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特許7280828BCMAを標的とする抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】BCMAを標的とする抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230517BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230517BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230517BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N7/01
C12N5/10
C12N15/62 Z
C07K16/30
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C07K16/28
C12N15/86 Z
C12N5/0783
A61K48/00
A61K39/395 U
A61K35/17
A61K38/19
A61K38/16
A61K31/7105
A61K31/713
A61K38/20
A61K38/21
A61K38/22
A61K38/46
A61P37/04
A61P43/00 107
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2019539840
(86)(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 CN2018073863
(87)【国際公開番号】W WO2018133877
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】201710058581.8
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710920346.7
(32)【優先日】2017-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522072507
【氏名又は名称】クレージュ メディカル カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRAGE MEDICAL CO.,LIMITED
【住所又は居所原語表記】RM12,20/F,Ho King Comm CTR,2-16 FaYuen ST,Mongkok Kowloon,Hong Kong,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ファマオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ファ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/014565(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/112900(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/117002(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/124297(WO,A1)
【文献】特表2016-508496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C12N 15/63
C12N 7/01
C12N 5/10
C12N 15/62
C12N 15/12
C07K 16/30
C12N 1/21
C12N 1/19
C12N 1/15
C07K 14/54
C07K 14/525
C07K 14/555
C07K 16/28
C07K 14/52
C12N 15/19
C12N 15/86
C12N 5/0783
A61K 48/00
A61K 39/395
A61K 35/17
A61K 38/19
A61K 38/16
A61K 31/7105
A61K 31/713
A61P 35/00
A61K 38/20
A61K 38/21
A61K 38/22
A61K 38/46
A61P 37/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BCMAを標的とする抗体であって、
(1) 配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、配列番号3で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号8で示されるLCDR3を含む抗体、
(2) 配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、配列番号4で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号9で示されるLCDR3を含む抗体、
(3) 配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、配列番号5で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号10で示されるLCDR3を含む抗体、
(4) 配列番号60で示されるHCDR1、配列番号61で示されるHCDR2、配列番号5で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号10で示されるLCDR3を含む抗体、
(5) 配列番号62で示されるHCDR1、配列番号63で示されるHCDR2、配列番号5で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号10で示されるLCDR3を含む抗体、
から選ばれることを特徴とする抗体。
【請求項2】
前記の抗体は、
(1) 重鎖可変領域が配列番号13で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号11で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(2) 重鎖可変領域が配列番号17で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(3) 重鎖可変領域が配列番号21で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(4) 重鎖可変領域が配列番号56で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(5) 重鎖可変領域が配列番号58で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体をコードする核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の発現ベクターを含む、あるいはゲノムに請求項3に記載の核酸が組み込まれた宿主細胞。
【請求項6】
請求項1または2に記載の抗体の使用であって、特異的にBCMAの腫瘍細胞を標的とする標的性薬物、抗体薬物抱合体または抗体の製造における使用。
【請求項7】
請求項1または2に記載の抗体の使用であって、BCMAを発現する腫瘍を診断する試薬の製造における使用。
【請求項8】
請求項1または2に記載の抗体の使用であって、キメラ抗原受容体で修飾された免疫細胞の製造における使用。
【請求項9】
請求項1または2に記載の抗体の使用であって、T細胞、NK細胞またはNKT細胞を含む免疫細胞の製造における使用。
【請求項10】
請求項1または2に記載の抗体と、
それと連結した、腫瘍表面マーカーを標的とする分子、腫瘍を抑制する分子、免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子または検出可能な標識物から選ばれる機能性分子と、
を含むことを特徴とする免疫複合体。
【請求項11】
前記の腫瘍を抑制する分子は抗腫瘍サイトカインまたは抗腫瘍毒素を含むことを特徴とする請求項10に記載の免疫複合体。
【請求項12】
前記のサイトカインはIL-12、IL-15、I型インターフェロン、TNF-αを含むことを特徴とする請求項11に記載の免疫複合体。
【請求項13】
前記の免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は免疫細胞の表面マーカーと結合する抗体または配位子であることを特徴とする請求項10に記載の免疫複合体。
【請求項14】
前記の免疫細胞の表面マーカーは、CD3、CD16、CD28を含む、請求項13に記載の免疫複合体。
【請求項15】
前記の免疫細胞の表面マーカーと結合する抗体は抗CD3抗体であることを特徴とする請求項14に記載の免疫複合体。
【請求項16】
前記の免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子はT細胞の表面マーカーと結合する抗体または配位子であることを特徴とする請求項13に記載の免疫複合体。
【請求項17】
請求項10~16のうちのいずれか一項に記載の免疫複合体をコードする核酸。
【請求項18】
請求項10~16のいずれか一項に記載の免疫複合体の使用であって、抗腫瘍薬の製造における使用。
【請求項19】
請求項10~16のいずれか一項に記載の免疫複合体の使用であって、BCMAを発現する腫瘍を診断する試薬の製造における使用。
【請求項20】
請求項10~16のいずれか一項に記載の免疫複合体の使用であって、キメラ抗原受容体で修飾された免疫細胞の製造における使用。
【請求項21】
請求項10~16のいずれか一項に記載の免疫複合体の使用であって、T細胞、NK細胞またはNKT細胞を含む免疫細胞の製造における使用。
【請求項22】
細胞外領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含むキメラ抗原受容体であって、前記細胞外領域は請求項1または2に記載の抗体を含み、当該抗体は一本鎖抗体またはドメイン抗体が好ましいことを特徴とするキメラ抗原受容体。
【請求項23】
前記細胞内シグナル領域は、一つまたは複数の共刺激シグナルドメインおよび/または一次シグナルドメインを含むことを特徴とする請求項22に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項24】
前記のキメラ抗原受容体は、さらに、ヒンジ領域を含むことを特徴とする請求項22に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項25】
前記の膜貫通領域は、TCRのα鎖、β鎖、ζ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、およびPD1の膜貫通領域から選ばれ、ならびに/あるいは
前記共刺激シグナルドメインは、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54、CD83、OX40、CD137、CD134、CD150、CD152、CD223、CD270、PD-L2、PD-L1、CD278、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、FcεRIγ、MyD88、および41BBLの細胞内シグナル領域から選ばれ、ならびに/あるいは
前記一次シグナルドメインは、TCR ξ、FcR γ、FcR β、CD3 γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」とも呼ばれる)およびCD66d、およびCD3ζから選ばれる、ことを特徴とする請求項23に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項26】
前記の膜貫通領域は、CD8α、CD4、CD45、PD1、CD154およびCD28の膜貫通領域から選ばれ、ならびに/あるいは
前記共刺激シグナルドメインは、CD137、CD134、CD28およびOX40から選ばれ、ならびに/あるいは
前記一次シグナルドメインは、CD3ζから選ばれる、ことを特徴とする請求項25に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項27】
前記の膜貫通領域はCD8αまたはCD28から選ばれ、
前記共刺激シグナルドメインはCD137またはCD28の細胞内シグナル領域から選ばれ、前記一次シグナルドメインはCD3ζから選ばれる、
ことを特徴とする請求項26に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項28】
前記のキメラ抗原受容体は、以下のような順で連結した抗体、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含むことを特徴とする請求項22に記載のキメラ抗原受容体:
請求項1または2に記載の抗体、CD8の膜貫通領域およびCD3ζ;
請求項1または2に記載の抗体、CD8の膜貫通領域、CD137の細胞内シグナル領域およびCD3ζ;
請求項1または2に記載の抗体、CD28の膜貫通領域、CD28の細胞内シグナル領域およびCD3ζ;あるいは
請求項1または2に記載の抗体、CD28の膜貫通領域、CD28の細胞内シグナル領域、CD137およびCD3ζ。
【請求項29】
請求項22~28のうちのいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸を含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項31】
請求項30に記載のベクターを含むことを特徴とするウイルス。
【請求項32】
請求項22~28のうちのいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体、または請求項29に記載の核酸、または請求項30に記載の発現ベクター、または請求項31に記載のウイルスの使用であって、BCMAを発現する腫瘍細胞を標的とする遺伝子修飾された免疫細胞の製造における使用。
【請求項33】
遺伝子修飾された免疫細胞であって、請求項29に記載の核酸、または請求項30に記載のベクターまたは請求項31に記載のウイルスを形質導入され、あるいは請求項22~28のうちのいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体が発現され、
前記の免疫細胞は、T細胞、NK細胞またはNKT細胞から選ばれることが好ましい、
ことを特徴とする免疫細胞。
【請求項34】
さらに、請求項16~28のうちのいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体以外のほかの配列を発現し、前記ほかの配列は、サイトカイン、またはもう一つのキメラ抗原受容体、またはケモカイン受容体、またはPD-1発現を低下させるsiRNA、またはPD-L1を遮断するタンパク質、またはTCR、または安全スイッチを含む、
ことを特徴とする請求項33に記載の遺伝子修飾された免疫細胞。
【請求項35】
前記サイトカインはIL-12、IL-15、IL-21、またはI型インターフェロンを含む、
ことを特徴とする請求項34に記載の遺伝子修飾された免疫細胞。
【請求項36】
前記ケモカイン受容体はCCR2、CCR5、CXCR2、またはCXCR4を含む、ことを特徴とする請求項34に記載の遺伝子修飾された免疫細胞。
【請求項37】
前記安全スイッチは誘導性カスパーゼ9(iCaspase-9)、短縮型EGFR(Truancated EGFR)またはRQR8を含む、
ことを特徴とする請求項34に記載の遺伝子修飾された免疫細胞。
【請求項38】
請求項33~37のうちのいずれか一項に記載の遺伝子修飾された免疫細胞の使用であって、腫瘍を抑制する薬物の製造に使用され、前記の腫瘍はBCMAを発現する腫瘍であることを特徴とする使用。
【請求項39】
請求項1または2に記載の抗体または当該抗体をコードする核酸、あるいは
請求項10~16のうちのいずれか一項に記載の免疫複合体または当該複合体をコードする核酸、あるいは
請求項22~28のうちのいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体または当該キメラ抗原受容体をコードする核酸、あるいは
請求項33~37のうちのいずれか一項に記載の遺伝子修飾された免疫細胞、
を含むことを特徴とする薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の免疫治療または診断の分野に属し、より具体的に、BCMAを標的とする抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(MM)はよく見られる悪性血液病で、すべての癌死亡例の2%を占めている。MMは、異質性疾患で、かつその多くはt(11;14)、t(4;14)、t(8;14)、del(13)、del(17) (ほか以外)の染色体転座によるものである(Drachら, (1998) Blood 92(3): 802-809;Gertzら, (2005) Blood 106 (8): 2837-2840;Faconら., (2001) Blood 97 (6): 1566-1571)。多発性骨髄腫(MM)の主な病状は骨髄における形質細胞の制限されていない増幅と集中で、それによって骨壊死につながる。MM患者は、骨髄浸潤、骨質破壊、腎不全、免疫欠陥および癌の診断による心理的負担を経験することによって、疾患に関連する多くの症状に見舞われる。現在、主な治療案は、化学治療および幹細胞移植で、化学治療薬は主にステロイド、サリドマイド、レナリドミド、ボルテゾミブまたは複数の細胞毒素試薬の組み合わせで、若い患者は高投与量の化学治療の理念に自家幹細胞移植を合わせて使用することができる。
【0003】
BCMA(B-cell maturation antigen)はB細胞成熟抗原で、185のアミノ酸残基からなるIII型膜貫通タンパク質で、TNF受容体スーパーファミリーに属し、そのリガンドはTNFスーパーファミリーに属し、たとえばA増殖誘導リガンド(APRIL)、B細胞活性化因子(BAFF)が挙げられ、BCMAがそのリガンドと結合すると、B細胞の増殖と生存が活性化される。BCMAは形質細胞および多発性骨髄腫細胞の表面に特異的に高度発現されるが、造血幹細胞およびほかの正常組織細胞のいずれにおいても発現されないため、BCMAはMMの標的治療の理想的な標的として有用である。
これに鑑み、本分野では、BCMAに対する特異性抗体およびBCMAを標的とする免疫エフェクター細胞が切望されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、BCMAに対する特異性抗体およびBCMAを標的とする免疫エフェクター細胞を提供することにある。
第一の側面では、本発明は、BCMAを標的とする抗体であって、
(1) 配列番号1、60もしくは62で示されるHCDR1、および/または配列番号2、61もしくは63で示されるHCDR2、および/または配列番号3、配列番号4もしくは配列番号5のうちのいずれかで示されるHCDR3を含有する重鎖可変領域を含む抗体、
【0005】
(2) 配列番号6で示されるLCDR1、および/または配列番号7で示されるLCDR2、および/または配列番号8、配列番号9もしくは配列番号10のうちのいずれかで示されるLCDR3を含有する軽鎖可変領域を含む抗体、
(3) (1)に記載の抗体の重鎖可変領域および(2)に記載の抗体的軽鎖可変領域を含む抗体、
【0006】
(4) (1)~(3)のうちのいずれかに記載の抗体のバリアントで、かつ(1)~(3)のうちのいずれかに記載の抗体と同様または類似の活性を有する抗体、
からなる群から選ばれる抗体を提供する。
【0007】
具体的な実施形態において、前記の抗体は、
(1) 配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、配列番号3で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号8で示されるLCDR3をを含む抗体、
【0008】
(2) 配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、配列番号4で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号9で示されるLCDR3をを含む抗体、
【0009】
(3) 配列番号1で示されるHCDR1、配列番号2で示されるHCDR2、配列番号5で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号10で示されるLCDR3をを含む抗体、
【0010】
(4) 配列番号60で示されるHCDR1、配列番号61で示されるHCDR2、配列番号5で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号10で示されるLCDR3をを含む抗体、
【0011】
(5) 配列番号62で示されるHCDR1、配列番号63で示されるHCDR2、配列番号5で示されるHCDR3および配列番号6で示されるLCDR1、配列番号7で示されるLCDR2、配列番号10で示されるLCDR3をを含む抗体、
【0012】
(6) (1)~(5)のうちのいずれかに記載の抗体のバリアントで、かつ(1)~(5)のうちのいずれかに記載の抗体と同様または類似の活性を有する抗体、
から選ばれる。
【0013】
具体的な実施形態において、前記の抗体は、
(1) 重鎖可変領域が配列番号13で示されるアミノ酸配列、配列番号17で示されるアミノ酸配列、配列番号21で示されるアミノ酸配列、配列番号56で示されるアミノ酸配列、または配列番号58で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
【0014】
(2) 軽鎖可変領域が配列番号11で示されるアミノ酸配列、配列番号15で示されるアミノ酸配列、または配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(3) (1)に記載の抗体の重鎖可変領域および(2)に記載の抗体的軽鎖可変領域を含む抗体、
【0015】
(4) (1)~(3)のうちのいずれかに記載の抗体のバリアントで、かつ(1)~(3)のうちのいずれかに記載の抗体と同様または類似の活性を有する抗体、
から選ばれる。
【0016】
具体的な実施形態において、前記の抗体は、
(1) 重鎖可変領域が配列番号13で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号11で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(2) 重鎖可変領域が配列番号17で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号15で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(3) 重鎖可変領域が配列番号21で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(4) 重鎖可変領域が配列番号56で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(5) 重鎖可変領域が配列番号58で示されるアミノ酸配列を有し、かつ軽鎖可変領域が配列番号19で示されるアミノ酸配列を有する抗体、
(6) (1)~(5)のうちのいずれかに記載の抗体のバリアントで、かつ(1)~(5)のうちのいずれかに記載の抗体と同様または類似の活性を有する抗体、
から選ばれる。
【0017】
第二の側面では、本発明は、本発明の第一の側面に記載の抗体と同様の抗原決定部位を認識する抗体を提供する。

第三の側面では、本発明は、本発明の第一または第二の側面に記載の抗体をコードする核酸を提供する。

第四の側面では、本発明は、本発明の第三の側面に記載の核酸を含む発現ベクターを提供する。

第五の側面では、本発明は、本発明の第四の側面に記載の発現ベクターを含むか、あるいはゲノムに本発明の第三の側面に記載の核酸が組み込まれた宿主細胞を提供する。
【0018】
第六の側面では、本発明は、本発明の第一または第二の側面に記載の抗体の使用であって、特異的にBCMAの腫瘍細胞を標的とする標的性薬物、抗体薬物複合体または多機能抗体の製造、あるいは
BCMAを発現する腫瘍を診断する試薬の製造、あるいは
キメラ抗原受容体で修飾された免疫細胞、好ましくは、T細胞、NK細胞またはNKT細胞を含む免疫細胞の製造における使用を提供する。
【0019】
第七の側面では、本発明は、
本発明の第一または第二の側面に記載の抗体と、
それと連結した、腫瘍表面マーカーを標的とする分子、腫瘍を抑制する分子、免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子または検出可能な標識物から選ばれる機能性分子と、
を含む多機能免疫複合体。
【0020】
具体的な実施形態において、前記の腫瘍を抑制する分子は抗腫瘍サイトカインまたは抗腫瘍毒素で、好ましくは、前記のサイトカインはIL-12、IL-15、I型インターフェロン、TNF-αを含む。
【0021】
具体的な実施形態において、前記の免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は免疫細胞の表面マーカーと結合する抗体またはリガンドで、好ましくは、前記の免疫細胞の表面マーカーはCD3、CD16、CD28を含み、より好ましくは前記の免疫細胞の表面マーカーと結合する抗体は抗CD3抗体である。
具体的な実施形態において、前記の免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子はT細胞の表面マーカーと結合する抗体である。

第八の側面では、本発明は、本発明の第七の側面に記載の多機能免疫複合体をコードする核酸を提供する。

第九の側面では、本発明は、本発明の第七の側面に記載の多機能免疫複合体の使用であって、抗腫瘍薬物の製造、あるいは
BCMAを発現する腫瘍を診断する試薬の製造、あるいは
キメラ抗原受容体で修飾された免疫細胞、好ましくは、T細胞、NK細胞またはNKT細胞を含む免疫細胞の製造における使用を提供する。
【0022】
第十の側面では、本発明は、細胞外領域、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含み、前記細胞外領域は本発明の第一または第二の側面に記載の抗体を含み、当該抗体は一本鎖抗体またはドメイン抗体が好ましい、キメラ抗原受容体を提供する。
具体的な実施形態において、前記細胞内シグナル領域は、一つまたは複数の共刺激シグナルドメインおよび/または一次シグナルドメインを含む。
具体的な実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、さらに、ヒンジ領域を含む。
【0023】
具体的な実施形態において、前記の膜貫通領域は、TCRのα鎖、β鎖、ζ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、およびPD1の膜貫通領域から選ばれ、ならびに/あるいは
【0024】
前記共刺激シグナルドメインは、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54、CD83、OX40、CD137、CD134、CD150、CD152、CD223、CD270、PD-L2、PD-L1、CD278、DAP10、LAT、NKD2C SLP76、TRIM、FcεRIγ、MyD88、および41BBLの細胞内シグナル領域から選ばれ、ならびに/あるいは
【0025】
前記一次シグナルドメインは、TCR ξ、FcR γ、FcR β、CD3 γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」とも呼ばれる)およびCD66d、およびCD3ζから選ばれ、
より好ましくは、
前記の膜貫通領域は、CD8α、CD4、CD45、PD1、CD154およびCD28の膜貫通領域から選ばれ、ならびに/あるいは
前記共刺激シグナルドメインは、CD137、CD134、CD28およびOX40から選ばれ、ならびに/あるいは
前記一次シグナルドメインは、CD3ζから選ばれ、
【0026】
最も好ましくは、前記の膜貫通領域はCD8αまたはCD28から選ばれ、
前記共刺激シグナルドメインはCD137またはCD28の細胞内シグナル領域から選ばれ、前記一次シグナルドメインはCD3ζから選ばれる。
具体的な実施形態において、前記のキメラ抗原受容体は、以下のような順で連結した抗体、膜貫通領域および細胞内シグナル領域を含む:
本発明の第一または第二の側面に記載の抗体、CD8の膜貫通領域およびCD3ζ;
本発明の第一または第二の側面に記載の抗体、CD8の膜貫通領域、CD137の細胞内シグナル領域およびCD3ζ;
本発明の第一または第二の側面に記載の抗体、CD28の膜貫通領域、CD28の細胞内シグナル領域およびCD3ζ;あるいは
本発明の第一または第二の側面に記載の抗体、CD28の膜貫通領域、CD28の細胞内シグナル領域、CD137およびCD3ζ。

第十一の側面では、本発明は、本発明の第十の側面に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸を提供する。

第十二の側面では、本発明は、本発明の第十一の側面に記載の核酸を含む発現ベクターを提供する。

第十三の側面では、本発明は、本発明の第十二に記載のベクターを含むウイルスを提供する。
好適な実施形態において、前記ウイルスはレンチウイルスである。
【0027】
第十四の側面では、本発明は、本発明の第十の側面に記載のキメラ抗原受容体、または本発明の第十一の側面に記載の核酸、または本発明の第十二の側面に記載の発現ベクター、または本発明の第十三の側面に記載のウイルスの使用であって、BCMAを発現する腫瘍細胞を標的とする遺伝子修飾された免疫細胞の製造における使用を提供する。
好適な実施形態において、前記BCMAを発現する腫瘍は多発性骨髄腫である。
【0028】
第十五の側面では、本発明は、遺伝子修飾された免疫細胞であって、本発明の第十一の側面に記載の核酸、または本発明の第十二の側面に記載の発現ベクターまたは本発明の第十三の側面に記載のウイルスを形質導入され、あるいは本発明の第十の側面に記載のキメラ抗原受容体が発現され、
前記の免疫細胞は、T細胞、NK細胞またはNKT細胞から選ばれることが好ましい、免疫細胞を提供する。
【0029】
具体的な実施形態において、前記遺伝子修飾された免疫細胞は、さらに、本発明の第十の側面に記載のキメラ抗原受容体以外のほかの配列を発現し、前記ほかの配列は、サイトカイン、またはもう一つのキメラ抗原受容体、またはケモカイン受容体、またはPD-1発現を低下させるsiRNA、またはPD-L1を遮断するタンパク質、またはTCR、または安全スイッチで、
好ましくは、前記サイトカインはIL-12、IL-15、IL-21、またはI型インターフェロンを含み、
好ましくは、前記ケモカイン受容体はCCR2、CCR5、CXCR2、またはCXCR4を含み、
好ましくは、前記安全スイッチは誘導性カスパーゼ9(iCaspase-9)、短縮型EGFR(Truancated EGFR)またはRQR8を含む。
【0030】
第十六の側面では、本発明は、本発明の第十五の側面に記載の遺伝子修飾された免疫細胞の使用であって、腫瘍を抑制する薬物の製造に使用され、前記の腫瘍はBCMAを発現する腫瘍である使用を提供する。
好適な実施形態において、前記BCMAを発現する腫瘍は多発性骨髄腫である。

第十七の側面では、本発明は、
本発明の第一または第二の側面に記載の抗体または当該抗体をコードする核酸、あるいは
本発明の第七の側面に記載の免疫複合体または当該複合体をコードする核酸、あるいは
本発明の第十の側面に記載のキメラ抗原受容体または当該キメラ抗原受容体をコードする核酸、あるいは
本発明の第十五の側面に記載の遺伝子修飾された免疫細胞、
を含む薬物組成物を提供する。
【0031】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図面の説明
図1図1は、BCMA_huFc、BCMA_muFcのSDS電気泳動パターンを示す(還元条件)。
図2図2は、FACsによって検出された安定導入細胞系K562-BCMAにおけるBCMAの発現状況を示す。
図3図3は、抗体7A12、7G2、23F10のELISA測定結果を示す。
図4図4は、FACsによって検出された抗体7A12、7G2、23F10とK562-BCMAおよびK562の結合状況を示す。
図5図5は、SDS PAGEによって分析・精製された抗BCMA scFv_Fc抗体を示す(還元条件)。
図6図6は、FACsによって測定された勾配希釈された精製scFv_FcとK562-BCMAの結合状況を示す。
図7図7は、Biacoreによって測定された抗体7A12,7G2,23F10とBCMAの親和力を示す。
図8図8は、FACsによって測定された抗体7A12,7G2,23F10とRPMI8226細胞系の結合状況を示す。
図9図9は、ELISAによって検出された抗体およびAPRILのBCMAとの競合的結合の状況を示す。
図10図10は、FACSによって検出されたBCMA-CAR TウイルスがT細胞に感染した陽性率を示す。
図11A図11Aは、BCMA-CAR TのBCMA発現陽性および陰性の細胞に対する体外毒性の実験結果を示す。
図11B図11Bは、BCMA-CAR Tのマウス体内における実験結果を示す。
図12図12は、クローン25C2、25D2および23F10の重鎖のアミノ酸配列を比較したものである。
図13A図13Aは、抗体25C2の集合情况を、
図13B図13Bは、抗体25D2の集合情况を、
図13C図13Cは、抗体23F10および7A12の集合情况を示す。
図14A図14Aは、25C2、25D2とK562-BCMAおよびK562細胞の結合状況を示す。
図14B図14Bは、ELISAによって測定された抗体23F10、25C2、25D2の特異性を示す。
図15図15は、25C2-BBZ、25D2-BBZ、7A12-BBZ、C11D5.3-BBZおよびsPD-1-7A12-BBZの細胞殺傷の実験結果を示す。
図16図16は、25C2-BBZ、25D2-BBZ、C11D5.3-BBZ、7A12-BBZの皮下移植腫瘍の結果を示す。
【0033】
具体的な実施形態
発明者が幅広く深く研究したところ、意外に、BCMAに特異的に結合する抗体を見出し、これらの抗体は様々な標的性抗腫瘍薬および腫瘍の診断薬の製造に使用することができる。これに基づき、本発明を完成させた。
【0034】
本明細書で使用される科学用語は当業者によって通常理解されるのと同様または類似の意味を有する。本発明の理解の便宜上、一部の用語は以下のように定義されている。
【0035】
本明細書における用語「BCMA」とは、B細胞成熟抗原(B cell maturation antigen)で、184のアミノ酸残基からなるIII型膜貫通タンパク質(NCBI参照配列:NP_001183.2)で、アミノ酸配列は配列番号37で示される。一つの具体的な実施例において、BCMAとはヒトBCMAである。
【0036】
本明細書における用語「APRIL」とは、A増殖誘導リガンド(A proliferation-inducing ligand)で、184のアミノ酸残基からなるIII型膜貫通タンパク質(NCBI参照配列:NP_003799.1)で、アミノ酸配列は配列番号37で示される。
【0037】
本明細書における用語「抗体」とは、免疫系の抗原と結合するタンパク質である。本明細書に記載の用語「抗体」は、抗原結合領域を有する完全な全長抗体およびその「抗原結合部分」または「抗原結合領域」が残ったその任意の断片、あるいはその一本鎖断片、たとえば一本鎖可変断片(scFv)を含む。天然抗体とは、ジスルフィド結合を介して互いに連結した少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖あるいはその抗原結合断片を含む糖タンパク質である。用語「抗体」は、さらに、抗体(特に本明細書に記載の抗体)のすべての組み換え形態、たとえば原核細胞で発現された抗体、未グルコシル化の抗体および抗原と結合した抗原断片と後記の誘導体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略する)と重鎖定常領域とからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略する)と軽鎖定常領域とからなる。VHとVLはさらに相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分してもよく、これらはフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域に散在している。各VHとVLは3つのCDRと4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で並ぶ。重鎖と軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は当該グロブリンと宿主の組織または因子の結合を仲介し、前記宿主の組織または因子は免疫系の多くの細胞(たとえばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む。
【0038】
抗体断片は、(i) Fab’およびFab’-SHを含む、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片段、(ii) VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iii) 一つの抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片、(iv) 一つの可変領域からなうdAb断片(Wardら,1989,Nature 341:544-546)、(v) 2つのFab断片が連結した2価の断片を含む、F(ab’)2断片、(vi) 一本鎖Fv分子の抗原結合部位(Birdら,1988,Science 242:423-426;Hustonら,1988,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 85:5879-5883)、(vii) 二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)、(viii) 遺伝子融合によって構築された多価または多重特異性断片である「二量体」または「三量体」(Tomlinsonら,2000,Methods Enzymol. 326: 461-479; WO94/13804; Holligerら,1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 90:6444-6448)、および(ix) 相同または相異の抗体と遺伝子融合したscFv(Coloma&Morrison, 1997, Nature Biotechnology 15, 159-163)を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書における用語「Fc」または「Fc領域」は、第一の定常領域のグロブリンドメイン以外の抗体定常領域を含有するポリペプチドを含む。よって、Fcとは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域のグロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域のグロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインのN末端の可撓性ヒンジである。IgAおよびIgMについて、FcはJ鎖を含む。IgGについて、FcはグロブリンドメインのCγ2とCγ3およびCγ1とCγ2の間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変わるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシ末端に残基C226またはP230を含むように定義されているが、ここで、番号はKabatのEUインデックスに基づいたものである。ヒトIgG1について、Fcは本明細書において残基P232からそのカルボキシ末端を含むように定義されているが、ここで、番号はKabatのEUインデックスに基づいたものである。Fcとは分離された当該領域、またはFcポリペプチド、たとえば抗体の環境における当該領域である。上記「ヒンジ」は、抗体の第一と第二の定常ドメインの間にあるアミノ酸を含有する可撓性ポリペプチドを含む。構造上において、IgG CH1ドメインはEU220の位置までで、IgG CH2ドメインは残基EU237の位置からである。よって、IgGについて、本明細書において、抗体のヒンジは221(IgG1のD221)から231(IgG1のA231)の位置を含むように定義されているが、ここで、番号はKabatのEUインデックスに基づいたものである。
【0040】
本明細書において使用される用語「親抗体」または「親グロブリン」は、未修飾の抗体を含み、前記抗体は後で修飾されてバリアントが生じる。前記親抗体は天然に存在する抗体でもよく、あるいは天然に存在する抗体のバリアントまたは改造されたバージョンでもよい。親抗体とは、抗体そのものでもよいが、前記親抗体の組成物、またはそのコードアミノ酸配列を含む。本明細書において使用される用語「親抗体」または「親グロブリン」は、後で修飾されてヒト化抗体が生じるマウス抗体めたはキメラ抗体を含む。
【0041】
本明細書において使用される用語「バリアント抗体」または「抗体バリアント」は、親と比べて少なくとも一つのアミノ酸の修飾によって、親抗体配列と異なる抗体配列を含む。本明細書におけるバリアント抗体配列は好ましくは親抗体配列と少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列の同一性を有する。抗体バリアントとは、抗体そのものでもよいが、前記親抗体の組成物、またはそのコードアミノ酸配列を含む。
【0042】
本明細書において使用される用語「バリアント」は、親と比べて少なくとも一つのアミノ酸の修飾によって、親抗体配列と異なる抗体配列を含む。具体的な実施形態において、本明細書におけるバリアント抗体配列は親抗体配列と少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約97%、より好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは少なくとも約99%のアミノ酸配列の同一性を有する。抗体バリアントとは、抗体そのものでもよいが、前記親抗体の組成物、またはそのコードアミノ酸配列を含む。用語「アミノ酸修飾」は、アミノ酸の置換、添加および/または欠失を含み、「アミノ酸の置換」とはもう一つのアミノ酸で親ポリペプチド配列の特定の位置におけるアミノ酸を置換することである。たとえば、置換R94Kとは94番のアルギニンがリジンで置換されたことで、本明細書において使用される「アミノ酸の挿入」とは親ポリペプチド配列の特定の位置にアミノ酸を添加することである。本明細書において使用される「アミノ酸の欠失」または「欠失」とは親ポリペプチド配列の特定の位置におけるアミノ酸を除去することである。
【0043】
本明細書において使用される用語「保存的修飾」または「保存的配列修飾」とは顕著に前記アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴に影響または変化を与えないアミノ酸修飾である。このような保存的修飾は、アミノ酸の置換、挿入および欠失を含む。本分野で既知の標準技術によって修飾を本発明の抗体に導入してもよいが、たとえば部位特異的変異やPCRを介する誘導変異が挙げられる。保存的なアミノ酸の置換は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基でアミノ酸残基を置き換える置換である。本分野では、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーがすでに定義されている。これらのファミリーは、アルカリ性側鎖を含有するアミノ酸(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(たとえば、グリシン、アスパラギン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(たとえばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(たとえばチロシン、 フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。よって、ほかの同じ側鎖ファミリーのアミノ酸残基で本発明の抗体のCDR領域またはフレームワーク領域における一つまたは複数のアミノ酸残基を置き換えることができ、そして変えられた抗体(バリアント)に残った機能をテストすることができる。
【0044】
本発明において検討されるすべてのグロブリンの重鎖定常領域の位置は、いずれもKabatのEUインデックスに基づいたものである(Kabatら,1991,sequences of proteins of immunological interest,第5版,United States Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda,引用によって全体として取り込まれる)。「KabatのEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号で、たとえばEdelmanら,1969, Biochemistry 63: 78-85に記載されている。
【0045】
本明細書において使用される用語「抗原決定部位」とは、エピトープとも呼ばれ、BCMAタンパク質配列の連続した配列からなってもよく、BCMAタンパク質配列の連続しない三次元構造からなってもよい。
【0046】
本明細書において使用される用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、抗原と結合できる細胞外領域、膜貫通領域および細胞質シグナルをドメインに伝達するポリペプチド(すなわち、細胞内シグナル領域)を含み、細胞内シグナル領域とは、決まったシグナル伝達経路を通してセカンドメッセンジャーが生じることによって情報を細胞内に伝達することで細胞活性を調節するタンパク質、あるいはこのようなメッセンジャーに応答することによってエフェクターとして作用を発揮するタンパク質で、一次シグナルドメインを含み、さらに後記で定義される刺激分子由来の機能シグナル伝達ドメイン(すなわち、共刺激シグナルドメイン)を含んでもよい。細胞内シグナル領域は、CAR細胞(たとえばCAR T細胞)の免疫エフェクター機能を促進できるシグナルを発生させるが、免疫エフェクター機能の例として、たとえばCART細胞において、細胞分解活性および補助活性を含み、サイトカインの分泌を含む。
【0047】
用語「一次シグナルドメイン」は、刺激性の手段によってTCR複合体の初期活性化を調節する。一方、一次シグナルドメインはたとえばTCR/CD3複合体とペプチドが搭載されたMHC分子の結合によるもので、これによってT細胞の反応(増殖、活性化、分化などを含むが、これらに限定されない)が仲介される。刺激性の手段で作用を発揮する一次シグナルドメインは免疫受容体チロシン活性化モチーフまたはITAMのシグナル伝達モチーフを含んでもよい。本発明において特に有用なITAMの一次シグナルドメインを含む例は、TCRξ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278 (「ICOS」とも呼ばれる)およびCD66d由来の配列を含み、特別な例の本発明のCARにおいて、任意の一つまたは複数の本発明のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは細胞内シグナル伝達配列、たとえばCD3ξの一次シグナルドメインを含む。
【0048】
用語「共刺激シグナルドメイン」とは、「共刺激分子」で、T細胞における関連する結合性パートナーで、特異的に共刺激リガンドと結合することによって、T細胞の共刺激反応を仲介するが、たとえば、増殖が挙げられるが、これに限定されない。共刺激分子は、有効な免疫反応に必要で、非抗原受容体の細胞表面の分子またはそのリガンドである。共刺激分子は、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体、ならびにOX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)および4-1BB (CD137)を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明において、一つの場合では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、前記タンパク質は細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは刺激分子由来の機能シグナル伝達ドメインを含有する。一つの場合では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、前記タンパク質は細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは共刺激分子由来の機能シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能シグナル伝達ドメインを含有する。一つの場合では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、前記タンパク質は細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内伝達ドメインを含み、前記細胞内シグナル伝達ドメインは一つまたは複数の共刺激分子由来の少なくとも二つの機能シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能シグナル伝達ドメインを含む。一つの場合では、CARはCAR融合タンパク質のアミノ酸(ND末端)に任意選択のリーダー配列を含む。一つの場合では、CARは細胞外抗原認識ドメインのN末端にさらにリーダー配列を含み、ここで、リーダー配列は任意にCARの細胞で加工されて細胞膜に局在化する過程で抗原識別ドメイン(たとえばscFv)から切り取られる。
【0050】
本明細書において、用語「CD3ξ」はGenBan登録番号BAG36664.1によって提供されるタンパク質、またはヒト以外の種、たとえばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなど由来の等価残基と定義されている。「CD3ξドメイン」は、機能的にT細胞の活性化に必要な初期シグナルを伝達することができる、ξ鎖由来の細胞質ドメインのアミノ酸残基と定義されている。一つの場合では、ξの細胞質ドメインはGenBan登録番号BAG36664.1の残基52から164を含む、その機能的オルソログである、ヒト以外の種、たとえばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなど由来の等価残基である。
【0051】
本明細書において、用語「4-1BB」とはTNFRスーパーファミリーのメンバーで、GenBan登録番号AAA62478.2のアミノ酸配列、またはヒト以外の種、たとえばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなど由来の等価残基を有し、「4-1BB共刺激ドメイン」は、GenBan登録番号AAA62478.2のアミノ酸配列214-255、またはヒト以外の種、たとえばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなど由来の等価残基と定義されている。一つの場合では、「4-1BB共刺激ドメイン」は、配列番号35で提供される配列、またはヒト以外の種、たとえばマウス、げっ歯類動物、サル、ルイジンエンなど由来の等価残基である。
【0052】
本明細書における用語「インターフェロン」とは、全長のインターフェロン、あるいは全長の野生型インターフェロンの生物活性(たとえば全長の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、98%または99%)を保つインターフェロン断片(切断されたインターフェロン)またはインターフェロン突然変異体である。インターフェロンは、I型インターフェロン(たとえば、インターフェロンαおよびインターフェロンβ)およびII型インターフェロン(たとえば、インターフェロンγ)を含む。
【0053】
本発明の抗体またはそのバリアントは様々な標的性抗腫瘍薬および腫瘍の診断薬の製造、特にBCMAを標的とする免疫エフェクター細胞の製造に使用することができる。
【0054】
抗BCMAの抗体
本公開において、抗体を含む、scFvに基づいた抗体結合領域を含む抗原結合タンパク質が記載されている。ここで、組み換えBCMAが使用され、ヒトscFvファージディスプレイライブラリーからscFvが選ばれる。これらの分子は精確な特異性を示す。たとえば、当該抗体はK562細胞ではなく、安定してBCMAを発現するK562細胞だけを認識する。
【0055】
一部の実施形態において、本発明は、scFv配列を有する抗体を含み、前記scFv配列は一つまたは複数の重鎖定常領域と融合してヒトグロブリンFc領域を有する抗体を形成して二価タンパク質が生じることで、抗体全体の親和力および安定性が向上する。また、Fc部分はほかの分子(蛍光色素、細胞毒素、放射性同位元素などを含むが、これらに限定されない)がたとえば抗原の定量的研究に使用される抗体と直接結合することで、抗体を固定化させて親和力の測定、治療薬の指向性送達、免疫エフェクター細胞を使用したFcによる細胞毒性の測定および多くのほかの使用に用いてもよい。
本明細書によって提供される結果は、本発明の抗体のBCMAを標的とする場合の特異性、感度および効果が取り上げられている。
【0056】
本発明の分子は、ファージディスプレイによる一本鎖可変断片(scFv)の同定と選択に基づき、前記一本鎖可変断片のアミノ酸配列は分子にBCMAに対する特異性を付与し、かつ本公開のすべての抗原結合タンパク質の基本となっている。そのため、前記scFvは一連の異なる「抗体」分子の設計に使用することができ、たとえば全長抗体、その断片、たとえばFabおよびF(ab’)2、融合タンパク質(scFv_Fcを含む)、多価抗体、すなわち、相同または相異の抗原に対する2種類以上の特異性を有する抗体、たとえは、二重特異性T細胞結合抗体(BiTE)、三価抗体などを含む(Cuestaら,Multivalent antibodies:when design surpasses evolution, Trends in Biotechnology 28: 355-362, 2010)。
【0057】
抗原結合タンパク質が全長抗体である、一つの実施形態において、本発明の抗体の重鎖と軽鎖は、全長のもの(たとえば、抗体は少なくとも1本、好ましくは2本の完全の重鎖と、少なくとも1本、好ましくは2本の完全の軽鎖を含んでもよい)でもよく、あるいは抗原結合部分(Fab、F(ab’)2、FvまたはscFv)を含んでもよい。ほかの実施形態において、抗体の重鎖定常領域は、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEから選ばれる。抗体の種類の選択は、設計される抗体が誘導する免疫エフェクター機能によって決まる。組み換えグロブリンを構築する場合、様々なグロブリンのアイソタイプの定常領域の適切なアミノ酸配列および幅広い種類の抗体を製造する方法は当業者に既知である。
【0058】
第一の側面では、本発明は、BCMAと結合する抗体またはその断片であって、配列番号1、60、62のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR1、および/または配列番号2、61、63のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR2、および/または配列番号3、4、5のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR3を含む、抗体またはその断片を提供する。もう一つの側面では、本発明は、BCMAと結合する抗体またはその断片であって、配列番号6のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR1、および/または配列番号7のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR2、および/または配列番号8、9、10のいずれかのアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR3を含む、抗体またはその断片を提供する。もう一つの側面では、本発明は、BCMAと結合する抗体またはその断片であって、配列番号1、60、62のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR1、および/または配列番号2、61、63のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR2、および/または配列番号3、4、5のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR3、ならびに/あるいは配列番号6のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR1、および/または配列番号7のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR2、および/または配列番号8、9、10のいずれかのアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR3を含む、抗体またはその断片を提供する。好ましくは、前記BCMAと結合する抗体またはその断片は、配列番号1、60、62のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR1、および配列番号2、61、63のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR2、および配列番号3、4、5のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR3、ならびに/あるいは配列番号6のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR1、および配列番号7のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR2、および配列番号8、9、10のいずれかのアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR3を含む。より好ましくは、前記BCMAと結合する抗体またはその断片は、配列番号1、60、62のアミノ酸配列を含有する重鎖CDR1、および配列番号2、61、63のアミノ酸配列を含有する重鎖CDR2、および配列番号3、4、5のいずれかのアミノ酸配列を含有する重鎖CDR3、ならびに配列番号6のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR1、および配列番号7のアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR2、および配列番号8、9、10のいずれかのアミノ酸配列を含有する軽鎖CDR3を含む。
【0059】
もう一つの側面では、本発明は、BCMAと結合する抗体またはその断片であって、配列番号13、17、21、56、58から選ばれる重鎖可変領域配列を含む、抗体またはその断片を提供する。
【0060】
もう一つの側面では、本発明は、BCMAと結合する抗体またはその断片であって、配列番号11、15、19から選ばれる軽鎖可変領域配列を含む、抗体またはその断片を提供する。
【0061】
これらの重鎖と軽鎖の可変領域配列はそれぞれBCMAと結合することができることを考慮すると、重鎖と軽鎖の可変領域配列を「混合およびマッチング」することによって本発明の抗BCMAの結合分子を製造することができる。
【0062】
もう一つの側面では、本発明は、BCMAと結合する抗体またはその断片のバリアントを提供する。よって、本発明は、重鎖または軽鎖の可変領域配列と少なくとも80%相同の重鎖および/または軽鎖の可変領域を有する抗体またはその断片を提供する。好ましくは、重鎖および/または軽鎖の可変領域のアミノ酸配列の同一性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、特に96%、より特に97%、さらに特に98%、最も特に99%で、たとえば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%および100%を含む。バリアントは、本願に記載の抗体を親抗体とし、酵母ライブラリースクリーニング、ファージライブラリースクリーニング、点突然変異などの方法によって得ることができる。たとえば本願の実施例10で使用される方法では、抗体23F10を親抗体とし、ファージライブラリースクリーニングの方法で突然変異による改造を行った。
もう一つの側面では、本発明は、前記の抗BCMAの抗体と同様の抗原決定部位を認識する抗体を提供する。
【0063】
抗BCMAの抗体の特性
抗体、たとえば抗BCMA的抗体の結合能力を評価する標準測定は本分野で既知の、たとえばELISA、biacore、ウエスタンブロットやフローサイトメトリー分析を含む。適切な測定は実施例で詳しく記載されている。
【0064】
核酸、ベクターおよび宿主細胞
また、本発明は、BCMAと結合する抗体およびその断片をコードする単離された核酸、ベクターならびに前記核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。核酸は、完全な細胞、細胞分解液あるいは部分的に精製された形態または基本的に精製された形態に位置してもよい。
【0065】
標準の分子生物学技術によって本発明の核酸を得ることができるが、たとえば標準のPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって、抗体の軽鎖と重鎖あるいはVHとVLセグメントをコードするcDNAを得ることができる。グロブリンの遺伝子ライブラリーから得られる抗体(たとえば、ファージディスプレイ技術で)について、ライブラリーから抗体をコードする一つまたは複数の核酸を回収することができる。宿主細胞に外因性核酸を導入する方法は本分野で幅広く知られており、かつ使用される宿主細胞によって変わる。
【0066】
好適な本発明の核酸分子は軽鎖可変領域をコードする配列番号12、16、20から選ばれるもの、および/または重鎖可変領域をコードする配列番号14、18、22、57、59から選ばれるものである。より好適な核酸分子は、重鎖をコードする配列番号14の配列、および軽鎖をコードする配列番号12の配列あるいは重鎖をコードする配列番号18の配列、および軽鎖をコードする配列番号16の配列あるいは重鎖をコードする配列番号22の配列、および軽鎖をコードする配列番号20の配列あるいは重鎖をコードする配列番号57の配列、および軽鎖をコードする配列番号20の配列あるいは重鎖をコードする配列番号59の配列、および軽鎖をコードする配列番号20の配列を含む。
【0067】
タンパク質を発現させるため、本発明の抗体をコードする核酸を発現ベクターに組み込んでもよい。多くの発現ベクターがタンパク質の発現に使用できる。発現ベクターは、自己複製する染色体外ベクター、または宿主のゲノムに組み込まれるベクターを含む。本発明に使用される発現ベクターは、タンパク質を哺乳動物細胞、細菌、昆虫細胞、酵母および体外システムで発現させるものを含むが、これらに限定されない。たとえば、本分野で既知の多くの発現ベクターは市販品またはほかの手段によって得られる。本発明に使用して抗体を発現させることができる。
【0068】
免疫複合体
また、本発明は、本明細書に記載の抗体および少なくとも1つのほかの種類の機能性分子を含む多機能免疫複合体を提供する。前記の機能性分子は、腫瘍表面マーカーを標的とする分子、腫瘍を抑制する分子、免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子または検出可能な標識物から選ばれる機能性分子とを含むが、これらに限定されない。前記抗体と前記機能性分子は共役結合、カップリング、付着、架橋などの形態で複合体を構成してもよい。
【0069】
一つの好適な形態として、前記免疫複合体は、本発明の抗体および少なくとも1つの腫瘍表面マーカーを標的とする分子または腫瘍を抑制する分子を含んでもよい。前記の腫瘍を抑制する分子は抗腫瘍サイトカインまたは抗腫瘍毒素でもよく、好ましくは、前記のサイトカインはIL-2、IL-7、IL-12、IL-15、I型IFN、TNF-αを含むが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、前記の腫瘍表面マーカーを標的とする分子は本発明の抗体が標的とする相同の腫瘍表面マーカーを標的とする分子である。たとえば、前記の腫瘍表面マーカーを標的とする分子は、腫瘍表面マーカーと結合する抗体またはリガンド、たとえば本発明の抗体と協同作用し、より精確に腫瘍細胞を標的としてもよい。
【0070】
一つの好適な形態として、前記免疫複合体は、本発明の抗体および検出可能な標識物を含んでもよい。前記の検出可能な標識物は、蛍光標識物、呈色標識物を含むが、これらに限定されず、たとえば酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、陽電子放出金属や非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。1つ以上の標識物を含んでもよい。検出および/または分析および/または診断のために標識抗体に使用される標識は、使用される検出/分析/診断の技術および/または方法、たとえば免疫組織化学染色(組織)サンプル、フローサイトメトリーなどによるものである。本分野で既知の検出/分析/診断の技術および/または方法に適する標識は当業者に熟知のものである。
【0071】
一つの好適な形態として、前記免疫複合体は、本発明の抗体および免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子を含んでもよい。前記免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は免疫細胞の表面マーカーと結合する抗体またはリガンドでもよく、免疫細胞を識別することができ、本発明の抗体を免疫細胞に持っていき、同時に本発明の抗体は免疫細胞が腫瘍細胞を標的とするようにさせることによって、免疫細胞が特異的に腫瘍を殺傷するようにすることができる。前記の免疫細胞の表面マーカーはCD3、CD16、CD28から選ばれてもよく、より好ましくは、免疫細胞の表面マーカーと結合する抗体は抗CD3抗体である。免疫細胞は、T細胞、NK細胞、NKT細胞から選ばれてもよい。
【0072】
直接または間接に(たとえばリンカーで)複合させて化学的に免疫複合体を形成する形態の一つとして、前記免疫複合体は本発明の抗体および適切なほかのタンパク質を含む融合タンパク質として生成してもよい。融合タンパク質は本分野で既知の方法によって生成することができ、たとえば核酸分子を構築して前記核酸分子を発現させることによって組み換えて生成し、前記核酸分子は読み枠に合う抗体をコードするヌクレオチド配列および適切な標識をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0073】
本発明のもう一つの側面では、本発明の少なくとも一つの抗体、その機能的バリアントまたは免疫複合体をコードする核酸分子を提供する。関連の配列を獲得すれば、組換え法で大量に関連配列を獲得することができる。この場合、通常、その配列をベクターにクローンした後、細胞に導入し、さらに通常の方法で増殖させた宿主細胞から関連配列を単離して得る。
【0074】
さらに、本発明は、上記の適当なDNA配列および適当なプロモーターあるいは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現するように、適当な宿主細胞の形質転換に用いることができる。宿主細胞は、原核細胞、たとえば細菌細胞、あるいは、低等真核細胞、たとえば酵母細胞、あるいは、高等真核細胞、たとえば哺乳動物細胞でもよい。
【0075】
抗BCMA抗体を含有するキメラ抗原受容体
また、本発明は、本発明の抗体または抗体断片を含み、当該CAR-T細胞が抗腫瘍性質を示す、多くのキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。一部の実施例において、CARをコードするウイルスベクターが形質導入された細胞(たとえばT細胞)が使用される。一部の実施例において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。一部の実施例において、細胞は安定してCARを発現することができる。
【0076】
一つの好適な例において、CARのBCMA結合部分はscFv抗体断片で、その由来となるIgG抗体と比べ、等価の親和結合力を保つが、たとえば相当する効果で相同の抗原と結合する。当該抗体断片は機能的なもので、これによって生物化学反応、たとえば免疫反応の活性化、その標的抗原からのシグナル伝達の開始の抑制、キナーゼ活性の抑制などが提供される。そのため、本発明は、工学的にT細胞に導入された、WT1結合ドメインを含むBCMA-CAR、およびそれを養子免疫療法に使用する方法。
一つの場合では、CARの抗BCMC抗原結合ドメインは、その由来となるマウス配列scFvに対してヒト化されたscFv抗体断片である。
【0077】
一つの場合では、本発明のCARは特定の抗体の抗原結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達分子を組み合わせたものである。たとえば、一部の場合では、細胞内シグナル伝達分子は、CD3ξ?、4-1BBおよびCD28シグナル伝達モジュールおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0078】
一つの場合では、BCMA-CARは少なくとも一つの細胞内シグナル伝達ドメインを含み、CD137(4-1BB)シグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD3ξシグナル伝達ドメイン、およびこれらの任意の組み合わせから選ばれる。一つの場合では、BCMA-CARは少なくとも一つの細胞内シグナル伝達ドメインを含み、一つまたは複数のCD137(4-1BB)またはCD28以外の共刺激分子由来のものである。
【0079】
例示的なものとして、BCMA-CARの配列は7A12-BBZ(配列番号75)、25C2-BBZ(配列番号76)、25D2-BBZ(配列番号77)、7G2-BBZ(配列番号78)、7A12-28Z(配列番号79)、7A12-28BBZ(配列番号80)、7G2-28Z(配列番号81)、7G2-28BBZ(配列番号82)、25C2-28Z(配列番号83)、25C2-28BBZ(配列番号84)、25D2-28Z(配列番号85)、25D2-28BBZ(配列番号86)でもよいが、上記配列番号75-86の膜貫通領域および細胞内領域は当業者が通常の膜貫通領域および細胞内領域を選んで置き換えることができ、かついずれも本願の保護範囲に含まれる。
【0080】
キメラ抗原受容体で修飾されたT細胞
また、本発明は、本発明に記載のキメラ抗原受容体を含有する免疫細胞を提供する。
もう一つの側面では、本発明によって提供されるキメラ抗原受容体で修飾されたT細胞は、さらに、外来のサイトカインのコード配列を担持する。好ましくは、前記のサイトカインは、IL-12、IL-15またはIL-21を含む。前記の免疫細胞は、T細胞、NK細胞またはNKT細胞から選ばれることが好ましい。
【0081】
もう一つの側面では、本発明によって提供されるキメラ抗原受容体で修飾されたT細胞は、さらに、PD-L1遮断剤またはPD-L1を遮断するタンパク質、たとえば天然PD-1、あるいはPD-L1と結合可能な突然変異PD-1、あるいはPD-L1と結合可能な天然または突然変異PD-1の断片、あるいは抗PD-L1の抗体を担持する。例示的なものとして、PD-L1遮断剤は、配列番号70で示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0082】
薬物組成物
本発明の抗体、当該抗体を含む免疫複合体および遺伝子修飾された免疫細胞は薬物組成物または診断試薬の製造に使用することができる。前記の組成物は、有効量の前記抗体、免疫複合体または免疫細胞以外、薬学的に許容される担体を含んでもよい。用語「薬学的に允許される」とは、分子自体と組成物を適当に動物或いはヒトに投与する場合、不利な反応、アレルギー反応或いは他の不良反応が生じないことを指す。
【0083】
薬学的に許容される担体またはその成分にできる一部の物質の具体的な例は、糖類、たとえば乳糖、ブドウ糖やショ糖、デンプン、たとえばコーンスターチやバレイショデンプン、セルロースおよびその誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースやメチルセルロース、トラガカントゴム粉末、麦芽、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤、たとえばステアリン酸やステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、たとえば落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブオイル、コーン油やカカオオイル、多価アルコール、たとえばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールやポリエチレングリコール、アルギン酸、乳化剤、たとえばTween?、湿潤剤、たとえばドデシル硫酸ナトリウム、着色剤、調味剤、打錠剤、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、発熱性物質除去蒸留水、等張塩溶液、およびリン酸塩緩衝液などがある。
【0084】
本発明の組成物は、必要により各種の剤形に調製することができ、かつ医者が患者の種類、年齢、体重及び基本病状、投与形態などの要素によって患者に有益な投与量を決めて使用することができる。投与形態は、たとえば注射またはほかの治療形態を使用してもよい。
【0085】
本発明の利点:
1.本発明は、BCMAに対する特異性抗体を提供する。
2.本発明は、BCMAを標的とする免疫エフェクター細胞を提供する。
3.本発明の抗体は、有効にBCMAを発現する腫瘍細胞と結合することができ、本発明の免疫エフェクター細胞はBCMAを発現する腫瘍細胞に対して顕著な殺傷能力を示すため、本発明の抗体および免疫エフェクター細胞は有効に、安全に多発性骨髄腫の治療に使用することができることで、多発性骨髄腫の治療に物質的な基礎を築いた。
【0086】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばJ. Sambrookら編著、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」、第三版、科学出版社、2002年に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。
【0087】
実施例1.BCMA組換えタンパク質の製造
a.BCMA_huFc、BCMA_muFc発現プラスミドの構築
体外でヒトBCMAの細胞外セグメントMet1-Ala54(配列番号38)の遺伝子(配列番号39)を合成し、当該遺伝子をヒトIgG1重鎖定常領域のFcセグメントAsp104-Lys330を含有する真核発現プラスミドに挿入し、その間は「GS」で連結し、融合発現タンパク質BCMA_huFc(配列番号40)を形成し、相応する遺伝子配列は配列番号41で示される。
【0088】
BCMAの細胞外セグメントの遺伝子(配列番号39)をマウスIgG1重鎖定常領域のFcセグメントArg100-Lys324を含有する真核発現プラスミドに挿入し、その間は「GS」で連結し、融合発現タンパク質BCMA_muFc(配列番号42)を形成し、相応する遺伝子配列は配列番号43で示される。
b.一過性形質移入発現BCMA_huFc、BCMA_muFc
1) 形質移入の前日に、6~7×105/mlで293F細胞を125ml培養瓶に接種した。
2) 形質移入の当日に、3×107の細胞を28mlのFreeStyleTM 293発現培地で調製した。
3) 以下の操作工程で脂質-DNA複合体を調製した。
Opti-MEM Iで30μgのDNAを最終体積が1mlになるように希釈し、十分に均一に混合した。
Opti-MEM Iで60μlの293fectinTMを最終体積が1mlになるように希釈し、十分に均一に混合した。
室温で5分間インキュベートした。
4) 希釈されたDNAを293fectinTMと混合し、室温で20分間インキュベートした。
5) 2mlのDNA-293fectin複合体を28mlの細胞に入れ、37度、8% CO2で、125 rpmで3~4日培養し、上清を収集した。
c.BCMA_huFc、BCMA_muFcの精製
1) 13000rpmで培養上清を15min遠心した。
2) protein Aフィラーで親和性精製を行ったが、具体的な操作工程は以下の通りである。
平衡化:10倍カラム体積の平衡化緩衝液でprotein Aフィラーを平衡化した。
仕込み:0.45μmろ膜で処理されたサンプルを全部仕込んだ。
不純物の洗浄:通過した物質がなくなるまで、20倍カラム体積の平衡化緩衝液で不純物を洗浄した。
溶離:10倍カラム体積の溶離緩衝液で目的のタンパク質を溶離させた(収集管に事前に6%の中和緩衝液を入れた)。
溶液の配合
平衡化緩衝液:PBS pH 7.4
溶離緩衝液:0.1M グリシン pH 2.6
中和緩衝液:1M Tris
【0089】
3) 溶離液を0.22μmの膜でろ過した後、分画分子量が10KDのmillipore限外ろ過チューブで、体積1ml以内になるまで濃縮し、PD-Midi脱塩カラムで脱塩し、1.5mlのサンプルを収集した。OD280/1.47によってタンパク質濃度を測定した。
2μg取ってSDS-PAGEにかけ、結果を図1に示す。
【0090】
実施例2. K562-BCMA安定発現細胞系の構築
1.pWPT-BCMAパッケージングプラスミドの構築
体外でヒトBCMAの全長(配列番号37)遺伝子を合成し、そして酵素切断部位MluI、SalI(配列番号44)を導入した。二重酵素切断によってレンチウイルスパッケージングプラスミドpWPTに挿入した。
2.レンチウイルスのパッケージング
a) Lenti-x 293Tで消化した後、8×106細胞を10cmディッシュに敷き、37℃で培養した。
b) 翌日の午前:プラスミド/PEI混合液を調製した。
pWPT-BCMA 5μg
psPAX.2 7.5μg
pMD2.G 2.5μg
800μLのDMEMに入れてインキュベートした。相応するPEI量は45μLで、800μLのOMEMに入れて5minインキュベートした。
c) プラスミド混合液を1滴ずつPEIインキュベート液に入れ、そして軽く均一に混合し、室温で20minインキュベートした。
d) 調整されたプラスミド/PEI混合液を1滴ずつ細胞に入れ、均一に混合した。5h後、液を置換した。
e) 72h後、ウイルス上清を収集し、0.45μmろ膜でろ過した後、4℃で暫く保存した。
【0091】
3.BCMAウイルスに感染したK562細胞
a) 1日目の午後:良好に成長したK562細胞を1×105細胞で6cm ディッシュに敷いた。
b) 2日目の午後:K562細胞上清を捨て、3mLの新鮮な完全培地を入れ、さらに1mLのウイルス原液を入れ、最終濃度が6μg/mLのポリブレンを入れた。
c) 3日目の午前:上清を除去し、5mLの新鮮な完全培地を入れた。
d) 3日目の午前:一部の細胞を取ってフローサイトメトリーの検出を行った。
【0092】
4.K562-BCMA混合クローンの同定
a) K562-BCMA混合クローンおよびK562陰性細胞を1%NCS(1%仔ウシ血清含有PBS)で2回洗浄した後、一次抗体のインキュベートを行った:huBCMA抗体(abcam,#17323)を1%NCSで1:1000に希釈し、各サンプルに50μLずつ入れて4℃で45minインキュベートした。
【0093】
b) 細胞を1%NCSで2回洗浄した後、二次抗体のインキュベートを行った:DyLight488で標識されたヤギ抗ラットIgG(abcam,#ab98420)を1%NCSで1:200に希釈し、各サンプルに50μLずつ入れ、4℃で45minインキュベートした。
【0094】
c) 細胞を1%NCSで3回洗浄した後、1%NCSに再懸濁させ、Guava easyCyteTM HT System装置によって検出し、結果は図2Aに示す。
5.K562-BCMA単クローンのプレーティング
a) K562-BCMA混合クローン細胞をカウントし、有限希釈法で単クローンのプレーティングを行った。
b) 1週間後、クローンの成長状況を観察し、そして培地を追加した。
c) 2週間後、単クローンが成長したウェルにおける細胞を取って拡大培養を行った。
6.K562-BCMA単クローンの同定
検出方法は混合クローンの同定と同様で、実験結果を図2Bに示す。ここで、4つの単クローンはBCMA陽性クローンである。
【0095】
実施例3.全ヒトファージディスプレイライブラリーを使用したBCMAに特異的なscFvのスクリーニング
本発明で使用されたファージディスプレイライブラリーは我が社で構築された全ヒトの天然のscFvファージライブラリーで、ライブラリー容量は1E+11である。当業者に既知のスクリーニング方法によってBCMAに高度に特異的なscFv断片を得た簡単に言えば、それぞれ10μg/mlで抗原BCMA_huFcおよびヒトFc断片を免疫管にコーティングした。Fc断片の影響を減少するため、ファージライブラリーをヒトFc断片がコーティングされた免疫管に入れて1h結合させた。上清を取ってBCMA_huFcがコーティングされた免疫管に入れて1.5時間結合させた後、非特異的なファージを洗浄して除去し、結合したファージを溶離させて対数生長期の大腸菌TG1を感染させた。溶離したファージを拡大培養してPEG/NaClで沈殿させ、拡大後のファージライブラリーを精製して次のスクリーニングに使用した。スクリーニングを3-4サイクル行ってBCMAと特異的に結合するscFvファージクローンを濃縮させた。BCMA_huFcに対する標準ELISA方法によって陽性クローンを確認した。ELISAはヒトFc断片を無関連抗原として抗体の特異性を検証した。計2470のクローンをスクリーニングしたところ、そのうち、160のクローンはELISA実験でBCMA_huFcと特異的に結合し、ヒトFc断片と結合しない。中から、76のシグナル値が高いクローンを選んでシークエンシングをし、23の単一の配列を得た。この23のクローンを発現させて精製し、K562-BCMA細胞と特異的に結合するクローンを3つ得たが(図4)、クローンの名称は7G2、7A12、23F10である。シークエンシングによって分析したところ、7A12の重鎖可変領域が配列番号13で示されるアミノ酸配列で、軽鎖可変領域が配列番号11で示されるアミノ酸配列で、7G2の重鎖可変領域が配列番号17で示されるアミノ酸配列で、軽鎖可変領域が配列番号15で示されるアミノ酸配列で、23F10の重鎖可変領域が配列番号21で示されるアミノ酸配列で、軽鎖可変領域が配列番号19で示されるアミノ酸配列であった。
【0096】
7A12の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号13):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARYPYLAFDYWGQGTLVTVSS (太字と下線でCDR配列を示す)
【0097】
7A12の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号14):
GAGGTGCAATTGCTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTAGCAGTTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAGCTATTAGTGGTAGTGGTGGTAGCACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGCGTTACCCATACCTGGCATTCGACTACTGGGGCCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGT
【0098】
7A12の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号11):
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGYPPSYTFGQGTKVEIK (太字と下線でCDR配列を示す)
【0099】
7A12の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号12):
GAAATCGTGTTAACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCTTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGAGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGATCCGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTACGGTTACCCACCATCTTACACGTTCGGCCAGGGGACCAAAGTGGAAATCAAA
【0100】
7G2の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号17):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKLSGDAAMDYWGQGTLVTVSS (太字と下線でCDR配列を示す)
【0101】
7G2の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号17):
GAGGTGCAATTGCTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTAGCAGTTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAGCTATTAGTGGTAGTGGTGGTAGCACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAACTGTCTGGTGATGCAGCAATGGACTACTGGGGCCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGT
【0102】
7G2の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号15):
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGYPPRYTFGQGTKVEIK (太字と下線でCDR配列を示す)
【0103】
7G2の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号16):GAAATCGTGTTAACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCTTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGAGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGATCCGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTACGGTTACCCACCAAGATACACGTTCGGCCAGGGGACCAAAGTGGAAATCAAA
【0104】
23F10の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号21):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKVRPFWGTFDYWGQGTLVTVSS (太字と下線でCDR配列を示す)
【0105】
23F10の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号22):
GAGGTGCAATTGCTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTACAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCCGGATTCACCTTTAGCAGTTATGCCATGAGCTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAGCTATTAGTGGTAGTGGTGGTAGCACATACTACGCAGACTCCGTGAAGGGCCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATTCCAAGAACACGCTGTATCTGCAGATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAAAGTTCGTCCATTCTGGGGTACTTTCGACTACTGGGGCCAAGGAACCCTGGTCACCGTCTCGAGT
【0106】
23F10の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号19):
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYFNPPEYTFGQGTKVEIK (太字と下線でCDR配列を示す)
【0107】
23F10の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号20):
GAAATCGTGTTAACGCAGTCTCCAGGCACCCTGTCTTTGTCTCCAGGGGAAAGAGCCACCCTCTCTTGCAGGGCCAGTCAGAGTGTTAGCAGCAGCTACTTAGCCTGGTACCAGCAGAAACCTGGCCAGGCTCCCAGGCTCCTCATCTATGGAGCATCCAGCAGGGCCACTGGCATCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGATCCGGGACAGACTTCACTCTCACCATCAGCAGACTGGAGCCTGAAGATTTTGCAGTGTATTACTGTCAGCAGTACTTCAACCCACCAGAATACACGTTCGGCCAGGGGACCAAAGTGGAAATCAAA
【0108】
実施例4.抗BCMA scFv_Fc融合抗体の構築および真核細胞におけるその一過性発現・精製、活性の同定
それぞれ7G2、7A12、23F10のVHとVL断片に対してプライマーを設計し、15の可撓性アミノ酸(GGGGSGGGGSGGGGS)からなるリンカーを導入して連結してscFvを構成した。VHの上流にNheIの酵素切断部位および保護塩基を導入し、VLの下流にBamHIの酵素切断部位および保護塩基を導入した。1%アガロースゲル電気泳動によってPCR産物を分析し、そして精製して回収した。酵素切断後、V152(上海鋭勁生物技術有限公司から購入)真核発現ベクターを連結した。293fectin?形質移入試薬(Invitrogen,12347-019)またはポリエチレンイミン(PEI)(Sigma-Aldrich、408727)で対数生長期の293F細胞を一過性形質移入させた。5-7日形質移入させた後、培養上清を収集してProtein Aで親和性精製を行った。SDS PAGEによって得られた抗体に対して定量と定性の分析を行った(図5)。
【0109】
フローサイトメトリーによって抗体と安定してBCMAを発現するK562の結合を測定した。FACs検出の具体的な方法は以下の通りである:細胞を回収し、成長培地で細胞を1回洗浄し、PBSに再懸濁させ、細胞濃度が4E+5細胞/mlになるように調整した。氷の上で勾配希釈されたscFv_Fc融合抗体を細胞と30分間インキュベートし、抗体の開始濃度は500nMで、5倍希釈し、計7段の勾配にした。その後、FITCで標識された抗マウスIgG二次抗体とインキュベートした。2回の洗浄工程の後、Guava easyCyteTM HT System装置によって検出した。図6は、抗体7A12、7G2、23F10 scFv_Fc融合形態とK562-BCMA結合する状況を示す。この3つの抗体はいずれも濃度依存的に結合し、EC50はそれぞれ3.13 nM、3.42 nM、5.61 nMであった。
【0110】
実施例5.表面プラスモン共鳴技術(SPR)による抗体の親和力の測定
異なる抗体のBCMAに対する親和力はbiacoreT200によって測定された。具体的な仕方は以下の通りである。
BCMA_huFcをアミノカップリングの手段によってCM5チップに500RU程度までコーティングし、勾配希釈された抗体に移動相として30μl/minの流速で抗原がコーティングされた通路を通させる。稼働緩衝液はHBS-Nで、温度は25度であった。実験データはBIAevaluation3.2によって分析し、動態学曲線は1:1のラングミュアモデルでフィッティングした。ここで、7A12(scFv_Fc)のKDは663pMで、7G2(scFv_Fc)のKDは499pMで、23F10(scFv_Fc)のKDは667pMであった(図7に示す)。具体的なパラメーターは下記表に示す。
【表1】
【0111】
実施例6.FACsによる抗体と腫瘍細胞系の結合の測定
RPMI8226はヒト多発性骨髄腫の末梢血B細胞である。FACs検出の具体的な方法は以下の通りである:細胞を回収し、成長培地で細胞を1回洗浄し、PBSに再懸濁させ、細胞濃度が4E+5細胞/mlになるように調整した。氷の上で勾配希釈されたscFv_Fc融合抗体を細胞と30分間インキュベートし、抗体の開始濃度は500nMで、5倍希釈し、計7段の勾配にした。その後、FITCで標識された抗マウスIgG二次抗体とインキュベートした。2回の洗浄工程の後、Guava easyCyteTM HT System装置によって検出した。図8に示すように、抗体7A12,7G2,23F10 scFv_Fc融合形態は細胞系RPMI8226において濃度依存的に結合した。
【0112】
実施例7.抗BCMA抗体とBCMAリガンドAPRILの競合的結合実験
1.組み換えAPRIL融合タンパク質の発現・精製
ヒトAPRIL His115-Leu250とヒトIgG1重鎖定常領域のFcセグメントAsp104-Lys330の融合タンパク質を組み換え発現させ、その間は「GS」で連結し、融合タンパク質APRIL_huFc(配列番号45)を形成し、相応する遺伝子配列は配列番号46で示される。実施例1に記載の方法によって一過性形質移入発現させて精製した。
【0113】
2.競争ELISA
100μl/ウェルで50ng/mlのBCMA_muFcをELISAプレートに、4度で一晩コーティングした。2日目に、PBSでコーティングプレートを3回洗浄し、2%脱脂粉乳含有PBSを入れ、室温で1時間ブロッキングした。同時に、40ng/mlのAPRIL_huFcおよび勾配希釈された抗体7A12、7G2、または23F10を入れた(開始濃度200nMで、7段に3倍希釈した)。室温で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄し、1:1000に希釈されたHRPで標識されたマウス抗ヒトFc抗体を入れ、室温で1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄した。TMBを入れて呈色させ、そしてマイクロプレートリーダーによって数値を読み取った。
【0114】
実験結果は図9に示すように、7A12、7G2、23F10はいずれもAPRILとBCMAの結合を顕著に抑制することができた。本発明の抗体はBCMAとその天然リガンドの結合を抑制することができることが説明された。
【0115】
実施例8.抗BCMAキメラ抗原受容体プラスミド(CAR)の構築
a.抗BCMA抗体7A12キメラ抗原受容体プラスミドの構築
PRRLSIN-cPPT.EF-1αをベクターとし、抗体7A12の二代目、三代目のキメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスプラスミドを構築したが、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-7A12-28Z、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-7A12-BBZおよびPRRLSIN-cPPT.EF-1α-7A12-28BBZを含む。7A12-28Z配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、7A12 scFv(配列番号47)、CD8ヒンジ(配列番号25)、CD28膜貫通領域(配列番号27)および細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号29)ならびにCD3の細胞内セグメントCD3ξ(配列番号31)からなる。7A12-BBZ配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、7A12 scFv(配列番号47)、CD8ヒンジ(配列番号25)および膜貫通領域(配列番号33)、CD137細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号35)およびCD3ξ( 配列番号31)からなる。7A12-28BBZ配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、7A12-scFv(配列番号47)、CD8ヒンジ(配列番号25)、CD28膜貫通領域(SEQID NO:27)および細胞内セグメント(配列番号29)、CD137細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号35)およびCD3ξ(配列番号31)からなる。
【0116】
b.抗BCMA抗体7G2キメラ抗原受容体プラスミドの構築
PRRLSIN-cPPT.EF-1αをベクターとし、抗体7G2の二代目、三代目のキメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスプラスミドを構築したが、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-7G2-28Z、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-7G2-BBZおよびPRRLSIN-cPPT.EF-1α-7G2-28BBZを含む。7G2-28Z配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、7G2 scFv(配列番号48)、CD8ヒンジ(配列番号25)、CD28膜貫通領域(配列番号27)および細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号29)ならびにCD3の細胞内セグメントCD3ξ(配列番号31)からなる。7G2-BBZ配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、7G2 scFv(配列番号48)、CD8ヒンジ(配列番号25)および膜貫通領域(配列番号33)、CD137細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号35)およびCD3ξ( 配列番号31)からなる。7G2-28BBZ配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、7G2-scFv(配列番号48)、CD8ヒンジ(配列番号25)、CD28膜貫通領域(SEQID NO:27)および細胞内セグメント(配列番号29)、CD137細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号35)およびCD3ξ(配列番号31)からなる。
【0117】
実施例9.CAR-T細胞の製造
1.BCMAを標的とするCARレンチウイルスベクターのレンチウイルスのパッケージング、ウイルスの濃縮および力価の測定
a.レンチウイルスのパッケージング
1) 293T細胞を10cmの細胞培養シャーレに接種し、37℃、5% CO2で一晩培養して形質移入に備え、培地は10%ウシ胎児血清(Gibico)含有DMEMであった。
【0118】
2) それぞれ目的の遺伝子プラスミドPRRLSIN-cPPT.EF-1α-EGFP(Mock)または関連CARプラスミド5.4 μgをパッケージングプラスミドpRsv-REV 6.2 μg、RRE-PMDLg 6.2 μg、Vsvg 2.4 μgと800 μLの空白のDMEM培養液に溶解させ、均一に混合した。
【0119】
3) 60μgのPEIを800μLの無血清DMEM培養液に溶解させ、軽く均一に混合し(または1000rpmで5秒ボルテックスし)、室温で5minインキュベートした。
【0120】
4) 形質移入複合体の形成:プラスミド混合液をPEI混合液に入れ、入れた後すぐボルテックスで混合するか軽く均一に混合し、室温で20minインキュベートした。
【0121】
5) 1.6mLの形質移入複合体を11 mlのDMEM培地を含有する10cm培養シャーレに滴下し(液置換の必要がない)、4~5時間後、10%FBSのDMEM培地で形質移入される293T細胞の液置換を行い、37℃で72hインキュベートし、ウイルス液上清を収集した。
【0122】
b.レンチウイルスの濃縮
1) 5×PEG8000 NaClの調製:NaCl 8.766 g、PEG8000 50gを量って200mlのMilli-Q純水に溶解させ、121℃で30min湿熱滅菌し、4℃で保存した。
【0123】
2) 0.45μmフィルターでレンチウイルス上清液をろ過し、30mlのろ過されたウイルス初期液に対し、5×PEG-8000 NaCl 母液7.5mlを入れ、20~30minおきに1回混合し、計3-5回混合し、4℃で一晩置き、4℃、4000 gで20min遠心した。
【0124】
3) 上清を吸い取り、管を1~2分間静置し、残った液体を吸い取り、?量のレンチウイルス溶解液を入れてレンチウイルス沈殿を溶解させ、分けて-80℃で保存した。
【0125】
c.レンチウイルスの力価の測定
1) 2×105の細胞数で293T細胞を6ウェル培養プレートに1 ml/ウェルで接種し、0.6μl/mlで初期濃度10μg/μlのポリブレン溶液を最終濃度が0.6μg/mlになるように入れ、37℃、5% CO2で1時間培養し、培養液は10%牛胎児血清含有DMEMであった。
2) 10 μL/ウェルのウイルス濃縮液を入れ、5倍希釈し、3段の勾配にし、37℃、5% CO2で培養した。
【0126】
3) 72h感染させた後、トリプターゼで293T細胞を消化し(30s)、1mlのDMEM(10%FBS)を入れて消化を止め、細胞懸濁液を2ml遠心管に移し(二等分)、5000rpmで5min遠心し、上清を捨て、PBS(2%NBS)で2回洗浄した。
【0127】
4) 対照群の細胞は、50μlのPE-SAを入れて(1:200希釈)抗体を氷の上で45minインキュベートし、PBS(2% NBS)で2回洗浄し、再懸濁させて対照とした。
【0128】
5) 検出群の細胞は、50μlの1:50に希釈されたビオチン-ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2抗体を入れ、氷の上で45minインキュベートし、PBS(2% NBS)で2回洗浄し、50μlのPE-SAを入れて(1:200希釈)抗体を氷の上で45minインキュベートした。
6) 2mlのPBS(2% NBS)を入れて細胞を再懸濁させ、4℃、5000rpm/minで5間遠心して上清を捨て、2回繰り返した。
【0129】
7) 500μlのPBS(2% NBS)を入れ、フローサイトメトリー管に移した。フローサイトメーターによりPE通路を検出し、陽性率が5~20%の細胞数が好適で、力価(PFU/mL)=細胞数×陽性率/ウイルス体積で力価を算出した。
【0130】
2.レンチウイルスのT細胞への形質移入--CAR陽性T細胞の製造
1) T細胞の活性化:約1×106/mLの密度でリンパ球培地液に入れて培養し、そして磁気ビーズ:細胞の比率が2:1になるように抗CD3およびCD28抗体の両者で覆われた磁気ビーズ(Invitrogen社)と、最終濃度500 U/mLの組み換えヒトIL-2(上海華新生物高技術有限公司)を入れ、48 h刺激培養した。
【0131】
2) 感染の前日に、RetroNectinで24ウェルプレートをコーティングし、RetroNectinの最終濃度が5μg/mlで、4度で一晩インキュベートした。
3) 24ウェルプレートにおけるRetroNectin溶液(PBS)を捨て、1ml PBSで2回洗浄した。
4) MOI=10になるようにPBMC細胞に濃縮されたレンチウイルスを入れ、1000gで40min遠心した後、インキュベーターに移した。
【0132】
5) 増幅培養:感染された細胞を一日おきに5×105/mLの密度で継代するとともに、リンパ球培養液に最終濃度500 U/mLの組み換えヒトIL-2を追加した。
3.T細胞のキメラ抗原受容体の発現
1) レンチウイルスに感染したT細胞は、培養の7日目に、1×106のT細胞を遠心管に取った。
2) 4℃、5000rpmで5min遠心し、上清を捨て、PBSで2回洗浄した。
【0133】
3) 被験細胞は、50μlのビオチン-ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2抗体(1:50希釈)を入れ、氷の上で45minインキュベートし、PBS(2% NBS)で2回洗浄し、50μlのPE-SAを入れて(1:200希釈)抗体を氷の上で45minインキュベートした。
4) 2mlのPBS(2% NBS)を入れて細胞を再懸濁させ、4℃、5000rpm/minで5間遠心して上清を捨て、2回繰り返した。
【0134】
5) 500μlのPBS(2% NBS)を入れ、フローサイトメトリー管に移した。フローサイトメーターによりPE通路を検出し、CAR陽性のT細胞の比率を確認した。
【0135】
体外毒性殺傷実験の時、Mock、7A12-28Z、7A12-BBZ、7A12-28BBZ、7G2-28Z、7G2-BBZおよび7G2-28BBZのT細胞感染陽性率は図10に示すように、それぞれ72.8%、60.8%、48.7%、57.4%、67.5%、68.8%、63.6%であった。
【0136】
4.BCMAを標的とするCAR T細胞の細胞毒性の測定
CytoTox 96非放射性細胞毒性検出キット(Promega社)で行われたが、具体的に、CytoTox 96非放射性細胞毒性検出キットを参照する。
【0137】
標的細胞:それぞれ75 μl 2×105/mLのK562、K562-BCMAおよびRPMI-8226細胞を96ウェルプレートに接種した。エフェクター細胞:エフェクター細胞対標的細胞比3:1、1:1または1:3でT-Mockおよび異なるキメラ抗原受容体を発現するCAR T細胞を入れた。各群ではいずれも重複ウェルを4つとし、4つの重複ウェルの平均値を取った。検出時間は細胞を18hインキュベートした。ここで、各実験群および各対照群は以下の通りである。
各実験群:各標的細胞+異なるキメラ抗原受容体を発現するCAR T細胞。
対照群1:LDH最大放出の標的細胞。
対照群2:LDH自発放出の標的細胞。
対照群3:LDH自発放出のエフェクター細胞。
【0138】
細胞毒性の計算式:細胞毒性% = [(実験群 ? エフェクター細胞対照 ? 標的細胞対照)/(標的細胞の最大分解量 ? 標的細胞対照)]×100%
【0139】
実験結果から、異なるキメラ抗原受容体を発現する各CAR T細胞は、BCMA陽性のK562-BCMAおよびRPMI-8226細胞のいずれにも顕著な体外殺傷活性を有し、特に内在的にBCMAを発現するRPMI-8226細胞にその殺傷毒性がより強かったが、BCMA陰性のK562細胞にはほとんど殺傷作用がなかったことが示された(図11A)。
5.多発性骨髄腫末梢血B細胞RPMI8226を担持するNOD/SCIDマウスの皮下移植腫瘍モデルの治療
【0140】
それぞれRPMI-8226細胞を40匹のNOD/SCIDマウスに接種し、接種細胞数は8×106/匹マウスであった。腫瘍細胞を皮下接種してから12日目に、腫瘍体積は平均で75mm3で、ランダムに4群に分け、それぞれ尾静脈に1×107のCAR Tを注射し、注射前に100mg/kgの投与量でシクロホスファミドを腹腔内に注射することによって、事前にマウス体内に残ったT細胞を除去し、CAR Tから17日目に、マウスを頚椎脱臼で殺処分した。
【0141】
マウスの腫瘍の大きさを分析した結果、図11Bに示すように、UTD群と比べ、7A12-28Z、7A12-BBZおよび7A12-28BBZ治療群では、いずれも腫瘍抑制効果が非常に明らかで、CAR T注射からD17日目に、7A12-28Z治療群では、7匹のマウスのうち、腫瘍がなくなったのは1匹で、7A12-BBZ治療群では、7匹のマウスのうち、腫瘍がなくなったのは2匹で、7A12-28BBZ治療群では、7匹のマウスは全部腫瘍がなくなったが、腫瘍抑制率はそれぞれ7A12-28Z(84.6%)、7A12-BBZ(65.4%)および7A12-28BBZ(100%)であった。
【0142】
実施例10.抗体23F10の改造
本実施例は、前記の23F10を親抗体とし、ファージディスプレイの方法によって23F10を改造した。23F10に基づいたファージライブラリーの構築は、軽鎖および重鎖のCDR3領域を残し、縮重プライマーによって、それぞれ軽鎖のCDR1およびCDR2または重鎖のCDR1およびCDR2をランダム化して2つのたファージライブラリーを構築した。プライマーの情報は以下の通りである。
【表2】
【0143】
2.1 23F10突然変異体の構築
まず、抗体23F10(scFv)(配列番号55)に基づいて鋳型プラスミドを構築した。軽鎖のCDR1およびCDR2がランダム化されたファージライブラリーに対し、プライマーLMFおよびBL1Rを使用し、PCRによって断片1を増幅させた。プライマーBL2FおよびFdRを使用し、PCRによって断片2を増幅させた。その後、ブリッジPCRによって断片1と断片2を連結してランダム化配列を含有する全長scFvを得た後、NcoIとNotIで全長断片を酵素切断し、T4リガーゼで同様に酵素切断された鋳型プラスミドに連結した。そして、TG1感受性細胞に電気的形質転換し、ライブラリー容量は1.50E+9であった。重鎖のCDR1およびCDR2がランダム化されたファージライブラリーに対し、プライマーLMFおよびBH1Rを使用し、PCRによって断片3を増幅させた。プライマーBH2FおよびFdRを使用し、PCRによって断片4を増幅させた。その後、ブリッジPCRによって断片3と断片4を連結してランダム化配列を含有する全長scFvを得た後、NcoIとNotIで全長断片を酵素切断し、T4リガーゼで同様に酵素切断された鋳型プラスミドに連結した。そして、TG1感受性細胞に電気的形質転換し、ライブラリー容量は2.2E+9であった。
【0144】
ファージライブラリーのスクリーニングは、本願の実施例3における方法を参照する。抗原BCMA_huFcの初期濃度は20nMで、5倍勾配希釈して次のスクリーニングを行った。スクリーニングを2-3サイクル行ってBCMA_huFcと特異的に結合するscFvファージクローンを濃縮させた。BCMA_huFcに対する標準ELISA方法によって陽性クローンを確認した。ELISAはヒトFc断片を無関連抗原として抗体の特異性を検証した。計80のELISA陽性のクローンを選び、再び誘導した後、biacoreによって誘導上清の解離定数Kdを測定した。中では、25C2、25D2の2つのクローンは親クローン23F10よりも10倍低く、下記表に示す。
【表3】
【0145】
シークエンシングした結果、クローン25C2および25D2の軽鎖は23F10と同様であった。図12は、クローン25C2、25D2および23F10の重鎖のアミノ酸配列を比較したもので、ここで、クローン25C2は親抗体23F10と比べ、重鎖に5つの点突然変異があり(配列番号56、57はそれぞれ25C2の重鎖可変領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列である)、中では、CDR1に2つあり、31番目のセリンがグリシンに、32番目のチロシンがアスパラギン酸に変わった。CDR2に2つあり、54番目のセリンがアスパラギンに、59番目のチロシンがフェニルアラニンに変わり、フレームワーク領域に1つあり、30番目のセリンがグリシンに変わった。クローン25D2は親抗体23F10と比べ、重鎖に4つの点突然変異があり(配列番号58、59はそれぞれ25D2の重鎖可変領域のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列である)、中では、3つがCDR2領域に位置し、54番目のセリンがグリシンに、57番目のセリンがアスパラギンに、59番目のチロシンがフェニルアラニンに変わり、フレームワーク領域に1つあり、30番目のセリンがアルギニンに変わった。
【0146】
25C2のHCDR1の配列は配列番号60で示され、25C2のHCDR2の配列は配列番号61で示される。25D2のHCDR1の配列は配列番号62で示され、25D2のHCDR2の配列は配列番号63で示される。25C32 scFvのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号64、65で示され、25D2 scFvのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号66、67で示される。
【0147】
2.2 クローン25C2、25D2(scFv_Fc)の発現・精製
実施例4の記載を参照し、VH上流に適切な酵素切断部位および保護塩基を導入し、VLの下流にに適切な酵素切断部位および保護塩基を導入した。1%アガロースゲル電気泳動によってPCR産物を分析し、そして精製して回収した。酵素切断後、ヒトFcセグメントを含有する真核発現ベクターV152(上海鋭勁生物技術有限公司から購入)に連結した。293Fectinによって293F細胞に一過性形質移入を行って発現させた。
【0148】
SECによって25C2、25D2の集合状況を分析した結果、図13Aおよび13Bに示すように、単量体の形態の抗体が占める比率はそれぞれ91%、97%であった。親抗体23F10(単量体率30%)と比べてそれぞれ61%および67%向上し、集合度が明らかに低下した。限外ろ過によって濃縮した後、SDS PAGEによって得られた抗体に対して定量と定性の分析を行った。収率はそれぞれ80 μg/mlおよび60 μg/mlであった(収率 = 最終産物の質量/形質移入体積)。
【0149】
2.3 クローン25C2、25D2の結合特性
安定してヒトBCMAを発現するK562細胞(K562-BCMA)およびK562を使用し、細胞を収集し、完全成長培地で細胞を洗浄し、約1~5×105細胞/ウェルで細胞をU底マイクロタイタープレートに敷いた。氷の上において、勾配希釈されたscFv_Fc融合抗体をK562-BCMA/K562と30分間インキュベートし、さらに二次抗体としてFITCで標識された抗ヒトFcとインキュベートした。2回の洗浄工程の後、Guava easyCyteTM HT System装置によって分析し、GraphPad Prismで実験データを処理し、EC50を得た。図4は、25C2、25D2とK562-BCMAおよびK562の結合状況を示す。結果から、安定性が向上し、集合度が低下した2つのクローン25C2、25D2のK562-BCMAとの結合能力EC50はそれぞれ2.594nMおよび1.891nMであったことが示された。23F10と比べ、3~4倍向上した。
【0150】
2.5 クローン25C2、25D2の特異性の測定
ELISAによって抗体23F10、25C2、25D2の特異性を測定した。
前日に2μg/mlの組み換えヒトBCMA_Fc、マウスBCMA_Fc、TACI_huFc(R&D, #174TC)、BAFF R(R&D, #1162-BR)を免疫プレートにコーティングし、4度で一晩置いた。翌日に300μl/ウェルの2%MPBSを入れて2時間ブロッキングした後、200nMの精製された抗体(scFv形態)を入れ、37度で1時間インキュベートし、PBST(0.05%Tween-20含有PBS)で3回洗浄し、PBSで3回洗浄した後、1:4000に希釈されたHRPで標識された抗Flagタブの抗体(sigma, #A8592-1MG)を入れ、37度で1時間インキュベートし、PBST(0.05%Tween-20含有PBS)で3回洗浄し、PBSで3回洗浄した。100μl/ウェルのTMBS基質を入れ、10-15分間呈色させ、50μlの2M硫酸を入れて反応を停止させた。
【0151】
結果は図14Bに示すように、抗体7A12、23F10、25C2、25D2は特異的にヒトBCMAと結合したが、ヒトTACIおよびヒトBAFF Rと結合しなかったことが示された。中では、抗体25C2、25D2はマウスBCMAと弱い結合があった。
【0152】
実施例11.25C2、25D2のCAR-T細胞の製造
実施例8の操作を参照し、それぞれ25C2、25D2のキメラ抗原受容体プラスミドを構築した。
a.25C2キメラ抗原受容体プラスミドの構築
PRRLSIN-cPPT.EF-1αをベクターとし、抗体25C2の二代目のキメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスプラスミドPRRLSIN-cPPT.EF-1α-25C2-BBZを構築した。PRRLSIN-cPPT.EF-1αをベクターとし、抗体25D2の二代目のキメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスプラスミドPRRLSIN-cPPT.EF-1α-25D2-BBZを構築した。
【0153】
25C2-BBZ配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、25C2 scFv(配列番号64)、CD8ヒンジ(配列番号25)および膜貫通領域(配列番号33)、CD137細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号35)およびCD3ξ( 配列番号31)からなる。
【0154】
25D2-BBZ配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、25D2 scFv(配列番号66)、CD8ヒンジ(配列番号25)および膜貫通領域(配列番号33)、CD137細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号35)およびCD3ξ( 配列番号31)からなる。
【0155】
実施例9の操作を参照し、それぞれプラスミドPRRLSIN-cPPT.EF-1α-25C2-BBZ、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-25D2-BBZに対してレンチウイルスパッケージング、T細胞感染、増幅を行い、キメラ抗原受容体で修飾されたT細胞25C2-BBZおよび25D2-BBZを得た。
【0156】
実施例12.可溶性PD1を発現するCAR-T細胞の製造
本実施例は、抗体7A12のscFvで可溶性PD1を発現するCAR-T細胞を製造した。製造方法は以下の通りである。
1.PD-1のシグナルペプチド配列(配列番号68)、PD-1細胞外領域配列(配列番号69)、CH3の配列(配列番号70)を全合成してTベクターにクローニングし、プラスミドT-sPD1-Fcを得た。
【0157】
T-sPD1-Fcプラスミドを鋳型とし、上流プライマー5’-acgcgtcctagcgctaccggtcgccaccatgcagatcccacaggcgccc-3’(配列番号71)、下流プライマー5’-ctctcggggctgcccaccatacaccagggtttggaactggc-3’(配列番号72)でPCRによって増幅したsPD1配列を得た、上流プライマー5’-tatggtgggcagccccgagagccacag-3’(配列番号73)、下流プライマー5’-aaaattcaaagtctgtttcactttacccggagacagggag-3’(配列番号74)で増幅してsPD1-CH3断片を得た。
【0158】
sPD1-CH3断片および7A12-BBZ(配列番号75)の断片をPCRによってライゲーションおよび増幅を行い、sPD1-CH3-7A12-BBZ、7A12-BBZの配列は、CD8αシグナルペプチド(配列番号23)、7A12 scFv(配列番号47)、CD8ヒンジ(配列番号25)および膜貫通領域(配列番号33)、CD137細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号35)およびCD3ξ( 配列番号31)からなる。
【0159】
上記構築断片sPD1-CH3-7A12-BBZの5’末端にMluI酵素切断部位が、3’末端にSalI酵素切断部位がある。MluIおよびSalIで二重酵素切断し、同様に二重酵素切断されたPRRLSIN-cPPT.EF-1αベクターに連結し、sPD-1-CH3タンパク質を発現するBCMAを標的とするキメラ抗原受容体のプラスミドを得た。
実施例9の操作を参照し、sPD1および7A12-BBZを発現するT細胞sPD-1-7A12-BBZを得た。
【0160】
実施例13.体外細胞殺傷実験
25C2-BBZ T細胞、25D2-BBZ T細胞、7A12-BBZ T細胞、C11D5.3-BBZ T細胞およびsPD-1-7A12-BBZ T細胞をエフェクター細胞として使用し、体外殺傷実験を行ったが、ここで、C11D5.3-BBZ(SEQ ID NO:87)は抗BCMAのマウス抗C11D5.3(CN201580073309.6を参照)で製造された第二世代CARであった。標的細胞はヒト骨髄腫細胞NCI-H929および多発性骨髄腫末梢血B細胞RPMI-8226であった。
【0161】
CytoTox 96非放射性細胞毒性検出キット(Promega社)で行われた。具体的な方法は、CytoTox 96非放射性細胞毒性検出キットの取扱説明書を参照する。
【0162】
エフェクター細胞対標的細胞比3: 1、1: 1または1: 3でそれぞれエフェクター細胞を96ウェルプレートに接種し、それぞれ50 μL 2×105/mLのNCI-H929およびRPMI-8226細胞を相応する9696ウェルプレートに接種した。
各群にいずれも5つの重複ウェルを設け、培養プレートをインキュベーターに置いて18hインキュベートした。
【0163】
ここで、各実験群および各対照群は以下のように設置した。実験群:各標的細胞+異なるキメラ抗原受容体を発現するT細胞;対照群1:標的細胞最大放出LDH;対照群2:標的細胞自発放出LDH;対照群3:エフェクター細胞自発放出LDH。計算式:%細胞毒性 = [(実験群:エフェクター細胞自発群:標的細胞自発群)/(標的細胞最大:標的細胞自発)]×100。
細胞殺傷の実験結果を図15に示す。
【0164】
実施例14.マウス体内細胞殺傷実験
それぞれ8×106のRPMI-8226細胞をB-NDGマウスの右側の脇下の皮下に接種し、腫瘍細胞を皮下接種してから18日目に、腫瘍体積が平均で約243mm3で、多発性骨髄腫末梢血B細胞RPMI8226を担持するB-NDGマウス皮下移植腫瘍モデルを得た。
【0165】
マウス皮下移植腫瘍モデルを3群に4匹ずつ分け、それぞれ25C2-BBZ、25D2-BBZ、および未形質移入T細胞(UTD)を注射投与量5×106で注射し、結果は下記表に示すように、それぞれ腫瘍細胞を接種してから32および36日目に、25C2-BBZおよび25D2-BBZ治療群では、4匹のマウスはいずれも腫瘍が全部なくなった。
【表4】
【0166】
マウス皮下移植腫瘍モデルを3群に4匹ずつ分け、それぞれ25C2-BBZ、25D2-BBZ、C11D5.3-BBZ、7A12-BBZおよび未形質移入のT細胞(UTD)をCAR T注射投与量1×106で注射し、結果は下記表に示すように、腫瘍がなくなる状況を下記表および図16に示す。
【表5】
【0167】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。

【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
図1
図2-A】
図2-B】
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15
図16
【配列表】
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