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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】薬液供給装置及び血液浄化システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
A61M1/16 185
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019102812
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020192288
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2019097204
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 毅
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄貴
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249746(JP,A)
【文献】特開2018-050751(JP,A)
【文献】特開2017-074086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の血液浄化装置の配管内に対して、洗浄及び消毒の少なくとも一方を行う洗浄消毒処理を実行するため、前記複数の血液浄化装置に薬液を送液する薬液送液部と、
前記複数の血液浄化装置と通信する通信部と、
前記通信部が前記複数の血液浄化装置と通信することによって、前記洗浄消毒処理の開始から前記複数の血液浄化装置の全てについての前記洗浄消毒処理が完了するまでの期間である完了時間を検出する検出部と、
前記洗浄消毒処理において前記薬液の無駄な消費が生じること及び前記洗浄消毒処理が不十分となることを抑制するよう前記完了時間に応じて設定される期間である工程時間に従って、前記薬液送液部を制御して前記複数の血液浄化装置に前記薬液を送液するように制御する制御部と、
を備える、薬液供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記洗浄消毒処理中の前記複数の血液浄化装置の稼働状況に応じて、前記洗浄消毒処理中に前記工程時間を変更可能に構成されている、
請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記完了時間は、前記薬液が送液される前に用いられた清浄水が前記薬液に置換された時と、前記複数の血液浄化装置のそれぞれにおいて予め定められた、前記複数の血液浄化装置のそれぞれにおける前記洗浄消毒処理に要すると推定される期間である推定所要時間と、に応じて特定される、
請求項1又は2に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記複数の血液浄化装置のそれぞれの前記洗浄消毒処理が完了する時とともに、前記工程時間の候補値を表示する表示制御手段をさらに備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の薬液供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記完了時間に応じて前記工程時間を自動で更新する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の薬液供給装置。
【請求項6】
前記薬液に加えて、透析液を送液する請求項1乃至の何れか1項に記載の薬液供給装置と、
前記薬液供給装置から送液された透析液を用いて、患者に血液浄化治療を施す複数の血液浄化装置と、を備える、
血液浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液供給装置及び血液浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
透析の治療に用いる透析治療用セントラルシステム(以下、「血液浄化システム」ともいう。)において、透析液を調製し各透析用監視装置(以下、「透析装置」ともいう。)に供給する透析液供給装置が用いられている。また、透析液供給装置は、透析装置の各々が自装置の洗浄及び消毒を行うための薬液を調製して各透析装置に供給する(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5483741号公報
【文献】特許第5341137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
洗消工程の工程時間をユーザが設定し、設定の工程時間に従って、薬液の送液制御を行っていた。実際の完了時間より長い工程時間に設定してしまうと、薬液を必要以上に消費してしまう。逆に、実際の完了時間より短い工程時間に設定しまうと、洗浄消毒が不十分となる。
【0005】
そこで、本発明は、薬液を無駄に消費することなく、洗浄消毒を適切に実施できる薬液供給装置及び血液浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の態様による薬液供給装置は、複数の血液浄化装置の配管内に対して、洗浄及び消毒の少なくとも一方を行う洗浄消毒処理を実行するため、前記複数の血液浄化装置に薬液を送液する薬液送液部と、前記複数の血液浄化装置と通信する通信部と、前記通信部が前記複数の血液浄化装置と通信することによって、前記洗浄消毒処理の開始から前記複数の血液浄化装置の全てについての前記洗浄消毒処理が完了するまでの期間である完了時間を検出する検出部と、前記洗浄消毒処理において前記薬液の無駄な消費が生じること及び前記洗浄消毒処理が不十分となることを抑制するよう前記完了時間に応じて設定される期間である工程時間に従って、前記薬液送液部を制御して前記複数の血液浄化装置に前記薬液を送液するように制御する制御部と、を備える。
【0007】
また、本発明の他の実施の態様による血液浄化システムは、前記薬液に加えて、透析液を送液する上述の薬液供給装置と、前記薬液供給装置から送液された透析液を用いて、患者に血液浄化治療を施す複数の血液浄化装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薬液を無駄に消費することなく、洗浄消毒を適切に実施できる薬液供給装置及び血液浄化システムを提供する薬液供給装置及び血液浄化システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る血液浄化システムの一例を示す概略構成図である。
図2図1に示す透析液供給装置の制御系の一例を示すブロック図である。
図3図1に示す透析用監視装置の制御系の一例を示すブロック図である。
図4】洗浄及び消毒の工程の一例を示すフローチャートである。
図5図1に示す血液浄化システムの動作の一例を示すシーケンス図であり、(a)は、透析液供給装置の動作の一例を示す図であり、(b)は、一の透析装置の動作の一例を示す図であり、(c)は、他の透析装置の動作の一例を示す図である。
図6図1に示す血液浄化システムの動作の一例を示すシーケンス図であり、(a)は、透析液供給装置の動作の一例を示す図であり、(b)は、一の透析装置の動作の一例を示す図である。
図7】洗消記録画面の一例を示す図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る血液浄化システムの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図1~7にしたがって説明する。
(血液浄化システム)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る血液浄化システムの一例を示す概略構成図である。図1に示すように、血液浄化システム1は、患者に透析治療を施すための複数の、血液浄化用装置の一例としての透析用監視装置(以下、「透析装置」ともいう。)3と、患者の血液浄化に用いられる血液浄化液としての透析液や透析装置の配管等の洗浄及び消毒に用いる薬液(以下、「洗消液」ともいう。)をそれぞれ調製して透析装置3に供給する、薬液供給装置の一例としての透析液供給装置2と、透析液供給装置2と各透析装置3との間で透析液や洗消液を搬送する供給ライン10(図1の実線参照。)と、透析液供給装置2と各透析装置3とを通信可能に接続する信号線11(図1の破線参照。)と、を備えている。洗消液は、薬液の一例である。
【0011】
透析液供給装置2は、供給された透析用水を用いて所定の濃度の透析液や洗消液を調製し、調製した透析液や洗消液を各透析装置3に供給する。透析液供給装置2で調製された透析液は、供給ライン10を介して各透析装置3に供給される(図1の矢印参照)。
【0012】
透析装置3は、患者に透析治療を施すための血液浄化器(ダイアライザ、不図示)に応じて複数台設置され、透析液供給装置2から供給された透析液を各血液浄化器に供給する。血液浄化器から排出された老廃物等を含んだ透析液は、図示しない排液流路へと排出されるようになっている。
【0013】
本実施の形態に係る血液浄化システム1では、信号線11を介して、透析液供給装置2と各透析装置3とが通信可能に構成されており、透析液供給装置2において、各透析装置3の稼働状況を検知できるようになっている。なお、透析液供給装置2と各透析装置3との間の通信形態は信号線11を用いた有線通信に限定されず、例えば、無線通信であってもよい。
【0014】
(透析液供給装置2)
図2は、図1に示す透析液供給装置2の制御系の一例を示すブロック図である。図2に示すように、透析液供給装置2は、各部を制御する制御部20と、各種の情報を記憶する記憶部21と、透析液や洗消液の調製を行う調製部22と、調製された透析液や洗浄液を各透析装置3に送液する送液部23と、情報の入力及び表示を行う操作表示部24と、各透析装置3との間で信号線11を介して通信を行う通信部25と、備えている。調整部22は、薬液調製部の一例である。送液部23は、薬液送液部の一例である。
【0015】
〔制御部20〕
制御部20は、CPU等の演算素子、及びソフトウェアやインターフェイス等を適宜組み合わせて実現される。制御部20は、ソフトウェア(不図示)に実装されたプログラムに従って動作することにより、受信手段200、送信手段201、弁制御手段202、ポンプ制御手段203、表示制御手段204等として機能する。各手段200~204の詳細については後述する。
【0016】
〔記憶部21〕
記憶部21は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等から構成され、システム構成情報210、洗消工程時間情報211、洗消完了時間情報212等の各種のデータを記憶する。
【0017】
システム構成情報210は、血液浄化システム1の構成に関する情報である。システム構成情報210には、例えば、各透析装置3を特定するID等の識別情報や設定情報、透析装置3の配置情報等が含まれる。
【0018】
洗消工程時間情報211は、透析液供給装置2が洗浄及び消毒の工程(以下、「洗浄消毒工程」又は単に「洗消工程」ともいう。)を継続する時間(以下、「洗消工程時間」又は単に「工程時間」ともいう。)を示す情報である。ここで、「洗消工程時間」は、例えば、透析液供給装置2が洗消液の送液を継続する時間(以下、「送液時間」ともいう。)として与えられる。また、洗消工程時間は、経験則等に基づいてユーザによって予め設定される固定値である。洗消完了時間情報212は、洗消工程が完了した時間を透析装置3ごとに記録した情報である。
【0019】
〔調製部22〕
調製部22は、供給された透析用水で透析液原液を希釈し透析液を調製するとともに、供給された透析用水で洗消液原液を希釈し洗消液を調製する。調製部22は、一端から透析用水が供給される送液ライン(不図示)を開閉することで透析用水の供給の有無を切替可能な給水弁220と、透析液を生成するための透析液原液を貯留する原液タンク4Aから透析液原液を送液ラインに注入する原液注入ポンプ221と、洗消液原液を貯留する洗消液タンク4Bから洗消液原液を送液ラインに注入する洗消液注入ポンプ222と、を備えている。洗消液原液は、薬液原液の一例である。
【0020】
給水弁220としては、例えば、電磁弁や電動弁等を用いることができる。原液注入ポンプ221及び洗消液注入ポンプ222としては、例えば、ピストンポンプを用いることができる。
【0021】
なお、図2に示す例では、原液タンク4A及び洗消液タンク4Bを透析液供給装置2の外部に設ける構成を例に挙げて説明しているが、原液タンク4A及び洗消液タンク4Bはそれぞれ、透析液供給装置2の内部に設けられていてもよい。例えば、原液タンク4A及び洗消液タンク4Bは、調製部22の構成要素の一つとして設けてもよい。
【0022】
原液は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。例えば、原液は、A原液及びB原液の2種類からなるものでもよい。この場合、原液ごとに2つの原液タンク4A(すなわち、A原液タンク及びB原液タンク)を設けてもよい。洗消液は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。洗消液としては、例えば、酸洗浄液、過酢酸消毒液、次亜系消毒液等を用いてよい。
【0023】
〔送液部23〕
送液部23は、調製部22で調製した透析液や洗消液を貯留する貯槽230と、貯槽230内の透析液や洗消液を送液する送液ポンプ231と、を有している。貯槽230には、送液ラインが接続されており、この送液ラインから透析液や洗消液が供給されるようになっている。
【0024】
送液ポンプ231は、供給ライン10に設けられている。送液ポンプ231としては、例えば、遠心ポンプを用いることができる。
【0025】
〔操作表示部24及び通信部25〕
操作表示部24は、例えば、タッチパネルディスプレイであり、液晶ディスプレイ等のディスプレイにタッチパネルを重合配置した構成を有する。また、操作表示部24は、タッチパネルディスプレイに限られず、透析液供給装置2の外部に設けられた端末装置(不図示)のディスプレイでもよい。通信部25は、信号線11を介して透析装置3との間で信号を送受信する。
【0026】
〔制御部20の各手段200~204〕
次に、制御部20を構成する各手段200~204の詳細について説明する。受信手段200は、通信部25を制御して信号線11を介して透析装置3から送信された各種の情報を受信する。送信手段201は、透析装置3に対し、信号線11を介して透析装置3を制御するための制御信号等の情報を送信する。
【0027】
弁制御手段202は、給水弁220の開閉を制御する。給水弁220が閉じられると、透析用水の供給量がゼロとなり、これに応じて原液の注入量もゼロとなり、透析液や洗消液の調製(あるいは、透析液や洗消液の希釈)が停止されるようになっている。つまり、弁制御手段202は、給水弁220の開閉により、透析液や洗消液の調製の有無を制御する。
【0028】
ポンプ制御手段203は、透析液供給装置2内の各種のポンプ、すなわち、原液注入ポンプ221、洗消液注入ポンプ222及び送液ポンプ231を制御する。具体的には、ポンプ制御手段203は、透析用水の供給量に応じて透析液原液の注入量(すなわち、原液注入ポンプ221の吐出量)を制御することで、透析液を所定の濃度に調整する。また、ポンプ制御手段203は、透析用水の供給量に応じて洗消液原液の注入量(すなわち、洗消液注入ポンプ222の吐出量)を制御することで、洗消液を所定の濃度に調整する。なお、事前に薬液を注入する処理であってもよい。
【0029】
表示制御手段204は、例えば、洗消記録画面5(図7参照)等の表示画面を操作表示部24に表示するよう制御する。
【0030】
(透析装置3)
図3は、透析装置3の制御系の一例を示すブロック図である。図3に示すように、透析装置3は、各部を制御する制御部30と、各種の情報を記憶する記憶部31と、透析液及び薬液の検知を行うセンサ部32と、情報の入力及び表示を行う操作表示部34と、透析液供給装置2との間で信号線11を介して通信を行う通信部35と、備えている。センサ部32は、検出部の一例である。
【0031】
透析装置3の操作表示部34及び通信部35は、上述した透析液供給装置2の操作表示部24及び通信部25と実質的に同一の機能を有するものであるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
〔制御部30〕
透析装置3の制御部30は、受信手段300、送信手段301、検知手段302等として機能する。各手段300~302の詳細については後述する。
【0033】
〔記憶部31〕
透析装置3の記憶部31は、洗消時間推定情報310等のデータを記憶する。洗消時間推定情報310は、基準となる時間(以下、単に「基準時間」ともいう。)から洗消工程が完了するまでに要すると推定される時間(以下、「推定洗消所要時間」ともいう。)を示すパラメータ情報である。洗消時間推定情報310は、ユーザの操作によって経験則等に基づいて予め設定される固定値である。洗消時間推定情報310は、例えば、時間として与えられてもよく、洗消液の容量として与えられてもよい。
【0034】
具体的には、洗消工程が完了する時間(以下、「洗消完了時間」ともいう。)は、基準時間と、洗消時間推定情報310として記録された情報とに応じて特定される。より具体的には、洗消完了時間は、基準時間から、洗消時間推定情報310として記憶部31に記憶された、予め定められた時間が経過したときの時間としててもよい。あるいは、洗消完了時間は、基準時間から、洗消時間推定情報310として記憶部31に記憶された、予め定められた容量の洗消液が透析装置3に送液されたときの時間をとしてもよい。
【0035】
基準時間には、例えば、後述する前洗浄(図4のS2参照。)で用いた透析用水としての清浄水(具体的には、RO(Reverse Osmosis)膜処理が施されたRO水等)が洗消液に置換された時間、より具体的には、RO水の洗浄液への置換が完了した時間(以下、「置換完了時間」ともいう。)を用いてよい。ここで、「置換完了時間」は、例えば、センサ部32により、当該透析装置3の配管部(不図示)に洗消液が注入されたことが検知された時間としてよい。なお、基準時間は、必ずしもRO水の洗消液への置換が完了した時間に限られず、例えば、透析液供給装置2によって当該透析装置3への洗消液の送液が開始された時間としてもよい。透析装置3は、洗消時間推定情報が経過すると、ステータスを消毒終了状態に更新し、透析液供給装置2にステータスを通知している。
【0036】
〔センサ部32〕
センサ部32は、透析装置3に送液された洗消液を検知する少なくとも1つのセンサを含んで構成される。一例として、センサ部32には、例えば、配管部を流れる流体物の電導度を測定する電導度計320や、当該流体物の吸光度を測定する吸光度計321等が含まれる。センサ部32は、透析装置3の配管部の所定の位置に設けられる。
【0037】
〔透析装置3の制御部30の各手段300~302〕
次に、透析装置3の制御部30を構成する各手段300~302の詳細について説明する。受信手段300は、透析装置3の通信部35を制御して信号線11を介して透析液供給装置2から送信された制御信号等の情報を受信する。
【0038】
送信手段301は、透析液供給装置2に対し、信号線11を介して透析装置3の稼働状況を示す情報等の各種の情報を送信する。なお、「稼働状況を示す情報」には、例えば、洗消工程が完了したことを示す情報やその時間(すなわち、洗消完了時間情報212)等の情報が含まれる。検知手段302は、センサ部32を制御して、配管部のRO水が洗消液に置換されたことを検知する。
【0039】
(洗消工程)
図4は、洗消工程の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、洗消工程は、透析液の供給が終了した後(S1)、透析装置3を前洗浄する工程(S2)、各透析装置3の配管部を洗浄及び消毒する洗消工程(S3)、及び透析装置3を後洗浄する工程(S4)を含む。
【0040】
ここで、「透析液の供給の終了」とは、一患者に対する1回の治療(脱血、透析及び返血からなる一連の処置をいう。)が終了したことをいう。「前洗浄」とは、配管部にRO水を注入して透析液の残留を洗い流すことをいう。
【0041】
洗消工程では、各透析装置3に洗消液が送液され、透析装置3の洗浄及び消毒が行われる。洗消工程で複数の種類の洗消液が用いられる場合、一の洗消液から他の洗消液に切り替える間に、RO水により当該一の洗消液を洗い流す工程をさらに含んでもよい。
【0042】
「後洗浄」とは、配管部にRO水を注入して洗消液(複数の洗消液が用いられる場合は、最後に用いられた洗消液)の残留を洗い流すことをいう。
【0043】
(血液浄化システム1の動作)
次に、第1の実施の形態に係る血液浄化システム1の動作の一例について説明する。以下の説明では、血液浄化システム1の動作を、(1)洗消工程時間を短縮した場合、及び(2)洗消工程時間を延長した場合、に分けてそれぞれ説明する。
【0044】
(1)洗消工程時間を短縮する場合の動作
図5は、図1に示す血液浄化システム1の動作の一例を示すシーケンス図であり、(a)は、透析液供給装置2の動作の一例を示す図であり、(b)は、複数の透析装置3のうち最も上流側に配置されている透析装置3(以下、特に他の透析装置3と区別して特定する場合は「最上流の透析装置3A」ともいう。)の動作の一例を示し、(c)は、複数の透析装置3のうち最も下流側に配置されている透析装置3(以下、特に他の透析装置3と区別して特定する場合は「最下流の透析装置3Z」ともいう。)の動作の一例を示す。
【0045】
ここで、「上流」とは、透析液供給装置2に近い側をいい、「下流」とは、透析液供給装置2に遠い側をいう。なお、「最上流」とは、必ずしも、複数の透析装置3の中で透析液供給装置2との距離が最小となっているものに限られず、複数の透析装置3の中で最初に洗消工程が開始又は完了するものを含めるものとする。「最下流」についても、同様に、複数の透析装置3の中で最後に洗消工程が開始又は完了するものを含めるものとする。
【0046】
また、以下の説明では、横軸の時間軸において、血液浄化システム1における洗消工程が開始された時間を「t」、最上流の透析装置3Aの洗消工程が完了した時間を「t」、最下流の透析装置3Zの洗消工程が完了した時間を「t」とする。
【0047】
ここで、血液浄化システム1における洗消工程が開始された時間tは、例えば、透析液供給装置2による洗消液の送液が開始された時間としてよい。また、最下流の透析装置3Zの洗消工程が完了した時間tは、血液浄化システム1全体の洗消工程が完了した時間でもある。
【0048】
なお、比較例における透析液供給装置が洗消工程を完了する時間をtとする(図9参照。)。この時間tは、透析液供給装置が透析装置3に対する洗消液の送液を終了する時間である。また、比較例における透析液供給装置には、洗消工程時間として、洗消液の送液が終了する時間tと洗消工程が開始された時間tとの差(t-t)に相当する時間が予め設定されている。本動作の説明では、比較例における透析液供給装置が洗消工程を完了する時間tは、最下流の透析装置3Zの洗消工程が実際に完了する時間tよりも後になるように設定されているものとする(すなわち、t<t)。
【0049】
図5(a)に示すように、透析液供給装置2は、洗消工程時間情報211として予め設定された洗消工程時間に従い、当該透析液供給装置2に接続している複数の透析装置3に対して洗消液の送液を行う(図5(a)の破線両矢印参照。)。ここで、本実施の形態に係る透析液供給装置2に予め設定された洗消工程時間は、最下流の透析装置3Zの洗消工程が実際に完了する時間tと最上流側の透析装置3Aの洗消工程が完了した時間をtとの差(t-t)に相当する時間としてよい。洗消工程時間の具体例については、後述する(図7参照。)。
【0050】
洗消液は、設定された洗消工程時間(t-t)の間、上流側から下流側に向かって供給され続ける。そして、透析液供給装置2から供給された洗消液は、上流側の透析装置3から下流側の透析装置3に順に取り込まれる。すなわち、洗消液は、まず、最上流の透析装置3Aに取り込まれ、次に、下流側の透析装置3に順に取り込まれ、最後は、最下流の透析装置3Zに取り込まれる。
【0051】
なお、透析液供給装置2が洗消液の送液を開始してから洗消液が各透析装置3に取り込まれるまでの時間は、例えば、透析液供給装置2と当該各透析装置3との間の供給ライン10の距離や、洗消液の送液の速度(すなわち、単位時間の洗消液の送液量)等によって決まる。
【0052】
透析装置3は、洗消液を取り込むと洗消工程を開始する。本実施の形態に係る血液浄化システム1の構成では、まず、最上流の透析装置3Aで洗浄・消毒(洗消工程)が開始され、順に、下流側の透析装置3で洗消工程が開始され、最後に、最下流の透析装置で洗消工程が開始される。
【0053】
また、各透析装置3において、洗消工程の開始から予め定められた時間が経過すると、洗消工程を完了する。ここで、予め定められた時間は、例えば、上述した洗消時間推定情報310として記録された時間である。本実施の形態に係る血液浄化システム1の構成では、図5(b)に示すように、まず、最上流の透析装置3Aでの洗消工程が完了する(「t」参照。)。次に、下流側の透析装置3での洗消工程が順に完了する。最後に、最下流の透析装置3Zでの洗消工程が完了する(「t」参照。)。
【0054】
最下流の透析装置3Zにおける洗消工程が完了したとき(「t」参照。)、透析液供給装置2に予め設定された洗消工程時間(すなわち、(t-t))が経過し、透析液供給装置2による洗消液の送液が完了するようになっている。
【0055】
以上のように、予め定められた適切な洗消工程時間を透析液供給装置2に設定しておき、透析液供給装置2がこの適切な洗消工程時間に従って洗消液の送液を停止することにより、比較例に対して、透析液供給装置2による洗消液の送液時間を短縮することができる。このようにすれば、当該透析液供給装置2に接続されている全ての透析装置3において洗消工程が終了した後に洗消液を送液し続けてしまうことによる洗消液の無駄な消費を抑制し洗消液の消費量を削減することができる。
【0056】
(2)洗消工程時間を延長する場合の動作
図6は、図1に示す血液浄化システム1の動作の一例を示すシーケンス図であり、(a)は、透析液供給装置2の動作の一例を示す図であり、(b)は、複数の透析装置3のうちいずれかの透析装置3(以下、特に他の透析装置3と区別して特定する場合は「いずれかの透析装置3N」ともいう。)の動作の一例を示す図である。本動作の説明では、比較例における透析液供給装置が洗消工程を完了する時間tは、当該いずれかの透析装置3Nの洗消工程が実際に完了する時間tよりも前になるように設定されているものとする(すなわち、t<t)。
【0057】
以下、図6(b)に示すように、いずれかの透析装置3Nにおいて、洗消工程中に何らかの原因によって透析装置3が一時的に動作しなくなった場合を例に挙げて説明する。図6(b)では、透析装置3が一時的に動作しなくなった場合の一例として、ある時間tに透析装置3の配管部が停止し、その後tに当該配管部の動作が再開した場合を例に挙げて説明する。
【0058】
図6(a)に示すように、透析液供給装置2は、記憶部21に洗消工程時間情報211として設定された洗消工程時間に応じて、当該透析液供給装置2に接続している複数の透析装置3に洗消液の送液を行う(図6(a)の破線両矢印参照。)。
【0059】
ここで、洗消工程時間は、(t-t)に相当する時間としてよい。なお、洗消工程時間(t-t)は、洗消工程が中断した時間(t-t)に応じて定めてよい。洗消工程時間を上記の値に設定することによって、いずれかの透析装置3Nで洗消工程が一時的に中断した場合であっても、透析液供給装置2は、当該いずれかの透析装置3Nでの洗消工程が終了するまで(「t」参照。)、洗消液の送液を継続することができる。
【0060】
このようにすれば、いずれかの透析装置3Nで洗消工程が一時的に中断し、かつ、中断した時間(t-t)が一定の長さ以上となって、比較例において、洗消液の送液が完了する時間tまでに洗消工程が完了しない場合であっても、洗消及び消毒が不十分な状態のままにせず、再開した洗消工程を最後まで実行し完了させることができる。
【0061】
また、洗消工程時間は、必ずしも固定値に限られず、洗消工程中に変更可能な変動値であってもよい。具体的には、例えば、透析装置3が動作しなくなったとき(例えば、配管部の停止が検知されたとき)に、比較例において予め設定された値(例えば、(t-t))から上記の中断した時間を考慮した時間(例えば、(t-t))に変更してもよい。
【0062】
(表示画面)
図7は、洗消記録画面の一例を示す図である。上述したように、洗消記録画面5は、各透析装置3から透析液供給装置2に送信された洗消完了時間情報212に応じて作成され、表示制御手段204によって透析液供給装置2の操作表示部24に表示するよう制御される。
【0063】
図7に示すように、洗消記録画面5には、例えば、以下の情報が含まれる。洗消記録画面5に含まれる情報を以下の表1にまとめる。
【0064】
【表1】
【0065】
洗消記録画面5は、予め透析液供給装置2に設定すべき適切な洗消工程時間を表示する。この適切な洗消工程時間は、複数の透析装置3のそれぞれの洗消完了時間(特に、最後の洗消完了時間)から求められる。ユーザは、洗消記録画面5に表示される情報を参照して、適切な洗消工程時間を予め透析液供給装置2に設定することができる。例えば、図7に示す例では、ユーザは、透析液供給装置2に、適切な洗消工程時間として洗消完了時間欄53に表示された「70分」とのパラメータを予め設定してよい。「適切な洗消工程時間」は、洗消工程時間の候補値の一例である。
【0066】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る血液浄化システム1について、説明する。図8は、本発明の第2の実施の形態に係る血液浄化システム1の一例を示す概略構成図である。第2の実施の形態に係る血液浄化システム1は、溶解装置6及び水処理装置7をさらに備える点で、第1の実施の形態に係る血液浄化システム1と相違する。以下、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0067】
血液浄化システム1は、第1の実施の形態に係る血液浄化システム1の構成に加えて、透析液供給装置2と供給ライン10を介して接続する溶解装置6及び水処理装置7をさらに備える。また、これら溶解装置6及び水処理装置7は、信号線11を介して、透析液供給装置2と通信可能に構成されている。
【0068】
溶解装置6は、透析剤とRO水とを混合して透析液の原液を生成する。水処理装置7は、内部に濾過膜等を内在した濾過部(不図示)を備え、原水を濾過してRO水を生成する。これら溶解装置6及び水処理装置7は、透析液供給装置2の制御により、透析装置3と同じタイミングで洗消工程が行われるように構成されている。
【0069】
本実施の形態では、ユーザが設定する作業を行わなくても、透析液供給装置2による洗消液の送液時間が変更されるようになっている。具体的には、透析液供給装置2の制御部20は、記憶部21に記憶された洗消完了時間情報212に応じて、洗消工程時間情報211を更新する。透析液供給装置2は、更新された最新の洗消工程時間情報211に応じて送液を継続する。
【0070】
以上のようにすれば、透析液供給装置2は、透析装置3、溶解装置6及び水処理装置7に対し、適切な洗消工程時間で洗消液を送液することができるため、洗浄及び消毒が不足の状態で洗消工程を完了することなく、かつ、洗消液の無駄な消費を抑えることができる。
【0071】
(変形例)
透析液供給装置2は、洗消工程時間情報211によらず、最後の洗消工程が完了したときに洗消液の送液を停止するようにしてもよい。具体的には、透析液供給装置2の受信手段200が最後の洗消工程に係る透析装置3から洗消工程が完了したことを示す情報を受信したときに、洗消液の送液を停止するよう制御してもよい。以上のようにしても、透析液供給装置2が適切な洗消工程時間で洗消液を送液できるため、洗浄及び消毒が不足の状態で洗消工程を完了することなく、かつ、洗消液の無駄な消費を抑えることができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…血液浄化システム
10…供給ライン
11…信号線
2…透析液供給装置
20…制御部
200…受信手段
201…送信手段
202…弁制御手段
203…ポンプ制御手段
204…表示制御手段
21…記憶部
210…システム構成情報
211…洗消工程時間情報
212…洗消完了時間情報
22…調製部
220…給水弁
221…原液注入ポンプ
222…洗消液注入ポンプ
23…送液部
230…貯槽
231…送液ポンプ
24…操作表示部
25…通信部
3,3A,3N,3Z…透析装置
30…制御部
300…受信手段
301…送信手段
302…検知手段
31…記憶部
310…洗消時間推定情報
32…センサ部
320…電導度計
321…吸光度計
34…操作表示部
35…通信部
4A…原液タンク
4B…洗消液タンク
5…洗消記録画面
51…開始時間欄
52…工程欄
53…洗消完了時間欄
54…洗消完了判定欄
55…薬液使用量欄
56…テーブル
561…装置名称欄
562…送液開始時間欄
563…置換完了時間欄
564…第1のモニタデータ欄
565…洗消完了時間欄
566…第2のモニタデータ欄
567…合計液量欄
6…溶解装置
7…水処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8