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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】棒状食肉加工製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 11/00 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
A22C11/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019176514
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021052600
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-06-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:平成30年9月30日 販売した場所:ヨークベニマル栃木平柳店他165店
(73)【特許権者】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】松本 一樹
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01174035(EP,A1)
【文献】特開2018-074997(JP,A)
【文献】特表2013-516171(JP,A)
【文献】特開2007-006892(JP,A)
【文献】特開昭58-073508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーセージ生地をケーシングに充填し、充填されたケーシングを捻って連鎖状に連結されたソーセージを形成する充填工程と、
前記連鎖状に連結されたソーセージのそれぞれを前記捻り部分で折り返して、長手方向 にほぼ平行となるようにそれらをトレイ上に整列させる整列工程と、
前記整列させたソーセージを載せた複数のトレイを積層する積層工程と、
前記積層されたトレイ上のソーセージを湯煮または蒸煮処理する加熱工程と、を備え
前記整列工程において整列させたソーセージが幅方向に所定の間隔を有するように、トレイの上面に整列されたソーセージ間に仕切り板が設けられ、
前記積層工程において積層された各トレイの下面が、その下段のトレイに整列したソー セージの上部を押圧して、前記ソーセージの断面をオーバル形状に形成する、棒状食肉加工製品の製造方法。
【請求項2】
熱後の前記ソーセージから前記ケーシングを剥離し、長手方向の所定間隔で前記ソーセージを切断する切断工程を、さらに備える請求項1に記載の棒状食肉加工製品の製造方法。
【請求項3】
前記ソーセージ生地が、家畜、家禽または魚のひき肉に調味料を添加して煉り合せたものである請求項1または2に記載の棒状食肉加工製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状食肉加工製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーセージ等の食肉加工製品の製造は、一般に、ソーセージ生地を天然腸ケーシング内に押し出し、一定量充填すると共に、捻りによって連鎖状ソーセージを形成し、この連鎖状ソーセージを一定数のループにして懸垂棒に引っかけて懸垂する。続いて、この連鎖状ソーセージを引っかけた懸垂棒を台車にハンギングし、ループ状のソーセージを台車ごと燻煙、加熱または蒸煮若しくは湯煮処理した後、連鎖状ソーセージを1個ずつ切り離して製品とする。この懸垂工程では、懸垂棒の左右のソーセージ同士が接触しやすいことから、懸垂棒の挿入が困難であり、またソーセージ同士を充分に離してやらないまま懸垂棒を挿入しようとすると、懸垂棒の端部でソーセージを傷つける恐れがある。
【0003】
これを改善するため、特許文献1には、連鎖状ソーセージを懸垂竿側に送る送りローラーと、該送りローラー内のソーセージの有無を見るための光電センサーと、該送りローラーを縦横2軸方向に回転運動させる2つの直動ユニットと、懸垂竿にぶつからないように該送りローラーを前後に移動させる機構と、該光電センサーからの信号に基づきそれぞれの運動を制御する制御機構よりなることを特徴とするソーセージの竿掛け装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、食肉をミンチ状または細切状の食肉材とする工程と、食肉材に少なくとも澱粉と油脂と増粘多糖類と水とを添加混合し食肉混合材を得る食肉材混合工程と、食肉混合材を所定の形状に成形し食肉混合成形品を得る成形工程と、食肉混合成形品に対して、加熱処理を施し、喫食可能な形態とする加熱処理工程を含む固形状の食肉ソフト加工食品の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2911026号公報
【文献】特開2005-110677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術のようなソーセージの製造方法によれば、確かに、連鎖状ソーセージをループ状に懸垂して加圧加熱殺菌処理することによりソーセージの生産効率の向上に寄与するが、連鎖状ソーセージ1単位の長さが長くなると、重力の影響を受けて製品の上が細く、下が太くなり、形状の均一性を確保することが難しいという問題がある。また、特許文献2の実施例では、食肉ソフト加工食品を小判状および球状に成形しているが、1つの製品ごとに個別に成形しているため生産効率に劣ると考えられる。そこで、本発明は、連鎖状に連結されたそれぞれのソーセージを切り分けて複数の棒状食肉加工製品を製造する場合において、製品形状の安定した棒状食肉加工製品を製造する方法および当該方法により製造された棒状食肉加工製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らはケーシングに充填された連鎖状のソーセージを、トレイ上に整列させて加熱処理を行うことにより、製品形状の安定した棒状食肉加工製品を製造しうることを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の実施形態を含む。
(1)ソーセージ生地をケーシングに充填し、充填されたケーシングを捻って連鎖状に連結されたソーセージを形成する充填工程と、連鎖状に連結されたソーセージのそれぞれを捻り部分で折り返して、長手方向にほぼ平行となるようにそれらをトレイ上に整列させる整列工程と、整列させたソーセージを載せた複数のトレイを積層する積層工程と、 積層されたトレイ上のソーセージを湯煮または蒸煮処理する加熱工程と、を備える棒状食肉加工製品の製造方法。
(2)加熱後のソーセージからケーシングを剥離し、長手方向の所定間隔で前記ソーセージを切断する切断工程を、さらに備える(1)に記載の棒状食肉加工製品の製造方法。
(3)それぞれのソーセージが、幅方向に所定の間隔をおいてトレイ上に整列している上記(1)または(2)に記載の棒状食肉加工製品の製造方法。
(4)積層工程において積層された各トレイの下面が、その下段のトレイに整列したソーセージの上部を押圧して、ソーセージの断面をオーバル形状に形成する(1)~(3)のいずれかに記載の棒状食肉加工製品の製造方法。
(5)ソーセージ生地が、家畜、家禽または魚のひき肉に調味料を添加して煉り合せたものである(1)~(4)のいずれかに記載の棒状食肉加工製品の製造方法。
(6)家畜、家禽または魚のひき肉と、調味料とを含む食肉加工製品であって、片手で把持しながら喫食可能な棒状の形態を有し、長手方向に垂直な面で切断したときの断面がオーバル形状であることを特徴とする棒状食肉加工製品。
(7)ひき肉材料が、鶏むね肉を含む(6)に記載の棒状食肉加工製品。
(8)(1)~(5)の何れかに記載の方法にて製造される食肉加工食品であって、片手で把持しながら喫食可能な棒状の形態を有し、長手方向に垂直な面で切断したときの断面がオーバル形状であることを特徴とする棒状食肉加工製品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、連鎖状に連結されたそれぞれのソーセージを切り分けて複数の棒状食肉加工製品を製造する場合において、製品形状の安定した棒状食肉加工製品の製造が可能であり、当該製造方法により片手で把持しながら喫食可能な棒状食肉加工製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る棒状食肉加工製品を製造するための処理フロー図である。
図2図2は、本発明の製造方法に用いられる一実施形態のトレイの上面図(a)、長手方向側面図(b)および短手方向側面図(c)である。
図3図3は、トレイ上に連鎖状のソーセージを整列させたときの状態を示す上面図である。
図4図4は、連鎖状のソーセージを整列させた5枚のトレイを重ねて積層したときの側面図である。
図5図5は、本発明の種々の実施形態に係る棒状食肉加工製品を、長手方向とほぼ垂直な断面にて切断したときの断面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る棒状食肉加工製品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る棒状食肉加工製品の製造方法および当該方法により製造された棒状食肉加工製品の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく。また、各実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
(1)棒状食肉加工製品の製造方法
図1は、本発明の一実施形態に係る棒状食肉加工製品を製造するための処理フロー図を示す。本実施形態の棒状食肉加工製品の製造方法は、家畜、家禽または魚等の食肉原料をひき肉したものを調味料および場合により香辛料で調味し、結着材料、着色料、酸化防止剤、保存料等を加えまたは加えないで練り合わせたソーセージ生地を準備する前処理工程S1と、このソーセージ生地をケーシングに充填し、充填されたケーシングを捻って連鎖状に連結されたソーセージを形成する充填工程S2と、この連鎖状に連結されたそれぞれのソーセージを捻り部分で折り返して、長手方向にほぼ平行となるようにそれらをトレイ上に整列させる整列工程S3と、整列させたソーセージを載せた複数のトレイを積層する積層工程S4と、積層されたトレイ上のソーセージを加熱殺菌処理する加熱工程S5と、この加熱殺菌処理を行ったソーセージを適当な大きさにカットし、カットされた製品を包装および二次殺菌する後処理工程S6とを含む。以下、それぞれの工程ごとに詳細に説明する。
【0013】
前処理工程S1で用意する食肉原料は、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉等の畜肉;鶏肉、合鴨肉、鴨肉等の家禽肉;家兎肉;タラ、イトヨリ、エソ、キンキ等の魚肉;などの食肉等を挙げることができる。これらの食肉は、一種または二種以上を混合して用いることもでき、また、ミンチされたひき肉として用いられることが好ましい。これら食肉原料は、ソーセージ原料全体の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上用いることが好ましい。ソーセージ原料のほぼすべてを食肉原料としてもよいが、以下に示す副原料を添加してもよい。したがって、食肉原料の含有量の上限は、100質量%以下、好ましくは90質量%以下である。本発明の1つの実施形態において、鶏肉、特に鶏むね肉を用いることが好ましい。
【0014】
これらの食肉原料には、さらに大豆タンパク質を加えてもよい。本発明において「大豆タンパク質」とは、大豆由来のタンパク質が抽出された素材を意味し、具体的には丸大豆や脱脂大豆などからタンパク質を抽出して必要により精製して得られる抽出大豆タンパク質である。例えば、全脂豆乳、脱脂豆乳、分離大豆蛋白、7Sタンパク質、11Sタンパク質などが該当し、これらの混合物も含まれる。ただし、タンパク質が抽出されている限り、不溶性のオカラ分が含まれることを除外するものではない。
【0015】
上記に例示されるタンパク質は、いずれも公知の方法によって得ることができる。例えば、脱脂大豆から希アルカリ溶液(pH8~9)でタンパク質を抽出し、その後、抽出液中の不溶成分を遠心分離で除去し、次いで抽出液のpHを4.5にしてタンパク質を沈殿させ、遠心分離によって沈殿したタンパク質(カード)を回収し、カードを水洗後、水に懸濁してから噴霧乾燥を行う。この乾燥は通常、懸濁液のpHを7付近に調整してから実施される。また、噴霧乾燥の前に殺菌等を目的として加熱処理を施してもよい。但し、本発明に用いる大豆タンパク質の調製方法は上記に限定されるものではない。市販の大豆タンパク質製剤を用いてもよい。かかる大豆タンパク質製剤として、例えば、プロリーナ250、プロリーナHD101(いずれも商品名、不二製油社製)、プロリーナ700(商品名、不二製油社製)、ALPHA5800(商品名、デュポン社製)、CLARISOY 170(商品名、ADM社製)、HoneySoy PDI70(商品名、サンブライト社製)を挙げることができる。
【0016】
副原料としては、他の食材、調味料、香辛料、結着材料、着色料、他の原料から選択される1種または2種以上を挙げることができる。上記他の食材としては、タマネギ、トマト、オリーブ、パプリカ等を挙げることができ、これらはチョッピング処理やミンチ処理により、練り状物として適当な形態になるよう処理されることが好ましく、これらは、ソーセージに味や食感のバリエーションを持たせるために用いることができる。
【0017】
調味料としては、食塩;酢;しょうゆ;砂糖、水あめ等の糖類;日本酒、ワイン等の酒類;植物油脂、ラード、魚油、DHA等の油脂類;チキンエキス、ビーフエキス、ポークエキス、ホタテエキス、酵母エキス、カツオエキス、オニオンエキス等のエキス類;グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、タンパク質加水分解物等の旨味成分;などの調味料を挙げることができ、上記香辛料としては、ガーリック、ホワイトペッパー、ブラックペッパー、レッドペッパー、ナツメグ、メース、オールスパイス、タイム、クローブ、カルダモン、ターメリック、ローリエ等、およびこれらの1種または2種以上を混合したミックススパイスなどの香辛料を挙げることができる。
【0018】
結着材料としては、デンプン、異種タンパク質を挙げることができる。上記デンプンとしては、タピオカデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、ウルチ種コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、サゴデンプン、緑豆デンプンや、これらのデンプンを加工した、油脂加工デンプン、アセチル化酸化デンプン、リン酸架橋デンプン等の加工デンプン類を挙げることができ、リン酸架橋タピオカデンプンや油脂加工タピオカデンプンを好適に例示することができる。上記異種タンパク質としては、全卵タンパク質、卵白タンパク質、卵黄タンパク質、カゼイン、乳清タンパク質単離物、乳清タンパク質濃縮物(WPC)等の動物性タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質等の植物性タンパク質を挙げることができる。これらの結着材料は、上記の食肉原料と副原料とカラギーナンとをなじませるために用いることができる。
【0019】
着色料としては、コチニール色素、ラック色素、クチナシ色素、カラメル色素等通常食品に用いられている天然または人工着色料を挙げることができる。
【0020】
他の原料としては、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩製剤などの発色剤や、グルコマンナン、寒天、プルラン、カードラン、ジェランガム、グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の増粘多糖類や、増粘多糖類のゲル化機能を高めるための塩化カリウム等の塩類や、デキストリンや、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0021】
これらの原料、特に食肉原料を、最初に目視等にて異物と選別し、異物除去した後、ボールカッター、サイレントカッター、ミンスマスター等のカッティング装置により3mm程度の大きさに粉砕する(細切処理)。続いて、金属検出器等を用いて異物の混入がないことを確認した後、上述した副原料と混合し、当業者に公知の方法を用いて均一に混合された練り状物としてのソーセージ生地を調製することができる。
【0022】
次に、充填工程S2では、前処理工程S1で調製したソーセージ生地をケーシングに充填して、充填未加熱ソーセージを調製する。本工程におけるソーセージ生地の充填方法としては、従来公知の充填機を用いることができ、加熱殺菌処理に適した充填ソーセージを調製する方法であれば特に制限されず、充填機の具体例としては、連続充填機を例示することができる。
【0023】
ソーセージ生地を充填するケーシングとしては、例えば家畜の腸や人工のコラーゲンタンパク質等からなる可食性ケーシング、ならびに紙、セルロース系材料および合成樹脂等からなる非可食性ケーシングを挙げることができる。加熱殺菌処理をした場合に、無味、無臭で安全性に適合し、耐熱性や防湿性や酸素遮断性に優れ、また、突刺や圧力に対して耐性がある材質からなるケーシングであることが好ましく、具体的には、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)製、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリエチレン(PE)製、ポリプロピレン(PP)製等のケーシングや、ナイロンケーシング、セルロースケーシングなどのソーセージ用ケーシングを挙げることができる。
【0024】
ケーシング内に充填されたソーセージ生地が所定の長さになったとき、充填されたソーセージを捻って、連鎖状のソーセージを形成する。好ましい実施形態における上記所定の長さ、すなわちソーセージ1本の長さは約540mm、直径は約27mm程度である。通常のソーセージの場合、捻りは2~3回で十分であるが、本実施形態では後続する整列工程における作業のしやすさを考慮して5~15回、好ましくは10回程度捻りを加えて、連鎖状ソーセージの間に適度な間隔を付与することが好ましい。この間隔は、整列工程で用いるトレイの大きさや構造等により適宜調整することができる。
【0025】
続いて、整列工程S3では、連鎖状に連結されたそれぞれのソーセージを捻り部分で折り返して、長手方向にほぼ平行となるようにそれらをトレイ上に整列させる。図2は、本工程で用いることができるトレイ10の一例を示す。図2(a)は、トレイ10を上から見た図であり、図2(b)および(c)は、トレイ10を、それぞれ長手方向および短手方向から見たときの側面図である。この実施形態では、人手による作業性を考慮して、縦が300~400mm、横が500~700mmのステンレス製のトレイ基板12の上面に、ほぼ垂直方向に高さが10~20mmの仕切り板11が設けられている。これにより、ソーセージをほぼ平行に整列させることができる。トレイ基板12および仕切り板11の材質は、耐熱性のある材料であれば特に限定されないが、鉄、アルミ、ステンレスなどの導体か、セラミック、耐熱ガラスなどの誘電体を用いることができる。本実施形態では、約500mmのソーセージ7本を並列させることができるように仕切り板11で区切られている。図3は、このトレイ10の上に、7連結されたソーセージ13を整列させたときの上面図である。ソーセージ13が平行に整列できるように、それぞれのソーセージは、捻った糸状のケーシング14によって所定の間隔をあけて連結されている。整列されたそれぞれのソーセージ間には、2本の仕切り板11が設けられ、これにより、整列させたソーセージは幅方向に所定の間隔を有する。後続する加熱工程において、例えば、加熱水や蒸気が、整列したソーセージの幅方向に設けられた間を通過することで効率的に加熱殺菌処理することができる。
【0026】
これに続く積層工程S4では、整列させたソーセージを載せた複数のトレイを積層する。図4は、7連結のソーセージを整列させた5枚のトレイを重ねて積層したときの側面からの様子を示す。重ねたトレイ12の底面が、その下段のトレイに整列したソーセージ13の上部を押圧することで、ソーセージ13の断面をオーバル形状に形成する。なお、本実施形態におけるオーバル形状とは、例えば、卵形状、楕円形状、長円形状等の形状を意味し、その一部が平面を有していてもよい。
【0027】
加熱工程S5は、上記で積層したトレイの間に、例えば加熱水や蒸気を通すことにより湯煮または蒸煮する工程である。本明細書において、「湯煮または蒸煮」とは、加熱水で煮ても、蒸気で蒸しても、湿熱下の加圧環境で100℃を超える加熱でもよいことを意味する。また蒸煮時間は温度や圧力等により異なるが、沸騰水で0.5~12時間程度、100℃以上の加圧蒸気で5~30分間程度が例示できる。この加熱条件は、ソーセージ生地に含まれるタンパク質を凝集させて棒状の食品形状に成形し、併せて当該食品中の微生物を一次殺菌することができる温度であれば特に限定されないが、ソーセージの中心温度が70℃以上となる状態が1分以上維持されることが好ましい。一方、加熱温度が高すぎると、製品からの離水が過剰に生じて歩留まりが低下し、肉汁が流出することにより食感の悪化が起きるおそれがある。また、一次殺菌した後にソーセージからケーシングから剥がして、ソーセージを切断分割する必要があるため、加熱工程後のソーセージ肉がケーシングから容易に剥離できることが好ましい。
【0028】
上記加熱処理されたソーセージは、後処理工程S6にて、冷却により粗熱を取った後、ケーシングを剥離し、長手方向の所定間隔でソーセージを食べやすい大きさに切断する。本実施形態では、1本の長さが約540mmのソーセージを、例えば、4分割することにより、長さが約100mmの棒状食肉加工製品とすることができる。製品は、深絞包装機により1パック当たり約60gの製品として真空包装する。真空包装装置としては、例えば、ムルチバック(MULTIVAC)社製の真空包装装置を用いることができる。
【0029】
二次殺菌は、真空包装した棒状食肉加工製品を、金属検出器による金属検査およびX線異物検査機によるX線検査を行った後、通常の非酸性食品の場合、食品の中心部の温度が120℃にて4分間相当以上(F値が4以上)で加熱されるような条件が選択される。この加圧加熱殺菌処理を行う装置としては、F値4以上の条件で加圧加熱殺菌処理することができる装置であれば特に制限されず、また、装置内の温度や圧力のばらつきが少ない装置が好ましい。加圧加熱殺菌の方式としては、熱水スプレー式、熱水貯湯式、蒸気式等を挙げることができる。1つの実施形態としては、ボイル加熱であってもよく、湯温95℃で25分間以上処理することで、製品中心温度が90℃以上、10分以上維持されることが好ましい。
【0030】
続いて冷却は、水冷タンク、冷却シャワー等により棒状食肉加工製品を温度20~25℃まで冷却し、さらに急速凍結機で凍結する。このようにして急速凍結された棒状食肉加工製品は、数個~数十個、さらには100個程度の単位で箱詰めされた後、―18℃以下で保管または出荷される。出荷は箱詰めされた製品を貨物などで発送する。
【0031】
(2)棒状食肉加工製品
近年、食肉加工製品としての美味しさや栄養といった価値に加えて、携帯性、簡便性、ゲルテクスチャー改良による食べやすさといったような価値の創出が求められている。そこで本発明の他の実施形態では、家畜、家禽または魚のひき肉材料と、調味料等の副原料とを含む食肉加工製品であって、片手で把持しながら喫食可能な棒状の形態を有し、長手方向に垂直な面で切断したときの断面がオーバル形状であることを特徴とする棒状食肉加工製品が提供する。
【0032】
食肉原料等についてはすでに説明したとおりである。本実施形態において、オーバル形状とは、1つ以上の対称軸を持ち、楕円形状、長円形状または卵形状などに似た形状を備え、滑らかな曲線により形成される形状をいう。図5は、本発明の種々の実施形態に係る棒状食肉加工製品を、長手方向に対して、ほぼ垂直に切断したときの断面図である。オーバル形状は、例えば、図5(a)に示す長円形、図5(b)に示す楕円形、図5(c)に示す卵形の一部が歪んだ形状、図5(d)に示す卵形の一部が窪んだ形状を含む。
【0033】
食品の物理的形状は、ゲル物性(破断応力、圧縮距離)やテクスチャー(硬さ応力、凝集性、付着性)と共に食品の嗜好性に大きく影響する。例えば、破断応力とは、測定物を押圧して破断するまでにかかった重さ(g)であり、圧縮距離とは、測定物が破断するまで変形している長さ(cm)を示す。従って、破断応力が大きいと、測定物が堅いことを意味し、圧縮距離が長いと、弾力性が強いということができる。これら2つの測定値の積をゼリー強度と呼び、物性を数値的に特徴化させることができる。本実施形態の食肉加工食品は、断面が円形ではなくオーバル形状であるため、より歯ごたえのある触感が味わえる。つまり、歯で噛んだ時に、歯に当たる部分の面積が異なるためである。食品の断面形状が円形の場合は点接触であるが、オーバル形状の場合は面接触となるため、オーバル形状の方が歯に対しての摩擦抵抗が大きくなり、破断応力や圧縮距離にも影響を与えると考えられる。
【0034】
なお、これらの物性値の測定は、例えばレオメータを使用して行われる。レオメータとは、物質の変形と流動に関する諸性質(粘性、粘弾性など)を総合的に測定・評価するための装置である。対象物質に応じた種々の試験が行うことができ、たとえば、プランジャーにより試料を一定の速度で押し潰し、その荷重を測定する単軸圧縮破断強度を測定する。
【0035】
本実施形態に係る棒状食肉加工製品の形状に特に制限はないが、その断面オーバル形状が、長径10~30mm、短径5~20mm、そして長さが50~150mmが好ましい。断面形状が細すぎると折れやすく、太すぎると水分が飛散しにくい。長さが短すぎると棒状食肉加工食品を手で持って食べる食べやすさ、楽しさが弱まり、長すぎると包装工程や輸送時に折れやすい。棒状とすることで、通常の小判型や球状と異なり、手で持ちやすく、また食べやすいうえ、棒状食肉加工食品独特の食感が楽しめる。
【0036】
本実施形態における典型的な棒状食肉加工製品は、鶏むね肉を蒸煮し、バジルとオリーブオイルで香りづけされたものであり、その斜視図を図6に示す。図6に示す棒状食肉加工製品は、片手で手軽に食べられるサラダチキンバーとして本出願人により全国のコンビニエンスストアで販売されている。
【符号の説明】
【0037】
10 トレイ
11 仕切り板
12 トレイ基板
13 ソーセージ
14 ケーシング




図1
図2
図3
図4
図5
図6