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  • 特許-シュレッダのカッターの制御機構 図1
  • 特許-シュレッダのカッターの制御機構 図2
  • 特許-シュレッダのカッターの制御機構 図3
  • 特許-シュレッダのカッターの制御機構 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】シュレッダのカッターの制御機構
(51)【国際特許分類】
   B02C 18/06 20060101AFI20230517BHJP
   B02C 18/24 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B02C18/06 A
B02C18/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019121491
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021007899
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390006921
【氏名又は名称】ナカバヤシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 公平
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-287564(JP,A)
【文献】特開平05-092143(JP,A)
【文献】特開2015-047524(JP,A)
【文献】特開2007-136261(JP,A)
【文献】特開2011-056491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062260(US,A1)
【文献】特開2000-210584(JP,A)
【文献】実開平02-112336(JP,U)
【文献】特開2001-137737(JP,A)
【文献】特開平05-092144(JP,A)
【文献】特開2013-055746(JP,A)
【文献】特開2002-292301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 18/00-18/38
B02C 15/00-15/16
B02C 23/00-23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュレッダのカッターの制御機構であって、紙細断処理工程において紙を検知する工程と、この紙を検知する工程において紙を検知しなくなった後に細断中の紙を細断するための残送り処理工程とからなり、この残送り処理工程はインバータ制御されたモータで駆動するカッターの実回転速度と、予め決められた細断長さから算出された時間を残送り時間とし、さらに、細断屑の収容箱の満杯を検知する工程を有し、予め指定された細断対象の用紙長さをカッターの実回転速度で除した時間だけモータを駆動したうえで、紙の存在を検知しないときには前記残送り処理工程に移行することを特徴としたシュレッダのカッターの制御機構。
【請求項2】
カッターの実回転速度は、インバータ制御の運転周波数を検出し、この周波数に基づいて算出する請求項1記載のシュレッダのカッターの制御機構。
【請求項3】
残送り時間は、予め決められた細断長さをカッターの実回転速度で除して算出し、さらに予め決められたカッターの空転回数に対応する時間を加えた時間とした請求項2記載のシュレッダのカッターの制御機構。
【請求項4】
請求項において、紙の存在を検知したときには一定時間カッターを正転運転するとともに、新たな細断対象の紙の投入を阻止したうえで一定時間の経過後にモータ駆動を停止するシュレッダのカッターの制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シュレッダのカッターの回転を制御し、効率的な残送りをするための装置であると同時に、効率的な満杯検知を行うことができるシュレッダの制御機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から紙を細断するためのシュレッダの構成は多く知られている。そして、細断の態様としては、細断する紙の進行方向に複数のヌードル状に細断する態様と、このヌードルをさらに横方向に細断する態様が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-273252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の図1に示した構成は、典型的な従来のシュレッダの一例であり、縦切り用カッター12・12によってヌードル状に細断し、続いて横切り用カッター13と横切り用カッター14によって横方向に細かく細断するものである。そして、縦切り工程と横切り工程は連動して行われる。
【0005】
従来例における典型的なカッターの制御は、図3のフローシートに示すように、紙細断処理が開始され(1)、紙投入口に設けられたセンサが紙の存在を検知している間は通常の細断運転を行う。一方、投入された紙がなくなって該センサが紙を検知しなくなると(2)、センサの位置からカッターの間に残留する用紙を全て細断するために、カッターの方向に送り出して残送り処理モード(3)に移行する。なお、紙検知2と2’の関係は、フロー上の論理構成であって、紙を検知しない場合には直接残送り処理モード3において残紙片を排出するためのカッター作動(4)に移行し、紙の存在を検知している間は通常運転を行うことを表している。カッター作動は、前記残留する紙片を細断して排出するとともに、カッターに付着した細かい細断屑を除去するための空転動作を含むものであるが、従来では残送り処理のためのカッターの回転時間はたとえば8秒のように固定時間に設定されていた。そして残送り時間が経過するとカッターは停止し、待機状態(5)となる一連の作業が行われていた。
【0006】
ところで、上記のような従来の制御の場合には、残送り処理モード(3)において残送り時間の設定、すなわちカッター作動(4)は例えば8秒間というように予め設定されているので、残送り処理が行われる対象の紙片が1枚だけのように低負荷、あるいは実際には負荷がない場合であっても前記8秒間はカッターが作動することになる。つまり、低負荷の対象であれば不要な残送り処理が行われるという課題がある。反対に、対象となる紙片が複数枚からなる場合にはカッターに加わる負荷は高負荷になるので、予め設定された時間だけの残送りであれば紙片を確実に吐き出すことができず、紙片がカッターに食い込んだ状態で停止してしまうという課題もある。よって、残紙片の状況にあわせて残送り時間を可変することができればさらに効率的に細断処理を行うことが可能となる。
【0007】
また、さらなる課題として、シュレッダは細断した紙片を蓄積するための収容箱をカッターの下部に備えている装置が一般的であるが、細断屑が収容箱から溢れないように、満杯になった時点でカッターの駆動を停止するようにしている。この満杯レベルは、収容箱を垂直方向から細断屑の高さを監視するセンサによって検知している。しかしながら、紙片を細断している途中で満杯を検知した場合にカッターが停止すれば、紙片は細断途中でカッターに強く食い込んでしまい、カッター駆動が復帰してもカッターの回転を阻害するおそれがある。これを回避するために従来は、満杯を検知すれば紙の検知がOFFになるまで最長7秒程度カッターを正転させた後に5秒の残送りを行っていた。なお、7秒の正転を経過した後も給紙が検知されている場合には、カッターを逆転、さらに残送りが経過した後も給紙が検知されている場合にもカッターを逆転させ、紙詰まりを防止していた。
【0008】
図4に従来の満杯検知の一連の処理を説明すると、先ず紙細断処理(11)中にセンサによって満杯を検知すると(12)、満杯処理工程(13)が開始される。ここでは紙を検知し続けて正転時間を経過(15)した場合は再投入防止処理(18)に移行し、4秒間逆転(19)したのちエラー後の待機状態(17)に移行する。逆転時間の4秒は一例であり、厳格に4秒に限定することを意味するものではない。また途中で紙を検知しなくなると(16)残送り処理(20)を行い、残送り時間経過後に紙検知を確認し(20’)、紙を検知している場合は上記と同様に再投入防止処理(18)の流れを行い、紙を検知していない場合はそのままエラー後の待機状態(17)に移行する。
【0009】
ところで、上記説明した従来の満杯検知では、紙を連続して追加投入しようとすれば、その投入速度によっては満杯を検知しているにもかかわらず追加投入を許容してしまったり、その追加投入した紙の量によっては実際の満杯量にむらが生じることとなり、満杯レベルを収容箱の上限ぎりぎりに設定している場合には細断した紙片が収容箱からはみ出してしまうという不都合が見受けられた。よって、むらのない満杯検知の処理が望まれる。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決することを目的とするものであり、効率的な残送りを達成するとともに、むらが生じない満杯検知の処理を達成することによって、信頼性の高いシュレッダを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、シュレッダのカッターの制御機構であって、紙細断処理工程において紙を検知する工程と、この紙を検知する工程において紙を検知しなくなった後に細断中の紙を細断するための残送り処理工程とからなり、この残送り処理はインバータ制御されたモータで駆動するカッターの実回転速度と、予め決められた細断長さから算出された時間を残送り時間とする手段を用いた。この手段によると、残送り処理に要する時間はカッターが実際に回転している速度から算出されるので、その時点における細断対象の負荷が小さいときには残送り時間を短く、逆に複数枚を細断して負荷が大きい場合には残送り時間を長くすることになり、これらの時間は負荷に応じて可変するので、確実な残送りを行うことができる。ここで紙を検知しなくなったとは、センサによって連続的に紙の有無を監視している状態において、紙がなくなったことにより検知がON状態からOFF状態になることを意味する。
【0012】
また、カッターの実回転速度は、インバータ制御の運転周波数を検出し、この周波数に基づいて算出するという手段を用いることによって、物理的に回転しているカッターを光センサやホール素子などによって検出する必要がない。したがって、細断時に発生する埃によって検出部に誤動作が生じることを防ぐことができる。
【0013】
さらに、残送り時間のより具体的な算出は、予め決められた細断長さをカッターの実回転速度で除して算出し、さらに予め決められたカッターの空転回数に対応する時間を加えた時間としているので、シュレッダ装置が大型の場合であっても小型の場合であっても細断長さを的確に設定することによって対応することが可能となる。
【0014】
また、本発明では細断屑が収容箱に満杯になったときの処理を行う機構を採用しており、紙検知センサから用紙が抜けるまで送る時間を予め指定された細断対象の用紙長さをカッターの実回転速度で除した時間だけモータを駆動する。これによってカッターの回転速度に応じて送る用紙の長さのむらが生じることがなくなる。さらに紙の存在を検知しなくなった後は、請求項1に記載した処理により、これも同様にむらがなくなる。さらに残送り処理中の追加投入においては紙検知すると即再投入防止処理を行い、細断紙片が収容箱からはみ出してしまうことを抑制する。一方、紙の存在を検知したときには一定時間カッターを正転運転するとともに、新たな細断対象の紙の投入を阻止したうえで一定時間の経過後にモータ駆動を停止するという手段を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シュレッダによる細断の最後の段階で必要になる残送りを効率よく達成することができる。また、収容箱に収容される細断紙片を均一なレベルに統一することができるので、収容効率を高めることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の残送りのための一連の処理を示すフロー図。
図2】本発明の満杯検知の一連の処理を示すフロー図。
図3】従来例の残送りの処理を示すフロー図。
図4】従来例の満杯検知の処理を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を添付した図面に従って説明する。図1は、細断する紙片の残送りのための一連の処理を説明したフロー図であって、従来例を示す図3と同じ番号は同じ処理を示している。紙細断処理が開始され(1)、紙の存在を検知すると(2)、通常運転を開始する。そして、紙投入口に設けられたセンサが紙を検知しなかった場合には残送り処理が開始される(3)。残送り処理(3)では、カッターを運転するモータの実際の回転速度から残送り時間Tを算出し(21)、紙が検知されていないことを条件として(2’)時間Tだけカッターが回転して残送りが行われる(22)。時間Tの算出を一例として説明すると、モータの回転数の制御はインバータ制御によって行われており、インバータの運転周波数を制御基板に設けられた周波数検出部で読み取って、これを基準として残送り時間を計算する。具体的には、一例として紙検知(2)において利用するセンサからカッターにおける紙片が離脱するまでの距離をモータの実回転速度で除し、さらにカッターの外周の2周分の距離を送ることができる時間をモータの実回転数から算出する。この2周分は、カッターに付着した細断屑を落とすための空転部分である。したがって、実際のモータの速度が負荷によって可変する場合でも、投入する紙の量が少なくて負荷が小さい結果、速度が速い場合には時間Tは短くなり、投入量が多くて負荷が大きい結果、速度が遅い場合には時間Tは長くなる。このようにして、残送りの対象となる紙片が単数枚で負荷が小さい場合でも、複数枚で負荷が大きい場合でも確実な残送り処理が行われることになる。
【0018】
残送り(22)のためのカッター動作時間は時間Tによって制御されるが、一般的に時間Tは2~16秒の間で可変する。ただし、この数値は一例であって、2~16秒に限定することを意味するものではない。そして、残送り(22)の時間Tが経過すると、待機状態(5)に移行する。なお、判断(2’)において紙を検知している場合には、紙細断処理(1)に帰還し、通常運転、あるいは残送り処理(3)が条件に応じて選択される。
【0019】
このように、本実施形態ではモータの回転速度と残送り時間Tは連動しているので、細断の負荷が小さい場合には残送り処理は早く終了し、負荷が大きい場合にはモータの回転速度は遅くなるのでその分だけ残送り処理のための時間を的確に確保することができる。なお、本発明において残送り時間Tを算出するために重要な要素は、インバータ制御が行われているモータの回転数を検出し、その回転数を基準として予め定められた距離を除するものであり、これを達成することができるものであればシュレッダの具体的な構造は問わない。
【0020】
次に、満杯検知の処理について図2のフロー図に従って説明する。図4のフロー図に示した番号と同じ番号は、同じ処理を示している。先ず紙細断処理(11)中にセンサによって満杯を検知すると(12)同時にこれを報知するためのブザーによる報知やパイロットランプによる報知などを行い、これに続く満杯処理工程(13)が開始されるまでは従来と同様である。満杯処理工程(13)の詳細は、先ずモータ速度から正転時間T1を算出する(31)。T1の算定基準となるのは、細断で一番多く対象となるA4サイズの用紙を送るために要する時間である。つまり、A4サイズの用紙の長さは決まっているので、これを実際のモータの速度で除することによって時間T1が決定される。モータの速度については図1において説明したと同様である。そして、紙が検知されていること(14)を条件として時間T1経過した場合(32)、再投入防止処理(19)へ移行する。再投入防止処理に移行する一連の処理は図4で説明したことと同様である。ここでエラー処理とは、一連の満杯検知処理が完了した場合にカッターの回転を停止状態にするために、モータ駆動を停止するものである。エラー処理を解除するには一例としてリセットボタンによる解除、あるいは収容箱の細断屑を取り除いて収容力がある状態で再度設置した場合など、任意の手段を採用することができる。
【0021】
一方、紙検知処理工程(14)において紙が残っていないと判断した場合にはモータの速度を基準として残送り時間Tを算出する(21)。時間Tについては図1のフローの説明の内容と同様である。また、紙が検知されていないことを条件として(33)時間Tだけカッターが回転して残送りが行われる(22)。そして、残送り(22)の時間Tが経過すると、エラー後の待機状態(18)に移行する。なお、判断(33)において紙を検知している場合には、再投入防止処理(19)に移行し、図4で説明したことと同様の処理を行う。本実施形態では、時間T1を算出してモータを時間T1だけ正転運転した後に再投入防止処理を行う一方、正転運転(33)中に紙を検知しなくなったときには残送り処理のための時間Tを算出し、図1に示す残送り処理を行うものである。なお、本実施形態を示したフロー図では、判断を示す菱形ブロックの機能として判断のみの場合と、判断と共に処理を行う機能を同時に意味するブロックがあるが、これらは発明の詳細な説明を参照すれば理解できるものである。
【0022】
このように、満杯を検知した場合には一番多く利用されるA4用紙を基準として実際に運転しているモータ速度からその排出時間を算出するので、満杯検知時に紙検知センサを通過中の用紙が1枚であろうが複数枚であろうが確実に最後まで細断処理を行うことができる。なお、本実施形態では一番多く利用される用紙をA4として説明しているが、B5用紙であってもB4用紙であっても基本的な技術はなんら変わるところはない。
【符号の説明】
【0023】
1 紙細断処理
2 紙検知
3 残送り処理モード
4 カッター作動
5 待機状態
11 紙細断処理
12 満杯検知
13 満杯処理工程
14 紙検知
15 カッター正転回転
18 再投入防止処理
21 時間Tを算出
22 残送り
31 時間T1を算出
図1
図2
図3
図4