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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ガス漏れ検知システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/38 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G01M3/38 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019186421
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060377
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591146239
【氏名又は名称】いであ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】黒川 忠之
(72)【発明者】
【氏名】谷本 祐一
(72)【発明者】
【氏名】植家 優紀
(72)【発明者】
【氏名】小薮 剛史
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼下 俊行
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-294567(JP,A)
【文献】特開平06-026972(JP,A)
【文献】特開平10-253487(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179599(WO,A1)
【文献】特開2016-161396(JP,A)
【文献】特開2005-091343(JP,A)
【文献】国際公開第2009/101659(WO,A1)
【文献】米国特許第07075653(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 - 3/40
G01N 21/00 -21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知システムであって、
前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知するレーザ方式のガスセンサと、前記測定対象に向けて測距光を照射して前記ガスセンサから前記反射面までの距離を測定する距離センサと、前記ガスセンサの検出光及び前記距離センサの測距光を垂直方向又は水平方向に走査可能な走査機構と、を備えたガス検知装置と、
前記ガス検知装置が異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定する演算装置と、
を備え
前記演算装置は、前記距離センサが測定した前記ガスセンサから反射面までの距離に基づいて前記測定対象全体の点群データである前記測定対象の3次元座標を演算するとともに、前記距離センサが測定した前記反射面までの距離、前記走査機構の方位角及び仰角並びに前記基準点の座標に基づいて、各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データを算出し、前記測定対象の3次元座標と各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データとから前記メタンガスが漏洩している箇所及び前記メタンガスの3次元的な存在範囲を推定することを特徴とするガス漏れ検知システム。
【請求項2】
前記走査機構は、前記ガスセンサ及び距離センサを載置した雲台であることを特徴とする請求項1記載のガス漏れ検知システム。
【請求項3】
前記走査機構は、前記ガスセンサの検出光及び前記距離センサの測距光を走査させる回転ミラーであることを特徴とする請求項1記載のガス漏れ検知システム。
【請求項4】
測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知システムであって、
前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知するレーザ方式のガスセンサと、前記ガスセンサの検出光を垂直方向又は水平方向に走査可能な走査機構と、を備えたガス検知装置と、
前記ガス検知装置が異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定する演算装置と、
前記測定対象全体の点群データである前記測定対象の3次元座標が記憶された記憶部と、
を備え
前記演算装置は、前記走査機構の方位角及び仰角並びに前記基準点の座標に基づいて、各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データを算出し、前記測定対象の3次元座標と各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データとから前記メタンガスが漏洩している箇所及び前記メタンガスの3次元的な存在範囲を推定することを特徴とするガス漏れ検知システム。
【請求項5】
測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、
レーザ方式のガスセンサを垂直方向又は水平方向に走査させながら、前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知し、
距離センサを前記ガスセンサに追従して走査させながら、前記測定対象に向けて測距光を照射して前記ガスセンサから前記反射面までの距離を測定し、
前記ガスセンサ及び距離センサが異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定し、
前記距離センサが測定した前記ガスセンサから反射面までの距離に基づいて前記測定対象全体の点群データである前記測定対象の3次元座標を演算し、
前記距離センサが測定した前記反射面までの距離、前記ガスセンサの検出光及び距離センサの測距光を垂直方向又は水平方向に走査可能な走査機構の方位角及び仰角並びに前記基準点の座標に基づいて、各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データを算出し、
前記測定対象の3次元座標と各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データとから前記メタンガスが漏洩している箇所及び前記メタンガスの3次元的な存在範囲を推定する、
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【請求項6】
測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、
レーザ方式のガスセンサを垂直方向又は水平方向に走査させながら、前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知し、
前記ガスセンサが異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定し、
前記ガスセンサの検出光及び距離センサの測距光を垂直方向又は水平方向に走査可能な走査機構の方位角及び仰角並びに前記基準点の座標に基づいて、各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データを算出し、
予め記憶部に記憶された前記測定対象全体の点群データである前記測定対象の3次元座標と各基準点における前記メタンガスの存在範囲が互いに重複する領域に応じた前記反射面の3次元データとから前記メタンガスが漏洩している箇所及び前記メタンガスの3次元的な存在範囲を推定する、
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管等からのメタンガスの漏洩箇所を検知するガス漏れ検知システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LNG(Liquid Natural Gas)の生産プラント等におけるメタンガスの漏洩を検知するものとして、レーザ式のメタンガス検知器が知られている。
【0003】
このようなメタンガス検知器としては、分子の回転や構成原子間の振動等に応じて特定波長の光を吸収する吸収帯(例えば、メタンガスの場合には、1.7μm、3.3μm、7.7μm等)が存在することを利用し、光源部の半導体レーザより周波数変調されたレーザ光(検出光)をメタンガスの雰囲気に通し、その透過光を受光部のフォト検出器で受けたときの出力信号から光路上のメタンガスの累積濃度を測定し、メタンガスの漏洩を検出するものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなメタンガス検知器がガス漏れを検知可能な範囲は検出光の光路上のみであり、広範囲でガス漏れ検知を行う場合には、作業員がメタンガス検知器の検出光の向きを少しずつ変化させる必要があった。
【0005】
また、メタンガス検知器は検出光の光路上に存在するメタンガスの累積濃度を検知するものであり、検出光の光路の奥行方向においてメタンガスの存在範囲を絞り込むができない。そのため、メタンガスが配管等の周囲に拡散している場合には、漏洩元を含む過度に広い範囲でガス漏れを検知するため、漏洩元の特定には寄与し難いことがあった。
【0006】
そこで、広範囲のガス漏れを検知可能で、且つメタンガスが漏洩した範囲を精度良く特定するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係るガス漏れ検知システムは、測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知システムであって、前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知するレーザ方式のガスセンサと、前記測定対象に向けて測距光を照射して前記ガスセンサから前記反射面までの距離を測定する距離センサと、前記ガスセンサの検出光及び前記距離センサの測距光を垂直方向又は水平方向に走査可能な走査機構と、を備えたガス検知装置と、前記ガス検知装置が異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定する演算装置と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、走査機構を用いてガスセンサ及び距離センサを垂直方向又は水平方向に走査することで、広範囲に亘ってガス漏洩を検知することができ、さらに、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光の光路の奥行方向において絞り込むことができる。また、測定対象の3次元データが既知である場合には、各基準点においてガスセンサによる測定のみを行った上で、既知である測定対象の3次元データ、走査機構の方位角及び仰角並びにガス検知装置が設置された基準点(座標)に基づいて、メタンガスの漏洩を検知した範囲を特定し、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する範囲を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光の光路の奥行方向において絞り込むことができる。
【0009】
また、本発明に係るガス漏れ検知システムは、前記演算装置が、前記距離センサが測定した前記ガスセンサから反射面までの距離に基づいて前記測定対象の3次元座標を演算し、前記測定対象の3次元座標に基づいて前記メタンガスが漏洩している箇所を推定することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、距離センサが測定した距離データ、走査機構の方位角及び仰角並びにガス検知装置が設置された基準点(座標)に基づいて反射面の3次元座標が演算され、この反射面の3次元座標及び光路の奥行方向で限定されたメタンガスの存在範囲に基づいてメタンガスの漏洩元を推測することができる。
【0011】
また、本発明に係るガス漏れ検知システムは、前記走査機構が、前記ガスセンサ及び距離センサを載置した雲台であることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、雲台を動作させることにより、ガスセンサ及び距離センサを一体で精度良く垂直方向及び水平方向に走査することができる。
【0013】
また、本発明に係るガス漏れ検知システムは、前記走査機構が、前記ガスセンサの検出光及び前記距離センサの測距光を走査させる回転ミラーであることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、回転ミラーが雲台を動作させることにより、ガスセンサの検出光及び距離センサの測距光を精度良く垂直方向及び水平方向に走査することができる。
【0015】
また、上記課題を達成するために、本発明に係るガス漏れ検知システムは、測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知システムであって、前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知するレーザ方式のガスセンサと、前記ガスセンサの検出光を垂直方向又は水平方向に走査可能な走査機構と、を備えたガス検知装置と、前記ガス検知装置が異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定する演算装置と、を備えている。
【0016】
この構成によれば、走査機構を用いてガスセンサを垂直方向又は水平方向に走査することで、広範囲に亘ってガス漏洩を検知することができ、さらに、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光の光路の奥行方向において絞り込むことができる。
【0017】
また、本発明に係るガス漏れ検知システムは、前記測定対象の3次元座標が記憶された記憶部をさらに備え、前記演算装置は、前記測定対象の3次元座標に基づいて、前記メタンガスが漏洩している箇所を推定することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、記憶部に予め記憶された測定対象の3次元データ、走査機構の方位角及び仰角並びにガス検知装置が設置された基準点(座標)に基づいて、メタンガスの漏洩が検知された範囲を特定し、さらに、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する範囲を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光の光路の奥行方向において絞り込むことができ、さらに、記憶部に予め記憶された測定対象の3次元座標及び光路の奥行方向で限定されたメタンガスの存在範囲に基づいてメタンガスの漏洩元を推測することができる。
【0019】
また、上記課題を達成するために、本発明に係るガス漏れ検知方法は、測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、レーザ方式のガスセンサを垂直方向又は水平方向に走査させながら、前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知し、距離センサを前記ガスセンサに追従して走査させながら、前記測定対象に向けて測距光を照射して前記ガスセンサから前記反射面までの距離を測定し、前記ガスセンサ及び距離センサが異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定する。
【0020】
この構成によれば、走査機構を用いてガスセンサ及び距離センサを垂直方向又は水平方向に走査することで、広範囲に亘ってガス漏洩を検知することができ、さらに、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光の光路の奥行方向において絞り込むことができる。
【0021】
また、上記課題を達成するために、本発明に係るガス漏れ検知方法は、測定対象からのメタンガスの漏洩を検知するガス漏れ検知方法であって、レーザ方式のガスセンサを垂直方向又は水平方向に走査させながら、前記測定対象に向けて検出光を照射して反射面までの光路上におけるメタンガスの漏洩を検知し、前記ガスセンサが異なる基準点で測定を行った場合に、各基準点における前記ガスセンサがメタンガスの漏洩を検知した範囲に基づいて、前記光路の奥行方向でメタンガスの存在範囲を限定する。
【0022】
この構成によれば、走査機構を用いてガスセンサを垂直方向又は水平方向に走査することで、広範囲に亘ってガス漏洩を検知することができ、さらに、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光の光路の奥行方向において絞り込むことができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、走査機構を用いてガスセンサ及び距離センサを垂直方向又は水平方向に走査することで、広範囲に亘ってガス漏洩を検知することができ、さらに、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光の光路の奥行方向において絞り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るガス漏れ検知システムの構成を示す模式図。
図2】プラントの配管等のガス漏洩を検知する際のガス検知装置の設置位置を示す模式図。
図3】ガス漏洩元を特定する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0026】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0027】
図1は、本発明に係るガス漏れ検知システム1を示す図である。ガス漏れ検知システム1は、LNG(Liquid Natural Gas)の生産プラントの配管等の測定対象におけるメタンガスの漏洩を検知する。なお、ガス漏れ検知システム1が適用される施設は、LNG生産プラントに限定されないことは言うまでもない。ガス漏れ検知システム1は、複数のガス検知装置2と、制御装置3と、を備えている。
【0028】
ガス検知装置2は、ガスセンサ21と、距離センサ22と、走査機構23と、を備えている。
【0029】
ガスセンサ21は、公知の構成であるレーザ式のメタンガス検知器である。ガスセンサ21は、検出光L1を照射し、メタンガスを透過した検出光L1がプラントの配管等(反射面R)で反射された反射光L2を受光し、反射光L2の光強度から光路上のメタンガスの累積濃度を算出して、メタンガスの漏洩を検知する。検出光L1の波長は、メタンガスの吸収帯に応じて適切な数値(例えば1.65μm)に設定される。ガスセンサ21としては、例えば、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(株)製のレーザーファルコン(型番:LM1A06N-LFA)が用いられる。
【0030】
距離センサ22は、公知の構成であるレーダ式の距離センサであり、測距光L3を放射して反射面Rまでの距離(光路長)を測定する。距離センサ22としては、例えば、(株)トリマティス製のTrimatiz LiDARが用いられる。なお、距離センサ22は、ガスセンサ21から独立したものに限定されず、一体に構成されたものであっても構わない。
【0031】
走査機構23は、ガスセンサ21及び距離センサ22を載置した雲台である。走査機構23は、図示しないモータを駆動することで、ガスセンサ21及び距離センサ22を載置した架台24が垂直軸A1回りに回転可能で任意の方位角に設定可能に構成され、且つ架台24が水平軸A2回りに回転可能で任意の仰角に設定可能に構成されている。これにより、ガスセンサ21及び距離センサ22は、垂直方向及び水平方向に一体として向きを変更することができる。また、走査機構23は図示しない三脚等で支持されており、任意の場所にガス検知装置2を設置することができる。
【0032】
なお、走査機構23は、ガスセンサ21及び距離センサ22を一体で移動させるものに限らず、ガスセンサ21及び距離センサ22を連動させながら別々に移動するものであっても構わない。また、走査機構23は、上述した雲台に限定されず、例えば、ガスセンサ21の検出光及び距離センサ22の測距光を垂直方向及び水平方向に反射させる回転ミラーであっても構わない。
【0033】
制御装置3は、ガス漏れ検知システム1を構成する各種機器の動作を制御する。制御装置3は、例えば、通信機能を有する汎用のパーソナルコンピュータ等である。
【0034】
制御装置3は、記憶部31と、座標演算部32と、存在範囲演算部33と、を備えている。記憶部31には、各ガス検知装置2の設置座標、各ガスセンサ21が測定したメタンガスの累積濃度データ、及び各距離センサ22が測定した距離データ等が記憶される。なお、座標演算部32及び存在範囲演算部33を総称する場合には、演算装置と称す。
【0035】
ガス検知装置2は、カメラ25を備えている。カメラ25は、プラントの外観を撮影する。カメラ25が撮影した画像は、記憶部31に記憶されたり、液晶ディスプレイ等である表示部4に表示される。
【0036】
さらに、ガス検知装置2には、図示しないGPS/IMUセンサを設置しても構わない。GPS/IMUセンサを設けることにより、各ガス検知装置2の設置座標やガスセンサ21及び距離センサ22の姿勢を精度良く計測することができる。
【0037】
次に、ガス漏れ検知システム1の作用について、図2図3に基づいて説明する。図2は、プラント内に配置されたガス検知装置2を示す模式図である。図3は、ガス漏洩元を特定する様子を示す図である。
【0038】
[データ収集]
ガス検知装置2を複数の調査地点(基準点)に配置する。基準点の座標は、記憶部31に記憶される。異なる基準点に配置された少なくとも2つ以上のガス検知装置2において、各ガスセンサ21の測定範囲及び各距離センサ22の測定範囲が少なくとも一部で重複するように、各基準点の座標が設定される。特に、プラント内でガス漏洩が発生しがちな箇所(例えば、バルブ等)が、ガスセンサ21の測定範囲及び距離センサ22の測定範囲の重なる領域内に配置されるように、基準点の座標が設定されるのが好ましい。
【0039】
なお、複数の調査地点で調査を行う際には、1台のガス検知装置2を順次移動させて各基準点で測定を行っても構わないし、図2に示すように、複数のガス検知装置2を任意の基準点にそれぞれ配置して略同時に測定を行っても構わない。なお、図2には、2台のガス検知装置2が配管を挟んで両側に配置されたガス漏れ検知システム1が図示されているが、ガス検知装置2の設置個数は3台以上であっても構わない。
【0040】
ガスセンサ21は、ガスセンサ21から配管等の表面(反射面R)までのメタンガスの累積濃度を測定する。走査機構23が垂直軸A1又は水平軸A2回りに回転することにより、架台24に載置されたガスセンサ21の方位角及び仰角が任意に変更され、広範囲に亘ってメタンガスの累積濃度を検知することができる。ガスセンサ21が測定したメタンガスの累積濃度データは、記憶部31に記憶される。
【0041】
また、距離センサ22は、ガスセンサ21とともに架台24に載置されており、ガスセンサ21と一体となって方位角及び仰角が任意に変更される。そして、距離センサ22は、ガスセンサ21による測定と同時にガスセンサ21から反射面Rまでの距離を測定する。なお、距離センサ22はガスセンサ21と隣接して配置されており、距離センサ22が測定した距離は、ガスセンサ21と反射面Rとの距離とみなすことができる。距離センサ22が測定した距離データは、記憶部31に記憶される。
【0042】
[座標演算]
座標演算部32は、距離センサ22が測定を行った際の走査機構23の垂直軸A1及び水平軸A2の各回転角、すなわち架台24の仰角及び方位角に基づいて距離センサ22から放射された測距光L3の向きを演算する。さらに、座標演算部32は、測距光L3の向き、距離センサ22の測定値及びガス検知装置2の基準点座標に基づいて反射面Rの3次元座標を演算する。
【0043】
座標演算部32によって算出された反射面Rの3次元座標は、各座標におけるメタンガスの累積濃度データとをリンクして記憶部31に記憶される。
【0044】
また、座標演算部32が演算した多数の反射面Rの3次元座標を統合することにより、配管等の構造を示す点群データを得ることができる。なお、既に3次元座標を取得している同一のプラントに対して2回目以降に実施するガス漏れ検知等のように予めプラントの3次元座標が既知の場合には、基準点座標が特定されていれば、距離センサ22で距離データを測定してプラント全体の点群データ(3次元座標)を再び得る必要はない。
【0045】
[存在範囲絞込]
存在範囲演算部33は、メタンガスの累積濃度データが所定閾値以上である反射面Rの3次元座標及びガス検知装置2の基準点から、メタンガスの漏洩を検知した範囲を特定する。
【0046】
例えば、図3に示すように、第1の調査地点で測定を行った範囲(実線部分)では、第1の調査地点、点A及び点Bを頂点とした略三角形の内側が、メタンガスの漏洩が疑われる範囲となる。また、第2の調査地点で測定を行った範囲(破線部分)では、第1の調査地点、点A’及び点B’を頂点とした略三角形の内側が、メタンガスの漏洩が疑われる範囲となる。しかしながら、いずれの基準点であっても、メタンガスの実際の拡散具合が検出光L1の光路の奥行方向(図3紙面上、下方から上方に向かう方向)では不明であり、メタンガスの漏洩が疑われる範囲が、過度に拡大することは避けられない。
【0047】
一方、存在範囲演算部33は、第1の調査地点で測定を行った範囲及び第2の調査地点で測定を行った範囲に基づいて、複数のメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域(図3中の塗りつぶし領域)を抽出することにより、実際にメタンガスが拡散した範囲に近づけるように、検出光L1の奥行方向においてメタンガスの存在範囲を絞り込むことができる。
【0048】
また、表示部4上に、カメラ25が撮影したプラント外観の画像上に、複数のメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域を重ねて表示することにより、オペレ―タが絞り込まれたメタンガスの存在範囲を直感的に認識できるように可視化することができる。
【0049】
[漏洩元推定]
さらに、予め得られたプラント内の配管等の3次元座標と、複数のメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域に応じた反射面Rの3次元データから、メタンガスの漏洩元を推定することができる(図3の場合には、漏洩元~点Bの範囲)。
【0050】
このようにして、本実施形態に係るガス漏れ検知システム1は、走査機構23を用いてガスセンサ21及び距離センサ22を垂直方向又は水平方向に走査することで、広範囲に亘ってガス漏洩を検知することができ、さらに、演算装置が、各基準点における測定でメタンガスの漏洩を検知した範囲が重複する領域を抽出することにより、メタンガスの存在範囲を検出光L1の光路の奥行方向において絞り込むことができる。
【0051】
また、距離センサ22が測定した距離データ、距離センサ22の方位角及び仰角並びにガス検知装置2が設置された基準点座標に基づいて反射面Rの3次元座標が演算され、演算装置が、反射面Rの3次元座標及び光路の奥行方向で限定されたメタンガスの存在範囲に基づいてメタンガスの漏洩元を精度良く推測することができる。
【0052】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0053】
1 ・・・ガス漏れ検知システム
2 ・・・ガス検知装置
21 ・・・ガスセンサ
22 ・・・距離センサ
23 ・・・走査機構
24 ・・・架台
25 ・・・カメラ
3 ・・・制御装置
31 ・・・記憶部
32 ・・・座標演算部
33 ・・・存在範囲演算部
4 ・・・表示部
A1 ・・・垂直軸
A2 ・・・水平軸
L1 ・・・検出光
L2 ・・・反射光
L3 ・・・測距光
R ・・・反射面
図1
図2
図3