数の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値を出力する匂いセンサーと、匂いセンサーから出力された複数種類の匂い検知値を入力して付臭剤の匂いを判定する匂い判定部とを備え、更に、匂い判定部は、多層式ニューラルネットワークによって構成され、入力情報である匂いセンサーの複数種類の匂い検知値と、出力期待値である付臭剤の匂いの組み合わせを学習情報として入力してディープラーニングにより学習し、匂いセンサーからの複数種類の匂い検知値を入力情報として入力した場合に付臭剤の匂いを推定して出力するようにしたため、人間の嗅覚のように、複雑な匂いの集合体から都市ガスやLPガスに加えられた付臭剤の匂いを検出、峻別してガス漏れの判断に利用し、精度の高いガス漏れ判断ができる。
【0021】
(ガス検知と匂い検知の両方でガス漏れ警報する効果)
また、ガス漏れ判定手段は、ガス検知手段による監視対象ガスの検知出力と、匂い検知手段による付臭剤の匂いの検知出力の両方を判別したときに、ガス漏れを判定して警報を出力するようにしたため、より確実なガス漏れ判断ができる。
【0022】
(ガス検知又は匂い検知で予備警報する効果)
また、ガス漏れ判定手段は、ガス検知手段による監視対象ガスの検知出力と、匂い検知手段による付臭剤の匂いの検知出力の何れか一方を判別したときに、ガス漏れ注意を判定してガス漏れの予備警報を出力するようにしたため、ガス漏れが判定される前段階で予備警報を出すことで、僅かなガス漏れを報知して迅速な対処を可能とする。
【0023】
(ガス検知又は匂い検知でガス漏れ警報する効果)
また、ガス漏れ判定手段は、ガス検知手段による監視対象ガスの検知出力、又は、匂い検知手段による付臭剤の匂いの検知出力を判別したときに、ガス漏れ警報を出力するようにしたため、例えば、ガス検知手段による炭化水素ガスの検知により早い段階で、都市ガスやLPガスに加えられた付臭剤による匂いが判定されてガス漏れ警報を出力することができ、人の臭覚に相当する感度で漏れガスに固有な付臭剤の匂いを検知して迅速且つ確実にガス漏れを警報することができる。
【0024】
また、ガス検知手段と匂い検知手段の何れか一方の障害に対し相互にバックアップすることができ、ガス漏れ警報器の信頼性が向上する。
【0025】
(多層式ニューラルネットワークの構成と学習による効果)
また、多層式ニューラルネットワークは、結合ニューラルネットワークであり、学習情報を入力した場合に出力される値と所定の期待値との誤差に基づくバックプロパゲーションにより学習するようにしたため、例えば匂い種別の判定にあっては、匂い検知手段から出力される複数の匂い検知値を入力情報として入力した場合に、出力の期待値として都市ガスやLPガスに加えられた付臭剤による特有の匂いの推定値を与えてバックプロパゲーション処理により出力値と期待値の誤差を最小とするように多層式ニューラルネットワークにおけるウェイト(重み)とバイアスが学習され、入力情報からより高い精度で都市ガスやLPガスに加えられた付臭剤による特有の匂いを判別して高精度のガス漏れ判断に利用できる。
【0026】
(匂い検知部のみを用いたガス漏れ警報器の効果)
また、本発明の別の形態にあっては、ガス漏れ警報器であって、監視対象ガスに含まれる監視対象ガス及び監視対象ガスに加えられた付臭剤の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値を出力する匂い検知手段と、多層式ニューラルネットワークによって構成され、入力情報である匂い検知手段の複数種類の匂い検知値と、出力期待値である監視対象ガス及び付臭剤の匂いとの各々の組み合わせを学習情報として入力してディープラーニングにより学習し、匂い検知手段の複数種類の匂い検知値を入力情報として入力した場合に監視対象ガス及び付臭剤の匂いの有無を判定して出力する匂い判別手段と、匂い判別手段による監視対象ガスと付臭剤の匂いの判定結果に基づいてガス漏れ判定してガス漏れ警報を出力するガス漏れ判定手段とが設けられたため、都市ガスやLPガスに含まれる炭化水素ガス、付臭剤の匂いを、匂いセンサーである匂い検知手段が出力する複数の匂い検知値を多層式ニューラルネットワークで構成した匂い判定部に入力して判定し、その結果の組み合わせからガス漏れを高い精度で判断して警報することができる。
【0027】
(ガス漏れ警報の判別による効果)
また、ガス漏れ判定手段は、匂い判定手段による監視対象ガスの検知と付臭剤の匂いの検知の両方を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力し、この場合、監視対象ガスの検知と付臭剤の匂いの検知の何れか一方を判別したときには、ガス漏れ注意を判定してガス漏れの予備警報を出力し、或いは、ガス漏れ判定手段は、匂い判定手段による監視対象ガスの検知、又は、付臭剤の匂いの検知を判別したときに、ガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力することで、前述したガス検知手段と匂い検出手段を備えたガス漏れ警報器のガス漏れ判定手段と同様に効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ガス漏れ警報器の実施形態を示したブロック図
図2図1の匂いセンサーによる16チャンネルの匂い検知値をレーダーチャートで示した説明図
図3図1の匂い判定部の機能構成を示した説明図
図4図3に示した多層式ニューラルネットワークの機能構成を示した説明図
図5図1のガス漏れ判定部による判定処理を一覧で示した説明図
図6】匂い検知部のみによりガス漏れを検知する匂いガス漏れ警報器の他の実施形態を示した説明図
図7図6の匂い判定部の機能構成を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
[実施形態の基本的な概念]
図1はガス漏れ警報器の実施形態を示した説明図である。本実施形態によるガス漏れ警報器の基本概念は、ガス検知手段であるガス検知部10により都市ガスやLPガス等の所定の監視対象ガスを検知し、匂い検知手段である匂い検知部16により監視対象ガスに加えられた所定の付臭剤の匂いを検知し、ガス漏れ判定手段であるガス漏れ判定部30により、ガス検知部10の検知出力と匂い検知部16の検知出力に基づいて、例えば、監視対象ガスの検知出力と付臭剤の匂いの検知出力の両方を判別したときにガス漏れを判定してガス漏れ警報を出力するというものであり、都市ガスやLPガスの主成分となる炭化水素ガスを監視対象ガスとして検知したときに、これに加えて都市ガスやLPガスに加えられた付臭剤による匂いを検知してガス漏れの有無を判定することで、雑ガスに影響されることなく、高い精度でガス漏れを判断することができる。
【0030】
また、匂い検知部16は、複数の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値を出力する匂いセンサー18と、匂いセンサー18から出力された複数種類の匂い検知値を入力して付臭剤の匂いを判定する匂い判定部20とを備え、更に、匂い判定部20は、多層式ニューラルネットワークによって構成され、入力情報である匂いセンサー18の複数種類の匂い検知値と、出力期待値である付臭剤の匂いの組み合わせを学習情報として入力してディープラーニングにより学習し、匂いセンサー18からの複数種類の匂い検知値を入力情報として入力した場合に付臭剤の匂いを推定して出力することにより、人間の嗅覚のように、複雑な匂いの集合体から都市ガスやLPガスに加えられた付臭剤の匂いを検出、峻別してガス漏れの判断に利用し、精度の高いガス漏れ判断を可能とするものである。
【0031】
[ガス漏れ警報器の概要]
図1に示すように、本実施形態のガス漏れ警報器は、ガス検知部10、匂い検知部16、制御部24、表示部26、音声警報部28で構成される。制御部24はCPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成され、プログラムの実行によりガス漏れ判定部30の機能が実現されている。表示部26にはCOガス警報表示灯、炭化水素ガス警報表示灯が設けられる。音声警報部28には音声増幅回路とスピーカが設けられる。
【0032】
[ガス検知部]
ガス検知部10にはガスセンサー12とガス検知回路部14が設けられ、都市ガスやLPガスの主成分である炭化水素ガス(CHガス)と、不完全燃焼等により発生するCOガスを検知する。ガスセンサー12は例えば接触燃焼式であり、電流を流している白金線にガスが接触すると微小な燃焼を起こし、白金線の電気抵抗が増加することでガスを検知する。
【0033】
ガス検知回路部14は、ガスセンサー12に設けられた白金線を加熱するヒータの温度を、COガス検知用の温度T1と炭化水素ガス検知用の温度T2(>T1)とに周期的に自動で切替え、各切替タイミングで白金線の電気抵抗を検出してCOガス検知信号G1と炭化水素ガス検知信号G2を制御部24に出力する。
【0034】
なお、ガスセンサー12としては、半導体式としてもよい。半導体式のガスセンサーは、半導体の表面にガスが接触することによって半導体の抵抗値が減少することでガスを検知する。
【0035】
[匂い検知部]
匂い検知部16は、匂いセンサー18と匂い判定部20で構成され、匂い判定部20には多層式ニューラルネットワークが設けられており、匂い検知部16は都市ガスやLPガスに保安上の目的で加えられた付臭剤の匂いを判別する。
【0036】
(付臭剤)
都市ガスやLPガスに加えられる付臭剤の成分は、例えば、ターシャリーブチルメルカプタンTBMとシクロヘキセンCHを混合している。ターシャリーブチルメルカプタンTBMは化学式がC10Sであり、また、シクロヘキセンCHは化学式がC10である。
【0037】
ターシャリーブチルメルカプタンTBMは、有機硫黄化合物の一種で、臭気が強く、燃焼すると二酸化炭素、水、硫黄酸化物になる。また、シクロヘキセンCHは、硫黄を含まず、燃焼すると二酸化炭素と水になり、硫黄酸化物が発生しない。
【0038】
(匂いセンサー)
図2図1の匂いセンサー16による16チャンネルの匂い検知値をレーダーチャートで示した説明図である。図1の匂い検知部16に設けられた匂いセンサー18は、複数の匂い物質の吸着に応じて複数種類の匂い検知値x1~x16を出力する。
【0039】
匂いセンサー18は、例えば水晶基板上に、異なる匂い分子を選択して吸着させる感応膜を成膜した複数のガスセンサーを設けている。ガスセンサーの感応膜は、アンモニア、トルエン、アセトン、エタノールなど、それぞれの匂い分子に反応し、選択的にガス成分が吸着する材料を用いている。ガスセンサーは、匂い分子の吸着量に比例して、例えば水晶振動子の周波数が変化し、周波数の変化量に応じたレベルを持つ検出値xiを出力する。本実施形態にあっては、例えば16種類の匂い分子に反応して検知値x1~x16を出力する16チャンネルの匂いセンサー18を使用している。
【0040】
匂いセンサー18は、都市ガスやLPガスが漏れた場合、炭化水素ガスと付臭剤が接触し、両者の接触に対応した複数の匂い検知値x1~x16を出力する。また、匂いセンサー18は、不完全燃焼等により発生したCOガスが接触したときにも、COガスの接触に対応した複数の匂い検知値x1~x16を出力する。
【0041】
図2(A)は付臭剤が接触したときの検知値x1~x16のレーダーチャートを示し、図2(B)は炭化水素ガスが接触したときの検知値x1~x16のレーダーチャートを示し、図2(C)はCOガスが接触したときの検知値x1~x16のレーダーチャートを示している。なお、図2のレーダーチャートは一例であり、16チャンネルのガスセンサーの種類と配置により、様々なパターンとなる。
【0042】
図2のレーダーチャートから明らかなように、多チャンネル構成(複数ガスセンサー構成)の匂いセンサー18の検知値x1~x16は、付臭剤、炭化水素ガス、COガスにつき、異なったパターンとして視覚的に捉えることができ、この視覚的なパターンの相違が、付臭剤については人間の嗅覚のように、複雑な匂いの集合体から特定の匂いを検出、峻別することを意味する。
【0043】
ここで、都市ガスやLPガスが漏れた場合には、同時に付臭剤が加わっていることから、このときの匂いセンサー18の匂い検知値x1~x16のレーダーチャートは、図2(A)と図2(B)を合わせたパターンとなる。
【0044】
このような匂いセンサー18の検知値x1~x16から、付臭剤の匂いを判別するため、匂いセンサー18からの匂い検知値x1~x16を、多層式ニューラルネットワーク22を備えた匂い判定部20に入力している。
【0045】
なお、匂いセンサー18は、本実施形態の16チャンネル以外に、32チャンネル、64チャンネルといった更に高分解能の物を使用しても良い。
【0046】
(匂い判定部)
図3図1の匂い判定部の機能構成を示した説明図、図4図3に示した多層式ニューラルネットワークの機能構成を示した説明図である。
【0047】
図1に示したように、匂い判定部20は匂いセンサー18からの匂い検知値x1~x16を入力して付臭剤の匂いを判定するものであり、付臭剤の匂い判定値Y1と非付臭剤の匂い判定値Y2を出力する。ここで、付臭剤の匂いを判定した場合、(Y1,Y2)=(1,0)となり、非付臭剤の匂いを判定した場合(付臭剤の匂いを判定しない場合)、(Y1,Y2)=(0,1)となる。
【0048】
匂い判定部20は、多層式ニューラルネットワーク22を備える。多層式ニューラルネットワーク22を備えた匂い判定部20は、図3に示すように、多層式ニューラルネットワーク22、入力部32、学習制御部34及び学習情報保持部36で構成され、これらの機能は、ニューラルネットワークの処理に対応したコンピュータ回路のCPUによるプログラムの実行により実現される。
【0049】
匂いセンサー18からの匂い検知値x1~x16は入力部32を介して多層式ニューラルネットワーク22に入力し、付臭剤の匂い推定値y1と非付臭剤の匂い推定値y2を出力する。
【0050】
学習制御部34は、付臭剤そのもの、及び付臭剤を加えた都市ガスやLPガスの実験的な接触で検知された匂いセンサー18の複数組の匂い検知値x1~x16を学習情報として学習情報保持部36に一時的に記憶保持させ、学習情報保持部36に記憶した匂い検知値x1~x16と出力期待値である付臭剤の匂いと非付臭剤の匂いの組み合わせを教師ありの学習情報として入力部32を介して多層式ニューラルネットワーク22に入力し、例えばバックプロパゲーション法(誤差逆伝搬法)等の学習法により多層式ニューラルネットワーク22のウエイト(重み)とバイアスを学習させる。
【0051】
この教師ありの学習情報を用いて学習の済んだ多層式ニューラルネットワーク22に、匂いセンサー18から任意の匂い検知値x1~x16を入力すると、付臭剤の匂い推定値y1及び非付臭剤の匂い推定値y2が出力される。
【0052】
ここで、付臭剤の匂い推定値y1及び非付臭剤の匂い推定値y2は、理想的には次のようになる。
付臭剤の匂いの場合は (y1,y2)=(1,0)
非付臭剤の匂いの場合は(y1,y2)=(0,1)
実際に匂いセンサー18の匂い検知値x1~x16を多層式ニューラルネットワーク46に入力した場合は、推定値y1,y2の総和は1で、それぞれ0~1の間の値をとる。
【0053】
(全結合ニューラルネットワーク)
図4に示すように、多層式ニューラルネットワーク46は、全結合ニューラルネットワークであり、入力層42、全結合44、中間層46と全結合44の繰り返し、及び出力層48で構成されている。
【0054】
ここで、全結合ニューラルネットワークは、入力情報である匂い検知値x1~x16を付臭剤の匂いと非付臭剤の匂いの2クラスに分類する多クラス分類を行うことから、最後の出力層48には、目的とする2クラスと同じ2ユニットを配置し、これらのユニットへの入力を、ソフトマックス関数を用いて、総和が1の出力y1,y2となるようにしており、各ユニットの出力y1,y2はそのクラスに属する確率を示すことになる。
【0055】
(バックプロパゲーションによる学習)
図4に示した入力層42、複数の中間層46及び出力層48で構成される多層式ニューラルネットワーク22は、各層に複数のユニットを設けて他の層の複数のユニットと結合し、各ユニットには重みとバイアス値が設定され、複数の入力値と重みとのベクトル積を求めてバイアス値を加算して総和を求め、これを所定の活性化関数に通して次の層のユニットに出力するようにしており、最終層に到達するまで値が伝搬するフォワードプロパゲーションが行われる。
【0056】
このようなニューラルネットワークのウエイトやバイアスを変更するには、バックプロパゲーションとして知られている学習アルゴリズムを使用する。バックプロパゲーションでは、入力値xと期待される出力値(期待値)yというデータセットをネットワークに与えた場合の教師ありの学習と、入力値xのみをネットワークに与えた場合の教師なしの学習があり、本実施形態は、教師ありの学習を行う。
【0057】
教師ありの学習でバックプロパゲーションを行う場合は、ネットワークを通ってきたフォワードプロパゲーションの結果である推定値y*と期待値yの値を比較する誤差として、例えば、平均二乗誤差の関数を使用する。
【0058】
バックプロパゲーションでは、推定値y*と期待値yの誤差の大きさを使い、ネットワークの後方から前方までウエイトとバイアスを補正しながら値を伝播させる。各ウエイトとバイアスについて補正した量は、誤差への寄与として扱われ、最急降下法で計算され、ウエイトとバイアスの値を変更することにより、誤差関数の値を最小化する。
【0059】
ニューラルネットワークに対するバックプロパゲーションによる学習の手順は次にようになる。
(1) 入力値xをニューラルネットワークに入力して、フォワードプロパゲーションを行い推定値y*を求める。
(2) 推定値y*と期待値yに基づき誤差関数で誤差を計算する。
(3) ウエイトとバイアスを更新しながら、ネットワークにて、バックプロパゲーションを行う。
【0060】
この手順は、ニューラルネットワークのウエイトとバイアスの誤差が可能な限り最小になるまで、異なる入力値xと期待値yの組み合わせを使って繰り返し、誤差関数の値を最小化する。
【0061】
図4に示す多層式ニューラルネットワーク22の教師ありの学習制御では、
付臭剤の匂いの場合は (y1,y2)=(1,0)
非付臭剤の匂いの場合は(y1,y2)=(0,1)
を出力値(期待値)として使用し、前述したバックプロパゲーションを行う。
【0062】
(匂い判定部の実装)
図4に示した多層式ニューラルネットワーク22の学習は、ガス漏れ警報器では行わず、別のコンピュータ装置で学習し、学習済みの多層式ニューラルネットワーク22をガス漏れ警報器の匂い判定部20として実装することになる。
【0063】
(匂い判定値の2値化)
図3に示すように、多層式ニューラルネットワーク22から出力された付臭剤の匂い推定値y1及び非付臭剤の匂い推定値y2は、比較器38,40により2値化され、付臭剤の匂い判定値Y1及び非付臭剤の匂い判定値Y2として出力される。
【0064】
多層式ニューラルネットワーク22から出力される付臭剤の匂い推定値y1及び非付臭剤の匂い推定値y2は、総和が1でそれぞれ0~1の間の値をとることから、比較器38,40により、0,1の何れかを示すように2値化する。
【0065】
比較器38,40には基準電圧源38a,40aによって基準値1/2が設定されており、推定値y1,y2は2ビット判定値(Y1,Y2)に2値化され、付臭剤の匂いの有無を示すことになる。
【0066】
[ガス漏れ判定部]
図5図1のガス漏れ判定部による判定処理を一覧で示した説明図であり、モード1~4に分類され、3ビット入力情報(G1,G2,Y1)につきビット1に対応した「有り」を〇印で示し、ビット0に対応した「無し」を■印で示している。
【0067】
モード1は、ガス検知部10からのCOガス検知値G1を判別した場合であり、判定は「COガス漏れ」となり、表示部26のCOガス警報灯を点滅し、音声警報部28からCOガス漏れを示す警報音や音声メッセージが出力させる。
【0068】
モード2は、ガス検知部10からの炭化水素ガス検知値G2を判別し、且つ、匂い検知部16からの付臭剤の匂いを判別した場合であり、判定は「炭化水素ガス漏れ」となり、表示部26の炭化水素ガス警報灯を点滅し、音声警報部28から炭化水素ガスのガス漏れを示す警報音や音声メッセージが出力させる。
【0069】
モード3は、匂い検知部16からの付臭剤の匂いのみを判別した場合であり、判定は「ガス漏れ注意」となり、表示部26の炭化水素ガス警報灯を点灯し、音声警報部28から炭化水素ガスのガス漏れ注意を示す予備警報としての警報音や注意を喚起する音声メッセージを出力させる。
【0070】
モード4は、匂い検知部20からの付臭剤の匂いが判別されず、ガス検知部10からの炭化水素ガス検知値G2のみを判別した場合であり、判定はモード3と同様に「ガス漏れ注意」となり、表示部26の炭化水素ガス警報灯を点灯し、音声警報部28から炭化水素ガスのガス漏れ注意を示す予備警報としての警報音や注意を喚起する音声メッセージを出力させる。
【0071】
なお、ガス漏れ判定部30によるガス漏れ判定は図5に限定されず、図5のモードモード3,4は炭化水素ガス漏れと判定しても良い。
【0072】
[ガス漏れ警報器の制御動作]
図1のガス漏れ警報器による制御動作を説明する次のようになる。いま、ガス漏れ警報器の設置場所で例えば使用している都市ガスが漏洩したとすると、ガスセンサー12に炭化水素ガスが接触し、ガス検知回路部14から制御部24に炭化水素ガス検知値が出力される。
【0073】
同時に、匂いセンサー18の匂い検知値x1~x16が匂い判定部20の多層式ニューラルネットワーク22に入力され、付臭剤の匂い判定値Y1が制御部24に出力される。
【0074】
制御部24のガス漏れ判定部30は図5のモード2に従って炭化水素ガスのガス漏れを判定し、表示部26の炭化水素ガス警報灯を点灯し、音声警報部28から炭化水素ガスのガス漏れ注意を示す警報音や音声メッセージを出力させる。
【0075】
[匂いセンサーのみによりガス漏れを判定する実施形態]
図6は匂い検知部のみによりガス漏れを検知するガス漏れ警報器の他の実施形態を示した説明図、図7図6の匂い判定部の機能構成を示した説明図である。
【0076】
図6に示すように、本実施形態は、匂い検知部100、制御部24、表示部26、音声警報部28で構成され、図1の実施形態に示したガス検知部10が取り除かれており、匂い検知部100によりCOガス、炭化水素ガス、及び付臭剤の匂いを検知するようにしている。
【0077】
匂い検知部50は、図7に示すように、多層式ニューラルネットワーク22、入力部32、学習制御部34及び学習情報保持部36で構成される。多層式ニューラルネットワーク22は学習制御部34により、匂いセンサー18からの入力情報である匂い検知値x1~x16と出力期待値であるCOガス、炭化水素ガス、付臭剤の匂い、を組み合わせた教師ありの学習情報を入力部32を介して多層式ニューラルネットワーク22に入力し、例えばバックプロパゲーション法(誤差逆伝搬法)等の学習法により多層式ニューラルネットワーク22のウエイト(重み)とバイアスを学習させる。
【0078】
多層式ニューラルネットワーク22の学習は、別のコンピュータ装置で学習し、学習済みの多層式ニューラルネットワーク22をガス漏れ警報器に実装することになる。
【0079】
これにより実際に匂いセンサー18からの匂い検知値x1~x16が多層式ニューラルネットワーク22に入力されると、0~1の範囲の値をもつCOガス推定値y1、炭化水素ガス推定値y2、及び付臭剤の匂い推定値y3が出力され、比較器52,54,56の基準電圧源52a,54a,56aより設定した基準値1/3と比較して2値化し、COガス判定値G1、炭化水素ガス判定値G2、及び付臭剤の匂い判定値Y1として、
COガスを判定した場合は、 (G1,G2,Y1)=(1,0,0)
炭化水素ガスを判定した場合は、(G1,G2,Y1)=(0,1,0)
付臭剤の匂いを判定した場合は、(G1,G2,Y1)=(0,0,1)
を出力するようにしている。
【0080】
ここで、炭化水素ガスと付臭剤は都市ガス又はLPガスの成分であることから、都市ガス又はLPガスが漏洩した場合、匂い判定部20は、
(G1,G2,Y1)=(1,1,0)
を出力する。
【0081】
図6の制御部24に設けたガス漏れ判定部30は、図1の実施形態と同じであり、例えば図5に示したモード1~4に対応したCOガス漏れ、炭化水素ガス漏れ、ガス漏れ注意を判定して警報を行う。
【0082】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、監視対象ガスとして炭化水素ガスとCOガスを例にとっているが、必要に応じて適宜の監視対象ガスのガス漏れ監視に適用することができる。
【0083】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0084】
10:ガス検知部
12:ガスセンサー
14:ガス検知回路部
16,100:匂い検知部
18:匂いセンサー
20,50:匂い判定部
22:多層式ニューラルネットワーク
24:制御部
26:表示部
28:音声警報部
30:ガス漏れ判定部
32:入力部
34:学習制御部
36:学習情報保持部
38,40,52,54,56:比較器
38a,40a,52a,54a,56a:基準電圧源
42:入力層
44:全結合
46:中間層
48:出力層

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7