(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】傾斜ブロックを有する傾斜車両の前方キャリッジ
(51)【国際特許分類】
B62K 5/08 20060101AFI20230517BHJP
B62K 5/10 20130101ALI20230517BHJP
B62K 5/05 20130101ALI20230517BHJP
B60G 17/005 20060101ALI20230517BHJP
B62D 7/18 20060101ALN20230517BHJP
B60G 21/00 20060101ALN20230517BHJP
【FI】
B62K5/08
B62K5/10
B62K5/05
B60G17/005
B62D7/18
B60G21/00
(21)【出願番号】P 2019532785
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2017058219
(87)【国際公開番号】W WO2018116210
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】102016000129491
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ラッファエッリ
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/046280(WO,A1)
【文献】特開2010-184508(JP,A)
【文献】特開2012-056503(JP,A)
【文献】特開2012-143364(JP,A)
【文献】特開平10-138929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/08
B62K 5/10
B62K 5/05
B60G 17/005
B60G 21/05
B62D 7/18
B60G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つまたは4つの車輪を有する傾斜車両の前方キャリッジ(8)であって、
前方キャリッジフレーム(16)と、
運動学的傾斜機構(20)によって互いにかつ前記前方キャリッジフレーム(16)と運動学的に連結されている少なくとも一対の前輪(10’、10”)と、
互いに対向する第1の端部(111)と第2の端部(112)とを有するロッド(110)を備えるアンチ傾斜システム(100)であって、これらの端部がヒンジ手段(101’、101”、102’、102”)によって前記前方キャリッジ(8)の第1の固定部(60)と第2の固定部(60)とを互いに直接連結するアンチ傾斜システム(100)とを備え、
ここで前記第1の固定部(60)および前記第2の固定部(60)の少なくとも一方は、前記2つの前輪(10’、10”)の傾斜運動を受け、
前記アンチ傾斜システム(100)は、前記ロッド(110)の回転角(α)を、解除可能に固定する第1のブロック装置を備え、前記回転角(α)は、前記ロッド(110)と前記ヒンジ手段(101”)との間の角度である前記ロッドの傾斜角を表し、
ここで前記第1のブロック装置は、連接四辺形を画定するように、前記ロッド(110)、および前記第1の固定部(60)に連結された連結ロッド-クランク運動学的機構(210、220)を備え、
ここで第1のブロック装置は、
前記連結ロッド-クランク運動学的機構(210、220)の構成を2つの構成の間で変えるために、前記連結ロッド-クランク運動学的機構にシフト移動を与えるのに適したアクチュエータ(230)をさらに備え、前記2つの構成は、前記連結ロッド(210)が前記クランク(220)と位置合わせされ、前記連接四辺形が三角形に縮退して、前記ロッド(110)の前記傾斜角(α)を固定する支柱を画定するブロック構成、および、前記連結ロッド(210)が前記クランク(220)に対して位置合わせされておらず、前記連接四辺形が前記傾斜運動を自由にする非縮退構成を有する少なくとも一つの自由構成であり、前記第1のブロック装置は、
前記ブロック構成から前記少なくとも1つの自由構成への移行において前記アクチュエータ(230)を補助するための解除手段(240)をさらに備える、前方キャリッジ(8)。
【請求項2】
前記ロッドの前記第1の端部(111)での前記ヒンジ手段(101’、101”)は、前記ロッド(110)の軸の方向と前記ヒンジ手段(101”)の軸の方向によって形成される面である前記2つの前輪(10’、10”)の傾斜面に対して実質的に直交するヒンジ軸を有しかつ前記第1の固定部(60)に連結された少なくとも第1の傾斜ヒンジ(101’)を備える、請求項1に記載の前方キャリッジ。
【請求項3】
前記ロッド(110)の前記第2の端部(112)における前記ヒンジ手段(102’、102”)は、前記2つの前輪(10’、10”)の前記傾斜面に対して実質的に直交するヒンジ軸を有しかつ前記第2の固定部(60)に連結された少なくとも第2の傾斜ヒンジ(102’)を備え、前記アンチ傾斜システム(100)は、前記第2の端部(112)において前記ロッド(110)の前記回転角を、解除可能に固定し、かつ前記第1の端部(111)に配置された前記第1のブロック装置と前記傾斜車両の中心線平面(M-M)に面対称に同一である第2のブロック装置を備える、請求項2に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項4】
前記連結ロッド-クランク運動学的機構(210、220)は、第1の円筒形ヒンジ(201)によって前記連結ロッド(210)において前記ロッド(110)に連結され、かつ第2の円筒形ヒンジ(202)によって前記クランク(220)において前記第1の固定部(60)に連結され、前記連結ロッド(210)は、円筒形連接ヒンジ(203)によって前記クランク(220)に連結され、前記第1の円筒形ヒンジ(201)および前記第2の円筒形ヒンジ(202)および前記円筒形連接ヒンジ(203)はすべて、前記第1の傾斜ヒンジ(101’)の前記ヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有する、請求項2または請求項3に記載の前方キャリッジ。
【請求項5】
前記連結ロッド(210)は、軸方向の可動カップリングを用いて、前記円筒形連接ヒンジ(203)または前記第1の円筒形ヒンジ(201)内に係合されている、請求項4に記載の前方キャリッジ。
【請求項6】
前記アクチュエータ(230)は、前記円筒形連接ヒンジ(203)と前記第1の円筒形ヒンジ(201)との間に画定される距離(H)を変化させるために、前記連結ロッド(210)に前記円筒形連接ヒンジ(203)または前記第1の円筒形ヒンジ(201)に対する軸方向シフト移動を与えるのに適しており、前記アクチュエータ(230)は、前記第2の円筒形ヒンジ(202)を中心として前記クランク(220)を回転させることによって前記距離(H)を変えるように動作可能である、請求項4または請求項5に記載の前方キャリッジ。
【請求項7】
前記解除手段(240)は、前記クランク(220)と前記連結ロッド(210)との間の位置ずれを引き起こすように、前記第2の円筒形ヒンジ(202)を中心とする解除回転を前記クランク(220)に加えるように構成されている、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の前方キャリッジ。
【請求項8】
前記連結ロッド(210)は、前記円筒形連接ヒンジ(203)または前記第1の円筒形ヒンジ(201)の支持体(203a)に回転可能に噛み合うウォームねじから構成され、前記アクチュエータ(230)は、その軸上で前記ウォームねじ(210)に回転運動を与えるのに適しており、それにより前記円筒形連接ヒンジ(203)または前記第1の円筒形ヒンジ(201)に対する前記連結ロッド(210)の軸方向変位が決定する、請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項9】
前記解除手段(240)は、前記円筒形連接ヒンジ(203)または前記第2の円筒形ヒンジ(202)に関連する弾性手段から構成され、前記クランク(220)が前記連結ロッド(210)と整列すると、前記弾性手段は自身に弾性的に負荷をかけて前記第2の円筒形ヒンジ(202)の周りの前記クランク(220)に回転モーメントを発生させる、請求項8に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項10】
前記弾性手段は、前記円筒形連接ヒンジ(203)の前記支持体(203a)と一体である板ばね(240)から構成され、前記板ばね(240)は、前記クランク(220)が前記連結ロッド(210)と整列すると、前記板ばね(240)が、前記第2の円筒形ヒンジ(202)に対して径方向に突出する前記クランク(220)の付属部(221)と係合し、弾性的に撓み、前記径方向に突出する付属部(221)に少なくとも1つの非径方向成分を有する力を発生させるように向けられている、請求項9に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項11】
前記クランク(220)は、前記
連結ロッド-クランク運動学的機構(210、220)が前記ブロック構成に移行したときに傾斜の非突然のブロックを決定するのに適した前記クランクの軸に沿ったダンパを備え、ここで前記ダンパを停止させ、前記クランク(220)の前記軸に沿った振動を防止し、それによって静的ブロックを決定するのに適した前記ダンパの停止手段が設けられている、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項12】
前記ロッド(110)は、前記第1の端部(111)と第2の端部(112)との間で長手方向に伸長可能である、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項13】
前記2つの前輪(10’、10”)のそれぞれは、それぞれの車軸ジャーナル(60)によって前記運動学的傾斜機構(20)に連結され、前記車軸ジャーナル(60)は、前記車輪の回転ピン(68)に機械的に連結され、前記車輪を回転軸(R-R)を中心に回転可能に支持し、前記前方キャリッジ(8)は、前記運動学的傾斜機構(20)に対する少なくとも1回のばね懸架運動を各車軸ジャーナル(60)に保証するための懸架手段を含む、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項14】
前記運動学的傾斜機構は、中間ヒンジ(28)で前記前方キャリッジフレーム(16)にヒンジ連結された一対の横部材(24’、24”)と、側部ヒンジ(52)の前記横部材(24’、24”)の対向する横方向端部において枢動する一対の直立部(48)とを含み、前記一対の横部材および前記一対の直立部は、連接四辺形運動学的機構を画定する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(8)。
【請求項15】
後部に駆動輪、および請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(8)を有する、車両(4)。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の前方キャリッジ(8)を有する3つまたは4つの車輪を有する車両の傾斜運動をブロックする方法であって、前記方法は、
前記第1の端部(111)において前記ロッド(110)の前記回転角を、解除可能に固定する少なくとも前記第1のブロック装置の前記アクチュエータ(230)を作動させて、前記連結ロッド-クランク運動学的機構(210、220)の前記構成を前記自由構成から前記ブロック構成へ移行させ、前記連接四辺形を三角形へと縮退させる傾斜ブロックステップと、
少なくとも前記第1のブロック装置の前記アクチュエータ(230)を作動させて、前記連結ロッド-クランク運動学的機構の前記構成を前記ブロック構成から前記自由構成に移行させ、前記連接四辺形の非縮退構成を回復させ、クランクと連結ロッドとの位置ずれが前記解除手段によって引き起こされる傾斜解除ステップとを交互に含む、方法。
【請求項17】
3つまたは4つの車輪を有する傾斜車両の前方キャリッジ(8)のアンチ傾斜システムであって、前記前方キャリッジ(8)は、前方キャリッジフレーム(16)と、運動学的傾斜機構(20)によって互いにかつ前記前方キャリッジフレーム(16)と運動学的に連結されている少なくとも一対の前輪(10’、10”)とを含み、
前記アンチ傾斜システム(100)は、互いに対向する第1の端部(111)と第2の端部(112)とを有するロッド(110)を備え、これらの端部は-前記前方キャリッジ(8)への取付状態において-ヒンジ手段(101’、101”、102’、102”)によって前記前方キャリッジ(8)の第1の固定部(60)と第2の固定部(60)とを互いに直接連結することが意図されており、ここで前記第1の固定部(60)および前記第2の固定部(60)の少なくとも一方は、前記2つの前輪(10’、10”)の傾斜運動を受け、
前記アンチ傾斜システム(100)は、前記ロッド(110)の回転角(α)を、解除可能に固定する第1のブロック装置を備え、前記回転角(α)は、前記ロッド(110)と前記ヒンジ手段(101”)との間の角度である前記ロッドの傾斜角を表し、
ここで前記第1のブロック装置は、連接四辺形を画定するように、前記ロッド(110)、および前記第1の固定部(60)に連結された連結ロッド-クランク運動学的機構(210、220)を備え、
ここで前記第1のブロック装置は、
前記連結ロッド-クランク運動学的機構(210、220)の構成を2つの構成の間で変えるために、前記連結ロッド-クランク運動学的機構にシフト移動を与えるのに適したアクチュエータ(230)をさらに備え、前記2つの構成は、前記連結ロッド(210)が前記クランク(220)と位置合わせされ、前記連接四辺形が三角形に縮退して、前記ロッド(110)の前記傾斜角(α)を固定する支柱を画定するブロック構成、および、前記連結ロッド(210)が前記クランク(220)に対して位置合わせされておらず、前記連接四辺形が前記傾斜運動を自由にする非縮退構成を有する少なくとも一つの自由構成であり、前記第1のブロック装置は、
前記ブロック構成から前記少なくとも1つの自由構成への移行において前記アクチュエータ(230)を補助するための解除手段(240)をさらに備える、アンチ傾斜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜ブロックを有する傾斜車両の前方キャリッジに関する。
【0002】
特に、本発明による車両は、2つの操舵および傾斜車輪を前部に備え、固定車軸を有する後部駆動車輪を後部に備える車両であり得る。
【背景技術】
【0003】
車両の分野では、操舵性の点でモータサイクルの特徴と、四輪車両の安定性を兼ね備えた「ハイブリッド」車両の供給が増えている。
【0004】
これらの「ハイブリッド」車両は、例えば、2つの操舵輪を備えた三輪車両、およびQUADとして知られる四輪車両によって代表される。
【0005】
より具体的には、上記の三輪車両は、2つの操舵および傾斜(すなわち傾動)車輪を前部に備え、固定車軸を有する後部駆動車輪を後部に備える車両であり得る。後輪は駆動トルクを提供するように意図されており、したがって駆動させることができるが、前輪対は車両の方向性を提供するように意図されている。操舵に加えて前方キャリッジの一対の車輪は傾動したり傾斜したりできる。この解決策により、後部に二輪ある三輪車両と比較して、前方キャリッジに2つの車輪を有する車両は、モータサイクルと同様に曲がるときに車両を傾けられるので、実際のモータサイクルと同等である。しかしながら、前方キャリッジに二対の車輪を有するそのような車両は、二輪の車両と比較して、自動車で提供されるものと同様に、前輪の地上での二重支持によって安定性が向上している。
【0006】
前輪は、例えば連接四辺形を介在させることにより、同期的かつ鏡面的に車輪を傾斜させることを可能にする運動学的機構によって互いに運動学的に連結されている。これらの車両は、2つの前輪それぞれに1つずつ、独立したダンパを備えた2つの独立したサスペンションをさらに備えている。
【0007】
それゆえ、三輪傾斜車両は、二輪モータサイクルの操舵性を提供すると同時に、四輪車両の安定性および安全性を提供するように設計されている。
【0008】
この種の三輪傾斜車両は、例えば、同じ出願人によるイタリア国特許出願第2003MIA001108号に記載されている。
【0009】
この種の車両の構造上の特徴のために、特定の条件下で、例えば非常に低速でまたは停止中に、車両は偶発的および/または制御されない傾斜運動の結果として倒れる可能性がある。
【0010】
この問題は、ユーザによって手動でおよび/または自動制御システムによって操作される、傾斜ブロックシステムを上記の車両に設けることによって対処されてきた。
【0011】
傾斜ブロックは、様々な方法で得ることができるが、一方または両方の傾斜車輪の傾斜運動に追従するように構成されている構成要素の可逆ブロックを実質的に共有する。そのような構成要素の傾斜運動のブロックは、運動学的に、直接的または間接的に、車両の2つの前輪の傾斜のブロックを決定する。
【0012】
可逆的にブロックされる構成要素は、車両の傾斜構造内に既に存在している要素であり得る。例えば、非常に一般的な解決策によれば、ブロックされる構成要素は、傾斜運動学的機構を規定する連接四辺形の要素、好ましくは2つの直立部のうちの1つとすることができる。四辺形の直立部の動きをブロックすることにより、四辺形がその形状を変えることを防ぎ、したがって、2つの車輪が傾斜するのを間接的に防ぐ。連接四辺形がサスペンションを介して2つの傾斜車輪の車軸ジャーナルに連結されている場合、ダンパの非対称ばね運動による傾斜運動はそのようなブロックから除外され、それらは独立して管理される必要がある。
【0013】
そのようなシステムは、例えば、同じ出願人によるイタリア国特許出願第2004A000171号に記載されている。アンチ傾斜システムは、連接四辺形構造および2つの独立したフロントサスペンションを備えた操舵システムを有する傾斜車両に関して説明されている。アンチ傾斜システムは、直立部をフレームに連結するヒンジの周辺の連接四辺形の上部直立部の回転をブロックするように構成された機械的クランプと、2つの車輪の非対称なばね運動による傾斜をやはりブロックするためにダンパと平行に配置されたロッドに作用する電気モータによって同時に作動する2つの油圧クランプとを含む。
【0014】
あるいは、傾斜をブロックするために可逆的にブロックされる構成要素は、車両の傾斜構造に追加され、かつこの目的のために特に設計された要素から構成できる。特に、この追加の要素は、四辺形自体の構成上の可逆的なブロック要素として連接四辺形と関連付けられてもよい。この解決策は、例えば欧州特許出願第2810861A1号、フランス国特許第2953184号および欧州特許第2345576B1号に記載されている。
【0015】
あるいは、この追加の要素は、車両のフレームから機械的に解放された、2つの傾斜車輪の車軸ジャーナル間の直接相互連結要素から構成されてもよい。
【0016】
これらの解決策では、車輪の「車軸ジャーナル」は、車輪自体の回転ピンを支持し、それをサスペンション、操舵装置、そして特定の場合には運動学的傾斜機構に運動学的に相互連結することを意図した車両の機械部分である。車軸ジャーナルは、車輪ピンと運動学的に一体化させることができ、車輪ピンはベアリングを介して車輪を支持する。その場合、車軸ジャーナルは車輪ピンと一体に作られてもよく、またはそれに機械的に拘束されて1つの部品を形成してもよい。車軸ジャーナルは、車輪ピンと運動学的に一体化させることができ、車輪ピンはベアリングを介して車輪を支持する。
【0017】
傾斜ブロックのこの技術的解決策は、サスペンションがもたらす影響から運動学的に解放されるので、そのような追加の要素のみに作用することによって全ての傾斜運動をブロックすることが可能になり、したがって、2つの傾斜車輪の非対称のばね運動によって生じる傾斜運動もブロックされる。そのような技術的解決策は、同じ出願人によるイタリア国特許出願第102015000088087号の目的である。この出願に記載されている特定のアンチ傾斜システムは、ボールジョイントに相当するヒンジ手段によってその両端において前輪の2つの車軸ジャーナルを互いに直接連結する伸縮ロッドから構成される。傾斜ブロックは、バンドブレーキまたはドラムブレーキのような専用のアクチュエータによって、傾斜面上のロッドの少なくとも一端でロッドの回転角をブロックすることによって達成される。そのようにロックされたロッドは、2つの車輪の傾斜運動を防止する。「傾斜面」とは、車両の長手方向または進行方向を横切る平面を意味し、したがって車両の中心線平面に入射する。
【0018】
あるいは、上記追加の要素は、2つの傾斜車輪のうちの一方の車軸ジャーナルと車両のフレームとの間の直接相互連結要素から構成されてもよい。そのような技術的解決策は、同じ出願人によるイタリア国特許出願第102015000088091号に記載されている。特に、アンチ傾斜システムは、ボールジョイントと同等のヒンジ手段によって、その両端で一方の車輪の車軸ジャーナルをフレームに直接連結する伸縮ロッドから構成される。傾斜ブロックは、バンドブレーキまたはドラムブレーキのような専用のアクチュエータによって、傾斜面のロッドのその2つの端部のうちの少なくとも一方において傾斜面に対するロッドの回転角をブロックすることによって達成される。そのようにロックされたロッドは、2つの車輪の傾斜運動を防止する。この場合、ロッドによってフレームに連結されていない車輪のばねはロッドブロック自体によって影響されないので、両方の車輪の非対称ばねサスペンションによって引き起こされる傾斜運動はブロックされない。
【0019】
一般に、ボールジョイントに相当するヒンジ手段によってその端部においてヒンジ連結され、傾斜面上の回転角が専用アクチュエータによって少なくともその一端でロック可能である相互連結ロッドに基づくアンチ傾斜システムは、他の解決策と比較して、車両に簡単に設置でき、それ自体が限られた設置面積しか必要としないという大きな利点がある。
【0020】
さらに、このようなロッドは、車両の運動(特に、傾斜、操舵または非対称ばねサスペンション)中にロッドが連結する点間の距離が変化するか否かに応じて、長さにおいて伸長可能であってもなくてもよい。したがって、このシステムは、運転時に実質的に即応的になるように容易に構成することもできる。
【0021】
ベルトブレーキまたはドラムブレーキの採用はまた、ロッドのヒンジ手段上にアクチュエータを直接一体化することを可能にし、設置の容易さに関して利点を有する。
【0022】
しかしながら、そのような技術的解決策は、車両の傾斜運動をブロックすることによって車両のバランスを維持するだけでなく、車両の全重量を片側に移動させることによるそのようなバランス変更を防ぐのに十分なトルクを提供するために十分なサイズを有するパワーアクチュエータの使用を必要とするという限界がある。単一のアクチュエータが30kgmの範囲のトルクを提供できなければならない。これは大きなサイズのベルトまたはドラムブレーキの設置を必要とし、それはロッドによって与えられるスペース節約の利点を事実上無効にする。ディスクブレーキを使用した場合も同様の状況が発生する。
【0023】
2つの傾斜車輪における傾斜ブロックを対称的にするために両端でロッドの回転をブロックしたい場合にも、この限界は非常に強調される。したがって、そのような場合、全体の寸法およびコストを2倍にして、1つではなく2つのアクチュエータを設置することが必要であろう。2つの車輪が運動学的傾斜機構によって互いに連結されているので、傾斜の対称的なブロックはそれ自体重要ではないが、構成要素の一連の公差および弾性を無効にするのに適しているかもしれない。
【0024】
ベルトブレーキまたはドラムブレーキに代わる可能性のあるものは、既に引用したイタリア国特許出願第102015000088087号に記載されているように、ヒンジ領域の近傍でロッドをそれがヒンジ留めされる要素に斜めに連結する伸長可能な支柱から構成される。伸長可能な支柱には、その長さにおける伸長をブロックするように構成された手段が設けられている。長さにおいて固定されているとき、支柱はロッドが回転するのを防ぐ。しかしながら、この技術的解決策は、より複雑な設置を必要とし、全体寸法の問題を著しく減らすことができない。
【0025】
それゆえ、傾斜ブロック要素として一端をロック可能なロッドを採用しながら、上記の限界を全体的にまたは部分的に克服することを可能にするアンチ傾斜システムを備えた傾斜車両を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】イタリア国特許出願第2003MIA001108号
【文献】イタリア国特許出願第2004A000171号
【文献】欧州特許出願第2810861A1号
【文献】フランス国特許第2953184号
【文献】欧州特許第2345576B1号
【文献】イタリア国特許出願第102015000088087号
【文献】イタリア国特許出願第102015000088091号
【発明の概要】
【0027】
したがって、本発明の目的は、システム全体の設置面積が小さい傾斜ブロック要素としてのロッドの簡単な設置を組み合わせることを可能にするアンチ傾斜システムを備えた傾斜車両の前方キャリッジを提供することによって、従来技術の上記の欠点を排除または少なくとも軽減することである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、従来技術のものよりも小型でより費用効果の高いアクチュエータを使用することを可能にするアンチ傾斜システムを備えた傾斜車両の前方キャリッジを提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、傾斜の非突然のブロックを可能にするアンチ傾斜システムを備えた傾斜車両の前方キャリッジを提供することである。
【0030】
本発明のさらなる目的は、システム全体の寸法および相対的なコストの著しい増加を引き起こすことなく、両方の傾斜車輪の傾斜のブロックを対称にすることを可能にするアンチ傾斜システムを備えた傾斜車両の前方キャリッジを提供することである。
【0031】
本発明のさらなる目的は、製造および車両自体に取り付けるのに構造的に単純かつ費用効果があるアンチ傾斜システムを備えた傾斜車両の前方キャリッジを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の技術的特徴は、添付の特許請求の範囲の内容において明確に理解することができ、その利点は、純粋に例示的かつ非限定的であるその1つ以上の実施形態を例示している添付の図面を参照して行われる以下の詳細な説明においてより容易に明らかになるであろう。
【0033】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による
傾斜ブロックシステムを備えた前方キャリッジを備えた車両の斜視図を示しており、他の部品をより良く示すために一部の部品を取り除いて示している。
【
図2】
図1に示される車両の前方キャリッジの拡大図を示す。
【
図3】
図1の車両の前方キャリッジの詳細の拡大斜視図であり、アンチ
傾斜システムに関し、前方キャリッジから分離されてブロック構成にあるブロック装置を図示している。
【
図6】
図3のアンチ
傾斜システムの斜視図であり、ブロック装置を自由構成で示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上記の図を参照すると、参照番号4は全体を通して本発明による車両を示す。
【0035】
本発明の目的のために、車両という用語は広い意味で考慮されなければならず、少なくとも3つの車輪、すなわち以下でよりよく説明されるように2つの前輪、および少なくとも1つの後輪を有する任意の車両を包含する。それゆえ、車両の定義はまた、前方キャリッジに2つの車輪と後部に2つの車輪とを有する、いわゆる四輪車を包含する。
【0036】
車両4は、少なくとも2つの前輪10を支持する前方キャリッジ8から1つ以上の後輪14を支持する後部12まで延びるフレーム6を備える。左前輪10’と右前輪10”とを区別することが可能であり、ここで、左右の車輪10’、10”の定義は純粋に幾何学的であり、車両の運転者に関して意味を有する。前記車輪は、車両を運転する運転者の観測点に関して車両の中心線M‐Mの左右に配置されている。
【0037】
本発明の目的のために、車両のフレーム6は任意の形状、サイズを有することができ、そして例えば格子型、箱型、単一または二重クレードルなどであり得る。車両のフレーム6は一体品でも複数部品でもよく、例えば、車両のフレーム6は、1つ以上の後駆動輪14を支持する後部振動スイングアーム(図示せず)を含むことができる後部フレーム13と相互連結されている。上記の後部スイングアームは、直接ヒンジによって、またはクランク機構および/または中間フレームを介在させることによってフレーム6に連結することができる。
【0038】
本発明の一般的な実施形態の解決法によれば、車両の前方キャリッジ8は、前方キャリッジフレーム16と、運動学的傾斜機構20によって互いにかつ前方キャリッジフレーム16に運動学的に連結されている一対の前輪10’、10”とを備え、運動学的傾斜機構20は、好ましくは車輪が同期的かつ鏡面的に傾斜することを可能にする。
【0039】
車両前方キャリッジ8は、互いに対向する第1の端部111と第2の端部112とを有するロッド110を備えるアンチ傾斜システム100を備え、これらの端部はヒンジ手段101’、101”および102’、102”によって前方キャリッジ8の第1の固定部102と第2の固定部60とを互いに直接連結する。
【0040】
前記第1の固定部60および第2の固定部60の少なくとも一方は、前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受ける。特に、以下で詳しく説明するように、
-前記第1の固定部60および第2の固定部60の両方は、前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受けるか、または
-前記第1および第2の固定部のうちの一方のみが前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受け、他方の固定部は前方キャリッジフレーム16の一部である。
【0041】
好ましくは、上記のヒンジ手段101’、101”および102’、102”は、前記第1の固定部60および前記第2の固定部60の動きに受動的に追従するように構成される。
【0042】
好ましくは、ロッドの前記第1の端部111へのヒンジ手段101’、101”は、2つの前輪10’、10”の傾斜面に対して実質的に直交するヒンジ軸を有し、かつ前記第1の固定部60に連結された少なくとも第1の傾斜ヒンジ101’を備える。
【0043】
前記アンチ傾斜システム100は、好ましくはロッド110の第1の端部111における前記第1の傾斜ヒンジ101’に対する前記ロッド110の回転角αを可逆的にブロックするのに適した第1のブロック装置を備える。そのような回転角αは、ロッド110の傾斜角に対応する。
【0044】
「傾斜面」とは、車両の長手方向または進行方向Yを横切る平面を意味し、したがって車両の中心線平面M‐Mに入射する。
【0045】
動作的には、傾斜面に対してロッド110の少なくとも一端におけるロッド110の回転をブロックすることは、ロッド110に連結された前方キャリッジ部分の傾斜運動をブロックし、したがって2つの前輪10’、10”の傾斜運動をブロックすることを意味する。
【0046】
添付の図面に示される好ましい実施形態によれば、各前輪10’、10”は、それぞれの車軸ジャーナル60によって前記運動学的傾斜機構20に連結され、車軸ジャーナル60は、車輪の回転ピン68に機械的に連結され、車輪を回転軸を中心に回転可能に支持する。前方キャリッジはさらに、前記傾斜運動学的機構20に対する少なくとも1回のばね懸架運動を各車軸ジャーナル60に保証するための懸架手段を含む。
【0047】
車輪の「車軸ジャーナル」は、車輪自体の回転ピンを支持し、それをサスペンション、操舵装置、および上記運動学的傾斜機構20に運動学的に相互連結することを意図した車両の機械部分である。車軸ジャーナルは、車輪ピンと運動学的に一体化させることができ、車輪ピンはベアリングを介して車輪を支持する。その場合、車軸ジャーナルは車輪ピンと一体に作られてもよく、またはそれに機械的に拘束されて1つの部品を形成してもよい。車軸ジャーナルは、車輪ピンと運動学的に一体化させることができ、車輪ピンはベアリングを介して車輪を支持する。
【0048】
添付の図面に示されるこの好ましい実施形態によれば、上記の第1および第2の固定部は、2つの前輪10’、10”の車軸ジャーナル60から構成され、したがって両方とも前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受ける。この場合、前記傾斜面に対するロッド110の回転のブロックは、2つの前輪両方の車軸ジャーナル、したがって2つの車輪自体の傾斜運動のブロックを直接決定する。
【0049】
あるいは、添付の図面に示されていない実施形態によれば、前記ロッド110は、2つの前輪のうちの1つのみの車軸ジャーナルを前方キャリッジフレーム16に直接連結することができる。この場合、前記第1および第2の固定部のうちの一方のみが前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受ける。この場合、前記傾斜面に対するロッドの回転のブロックは前輪においてのみ生じる。しかしながら、動作上、単一の前輪の傾斜のブロックは、上記の運動学的傾斜機構によって課される運動学的相互連結のために、他の前輪の傾斜ブロックも自動的に決定する。
【0050】
好ましくは、ロッド110をそれぞれ一方または両方の車軸ジャーナルに連結する両方の実施形態において、ロッドの第1の端部へのヒンジ手段101’、101”は、車軸ジャーナルへの操舵運動を可能にするために、前記傾斜面に対して平行なヒンジ軸を有する円筒形操舵ヒンジ101”も備える。第1の傾斜ヒンジ101’は、前記円筒形操舵ヒンジ101”に連結されている。
【0051】
上記の運動学的傾斜機構20は、前輪が同期的かつ鏡面的に傾斜することを確実にするように機能するという条件で、任意の構成を有することができる。
【0052】
添付の図面に示された実施形態によれば、運動学的傾斜機構20は連接四辺形システムである。
【0053】
より詳細には、そのような連接四辺形システムは、中間ヒンジ28で前方キャリッジフレーム16にヒンジ連結された一対の横部材24’、24” を含む。横部材24’、24”は、側部ヒンジ52の横方向端部において枢動する直立部48によって、対向する前記横方向端部で互いに連結されている。横部材24’、24”および直立部48は、上記の連接四辺形20を画定する。
【0054】
好ましくは、この場合、直立部48の各々は、前記前輪10’、10”の一方の車軸ジャーナル60を案内し支持する。
【0055】
添付の図面に示されていない実施形態によれば、各直立部は、それぞれの前輪の車軸ジャーナルをその一般的な延長軸と同軸に案内し支持することができる。この場合、各前輪の懸架手段はそれぞれの直立部に一体化され、直立部の一般的な延長軸に沿った車軸ジャーナルの直線的なばね運動を確実にする。
【0056】
あるいは、添付の図面に示されるように、連接四辺形運動学的傾斜機構20は、直立部48のそれぞれが、それぞれの前輪10’、10”の車軸ジャーナル60を回転並進運動型の運動学的連結システムを介して直立部48の外部に案内し支持するように実施できる。
【0057】
有利には、添付の図面に示されていない実施形態によれば、運動学的傾斜機構が連接四辺形システムである場合、上記第1および第2の固定部は、連接四角形システムの直立部および横部材から選択される2つの構成要素から構成することができ、したがって、両方とも前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受ける。動作的には、傾斜面に対するロッド110の回転のブロックは、連接四辺形構成、そして結果としてこのような連接四辺形システムによって許容される傾斜運動のブロックを決定する。
【0058】
代替として、添付の図面に示されていないさらなる実施形態によれば、前記ロッド110は、前記連接四辺形システムの直立部および横部材から選択される構成要素を、前方キャリッジフレーム16に直接連結してもよい。この場合、前記第1および第2の固定部のうちの一方のみが前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受ける。
【0059】
好ましくは、連接四辺形の2つの構成要素間またはそのような構成要素の1つと前方キャリッジフレームとの間のロッド110の連結をそれぞれ提供する両方の上記実施形態において、ロッド110の第1の端部111におけるヒンジ手段は、単に第1の傾斜ヒンジ101’から構成され得る。連接四辺形は、実際には、その全ての異なる構成において前記傾斜面と常に平行であり、前方キャリッジフレームなどの操舵運動に対して即応的である。
【0060】
有利には、前方キャリッジ8には、各前輪10’、10”のそれぞれの操舵軸を中心とする車軸ジャーナルの回転を制御するように構成された操舵装置が設けられている。操舵装置は、車軸ジャーナルに直接作用してサスペンションの作用を受けてもよく、またはサスペンションの作用を受けずに間接的に車軸ジャーナルに作用してもよい。
【0061】
本発明の第1の態様によれば、添付の図面に示されるように、前記第1のブロック装置は、連接四辺形を画定するように、第1の円筒形ヒンジ201によって好ましくは連結ロッド210において前記ロッド110に連結され、かつ第2の円筒形ヒンジ202によって好ましくは前記クランク220において前記第1の固定部60に連結された連結ロッド-クランク運動学的機構210、220を備える。
【0062】
好ましくは、連結ロッド210は、円筒形連接ヒンジ203によってクランク220に連結されている。
【0063】
好ましくは、上記第1の円筒形ヒンジ201および第2の円筒形ヒンジ202および上記円筒形連接ヒンジ203はすべて、第1の傾斜ヒンジ101’のヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有し、前記連接四辺形の頂点を構成し、ここで、
-2つの第1の対向側は、クランク220と、第1の傾斜ヒンジ101’と第1の円筒形ヒンジ201との間に含まれるロッド110の第1の端部111の部分とによって形成され、
-他の2つの対向側は、第1の固定部(または添付の図に示されるように第1の固定部60に連結された円筒形操舵ヒンジ101”)と、第1の円筒形ヒンジ201と円筒形連接ヒンジ203との間に含まれる連結ロッド210の部分とによって直接形成される。
【0064】
機能的には、ロッド110の第1の端部111の傾斜角αが2つの前輪の傾斜運動によって変化するにつれて、上記の連接四辺形はその形状を変化させる。
【0065】
好ましくは、上記連結ロッド210は、軸方向の可動カップリングを用いて、円筒形連接ヒンジ203または第1の円筒形ヒンジ201内に係合される。
【0066】
本発明の別の態様によれば、上記第1のブロック装置は、上記連結ロッド-クランク運動学的機構210、220の構成を2つの構成の間で変えるために前記連結ロッド-クランク運動学的機構にシフト運動を与えるのに適したアクチュエータ230を含み、2つの構成は、
-(
図3、
図4および
図5に示されるように)連結ロッド210がクランク220と位置合わせされ、上記の連接四辺形が三角形に縮退して、ロッド110の
傾斜角αのブロック支柱を画定するブロック構成、および
-(
図6、
図7および
図8に示されるように)連結ロッド210がクランク220に対して位置合わせされておらず、連接四辺形が
傾斜運動を自由にする非縮退構成を有する少なくとも1つの自由構成である。
【0067】
好ましくは、アクチュエータ230は、第1の円筒形連接ヒンジ203と第1の円筒形ヒンジ201との間に画定される距離Hを変化させるために、連結ロッド210に上記円筒形連接ヒンジ203または上記第1の円筒形ヒンジ201に対する軸方向シフト移動を与えるのに適している。
【0068】
動作的には、上記アクチュエータ230は、第2の円筒形ヒンジ202を中心としてクランク220を
傾斜させることによって、前記距離Hを変えるように動作可能であり、したがって、前記連結ロッド-クランク運動学的機構210、220の構成を、
-(
図3、
図4および
図5に示されるように)連結ロッド210がクランク220と位置合わせされ、上記連接四辺形が三角形に縮退して、ロッド110の
傾斜角αのブロック支柱を画定するブロック構成、および
-(
図6、
図7および
図8に示されるように)連結ロッド210がクランク220に対して位置合わせされておらず、連接四辺形が
傾斜運動を自由にする非縮退構成を有する少なくとも1つの自由構成の間で変える。
【0069】
本発明により、ロッド110の第1の端部111における傾斜のブロック、すなわち、第1の傾斜ヒンジ101’を中心とする傾斜角αの変動を防止するのに適したトルクの印加は、アクチュエータ230ではなく、連結ロッド-クランク運動学的機構210、220へ委ねられる。
【0070】
アクチュエータ230の機能は、距離Hを変えることだけであり、したがって、連接四辺形を三角形に縮退させて係止ストラットを画定するように、第2のヒンジ202を中心としてクランク220を回転させることである。
【0071】
アクチュエータ230は、実際のブロック作用を実行するためではなく、ヒンジの摩擦を克服するのに十分な力を提供することができなければならない。
【0072】
その代わりに、傾斜ブロック作用は静的な機械的拘束によって達成され、これは、第1の傾斜ヒンジ101’を中心とするロッド110の回転運動とは運動学的不適合の状況を生み出す。したがって、傾斜の効果的なブロックを確実にするために、連結ロッド-クランク運動学的機構210、220の構成要素を、それらが傾斜のブロックトルクに耐えることができるように静的に大きさを設定すれば十分である。
【0073】
平均して、このタイプのシステムは、連結ロッドとクランクとの間の最大荷重700kg程度に対応する約22kgmのトルクに耐えなければならないと推定される。この荷重は、連結ロッド-クランク運動学的機構の構成要素を閉じ、特に連結ロッドに影響を及ぼす。しかしながら、アクチュエータ230は、連結ロッド-クランクシステムの外部にあるこの荷重によってはいかなる影響も受けない。
【0074】
これにより、従来のシステムと比較して著しく低減された力のアクチュエータを採用することが可能になり、その結果、アクチュエータ自体のサイズおよび寸法も縮小される。
【0075】
有利には、ヒンジ内の摩擦を最小限に抑えるために、ころ軸受を使用してヒンジを実装することが可能である。
【0076】
以上のことから、本発明による傾斜ブロックシステムは、傾斜ブロック要素としてのロッドの簡単な設置と、システム全体の小さい設置面積とを組み合わせることを可能にする。実際、従来のシステムで必要とされるものよりもかなり小さいサイズのアクチュエータを使用することが可能である。アクチュエータの小型化は、結果として、全体寸法の減少だけでなく、コストの低減ももたらす。
【0077】
動作的には、上述のように、連結ロッド-クランク運動学的機構210、220をロック構成にするために、アクチュエータ230を作動させて、連結ロッド210に前記円筒形連接ヒンジ203、または前記第1の円筒形ヒンジ201に対する軸方向シフト移動を与え、これにより、距離H、すなわち、円筒形連接ヒンジ203と第1のヒンジ201との間のロッド210の部分の長さを次第に減少させる。その結果、クランク220は第2の円筒形ヒンジ202を中心として回転し、連接四辺形は次第に変形する。連接四辺形は、各位置を中心とする可能な傾斜振動の幅を徐々に減少させながら、ロッド110に引き起こされる傾斜運動に追従する能力を保持する。クランクが連結ロッドと位置合わせされると、システムは等方圧状態になりロックされ、それによってロッド、したがって車両の傾斜運動を防止する。
【0078】
動作的には、連結ロッド-クランク運動学的機構210、220をロック構成にするために、アクチュエータ230を作動させて、連結ロッド210に前記円筒形連接ヒンジ203、または前記第1の円筒形ヒンジ201に対する逆の軸方向シフト移動を与え、これにより、距離Hを次第に増加させ、クランクの逆回転を決定しなければならない。しかしながら、連結ロッドの軸上に整列された力を加えることによってクランク220を第2のヒンジ202を中心として回転させ、したがって前記第2のヒンジを通過させることは運動学的に不可能であるので、アクチュエータ230単独ではこの動作を実行できない。
【0079】
したがって、上記第1のブロック装置は、前記ブロック構成から前記少なくとも1つの自由構成への移行において上記アクチュエータ230を補助するための解除手段240を備える。
【0080】
好ましくは、そのような解除手段240は、クランク220と連結ロッド210との間の位置ずれを引き起こすように、第2の円筒形ヒンジ202を中心とする解除回転を上記クランク220に加えるように構成される。
【0081】
クランク220と連結ロッド210との間の位置ずれが引き起こされると、アクチュエータ230は独立して動作することができる。
【0082】
したがって、上記解除手段240は、傾斜ブロックの可逆性を保証する機能を有する。
【0083】
添付の図面に示される実施形態によれば、前記ロッド210は、円筒形連接ヒンジ203または第1の円筒形ヒンジ201の支持体203aに回転可能に噛み合うウォームねじから構成される。アクチュエータ230はその軸上でウォームねじ210に回転運動を与えるように構成されており、それにより円筒形連接ヒンジ203または第1の円筒形ヒンジ201に対する連結ロッド210の軸方向変位が決定する。
【0084】
好ましくは、添付の図に示されるように、前記ウォームねじ210は、ウォームねじ210が第1の円筒形ヒンジ201の軸を通過するよう常に保つように構成されている支持ブラケット231によって、その第1の端部210aによって円筒形連接ヒンジ203の支持体203aに回転可能に噛み合い、その第2の端部210bにおいて第1の円筒形ヒンジ201に間接的に連結される。
【0085】
有利なことに、添付の図面に示されている実施形態によれば、ウォームねじ210は、前記第2の端部210bを有する連接四辺形の軸方向外側に延びている。支持ブラケット231もまた、連接四辺形の外側に配置されている。好ましい実施形態では、摺動摩擦を低減するために、ウォームねじ210は再循環ボールねじである。
【0086】
具体的には、アクチュエータ230は、連接四辺形の外側で支持ブラケット231によって支持され、ウォームねじ210の第2の端部210bと回転可能に係合する。
【0087】
好ましくは、前記解除手段240は、円筒形連接ヒンジ203または第2の円筒形ヒンジ202に関連する弾性手段から構成され、クランク220が連結ロッド210と整列すると、弾性手段は自身に弾性的に負荷をかけて第2の円筒形ヒンジ202の周りのクランク220に回転モーメントを発生させる。
【0088】
特に、添付の図面に示されるように、前記弾性手段は、円筒形連接ヒンジ203の支持体203aと一体である板ばね240から構成され、板ばね240は、クランク220が連結ロッド210と整列すると、板ばね240が、第2の円筒形ヒンジ202に対して径方向に突出するクランク220の付属部221と係合し、弾性的に撓み、径方向に突出する付属部221に少なくとも1つの非径方向成分を有する力を発生させるように向けられている。
【0089】
添付の図面に示されていない実施形態によれば、クランク210は、その長手方向軸に沿って配置され、連結ロッド-クランク運動学的機構210、220がブロック構成に移行したときに傾斜の非突然のブロックを決定するように構成されたダンパを含み得る。有利には、上記のアンチ傾斜システム100は、ダンパを停止させ、クランク220の軸に沿った振動を防止し、それによって静的ブロックを引き起こすように構成された前記ダンパの停止手段を含む。好ましくは、そのようなダンパは双方向ダンパである。
【0090】
添付の図面に示されていない実施形態によれば、アンチ傾斜システム100は、第2の端部111においてもロッド110の回転角を可逆的にブロックするように構成された第2のブロック装置を含むことができ、ロッド110の第1の端部111に配置された上記第1のブロック装置と同一である。この場合、ロッド110の前記第2の端部112へのヒンジ手段102’、102”は、2つの前輪10’、10”の傾斜面に対して実質的に直交するヒンジ軸を有し、かつ第2の固定部に連結された第2の傾斜ヒンジを備える。
【0091】
ロッドの第1の端部111および第2の端部112にそれぞれ第1および第2のブロック装置を設けることにより、2つの前輪10’、10”上の傾斜のブロックを対称にすることができる。これは、ロッド110が2つの前輪10’、10”の車軸ジャーナル60を互いに直接連結する場合に特に当てはまる。
【0092】
有利には、添付図面に示されるように、ロッドの第1の端部111にブロックシステムが1つだけ設けられている場合にも、ロッド110の第2の端部112にあるヒンジ手段102’、102”は、2つの前輪10’、10”の傾斜面に対して実質的に直交するヒンジ軸を有し、かつ第2の固定部に連結された第2の傾斜ヒンジを含み得る。
【0093】
好ましくは、ロッド110は、ロッド110がその長手方向軸Xに沿って長手方向に延びることを可能にするように、前記第1の端部(111)と第2の端部(112)との間で長手方向に伸長可能である。特に、ロッド110は、それに伸縮構造を設けることによって伸長可能にすることができる。
【0094】
機能的には、長手方向におけるロッド110の伸長性は、例えば車輪の傾斜または操舵運動の結果として距離が変化し得る前方キャリッジの2つの部分をロッド110が互いに連結する場合に必要である。この場合、長手方向の伸長性は、ロッド110が車両の操縦しやすさを妨げるのを防ぐために必要である。
【0095】
これは特に、
-ロッド110が、2つの前輪の車軸ジャーナルを連結するように配置され、それぞれの操舵軸の外側で前輪に連結される場合、または、
-ロッド110が、連接四辺形運動学的傾斜機構の直立部と横部材とを連結するように配置されている場合に発生する。
【0096】
そうではなく、例えば、ロッド110が、2つの横部材と平行に、規則的な形状(長方形など)の連接四辺形システムの2つの直立部を連結するように配置される場合、ロッドの伸長性は必要とされない。実際、この場合、ロッド110によって連結された点はそれらの距離を変えることは決してない。同様に、ロッドが2つの車軸ジャーナルをそれぞれの操舵軸において地面に対して同じ高さで連結する場合、伸長性は必要ではない。
【0097】
好ましくは、既に述べたように、ロッド110が一方または両方の車軸ジャーナルに連結されている場合、ロッドの第1の端部へのヒンジ手段101’、101”は、車軸ジャーナルへの操舵運動を可能にするために、傾斜面に対して平行なヒンジ軸を有する円筒形操舵ヒンジ101”も備える。
【0098】
より詳細には、添付の図面に示されるように、第1の傾斜ヒンジ101’は前記円筒形操舵ヒンジ101”に連結される。第1の固定部(この場合は車軸ジャーナル60から構成される)への連結は、添付の図面では2つ以上の支持アームを介して車軸ジャーナル60に固定されている上記操舵ヒンジ101’によって達成される。この場合、添付の図に示されるように、第2の円筒形ヒンジ202もまた、上記の操縦ヒンジ101”に連結されて、連結ロッド-クランク運動学的機構210、220が操舵運動に追従することを可能にする。
【0099】
本発明の目的はまた、本発明による、そして特に上述のような、前方キャリッジ8を有する、3つまたは4つの車輪を備えた車両の傾斜運動を可逆的にブロックする方法である。
【0100】
上記の方法は、
-前記第1の端部111において前記ロッド110の回転角を可逆的にブロックするのに適した少なくとも前記第1のブロック装置のアクチュエータ230を作動させて、連結ロッド-クランク運動学的機構210、220の構成を前記自由構成から前記ブロック構成へ移行させ、前記連接四辺形を三角形へと縮退させる傾斜ブロックステップと、
-少なくとも前記第1のブロック装置のアクチュエータ230を作動させて、前記連接ロッド-クランク運動学的機構の構成を前記ブロック構成から前記自由構成に移行させ、前記連接四辺形の非縮退構成を回復させ、クランクと連結ロッドとの位置ずれが前記解除手段によって引き起こされる傾斜解除ステップとを交互に含む。
【0101】
本発明の目的はまた、本発明による、特に上述のように、後部に駆動輪および前方キャリッジ8を有する車両4である。
【0102】
さらなる機能的態様では、本発明による傾斜ブロック機構は、以下に説明するように従来技術のシステムとは異なる。
【0103】
ブロックステップはもちろんのこと、その反対の解除ステップにも、機械式、油圧式クランプ、ベルトブレーキなどの摩擦ブレーキの作動で生じるような「過渡的な」ステップがない。
【0104】
詳細には、ブレーキ内のパッドがディスクと接触すると、摩擦力が発生し、これは次第に増加して所定の値に達するとブロックを引き起こす。言い換えると、ブロックは、パッド上の荷重が前記所定の値に達すると発生する。これらの理由から、ブロック作動と実際の機械的ブロックとの間の時間間隔を特定する過渡現象について説明する。
【0105】
したがって、この過渡的なステップでは、車両はまだ静的バランス条件を決定することができず、同時に、運転は非常に不利になる。
【0106】
三輪車に関してより良く説明すると、傾斜ブロックを作動させる電動機の作動の持続時間は約2秒と推定される。車両はわずか1秒後にブロックを開始する。これは、軌道要件により車両が傾斜している場合、運転者は運転入力に対してより大きな差異を感じることを意味する。車両が傍らで障害物に遭遇した場合、サスペンションは作動していない可能性があり、あるいは車両は平坦な道路上を傾斜する可能性もある。
【0107】
上述の実施形態では、過渡状態は存在しない。アクチュエータは、ヒンジの位置合わせが行われるまで作動するので、システムに摩擦が生じないため、四辺形は完全に自由である。
【0108】
本発明はいくつかの利点を達成することを可能にし、それらのうちのいくつかは既に説明されている。特に、本発明による傾斜ブロックシステムは、傾斜ブロック要素としてのロッドの簡単な設置と、システム全体の小さい設置面積とを組み合わせることを可能にする。実際、従来のシステムで必要とされるものよりもかなり小さいサイズのアクチュエータを使用することが可能である。アクチュエータの小型化は、結果として、全体寸法の減少だけでなく、コストの低減ももたらす。
【0109】
本発明による傾斜ブロックシステムは、クランク連結ロッドシステムのクランクがダンパを含む場合に傾斜の非突然のブロックを行うことを可能にする。
【0110】
ロッド110が2つの前輪10’、10”の車軸ジャーナルを連結するように配置されている特定の場合には、本発明による傾斜ブロックシステムは、ロッドの両端にブロック装置を設けることによって両前輪10’、10”に対して容易に対称にすることができる。これは、小さなアクチュエータを使用することができるという事実のために、システムの全体的なサイズおよび関連コストの著しい増加をもたらさない。
【0111】
本発明による傾斜ブロックシステムはまた、構造的に単純であり、製造して車両自体に搭載するのに費用効果が高い。
【0112】
本発明の特定の実施形態によれば、3つまたは4つの車輪を有する傾斜車両の前方キャリッジ8が提供され、前方キャリッジ8は、
-前方キャリッジフレーム16と、
-運動学的傾斜機構20によって互いにかつ前方キャリッジフレーム16と運動学的に連結されている少なくとも一対の前輪10’、10”であって、運動学的傾斜機構20は車輪を同期的かつ鏡面的に傾斜させることができる少なくとも一対の前輪10’、10”と、
-互いに対向する第1の端部111と第2の端部112とを有するロッド110を備えるアンチ傾斜システム100であって、これらの端部はヒンジ手段101’、101”、102’、102”によって前方キャリッジ8の第1の固定部60と第2の固定部60とを互いに直接連結し、ここで前記第1の固定部60および第2の固定部60の少なくとも一方は、前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受けるアンチ傾斜システム100とを備え、
ここで上記のヒンジ手段101’、101”および102’、102”は、上記第1の固定部60および上記第2の固定部60の動きに受動的に追従するように構成され、
ここでロッドの前記第1の端部111におけるヒンジ手段101’、101”は、2つの前輪10’、10”の傾斜面に対して実質的に直交するヒンジ軸を有し、かつ前記第1の固定部60に連結された少なくとも第1の傾斜ヒンジ101’を備え、
前記アンチ傾斜システム100は、前記第1の端部111における前記第1の傾斜ヒンジ101’に対する前記ロッド110の回転角αを可逆的にブロックするのに適した第1のブロック装置を備え、前記回転角αは、前記ロッドの回転角に対応し、
ここで前記第1のブロック装置は、連接四辺形を画定するように、第1の円筒形ヒンジ201によって連結ロッド210において前記ロッド110に連結され、かつ第2の円筒形ヒンジ202によって前記クランク220において前記第1の固定部60に連結された連結ロッド-クランク運動学的機構210、220を備え、前記連結ロッド210は、円筒形連接ヒンジ203によって前記クランク220に連結され、前記第1の円筒形ヒンジ201および第2の円筒形ヒンジ202および前記円筒形連接ヒンジ203はすべて、第1の傾斜ヒンジ101’のヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有し、
ここで前記連結ロッド210は、軸方向の可動カップリングを用いて、前記円筒形連接ヒンジ203または前記第1の円筒形ヒンジ201内に係合され、
ここで前記第1のブロック装置は、
第1の円筒形連接ヒンジ203と第1の円筒形ヒンジ201との間に画定される距離Hを変化させるために、連結ロッド210に前記円筒形連接ヒンジ203または前記第1の円筒形ヒンジ201に対する軸方向シフト移動を与えるのに適したアクチュエータ230をさらに備え、前記アクチュエータ230は、第2の円筒形ヒンジ202を中心としてクランク220を傾斜させることによって、前記距離Hを変え、したがって、前記連結ロッド-クランク運動学的機構210、220の構成を2つの構成の間で変えるように動作可能であり、2つの構成は、前記連結ロッド210が前記クランク220と位置合わせされ、前記連接四辺形が三角形に縮退して、ロッド110の傾斜角αをブロックする支柱を画定するブロック構成、および、前記連結ロッド210が前記クランク220に対して位置合わせされておらず、前記連接四辺形が傾斜運動を自由にする非縮退構成を有する少なくとも一つの自由構成であり、前記第1のブロック装置は、
前記ブロック構成から前記少なくとも1つの自由構成への移行において前記アクチュエータ230を補助するための解除手段240をさらに備え、ここで前記解除手段240は、前記クランク220と前記連結ロッド210との間の位置ずれを引き起こすように、前記第2の円筒形ヒンジ202を中心とする解除回転を前記クランク220に加えるように構成される。
【0113】
さらにまた、好ましい実施形態によれば、3つまたは4つの車輪を有する傾斜車両の前方キャリッジ8のためのアンチ傾斜システムが提供され、前記前方キャリッジ8は、-前方キャリッジフレーム16と、-運動学的傾斜機構20によって互いにかつ前方キャリッジフレーム16と運動学的に連結されている少なくとも一対の前輪10’、10”であって、運動学的傾斜機構20は車輪を同期的かつ鏡面的に傾斜させることができる少なくとも一対の前輪10’、10’とを備え、
前記アンチ傾斜システム100は、互いに対向する第1の端部111と第2の端部112とを有するロッド110を備え、これらの端部は-前記前方キャリッジ8への取付状態において-ヒンジ手段101’、101”、102’、102”によって前方キャリッジ8の第1の固定部60と第2の固定部60とを互いに直接連結することが意図されており、ここで前記第1の固定部60および第2の固定部60の少なくとも一方は、前記2つの前輪10’、10”の傾斜運動を受け、
ここで前記のヒンジ手段101’、101”および102’、102”は、前記第1の固定部60および前記第2の固定部60の動きに受動的に追従するように構成され、
ここでロッドの前記第1の端部111におけるヒンジ手段101’、101”は、2つの前輪10’、10”の傾斜面に対して実質的に直交するヒンジ軸を有し、かつ前記第1の固定部60に連結された少なくとも第1の傾斜ヒンジ101’を備え、
前記アンチ傾斜システム100は、前記第1の端部111における前記第1の傾斜ヒンジ101’に対する前記ロッド110の回転角αを可逆的にブロックするのに適した第1のブロック装置を備え、前記回転角αは、前記ロッドの傾斜角に対応し、
ここで前記第1のブロック装置は、連接四辺形を画定するように、第1の円筒形ヒンジ201によって連結ロッド210において前記ロッド110に連結され、かつ第2の円筒形ヒンジ202によって前記クランク220において前記第1の固定部60に連結された連結ロッド-クランク運動学的機構210、220を備え、前記連結ロッド210は、円筒形連接ヒンジ203によって前記クランク220に連結され、前記第1の円筒形ヒンジ201および第2の円筒形ヒンジ202および前記円筒形連接ヒンジ203はすべて、第1の傾斜ヒンジ101’のヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有し、
ここで前記連結ロッド210は、軸方向の可動カップリングを用いて、前記円筒形連接ヒンジ203または前記第1の円筒形ヒンジ201内に係合され、
ここで前記第1のブロック装置は、
円筒形連接ヒンジ203と第1の円筒形ヒンジ201との間に画定される距離Hを変化させるために、連結ロッド210に前記円筒形連接ヒンジ203または前記第1の円筒形ヒンジ201に対する軸方向シフト移動を与えるのに適したアクチュエータ230をさらに備え、前記アクチュエータ230は、第2の円筒形ヒンジ202を中心としてクランク220を回転させることによって、前記距離Hを変え、したがって、前記連結ロッド-クランク運動学的機構210、220の構成を2つの構成の間で変えるように動作可能であり、2つの構成は、前記連結ロッド210が前記クランク220と位置合わせされ、前記連接四辺形が三角形に縮退して、ロッド110の傾斜角αをブロックする支柱を画定するブロック構成、および、前記連結ロッド210が前記クランク220に対して位置合わせされておらず、前記連接四辺形が傾斜運動を自由にする非縮退構成を有する少なくとも一つの自由構成であり、前記第1のブロック装置は、
前記ブロック構成から前記少なくとも1つの自由構成への移行において前記アクチュエータ230を補助するための解除手段240をさらに備え、ここで前記解除手段240は、前記クランク220と前記連結ロッド210との間の位置ずれを引き起こすように、前記第2の円筒形ヒンジ202を中心とする解除回転を前記クランク220に加えるように構成される。
【0114】
このようにして考え出された本発明は、意図した目的を達成する。
【0115】
当然ながら、その実際的な実施形態では、本保護の範囲から逸脱することなく、上記以外の形状および構成も取り得る。
【0116】
さらに、全ての詳細は技術的に等価な要素および寸法に置き換えられてもよく、使用される形状および材料は必要に応じて任意であり得る。