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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ケラバカバー材、及び屋根構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/158 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
E04D13/158
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019066442
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165192
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】太田 智之
(72)【発明者】
【氏名】土田 嘉治
(72)【発明者】
【氏名】寺山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】森 周一
(72)【発明者】
【氏名】田井 信博
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-094727(JP,U)
【文献】特開平08-086065(JP,A)
【文献】特開昭60-156851(JP,A)
【文献】特開2015-148082(JP,A)
【文献】特開2009-209610(JP,A)
【文献】特開2007-303116(JP,A)
【文献】特開2007-154596(JP,A)
【文献】特開2005-002615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/15-13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根下地と屋根材とを備えた屋根のケラバをカバーするケラバカバー材であって、
上記ケラバに設置された状態で、
上記ケラバの上面をカバーする上面カバー片と、
上記上面カバー片よりも内外方向の内側に位置する部分を有し、上記屋根下地と上記屋根材との間に位置する内側水切り片と、
上記上面カバー片の外側端から下方のみに延びて上記ケラバの側面をカバーする側面カバー片と、
上記上面カバー片の外側端よりも内側の位置から上方に突出する突条片と、を備え
上記上面カバー片は、
上記側面カバー片の上側端から上記内外方向の内側に曲げられて、該側面カバー片の上端から上記突条片に亘って平坦に形成された第1上面カバー片と、
上記突条片の下端部から上記内外方向の内側に曲がるように形成された第2上側カバー片と、を備えた、
ケラバカバー材。
【請求項2】
上記突条片の高さ方向の寸法が、上記側面カバー片の上記高さ方向の寸法よりも小さい、請求項1のケラバカバー材。
【請求項3】
上記突条片が、上記上面カバー片の上記内外方向の中央よりも内側に位置する、
請求項1又は2のケラバカバー材。
【請求項4】
上記突条片が、上記内外方向において、上記屋根材の端部と略同じ位置にある、
請求項3のケラバカバー材。
【請求項5】
上記上面カバー片の外側端が、上記内外方向において、上記ケラバの外側端と略同じ位置にある、
請求項1乃至4のいずれか1つに記載のケラバカバー材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のケラバカバー材が上記ケラバをカバーしている、
屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築物の屋根構造に含まれるケラバカバー材に関する。また、本開示は、屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根構造としては、特許文献1に記載されているものがある。この屋根構造は、屋根葺材のケラバ側の端部を覆うように配置されるケラバカバー材を備える。ケラバカバー材は、屋根葺材のケラバ側の端部上面を覆う上面板、上面板のケラバ側の端部から垂直下方に延設される側面板、ケラバ側の端部から垂直上方に立設する立設板、及び立設板の軒側の端部から軒先に沿うように延びる案内板を有する。立設板は、風でケラバ側に吹き流された水滴を遮ることでその水滴がケラバから下方に流れ落ちることを阻止している。また、案内板は、その棟側の面に到達した雨水を軒の中央側に案内する役割を有する。案内板を設けることで、雨水を軒の中央側に移動させることができ、雨樋の長さを短くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-135119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記屋根構造では、立設板を乗り越えた雨水の全てが地上に落下する。また、外側の雨水がそのまま落下する。また、製造コストの低減等の目的で、ケラバカバー材から案内板を省略した場合、立設板の内側面に沿って下側に流下した雨水を確実に収容するため、雨樋や集水桝の集水口をケラバよりも外側まで設ける必要があり、美観も良くない。
【0005】
そこで、本開示の目的は、雨水がケラバから落下しにくく美観に優れる建築物を構築できるケラバカバー材、及び屋根構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るケラバカバー材は、屋根下地と屋根材とを備えた屋根のケラバをカバーするケラバカバー材であって、ケラバに設置された状態で、ケラバの上面をカバーする上面カバー片と、上面カバー片よりも内外方向の内側に位置する部分を有し、屋根下地と屋根材との間に位置する内側水切り片と、上面カバー片の外側端から下方のみに延びてケラバの側面をカバーする側面カバー片と、上面カバー片の外側端よりも内側の位置から上方に突出する突条片と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るケラバカバー材及び屋根構造によれば、雨水がケラバから落下しにくく、美観に優れる建築物を構築し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】家屋の一部を示す斜視図であり、本開示の一実施形態に係るケラバカバー材を含む屋根構造の概要を説明する斜視図である。
図2】上記ケラバカバー材の斜視図である。
図3】上記ケラバカバー材を別の方向から見たときの斜視図である。
図4】上記ケラバカバー材を取り外した状態の屋根構造における図1に対応する斜視図である。
図5】上記屋根構造を流下する雨水の流れについて説明する図である。
図6】変形例のケラバカバー材の斜視図である。
図7】別の変形例のケラバカバー材を正面から見たときの、そのケラバカバー材の骨組を表す模式図である。
図8】更なる変形例のケラバカバー材を正面から見たときの、そのケラバカバー材の骨組を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、図面において、X方向は、軒棟方向を示し、Y方向は、内外方向を示し、Z方向は、鉛直方向を示す。内外方向は、軒棟方向に直交する方向であって、屋根下地の上面に含まれる。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。
【0010】
また、以下の説明で、ケラバカバー材50,150の説明に関して、鉛直方向に関連する文言、例えば、鉛直方向、水平方向、上側、下側等が用いられた場合、それは、ケラバカバー材50,150が建造物に適切に設置された状態で表現されているものとする。また、以下では、建築物が、家屋である場合について説明するが、建築物は、屋根がある建物であれば如何なる建物でもよい。また、以下では、ケラバカバー材50を含む屋根構造1が、切妻屋根に含まれる場合を例に説明を行う。しかし、本開示のケラバカバー材は、越し屋根、招き造り屋根、片流れ屋根、入母屋屋根、越折れ屋根、差し掛け屋根、又は鋸屋根等に含まれてもよい。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0011】
図1は、建築物の一例としての家屋5の一部を示す斜視図であり、本開示の一実施形態に係るケラバカバー材50を含む屋根構造1の概要を説明する斜視図である。図1に示すように、屋根構造1は、屋根下地(図示せず)、複数の屋根材10、複数の導水板20、及びケラバカバー材50を備える。屋根下地は、野地板等で構成される。また、屋根材10は、如何なる屋根材でもよいが、例えば、セメントで構成される平板状のスレート、陶器で構成される平板状の瓦、又は金属製の瓦等で好適に構成される。また、導水板20及びケラバカバー材50は、如何なる材料で構成されてもよいが、好ましくは金属材料で構成される。導水板20及びケラバカバー材50の少なくとも一方は、雨水や太陽光による劣化が少ない高耐候性を有する素材で被覆されてもよく、例えば、フッ素塗装等で設けられた被覆部を有してもよい。
【0012】
屋根材10及び導水板20の夫々は、締結部材、例えば、釘、ねじ、又はビス等で屋根下地に取り付けられる。屋根材10及び導水板20は、内外方向に関して、例えば、隣り合うように複数配置される。また、図1に示す例では、屋根材10の外露出部10aと導水板20の外部露出部20aは、例えば、軒棟方向に交互に配置されているが、そのように配置されなくてもよい。
【0013】
各導水板20は、複数の突条部21を含む。複数の突条部21は、軒棟方向に互いに間隔をおいて配置され、各突条部21は、屋根下地の上面の法線方向に上側に突出し、内外方向に延在する。また、ケラバカバー材50は、屋根構造1の内外方向の端部に配置され、屋根下地と屋根材とを備えた屋根のケラバをカバーする。より詳しくは、ケラバカバー材50は、屋根下地のケラバ側(妻側)の端部に沿って葺設された屋根材10のケラバ側端部、のぼり木71(図4参照)におけるケラバ側の側面71b(図4参照)、及び破風75(図4参照)の上部を覆う。ケラバカバー材50は、側面視が矩形状の突条片55を含み、突条片55は、鉛直方向に突出すると共に軒棟方向に延在する。各導水板20は、突条片55に対して内外方向に間隔をおいて配置され、その結果、導水板20と突条片55の間には、雨水を下方に流すための通路3が設けられる。通路3は、屋根材10の上面等で構成されて棟から軒先まで軒棟方向に延在する。
【0014】
図2は、ケラバカバー材50の斜視図であり、図3は、ケラバカバー材50を別の方向から見たときの斜視図である。図2に示すように、ケラバカバー材50は、α方向に延在する細長い形状を有し、ケラバカバー材50の高さ方向であるγ方向と、α方向及びγ方向に直交するβ方向と、を含む切断面の形状は、α方向の位置によらず略同一になっている。上述の突条片55は、α方向に延在し、β方向は、ケラバカバー材50の幅方向に一致する。ケラバカバー材50が家屋5に適切に設置された状態で、α方向は、軒棟方向に一致し、β方向は、内外方向に一致し、γ方向は、鉛直方向に一致する。
【0015】
図3に示すように、ケラバカバー材50は、ケラバに設置された状態で、ケラバの上面をカバーする上面カバー片52と、上面カバー片52よりも内外方向の内側に位置する部分を有し、屋根下地と屋根材10との間に位置する内側水切り片61と、上面カバー片52の外側端から下方のみに延びてケラバの側面をカバーする側面カバー片51と、上面カバー片52の外側端よりも内側の位置から上方に突出する突条片55と、を備える。また、突条片55の高さ方向の寸法は、側面カバー片51の高さ方向の寸法よりも小さくなっている。また、突条片55が、上面カバー片52の内外方向の中央よりも内側に位置している。また、突条片55が、内外方向において、一つの屋根材10の端部と略同じ位置にある。また、上面カバー片52の外側端が、内外方向において、ケラバの外側端と略同じ位置にある。
【0016】
詳しくは、ケラバカバー材50は、長尺矩形状の金属板を折り曲げ加工して形成されると好ましい。ケラバカバー材50は、側面カバー片51、第1上面カバー片53、突条片55、及び内側水切り片61に加えて、第2上面カバー片57と、側面対向片59を備える。上面カバー片52は、第1上面カバー片53と、第2上面カバー片57を含む。側面カバー片51は、金属板の一方の長辺を下方にした状態で、屋根下地70を構成するのぼり木71(図4参照)、野地板73(図4参照)、破風75(図4参照)の上部を側方から覆うことが可能なγ方向寸法を有する。側面カバー片51は平板形状を有し、側面カバー片51の幅方向は、γ方向に略一致し、側面カバー片51の長手方向は、α方向に略一致する。側面カバー片51は、下端部を内側にハゼ折りとすることが好ましく、その場合、その下端部で下方へ落ちる水滴の水切りを効果的に実行できる。第1上面カバー片53は、例えば、側面カバー片51の上端部を略直角に折り曲げることで形成される。第1上面カバー片53の幅方向は、β方向に一致し、のぼり木71の上面を覆うことが可能なβ方向寸法を有する。β方向は、側面カバー片51の延在方向に直交する内外方向に略一致する。
【0017】
突条片55は、2重に重ねられた第1及び第2板状部55a及び55bを含む。第1板状部55aは、第1上面カバー片53のβ方向の屋根構造1の中央側(以下、屋根構造1の中央側を単に中央側という)の端部を略直角に上側に折り曲げることで形成され、第2板状部55bは、第1板状部55aの上端部を略180°折り返すことで形成される。第1及び第2板状部55a,55bの夫々は、鉛直方向に突出し、その結果、突条片55も鉛直方向に突出する。突条片55のγ方向の高さは、如何なる高さでもよく、第1上面カバー片53におけるβ方向の寸法よりも小さくてもよい。
【0018】
第2上面カバー片57は、第1及び第2板状部57a及び57bを含む。第1板状部57aは、突条片55の第2板状部55bの下端部をβ方向の中央側に折り曲げることで形成される。第1板状部57aは、β方向の中央側に延在していればよく、β方向に略平行に延在する。また、第2板状部57bは、第1板状部57aのβ方向の中央側の端部を、折り返すことで形成される。第2板状部57bは、屋根材10の内外方向の端部を上方から覆い、第2板状部57bの下面は、屋根材10の端部の上面の少なくとも一部に鉛直方向に対向する。
【0019】
第1板状部57aの下面と第2板状部57bの上面は、金属板が挿入可能な程度の隙間を介してγ方向に対向すると好ましい。また、図3に示すように、第2板状部57bが、β方向のケラバ側に行くにしたがって下方に移動するように傾斜すると、屋根材10と第2板状部57bの下面との間に浸入した雨水を下方に流下させ易くなる。よって、雨水が、屋根材10と第2板状部57bの下面との間に長期間溜まりにくくて、屋根材10や第2板状部57bが腐食を引き起こしにくい。また、第2板状部57bが、そのように傾斜すると、第2板状部57bが、屋根材10を内外方向の側面対向片59側に差し込むときのガイドとなる。よって、屋根材10を内外方向の側面対向片59側に差し込み易い。
【0020】
側面対向片59は、第2板状部57bのβ方向のケラバ側の端部をγ方向下側に折り曲げることで形成される。内外方向に関して、側面対向片59は、屋根材10とのぼり木71(図4参照)の間に位置する。また、内側水切り片61は、側面対向片59の下端部をβ方向中央側にβ方向に一致するように折り曲げることで形成される。内側水切り片61の幅方向は、β方向に略一致し、内側水切り片61は、α方向に延在する。
【0021】
図3に示すように、内側水切り片61は、複数の突条部63を有すると好ましい。複数の突条部63は、β方向に間隔をおいて配置され、内側水切り片61のα方向の一端から他端まで形成される。また、内側水切り片61におけるβ方向中央側の端部61aを、上側にハゼ折りすると好ましい。
【0022】
第2上面カバー片57、側面対向片59、及び内側水切り片61は、β方向中央側に開口する凹部68を画定する。ケラバカバー材50が、家屋5に適切に設置されている状態で、凹部68には、屋根材10の内外方向のケラバ側の端部が収容される。複数の突条部63、及びハゼ折りされた端部61aは、例えば、次の目的で設けられる。詳しくは、凹部68の内面と屋根材10との間に浸入した雨水が、内外方向の中央側に移動すると好ましくない。突条部63やハゼ折りされた端部61aは、凹部68の内面と屋根材10との間に浸入した雨水が内外方向の中央側に移動することを抑制し、当該雨水を軒棟方向に棟側から軒側に流動させるために設けられる。
【0023】
次に、ケラバカバー材50の設置について説明する。図4は、ケラバカバー材50を取り外した状態の屋根構造1における図1に対応する斜視図である。図4に示すように、屋根構造1は、内外方向のケラバ側の端部にのぼり木71を備え、のぼり木71は、軒棟方向に延在する。また、のぼり木71における内外方向の中央側の側面と、屋根材10において内外方向に延在する側面とは、間隔をおいて内外方向に対向し、図4に示す状態で、野地板73の一部73aが外部に露出する。
【0024】
図3及び図4を参照して、先ず、最も内外方向のケラバ側に位置する屋根材15の内外方向のケラバ側の端部を、ケラバカバー材50の凹部68に差し込む。この状態で、第1上面カバー片53が、のぼり木71の上面71aを覆い、側面カバー片51が、のぼり木71の側面71b、破風75の上部を側方から覆った状態となる。また、突条片55が、屋根材15の上面よりも鉛直方向上側に突出した状態となる。その後、例えば、釘を側面カバー片51の内外方向外側から側面カバー片51及びのぼり木71の側面71bに打ち込むことで、ケラバカバー材50がのぼり木71に固定され、屋根構造1が形成される。
【0025】
次に、図5を用いて、屋根構造1を流下する雨水の流れについて説明する。雨水は、例えば、図5に矢印δで示す経路で屋根構造1の上面上を流下する。詳しくは、降雨によって棟側から軒側に軒棟方向に流下して導水板20に到達した雨水は、雨量に基づいて導水板20の突条部21を1つも乗り越えないか、又は1以上の突条部21を乗り越える。例えば、図5には、雨水の一部が上側から2つの突条部21を乗り越える場合が図示されている。この場合、雨水の一部は、最も棟側の突条部21における棟側の側面で内外方向の端側に案内されて、上述の通路3に到達する。また、他の雨水の一部は、最も棟側の突条部21を乗り超え、棟側から数えて2番目の突条部21における棟側の側面で内外方向の端側に案内されて、上述の通路3に到達する。また、更なる他の雨水の一部は、棟側から数えて2つの突条部21を乗り越え、棟側から数えて3番目の突条部21における棟側の側面で内外方向の端側に案内されて、上述の通路3に到達する。そして、異なる3つのルートを通って通路3に到達した雨水は、軒棟方向に延在する通路3を軒側に流下する。なお、通路3の一部は、第2上面カバー片57の第1板状部57a(図3参照)の上面で構成される。
【0026】
図5に示すように、家屋5は、例えば、建物の軒先側の壁部60に取り付けられた集水桝65と、集水桝65の下側端部に接続された竪樋67を備える。集水桝65は、その集水口69の内外方向の存在範囲が通路3の内外方向の存在範囲を含むように壁部60に取り付けている。このため、雨水は、通路3に沿って流下して通路3の軒先に到達した後に集水口69に効率良く流入する。集水口69から集水桝65内に流入した雨水は、竪樋67を通過した後、地上又は下水の方に流れるようになっている。
【0027】
また、ケラバカバー材50が、内外方向のケラバ側の端部に設置されているので、雨水がケラバ側から外部に飛散することを抑制できる。詳しくは、突条片55が、通路3の内外方向の端側の側面を画定し、鉛直方向に突出すると共に軒棟方向に延在している。したがって、雨水が豪雨時等に突条部21の側面を伝って通路3側に内外方向に勢い良く飛び出したとしても、突条片55に衝突して通路3側にはね返される。よって、通路3側に勢い良く飛び出した雨水が、家屋の外部にそのまま飛散することを効果的に抑制できる。なお、ケラバカバー材50は、屋根構造1の妻側の端部を化粧する役割も担っている。
【0028】
図5に示すように、屋根構造1では、軒棟方向の棟側に配置される棟側導水板30の複数の突条部21に関し、突条部21の法線方向(屋根下地の上面の法線方向)の高さが、軒側に行くにしたがって高くなっている。したがって、隣り合う突条部21間のスペースで収容しきれなくなって、その突条部21を乗り越えて軒側にこぼれた雨水が、その突条部21よりも1つ軒側の突条部21を通過することがなく、1つ軒側の突条部21で確実に堰き止められる。よって、棟側導水板30により多くの雨水を溜めることができるので、大量の雨水が一気に集水桝65に流れ込むことを抑制でき、雨水が集水桝65からこぼれることを抑制できる。
【0029】
また、軒棟方向の軒側に配置される軒側導水板35の複数の突条部21に関し、突条部21の上記法線方向の高さが略一定となっている。したがって、その複数の突条部21の棟側で溜めることが可能な雨水の容量を大きくできる。よって、例えば、集中豪雨が発生して、大量の雨水が棟側導水板30の複数の突条部21を乗り越えて軒棟方向に流下して、軒側導水板35に到達したとしても、その大量の雨水が軒先から外部に飛散することを効果的に抑制できる。なお、屋根構造は、導水板を1つも備えていなくてもよく、例えば、図5に示す屋根構造1において、全ての導水板20を屋根材10に取り換えてもよい。
【0030】
以上、ケラバカバー材50は、屋根下地と屋根材とを備えた屋根のケラバをカバーする。また、ケラバカバー材50は、ケラバに設置された状態で、ケラバの上面をカバーする上面カバー片52と、上面カバー片52よりも内外方向の内側に位置する部分を有し、屋根下地と屋根材15との間に位置する内側水切り片61と、上面カバー片52の外側端から下方のみに延びてケラバの側面をカバーする側面カバー片51と、上面カバー片52の外側端よりも内側の位置から上方に突出する突条片55と、を備える。
【0031】
したがって、突条片55と側面カバー片51との内外方向の間に内外方向に延在する上面カバー片52の少なくとも一部(第1上面カバー片53)が存在する。したがって、雨水が突条片55を飛び越えたとしても、第1上面カバー片53でその飛び越えた雨水を受け止めることができ、その雨水を第1上面カバー片53上を軒棟方向の軒側に誘導できる。よって、雨水がケラバから下方に飛散することを抑制できる。また、外側からの雨水も、第1上面カバー片53で受けて軒側に誘導することもできる。
【0032】
また、特許文献1のケラバカバー材の場合、突条片55に対応する立設板がケラバの端部に位置しているので、立設板を伝って流下してきた雨水を確実に軒樋や集水桝に収容するため、軒樋や集水桝をケラバよりも外側まで設けなければならず、美観も良くないものになり易い。これに対し、ケラバカバー材50によれば、突条片55がケラバの端よりも内外方向の中央側に位置するので、軒樋や集水桝をケラバの内側に納めることができる。よって、屋根構造1や家屋5をスリムで美観に優れるものにできる。
【0033】
更には、特許文献1のケラバカバー材の場合、突条片55に対応する立設板がケラバの端部に存在しているので、立設板を飛び越えた雨水は、内外方向の大きな速度成分を有し、ケラバから内外方向の遠方まで飛散し易い。これに対し、本開示のケラバカバー材50の場合、雨水が第1上面カバー片53へ接触してから下方に落下することになるので、第1上面カバー片53に対する付着力によって雨水の内外方向の速度成分が小さくなり、雨水が内外方向の遠方まで飛散しにくい。よって、ケラバ側の下方に位置する人が雨水の影響を受けにくい。
【0034】
また、突条片55が、上面カバー片52の内外方向の中央よりも内側に位置してもよい。
【0035】
本構成によれば、上面カバー片52において屋根材10側から流れて突条部55を乗り越える部分の面積を大きくでき、屋根材10側から突条片55を乗り越えた雨水のより多くを、上面カバー片52の上面を伝わせて軒側に誘導できる。
【0036】
また、突条片55が、内外方向において、屋根材15の端部と略同じ位置にあってもよい。
【0037】
本構成によれば、内外方向に関して、突条片55の位置と、屋根材15の端部の位置とが揃うので、美観が良好なものになり易い。
【0038】
また、上面カバー片52の外側端が、内外方向において、ケラバの外側端と略同じ位置にあってもよい。
【0039】
本構成によれば、軒樋や集水桝をより確実にケラバよりも内側に収めることができる。
【0040】
また、突条片55の鉛直方向(γ方向)の高さが、第1上面カバー片53における内外方向(β方向)の寸法よりも小さくてもよい。
【0041】
本構成によれば、第1上面カバー片53の上面が、突条片55を乗り越えた雨水を受け止め易い。よって、ケラバ側の下方に位置する人が雨水の影響を更に受けにくくなる。
【0042】
また、ケラバカバー材50が、複数の折曲部を有する一体の金属板で構成されてもよい。
【0043】
本構成によれば、ケラバカバー材50を簡単安価に製造できる。また、ケラバカバー材を溶接を用いて形成した場合との比較で、ケラバカバー材50の水遮断性を高くできる。詳しくは、ケラバカバー材50は、のぼり木71側への外部雨水の浸入を防止する役割も担うが、溶接を用いて製造された場合、溶接個所が軒棟方向の長い範囲に及ぶことになるので、ピンホールが溶接個所に生じ易い。よって、雨水がそのピンホールを介してのぼり木71側に浸入して、のぼり木71が劣化し易くなる虞がある。これに対し、ケラバカバー材50を、一体の金属板を折り曲げて形成する場合、ピンホールが生じることがないので、外部の雨水がケラバカバー材50を通過してのぼり木71側に流動することがない。よって、のぼり木71を長期に亘って良好な状態にできる。
【0044】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、ケラバカバー材50が、一体の金属板を折り曲げて形成する場合について説明した。しかし、ケラバカバー材は、2以上の部材を組み合わせて形成されてもよい。例えば、図6、すなわち、変形例のケラバカバー材150の斜視図に示すように、ケラバカバー材150は、水返し部材170と、屋根材結合部材180を備えてもよい。また、水返し部材170が、突条片155と、上面カバー片152を有してもよく、屋根材結合部材180が、側面対向片159と、内側水切り片161を有してもよい。また、上面カバー片152が、内外方向の内方側の端部に第1係止部152aを有し、側面対向片159が、その上端部に第2係止部159aを有してもよい。そして、ケラバカバー材150を、第1係止部152aと第2係止部159aを係合することで形成してもよい。なお、第1係止部152aと第2係止部159aの係合には、図6に示すハゼ折りを用いてもよく、それ以外の構造、例えば、凹凸構造(インロー構造)等を用いてもよい。また、これに関連して、上記実施形態では、突条片55が、2重に重ねられた第1及び第2板状部55a及び55bを含む場合について説明したが、この変形例のように、突条片155は、一つの板状部で構成されてもよい。
【0046】
また、図3に示すように、内側水切り片61が、側面カバー片51に対して内外方向に間隔をおいて位置している場合について説明した。しかし、図7、すなわち、別の変形例のケラバカバー材250を正面から見たときの、そのケラバカバー材250の骨組を表す模式図に示すように、内側水切り片261が側面カバー片251から内外方向の内側に延在する構成でもよい。また、図3に示すように、側面カバー片51が、上面カバー片52の内外方向の外端から下側に延在する場合について説明した。しかし、図8、更なる変形例のケラバカバー材350を正面から見たときの、そのケラバカバー材350の骨組を表す模式図に示すように、上面カバー片352が、側面カバー片351よりも内外方向の外方に突出している部分352aを有してもよい。
【0047】
なお、図3を参照して、側面カバー片51、上面カバー片52、及び側面対向片59等は、γ方向下側及びα方向の両側に開口する凹部77を画定する。ここで、ケラバカバー材の軒側の先端部は、凹部77のα方向の軒側開口を塞ぐか、又は小さくするように内側に折り曲げられてもよい。又は、キャップを凹部77の軒側開口から凹部77内に収容してもよく、キャップにおける軒側の端面で凹部77の軒側開口を塞ぐようにしてもよい。このようにすれば、軒側下方から見たときの屋根構造1の美観を優れたものにできる。
【符号の説明】
【0048】
1 屋根構造、 5 家屋、 10,15 屋根材、 50,150,250,350 ケラバカバー材、 51 側面カバー片、 52,352 上面カバー片、 55,155 突条片、 61,161 内側水切り片。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8