特許 7280748 かつらの自動植毛方法及び機械植えかつら用材

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-05-16

(45)【発行日】2023-05-24

(54)【発明の名称】かつらの自動植毛方法及び機械植えかつら用材

(51)【国際特許分類】

   A41G 3/00 20060101AFI20230517BHJP

【ＦＩ】

A41G3/00 H

【請求項の数】 22

(21)【出願番号】P 2019102469

(22)【出願日】2019-05-31

(65)【公開番号】P2020196966

(43)【公開日】2020-12-10

【審査請求日】2022-02-21

(73)【特許権者】

【識別番号】519033915

【氏名又は名称】鶯ベンチャーコンサルティング合同会社

(74)【代理人】

【識別番号】100078949

【弁理士】

【氏名又は名称】浅野 勝美

(72)【発明者】

【氏名】渡邊 光浩

(72)【発明者】

【氏名】保知 宏

【審査官】沖田 孝裕

(56)【参考文献】

【文献】国際公開第２００９／０６６６０６（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２００３－２５３５１４（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ４１Ｇ ３／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

経と緯とからなる扁平状のネット地の緯に植毛する方法であって、
ニードルが
フック部を上向きにしてネット地の目に挿入されて前進動作するステップと、
ニードルの進行方向に対し直交方向に供されるヘア材を係止するステップと、
その後上記ヘア材の一部を係止した状態で上記目から引き出すステップと、
次いで引き出されたヘア材を係止したまま１回転するステップと、
その後上記ヘア材の最先端部に形成されるループ部に挿入された状態でさらに前進動作するステップと、
二股状に分かれたヘア材の他の部分を再係止した後、上記他の部分を上記ループ部より引き出すステップと、
該引出しの際、上記ヘア材が上記目を通る一方の側に位置する部分と上記目を通らない他方の側に位置する部分とにより上記ネット地の緯に内側と外側とから結び付けられるステップと、
上記ステップを順次繰り返すことにより扁平面状のネット地にヘア材を植毛することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項2】

請求項１記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の側に位置する部分に内側より係止するとき、上記ヘア材を時計回りに回転することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項3】

請求項２記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが再係止する他の部分は当初係止する側のヘア材であることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項4】

請求項１記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の側に位置する部分に外側より係止するとき、上記ヘア材を反時計回りに回転することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項5】

請求項４記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが再係止する他の部分は当初係止する側のヘア材とは反対側のヘア材であることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項6】

請求項１乃至請求項５のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、各ステップが機械によりなされることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項7】

請求項６記載のかつらの植毛方法において、上記緯に時計回りに回転して植毛されたヘア材と反時計回りに回転して植毛されたヘア材とが混在することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項8】

請求項７記載のかつらの植毛方法において、回転方向の異なる上記ヘア材が緯に対し規則的に植毛されることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項9】

請求項８記載のかつらの植毛方法において、回転方向の異なる上記ヘア材が緯に対し交互に植毛されることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項10】

請求項７記載のかつらの植毛方法において、回転方向の異なる上記ヘア材が緯に対し不規則的に植毛されることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項11】

請求項１乃至請求項１０のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルと上記ネット地の植毛面が相対的に回動されることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項12】

請求項１乃至請求項１１のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が当初垂直状態であり、水平方向に移動するニードルが上記目に挿入されて１箇の緯を掬い上げた後、上記植毛面が回動されて水平方向になることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項13】

請求項１乃至請求項１１のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が当初水平状態であり、垂直方向に移動するニードルが上記目に挿入されて１箇の緯を掬い上げた後、上記ニードルが９０°回動することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項14】

請求項１２記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し直角に位置することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項15】

請求項１２記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し鈍角に位置することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項16】

請求項１乃至請求項１６のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルがネット地の目に挿入された後、若干後退動作をすることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項17】

請求項１乃至請求項１６のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが上方動作をする際、１回転することを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項18】

請求項１乃至請求項５のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、各ステップが手動によりなされることを特徴とするかつらの植毛方法。

【請求項19】

経と緯とからなる扁平状のネット地からなるベースと、該ベースに対し直交方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、
上記ヘア材がネット地の目を通って緯の裏面側より引き出される一の部分と、ネット地の目を通った最先端部分に形成されるループ部に挿入されて緯の表面側より引き出される他の部分とからなり、
上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の部分の側に内側より係止するとき、上記ヘア材が時計回りに回転された後、上記ニードルが当初係止する側に形成される他の部分に再係止され、次いで上記他の部分を上記ループ部より引き出すことにより、上記ヘア材が上記目を通る一方の側に位置する部分と上記目を通らない他方の側に位置する部分とにより上記ネット地の緯に内側と外側とから結び付けられることを特徴とする機械植えかつら用材。

【請求項20】

経と緯とからなる扁平状のネット地からなるベースと、該ベースに対し直交方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、
上記ヘア材がネット地の目を通って緯の裏面側より引き出される一の部分と、ネット地の目を通った最先端部分に形成されるループ部に挿入されて緯の表面側より引き出される他の部分とからなり、
上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の部分の側に外側より係止するとき、上記ヘア材が反時計回りに回転された後、上記ニードルが当初係止する側とは反対側に形成される他の部分に再係止され、次いで上記他の部分を上記ループ部より引き出すことにより、上記ヘア材が上記目を通る他方の側に位置する部分と上記目を通らない一方の側に位置する部分とにより上記ネット地の緯に内側と外側とから結び付けられることを特徴とする機械植えかつら用材。

【請求項21】

請求項１９又は請求項２０記載の機械植えかつら用材において、回転方向の異なるヘア材が緯に対し規則的に植毛されることを特徴とする機械植えかつら用材。

【請求項22】

請求項１９又は請求項２０記載の機械植えかつら用材において、回転方向の異なるヘア材が緯に対し不規則的に植毛されることを特徴とする機械植えかつら用材。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本願発明はかつらの自動植毛方法及び機械植えかつら用材に関する。

【背景技術】

【0002】

かつらはユーザの頭部に合わせて手植え植毛（ハンドメイド植毛といわれる）されるのが一般的である。

【0003】

手植え植毛の場合、ユーザ（特定ユーザとなる）の頭部に合致させるため、ベースは三次元形状となる。この場合、次のようなデメリットが生ずる。まず手植えに際しては、職人が利き手を左右に回転させて植毛するため、植毛に多大の手間と時間を要し、また熟練を要する。例えば、２万本のヘア材が植毛されるかつらを製造するためには、手間のかかる植毛作業を約１万回繰り返さなければならず、２～３週間位かかっていた。ヘア材が植毛されるネット地の目は１ｍｍ²未満の微小面積しかないため、植毛作業が技術と根気の要るものとなっていた。

【0004】

ハンドメイド植毛はこのように熟練した技術が必要な根気のいる作業であり、熟練作業のためコストアップの要因となり、また熟練者不足や未熟者の作業により品質の低下や精度のばら付きが生じている。

【0005】

ハンドメイド植毛では、技術の習得のため３月間位の多大の訓練期間を要し、また技術を習得した者の定着率が悪くこれもコストアップの要因となっている。

【0006】

最近では国内製造が困難なため、低コストの海外へ製造が流失しており、これが品質の均一性、安定性にマイナスともなっている。

【0007】

品質面からみれば、根気の要る集中作業のため、職人の裁量や体調等より品質面が安定せず、また生産量も安定しないのが現状である。

【0008】

また手植え植毛の場合、職人が利き手を左右に回転させ時計回り植毛と反時計回り植毛とを毎回変更することは、植毛作業が繁雑になるため作業者が極めて限られることになる。

【0009】

そこで手植え植毛の場合は、１行目は時計回り植毛、２行目は反時計回り植毛というように、植毛方向の変更はせいぜい行単位で行うことが多い。この場合、その方向へ毛流が形成されるため、植毛されたヘア材が毛流に沿っていわば寝てしまい、ボリューム感が出ないでいた。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0010】

【文献】特開平１０－５３９１１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0011】

本願発明は、上記背景に鑑み、かつら製造の完全機械化をするものであり、かつら製品の均質性、安定性、迅速製造性を図ることを目的とする。また、ボリューム感のあるかつらの製造を図ることを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0012】

上記課題解決のため、本願発明によるかつらの自動植毛方法は、経と緯とからなる扁平状のネット地の緯に植毛する方法であって、ニードルがフック部を上向きにしてネット地の目に挿入されて前進動作するステップと、ニードルの進行方向に対し直交方向に供されるヘア材を係止するステップと、その後上記ヘア材の一部を係止した状態で上記目から引き出すステップと、次いで引き出されたヘア材を係止したまま１回転するステップと、その後上記ヘア材の最先端部に形成されるループ部に挿入された状態でさらに前進動作するステップと、二股状に分かれたヘア材の他の部分を再係止した後、上記他の部分を上記ループ部より引き出すステップと、該引出しの際、上記ヘア材が上記目を通る一方の側に位置する部分と上記目を通らない他方の側に位置する部分とにより上記ネット地の緯に内側と外側とから結び付けられるステップと、上記ステップを順次繰り返すことにより扁平面状のネット地にヘア材を植毛することを特徴とする。
また請求項２による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の側に位置する部分に内側より係止するとき、上記ヘア材を時計回りに回転することを特徴とする。
また請求項３による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項２記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが再係止する他の部分は当初係止する側のヘア材であることを特徴とする。
また請求項４による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の側に位置する部分に外側より係止するとき、上記ヘア材を反時計回りに回転することを特徴とする。
また請求項５による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項４記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが再係止する他の部分は当初係止する側のヘア材とは反対側のヘア材であることを特徴とする。
また請求項６による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１乃至請求項５のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、各ステップが機械によりなされることを特徴とする。
また請求項７による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項６記載のかつらの植毛方法において、上記緯に時計回りに回転して植毛されたヘア材と反時計回りに回転して植毛されたヘア材とが混在することを特徴とする。
また請求項８による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項７記載のかつらの植毛方法において、回転方向の異なる上記ヘア材が緯に対し規則的に植毛されることを特徴とする。
また請求項９による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項８記載のかつらの植毛方法において、回転方向の異なる上記ヘア材が緯に対し交互に植毛されることを特徴とする。
また請求項１０による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項７記載のかつらの植毛方法において、回転方向の異なる上記ヘア材が緯に対し不規則的に植毛されることを特徴とする。
また請求項１１による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１乃至請求項１０のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルと上記ネット地の植毛面が相対的に回動されることを特徴とする。
また請求項１２による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１乃至請求項１１のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が当初垂直状態であり、水平方向に移動するニードルが上記目に挿入されて１箇の緯を掬い上げた後、上記植毛面が回動されて水平方向になることを特徴とする。
また請求項１３による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１乃至請求項１１のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が当初水平状態であり、垂直方向に移動するニードルが上記目に挿入されて１箇の緯を掬い上げた後、上記ニードルが９０°回動することを特徴とする。
また請求項１４による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１２記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し直角に位置することを特徴とする。
また請求項１５による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１２記載のかつらの植毛方法において、上記植毛面が水平方向に移動するニードルに対し鈍角に位置することを特徴とする。
また請求項１６による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１乃至請求項１６のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルがネット地の目に挿入された後、若干後退動作をすることを特徴とする。
また請求項１７による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１乃至請求項１６のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、上記ニードルが上方動作をする際、１回転することを特徴とする。
また請求項１８による本願発明によるかつらの自動植毛方法は、請求項１乃至請求項５のいずれか一記載のかつらの植毛方法において、各ステップが手動によりなされることを特徴とする。
また本願発明による機械植えかつら用材は、経と緯とからなる扁平状のネット地からなるベースと、該ベースに対し直交方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、上記ヘア材がネット地の目を通って緯の裏面側より引き出される一の部分と、ネット地の目を通った最先端部分に形成されるループ部に挿入されて緯の表面側より引き出される他の部分とからなり、上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の部分の側に内側より係止するとき、上記ヘア材が時計回りに回転された後、上記ニードルが当初係止する側に形成される他の部分に再係止され、次いで上記他の部分を上記ループ部より引き出すことにより、上記ヘア材が上記目を通る一方の側に位置する部分と上記目を通らない他方の側に位置する部分とにより上記ネット地の緯に内側と外側とから結び付けられることを特徴とする。
また本願発明による機械植えかつら用材は、経と緯とからなる扁平状のネット地からなるベースと、該ベースに対し直交方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、上記ヘア材がネット地の目を通って緯の裏面側より引き出される一の部分と、ネット地の目を通った最先端部分に形成されるループ部に挿入されて緯の表面側より引き出される他の部分とからなり、上記ニードルが進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材の一の部分の側に外側より係止するとき、上記ヘア材が反時計回りに回転された後、上記ニードルが当初係止する側とは反対側に形成される他の部分に再係止され、次いで上記他の部分を上記ループ部より引き出すことにより、上記ヘア材が上記目を通る他方の側に位置する部分と上記目を通らない一方の側に位置する部分とにより上記ネット地の緯に内側と外側とから結び付けられることを特徴とする。
また請求項２１による機械植えかつら用材は、請求項１９又は請求項２０記載の機械植えかつら用材において、回転方向の異なるヘア材が緯に対し規則的に植毛されることを特徴とする。
また請求項２２による機械植えかつら用材は、請求項１９又は請求項２０記載の機械植えかつら用材において、回転方向の異なるヘア材が緯に対し不規則的に植毛されることを特徴とする。

【発明の効果】

【0013】

本願発明によるかつらの自動植毛方法によれば、経と緯とからなる扁平状のネット地の緯に植毛する方法であり、ニードルがフック部を上向きにしてネット地の目に挿入されて前進動作し、ニードルの進行方向に対し直交方向に供されるヘア材を係止した後、上記ヘア材の一部を係止した状態で上記目から引き出し、次いで引き出されたヘア材を係止したまま１回転した後、上記ヘア材の最先端部に形成されるループ部に挿入された状態でさらに前進動作し、二股状に分れたヘア材の他の部分を再係止した後、上記他の部分を上記ループ部より引き出し、該引出しの際、上記ヘア材が上記目を通る一方の側に位置する部分と上記目を通らない他方の側に位置する部分とにより上記ネット地の緯に内側と外側とから結び付けられ、上記ステップを順次繰り返すことにより、扁平面状のネット地にヘア材を植毛するから、かつら製品を均質に、安定的に、迅速に製造することができる。また、ボリューム感のあるかつらの製造を図ることができる。

【0014】

また本願発明による機械植えかつら用材によれば、経と緯とからなる扁平状のネット地からなるベースと、該ベースに対し直交方向に往復動するニードルにより自動植毛されるヘア材とからなり、上記ヘア材がネット地の目を通って緯の裏面側より引き出される一の部分と、ネット地の目を通った最先端部分に形成されるループ部に挿入されて緯の表面側より引き出される他の部分とにより緯に内側と外側とから結び付けられることにより、かつら製品が均質化、安定化、迅速製造化することができ、また、かつら製品にボリューム感が形成される効果がある。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図2】（Ａ）は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、（Ｂ）は（Ａ）の次工程を示す図である。

【図3】（Ａ）は本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図、（Ｂ）は（Ａ）の要部拡大図である。

【図4】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図5】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図6】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図7】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図8】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図9】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図10】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図11】本願発明によるかつらの自動植毛方法の工程を示す図である。

【図12】本願発明によるかつらの自動植毛方法の要部の工程を示す図である。

【図13】本願発明によるかつらの自動植毛方法の他の要部の工程を示す図である。

【図14】本願発明によるかつら自動植毛機の要部を示す斜視図である。

【図15】（Ａ）は本願発明による機械植えかつら用材を示す正面図、（Ｂ）は図１６（Ｂ）のＸＶ部拡大図である。

【図16】（Ａ）は図１５（Ａ）のＸＶＩ部拡大図、（Ｂ）は（Ａ）のＢ－Ｂ断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

まず、本願発明によるかつら自動植毛機１を図１４に示す実施の形態に基づき説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図３乃至図１４において、便宜上、ニードル７の箇数を一部省略（本実施例では６箇のところ３箇として表示）した。
図１４に示すかつら自動植毛機１は中空のシリンダからなる回動軸３と、該回動軸３の周面に弦に沿って形成される扁平の植毛面形成部５と、当初垂直に位置する植毛面形成部５に対し直交方向に往復動するニードル７とを備えてなる。該ニードル７は回転可能かつ進退自在のホルダ８に支持されている。上記回動軸３にはベースとなるネット地１１が張設される。
９は水平方向に移動するニードル７に対し直交方向（垂直方向）に往復動するフックであり、図示しないストッカよりヘア材１３（図４に示す）を引き降ろす。なお、図示しないコントロールパネルにより、機体全体の設定調整を操作する。

【0017】

上記回動軸３は回動する主軸３ａが偏心されていて、水平方向への回動時に上記植毛面形成部５の位置が垂直方向に若干ｄ変動される。上記回動軸３の周面に弦に沿って形成される植毛面形成部５は、水平方向に移動するニードル７に対し当初直角に位置している。上記ニードル７は水平方向に次のように往復動する。即ち、ニードル７は植毛面形成部５が垂直面のとき前進動作して上記ネット地１１の目１７（図３（Ｂ）に示す）に挿入され、植毛面形成部５が水平面になる際緯１２ａを１本掬ってさらに前進動作する（図４）。このとき、即ちニードル７がネット地１１の目１７に挿入された状態で、上記回動軸３は植毛面形成部５を図１に示す垂直面から図３（Ａ）に示す水平面に回動される。この回動により、植毛面形成部５が垂直方向に若干ｄ（図１４に示す）降下されるので、上記ニードル７が植毛面６上の緯１２ａを１本掬い上げる。

【0018】

ニードル７は、図５に示すように、ヘア材１３を係止した後後退動作され（図６）、ループ端部１５となる部分を係止した状態で上昇動作する（図７）。これにより、ヘア材１３にループ１４（図１２（Ｄ）、図１３（Ｄ）に示す）が形成される。ニードル７は、上記ループ１４内に挿入された状態でさらに前進動作してヘア材１３の他の部分１３ａ（１６）を係止し、該他の部分１６を係止した状態で後退動作し、該他の部分１６を上記ループ１４内に挿入する（図９）。ニードル７は他の部分１６が上記ループ１４内に挿入された状態で後退動作し続け、図９から図１０に示すように、他の部分１６をネット地１１の目１７から引き抜く。これにより、ヘア材１３がネット地１１の緯１２ａにしっかりと結び目１９を形成して固着される（図１１）。ニードル７と回動軸３とは上記した一連の動作を順次繰返す。

【0019】

上記回動軸３には、上記動作をするニードル７が複数（本実施例では６本）設けられている。これにより、ネット地１１のｘ軸方向（図１５に示す）に６個の機械植えかつら用材２１が同時に植毛される。

【0020】

次にかつら自動植毛機１の動作を図１乃至図１３に基づき、詳細に説明する。まず、図１に示すように、ネット地１１が垂直方向に張設されている植毛面６に対し、水平方向に移動するニードル７（図１４に示す）が前進動作され、図２（Ａ）及び図１２（Ａ）、図１３（Ａ）に示すように、ネット地１１の目１７にフック部７ａを上向きにして挿入され、その後図２（Ｂ）に示すように、若干後退動作して緯１２ａを拾う。

【0021】

次いで、回動軸３が回動される。これにより、図３（Ａ）に示すように植毛面６が水平方向となる。この回動により、植毛面形成部５が垂直方向に若干ｄ降下されるので、上記ニードル７が植毛面６上の緯１２ａを１本掬い上げる。（図３（Ｂ））

【0022】

次いで、フック９（図４に示す）にて図示しないストッカよりヘア材１３が垂直方向に降下される。

【0023】

次いで上記ニードル７が目１７に挿入された状態で水平の植毛面６に沿って前進動作され、次いでフック部７ａを９０°回動させて前方に供給されているヘア材１３を係止する（図４、図５、図１２（Ａ）、図１３（Ａ））。

【0024】

次いで、上記ニードル７がヘア材１３を係止した状態で上記目１７を通って後退動作する（図６及び図１２（Ｂ）、図１３（Ｂ））

【0025】

次いで、上記ニードル７が１回転し（図１２（Ｃ）、図１３（Ｃ））、次いで上昇動作をして上記目１７を通ったヘア材１３を持ち上げる（図７）。これにより、二股１３ａ、１３ｂに分かれているヘア材１３の最先端部にループ１４が形成される（図８）。

【0026】

次いで上記ニードル７は上記ループ１４に挿入された状態でさらに前進動作し、９０°回転させて、ヘア材１３の二股に分れた一方の部分即ち他の部分１６を再係止する（図８及び図１２（Ｄ）、図１３（Ｄ））。

【0027】

次いで上記ニードル７は後退動作する。これにより、図８から図９及び図１２（Ｅ）、図１３（Ｅ）に示すように、上記他の部分１６は上記ループ１４中に挿入される。

【0028】

次いで上記ニードル７は、上記他の部分１６をループ１４に挿入した状態で後退動作し続け、フック部７ａを上向きにした後、ループ状に曲げられたヘア材１３を上記目１７から引き抜く（図１０）。この目１７からの引き抜きの際、ヘア材１３が、図１２の場合は、上記目１７を通る内側のヘア材１３ｂと上記目１７を通らない外側のヘア材１３ａとにより、内側と外側とから緯１２ａに結び目１９（図１１、図１５（Ｂ）に示す）を形成してしっかりと固着される。また図１３の場合は、ヘア材１３が上記目１７を通る内側のヘア材１３ａと上記目１７を通らない外側のヘア材１３ｂとにより、内側と外側とから緯１２ａに結び目１９（図１１、図１５（Ｂ）に示す）を形成してしっかりと固着される。

【0029】

ここで、図１２及び図１３を参照してヘア材１３を係止した後の回転について、説明する。ニードル７が進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材１３に挿入され、図１２（Ａ）において左側に位置するヘア材１３ａに内側より係止するときは、ヘア材１３は図１２（Ｃ）に示すように時計回りに回転される。この場合ニードル７が再係止する他の部分１６は、図１２（Ｄ）に示すように左側に位置する当初係止するヘア材１３ａ側である。
他方、図１３（Ａ）に示すように、ニードル７が進行方向の両側にループ状に供給されるヘア材１３ａに外側より係止するときは、ヘア材１３は図１３（Ｃ）に示すように反時計回りに回転される。この場合ニードル７が再係止する他の部分１６は、図１３（Ｄ）に示すように、当初係止するヘア材１３ａとは反対側の右側に位置するヘア材１３ｂである。
他の部分１６を再係止した目１７は、図１２（Ａ）乃至図１２（Ｅ）又は図１３（Ａ）乃至図１３（Ｅ）いずれの場合も本例では計４５０°回転される。

【0030】

上記ニードル７は回動軸３の植毛面形成部５に張設されているネット地１１に対し、上記一連の動作を図１１に示すｘ軸方向に目１７の箇数分の回数繰り返す。ｘ軸方向への所定回数の植毛が終了すると、ネット地１１が緯１２ａ１本分ｙ軸方向に移動され、次の緯１２ａ‘に対し上記した一連の動作が繰り返される。

【0031】

上記植毛は、緯１２ａに対し時計回りに回転して植毛されたヘア材１３と反時計回りに回転して植毛されたヘア材１３とを混在させることができる。この混合植毛は規則的にされてもよいし、不規則的にされてもよい。前者の場合、時計回り植毛と反時計回り植毛とを交互にすることができる。
上記混合植毛は、ｙ軸方向に沿って１目ごとにすることもできるし、複数目ごとにすることもできる。
またｘ軸方向に沿って１目ごとにすることもできるし、複数目ごとにすることもできる。

【0032】

かくして設定された植毛が終了すると、図１５に示す機械植えかつら用材２１が完成する。

【0033】

次に図１５に基づき、本願発明による機械植えかつら用材２１を説明する。植毛が完了した機械植えかつら用材２１はネット地１１の上に複数（図示例の場合は３０個）形成される（図１５（Ａ））。これらの機械植えかつら用材２１は、ベース１０となるネット地１１の裏面に他のネット地２０（図１６（Ｂ）に示す）が固着され、各個に切離され、これによりかつら製品となる（図１６（Ａ）、（Ｂ））。この他のネット地２０が頭皮に装着される被装着面となる。この機械植えかつら用材２１は、ネット地１１の緯１２ａ上に、確実にヘア材１３が固着されている。ネット地１１はポリアミド系合成繊維からなる緯１２ａ及びポリアミド系合成繊維からなる経１２ｂが織成されてなる。ベースは扁平の平面状に形成される。ネット地１１を構成する緯１２ａ、経１２ｂの繊維の形状、太さは任意である。本実施例では断面形状が円形で、繊維径が緯１２ａが１１０μｍ、経１２ｂが１３０μｍのものを使用する。目１７の大きさも任意である。本実施例では、各目１７の短辺の長さは０．５ｍｍ、長辺の長さは略２倍の０．９ｍｍに形成される。ヘア材１３の植毛の仕方は任意である。例えば、連続する目１７のすべての緯１２ａに連続してヘア材１３を植毛してもよいし、断続的にヘア材１３を植毛してもよい。

【0034】

このように構成された機械植毛かつら用材２１は、平面状に形成されたまま、汎用性のある在庫品として保管される。そして需要に応じユーザの頭部形状に合うよう３次元形状にカスタマイズ化され、かつらとして使用される。

【0035】

上記実施の形態によれば、機械による自動植毛であるから、かつら用材２１を迅速にかつ安定的に製造することができる。しかも製造されるかつら用材は均質であり、事実上不良品の発生を一掃することができる。本実施例では所定面積のネット地１１に対し６個×５列＝３０箇のかつら用材を約６時間で製造するから、かつら用材の製造時間は１個当たり約１２分となる。よって、同面積の植毛を従来１０時間要していたとすると、従来に比し約５０倍の生産効率となる。この製造時間は、所定面積のネット地１１に対するかつら用材の個数設定により増加することは可能なので、さらなる短縮化が可能であり、コストの低減化も可能である。

【0036】

またかつら用材の完全機械化により、職人の人為的原因による不良を一掃することができ、製品の品質が安定化し、均質性も維持される効果がある。

【0037】

上記したように、２股に分かれたヘア材１３が、内側即ち緯１２ａの裏面側と、外側即ち緯１２ａの表面側とから緯１２ａにしっかりと結び付けられるため、緯１２ａにゆるまずに固着される。このため、結び目１９が緯１２ａに保持されるので、ヘア材１３が自然毛の如く立ち上がり、植毛されたヘア材１３にボリューム感がでるのである。

【0038】

ボリューム感に関し、別の観点からみると、次に述べるように上記実施の形態によれば、毛流がランダムになるため、隣接するヘア材１３が互いに接触することにより、立体的なボリューム感となり、適正な毛量感を再現することができる。この点、従来は毛量を必要以上に増加して植毛することにより、ボリュームを出していたため、不自然なかつらとなっていた。

【0039】

また、機械植毛であるため、時計回り植毛と反時計回り植毛とを毎回変更することも、交互に変更することも、不規則的に変更することも自在に行うことができる。自然毛は毛の方向性が不規則的であるため、本願発明によれば自然毛の如き植毛を効率よく実現することができる。

【0040】

本願発明は上記実施の形態に限定されない。例えば、かつらの自動植毛方法について言えば、上記実施の形態とは反対に、植毛面６が当初水平状態とされ、ニードル７が目１７に挿入されて１箇の緯１２ａを掬い上げた後、上記ニードル１７の方を９０°回動するようにしてもよい。また、植毛面の当初の位置は、直角だけでなく、鈍角にして植毛面をやや上向きにすることができる。さらに、ヘア材１３のループ形成において、ニードル７の回転と上昇動作を同時にしてもよい。

【0041】

他の部分１６を再係止した目１７の回転については、他の部分１６を緯１２ａに固着させるための１回転即ち３６０°の回転と、ニードル７のフック部７ａが目１７を通過するに当たり上向きに位置修正するための回転即ち９０°程度の回転が確保されれば、正確に４５０°でなくてもよい。即ち、フック部７ａが他の部分１６の再係止を確保していれば多少傾斜していてもよい。

【0042】

図１２（Ａ）～（Ｅ）においてニードル７のフック部７ａが図示例とは反対側のヘア材１３ｂを内側から係止する場合も、再係止するヘア材１３は当初係止するヘア材１３ｂである。この場合もニードル７の回転方向は時計回りである。

【0043】

図１３（Ａ）～（Ｅ）においてニードル７のフック部７ａが図示例とは反対側のヘア材１３ｂを外側から係止する場合も、再係止するヘア材１３は当初係止したのとは反対側のヘア材１３ａである。この場合もニードル７の回転方向は反時計回りである。

【0044】

また機械植えかつら用材２１について言えば、ネット地１１を構成する繊維又は／及びヘア材を任意に変更可能であるから、ユーザの好みに応じた多様なバリエーションとすることができる。
またネット地２０は、これを付加せずにかつらとして使用することもできる。
ネット地１１の構成は任意である。またネット地１１を構成する緯１２ａ又は／及び経１２ｂの構成は任意である。またネット地１１の目１７のサイズも変更可能である。

【産業上の利用可能性】

【0045】

本願発明はかつらに活用することができる。また部分かつらとしてかつらの一部分としても活用することができる。

【符号の説明】

【0046】

１ かつら自動植毛機
３ 回動軸
３ａ 主軸
５ 植毛面形成部
６ 植毛面
７ ニードル
７ａ フック部
８ ホルダ
９ フック
１０ ベース
１１ ネット地
１２ａ 緯
１２ｂ 経
１３ ヘア材
１３ａ ヘア材
１３ｂ ヘア材
１４ ループ
１５ ループ端部
１６ 他の部分
１７ 目
１９ 結び目
２０ 他のネット地
２１ 機械植えかつら用材

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】