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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】基板作業装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230517BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H05K13/04 M
H05K13/08 Q
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019075415
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020174136
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】春日 大介
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038339(JP,A)
【文献】特開2017-168619(JP,A)
【文献】特開2019-040966(JP,A)
【文献】特開2013-229374(JP,A)
【文献】特開2014-120724(JP,A)
【文献】特開2004-186308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が実装される基板に作業を行う作業部と、
前記作業部を移動させる移動機構部と、
前記移動機構部の熱伸びに起因する補正を行うための位置基準部と、
前記位置基準部を撮像する撮像部と、
前記撮像部による前記位置基準部の撮像結果に基づいて、前記位置基準部の位置に関する情報を取得するとともに、取得された前記位置基準部の位置に関する情報に基づいて、前記位置基準部がしきい値により定義される正常範囲外に位置すると判断した場合、前記位置基準部が正常な位置からずれたという前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行う制御部と、を備える、基板作業装置。
【請求項2】
前記制御部は、今回の前記位置基準部の位置に関する情報と、過去の前記位置基準部の位置に関する情報との比較結果、または、今回の前記位置基準部の位置に関する情報と、シミュレーションの前記位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の基板作業装置。
【請求項3】
今回の前記位置基準部の位置に関する情報と、過去の前記位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する場合、前記制御部は、今回の前記位置基準部の位置に関する情報と、過去の前記位置基準部の位置に関する傾向を示す情報との比較結果に基づいて、前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の基板作業装置。
【請求項4】
前記位置基準部の位置に関する情報は、前記位置基準部の位置変化量の情報を含み、
過去の前記位置基準部の位置に関する傾向を示す情報は、複数の過去の前記位置基準部の位置変化量の情報を含み、
前記制御部は、今回の前記位置基準部の位置変化量と、複数の過去の前記位置基準部の位置変化量の各々との差分を取得するとともに、取得された前記差分と予め決められた第1しきい値との比較結果に基づいて、前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている、請求項3に記載の基板作業装置。
【請求項5】
今回の前記位置基準部の位置に関する情報と、過去の前記位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する場合、前記制御部は、今回の前記位置基準部の位置に関する情報と、前回の前記位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の基板作業装置。
【請求項6】
前記位置基準部は、複数の位置基準部を含み、
前記位置基準部の位置に関する情報は、前記位置基準部の位置変化量の情報を含み、
前記制御部は、前記複数の位置基準部の各々の、今回の位置変化量と前回の位置変化量との差分を取得するとともに、取得された前記差分と予め決められた第2しきい値との比較結果に基づいて、前記位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている、請求項5に記載の基板作業装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、前記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された状態でも前記基板の生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行うように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、前記移動機構部の熱伸びに起因する補正であって、前記位置基準部の位置ずれによる異常の検知に用いられた前記位置基準部の位置に関する情報に基づく補正である仮の補正を行い、前記移動機構部の熱伸びに起因する仮の補正を行った状態で、前記撮像部により前記位置基準部または他の特徴点を撮像させるとともに、前記撮像部による前記位置基準部または前記他の特徴点の撮像結果に基づいて、前記基板の生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行うように構成されている、請求項7に記載の基板作業装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合に、前記基板の生産を継続する場合、前記位置基準部の位置ずれ量に基づいて、位置ずれによる異常が検知された前記位置基準部の位置の情報を補正して登録した状態で、前記基板の生産を継続する制御を行うように構成されている、請求項7または8に記載の基板作業装置。
【請求項10】
前記撮像部は、第1時間間隔により前記位置基準部の撮像を行うように構成されており、
前記制御部は、前記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合に、前記基板の生産を継続する場合、前記撮像部により前記位置基準部の撮像を行う時間間隔を、前記第1時間間隔よりも短い時間間隔である第2時間間隔に設定する制御を行うように構成されている、請求項7~9のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合に、前記基板の生産を継続する場合、作業者への通知を行うように構成されている、請求項7~10のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、前記移動機構部の熱伸びに起因する補正であって、前記位置基準部の位置ずれによる異常の検知に用いられた前記位置基準部の位置に関する情報に基づく補正である仮の補正を行うように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の基板作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板作業装置に関し、特に、移動機構部の熱伸びに起因する補正を行う基板作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動機構部の熱伸びに起因する補正を行う基板作業装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、XY駆動機構(移動機構部)により装着ヘッドを移動させて、基板に部品を実装する部品実装機(基板作業装置)が開示されている。この部品実装機は、装着ヘッドの移動に伴ってXY駆動機構に熱伸びが発生するため、XY駆動機構の熱伸びに起因する補正を行うように構成されている。XY駆動機構の熱伸びに起因する補正は、カメラによる撮像を行うとともに、カメラによる撮像データをデータ処理することにより行われる。なお、上記特許文献1には明記されていないが、カメラは、熱伸び補正用の位置基準マークの撮像を行うと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6423448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されるような部品実装機では、たとえば外力に起因して熱伸び補正用の位置基準マークに異常な位置ずれが発生した場合、異常な位置ずれが発生した位置基準マークに基づいて、誤った熱伸び補正が行われるおそれがあるという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、異常な位置ずれが発生した位置基準部に基づいて、誤った熱伸び補正が行われることを抑制することが可能な基板作業装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による基板作業装置は、部品が実装される基板に作業を行う作業部と、作業部を移動させる移動機構部と、移動機構部の熱伸びに起因する補正を行うための位置基準部と、位置基準部を撮像する撮像部と、撮像部による位置基準部の撮像結果に基づいて、位置基準部の位置に関する情報を取得するとともに、取得された位置基準部の位置に関する情報に基づいて、位置基準部がしきい値により定義される正常範囲外に位置すると判断した場合、位置基準部が正常な位置からずれたという位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
この発明の一の局面による基板作業装置では、上記のように、位置基準部の位置に関する情報に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行う制御部を設ける。これにより、たとえば外力に起因して位置基準部に異常な位置ずれ(位置基準部に位置ずれによる異常)が発生した場合、位置基準部に異常な位置ずれが発生したことを検知することができる。その結果、異常な位置ずれが発生した位置基準部に基づいて、誤った熱伸び補正が行われることを抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、今回の位置基準部の位置に関する情報と、過去の位置基準部の位置に関する情報との比較結果、または、今回の位置基準部の位置に関する情報と、シミュレーションの位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、正常な位置に位置基準部が位置する場合の情報である、過去の位置基準部の位置に関する情報、または、シミュレーションの位置基準部の位置に関する情報と、今回の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)を検知することができるので、位置基準部に異常な位置ずれが発生したことを容易かつ確実に検知することができる。
【0010】
上記今回の位置基準部の位置に関する情報と、過去の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する構成において、好ましくは、今回の位置基準部の位置に関する情報と、過去の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する場合、制御部は、今回の位置基準部の位置に関する情報と、過去の位置基準部の位置に関する傾向を示す情報との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、過去の位置基準部の位置に関する傾向を示す情報に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)を精度良く検知することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、位置基準部の位置に関する情報は、位置基準部の位置変化量の情報を含み、過去の位置基準部の位置に関する傾向を示す情報は、複数の過去の位置基準部の位置変化量の情報を含み、制御部は、今回の位置基準部の位置変化量と、複数の過去の位置基準部の位置変化量の各々との差分を取得するとともに、取得された差分と予め決められた第1しきい値との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、今回の位置基準部の位置変化量と、複数の過去の位置基準部の位置変化量の各々との差分と、第1しきい値とを比較するだけで、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)を容易かつ確実に検知することができる。
【0012】
上記今回の位置基準部の位置に関する情報と、過去の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する構成において、好ましくは、今回の位置基準部の位置に関する情報と、過去の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する場合、制御部は、今回の位置基準部の位置に関する情報と、前回の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、今回の位置基準部の位置に関する情報と、前回の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)を容易に検知することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、位置基準部は、複数の位置基準部を含み、位置基準部の位置に関する情報は、位置基準部の位置変化量の情報を含み、制御部は、複数の位置基準部の各々の、今回の位置変化量と前回の位置変化量との差分を取得するとともに、取得された差分と予め決められた第2しきい値との比較結果に基づいて、位置基準部の位置ずれによる異常を検知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、今回の位置基準部の位置変化量と、前回の位置基準部の位置変化量との差分と、第2しきい値とを比較するだけで、複数の位置基準部の各々の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)を容易かつ確実に検知することができる。
【0014】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、位置基準部の位置ずれによる異常が検知された状態でも基板の生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)が、基板の生産が継続可能な位置ずれである場合、基板作業装置による基板の生産を継続することができる。その結果、基板作業装置の停止時間を低減することができる。また、位置基準部の異常な位置ずれが、基板の生産が継続不可能な位置ずれである場合、基板作業装置による基板の生産を停止することができる。その結果、基板の生産を停止した基板作業装置における位置基準部の位置の修正などの整備を迅速に行うことができる。
【0015】
この場合、好ましくは、制御部は、位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、移動機構部の熱伸びに起因する補正であって、位置基準部の位置ずれによる異常の検知に用いられた位置基準部の位置に関する情報に基づく補正である仮の補正を行い、移動機構部の熱伸びに起因する仮の補正を行った状態で、撮像部により位置基準部または他の特徴点を撮像させるとともに、撮像部による位置基準部または他の特徴点の撮像結果に基づいて、基板の生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、仮の補正を行った状態での位置基準部または他の特徴点の撮像結果に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)が、基板の生産が継続可能な位置ずれであるか否かを判断することができる。その結果、位置基準部の異常な位置ずれが検知された状態でも基板の生産が継続可能であるか否かを容易かつ確実に判断することができる。
【0016】
上記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、基板の生産が継続可能であるか否かを判断する構成において、好ましくは、制御部は、位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合に、基板の生産を継続する場合、位置基準部の位置ずれ量に基づいて、位置ずれによる異常が検知された位置基準部の位置の情報を補正して登録した状態で、基板の生産を継続する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、補正して登録された位置基準部の位置の情報(すなわち、位置ずれが反映された位置基準部の位置の情報)に基づいて、基板の生産の継続後の撮像部による位置基準部の撮像を行うことができる。その結果、基板の生産の継続後において、異常な位置ずれ(位置ずれによる異常)が検知された位置基準部の撮像部による撮像を正確に行うことができる。
【0017】
上記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、基板の生産が継続可能であるか否かを判断する構成において、好ましくは、撮像部は、第1時間間隔により位置基準部の撮像を行うように構成されており、制御部は、位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合に、基板の生産を継続する場合、撮像部により位置基準部の撮像を行う時間間隔を、第1時間間隔よりも短い時間間隔である第2時間間隔に設定する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)が検知された場合に、基板の生産を継続する場合、通常時の時間間隔である第1時間間隔よりも短い時間間隔である第2時間間隔により、撮像部による位置基準部の撮像を行うことができる。その結果、位置基準部の次の異常な位置ずれを迅速に検知することができる。
【0018】
上記位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、基板の生産が継続可能であるか否かを判断する構成において、好ましくは、制御部は、位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合に、基板の生産を継続する場合、作業者への通知を行うように構成されている。このように構成すれば、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)が検知された状態で、基板の生産が継続されたことを、作業者が認識することができる。
【0019】
上記一の局面による基板作業装置において、好ましくは、制御部は、位置基準部の位置ずれによる異常が検知された場合、移動機構部の熱伸びに起因する補正であって、位置基準部の位置ずれによる異常の検知に用いられた位置基準部の位置に関する情報に基づく補正である仮の補正を行うように構成されている。このように構成すれば、位置基準部の異常な位置ずれ(位置基準部の位置ずれによる異常)が検知された場合にも、熱伸びに起因する補正(仮の補正)を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記のように、異常な位置ずれが発生した位置基準部に基づいて、誤った熱伸び補正が行われることを抑制することが可能な基板作業装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1および第2実施形態の基板作業装置を示す模式的な平面図である。
図2】第1および第2実施形態の基板作業装置の制御的な構成を示すブロック図である。
図3】第1および第2実施形態の基板作業装置の位置基準部を説明するための模式図である。
図4】(A)は、第1および第2実施形態の基板作業装置の熱伸びがない状態の撮像結果を説明するための模式図である。(B)は、第1および第2実施形態の基板作業装置の熱伸びがある状態の撮像結果を説明するための模式図である。
図5】第1および第2実施形態の基板作業装置の外力による位置基準部の位置ずれを説明するための模式図である。
図6】第1実施形態の基板作業装置の位置基準部の異常な位置ずれの検知を説明するための模式図である。
図7】第1実施形態の基板作業装置の位置基準部位置ずれ検知処理を説明するためのフローチャートである。
図8】第1実施形態の基板作業装置の基板生産継続判断処理を説明するためのフローチャートである。
図9】第2実施形態の基板作業装置の位置基準部の異常な位置ずれの検知を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1図8を参照して、本発明の第1実施形態による基板作業装置100の構成について説明する。なお、以下の説明では、基板搬送方向に沿った方向をX方向とし、水平面内でX方向と直交する方向をY方向とし、X方向およびY方向に直交する上下方向をZ方向とする。
【0024】
(基板作業装置の構成)
基板作業装置100は、図1および図2に示すように、IC、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの部品E(電子部品)を、プリント基板などの基板Pに実装する部品実装装置(表面実装機)である。
【0025】
基板作業装置100は、基台1と、搬送部2と、ヘッドユニット3と、ヘッド水平移動機構部4と、部品撮像部5と、基板撮像部6と、表示部7(図2参照)と、制御部8(図2参照)とを備えている。なお、ヘッドユニット3は、特許請求の範囲の「作業部」の一例である。また、ヘッド水平移動機構部4は、特許請求の範囲の「移動機構部」の一例である。また、基板撮像部6は、特許請求の範囲の「撮像部」の一例である。
【0026】
基台1は、基板作業装置100において各構成要素を配置する基礎となる台である。基台1上には、搬送部2、レール部42および部品撮像部5が設けられている。また、基台1内には、制御部8が設けられている。また、基台1には、Y方向の両側(Y1方向側およびY2方向側)に、部品供給装置11がそれぞれ配置されている。
【0027】
部品供給装置11は、基板Pに実装される部品Eを供給する装置である。部品供給装置11は、たとえば、テープフィーダ12を含んでいる。テープフィーダ12は、複数の部品Eを保持した部品供給テープ(図示せず)が巻き回されたリール(図示せず)を保持している。また、テープフィーダ12は、ヘッドユニット3による部品Eの取出しのための部品吸着動作に応じて、保持されたリールを回転させて部品供給テープを送り出すことにより、部品Eを供給するように構成されている。基台1では、Y方向の両側のそれぞれにおいて、複数のテープフィーダ12がX方向に並んで配列されている。なお、部品供給装置11は、部品Eを保持したトレイにより部品Eを供給するトレイフィーダを含んでいてもよい。
【0028】
搬送部2は、実装前の基板Pを搬入し、基板搬送方向(X方向)に搬送し、実装後の基板Pを搬出するように構成されている。また、搬送部2は、搬入された基板Pを実装停止位置Aまで搬送するとともに、実装停止位置Aにおいて基板固定機構(図示せず)により固定するように構成されている。また、搬送部2は、一対の搬送部分21を含んでおり、一対の搬送部分21により、基板PのY方向の両端を下方(Z2方向側)から支持しつつ、基板Pを基板搬送方向に搬送するように構成されている。一対の搬送部分21は、搬送ベルトと、搬送ガイドとを含んでいる。
【0029】
ヘッドユニット3は、基板Pに部品を実装する作業を行う部品実装用の作業部である。ヘッドユニット3は、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pに部品Eを実装する。ヘッドユニット3は、複数(5つ)のヘッド31(実装ヘッド)を含んでいる。ヘッド31の先端には、部品Eを保持(吸着)するためのノズル(吸着ノズル)(図示せず)が着脱可能に装着されている。ヘッド31は、負圧供給部(図示せず)からの負圧により、ノズルに部品Eを保持(吸着)可能に構成されている。
【0030】
また、ヘッドユニット3は、ヘッド31を上下方向(Z方向)に移動させるZ軸モータ32(図2参照)と、ヘッド31をZ方向に延びる回転軸線回りに回転させるR軸モータ33(図2参照)とを含んでいる。ヘッド31は、Z軸モータ32により、部品Eを保持する際かまたは保持された部品Eを実装する際の下降位置と、保持された部品Eを基板Pに搬送する際の上昇位置との間で、上下方向に移動可能に構成されている。また、ヘッド31は、部品Eを保持した状態でR軸モータ33により回転されることにより、保持している部品Eの向きを調整可能に構成されている。
【0031】
ヘッド水平移動機構部4は、ヘッドユニット3を水平方向(X方向およびY方向)に移動させるように構成されている。ヘッド水平移動機構部4は、ヘッドユニット3を基板搬送方向(X方向)に移動可能に支持する支持部41と、支持部41をY方向に移動可能に支持するレール部42とを含んでいる。支持部41は、基板搬送方向に延びるボールねじ軸41aと、ボールねじ軸41aを回転させるX軸モータ41bとを有している。ヘッドユニット3には、支持部41のボールねじ軸41aと係合するボールナット(図示せず)が設けられている。ヘッドユニット3は、X軸モータ41bによりボールねじ軸41aが回転されることにより、ボールねじ軸41aと係合するボールナットとともに、支持部41に沿って基板搬送方向に移動可能に構成されている。
【0032】
レール部42は、支持部41のX方向の両端部をY方向に移動可能に支持する一対のガイドレール42aと、Y方向に延びるボールねじ軸42bと、ボールねじ軸42bを回転させるY軸モータ42cとを有している。支持部41には、レール部42のボールねじ軸42bと係合するボールナット(図示せず)が設けられている。支持部41は、Y軸モータ42cによりボールねじ軸42bが回転されることにより、ボールねじ軸42bと係合するボールナットとともに、レール部42の一対のガイドレール42aに沿ってY方向に移動可能に構成されている。
【0033】
ヘッド水平移動機構部4の支持部41およびレール部42により、ヘッドユニット3は、基台1上を水平方向に移動可能に構成されている。これにより、ヘッドユニット3のヘッド31は、部品供給装置11の上方に移動して、部品供給装置11から供給される部品Eを保持(吸着)可能である。また、ヘッドユニット3のヘッド31は、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pの上方に移動して、保持(吸着)された部品Eを基板Pに実装可能である。
【0034】
部品撮像部5は、部品認識用のカメラである。部品撮像部5は、ヘッドユニット3のヘッド31による基板Pへの部品Eの搬送中に、ヘッド31のノズルに吸着された部品Eを撮像する。部品撮像部5は、基台1の上面上に固定されており、部品Eの下側(Z2方向側)から、ヘッド31のノズルに吸着された部品Eを撮像する。部品撮像部5による部品Eの撮像画像に基づいて、制御部8は、ヘッド31のノズルにおける部品Eの吸着状態(回転姿勢およびヘッド31に対する吸着位置)を取得(認識)する。
【0035】
基板撮像部6は、基板認識用のカメラである。基板撮像部6は、ヘッドユニット3のヘッド31による基板Pへの部品Eの実装開始前に、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pの上面に付された位置認識マークF(フィデューシャルマーク)を撮像する。位置認識マークFは、基板Pの位置を認識するためのマークである。基板撮像部6による位置認識マークFの撮像画像に基づいて、制御部8は、実装停止位置Aにおいて固定された基板Pの正確な位置および姿勢を取得(認識)する。また、基板撮像部6は、ヘッドユニット3に取り付けられている。これにより、基板撮像部6は、ヘッドユニット3と共に、水平方向に移動可能に構成されている。表示部7は、たとえば液晶モニタを含んでおり、情報を表示する。
【0036】
制御部8は、基板作業装置100の動作を制御する制御回路である。制御部8は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)などを含んでいる。制御部8は、搬送部2、部品供給装置11、X軸モータ41bおよびY軸モータ42cなどを生産プログラムに従って制御することにより、ヘッドユニット3により基板Pに部品Eを実装させる制御を行うように構成されている。
【0037】
(熱伸びに関する構成)
ここで、基板作業装置100により基板Pを生産している間、ヘッド水平移動機構部4のボールねじ軸41aやボールねじ軸42bなどでは、ヘッドユニット3の移動に伴って発生した熱に起因して、熱伸び(熱膨張)が発生する。ヘッド水平移動機構部4の熱伸びが発生する部分であるボールねじ軸41aやボールねじ軸42bなどに熱伸びが発生した場合、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びに起因して、基板作業装置100内の実際の位置と、基板作業装置100の機械座標位置との間にずれが発生する。
【0038】
このようなずれが発生した場合に、ヘッド水平移動機構部4により作業部であるヘッドユニット3を同じ機械座標位置に移動させるように制御した場合、ヘッドユニット3が移動される実際の位置は、ずれが発生していない場合とはずれた位置になる。すなわち、ヘッドユニット3を目標位置に正確に移動させることができない。このため、ヘッドユニット3による基板作業の作業精度が低下する。基板作業装置100では、このようなずれを補うように、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びに起因する補正を行う。
【0039】
具体的には、基板作業装置100には、図3に示すように、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びに起因する補正(以下、単に「熱伸び補正」という)を行うための位置基準部Mが設けられている。位置基準部Mは、熱伸び補正を行うための位置基準を示す専用の部材であり、搬送部2に設けられている。なお、位置基準部Mとしては、専用の部材を用いるのではなく、位置基準部Mの設置対象である搬送部2の特徴点(すなわち、特徴的な形を有する部分)を利用してもよいが、熱伸び補正の精度の観点からは、専用の部材を用いるのが好ましい。
【0040】
また、位置基準部Mは、複数(6つ)の位置基準部M1~M6を含んでいる。複数の位置基準部M1~M6のうち、半分の位置基準部である位置基準部M1、M3およびM5は、搬送部2の一方の搬送部分であるY1方向側の搬送部分21に設けられており、もう半分の位置基準部である位置基準部M2、M4およびM6は、搬送部2の他方の搬送部分であるY2方向側の搬送部分21に設けられている。位置基準部M1、M3およびM5と、位置基準部M2、M4およびM6とは、搬送部2において線対称状に配置されるように設けられている。また、位置基準部M1~M6は、実装停止位置Aの近傍に配置されるように設けられている。
【0041】
熱伸び補正を行う場合、制御部8は、位置基準部M1~M6の各々を撮像するように、基板撮像部6を制御する。具体的には、制御部8は、ヘッド水平移動機構部4により基板撮像部6を位置基準部M1~M6の各々の上方位置に移動させて、位置基準部M1~M6の各々を撮像するように、基板撮像部6を制御する。
【0042】
この際、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の上方位置を示す機械座標位置に移動するように、ヘッド水平移動機構部4により基板撮像部6を移動させる制御を行う。位置基準部M(M1~M6)の上方位置を示す機械座標位置は、図4(A)に示すように、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びがない状態において、位置基準部M(M1~M6)の撮像結果中の、位置基準部M(M1~M6)の基準位置C1と、と、基板撮像部6の基準位置C2とが略一致する位置である。なお、位置基準部M(M1~M6)の撮像結果中の位置基準部M(M1~M6)の基準位置C1は、たとえば、位置基準部M(M1~M6)の中心位置である。また、位置基準部M(M1~M6)の撮像結果中の基板撮像部6の基準位置C2は、たとえば、基板撮像部6の視野中心位置である。
【0043】
上記の通り、ヘッド水平移動機構部4に熱伸びが発生した場合、ヘッド水平移動機構部4によりヘッドユニット3を同じ機械座標位置に移動させるように制御しても、ずれが発生していない場合とはずれた位置に、ヘッドユニット3が移動される。このため、図4(B)に示すように、ヘッド水平移動機構部4に熱伸びが発生した場合、位置基準部M(M1~M6)の上方位置を示す機械座標位置に移動するように、ヘッド水平移動機構部4により基板撮像部6を移動させて、基板撮像部6により位置基準部M(M1~M6)を撮像させたとしても、位置基準部M(M1~M6)の撮像結果中の、位置基準部M(M1~M6)の基準位置C1と、基板撮像部6の基準位置C2とが一致しない。
【0044】
このため、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の撮像結果に基づいて、位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報を取得する。位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、位置基準部M(M1~M6)の位置変化量の情報を含んでいる。位置基準部M(M1~M6)の位置変化量の情報は、位置基準部M(M1~M6)のX方向の位置変化量である位置変化量Dx(Dx1~Dx6)の情報と、位置基準部M(M1~M6)のY方向の位置変化量である位置変化量Dy(Dy1~Dy6)の情報とを含んでいる。なお、位置変化量Dxは、位置基準部Mの撮像結果中の、位置基準部Mの基準位置C1と、基板撮像部6の基準位置C2とのX方向の位置ずれ量である。同様に、位置変化量Dyは、位置基準部Mの撮像結果中の、位置基準部Mの基準位置C1と、基板撮像部6の基準位置C2とのY方向の位置ずれ量である。位置変化量DxおよびDyは、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びの程度によって異なるが、たとえば、数μm~数十μm程度である。なお、図4では、理解の容易化のために、位置基準部Mの位置変化を誇張して示している。
【0045】
そして、制御部8は、取得された位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報に基づいて、ヘッド水平移動機構部4の熱伸び量を取得するとともに、取得されたヘッド水平移動機構部4の熱伸び量に基づいて、熱伸び補正を行う。また、ヘッド水平移動機構部4の熱伸び量は、基板Pの生産が進むに従って徐々に増加する傾向を示すため、制御部8は、予め決められた時間間隔により、定期的に熱伸び補正を行う。このため、基板撮像部6は、予め決められた時間間隔により、位置基準部M(M1~M6)の撮像を行うように動作される。なお、予め決められた時間間隔は、熱伸び補正を適切に行い得る限り、どのような時間間隔であってもよいが、たとえば、数分程度であり得る。
【0046】
ここで、図5に示すように、たとえば外力に起因して、熱伸び補正用の位置基準部Mに異常な位置ずれが発生することがある。図5では、一例として、位置基準部M4に異常な位置ずれが発生した例を示している。位置基準部Mの異常な位置ずれは、たとえば、基板作業装置100の整備中に、作業者が意図せずに(気づかずに)位置基準部Mに接触して発生することがある。位置基準部Mに異常な位置ずれが発生した場合、異常な位置ずれが発生した位置基準部Mに基づいて、誤った熱伸び補正が行われるおそれがある。
【0047】
そこで、第1実施形態では、制御部8は、熱伸び補正のタイミングにおいて熱伸び補正用に取得された位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報に基づいて、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれを検知する制御を行う。具体的には、制御部8は、図6に示すように、実測情報である今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報と、実測情報である過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれを検知する制御を行う。
【0048】
過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する傾向を示す情報を含んでいる。過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する傾向を示す情報は、複数の過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報(図6では、情報T1~Tn:nは、正の整数)を含んでいる。複数の過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、基板作業装置100の基板Pの生産動作開始から所定の時間までの、位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報を含んでいる。好ましくは、複数の過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びの初期から終期までの、位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報を含んでいる。複数の過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、たとえば、基板作業装置100のエイジング動作(いわゆる、慣らし運転)の際、基板作業装置100の過去の基板Pの生産動作の際などに、実績値として取得されて、基板作業装置100に保存されている。なお、複数の過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、異常な位置ずれが発生していない状態(すなわち、正常な位置状態)の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報のみを含んでいる。
【0049】
制御部8は、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報と、過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する傾向を示す情報との比較結果に基づいて、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれを検知する制御を行う。具体的には、制御部8は、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置変化量と、複数の過去の位置基準部M(M1~M6)の各々との差分を取得するとともに、取得された差分と、予め決められたしきい値(しきい値Thx1およびThy1)との比較結果に基づいて、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれを検知する制御を行う。なお、しきい値Thx1およびThy1は、特許請求の範囲の「第1しきい値」の一例である。
【0050】
図6に示す例では、まず、今回の位置基準部M1~M6の位置に関する情報である情報T0と、過去の位置基準部M1~M6の位置に関する情報である情報T1~Tnとが比較される。なお、図6では、理解の容易化のために、情報T1~Tnが、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びの小さい方から大きい方に向かって並ぶように示されている。すなわち、情報T1、T2およびT3などは、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びの初期において取得された、過去の位置基準部M1~M6の位置に関する情報を示している。また、情報Tnは、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びの終期において取得された、位置基準部M1~M6の位置に関する情報を示している。
【0051】
情報T0と情報T1~Tnの比較においては、具体的には、情報T0の位置変化量Dx1~Dx6と、情報T1~Tnの対応する位置変化量Dx1~Dx6とが比較される。この際、情報T0の位置変化量Dx1~Dx6と、情報T1~Tnの対応する位置変化量Dx1~Dx6との差分が、条件式である以下に示す式(1)を満たすか否かが判断される。同様に、情報T0の位置変化量Dy1~Dy6と、情報T1~Tnの対応する位置変化量Dy1~Dy6とが比較される。この際、情報T0の位置変化量Dy1~Dy6と、情報T1~Tnの対応する位置変化量Dy1~Dy6との差分が、条件式である以下に示す式(2)を満たすか否かが判断される。
しきい値Thx1>|T0 Dxi-Tj Dxi| ・・・(1)
しきい値Thy1>|T0 Dyi-Tj Dyi| ・・・(2)
ここで、
1≦i≦6(iは、正の整数)
1≦j≦n(jは、正の整数)
Thx1:位置変化量Dxに関するしきい値
Thy1:位置変化量Dyに関するしきい値
T0 Dxi:T0(今回)の位置基準部Miの位置変化量Dx
T0 Dyi:T0(今回)の位置基準部Miの位置変化量Dy
Tj Dxi:Tj(過去)の位置基準部Miの位置変化量Dx
Tj Dyi:Tj(過去)の位置基準部Miの位置変化量Dy
である。
【0052】
なお、しきい値Thx1およびThy1は、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知し得る限り、どのような値であってもよいが、たとえば、数μm程度であり得る。
【0053】
そして、位置変化量Dxに関する差分が、式(1)を満たし、かつ、位置変化量Dyに関する差分が、式(2)を満たした場合、位置基準部M1~M6のうちの該当する位置基準部Mに異常な位置ずれが発生していないと判断される。すなわち、位置基準部Mが正常な位置状態であることが検知される。また、位置基準部M(M1~M6)の全部が正常な位置状態にあることが検知された場合、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報が、過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報として追加されて登録される。
【0054】
一方、位置変化量Dxに関する差分が、式(1)を満たさない場合、および、位置変化量Dyに関する差分が、式(2)を満たさない場合のうちの少なくとも一方の場合、位置基準部M1~M6のうちの該当する位置基準部Mに異常な位置ずれが発生したと判断される。すなわち、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知される。図4では、位置基準部M4の異常な位置ずれが検知されている。
【0055】
〈異常な位置ずれの検知後の制御に関する構成〉
また、第1実施形態では、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された場合、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された状態でも基板Pの生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行う。
【0056】
具体的には、まず、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された場合、異常な位置ずれの検知が行われた複数の位置基準部M(M1~M6)のうち、正常な位置状態であることが検知された位置基準部M(M1~M6)の数が、予め決められた数以上であるか否かを判断する制御を行う。予め決められた数は、位置基準部Mの数よりも小さい数であれば、どのような数であってもよいが、基板Pの生産が継続可能であるか否かの判断を正確に行う観点からは、大きい方が好ましい。たとえば、予め決められた数は、位置基準部Mの数から1を減算した数とすることができる。この場合、第1実施形態では、予め決められた数は、位置基準部Mの数である6から1を減算した値である5である。
【0057】
そして、制御部8は、正常な位置状態であることが検知された位置基準部M(M1~M6)の数が、予め決められた数未満であると判断した場合、基板Pの生産が継続可能ではないと判断する制御を行う。これにより、正常な位置状態であることが検知された位置基準部M(M1~M6)の数が比較的少ない場合、基板Pの生産が継続可能ではないと正確に判断することができる。
【0058】
一方、制御部8は、正常な位置状態であることが検知された位置基準部M(M1~M6)の数が、予め決められた数以上であると判断した場合、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びに起因する補正であって、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれの検知に用いられた位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報に基づく補正である仮の熱伸び補正を行う。具体的には、仮の熱伸び補正では、制御部8は、正常な位置状態である位置基準部M(M1~M6)については、今回の位置に関する情報を用いるとともに、異常な位置ずれが検知された位置基準部M(M1~M6)については、比較対象である過去の位置に関する情報を用いて、熱伸び補正を行う。仮の補正で用いる過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、複数の過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報のうち、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報に近い(類似する)情報である。すなわち、仮の補正で用いる過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報は、正常な位置状態であることが検知された位置基準部M(M1~M6)の数が、予め決められた数以上であるとの比較結果が得られた情報である。この場合、仮の補正で用いる過去の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報としては、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報に最も近い(最も類似する)情報のみを用いてもよいし、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報に近い(類似する)複数の情報を用いてもよい。
【0059】
そして、制御部8は、仮の熱伸び補正を行った状態で、ヘッド水平移動機構部4により基板撮像部6を移動させて、基板撮像部6により位置基準部M(M1~M6)または位置基準部M(M1~M6)とは異なる他の特徴点を撮像させる制御を行う。他の特徴点は、たとえば、基板Pの位置認識マークF、搬送部2の特徴点(すなわち、特徴的な形を有する部分)であり得る。そして、制御部8は、基板撮像部6による位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の撮像結果に基づいて、基板Pの生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行う。
【0060】
この際、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の撮像結果に基づいて、位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の位置に関する情報を取得するとともに、取得された位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の位置に関する情報に基づいて、基板Pの生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行う。具体的には、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の位置変化量を取得するとともに、取得された位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の位置変化量と、予め決められたしきい値(後述するしきい値ThxaおよびThya)との比較結果に基づいて、基板Pの生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行う。この際、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の、X方向の位置変化量である位置変化量Dxaが、条件式である以下に示す式(3)を満たすか否かを判断する制御を行う。同様に、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点の、Y方向の位置変化量である位置変化量Dyaが、条件式である以下に示す式(4)を満たすか否かを判断する制御を行う。
しきい値Thxa>|Dxa| ・・・(3)
しきい値Thya>|Dya| ・・・(4)
ここで、
Thxa:位置変化量Dxaに関するしきい値
Thya:位置変化量Dyaに関するしきい値
Dxa:位置基準部Mまたは他の特徴点のX方向の位置変化量
Dya:位置基準部Mまたは他の特徴点のY方向の位置変化量
である。
【0061】
そして、位置変化量Dxaが、式(3)を満たさない場合、および、位置変化量Dyaが、式(4)を満たさない場合のうちの少なくとも一方の場合、制御部8は、基板Pの生産を継続可能ではないと判断する制御を行う。これにより、仮の熱伸び補正の結果が良好ではない場合、基板Pの生産が継続可能ではないと正確に判断することができる。一方、制御部8は、位置変化量Dxaが、式(3)を満たし、かつ、位置変化量Dyaが、式(4)を満たした場合、基板Pの生産を継続可能であると判断する制御を行う。これにより、仮の熱伸び補正の結果が良好である場合、基板Pの生産が継続可能であると正確に判断することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された場合に、基板Pの生産を継続する場合、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれ量に基づいて、異常な位置ずれが検知された位置基準部M(M1~M6)の位置の情報を補正して登録した状態で、基板Pの生産を継続する制御を行うように構成されている。また、制御部8は、基板Pの生産を継続した後には、補正して登録された位置基準部M(M1~M6)の位置の情報に基づいて、位置基準部M1~M6の各々を撮像するように、基板撮像部6を制御する。
【0063】
また、第1実施形態では、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された場合に、基板Pの生産を継続する場合、基板撮像部6による位置基準部M(M1~M6)の時間間隔の設定変更を行う。具体的には、制御部8は、基板撮像部6による位置基準部M(M1~M6)の時間間隔が短くなるように、基板撮像部6による位置基準部M(M1~M6)の時間間隔の設定変更を行う。すなわち、制御部8は、基板撮像部6による位置基準部M(M1~M6)の時間間隔を、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知されていない通常時の時間間隔である第1時間間隔から、第1時間間隔よりも短い時間間隔である第2時間間隔に設定する制御を行う。この際、予め決められた回数だけ、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知されないことが続いた場合には、基板撮像部6による位置基準部M(M1~M6)の時間間隔が、異常時の時間間隔である第2時間間隔から、通常時の時間間隔である第1時間間隔に戻されてもよい。
【0064】
また、第1実施形態では、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された場合に、基板Pの生産を継続する場合、作業者への通知を行うように構成されている。この際、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することを、作業者に通知する制御を行う。作業者への通知は、どのように行われてもよいが、たとえば、基板作業装置100の表示部7に情報を表示したり、作業者が有する携帯端末に情報を表示したりすることにより、行うことができる。
【0065】
また、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することが、頻発する場合があると考えられる。このため、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することが、頻発する場合には、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することが、頻発することを、作業者に通知する制御を行う。たとえば、制御部8は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することが連続して発生した場合、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することが連続して発生したことを、作業者に通知する制御を行う。また、たとえば、制御部8は、予め決められた期間中に、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することが、予め決められた回数だけ発生した場合、予め決められた期間中に、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することが、予め決められた回数だけ発生したことを、作業者に通知する制御を行う。
【0066】
(位置基準部位置ずれ検知処理)
次に、図7を参照して、第1実施形態の基板作業装置100による位置基準部位置ずれ検知処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの各処理は、制御部8により行われる。
【0067】
図7に示すように、まず、ステップS1において、基板Pの生産が開始される。
【0068】
そして、ステップS2において、位置基準部Mの位置に関する情報の取得が行われる。すなわち、ステップS2では、基板撮像部6による位置基準部Mの撮像と、この撮像結果に基づく位置基準部Mの位置に関する情報の取得とが行われる。
【0069】
そして、ステップS3において、位置基準部Mの異常な位置ずれがあるか否かの判断が行われる。すなわち、ステップS3では、今回の位置基準部Mの位置に関する情報と、過去の位置基準部Mの位置に関する情報との比較と、この比較結果に基づく位置基準部Mの異常な位置ずれの検知とが行われる。位置基準部Mの異常な位置ずれがないと判断された場合、ステップS4に進む。
【0070】
そして、ステップS4において、ヘッドユニット3による基板Pへの部品Eの実装作業が行われる。
【0071】
そして、ステップS5において、現在のタイミングが位置基準部Mの位置に関する情報の取得タイミングであるか否かの判断が行われる。現在のタイミングが位置基準部Mの位置に関する情報の取得タイミングではないと判断された場合、ステップS4に進み、ヘッドユニット3による基板Pへの部品Eの実装作業が繰り返される。
【0072】
また、ステップS5において、現在のタイミングが位置基準部Mの位置に関する情報の取得タイミングであると判断された場合、ステップS2に進み、位置基準部Mの位置に関する情報の取得が行われる。そして、ステップS3に進む。
【0073】
また、ステップS3において、位置基準部Mの異常な位置ずれがあると判断された場合、ステップS6に進む。
【0074】
そして、ステップS6において、基板Pの生産が継続可能であるか否かの判断が行われる。基板Pの生産が継続可能であると判断された場合、ステップS4に進み、ヘッドユニット3による基板Pへの部品Eの実装作業が継続される。また、基板Pの生産が継続可能ではないと判断された場合、ステップS7に進む。なお、ステップS6の詳細については、図8を参照して後述する。
【0075】
そして、ステップS7において、作業者へのエラーの通知が行われる。すなわち、ステップS7では、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産が継続可能ではないことが、作業者に通知される。そして、位置基準部位置ずれ検知処理が終了される。また、位置基準部位置ずれ検知処理は、基板Pの生産が終了したタイミングにおいても、終了される。
【0076】
(基板生産継続判断処理)
次に、図8を参照して、図7に示すフローチャートのステップS6の処理である、基板生産継続判断処理をフローチャートに基づいて説明する。なお、フローチャートの各処理は、制御部8により行われる。
【0077】
図8に示すように、まず、ステップS11において、今回の位置基準部Mの位置に関する情報と、過去の位置基準部Mの位置に関する情報との比較結果が取得される。
【0078】
そして、ステップS12において、過去の位置基準部Mの位置に関する情報のうちに、今回の位置基準部Mの位置に関する情報と適合する情報があるか否かの判断が行われる。なお、適合する情報とは、正常な位置状態であることが検知された位置基準部Mの数が、予め決められた数以上であるとの比較結果が得られた、過去の位置基準部Mの位置に関する情報である。このような情報は、たとえば、図6に示す情報T1~Tnのうちのいずれかであり得る。
【0079】
ステップS12において、適合する情報がないと判断された場合、ステップS7(図7参照)に進み、作業者へのエラーの通知が行われる。また、適合する情報があると判断された場合、ステップS13に進む。
【0080】
そして、ステップS13において、適合する情報に基づく仮の熱伸び補正が行われる。
【0081】
そして、ステップS14において、基板撮像部6による位置基準部Mまたは他の特徴点の撮像が行われる。
【0082】
そして、ステップS15において、基板Pの生産が継続可能であるか否かの判断が行われる。基板Pの生産が継続可能ではないと判断された場合、ステップS11に進む。そして、ステップS11および12において、熱伸び補正に用いた適合する情報とは異なる他の適合する情報があるか否かの判断が行われる。そして、他の適合する情報がない場合、ステップS7に進み、他の適合する情報がある場合、ステップS13に進む。
【0083】
また、ステップS15において、基板Pの生産が継続可能であると判断された場合、ステップS16に進む。
【0084】
そして、ステップS16において、異常な位置ずれが検知された位置基準部Mの位置情報の補正と登録とが行われる。
【0085】
そして、ステップS17において、基板撮像部6により位置基準部Mの撮像を行う時間間隔が短くなるように設定変更が行われる。
【0086】
そして、ステップS18において、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知され、かつ、基板Pの生産を継続することの作業者への通知が行われる。そして、ステップS4に進み、ヘッドユニット3による基板Pへの部品Eの実装作業が継続される。なお、ステップS16~S18の処理は、順番が入れ替わってもよいし、互いに並行して行われてもよい。
【0087】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0088】
第1実施形態では、上記のように、位置基準部Mの位置に関する情報に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知する制御を行う制御部8を設ける。これにより、たとえば外力に起因して位置基準部Mに異常な位置ずれが発生した場合、位置基準部Mに異常な位置ずれが発生したことを検知することができる。その結果、異常な位置ずれが発生した位置基準部Mに基づいて、誤った熱伸び補正が行われることを抑制することができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8を、今回の位置基準部Mの位置に関する情報と、過去の位置基準部Mの位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知する制御を行うように構成する。これにより、正常な位置に位置基準部Mが位置する場合の情報である、過去の位置基準部Mの位置に関する情報と、今回の位置基準部Mの位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知することができるので、位置基準部Mに異常な位置ずれが発生したことを容易かつ確実に検知することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8を、今回の位置基準部Mの位置に関する情報と、過去の位置基準部Mの位置に関する傾向を示す情報との比較結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知する制御を行うように構成する。これにより、過去の位置基準部Mの位置に関する傾向を示す情報に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを精度良く検知することができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、位置基準部Mの位置に関する情報を、位置基準部Mの位置変化量の情報を含むように構成する。また、過去の位置基準部Mの位置に関する傾向を示す情報を、複数の過去の位置基準部Mの位置変化量の情報を含むように構成する。また、制御部8を、今回の位置基準部Mの位置変化量と、複数の過去の位置基準部Mの位置変化量の各々との差分を取得するとともに、取得された差分と予め決められたしきい値(Thx1、Thy1)との比較結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知する制御を行うように構成する。これにより、今回の位置基準部Mの位置変化量と、複数の過去の位置基準部Mの位置変化量の各々との差分と、しきい値(Thx1、Thy1)とを比較するだけで、位置基準部Mの異常な位置ずれを容易かつ確実に検知することができる。
【0092】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8を、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された状態でも基板Pの生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行うように構成する。これにより、位置基準部Mの異常な位置ずれが、基板Pの生産が継続可能な位置ずれである場合、基板作業装置100による基板Pの生産を継続することができる。その結果、基板作業装置100の停止時間を低減することができる。また、位置基準部Mの異常な位置ずれが、基板Pの生産が継続不可能な位置ずれである場合、基板作業装置100による基板Pの生産を停止することができる。その結果、基板Pの生産を停止した基板作業装置100における位置基準部Mの位置の修正などの整備を迅速に行うことができる。
【0093】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8を、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びに起因する補正であって、位置基準部Mの異常な位置ずれの検知に用いられた位置基準部Mの位置に関する情報に基づく補正である仮の補正を行い、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びに起因する仮の補正を行った状態で、基板撮像部6により位置基準部Mまたは他の特徴点を撮像させるとともに、基板撮像部6による位置基準部Mまたは他の特徴点の撮像結果に基づいて、基板Pの生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行うように構成する。これにより、仮の補正を行った状態での位置基準部Mまたは他の特徴点の撮像結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれが、基板Pの生産が継続可能な位置ずれであるか否かを判断することができる。その結果、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された状態でも基板Pの生産が継続可能であるか否かを容易かつ確実に判断することができる。
【0094】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8を、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合に、基板Pの生産を継続する場合、位置基準部Mの異常な位置ずれ量に基づいて、異常な位置ずれが検知された位置基準部Mの位置の情報を補正して登録した状態で、基板Pの生産を継続する制御を行うように構成する。これにより、補正して登録された位置基準部Mの位置の情報(すなわち、位置ずれが反映された位置基準部Mの位置の情報)に基づいて、基板Pの生産の継続後の基板撮像部6による位置基準部Mの撮像を行うことができる。その結果、基板Pの生産の継続後において、異常な位置ずれが検知された位置基準部Mの基板撮像部6による撮像を正確に行うことができる。
【0095】
また、第1実施形態では、上記のように、基板撮像部6を、第1時間間隔により位置基準部Mの撮像を行うように構成する。また、制御部8を、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合に、基板Pの生産を継続する場合、基板撮像部6により位置基準部Mの撮像を行う時間間隔を、第1時間間隔よりも短い時間間隔である第2時間間隔に設定する制御を行うように構成されている。これにより、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合に、基板Pの生産を継続する場合、通常時の時間間隔である第1時間間隔よりも短い時間間隔である第2時間間隔により、基板撮像部6による位置基準部Mの撮像を行うことができる。その結果、位置基準部Mの次の異常な位置ずれを迅速に検知することができる。
【0096】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8を、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合に、基板Pの生産を継続する場合、作業者への通知を行うように構成されている。これにより、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された状態で、基板Pの生産が継続されたことを、作業者が認識することができる。
【0097】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8を、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合、ヘッド水平移動機構部4の熱伸びに起因する補正であって、位置基準部Mの異常な位置ずれの検知に用いられた位置基準部Mの位置に関する情報に基づく補正である仮の補正を行うように構成する。これにより、位置基準部Mの異常な位置ずれが検知された場合にも、熱伸びに起因する補正(仮の補正)を容易に行うことができる。
【0098】
[第2実施形態]
次に、図1図2および図9を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、今回の位置基準部の位置に関する情報と、前回の位置基準部の位置に関する情報とが比較される例について説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。
【0099】
(基板作業装置の構成)
本発明の第2実施形態による基板作業装置200は、図1および図2に示すように、制御部108を備える点で、上記第1実施形態による基板作業装置100と相違する。
【0100】
第2実施形態では、制御部108は、図9に示すように、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報と、前回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれを検知する制御を行う。すなわち、第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報が、前回の位置基準部M(M1~M6)の位置に関する情報とのみ比較される。
【0101】
具体的には、制御部108は、複数の位置基準部M(M1~M6)の各々の、今回の位置変化量と、前回の位置変化量との差分を取得するとともに、取得された差分と、予め決められたしきい値(しきい値Thx2およびThy2)との比較結果に基づいて、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれを検知する制御を行う。なお、しきい値Thx2およびThy2は、特許請求の範囲の「第2しきい値」の一例である。
【0102】
図9に示す例では、まず、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置変化量と、前回の位置基準部M(M1~M6)の位置変化量との差分が取得される。具体的には、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置変化量Dx(Dx1~Dx6)と、前回の位置基準部M(M1~M6)の位置変化量Dx(Dx1~Dx6)との差分Dxd(Dxd1~Dxd6)が取得される。同様に、今回の位置基準部M(M1~M6)の位置変化量Dy(Dy1~Dy6)と、前回の位置基準部M(M1~M6)の位置変化量Dy(Dy1~Dy6)との差分Dyd(Dyd1~Dyd6)が取得される。
【0103】
そして、取得された差分Dxd1~Dxd6のうち、最も大きい差分DxdMaxと、最も小さい差分DxdMinとが取得される。そして、差分DxdMaxと、差分DxdMinとの差分が、条件式である以下に示す式(5)を満たすか否かが判断される。同様に、取得された差分Dyd1~Dyd6のうち、最も大きい差分DydMaxと、最も小さい差分DydMinとが取得される。そして、差分DydMaxと、差分DydMinとの差分が、条件式である以下に示す式(6)を満たすか否かが判断される。
しきい値Thx2<DxdMax-Dxdmin ・・・(5)
しきい値Thy2<DydMax-Dydmin ・・・(6)
ここで、
Thx2:位置変化量Dxに関するしきい値
Thy2:位置変化量Dyに関するしきい値
DxdMax:複数の位置基準部Mの各々の、今回の位置変化量Dxと、前回の位置変化量Dxとの差分のうち、最も大きい差分
DxdMin:複数の位置基準部Mの各々の、今回の位置変化量Dxと、前回の位置変化量Dxとの差分のうち、最も小さい差分
DydMax:複数の位置基準部Mの各々の、今回の位置変化量Dyと、前回の位置変化量Dyとの差分のうち、最も大きい差分
DydMin:複数の位置基準部Mの各々の、今回の位置変化量Dyと、前回の位置変化量Dyとの差分のうち、最も小さい差分
である。
【0104】
そして、差分DxdMaxと、差分DxdMinとの差分が、式(5)を満たさず、かつ、差分DydMaxと、差分DydMinとの差分が、式(6)を満たさない場合、位置基準部M(M1~M6)に異常な位置ずれが発生していないと判断される。すなわち、位置基準部M(M1~M6)が正常な位置状態であることが検知される。一方、差分DxdMaxと、差分DxdMinとの差分が、式(5)を満たした場合、および、差分DydMaxと、差分DydMinとの差分が、式(6)を満たした場合のうちの少なくとも一方の場合、位置基準部M(M1~M6)に異常な位置ずれが発生していると判断される。すなわち、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知される。
【0105】
また、第2実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、制御部108は、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された場合、位置基準部M(M1~M6)の異常な位置ずれが検知された状態でも基板Pの生産が継続可能であるか否かを判断する制御を行ってもよい。この場合、制御部108は、正常な位置状態である位置基準部M(M1~M6)については、今回の位置に関する情報を用いるとともに、異常な位置ずれが検知された位置基準部M(M1~M6)については考慮せずに、仮の熱伸び補正を行う。そして、制御部108は、仮の熱伸び補正を行った状態で、ヘッド水平移動機構部4により基板撮像部6を移動させて、基板撮像部6により位置基準部M(M1~M6)または他の特徴点を撮像させる制御を行う。詳細な説明は省略するが、その後の動作は、上記第1実施形態と同様である。
【0106】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0107】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0108】
第2実施形態では、上記のように、位置基準部Mの位置に関する情報に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知する制御を行う制御部108を設ける。これにより、上記第1実施形態と同様に、異常な位置ずれが発生した位置基準部Mに基づいて、誤った熱伸び補正が行われることを抑制することができる。
【0109】
また、第2実施形態では、上記のように、制御部108を、今回の位置基準部Mの位置に関する情報と、前回の位置基準部Mの位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知する制御を行うように構成する。これにより、今回の位置基準部Mの位置に関する情報と、前回の位置基準部Mの位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを容易に検知することができる。
【0110】
また、第2実施形態では、上記のように、位置基準部Mを、複数の位置基準部Mを含むように構成する。また、位置基準部Mの位置に関する情報を、位置基準部Mの位置変化量の情報を含むように構成する。また、制御部108を、複数の位置基準部Mの各々の、今回の位置変化量と前回の位置変化量との差分を取得するとともに、取得された差分と予め決められたしきい値(Thx2、Thy2)との比較結果に基づいて、位置基準部Mの異常な位置ずれを検知する制御を行うように構成する。これにより、今回の位置基準部Mの位置変化量と、前回の位置基準部Mの位置変化量との差分と、しきい値(Thx2、Thy2)とを比較するだけで、複数の位置基準部Mの各々の異常な位置ずれを容易かつ確実に検知することができる。
【0111】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0112】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0113】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、部品実装装置(表面実装機)である基板作業装置に本発明が適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、移動機構部の熱伸びに起因する補正を行う基板作業装置であれば、部品実装装置以外の基板作業装置に適用されてもよい。たとえば、本発明は、ダイシングされたウェハから供給された部品を基板に実装する部品実装装置(いわゆる、フリップチップボンダー)、接着剤などの部品用の塗布剤を基板に塗布する塗布装置(いわゆる、ディスペンサ)などの基板作業装置に適用されてもよい。
【0114】
また、上記第1および第2実施形態では、位置基準部が、搬送部に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、移動機構部の熱伸びに起因する補正を行う機能を果たし得る限り、位置基準部は、いずれの箇所に設けられていてもよい。たとえば、位置基準部は、基台に設けられていてもよい。この場合、基台に設けられた位置基準部を、たとえば、基板撮像部により撮像すればよい。また、位置基準部は、作業部であるヘッドユニットに設けられていてもよい。この場合、ヘッドユニットに設けられた位置基準部を、たとえば、基台に設けられた部品撮像部により撮像すればよい。
【0115】
また、上記第1および第2実施形態では、位置基準部が、6つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置基準部が、6つ以外の複数設けられていてもよいし、1つだけ設けられていてもよい。しかしながら、移動機構部の熱伸びに起因する補正を精度良く行う観点からは、位置基準部が1つだけ設けられているよりも、複数設けられている方が好ましい。
【0116】
また、上記第1および第2実施形態では、今回の位置基準部の位置に関する情報と、過去の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれが検知される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、実測情報である今回の位置基準部の位置に関する情報と、計算上の情報であるシミュレーションの位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれが検知されてもよい。この場合、シミュレーションの位置基準部の位置に関する情報として、現在の基板作業装置の状態(温度状態、稼働時間など)に対応する、シミュレーションの位置基準部の位置変化量の情報が用いられればよい。すなわち、今回の位置基準部の位置変化量と、現在の基板作業装置の状態(温度状態、稼働時間など)に対応する、シミュレーションの位置基準部の位置変化量とが比較されればよい。なお、シミュレーションの位置基準部の位置に関する情報とは、たとえば、移動機構部の熱伸びに関する熱伸びモデルにより得られた情報である。これにより、正常な位置に位置基準部が位置する場合の情報である、シミュレーションの位置基準部の位置に関する情報と、今回の位置基準部の位置に関する情報との比較結果に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれを検知することができるので、位置基準部に異常な位置ずれが発生したことを容易かつ確実に検知することができる。
【0117】
また、上記第1および第2実施形態では、位置基準部の位置変化量の情報に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれが検知される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置基準部の位置の情報に基づいて、位置基準部の異常な位置ずれが検知されてもよい。
【0118】
また、上記第1および第2実施形態では、位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合、基板の生産が継続可能であるか否かが判断される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合、基板の生産が継続可能であるか否かが判断されることなく、基板の生産が停止されてもよい。また、位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合、基板の生産が継続可能であるか否かが判断されることなく、仮の補正が行われて、基板の生産が継続されてもよい。位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合、基板の生産が継続可能であるか否かが判断されることなく、異常な位置ずれが検知された位置基準部の位置の情報の補正と登録とが行われて、基板の生産が継続されてもよい。これらの構成は、生産の継続を優先したい場合に、有効である。
【0119】
また、上記第1および第2実施形態では、位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合に、基板の生産を継続する場合、撮像部により位置基準部の撮像を行う時間間隔が短くなるように設定変更される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合に、基板の生産を継続する場合、必ずしも撮像部により位置基準部の撮像を行う時間間隔が短くなるように設定変更されなくてもよい。
【0120】
また、上記第1および第2実施形態では、位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合に、基板の生産を継続する場合、作業者への通知が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、位置基準部の異常な位置ずれが検知された場合に、基板の生産を継続する場合、必ずしも作業者への通知が行われなくてもよい。
【0121】
また、上記第1実施形態では、過去の位置基準部の位置に関する傾向を示す情報が、過去の実績値の情報である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、過去の位置基準部の位置に関する傾向を示す情報が、実績値に基づいて取得された、過去の位置基準部の位置に関する傾向を示す関数の情報であってもよい。
【0122】
また、上記第1実施形態では、説明の便宜上、制御部の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0123】
3 ヘッドユニット(作業部)
4 ヘッド水平移動機構部(移動機構部)
6 基板撮像部(撮像部)
8、108 制御部
100、200 基板作業装置
Dx、Dy 位置変化量
E 部品
M、M1~M6 位置基準部
P 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9