(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】かつら用フレーム及びかつら
(51)【国際特許分類】
A41G 5/00 20060101AFI20230517BHJP
A41G 3/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A41G5/00
A41G3/00 K
(21)【出願番号】P 2019102462
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】519033915
【氏名又は名称】鶯ベンチャーコンサルティング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078949
【氏名又は名称】浅野 勝美
(72)【発明者】
【氏名】保知 宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 光浩
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195975(JP,A)
【文献】実開平02-014458(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 5/00
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視長方形状に形成される雌雄一対のフレームであって、
該フレームはフレーム本体と、該フレーム本体と一体に形成されるフック部と、該フレーム本体と一体に形成される
マネキン頭部に固定するための固定用部とからなり、
上記フレーム本体は塑性素材からなり、対向する側縁部と、該側縁部の後端部間を連続する後縁部と、該後縁部に対向するフロント側に設けられる折捨て部とからなり、
上記側縁部及び上記後縁部に夫々内側に向かい対向して突設されてなるフック部に、弾性素材からなる反転自在のクリップが取り付けられ、
上記折捨て部及び上記後縁部に夫々外側に向かって
上記固定用部が突設され、
上記折捨て部及び上記固定用部が折捨て可能に形成されることを特徴とするかつら用フレーム。
【請求項2】
請求項1記載のかつら用フレームにおいて、上記フック部が上記側縁部のフロント側先端部に設けられることを特徴とするかつら用フレーム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のかつら用フレームにおいて、上記クリップが上記フック部に取付けられる取付部と、該取付部に対向する基端部と、該基端部から取付部に向かって突設される櫛部とからなり、該櫛部が装着前は凹弧状の開となり、装着後は反転して上記取付部に当接されて突弧状の閉となることを特徴とするかつら用フレーム。
【請求項4】
平面視長方形状に形成される雌雄一対のフレームと、上記フレーム間に固着された扁平状素材からなるベースとからなり、
上記フレームはフレーム本体と、該フレーム本体と一体に形成されるフック部と、該フレーム本体と一体に形成される
マネキン頭部に固定するための固定用部とからなり、
上記フレーム本体が塑性素材からなり、対向する側縁部と、該側縁部の後端部間を連続する後縁部と、該後縁部に対向するフロント側に設けられる折捨て部とからなり、
上記側縁部及び上記後縁部に夫々内側に向かい対向して突設されてなるフック部に、弾性素材からなる反転自在のクリップが取り付けられ、
上記折捨て部及び上記後縁部に夫々外側に向かって
上記固定用部が突設され、
上記折捨て部及び上記固定用部が折捨て可能に形成されることを特徴とするかつら。
【請求項5】
請求項4記載のかつらにおいて、上記ベースがヘア材が植毛される植毛ベースと、該植毛ベースの裏面に積層される化粧ベースとからなることを特徴とするかつら。
【請求項6】
請求項5記載のかつらにおいて、上記植毛ベースの前端部が化粧ベースの前端部より突出されることを特徴とするかつら。
【請求項7】
請求項5記載のかつらにおいて、上記植毛ベースの前端部が裏面に折畳まれてなることを特徴とするかつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はかつらに関し、とくに被着することにより使用するかつらに関する。
【背景技術】
【0002】
この種かつらは、頭髪の薄くなった部分の辺り、つまり、自毛のなくなった部分29とまだ自毛のある部分30付近に被着させて使用する。かかる場合、自毛のなくなった部分29とまだ自毛のある部分30との間には境い目が生じ、ここにこの種かつらを装着すると、かつらが浮いてしまう現象が起こることがある。
【0003】
このかつらの浮き上がり現象が起こると、かつらが安定せず、絶えず脱げてしまうような不安心理におそわれる。従来このかつらの浮き上がり現象を防止するには、装着力の強い金属製のクリップ等により自毛に固定していた。しかし、このようにすると装着中自毛が引張られて痛みを覚えユーザに不快感を与えていた。また装着力の強いクリップや複雑なつくりとしたクリップは重くなったり厚くなったりするため、長時間装着するかつらの場合、ユーザ不快感の因となる。
【0004】
女性の場合、髪型の好みがあるため、美容師等により予め自分の好みに合った髪型に調整しておくのが通例であるところ、従来のこの種かつらはベースにヘア材が植毛されて構成されており、ベースが定形状に保持されていなかったため、自分の好みに合った髪型にヘア材を調整する作業が困難となっていた。即ち、美容師等はふにゃふにゃに変形されるかつらをマネキン頭部に固定してヘア材をカットしたりカールしたりして髪型の調整をするのであるが、かつらを固定する特別の装置がないため、マネキン頭部にかつらをのせた後、製品に直接ピン打ちをして固定することが多かった。
【0005】
しかしながら、かつらは1個数万円という高価な商品であるため、かかるピン打ちには心理的な抵抗感が大であり、かかる心理的な抵抗感があるため髪型の調整作業に影響を与えることがあった。
【0006】
女性の髪型嗜好は多種多様であるため、予め工場で量産しておくことは事実上不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は上記背景より、装着中のかつらの浮き上がり現象を防止し、自毛との親和性のあるかつら用フレーム及びかつらを供することを目的とする。
また他の目的は、ユーザの多種多様な髪型の嗜好に対応することができるかつら用フレーム及びかつらを供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のため、本願発明によるかつら用フレームは、平面視長方形状に形成される雌雄一対のフレームであって、該フレームはフレーム本体と、該フレーム本体と一体に形成されるフック部と、該フレーム本体と一体に形成されるマネキン頭部に固定するための固定用部とからなり、上記フレーム本体は塑性素材からなり、対向する側縁部と、該側縁部の後端部間を連続する後縁部と、該後縁部に対向するフロント側に設けられる折捨て部とからなり、上記側縁部及び上記後縁部に夫々内側に向かい対向して突設されてなるフック部に、弾性素材からなる反転自在のクリップが取り付けられ、上記折捨て部及び上記後縁部に夫々外側に向かって上記固定用部が突設され、上記折捨て部及び上記固定用部が折捨て可能に形成されることを特徴とする。
また請求項2によるかつら用フレームは、請求項1記載のかつら用フレームにおいて、上記フック部が上記側縁部のフロント側先端部に設けられることを特徴とする。
また請求項3によるかつら用フレームは、請求項1又は請求項2記載のかつら用フレームにおいて、上記クリップが上記フック部に取付けられる取付部と、該取付部に対向する基端部と、該基端部から取付部に向かって突設される櫛部とからなり、該櫛部が装着前は凹弧状の開となり、装着後は反転して上記取付部に当接されて突弧状の閉となることを特徴とする。
また本願発明によるかつらは、平面視長方形状に形成される雌雄一対のフレームと、上記フレーム間に固着された扁平状素材からなるベースとからなり、上記フレームはフレーム本体と、該フレーム本体と一体に形成されるフック部と、該フレーム本体と一体に形成されるマネキン頭部に固定するための固定用部とからなり、上記フレーム本体が塑性素材からなり、対向する側縁部と、該側縁部の後端部間を連続する後縁部と、該後縁部に対向するフロント側に設けられる折捨て部とからなり、上記側縁部及び上記後縁部に夫々内側に向かい対向して突設されてなるフック部に、弾性素材からなる反転自在のクリップが取り付けられ、上記折捨て部及び上記後縁部に夫々外側に向かって上記固定用部が突設され、上記折捨て部及び上記固定用部が折捨て可能に形成されることを特徴とする。
また請求項5によるかつらは、請求項4記載のかつらにおいて、上記ベースがヘア材が植毛される植毛ベースと、該植毛ベースの裏面に積層される化粧ベースとからなることを特徴とする。
また請求項6によるかつらは、請求項5記載のかつらにおいて、上記植毛ベースの前端部が化粧ベースの前端部より突出されることを特徴とする。
また請求項7によるかつらは、請求項5記載のかつらにおいて、上記植毛ベースの前端部が裏面に折畳まれてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、平面視長方形状に形成される雌雄一対のフレームであって、該フレームはフレーム本体と、該フレーム本体と一体に形成されるフック部と、該フレーム本体と一体に形成されるマネキン頭部に固定するための固定用部とからなり、上記フレーム本体は塑性素材からなり、対向する側縁部と、該側縁部の後端部間を連続する後縁部と、該後縁部に対向するフロント側に設けられる折捨て部とからなり、上記側縁部及び上記後縁部に夫々内側に向かい対向して突設されてなるフック部に、弾性素材からなる反転自在のクリップが取り付けられ、上記折捨て部及び上記後縁部に夫々外側に向かって上記固定用部が突設され、上記折捨て部及び上記固定用部が折捨て可能に形成されるので、自毛に装着されたかつらは、装着時のフレーム本体の塑性変形とクリップの弾性変形により、フレーム本体が頭部に沿って変形するとともに、ベースが面状にテンションを受けるため、かつらが自毛に馴染んで装着が安定する。これにより、かつらの浮き上がり現象を起こす境い目付近の自毛が矯正され、装着中のかつらがいわばニット帽を被るように頭部にフィットするため、自毛との親和性が生じ、上記境い目付近のかつらの浮き上がり現象を防止する。またクリップの装着時の力がフレーム本体の塑性変形力と相まってベースの直交方向に分散するため、ベースのテンションが面状に広がり、自毛への過度な装着力とならない。よって、装着中のユーザの苦痛感が著しく軽減される。
【0011】
さらに、髪型調整はマネキン頭部にかつらをのせて、上記固定用部にピン打ちすることにより行われるので、かつらは完全にマネキン頭部に固定される。美容師等はヘア材にカールをかける場合、ヘア材を上方に引張り巻き上げていくのであるが、上記固定用部があるためベースの極薄のフロント部分に負荷がかからない。フレーム本体は塑性変形するから、極薄に形成されたベースのフロント部分が安定する。よって、髪型調整作業の安定化、円滑作業化に資することができ、またユーザの多種多様な髪型の嗜好に対応することができる。
【0012】
上記フック部が上記側縁部のフロント側先端部に設けられる場合は、面状に引張られるベースのテンションを一層向上することができる。
【0013】
上記クリップが上記フック部に取付けられる取付部と、該取付部に対向する基端部と、該基端部から取付部に向かって突設される櫛部とからなり、該櫛部が装着前は凹弧状の開となり、装着後は反転して上記取付部に当接されて突弧状の閉となる場合は、クリップの着脱が一層容易となり、またクリップの一層の軽量化に寄与することができる。
【0014】
また本願発明によれば、かつらが上記フレームと、雌雄一対の上記フレーム間に固着された扁平状素材からなるベースとからなるので、上記効果に支障を生ずることなく、ユーザによって異なる多種多様な頭部の形状にも対応することができる。
【0015】
上記ベースがヘア材が植毛される植毛ベースと、該植毛ベースの裏面に積層される化粧ベースとからなる場合は、ベースが美観のため細かい目に形成された化粧ベースと植毛のため粗い目に形成された植毛ベースとの二重になり、これにより、植毛ベースに植毛されたヘア材があたかも美麗な化粧ベースから出ているように見え、自毛との親和性を一層向上せしめる。
【0016】
上記植毛ベースの前端部が化粧ベースの前端部より突出される場合は、頭髪の薄くなった境い目を目立たせないで済む効果がある。
【0017】
上記植毛ベースの前端部が裏面に折畳まれてなる場合は、フロントのヘアスタイルを種々に動かしてフロント部分に負荷をかけても、かかる動作に対するかつらの耐久性を一層向上せしめる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本願発明によるかつら用フレームの実施の形態を示す一部省略斜視図であり、フレームの開状態の図である。
【
図7】(A)は
図2の底面図、(B)は(A)のB部拡大図である。
【
図8】(A)はクリップ装着前の拡大斜面図、(B)は(A)のB視図、(C)はクリップ装着後の拡大斜面図、(D)は(C)のC視図を示す。
【
図9】本願発明によるかつらの実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図10】(A)は
図9のX視図、(B)は(A)のB部拡大図である。
【
図11】(A)は本願発明によるかつらの実施の形態を示す一部省略要部正面図、(B)は他の実施の形態を示す一部省略要部正面図である。
【
図12】本願発明によるかつら装着前のユーザの頭部を示す要部正面図である。
【
図13】本願発明によるかつらをユーザの頭部に装着する作業を示す要部正面図である。
【
図14】本願発明によるかつらの装着親和作業を示す要部正面図である。
【
図15】本願発明によるかつらの装着後のユーザの頭部を示す要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明によるかつら用フレーム及びかつらを、図面に基づいて詳細に説明する。なお、便宜上、同一の機能を奏する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0020】
フレーム1は雌雄一対であり、折捨て部7を介して、夫々U字形状に形成され、全体としては平面視長方形状に形成される。フレーム本体としての雌フレーム2Aは、塑性素材(本実施例ではポリエチレン(PE))からなり、平行に対設される長辺からなる側縁部3、3と、該側縁部3の後端部間を連続する短辺からなる後縁部5と、該後縁部5に対向するフロントF側に設けられる折捨て部7とからなる。上記側縁部3及び後縁部5には、軸に沿って適宜数の孔4(
図6に示す)が突設され、該孔4に後記する雄フレーム2Bの側縁部及び後縁部に設けられる突起19(
図6に示す)が嵌合する。
【0021】
11は上記フレーム本体2Aと一体に形成されるフック部であり、上記各側縁部3のフロントF側先端部に内側に向かい対向して一対突設され、また上記後縁部5の中央部に内側に向かって1個突設される。上記各フック部11には反転自在のクリップ13が取付けられる。即ち、側縁部3のフロントF側先端部には一対のクリップ13a、13bが、また後縁部5にはクリップ13cが固着される。図中Rは後側を表わす。
【0022】
上記折捨て部7は上記側縁部3、3の先端部(フロントF側)に上記フレーム本体2Aと一体に設けられ、そこに孔を有する固定用部17aが外側に向かって突設される。また上記後縁部5の両端部にも孔を有する固定用部17bが外側に向かって突設される。
【0023】
クリップ13について
図8に基づき詳述する。上記クリップ13は、弾性力のあるプラスチック素材からなり、上記フック部11が挿入される袋状のケースを有する取付部14と、該取付部14に対向する基端部15と、該基端部15から取付部14に向かって櫛歯状に突設される櫛部16とからなる。該櫛部16はユーザ頭髪に装着前は凹弧状の開となっているが、装着後は反転されて突弧状となり、上記取付部14に当接して閉となる。
【0024】
図9及び
図10を参照して、本願発明によるかつら21について説明する。本願発明によるかつら21は、上記した雌雄のフレーム2A、2B間に、植毛ベース23及び化粧ベース25が挟着されてなる。植毛ベース23は扁平の面状ネット地からなり、ネット地を構成する緯23cに、表面側に向かってヘア材27が植毛されている。かかる植毛ベース23の周縁部24を雄フレーム2Bの側縁部18a及び側縁部18bに巻き付け、その上から所定形状に型抜きされた化粧ベース25が積層される。つまり、該化粧ベース25は上記植毛ベース23の裏面側(ユーザの頭髪側)に積層される。かかる状態にて、上記した雌フレーム2Aが図示省略のヒンジを介して雄フレーム2B上に冠せられ、上記した側縁部18a及び側縁部18bに設けられた突起19が雌フレーム2Aの上記孔4に嵌着される。
【0025】
ここでかつら21の構成材についてさらに述べる。上記ネット地はポリアミド系合成繊維からなる緯23c及びポリアミド系合成繊維からなる経(図示省略)が織成されてなる。ネット地を構成する緯23c、経の繊維の形状、太さは任意である。本実施例では断面形状が円形で、繊維径が緯23cが110μm、経が130μmのものを使用する。上記緯にヘア材27が内側即ち緯23cの裏面側と、外側即ち緯23cの表面側とから緯23cにしっかりと結び付けられるため、緯23cにゆるまずに固着される。このため、結び目28が緯23cに保持されるので、ヘア材27が自然毛の如く立ち上がり、植毛されたヘア材27にボリューム感がでるのである。また機械植毛により、時計回り植毛と反時計回り植毛とを交互に変更等することにより、毛流がランダムになるため、隣接するヘア材27が互いに接触することにより、立体的なボリューム感となる。よって過度な毛量とせずとも、ボリューム感を再現することができるので、不自然なかつらとならない。
【0026】
図11を参照して上記かつら21の2パターンを説明する。
図11(A)は、植毛ベース23の前端部23aが化粧ベース25の前端部25aより突出されて形成されるAパターンの場合である。化粧ベース25は美観のため目が細かに形成されてなり、一方植毛ベース23は植毛のため目が粗く形成されてなる。突出長lは、本実施例の場合約1cmである。このように構成すると、植毛ベース23に植毛されたヘア材27があたかも目が細かく美麗な化粧ベース25から出ているように見えるため、自毛との親和性が一層向上される。
【0027】
図11(B)は上記植毛ベース23の前端部23bが裏面に折畳まれて形成されるBパターンの場合である。ユーザによってはフロントのヘアスタイルが気になり種々にいじる場合がある。かかる場合フロント部分に負荷がかかるためかつらの耐久性が急減されるところ、このようなBパターンに構成すると、植毛ベース23が二重となるので、フロント部分の耐久性が一層向上する。
【0028】
図9乃至
図11で述べたかつら21をマネキン頭部にのせて、固定用部17a、固定用部17bにピン打ちした後、ヘア材27の髪型調整をする。
【0029】
次に
図12乃至
図15に基づき、本願発明によるかつらの装着について説明する。
図12に示すユーザ頭部の自毛が薄くなった部分29を隠すため、
図13に示すように、かつら21を被せ、クリップ13を自毛の中にすき込み、自毛に固定する。クリップ13によるかつら21の固定後、
図14に示すように、ヘア材27を自毛に馴染ませる親和作業をする。
図15はかくして装着されたかつら21のセット状態を示す。
【0030】
上記実施の形態によれば、自毛の薄くなった部分29付近に装着されたかつら21は、フレーム本体2Aの側縁部3、3が軸方向a(
図1に示す)に沿って塑性変形されてユーザ頭部の形状に倣うため、装着が安定する。また装着時のフレーム本体2Aの塑性変形に加えて、クリップ13の弾性変形により、植毛ベース23及び化粧ベース25が面状に即ち
図1に示すa方向及びb方向にテンションを受けるため、かつら21が自毛に馴染むのでこの面からも装着が安定する。よって頭髪の薄くなった境い目付近の自毛が矯正され、装着中かつらがいわばニット帽を被るように頭部にフィットするため、自毛との親和性が生じ、上記した境い目付近のかつらの浮き上がり現象が防止される。
【0031】
またクリップ13の装着時の力がフレーム本体2Aの塑性変形力と相まって植毛ベース23、化粧ベース25の直交方向a、bに分散するため、植毛ベース23、化粧ベース25のテンションが面状に広がり、自毛への過度な装着力とならない。よって、装着中のユーザの苦痛感が著しく軽減される。
【0032】
クリップ13は、本実施例では特殊プラスチックであるポリエーテルイミド(SABIC社、商品名「ULTEM」)からなり、それ自体の弾性力は大きくないが、塑性変形するフレーム本体とくに側縁部3の塑性変形力と相まって、その相乗効果により、適性な自毛装着力を生ずる。この結果、クリップ13はより薄く、かつ軽量化され、設置個数も少量化することができ、このようにしても適性な自毛装着力を得るのである。またこのような樹脂製クリップ13の弾性力は大きくないため、装着中自毛への負担が軽減されるので、ユーザの苦痛感が著しく軽減される。本実施の形態では、植毛されるヘア材27の植毛本数が自毛と同等の毛間隔(1.1mm程度)であり、従来のように過度に多くない。よってかつら21自体も軽量化されるので、クリップ13の装着力が小でありながら、この面からもユーザの装着苦痛感が軽減される。
【0033】
次にヘア材27の髪型調整に関して述べる。上記実施の形態においてはかつら21をカットしたりカールをかける場合、固定用部17a、17bをマネキン頭部にピン打ちするから、かつら21の固定が完全となる。フレーム本体とくに側縁部3、3の塑性変形により、極薄に形成された植毛ベース23のフロント部分が安定するので、髪型調整作業の安定化、円滑作業化に資するのである。美容師等はヘア材にカールをかける場合、ヘア材を上方に引張り巻き上げていくのであるが、固定用部17a、17bがあるため植毛ベース23の極薄のフロント部分に負荷がかからない。髪型調整後、折捨て部7では折捨て線Pのところで折り捨てられ(よって固定用部17aも廃棄される)、また固定用部17bも折り捨てられる。このようにして、ユーザ頭部には髪型調整されたかつら21のみが装着される。
【0034】
本願発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。例えば、フレーム1は他の熱加塑性樹脂を用いることができる。またクリップ13の素材は弾性変形され軽量であれば、適宜の弾性素材が選択可能である。植毛ベースは素材が弱いものや薄いものであっても用いることができる。
またヘア材の植毛の仕方は任意である。本実施の形態は、上述したように、ネット地からなる植毛ベース23の緯23cにヘア材27を垂設する立体植毛法によっているため、必要最小限の本数であってもボリューム感を発揮しているが、これに限るものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願発明はかつらに活用することができる。また部分かつらとしてかつらの一部分としても活用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 フレーム
2A 雌フレーム
2B 雄フレーム
3 側縁部
4 孔
5 後縁部
7 折捨て部
11 フック部
13 クリップ
13a クリップ
13b クリップ
13c クリップ
14 取付部
15 基端部
16 櫛部
17a 固定用部
17b 固定用部
18a 側縁部
18b 側縁部
19 突起
21 かつら
23 植毛ベース
23a 前端部
23b 前端部
23c 緯
24 周縁部
25 化粧ベース
25a 前端部
27 ヘア材
28 結び目
29 自毛のなくなった部分
30 自毛のある部分
F フロント側