(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】インフルエンザBウイルス変異体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20230517BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230517BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230517BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20230517BHJP
C12N 15/44 20060101ALN20230517BHJP
【FI】
C12N7/01
A61P31/16
A61K39/39
A61K39/145
C12N15/44 ZNA
(21)【出願番号】P 2019546929
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 US2018019690
(87)【国際公開番号】W WO2018157047
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】320001259
【氏名又は名称】フルゲン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】モーザー マイケル ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】八田 寧子
(72)【発明者】
【氏名】ビルセル パムク
【審査官】中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/142671(WO,A2)
【文献】特表2011-505863(JP,A)
【文献】Cytoplasmic Domain of Influenza B Virus BM2 Protein Plays Critical Roles in Production of Infectious Virus,Journal of Virology,2008年,Volume 82, Number 2,pp. 728-739
【文献】Database GenBank [online],Accession No.CY033877.1, 21 Jul 2008, [検索日 2022.9.16]
【文献】Influenza B Virus BM2 Protein Is a Crucial Component for Incorporation of Viral Ribonucleoprotein Complex into Virions during Virus Assembly,Journal of Virology,2004年,Vol. 78, No. 20,p. 11007-11015
【文献】Influenza A Virus Lacking M2 Protein as a Live Attenuated Vaccine,Journal of Virology,2009年,Volume 83, Number 11,pp. 5947-5950
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
C12N 15/00- 15/90
A61P 31/16
A61K 39/39
A61K 39/145
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5を含む変異BM2遺伝子を有する組換えインフルエンザBウイルス。
【請求項2】
前記BM2遺伝子の変異が、ウイルスのBM2タンパク質発現の失敗をもたらすか、またはウイルスに切詰めBM2タンパク質を発現させる、請求項1に記載の組換えインフルエンザBウイルス。
【請求項3】
前記変異BM2遺伝子が、in vitro宿主細胞系で少なくとも10継代の間に野生型または機能
的なBM2タンパク質をコードする非野生型配列に復帰せず、ここで、当該宿主細胞は
機能的なインフルエンザ変異
BM2遺伝子を生成するように改変され、それによって
前記ウイルスに
機能的なインフルエンザ変異BM2遺伝子をトランスで
供給する、請求項1または2に記載の組換えインフルエンザBウイルス。
【請求項4】
前記ウイルスに感染した哺乳動物で免疫応答を引き出す、請求項1-3のいずれか1項に記載の組換えウイルス。
【請求項5】
前記ウイルスに感染した哺乳動物に対し非病原性である、請求項1-4のいずれか1項に記載の組換えウイルス。
【請求項6】
前記in vitro細胞系が、メイディン-ダービーイヌ腎(MDCK)細胞またはベロ細胞を含む、請求項3に記載の組換えウイルス。
【請求項7】
配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5を含む変異BM2遺伝子を有する組換えインフルエンザBウイルスを含む組成物。
【請求項8】
前記BM2遺伝子の変異が、ウイルスのBM2タンパク質発現の失敗をもたらすか、またはウイルスに切詰めBM2タンパク質を発現させる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ウイルスが、前記ウイルスに感染した哺乳動物で免疫応答を引き出す、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ウイルスが、前記ウイルスに感染した哺乳動物に対し非病原性である、請求項7-9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
さらにアジュバントを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
組換えインフルエンザBウイルスを増殖させる方法であって、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5を含む組換えインフルエンザ
Bウイルスと宿主細胞を接触させる工程;および当該宿主細胞を十分な時間およびウイルス複製に適切な条件下でインキュベートする工程を含み、ここで、当該宿主細胞は、
機能的なインフルエンザBM2遺伝子を生成するように改変され、それによって
前記ウイルスに
機能的なインフルエンザBM2遺伝子をトランスで
供給する、前記方法。
【請求項13】
さらに子孫ウイルス粒子を単離する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらにウイルス粒子をワクチンに処方する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ウイルスがBM2タンパク質を発現できないか、または切詰めBM2タンパク質を発現する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ウイルスが、前記ウイルスに感染した哺乳動物で免疫応答を引き出す、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルスが、前記ウイルスに感染した哺乳動物に対し非病原性である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記変異BM2遺伝子が、宿主細胞の少なくとも10継代の間に野生型または機能
的なBM2タンパク質をコードする非野生型配列に復帰しない、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記宿主細胞がMDCK細胞またはベロ細胞である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互引用)本出願は、米国出願No.62/463,994(2017年2月27日出願)(参照によってその全体が本明細書に含まれる)に対し優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザはアメリカ人成人の主要な死因である。毎年、約36000人がインフルエンザで死亡し、200,000人超が入院する。インフルエンザは高度に伝染性の疾患であり、咳、くしゃみ、およびウイルスを運ぶ物体(例えばドアノブおよび電話機)との直接的身体接触によって拡散される。インフルエンザの徴候は、例えば激しい倦怠感、頭痛、悪寒および身体痛を含み、感染者の約50%が無症状であるがなお伝染性である。免疫付与は、循環ウイルス株の抗原性がワクチンの抗原性と一致する限り、65歳以下の健康な人々のインフルエンザ予防に50-60パーセント有効である
ワクチン接種はインフルエンザ予防の主要な方法であり、生弱毒化および不活化(死滅)ウイルスワクチンの両方が現在利用可能である。生ウイルスワクチン(典型的には鼻内投与される)は免疫系の全ての相を活性化し、多数のウイルス抗原に対する免疫応答を刺激することができる。したがって、生ウイルスの使用は、不活化ウイルスワクチンの調製時に生じ得るウイルス抗原の破壊の問題を克服する。加えて、生ウイルスワクチンによって生じる免疫は、概して不活化ウイルス誘発免疫よりも持続性、有効性および交差反応性が高く、かつ生ウイルスワクチンは不活化ウイルスワクチンよりも製造コストが低い。しかしながら、弱毒化ウイルスの変異はしばしば不明確で復帰が懸念される。
【発明の概要】
【0003】
ある特徴では、本開示は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5を含む変異BM2遺伝子を有する組換えインフルエンザBウイルスを提供する。いくつかの実施態様では、BM2遺伝子における変異は、ウイルスのBM2タンパク質発現の失敗をもたらすか、またはウイルスに切詰めBM2タンパク質を発現させる。いくつかの実施態様では、変異BM2遺伝子は、in vitro宿主細胞系で少なくとも10継代の間は野生型または機能性BM2タンパク質をコードする非野生型配列に復帰(revert)せず、ここで、当該宿主細胞は変異遺伝子の機能性バージョンを生成するように改変され、それによってウイルスに遺伝子生成物をトランス態様で提供する。いくつかの実施態様では、組換えウイルスは、当該ウイルスに感染する哺乳動物で免疫応答を引き出す。いくつかの実施態様では、組換えウイルスは当該ウイルスに感染する哺乳動物に対し非病原性である。いくつかの実施態様では、in vitro細胞系は、メイディン-ダービー(Mardin-Darby)イヌ腎(MDCK)細胞またはベロ(Vero)細胞を含む。
ある特徴では、本開示は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5を含む変異BM2遺伝子を有する組換えインフルエンザBウイルスを含む組成物を提供する。いくつかの実施態様では、BM2遺伝子における変異は、ウイルスのBM2タンパク質発現の失敗をもたらすか、またはウイルスに切詰めBM2タンパク質を発現させる。いくつかの実施態様では、ウイルスは、当該ウイルスに感染する哺乳動物で免疫応答を引き出す。いくつかの実施態様では、ウイルスは当該ウイルスに感染する哺乳動物に対し非病原性である。いくつかの実施態様では、組成物はさらにアジュバントを含む。
【0004】
ある特徴では、本開示は組換えインフルエンザBウイルスを増殖させる方法を提供し、前記方法は、配列番号:1、配列番号: 2、配列番号:3、配列番号:4、または配列番号:5を含む組換えインフルエンザウイルスと宿主細胞を接触させる工程;および当該宿主細胞を十分な時間およびウイルス複製に適切な条件下でインキュベートする工程を含み、ここで、当該宿主細胞は、インフルエンザBM2遺伝子の機能性バージョンを生成するように改変され、それによってウイルスに遺伝子生成物をトランス態様で提供する。いくつかの実施態様では、当該方法はさらにまた子孫ウイルス粒子を単離する工程を含む。いくつかの実施態様では、当該方法はさらにウイルス粒子をワクチンに処方する工程を含む。いくつかの実施態様では、ウイルスはBM2タンパク質を発現できないか、または切詰めBM2タンパク質を発現する。いくつかの実施態様では、ウイルスは当該ウイルスに感染する哺乳動物で免疫応答を引き出す。いくつかの実施態様では、ウイルスは当該ウイルスに感染する哺乳動物に対し非病原性である。いくつかの実施態様では、変異BM2遺伝子は、少なくとも10継代の宿主細胞では野生型または機能性BM2タンパク質をコードする非野生型配列に復帰しない。いくつかの実施態様では、宿主細胞はMDCK細胞またはベロ細胞である。
【0005】
ある特徴では、本開示は組換えインフルエンザAウイルスを増殖させる方法を提供し、前記方法は、宿主細胞を配列番号:33を含む組換えインフルエンザAウイルスと接触させる工程;および当該宿主細胞を十分な時間およびウイルス複製に適切な条件下でインキュベートする工程を含み、ここで、当該宿主細胞は、インフルエンザBM2遺伝子の野生型バージョンを生成するように改変され、それによってウイルスにBM2遺伝子生成物をトランス態様で提供するMDCK細胞である。
ある特徴では、本開示は組換えインフルエンザAウイルスを増殖させる方法を提供し、前記方法は、宿主細胞を配列番号:33を含む組換えインフルエンザAウイルスと接触させる工程;および当該宿主細胞を十分な時間およびウイルス複製に適切な条件下でインキュベートする工程を含み、ここで、当該宿主細胞は、インフルエンザA M2並びに配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31および配列番号:32から成る群から選択されるインフルエンザB BM2遺伝子のキメラバージョンを生成するように改変され、それによってウイルスにキメラM2:BM2遺伝子生成物をトランス態様で提供するベロ細胞である。
ある特徴では、本開示は組換えインフルエンザAウイルスを増殖させる方法を提供し、前記方法は、宿主細胞を配列番号:33を含む組換えインフルエンザAウイルスと接触させる工程;および当該宿主細胞を十分な時間およびウイルス複製に適切な条件下でインキュベートする工程を含み、ここで、当該宿主細胞は、配列番号:27を含むBM2遺伝子のコドン最適化バージョンを生成するように改変され、それによってウイルスにBM2遺伝子生成物をトランス態様で提供するベロ細胞である。
ある特徴では、本開示は変異BM2タンパク質を含む組換えインフルエンザAウイルスを提供する。
ある特徴では、本開示は、組換えインフルエンザウイルスを増殖させるための宿主細胞を提供し、ここで、当該宿主細胞は、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31および配列番号:32から成る群から選択されるcDNA配列によってコードされる遺伝子生成物を生成するように改変されるベロ細胞である。いくつかの実施態様では、組換えインフルエンザウイルスは、配列番号:33に示される変異M2遺伝子を含むインフルエンザAウイルスである。いくつかの実施態様では、組換えインフルエンザウイルスは、配列番号:4または配列番号:6に示される変異BM2遺伝子を含むインフルエンザBウイルスであり、ここで、当該ベロ細胞は配列番号:27によってコードされる遺伝子生成物を生成するように改変される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】インフルエンザウイルスの生活環におけるBM2イオンチャネルの役割を示す図である。(1)インフルエンザウイルスが細胞表面のシアル酸受容体に付着する;(2)ウイルスが細胞内に内在化される;(3)BM2イオンチャネルがウイルス表面で発現される;(4)BM2イオンチャネルが開口してプロトンの進入を可能にしてウイルスRNAの放出をもたらし、RNAは核に入り複製してウイルスタンパク質の合成を生じる;さらに(5)ウイルス成分がビリオンにパッケージされ、放出される(6)。
【
図2】B/FL/04/2006の野生型(WT)および6つの変異BM2遺伝子(BM2SR(BM2SR-0としても知られている)、BM2SR-1、BM2SR-2、BM2SR-3、BM2SR-4、BM2SR-5)のインフルエンザゲノムセグメント7の模式図である。ペンタヌクレオチド翻訳終了-開始領域はTAATGによって示される。BM2SR-0およびBM2SR-1変異体はともにBM2オープンリーディングフレーム(ORF)の完全な欠失を含む。BM2SR-2変異体はBM2欠失を含み、M1翻訳調節エレメントは無傷である。BM2SR-3変異体はBM2 ORFの完全な欠失およびM1 M86V変異を含む。BM2SR-4変異体は部分的BM2欠失を含み、M1翻訳調節エレメントは無傷である。BM2SR-5変異体は部分的BM2欠失を含みM2翻訳調節エレメントは無傷で、M1 M86V変異を含む。
【
図3】MFold RNA折畳みアルゴリズムを用いてモデル化した、インフルエンザBセグメント7 mRNAペンタヌクレオチド領域の折畳みモデルを示す。ペンタヌクレオチド翻訳終了-開始領域は括弧で示される。野生型モデルはB/FL/04/2006のインフルエンザゲノムセグメント7を含む。BM2SR-1変異体はBM2オープンリーディングフレーム(ORF)の完全な欠失を含む。BM2SR-2変異体はBM2欠失を含みM1翻訳調節エレメントは無傷である。
【
図4】インフルエンザBタンパク質発現を示すウェスタンブロットである。野生型(WT)ベロ細胞に細胞当たり1を超える感染多重度(MOI)でインフルエンザBウイルス変異体を感染させた。B/Lee/1940およびB/Florida/4/2006を野生型コントロールとして用いた。感染から6時間後に細胞質タンパク質を抽出し、続いてSDS-PAGEに付しPVDFブロットへ移しかえた。以下の特異的な抗血清を用いてブロットを連続的にウェスタン分析で試験した:1)インフルエンザB HAタンパク質(上パネル);2)インフルエンザB M1タンパク質(中パネル);および3)哺乳動物GAPDHタンパク質ローディングコントロール(下パネル)。
【
図5A】B/Brisbane/60およびB/WI/01 HA:NA遺伝子を有するBM2SR変異ウイルスのBM2ベロ細胞における増殖曲線を示す図である。BM2ベロ細胞(BM2タンパク質を発現するベロ細胞)で増殖したインフルエンザB BM2SRウイルスの培養を、BM2ベロ培養上清のTCID
50力価測定によってウイルス複製について試験した。力価測定は、BM2CK細胞(BM2を発現するメイディン-ダービーイヌ腎(MDCK)細胞)で実施した。B/Brisbane/60/2008(B/Bris/60)のHAおよびNAを発現する6つのBM2SR変異ウイルス(#7、#8、#9、#15、#21および#33)、並びにB/Wisconsin/01/2010(B/WI/01)のHAおよびNAを発現する6つのBM2SRウイルス(#10、#11、#12、#16、#23および#24)を試験した。変異ウイルス#21、#22、#23および#24と比較して、変異ウイルス#7、#8、#9、#11および#12はより大きな欠失(すなわちより短いmRNA配列)を含み、より遅い増殖を示す。
【
図5B】B/Brisbane/60およびB/WI/01 HA:NA遺伝子を有するBM2SR変異ウイルスのBM2ベロ細胞における増殖曲線を示す図である。BM2ベロ細胞(BM2タンパク質を発現するベロ細胞)で増殖したインフルエンザB BM2SRウイルスの培養を、BM2ベロ培養上清のTCID
50力価測定によってウイルス複製について試験した。力価測定は、BM2CK細胞(BM2を発現するメイディン-ダービーイヌ腎(MDCK)細胞)で実施した。B/Brisbane/60/2008(B/Bris/60)のHAおよびNAを発現する6つのBM2SR変異ウイルス(#7、#8、#9、#15、#21および#33)、並びにB/Wisconsin/01/2010(B/WI/01)のHAおよびNAを発現する6つのBM2SRウイルス(#10、#11、#12、#16、#23および#24)を試験した。変異ウイルス#21、#22、#23および#24と比較して、変異ウイルス#7、#8、#9、#11および#12はより大きな欠失(すなわちより短いmRNA配列)を含み、より遅い増殖を示す。
【
図6A】BM2SR-WI01(すなわちB/Wisconsin/01/2010のHAおよびNAを発現するBM2SR)のBM2CKにおける安定性を示す図である。
【
図6B】BM2SR-WI01(すなわちB/Wisconsin/01/2010のHAおよびNAを発現するBM2SR)のMDCK細胞における安定性を示す図である。
【
図7】BM2SR-0変種(配列番号:6を含む変異BM2遺伝子を有するBM2SR-Bris60およびBM2SR-WI01)を接種した後のマウスの体重変化を示す図である。
【
図8A】配列番号:6を含む変異BM2遺伝子を有するBM2SR-0変種(BM2SR-Bris60およびBM2SR-WI01)を接種したマウスの抗HA IgG抗体応答を示す図である。血清サンプルをプライム接種後7、14および21日目、並びに28日目の二回目免疫後35、42および49日目に収集した。
【
図8B】配列番号:6を含む変異BM2遺伝子を有するBM2SR-0変種(BM2SR-Bris60およびBM2SR-WI01)を接種したマウスの抗HA IgG抗体応答を示す図である。血清サンプルをプライム接種後7、14および21日目、並びに28日目の二回目免疫後35、42および49日目に収集した。
【
図9】M2不完全インフルエンザA M2SR(A/CA/07 M2SRおよびA/Brisbane/10 M2SR)およびBM2不完全インフルエンザB M2SR(B/WI/01 BM2SRおよびB/Brisbane/60 BM2SR)株のM2-およびBM2-発現MDCK細胞基材(M2CKおよびBM2CK)における増殖を示す図である。
【
図10】インフルエンザA M2およびインフルエンザB M2(BM2)キメラ融合構築物を示す模式図である。
【
図11】BM2不完全インフルエンザB(BM2SR)ウイルスのレスキューを支援するM2およびBM2キメラの能力を示す図である。BM2不完全ウイルスは、293T細胞でM2のキメラ型を一過性に供給するプラスミドを用いて標準的インフルエンザレスキュー技術によって作出された。293TインフルエンザB BM2SR RG上清によって生産的感染が生じたBM2CK TC96ウェルのパーセンテージをWHO HAアッセイによって決定した。
【
図12】コドン最適化野生型BM2およびキメラM2タンパク質のウェスタンブロット分析を示す。全てのM2タンパク質は用いられたSDS-PAGE系で移動度の変化を示し、計算分子量(MW)よりも約5,000ダルトン大きく見える。変異体ABB、AAB、AA2FBはより大きなインフルエンザAエクトドメインを含み、したがって対応してより大きな見かけのMWでSDS-PAGEで移動する。
【
図13】インフルエンザA/Brisbane/10 M2SRおよびインフルエンザB/Brisbane/60 M2SR M2不完全ウイルス感染から6日後の、インフルエンザA M2:インフルエンザB M2(AM2:BM2)キメラタンパク質を発現するベロ細胞基材におけるM2不完全インフルエンザA CA/07/H1N1pdm M2SRのウイルス力価を示す図である。
【
図14】M2発現M2CKおよびBM2発現ベロ細胞基材におけるM2不完全インフルエンザA CA/07/H1N1pdm M2SRの増殖を示す図である。
【
図15A】インフルエンザAマトリックスM1のイムノブロットである。
【
図15B】M2発現M2CKおよびBM2発現BM2ベロ細胞基材で生成されたインフルエンザA M2SRウイルスのM2タンパク質含有量および同一性を示すウェスタンブロットである。
【
図16A】多価処方物中のM2SRおよびBM2SR変異体はインフルエンザAおよびインフルエンザBウイルスに対し抗体応答を引き出すことを示す図である。代表的M2SRおよびBM2SR構築物:A/MA15はH1N1 M2SRである;A/HK4801はH3N2 M2SRである;B/CA12はB Yamagata BM2SR-4である;B/Bris46はB Victoria BM2SR-4である。四価(“quad”)処方物は4つ全ての混合物である。三価(“tri”)は表示の3つのウイルスの処方物である。
【
図16B】多価処方物中のM2SRおよびBM2SR変異体はインフルエンザAおよびインフルエンザBウイルスに対し抗体応答を引き出すことを示す図である。代表的M2SRおよびBM2SR構築物:A/MA15はH1N1 M2SRである;A/HK4801はH3N2 M2SRである;B/CA12はB Yamagata BM2SR-4である;B/Bris46はB Victoria BM2SR-4である。四価(“quad”)処方物は4つ全ての混合物である。三価(“tri”)は表示の3つのウイルスの処方物である。
【
図16C】多価処方物中のM2SRおよびBM2SR変異体はインフルエンザAおよびインフルエンザBウイルスに対し抗体応答を引き出すことを示す図である。代表的M2SRおよびBM2SR構築物:A/MA15はH1N1 M2SRである;A/HK4801はH3N2 M2SRである;B/CA12はB Yamagata BM2SR-4である;B/Bris46はB Victoria BM2SR-4である。四価(“quad”)処方物は4つ全ての混合物である。三価(“tri”)は表示の3つのウイルスの処方物である。
【
図16D】多価処方物中のM2SRおよびBM2SR変異体はインフルエンザAおよびインフルエンザBウイルスに対し抗体応答を引き出すことを示す図である。代表的M2SRおよびBM2SR構築物:A/MA15はH1N1 M2SRである;A/HK4801はH3N2 M2SRである;B/CA12はB Yamagata BM2SR-4である;B/Bris46はB Victoria BM2SR-4である。四価(“quad”)処方物は4つ全ての混合物である。三価(“tri”)は表示の3つのウイルスの処方物である。
【
図16E】一価BM2SR、三価および四価処方物の接種後に致死用量のインフルエンザBでチャレンジした後のマウスの体重変化を示す図である。
【
図16F】一価BM2SR、三価および四価処方物の接種後に致死用量のインフルエンザBでチャレンジした後のマウスの生存を示す図である。
【
図17A】BM2タンパク質(
図17A)およびBM1タンパク質(
図17B)についてB/Lee/40と現代のインフルエンザBウイルスとの間の進化的関係を示す系統樹である。
【
図17B】BM2タンパク質(
図17A)およびBM1タンパク質(
図17B)についてB/Lee/40と現代のインフルエンザBウイルスとの間の進化的関係を示す系統樹である。
【
図18】BM2SRおよび四価ワクチンのインフルエンザAおよびインフルエンザB抗原に対して引き出される酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)力価を示す図である。
【
図19A】BM2SRおよび四価ワクチンのインフルエンザAおよびインフルエンザB抗原に対して引き出される血球凝集阻害(HAI)力価を示す図である。
【
図19B】BM2SRおよび四価ワクチンに対して引き出される接種後35日目のプール血清中のHAI力価を示す表である。
【
図20】インフルエンザAチャレンジ後1、3、5および7日目の鼻洗浄物のウイルス力価を示す図である。
【
図21A】インフルエンザAチャレンジ後3日目の鼻甲介組織のウイルス力価を示す図である。
【
図21B】インフルエンザAチャレンジ後3日目の気管組織のウイルス力価を示す図である。
【
図21C】インフルエンザAチャレンジ後3日目の肺組織のウイルス力価を示す図である。
【
図22A】ベロ(WT Vero)、M2発現ベロ(M2VeroA)、およびBM2発現(BM2Vero)ベロ細胞株に野生型インフルエンザA/Hong Kong/2014(H3N2)およびM2SR A/Hong Kong/2014(H3N2)ウイルスを0.001のMOIで感染させた結果を示す図である。培養上清のアリコットを接種後複数の時点(t=1、2、3、4日)で採取し、凍結した。アリコットをM2CK細胞でTCID
50アッセイによりウイルス複製について試験した。検出可能な複製がないサンプルをlog
10 TCID
50=1.67としてプロットした。アッセイ検出限界のlog
10 TCID
50=1.67は点線で示される。
【
図22B】ベロ(WT Vero)、M2発現ベロ(M2VeroA)、およびBM2発現(BM2Vero)ベロ細胞株に野生型インフルエンザB/CA/12/2015(YL)およびBM2SR4 B/CA/12/2015ウイルスを0.001のMOIで感染させた結果を示す図である。ウイルス培養上清のアリコットを接種後複数の時点(t=1、2、3、4日)で採取し、凍結した。アリコットをBM2CK細胞でTCID
50アッセイによりウイルス複製について試験した。検出可能な複製がないサンプルをlog
10 TCID
50=1.50としてプロットした。アッセイ検出限界のlog
10 TCID
50=1.50は点線で示される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
I.定義
以下の用語が本明細書で用いられ、それらの定義が指針のために提供される。
本明細書で用いられるように、単数形“a”、“an”および“the”は、単数のみを指すと明確に表明されないかぎり単数および複数の両方を指す。
“about(約)”という用語および一般的に範囲の使用(約という用語によって修飾されているか否かにかかわらない)は、包含される数が本明細書に指示される数そのものに限定されず、実質的に当該引用された範囲内の範囲を指すことが意図されるが、ただし本発明の範囲から逸脱しない。本明細書で用いられるように、“約”は当業者には理解され、当該用語が用いられる文脈にしたがってある程度変動するであろう。当業者にとって不明瞭に当該用語が使用されている場合、その用語が用いられている文脈を条件として、“約”はまさにその用語のプラスまたはマイナス10%までを指すであろう。
【0008】
本明細書で用いられるように、ウイルスと一緒に用いられる“弱毒化”という用語は、非弱毒化対応ウイルスと比較して緩和された病毒性または病原性を有するが、なお生存活性を有するかまたは生きているウイルスを指す。典型的には、弱毒化は、感染性因子、例えばウイルスを、非弱毒化ウイルスと比較して感染対象動物に対し低有害性または低病毒性にする。このことは、死滅または完全に不活化されたウイルスとは対照的である。
【0009】
本明細書で用いられるように、“有効な量”または“治療的に有効な量”または“医薬的に有効な量”という用語は、所望の治療的および/または予防的作用を達成するために十分な量、例えば疾患、症状および/またはその徴候の防止をもたらす量を指す。治療的または予防的適用という文脈では、対象動物に投与される組成物の量は、当該疾患のタイプおよび重篤度、並びに個体の特徴、例えば一般的健康状態、年齢、性別、体重および配合薬剤に対する耐性に左右されるであろう。有効量はまた、疾患または症状の段階、重篤度およびタイプに左右されるであろう。当業者は、これらの要件および他の要件に応じて適切な投薬量を決定することができる。いくつかの実施態様では、マルチ用量が投与される。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、複数の治療組成物または化合物(例えば免疫原性組成物、例えばワクチン)が投与される。
【0010】
本明細書で用いられるように、“宿主細胞”という用語は、病原体(例えばウイルス)が複製できる細胞を指す。いくつかの実施態様では、宿主細胞はin vitro、培養細胞(例えばCHO細胞、ベロ細胞、MDCK細胞など)である。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、宿主細胞はin vivoで存在する(例えば、感染している脊椎動物(例えばトリまたは哺乳動物)の細胞)。いくつかの実施態様では、宿主細胞は改変して、例えばウイルス生産を強化することができる。前記ウイルス生産強化は、例えば宿主細胞のウイルス感染の強化および/またはウイルス増殖速度の強化による。制限ではなく例として、例示的な宿主細胞改変には以下が含まれる:宿主細胞の細胞表面における2-6結合シアル酸受容体の組換え発現、および/または病原体またはウイルスで欠如させられまたは無効にされてあるタンパク質の宿主細胞における組換え発現。
【0011】
“免疫原性組成物”という用語は、当該組成物に暴露された哺乳動物で免疫応答を引き出す組成物を指すために本明細書では用いられる。いくつかの実施態様では、免疫原性組成物は、5つのBM2不完全インフルエンザB BM2SR変異体(例えばBM2SR-1、BM2SR-2、BM2SR-3、BM2SR-4、BM2SR-5)の少なくとも1つを含む。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の免疫原性組成物は、多数の形態で投与されるために処方することができる(すなわち哺乳動物への“暴露”のために処方される)。例えば、いくつかの実施態様では、免疫原性組成物は、経口、肺、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、鼻、または外用投与のために調製される。組成物はまた特別な投薬形態のために処方することができる。例えば、いくつかの実施態様では、免疫原性組成物は、液体、ゲル、エーロゾル、軟膏、クリーム、凍結乾燥処方物、散剤、ケーキ、錠剤、またはカプセルとして処方することができる。他の実施態様では、免疫原性組成物は、制御放出処方物、徐放性処方物、長期放出処方物、拍動放出処方物、および混合即時放出処方物として処方される。いくつかの実施態様では、免疫原性組成物は液体として提供される。他の実施態様では、免疫原性組成物は凍結乾燥形で提供される。
【0012】
本明細書で用いられるように、“感染した”という用語は、疾患または病原体(例えばウイルス)を保有することを指す。感染は、意図的でも(例えばウイルスまたは病原体を付与することによって(例えばワクチン接種によって))、非意図的でも(例えばある生物から別の生物へまたは汚染表面から当該生物へ自然な病原体の移動によって)可能である。
【0013】
本明細書で用いられるように、“単離された”および/または“精製された”という用語は、望ましくないin vivo物質と結びつかないように、または通常一緒に存在する望ましくないin vivo物質から実質的に精製されるように、核酸(例えばベクターまたはプラスミド)、ポリペプチド、ウイルスまたは細胞をin vitroで調製、単離および/または精製することを指す。例えば、いくつかの実施態様では、単離されたウイルス調製物はin vitro培養および増殖によって入手され、他の感染性因子を実質的に含まない。本明細書で用いられるように、“実質的に含まない”とは、特定の化合物(例えば、望ましくない核酸、タンパク質、細胞、ウイルス、感染性因子など)について、当該化合物または因子の標準的検出方法を用いたとき検出レベル以下であることを意味する。
【0014】
本明細書で用いられるように、“変異体”、“変異”および“変種”という用語は互換的に用いられ、野生型配列とは異なる核酸またはポリペプチド配列を指す。いくつかの実施態様では、変異体または変種配列は天然に存在する。他の実施態様では、変異体または変種配列は組換えによりおよび/または化学的に導入される。いくつかの実施態様では、核酸の変異は、RNAおよび/またはDNA配列に対する改変(例えば付加、欠失、置換)を含む。いくつかの実施態様では、改変は化学的改変(例えばメチル化)を含み、さらに天然および/または非天然ヌクレオチドによる置換または付加を含むことができる。核酸の変異はサイレント変異でもよく(例えば野生型配列と同じアミノ酸をコードする1つ以上の核酸の変化)、またはコードされるアミノ酸に変化を生じても、終止コドンを生じてもよく、またはスプライシング欠損若しくはスプライシング変更を導入することもできる。コード配列への核酸変異はまた保存的または非保存的アミノ酸変化をもたらすことができる。
【0015】
本明細書で用いられるように、“組換えウイルス”という用語は、例えば組換え核酸技術を用いてin vitroで操作して、ウイルスゲノムに変化を導入した、および/またはウイルスタンパク質に変化を導入したウイルスを指す。例えば、いくつかの実施態様では、組換えウイルスは、野生型(内因性)核酸配列および変異体配列および/または外因性核酸配列の両方を含むことができる。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、組換えウイルスは、改変タンパク質成分、例えば変異体若しくは変種マトリックス、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼ、核タンパク質、非構造性および/またはポリメラーゼタンパク質を含むことができる。
【0016】
本明細書で用いられるように、“組換え細胞”または“改変細胞”という用語は、例えば組換え核酸技術を用いてin vitroで操作して、細胞に核酸を導入したおよび/または細胞核酸を改変した細胞を指す。組換え細胞の例には、外因性プラスミド、発現ベクターなどを保持する原核または真核細胞、および/またはそれらの細胞性核酸に改変(例えば細胞ゲノムへの置換、変異、挿入、欠失など)を含む細胞が含まれる。例示的な組換え細胞は、in vitroで操作されて安定的に外因性タンパク質(例えばウイルスBM2タンパク質)を発現する細胞である。
【0017】
本明細書で用いられるように、“一回複製(SR)ウイルス”という用語は、宿主細胞のウイルス侵入または宿主細胞からの放出で機能するビリオンタンパク質に欠陥があるウイルスを指す。例えば、本明細書に記載するM2SRは、古典的な生弱毒化インフルエンザワクチンとは対照的な一回複製(SR)ウイルスワクチンの新規なクラスに属する。SRウイルスは、ウイルスの侵入または放出で機能し、ウイルスゲノムの複製に影響を与えないがウイルス増殖に不可欠であるビリオンタンパク質(例えばflu M2イオンチャネルタンパク質)に欠陥が存在する。対照的に、伝統的な弱毒化生ウイルスワクチンはウイルス複製機構に複数の変異を含み、高度に弱毒化された表現型を生じる。SRワクチンウイルスのメカニズムは、したがって弱毒化生ワクチンとは対照的にウイルス感染カイネティクスおよび抗原生産には影響を与えない。
【0018】
本明細書で用いられるように、“対象動物”および“患者”は互換的に用いられ、前記は動物(例えば任意の脊椎動物種のメンバー)を指す。本開示の主題である方法および組成物は温血脊椎動物(哺乳動物および鳥類を含む)のために特に有用である。例示的な対象動物には、哺乳動物、例えば人間が哺乳動物および鳥類とともに含まれ、前記動物および鳥類は、絶滅に瀕しているがゆえに重要な、経済的に重要な(人間の消費のために農場で飼育される動物)、および/または人間にとって社会的に重要な(ペットとしてまたは動物園で維持される動物)ものである。いくつかの実施態様では、対象動物は人間である。いくつかの実施態様では、対象動物は人間ではない。
【0019】
本明細書で用いられるように、ウイルスと一緒に用いられる“型”および“株”という用語は互換的に用いられ、一般的には異なる特徴を有するウイルスを指すために用いられる。例えば、インフルエンザAウイルスはインフルエンザBウイルスとは異なる型のウイルスである。同様に、インフルエンザA H1N1は、インフルエンザA H2N1、H2N2およびH3N2とは異なる型のウイルスである。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、異なる型のウイルス、例えばインフルエンザA H2N1、H2N2およびH3N2は、2つのウイルスのトランスメンブレンタンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の抗原性相違を基準にして“亜型”と呼ぶことができる。B型ウイルスの2つの近縁な系統(B/VictoriaおよびB/Yamagata)は人間で循環しているインフルエンザBウイルスの例である。
【0020】
“ワクチン”という用語は、本明細書では、対象動物に投与されて特定の疾患に対する免疫を生じるか、または免疫を高める組成物を指すために用いられる。いくつかの実施態様では、ワクチンは医薬的に許容できるアジュバントおよび/または医薬的に許容できる担体を含む。
本明細書で用いられるように、“vRNA”という用語はウイルスゲノムを含むRNAを指し、前記には分断化または非分断化ウイルスゲノムがプラス鎖およびマイナス鎖のウイルスゲノムとともに含まれる。vRNAは、完全に内因性で“野生型”であってもよく、および/または組換え体および/または変異体配列を含んでいてもよい。
【0021】
本明細書で用いられるように、“BM2SR-1”は、前記が用いられる文脈に応じて、配列番号:1、配列番号:1を含むウイルス、または配列番号:1を含むウイルスを含むワクチンを指す。例えば、本明細書で示されるBM2遺伝子の変異を記載するとき、“BM2SR-1”は配列番号:1を指す。本明細書で用いられるように、“BM2SR-2”は、前記が用いられる文脈に応じて、配列番号:2、配列番号:2を含むウイルス、または配列番号:2を含むウイルスを含むワクチンを指す。例えば、本明細書で示されるBM2遺伝子の変異を記載するとき、“BM2SR-2”は配列番号:2を指す。本明細書で用いられるように、“BM2SR-3”は、前記が用いられる文脈に応じて、配列番号:3、配列番号:3を含むウイルス、または配列番号:3を含むウイルスを含むワクチンを指す。例えば、本明細書で示されるBM2遺伝子の変異を記載するとき、“BM2SR-3”は配列番号:3を指す。本明細書で用いられるように、“BM2SR-4”は、前記が用いられる文脈に応じて、配列番号:4、配列番号:4を含むウイルス、または配列番号:4を含むウイルスを含むワクチンを指す。例えば、本明細書で示されるBM2遺伝子の変異を記載するとき、“BM2SR-4”は配列番号:4を指す。本明細書で用いられるように、“BM2SR-5”は、前記が用いられる文脈に応じて、配列番号:5、配列番号:5を含むウイルス、または配列番号:5を含むウイルスを含むワクチンを指す。例えば、本明細書で示されるBM2遺伝子の変異を記載するとき、“BM2SR-5”は配列番号:5を指す。本明細書で用いられるように、“BM2SR-0”は、前記が用いられる文脈に応じて、配列番号:6、配列番号:6を含むウイルス、または配列番号:6を含むウイルスを含むワクチンを指す。例えば、本明細書で示されるBM2遺伝子の変異を記載するとき、“BM2SR-0”は配列番号:6を指す。特段の記載がなければ、“BM2SR”はBM2SR-0を指す。
【0022】
インフルエンザBウイルス
A.概論
インフルエンザはアメリカ人成人の主要な死因である。インフルエンザの原因因子はオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のウイルスであり、前記にはインフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、およびインフルエンザCウイルスが含まれ、インフルエンザBが人間でほぼ独占的に循環している。
インフルエンザBウイルスは、エンベロープを有するマイナス鎖RNAウイルスである。インフルエンザBウイルスのゲノムは8つの一本鎖(対を持たない)RNAに収納され、その相補鎖は11のタンパク質をコードする。これらのタンパク質のうち、以下の9つはインフルエンザAウイルスでもまた見出される:3つのRNA依存RNAポリメラーゼサブユニット(PB1、PB2およびPA)、ヘマグルチニン(HA)、核タンパク質(NP)、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリックスタンパク質(M1またはBM1)、および2つの非構造タンパク質(NS1およびNS2(NEPとしても知られる))。2つのタンパク質(NBおよびBM2)はインフルエンザBウイルスに固有である。総ゲノムサイズは約14,500塩基である。ゲノム分断化の特性は、細胞が共同で生存するときに異なるウイルス株間での全遺伝子の交換(再集合として知られるプロセス)を可能にする。8つのRNAセグメント(長さが減少する順に番号が振られている)は以下のとおりである:セグメント1、2および3はPB1、PB2およびPAをそれぞれコードし、前記はRNAポリメラーゼサブユニットである。セグメント4はHA(ヘマグルチニン)をコードする。セグメント5はNP(核タンパク質)をコードする。セグメント6はNB(NBタンパク質(その機能は不明である))およびNAの両方をコードする。セグメント7は、二シストロン性mRNA(その翻訳方法は固有である)によってBM1(マトリックスタンパク質)およびBM2(イオンチャネル)の両方をコードする。BM2開始コドンはBM1終止コドンとオーバーラップする(TAATG、終了-開始ペンタヌクレオチドモチーフ)。BM2タンパク質は、インフルエンザAウイルスのM2タンパク質(スプライシングされたmRNAから翻訳される)とは異なりこの終了-開始翻訳メカニズムによって翻訳される。セグメント8は、同じRNAセグメントに由来する異なるリーディングフレームを用いることによってNS1およびNEPの両方をコードする。
【0023】
インフルエンザAおよびBはともに抗原ドリフトプロセスによって時間の経過にしたがって抗原的に発達した。抗原ドリフトでは、ヘマグルチニン(HA)タンパク質の変異はウイルスが人間の既存の免疫から逃れ人間の集団で存続することを可能にする。インフルエンザAのいくつかの亜型が存在し、Hの番号(ヘマグルチニンの型)およびNの番号(ノイラミニダーゼの型)にしたがって名付けられる。現在のところ、16の異なるH抗原が知られ(H1からH16)、9つの異なるN抗原(N1からN9)が知られている。各ウイルス亜型が種々の病原性プロフィールを有する多様な株に変異してきた。いくつかは1つの種にとって病原性であるが他の種には病原性ではなく、いくつかは複数の種に対して病原性である。人間で確認されている例示的なインフルエンザAウイルス亜型には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):H1N1(“スペインかぜ”および2009年のブタかぜの大発生を引き起こした);H2N2(1950年代後期に“アジアかぜ”を引き起こした);H3N2(1960年代後期にホンコンかぜを引き起こした);H5N1(2000年代中頃の拡散による世界的インフルエンザ大流行の脅威と考えられる);H7N7;H1N2(これまでのところ人間とブタで流行性である);およびH9N2、H7N2、H7N3、H5N2、H10N7。インフルエンザBは亜型に分かれてはいないが、しかしながら2つの抗原的および遺伝的に別個の系統があり、後にビクトリア(Victoria)およびヤマガタ(Yamagata)と命名された株B/Victoria/2/87およびB/Yamagata/16/88が現在人間で循環している。
インフルエンザウイルスは標準的命名法を有し、前記はウイルス型、当該ウイルスが単離された種(非ヒトの場合)、それが単離された場所、単離株番号、単離年、並びにインフルエンザAウイルスの場合のみHAおよびNA亜型を含む。したがって、B/Yamagata/16/88は、1988年に山形(日本)で採取されたヒトインフルエンザBウイルスの単離株番号16であった。
【0024】
B.生活環と構造
インフルエンザウイルスの生活環は、おおざっぱに言って細胞表面受容体への付着、細胞への侵入およびウイルス核酸の脱外被、その後に続く細胞内でのウイルス遺伝子の複製を含む。ウイルスタンパク質および遺伝子の新しいコピーの合成後、これらの成分は子孫ウイルス粒子に組み立てられ、前記粒子は続いて細胞から出ていく。種々のウイルスタンパク質がこれらの工程の各々で役割を果たす。
インフルエンザB粒子は、ウイルスコアを被包する脂質エンベロープで構成される。エンベロープの内側はマトリックスタンパク質(M1)で裏打ちされ、一方、外側表面は2つのタイプの糖タンパク質スパイク(ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA))によって特徴付けられる。BM2(トランスメンブレンイオンチャネルタンパク質)もまた脂質エンベロープの部分である(例えば
図1を参照されたい)。
【0025】
HAタンパク質(トリマー性I型膜タンパク質)は、宿主細胞表面の糖タンパク質または糖脂質上のシアリルオリゴ糖(ガラクトースと結合した末端シアル酸を含むオリゴ糖)との結合に必要である。このタンパク質はまた、ウイルス膜と宿主細胞膜との間の融合とその後のエンドサイトーシスによるビリオンの内在化に必要である。
ノイラミニダーゼ(NA)(テトラマー性II型膜タンパク質)はシアリダーゼであり、前記は、宿主細胞の糖複合化物並びにHAおよびNAから末端シアル酸残基を切断し、したがって受容体破壊酵素として認識される。このシアリダーゼ活性は、宿主細胞表面の子孫ビリオンの効率的放出とともに、ウイルスHAの他の糖タンパク質との結合活性による子孫の凝集の防止に必要である。したがって、HAの受容体結合活性とNAの受容体破壊活性はおそらく拮抗的に働き、インフルエンザの効率的な複製を可能にする。
【0026】
ゲノムセグメントはウイルス粒子のコアにパッケージされる。RNP(RNA+核タンパク質(NP))は、各セグメントと結合した3つのウイルスポリメラーゼポリペプチドとのヘリックス形として存在する。
インフルエンザウイルスの生活環は、宿主細胞表面のシアル酸含有受容体とHAとの結合により開始し、その後に受容体媒介エンドサイトーシスが続く(
図1)。後期エンドソームの低pHはHAの配座シフトを始動させ、それによってHA2サブユニット(いわゆる融合ペプチド)のN-末端を露出させる。前記融合ペプチドはウイルス膜とエンドソーム膜との融合を開始し、マトリックスタンパク質(M1)およびRNP複合体が細胞質中に放出される。RNPは、核タンパク質(NP)(前記はvRNAをキャプシド被包する)、およびウイルスポリメラーゼ複合体(PA、PB1およびPB2タンパク質によって形成される)から成る。RNPは核に輸送され、核で転写及び複製が行われる。RNAポリメラーゼ複合体は3つの異なる反応を触媒する:(1)5’キャップおよび3’ポリA構造を有するmRNAの合成、(2)完全長相補性RNA(cRNA)の合成、および(3)鋳型としてcDNAを用いるゲノムvRNAの合成。新規に合成されたvRNA、NPおよびポリメラーゼタンパク質を続いてRNPに組み立て、核から搬出し、形質膜へ輸送し、形質膜で子孫ウイルス粒子の出芽が生じる。ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質は、シアリルオリゴ糖からシアル酸を除去し、したがって新規に組み立てられたビリオンを細胞表面から放出し、さらにウイルス粒子の自己凝集を防止することによって感染後期に役割を果たす。ウイルスの組立てはタンパク質-タンパク質相互作用およびタンパク質-vRNA相互作用を必要とするが、これら相互作用の本質はほとんど不明のままである。
【0027】
C.BM2タンパク質の役割
上記に記載したように、3つのタンパク質(ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)およびBM2)がウイルス膜を跨いでいる。インフルエンザAに関しては、HAおよびNAの細胞外ドメイン(エクトドメイン)にはかなりの変動性があるが、M2のエクトドメインはインフルエンザAウイルス間で本質的に不変である。理論に拘束されないが、インフルエンザAウイルスでは、M2タンパク質(イオンチャネル活性を有する)は、宿主細胞貫通およびウイルスRNA脱外被の間のウイルス生活環の初期に機能すると考えられる。いったんビリオンがエンドサイトーシスを受けたら、ビリオン結合M2イオンチャネル(ホモテトラマーヘリックス束)は、プロトンがエンドソームからビリオン内部に流れることを可能にして、酸に不安定なM1タンパク質-リボヌクレオタンパク質複合体(RNP)相互作用を破壊し、それにより細胞質へのRNP放出を促進すると考えられている。加えて、HAが細胞内で切断されるいくつかのインフルエンザ株(例えばA/fowl plagues/Rostock/34)では、M2イオンチャネルは、トランスゴルジ網のpHを高め、この区画内の低pH条件に起因するHAの配座変化を防ぐと考えられる。M2トランスメンブレンドメインそれ自体がイオンチャネルとして機能できるということもまた示された。M2タンパク質イオンチャネル活性は、インフルエンザウイルスの生活環で必須であると考えられる。なぜならば、アマンタジン塩酸塩(M2イオンチャネル活性を遮断する)がウイルス複製を阻害することが示されたからである。
インフルエンザAウイルスM2タンパク質に対するインフルエンザBウイルスの機能的対応物は、BM2として知られるIII型トランスメンブレンタンパク質である。その翻訳のためのメカニズムは、下記に記載する、連結終了/再開始事象を必要とする。
【0028】
III.BM2ウイルス変異体
ある特徴では、変異BM2 vRNA配列を保持するインフルエンザBウイルスが開示される。典型的には、そのような変異体はBM2イオンチャネル活性を持たず、in vivoで弱毒化された増殖特性を示し、感染性子孫を生産できず、感染対象動物で非病原性であるかまたは緩和された病原性を示す。変異ウイルスは免疫原性であり、ワクチンとして用いられるときは、対応する野生型および/または他の病原性ウイルスによる感染に対して防御を提供する。加えて、本明細書に開示するBM2変異体は安定であり、用いられる宿主細胞にかかわらず、変異して機能的BM2ポリペプチドを発現することはない。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、これら変異体のBM1タンパク質はその機能に検出可能な変更を生じることなく生成される。いくつかの実施態様では、変異BM2核酸配列を保持するウイルスは宿主細胞で複製することができない(当該宿主細胞で野生型ウイルスは増殖し得よう)。制限ではなく例示として、いくつかの実施態様では、野生型ウイルスは、培養MDCK細胞、CHO細胞および/またはベロ細胞で増殖、繁殖および複製でき、一方、変異BM2配列を保持する対応するウイルスは、同じタイプの細胞で1サイクルを超えては増殖、複製または繁殖できない。
【0029】
上記で特記したように、いくつかの実施態様では、BM2変異ウイルスは安定であり、宿主細胞で野生型または機能的なBM2タンパク質をコードする非野生型配列へ変異若しくは復帰しない。例えば、いくつかの実施態様では、BM2変異ウイルスは宿主細胞で2継代、3継代、5継代、10継代、12継代、15継代、20継代、25継代、または25継代を超えて安定である。いくつかの実施態様では、宿主細胞は非改変宿主細胞である。他の実施態様では、宿主細胞は、改変宿主細胞、例えばBM2タンパク質を発現するMDCK細胞(すなわちBM2CK細胞)である。
いくつかの実施態様では、BM2変異体は1つ以上の核酸置換および/または欠失を含む。いくつかの実施態様では、変異は、BM2タンパク質の細胞外ドメイン、BM2タンパク質のトランスメンブレンドメイン、および/またはBM2タンパク質の細胞質テールの1つ以上をコードする核酸に局在する。加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、1つ以上の核酸変異はBM2ペプチドの1つ以上の終止コドンおよび/または1つ以上のアミノ酸欠失を生じる。いくつかの実施態様では、変異BM2核酸を持つウイルスは非機能性BM2ポリペプチドを生成する。いくつかの実施態様では、変異BM2核酸を持つウイルスはBM2ポリペプチドを生成しない。いくつかの実施態様では、変異BM2核酸を持つウイルスは切詰めBM2ポリペプチドを生成する。
【0030】
上記で特記したように、インフルエンザBゲノムセグメント7は、複製のためにウイルスが必要とする2つの主要なポリペプチド(BM1マトリックスタンパク質およびBM2プロトンチャネル)を発現する。BM1およびBM2ポリペプチドの発現は、ペンタヌクレオチドモチーフ翻訳スリッページ部位によって部分的に調節され、前記部位はBM1およびBM2 ORFの間の連結点に存在する。ペンタヌクレオチドモチーフ(TAATG)は、M1翻訳終了のためのTAA終止コドンおよびM2開始のためのATG開始コドンの両方をオルタネート-1リーディングフレームに含む。このペンタヌクレオチドモチーフおよびフランキング配列は、M1タンパク質の発現の調節のために重要であることが示されている。BM2タンパク質は、RNAセグメント7から転写される二シストロン性mRNA中のオーバーラップする終了-開始ペンタヌクレオチドの連結された翻訳終了-再開始メカニズムによって合成される。RNAセグメント7から転写されるmRNAには、ペンタヌクレオチド(残基769±773)が存在し、そこでは、BM2タンパク質のためのAUG開始コドンがM1タンパク質のための終止コドンとオーバーラップする(Horvath et al., EMBO Journal 9:2639-2647, 1990)。BM2タンパク質はペンタヌクレオチドの連結翻訳終止±開始メカニズムによって合成され、それは上流のM1タンパク質の開始および終了に左右される(Horvath et al., 1990)。このプロセスは終止コドンおよび再開始コドン並びに終止-開始部位上流のmRNAの規定領域(18S rRNAのヘリックス26と相補性を有する機能的に必須の塩基ストレッチを含む)が近接していることを必要とする。この相補性領域は当該終止リボソームに隣接するヘアピン構造のループ内に位置し、BM2タンパク質の発現の再開始プロセスで役割を果たすかもしれない。この二次構造はセグメント7 mRNAの安定化で追加的役割を有する可能性があり、したがってヘアピン構造を破壊するかまた影響を及ぼすBM2変異体は、BM2発現の所望の欠如に加えてM1タンパク質発現を低下させる可能性がある。
【0031】
8つ全てのゲノムセグメントの複製およびパッキングに必要な別の領域は、ゲノムRNAの5’非コード領域(5’NCR)である。インフルエンザはマイナス鎖のRNAウイルスであるので、ゲノムの5’NCRはmRNAおよびcDNAの3’NCRである。さらに、5’NCRの構造的要件はタンパク質ORFそのものにも及び得る。これはインフルエンザAについて示されている。すなわち、セグメント4(HA)のmRNAの3’末端近くの(またはゲノム5’NCR近くの)タンパク質コードサイレント変異(コドンは変化するがHAのアミノ酸組成は変化しない)はウイルス複製を完全に阻止することができる。したがって、M2のCOOH末端内領域は構造的におよびビリオンへの効率的ゲノムパッキングに重要であり得る。
ウイルス複製におけるBM2の要求は、109アミノ酸のBM2 ORFに正確な欠失を有するインフルエンザBウイルスを構築することによって明らかにされた。このウイルスはM2CK細胞(構成的にBM2タンパク質を発現するMDCK細胞)で複製できる。このMD欠失構築物はMDCK系統細胞での複製を可能にするが、一方、全体の欠失は調節エレメント部分を除去し、これは特に、ウイルスの産生に影響を及ぼし得る他の因子によって制限を受けるときはM1タンパク質の発現に有害に影響し得よう。例えば、インフルエンザBウイルスはMDCK細胞では高力価で増殖するが、一方、それらウイルスは、部分的にはM1タンパク質の低発現によってベロ細胞では高度に制限される(Nakamura, 1981)。したがって、Mセグメントの操作はM1発現にうかつに更なる影響を及ぼすことがある。
これらの欠点に対処するために、B/Florida/4/2006のセグメント7を土台にする一連の新規な5つのBM2ヌル変異体構築物(BM2SR-1、BM2SR-2、BM2SR-3、BM2SR-4およびBM2SR-5)(
図2)を設計し、続いて二本鎖DNAフラグメントとして合成した。前記フラグメントは、当業界で公知の標準的技術を用いる標準的なin vitro遺伝子アッセンブリーのために適切である。当該構築物の一本鎖mRNAまたはプラスセンスDNAヌクレオチド配列を表1に提供する:BM2SR-1(配列番号:1)、BM2SR-2(配列番号:2)、BM2SR-3(配列番号:3)、BM2SR-4(配列番号:4)、BM2SR-5(配列番号:5)、およびBM2SR-0(配列番号:6)。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
BM2SR-0、BM2SR-1およびBM2SR-3変異体はBM2ポリペプチドを発現しない。BM2SR-2、BM2SR-4およびBM2SR-5変異体は、BM2タンパク質の最初の11アミノ酸を含む切詰めポリペプチドを潜在的に発現し得るようであったが、しかしながらこれは明瞭には示されていない。
太字下線でBM1およびBM2コード配列並びにペンタヌクレオチドモチーフを示す野生型インフルエンザBセグメント7を表2に提供する。
【0038】
【0039】
野生型BM1およびBM2のアミノ酸配列並びにBM1 M86V変異体のアミノ酸配列を表3に提供する。
【0040】
【0041】
【0042】
第一の構築物(BM2SR-1(配列番号:1)と呼ぶ)は、Hattaら(Hatta, et al., J.Virol.83(11): 5939-5942, 2009)が以前に報告したようにBM2 ORFの完全な欠失である。前記はBM2SR-0(配列番号:6)と一致するが、B/Lee/1940のBM1ではなく現代のタンパク質をコードする。
インフルエンザBウイルスの抗原的および遺伝的に別個の2つの系統が同時に循環し、少なくとも1988年以来人間で疾患を引き起こしている。ビクトリア系統のインフルエンザウイルスが1980年代に世界的に循環した優勢なB型株で、ヤマガタ系統は1990年代初期に優勢なB型ウイルスとなった。1991年以来、ビクトリア系統のウイルスがしばしば単離され、ほぼ完全に東アジアに限定されている。ビクトリアウイルスは2002年に再出現し、それ以来ヤマガタ系統とビクトリア系統の両方が共存している。1940年から2016年に単離されたインフルエンザBウイルスの進化的関係は、現代単離株のBM1およびBM2タンパク質は互いにB/Lee/40よりも近縁であることを示している。系統発生的関係を
図17Aおよび17Bに示す。
【0043】
BM2SR-2構築物(配列番号:2)はBM1-BM2ペンタヌクレオチドの終止-開始部位および自然のままの3'-配列の周囲環境を復元して、BM1発現および調節を改善する。FluB mRNA中の1つの5ヌクレオチド配列(TAATG)はリボソームスリッページ配列をコードする。前記は終止-開始部位と呼ばれ、上流のBM1 ORFの終止コドンTAAおよび下流のフレームシフトされたBM2 ORFの開始コドンATGを含む。この配列の5’から3’の両方の自然のままのRNA配列の周囲環境はBM1タンパク質発現の翻訳を調節するエレメントを含む。ペンタヌクレオチドの復元はBM2開始コドンの復元を、かつ自然のままの周囲環境における復元を必要とする。したがって、翻訳はBM2 ATG部位で再開始することが期待される。当該領域の3’側の一切の配列の発現を阻止するために、人工配列をBM2SR-2に挿入した。前記はタンデムに3つの終止コドンをコードし、下流の各潜在的翻訳オープンリーディングフレームに1つ挿入される。
【0044】
BM2SR-3構築物(配列番号:3)はBM2SR-2と同一であるが1つの単一変異を有する。前記単一変異は、インフルエンザB M1遺伝子のアミノ酸86に無条件保存されるメチオニンの代わりにバリンを取り込む(M1 M86V)。M86Vの置換は、ベロ細胞での野生型インフルエンザB株の増殖を改善することが知られている(N.Wressnigg et al., Vaccine 27:2851-2857, 2009)。
BM2SR-4構築物(配列番号:4)にはわずかに90bpのより小さなM2の欠失があり、前記欠失は、ゲノムRNAのセグメントサイズの変化はウイルスセグメントの安定性に負の影響を有し得るという観察に基づく。これは、ゲノムRNAの5’末端近くの配列(ウイルスタンパク質のコード領域内に存在する)に起因する(Hatta et al., 2009)。これはおそらくゲノムセグメント7の5'末端(mRNAの3’末端)近位に位置するM2 ORFの事例であろう。セグメントの不安定性は、あるセグメントを欠く欠陥ウイルス粒子の数を増加させ、ウイルス増殖の減少およびウイルス力価の低下を引き起こし得る(Hutchinson et al., J.Virol.82:11869-11879, 2008)。BM2SR-4における90bpの欠失は、セグメント7の自然のままの全長(1190bp)の8%未満である。
BM2SR-5構築物(配列番号:5)は以下のセグメント7の改善の全ての組合せである:セグメントの安定性のためのM2におけるより小さな欠失、M1発現のためのM1翻訳調節、およびベロ細胞基材でのウイルス力価および増殖を改善するためのM1 M86V変異。
BM2SR-1およびBM2SR-3変異体はBM2ポリペプチドを発現しない。BM2SR-2、BM2SR-4およびBM2SR-5変異体は、BM2タンパク質の最初の11アミノ酸を含む切詰めポリペプチドを潜在的に発現し得るが、しかしながら前記ペプチドは未だに提示されていない。
【0045】
IV.細胞によるウイルス生成系
A.“第一世代”変異ウイルスの生成およびウイルス逆遺伝学
変異ウイルス、例えば変異BM2核酸を有するものは、Neumannらが記載したプラスミド系逆遺伝学によって作製できる(Neumann et al., Generation of influenza A viruses entirely from clone cDNAs, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:9345-9350, 1999)。簡単に記せば、真核宿主細胞に8つのウイルスRNA(8つのインフルエンザBセグメントに対応する)をコードする1つ以上のプラスミドをトランスフェクトする。各ウイルスRNA配列は、RNAポリメラーゼIプロモーターおよびRNAポリメラーゼIターミネーターによってフランキングされる。特に、BM2タンパク質をコードするウイルスRNAは変異BM2核酸配列を含む。加えて、宿主細胞は、ウイルスタンパク質(例えばポリメラーゼ、核タンパク質および構造タンパク質)(野生型BM2タンパク質を含む)をコードする1つ以上の発現プラスミドをトランスフェクトされる。宿主細胞のウイルスRNAプラスミドによるトランスフェクションは、8つのインフルエンザウイルスRNAの全ての合成をもたらし、それらウイルスRNAの1つは変異BM2配列を有する。コトランスフェクトされたウイルスポリメラーゼおよび核タンパク質はウイルスRNAを機能的なvRNAに組み立て、前記vRNAは複製され転写され、最終的に、変異BM2核酸配列を有するがなおウイルス脂質エンベロープに取り込まれる機能的BM2ポリペプチドを有する感染性インフルエンザウイルスを形成する。
【0046】
例えば、B/FL/04/2006セグメント7およびB/Lee/1940コントロールを土台とするBM2SR変異体では、BM2欠失セグメント7が標準的なインフルエンザ逆遺伝学プラスミドベクターに挿入され、現代のビクトリアおよびヤマガタ系統のセグメント4および6に由来するHAおよびNAを有するワクチン候補インフルエンザBウイルスの作製のために用いられた。内部遺伝子生成物(PB1、PB2、PA、NP、NS1およびNS2が含まれるが、ただしこれらに限定されない)をコードするセグメント1、2、3、5および8はB/Lee/40に由来した。組換えウイルスは293T細胞への化学的媒介トランスフェクションによって作製された。293T産生BM2不完全変異ウイルスの回収は、BM2タンパク質を構成的に発現するメイディン-ダービーイヌ腎(MDCK)細胞(すばわちBM2CK細胞)で実施された。
表4に記載する12のBM2不完全インフルエンザB BM2SR変異ウイルスを構築した。表4に示すB/Lee/40-0、B/FL/04/2006-1、B/FL/04/2006-2、B/FL/04/2006-3、B/FL/04/2006-4、およびB/FL/04/2006-5は、それぞれBM2SR-0、BM2SR-1、BM2SR-2、BM2SR-3、BM2SR-4、およびBM2SR-5に対応する。
【0047】
【0048】
“第一世代”の変異ウイルスを生産するまた別の方法には、in vitro作出組換えRNA分子によるインフルエンザウイルス遺伝子の交換を可能にするリボヌクレオタンパク質(RNP)トランスフェクション系が含まれる。前記系は、Enami and Paleseによって記載された(Enami and Palese, J. Virol. 65(5):2711-2713, 1991)。
Luytjesらによって示されたように、ウイルスRNAはin vitroで合成され、RNA転写物は、トランスフェクト細胞で生物学的に活性なRNPとして機能するウイルスヌクレオタンパク質(NP)およびポリメラーゼタンパク質で被覆される(Luytjes et al., Cell 59:1107-1113, 1989)。
RNPトランスフェクション方法は4つの工程に分割することができる:1)RNAの調製:インフルエンザウイルスセグメントをコードするプラスミドDNAは、in vitro転写反応でマイナスセンスRNAに転写される;2)RNAのキャプシド被包:転写されたRNAを続いてグラジエント精製NPおよびポリメラーゼタンパク質(破壊したインフルエンザウイルスから単離)と混合し、生物学的に活性なRNP複合体を形成する;3)トランスフェクションおよびキャプシド被包RNAのレスキュー:人工リボヌクレオキャプシドを細胞にトランスフェクトする。前記細胞は、レスキューされるウイルスに由来する種々の遺伝子を含むヘルパーインフルエンザウイルスで前もって感染されてあり、ヘルパーウイルスはトランスフェクトされたRNAを増幅するであろう;4)トランスフェクトされた遺伝子の選別:ヘルパーウイルスおよびレスキューされる遺伝子を含むトランスフェクタントの両方が培養上清に存在するので、抗体を用いる適切な選別系がトランスフェクトされた遺伝子を保有するウイルスの単離のために必要である。
この選別系は、特殊な生物学的分子的特徴を有する新規なトランスフェクタントインフルエンザウイルスの生成を可能する。続いて、標的とする表面タンパク質に対する抗体選別を正または負の選別に用いることができる。
【0049】
加えて或いはまた別に、同じ抗体を用いて、ヘルパーウイルスを‘捕捉し’、トランスフェクタントを濃縮させることができる。例えば、抗体を用いて組織培養皿の底を被覆するか、またはカラムマトリックスで用いて上清または溶出液のトランスフェクタントを濃縮することができる。
制限希釈によってトランスフェクタントウイルスをマルチウェルプレートのBM2発現細胞で増殖させ、続いてレプリカプレートを作成することによって識別およびクローニングすることができる。例えば、増殖ウイルスを含むマルチウェルプレートの与えられたウェルの1/2アリコットを用いてMDCK細胞に感染させ、他の半分をBM2タンパク質発現MDCK細胞(すなわちBMCK細胞)に感染させることができる。トランスフェクタントウイルスおよびヘルパーウイルスの両方がBM2タンパク質発現MDCK細胞で増殖するであろう。しかしながら、ヘルパーウイルスのみが標準MDCK細胞で増殖し、トランスフェクタントを含むマルチウェルプレートのウェルの識別を可能にするであろう。トランスフェクタントウイルスはさらに、BM2タンパク質を発現する細胞でプラーク精製することができる。
【0050】
B.ウイルス変異体を増殖させる
いくつかの実施態様では、本明細書に記載するウイルス変異体は宿主細胞で維持および継代される。制限ではなく例示として、インフルエンザウイルス変異体(例えばインフルエンザBウイルス変異体)の増殖に適切な例示的宿主細胞には多数の真核細胞、例えば以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):メイディン-ダービーイヌ腎細胞(MDCK細胞)、サル細胞(例えばアフリカミドリザル細胞(例えばベロ細胞)、CV-1細胞およびアカゲザル腎細胞(例えばLLcomk.2細胞))、ウシ細胞(例えばMDBK細胞)、ブタ細胞、フェレット細胞(例えばミンク肺細胞)、BK-1細胞、げっ歯類細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞)、ヒト細胞、例えば胎児ヒト腎細胞(例えばPER-C6(商標))、293Tヒト胎児腎細胞、並びにトリ細胞(胎児線維芽細胞を含む)。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、真核宿主細胞は、例えば宿主細胞のウイルス感染を強化することにより、および/またはウイルス増殖速度を強化することにより改変されてウイルス生産が強化される。例えば、いくつかの実施態様では、宿主細胞は改変されて、2,6-結合シアル酸を発現するかまたはその発現が増強され、変異体または野生型インフルエンザBウイルスによるこれら細胞のより効率的およびより効果的な感染を可能にする。例えば米国特許公開No.2010-0021499および米国特許7,176,021号を参照されたい。したがって、いくつかの例示的実施態様では、2,6-シアリルトランスフェラーゼ遺伝子(ST6GAL 1)の少なくとも1つのコピーを発現するように改変されたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)および/またはベロ細胞が用いられる。制限ではなく例示として、ホモサピエンス(Homo sapiens)ST6ベータ-ガラトサミド(beta-galatosamide)アルファ-2,6-シアリルトランスフェラーゼ遺伝子配列(アクセッション番号BC040009.1によって示される)は、CHO細胞に組み込まれ発現され得るST6Gal遺伝子の一例である。機能的なST6GalI遺伝子生成物をコードする1コピー以上のポリヌクレオチドを細胞中に操作することができる。すなわち、ST6GalI遺伝子の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または12を超えるコピーを発現するように安定的に形質転換されてある細胞を用いることができる。単一発現カセットは発現され得るST6GalI遺伝子の1つ以上のコピーを含むことができる。前記遺伝子は、調節エレメント(例えばプロモーター、エンハンサーおよびターミネーター)およびポリアデニル化シグナルに作動できるように連結され、ST6GalI遺伝子またはそのコピーの発現を促進することができる。また別には、単一発現カセットが1コピーのST6GalI遺伝子を発現するように操作し、複数の発現カセットを宿主細胞ゲノムに組み入れることができる。したがって、いくつかの実施態様では、少なくとも1つのST6GalI遺伝子が宿主細胞のゲノムに取り込まれ、当該細胞はST6GalI遺伝子およびその酵素タンパク質生成物を発現することができる。コピー数に応じて、単一宿主細胞は多くの機能的なST6GalI遺伝子タンパク質を発現することができる。
【0051】
安定な改変細胞株のクローニング、トランスフェクションおよび作製のための適切なベクターは当業界で周知である。非制限的な一例にはpcDNA3.1ベクター(Invitrogen)が含まれる。
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、変異ウイルス遺伝子の野生型バージョンを生産するように真核宿主細胞が改変され、それによってウイルスにtrans態様で当該遺伝子が提供される。例えば、変異BM2タンパク質を有するウイルス株は、野生型BM2タンパク質を生産する宿主細胞で継代されるとき、強化された増殖速度(例えばより大量のウイルス生産)を示すことができる。いくつかの実施態様では、変異BM2タンパク質を有するウイルス株は、野生型BM2遺伝子を発現しない細胞では増殖または複製することができない。加えて、そのような宿主細胞は、機能的BM2配列へのウイルス復帰が遅いかまたは復帰を妨げることができる。なぜならば、例えばそのような宿主では復帰の選択圧が存在しないからである。
発現ベクターおよび改変宿主細胞の両方の作製方法は当業界で周知である。例えば、BM2発現ベクターは、下記のBM2核酸配列(BM2 ORF配列;すなわち“野生型”BM2の開始コドンから終止コドンまで(表5))を真核細胞発現ベクターに配置することによって作製することができる。
【0052】
【0053】
【0054】
続いて宿主細胞(例えばMDCK細胞、ベロ細胞)に、当業界で公知の方法によって、例えば商業的に入手できる試薬およびキット(例えばTransIT(商標)LT1(Mirus Bio, Madison, WI))を用いて、トランスフェクションすることができる。制限ではなく例示として、検出可能なマーカーまたは選別可能なマーカー(例えばヒグロマイシン耐性)とのコトランスフェクションによって、および/または例えばBM2抗体を用いる間接免疫染色によるスクリーニングによって、細胞を選別しBM2発現について試験することができる。BM2発現は間接免疫染色、フローサイトメトリーまたはELISAによって決定することができる。
いくつかの実施態様では、細胞およびウイルス変異体を培養して当業界で周知の方法によって増殖させる。制限ではなく例示として、いくつかの実施態様では、宿主細胞は10%ウシ胎児血清を補充したMEMの存在下で増殖させる。BM2を発現する細胞に、PBS洗浄後にウイルスを37℃で吸着させることによって0.01のMOIで感染させる。いくつかの実施態様では、トリプシン/TPCKを含むウイルス増殖培地を添加し、細胞変性効果が観察されるまで細胞を2-3日間インキュベートする。
【0055】
これらの株とともに、使い捨てバイオリアクターが哺乳動物細胞のために開発された(ウイルスを含む場合も含まない場合もある)。前記の利点はより迅速な設備のセットアップおよび相互汚染のリスク軽減を含む。本明細書に記載する細胞は、例えば使い捨てバッグ(例えばStedim社のバッグ、Bioeazeバッグ(SAFC Biosciences)、HybridBagTM(Cellexus Biosystems)、または一回使用バイオリアクター(HyClone)、またはセルテイナー(Celltainer, Lonza)で培養することができる。バイオリアクターは1L、10L、50L、250L、1000Lサイズ様式が可能である。いくつかの実施態様では、細胞は、最適化された無血清培地で、動物生成物を含まない状態で懸濁物として維持される。系は、例えば1Lから10Lの単一バッグで培養を拡張させることができるフェッド-バッチ系でも、または、栄養物の定常的供給を可能にし、同時に潜在的に有害な副生成物の培養液中の蓄積を回避する灌流系でもよい。
長期貯蔵のために、変異体ウイルスは凍結ストックとして保存することができる。
【0056】
V.BM2発現細胞株
A.BM2発現細胞基材でのM2不完全インフルエンザAおよびBM2不完全インフルエンザB株の増殖
上記で述べたように、BM2は、インフルエンザBビリオンのエンベロープに組み入れられる必須の膜タンパク質である。BM2はインフルエンザAウイルスのM2タンパク質の対応物としてプロトン(H+)イオンチャネル活性を有することが、電気生理学的研究によって示された(Mould, et al., Dev.Cell 5:175-184, 2003)。インフルエンザM2タンパク質はインフルエンザAおよびインフルエンザBウイルスの双方で複製のために必要である(Watanabe, S., et al.J.Virol.83:5947-5950, 2009)。インフルエンザAまたはインフルエンザBゲノムRNAセグメント7内のM2イオンチャネルをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)の欠失または変異は、一切の感染細胞の子孫粒子の放出を阻止するウイルス成熟不全を引き起こす。
【0057】
M2を不活化させる変異は、インフルエンザAまたはインフルエンザB M2を安定的に発現するように操作された細胞株のゲノム内でコードされるM2タンパク質によってトランス態様で補完され得る。野生型A/PR/8/1934 M2(配列番号:23)およびB/Lee/40 BM2(配列番号:24)のcDNAの発現は、M2不完全変異Aウイルス(M2SR)およびBM2不完全変異Bウイルス(BM2SR)の複製を可能にする。例えば、このことは、M2CK(FluA)細胞として知られる改変メイディン-ダービーイヌ腎(MDCK)細胞株、および強力な合成CAGプロモーターを利用するBM2CK(FluB)細胞で提示され、前記は、それぞれ高レベルのA/PR/8 M2およびB/Lee/40 BM2タンパク質の構成的発現を駆動することができる(Miyazaki, J; Takaki, S; Araki, K; Tashiro, F; Tominaga, A; Takatsu, K; Yamamura, K (July 15, 1989);"Expression vector system based on the chicken beta-actin promoter directs efficient production of interleukin-5.".Gene.79 (2): 269-77)。インフルエンザA M2およびインフルエンザB M2タンパク質がM2不完全インフルエンザAおよび/またはBM2不完全Bウイルスを補完することができるか否かを決定するために、標準的な50%組織培養感染用量(TCID50)アッセイ(WHO)を当業界で公知の方法にしたがって用いることができる。
【0058】
したがって、いくつかの実施態様では、本開示は、BM2不完全インフルエンザBウイルス(すなわちBM2SRウイルス)およびM2不完全インフルエンザAウイルス(すなわちM2SRウイルス)の双方の増殖を支援するBM2CK細胞株を提供する。いくつかの実施態様では、M2が不完全なインフルエンザA変異体は、BM2がトランス態様で補充されるBM2CK細胞で増殖される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載するBM2CK細胞は、インフルエンザA M2不完全M2SRウイルス株の増殖を補完および支援する。
いくつかの実施態様では、BM2が不完全なインフルエンザB変異体は、M2がトランス態様で補充されるM2CK細胞で増殖される。いくつかの実施態様では、本明細書に記載するM2CK細胞は、インフルエンザB M2不完全BM2SRウイルス株の増殖を補完および支援する。
【0059】
B.キメラM2タンパク質
逆遺伝学(RG)によるインフルエンザB BM2不完全BM2SRウイルスのレスキューは、レシピエント細胞基材内でBM2タンパク質がトランス態様で供給されることを必要とする。しかしながら、高効率RGにもっとも頻繁に利用される293T細胞はBM2発現を欠く。したがって、BM2SRウイルスは典型的には、以前の記載にしたがって用いられる、レプリカーゼ(4)およびゲノムRNA(8)をコードする標準的12プラスミドインフルエンザRG系とともにBM2タンパク質をコードする13番目のプラスミドを供給することによって293Tで生成される。例えば以下を参照されたい:Hatta & Kawaoka, J.Virol.77:6050-6054, 2003;Neumann et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:9345-9350, 1999。
【0060】
M2タンパク質は以下の3つのドメインに分割することができる:1)細胞外またはエクトドメイン;2)トランスメンブレン(TM)ドメイン;および3)細胞内細胞質またはエンドドメイン(
図10)。
インフルエンザA M2の細胞外ドメインは長さが約24から27アミノ酸であって公知の構造を有し、BM2ドメインのわずか6から9残基と比較して14C2エピトープをコードする(前記ドメインが抗原性であるかまたは明瞭に規定された構造を有するかは不明である(Cross, Nature Structural & Molecular Biology 16:1207-1209, 2009))。インフルエンザA M2細胞外ドメインの最初の9アミノ酸は、それらはM2を形成するために弁別的にスプライスされる共有エクソンでコードされるので、M1タンパク質のN-末端と同一である。このようなアレンジメントはインフルエンザBには存在せず、したがってBM1およびBM2はタンパク質配列の同一性を共有しない。
【0061】
インフルエンザAおよびBのトランスメンブレン(TM)ドメインはともに、長さが約22-24残基のpH依存プロトンチャネルをコードし、前記チャネルは、正規の19アミノ酸構造を含み、チャネル機能に必要なことが示された間隔の取り方と同一の間隔の取り方でヒスチジンおよびトリプトファン残基を有する。インフルエンザA M2のTMドメインはアマンタジン(治療用チャネル阻害剤)の標的であるが、BM2はそうではない。
BM2のエンドドメインは、インフルエンザA M2の約47から51と比較して大きく81から83アミノ酸の長さである。両者のエンドドメインは極めて親水性で、空間的に離れた高度に荷電された酸性および塩基性領域を有する。実際、BM2エンドドメインは、タンパク質でこれまで報告された最大の双極子モーメントの1つを有する。
【0062】
いくつかの実施態様では、本開示は、
図10に示すように種々に並べ換えられたインフルエンザA M2およびインフルエンザB BM2に由来する3つのドメインのキメラ融合物を提供する。いくつかの実施態様では、インフルエンザA TMドメインは、細胞表面により近いアマンタジン結合ドメインをコードするサブドメインとTMドメインの残りの部分とに分割され得る。これら変異体のドメイン構造は
図10に提供される。いくつかの実施態様では、2つのアミノ酸置換(S12LおよびH19C(その各々はBM2 H
+-チャネル活性を停止させることが示された))を組み合わせたBM2チャネルヌル(BM2ヌル;BBBヌル)変異体が提供される。
【0063】
インフルエンザA/PR/8 M2、インフルエンザB/Lee/40 BM2、およびそのキメラ融合タンパク質の野生型およびキメラアミノ酸配列は表6に提供される。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
いくつかの実施態様では、本開示はコドン最適化M2、BM2およびキメラM2タンパク質を提供する。インフルエンザA/PR/8 M2、インフルエンザB/Lee/40 BM2、コドン最適化インフルエンザA/PR8/ M2、コドン最適化インフルエンザB/Lee/40 BM2、およびそのコドン最適化キメラタンパク質は表7に提供される。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
本明細書に記載するように、いくつかの実施態様では、ベロ細胞は改変されて以下を生成する:野生型A M2タンパク質(配列番号:14)、野生型BM2タンパク質(BBB(配列番号:15))、またはBM2キメラタンパク質(例えばABB(配列番号:17)、AAB(配列番号:18)、AA’B(配列番号:19)、BAB(配列番号:20)、BBA(配列番号:21)、およびBA’B(配列番号:22))。
発現プラスミドおよび改変宿主細胞(例えば改変ベロ細胞)の作製方法はともに当業界では周知である。例えば、キメラM2融合タンパク質発現プラスミドは、M2融合タンパク質の核酸配列(例えばコドン最適化BBA(配列番号:32))を真核細胞発現プラスミドに配置することによって作製できる。
【0073】
続いて当業界で公知の方法によって、例えば市販の試薬およびキット(例えばTransIT(商標)LT1(Mirus Bio, Madison, WI))を用いてベロ細胞にトランスフェクトすることができる。制限ではなく例示として、検出可能なマーカーまたは選別可能なマーカー(例えばヒグロマイシン耐性)とのコトランスフェクションによって、および/または例えばBM2抗体を用いる間接免疫染色によるスクリーニングによって、細胞を選別しBM2発現について試験することができる。BM2発現は間接免疫染色、フローサイトメトリーまたはELISAによって決定することができる。
【0074】
いくつかの実施態様では、M2不完全インフルエンザA M2SRおよびBM2不完全BM2SRワクチンの生成について、ベロ宿主細胞の性能を操作M2タンパク質(種々の血清型、インフルエンザAおよびインフルエンザB由来のM2遺伝子のキメラ融合物を含む)の使用および発現によって改善することができる。例えば、いくつかの実施態様では、A M2およびBM2キメラタンパク質(例えばABB(配列番号:17)、AAB(配列番号:18)、BAB(配列番号:20)、BBA(配列番号:21))を発現するベロ細胞は、インフルエンザA M2SR変異体の増殖を支援する。いくつかの実施態様では、野生型BM2タンパク質(BBB(配列番号:15))を発現するベロ細胞はインフルエンザA M2SR変異体の増殖を支援する。いくつかの実施態様では、野生型BM2タンパク質(BBB(配列番号:15)を発現するベロ細胞はインフルエンザBM2SR変異体の増殖を支援する。
【0075】
C.BM2ベロ細胞はインフルエンザA M2SR変異体の増殖を支援する
インフルエンザウイルスの迅速な高力価の複製を支援するMDCK細胞の能力のゆえに、当該細胞が典型的にインフルエンザの研究および発展のために利用される。しかしながら、MDCK細胞に由来するいずれの生物学的製品についても規制庁の承認を得ることは困難である。なぜならば、当該細胞それ自体が新形成性/腫瘍原性であることが示されたからである。他方、ベロ細胞は細胞ベースワクチンの製造用に(例えばポリオおよびMMRワクチンで)1960年代から承認されている。
【0076】
いくつかの実施態様では、本開示は、M2不完全インフルエンザAウイルスの製造用産生細胞として供することができるベロ細胞を提供する。いくつかの実施態様では、ベロ細胞株は、BM2タンパク質を発現するコドン最適化野生型インフルエンザB/Lee/40BM2ヌクレオチド配列(配列番号:27)を含む。このベロ細胞株は、本明細書ではBM2Vero4と称される。いくつかの実施態様では、M2不完全インフルエンザAウイルスは、A/California/07/2009pdm H1N1 M2SR(A/CA/07)であり、前記は、A/California/07/2009pdmのH1およびN1セグメントを含む。インフルエンザA M2ウイルス変異体のcDNA配列は下記の表8に提供される。いくつかの実施態様では、BM2Vero4細胞は、M2タンパク質のインフルエンザAバージョンを発現するMDCK細胞のレベルと実質的に等価のレベルでインフルエンザA H1N1 M2SRウイルスを生成する。
【0077】
【0078】
この変異体から生成されるM2ポリペプチド配列は以下のとおりである:
MSLLTEVETPIRNEWGCRCNGSSD(配列番号:34)。
【0079】
D.BM2ベロ細胞によって産生されるインフルエンザA M2SRビリオンのM2含有量
いくつかの実施態様では、本開示は以下を提供する:例えばA/Brisbane/10(配列番号:33)由来HAおよびNAを発現するインフルエンザA M2SRバックボーンを含むインフルエンザA M2SR(インフルエンザA M2タンパク質を発現できないがBM2タンパク質を含む)、および下記実施例に示される前記ウイルスを生成する方法。いくつかの実施態様では、BM2ベロ細胞は、コドン最適化cDNA(配列番号:27)から野生型B/Lee/40BM2タンパク質を発現するBM2Vero4細胞である。
【0080】
VI.ワクチンおよび投与方法
A.免疫原性組成物/ワクチン
種々の異なるタイプのワクチンが存在し、それらは本明細書に開示する細胞ベースウイルス生産系から作製できる。本開示は以下を含む(ただしそれらに限定されない):生弱毒化ウイルスワクチンの製造および生成、一回複製ワクチン、複製欠陥ワクチン、ウイルスベクターワクチン、不活化ウイルスワクチン、全ウイルスワクチン、分割ウイルスワクチン、ヴィロソームウイルスワクチン、ウイルス表面抗原ワクチンおよび前記の組合せ。したがって、種々のインフルエンザウイルスに特異的な防御免疫応答をもたらすことができる多数のワクチンが存在し、これらワクチンタイプのいずれかの適切な処方物が免疫応答、例えば全身性免疫応答をもたらすことができる。生弱毒化ウイルスワクチンはまた、気道の局所粘膜免疫を刺激できるという利点を有する。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の組成物で使用されるワクチン抗原は“直接的”抗原である。すなわち、それらはDNAとして投与されるのではなく、抗原そのものである。そのようなワクチンには以下が含まれ得る:全ウイルスまたはウイルスの部分のみ、例えば限定されないがウイルス多糖類(単独であれ担体成分(例えば担体タンパク質)との複合物であれ)、生弱毒化全微生物、不活化微生物、組換えペプチドおよびタンパク質、糖タンパク質、糖脂質、リポペプチド、合成ペプチド、または“分割”ワクチンと称されるワクチンの場合の破壊微生物。
【0081】
いくつかの実施態様では、完全なビリオンワクチンが提供される。完全なビリオンワクチンは限外ろ過によって濃縮され、続いてゾーン遠心分離によってまたはクロマトグラフィーによって精製される。典型的には、ビリオンは、例えばホルマリンまたはベータ-プロピオラクトンを用いて精製の前または後で不活化される。
いくつかの実施態様では、サブユニットワクチンが提供され、前記は精製された糖タンパク質を含む。そのようなワクチンは以下のように調製できる:洗剤で処理してフラグメント化したウイルス懸濁物を用い、表面抗原を例えば超遠心分離によって精製する。したがってサブユニットワクチンは主としてHAタンパク質およびNAもまた含む。用いられる洗剤は、陽イオン洗剤(例えば臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、陰イオン洗剤(例えばデオキシコール酸アンモニウム)、または非イオン性洗剤(例えばTRITON X100の名称で商業化されたもの)であり得る。ヘマグルチニンはまた、プロテアーゼ(例えばブロメリン)によるビリオンの処理後に単離し、続いて標準的な方法で精製してもよい。
【0082】
いくつかの実施態様では、分割ワクチンが提供され、前記は、脂質を溶解する薬剤による処理に付されてあるビリオンを含む。分割ワクチンは以下のように調製することができる:上記のように入手した精製ウイルスの水性懸濁物を(不活化されていてもいなくても)、洗剤とともに脂質溶媒(例えばエチルエーテルまたはクロロホルム)で攪拌しながら処理する。ウイルスエンベロープ脂質の溶解はウイルス粒子のフラグメント化をもたらす。分割ワクチンを含む水相を回収する。前記は、主としてヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼ(それらの除去された本来の脂質環境とともに)、およびコアまたはその分解産物で構成される。続いて、不活化がまだ実施されていない場合は、残留する感染性粒子を不活化する。
【0083】
いくつかの実施態様では、不活化インフルエンザウイルスワクチンが提供される。いくつかの実施態様では、不活化ワクチンは、公知の方法、例えばホルマリンまたはβ-プロピオラクトン処理(ただし前記に限定されない)を用いてウイルスを不活化することによって作製される。本発明で用いることができる不活化ワクチンタイプには、全ウイルス(WV)ワクチンまたはサブビリオン(SV)(分割)ワクチンが含まれ得る。WVワクチンは無傷の不活化ウイルスを含み、一方、SVワクチンは、脂質含有ウイルスエンベロープを溶解する洗剤で破壊し、続いて残留ウイルスを化学的に不活化した精製ウイルスを含む。
【0084】
加えて或いはまた別に、いくつかの実施態様では、生弱毒化インフルエンザウイルスワクチンが提供される。そのようなワクチンは、公知の方法工程にしたがってインフルエンザウイルス感染の予防または治療のために用いることができる。
いくつかの実施態様では、弱毒化は、公知の方法にしたがって、弱毒化ドナーウイルスの弱毒化遺伝子を単離株または再編成ウイルスへ移転させることによって単一工程で達成される(例えば以下を参照されたい:Murphy, Infect. Dis. Clin. Pract. 2, 174, 1993)。いくつかの実施態様では、ウイルスは、1つ以上のウイルス核酸配列の変異によって弱毒化され、変異ウイルスを生じる。例えば、いくつかの実施態様では、変異ウイルス核酸配列は、欠陥のあるタンパク質生成物をコードする。いくつかの実施態様では、タンパク質生成物は低下機能を有するか、または機能を持たない。他の実施態様では、タンパク質生成物は変異ウイルス核酸からは生成されない。
【0085】
したがってウイルスは、公知の方法にしたがって弱毒化または不活化され、処方され、さらに免疫原性組成物(例えばワクチン)として投与されて、動物(例えばトリおよび/または哺乳動物)で免疫応答を誘発することができる。そのような弱毒化または不活化ワクチンが、臨床単離株またはそれらに由来する高増殖株の抗原性と類似する抗原性を維持しているか否かを決定するための方法は当業界で周知である。そのような公知の方法には以下が含まれる:抗血清または抗体を使用して、ドナーウイルスの抗原決定基を発現するウイルスを除去する;化学的選別(例えばアマンタジンまたはリマンチジン);HAおよびNA活性および阻害;およびDNAをスクリーニングして(例えばプローブハイブリダイゼーションまたはPCR)、抗原決定基(例えばHAまたはNA遺伝子)または他の変異配列(例えばM2)をコードするドナー遺伝子が弱毒化ウイルスには存在しないことを確認する。例えば以下を参照されたい:Robertson et al., Giornale di Igiene e Medicina Preventiva, 29, 4, 1988;Kilbourne, Bull. M2 World Health Org., 41, 643 (1969); and Robertson et al., Biologicals, 20, 213, 1992。
【0086】
いくつかの実施態様では、ワクチンは、機能的BM2タンパク質の発現を欠く組換えインフルエンザウイルスを含む。いくつかの実施態様では、変異ウイルスは、BM2タンパク質を発現する細胞では良好に複製するが、対応する野生型細胞では複製せず、感染性子孫ビリオンを生じることなくウイルスタンパク質を発現する。
【0087】
鼻内投与、接種、または非経口若しくは経口投与のために適切な本発明の医薬組成物は、弱毒化または不活化インフルエンザウイルスを含み、場合によってさらに無菌的な水性または非水性溶液、懸濁物および乳濁液を含むことができる。組成物はさらに、当業界で公知の補助剤または賦形剤を含むことができる。例えば以下を参照されたい:Berkow et al., The Merck Manual, 15th edition, Merck and Co., Rahway, N.J., 1987;Goodman et al., eds., Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, Eighth Edition, Pergamon Press, Inc., Elmsford, N.Y., 1990;Avery's Drug Treatment: Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics, Third Edition, ADIS Press, LTD., Williams and Wilkins, Baltimore, Md., 1987;およびKatzung, ed., Basic and Clinical Pharmacology, Fifth Edition, Appleton and Lange, Norwalk, Conn., 1992。
【0088】
いくつかの実施態様では、非経口投与のための調製物には無菌的水性若しくは非水性溶液、懸濁液、および/または乳液が含まれ得る。前記は、当業界で公知の補助剤または賦形剤を含むことができる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブ油)、および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)である。キャリアまたは密閉包帯を用いて皮膚浸透性を高め抗原吸収を強化することができる。一般的に、経口投与のための液状投薬形は、当該液状投薬形を含むリポソーム溶液を含むことができる。懸濁リポソームに適した形態には乳液、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルが含まれ、前記は当業界で一般的に用いられる不活性希釈剤(例えば精製水)を含む。不活性希釈剤の他に、前記のような組成物はまた、アジュバント、湿潤化剤、乳化剤および懸濁剤、または甘味料、香料若しくは芳香剤を含むことができる。
【0089】
本発明の組成物が個体への投与に用いられるとき、組成物はさらに、当該組成物の有効性を改善するために所望される塩、緩衝剤、アジュバント、または他の物質を含むことができる。免疫原性組成物またはワクチンのためには、アジュバント(特異的免疫を増強する物質)を用いることができる。通例では、アジュバントおよび組成物は、免疫系に提示する前に混合されるか、または、別々に提示されるが免疫される生物体の同じ部位に提示される。
【0090】
いくつかの実施態様では、本明細書で開示される免疫原性組成物(例えばワクチン)は複数の異なる型のウイルスまたはウイルス抗原を含み、そのうちの少なくとも1つは、変異BM2遺伝子を含む(例えば、BM2SR-1(配列番号:1)、BM2SR-2(配列番号:2)、BM2SR-3(配列番号:3)、BM2SR-4(配列番号:4)、またはBM2SR-5(配列番号:5)を含むウイルス)。
いくつかの実施態様では、ワクチンは、BM2SR-1(配列番号:1)、BM2SR-2(配列番号:2)、BM2SR-3(配列番号:3)、BM2SR-4(配列番号:4)、またはBM2SR-5(配列番号:5)変異を含むウイルスを、他のウイルス成分および/または他のウイルス成分を発現する遺伝子と一緒に含む。いくつかの実施態様では、ワクチン(例えば、BM2SR-1(配列番号:1)、BM2SR-2(配列番号:2)、BM2SR-3(配列番号:3)、BM2SR-4(配列番号:4)、またはBM2SR-5(配列番号:5)変異を含むウイルス)は、他のウイルス株由来の遺伝子(例えば他のウイルス株由来のHAおよびNA遺伝子を含むが、ただし前記に限定されない)を含む。いくつかの実施態様では、ワクチンは、例えばB/Florida/04/2006、B/Brisbane/60/2008、B/Wisconsin/01/2010、またはB/Lee/1940ウイルス由来のHAおよびNA遺伝子を含む。
【0091】
本発明の医薬組成物はさらに或いは追加として、少なくとも1つの化学療法化合物を、例えば遺伝子治療のために、免疫抑制剤、抗炎症剤若しくは免疫刺激剤、または抗ウイルス剤を含むことができる。前記には以下が含まれるが、ただしそれらに限定されない:ガンマグロブリン、アマンタジン、グアニジン、ヒドロキシベンゾイミダゾール、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α、チオセミカルバゾン、メチサゾン、リファンピン、リバビリン、ピリミジンアナローグ、プリンアナローグ、フォスカーネット、ホスホノ酢酸、アシクロビル、ジデオキシヌクレオシド、プロテアーゼ阻害剤、またはガンシクロビル。
組成物はまた、変動し得るが少量の内毒素フリーホルムアルデヒドおよび保存料を含むことができ、前記物質は、安全であり本発明の組成物が投与される生物での望ましくない作用に寄与しないことが見出されてある。
【0092】
B.投与
本明細書に開示する免疫原性組成物(例えばワクチン)は、ワクチンについて通常的に用いられるか、または推奨されるルート(非経口ルート、粘膜ルート)のいずれかを介して投与でき、さらに多様な形態(注射可能または噴霧可能な液体、または凍結乾燥されてあるか霧化若しくは風乾により乾燥されてある処方物など)であり得る。ワクチンは、筋肉内、皮下または皮内注射用の注射器または無針注入器を用いて投与することができる。ワクチンはまた、鼻、肺、膣または直腸に関係なく粘膜に乾燥粉末または液状噴霧をデリバリーできるネブライザーを用いることによって投与できる。
【0093】
本明細書に開示するワクチンは、受動免疫または能動免疫によって1つ以上のインフルエンザ株に対する耐性を付与することができる。能動免疫では、不活化または弱毒化生ワクチン組成物が予防的に宿主(例えば哺乳動物)に投与され、当該投与に対する宿主の免疫応答が感染および/または疾患を防御する。受動免疫の場合は、誘引された抗血清が回収され、少なくとも1つのインフルエンザウイルス株によって感染が引き起こされたと疑われるレシピエントに投与される。
【0094】
本発明はしたがって、疾患または異常(例えば少なくとも1つのインフルエンザウイルス株による感染)を予防するかまたは減弱させる方法を含む。本明細書で用いられるように、ワクチンの投与が、疾患の徴候若しくは症状の全体的若しくは部分的減弱、または当該疾患に対する個体の全体的若しくは部分的免疫をもたらすならば、当該ワクチンは当該疾患を予防または減弱させるということができる。
【0095】
本発明の少なくとも1つの不活化または弱毒化インフルエンザウイルス、またはその組成物は、先に記載した医薬組成物を用い、意図した目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えばそのような組成物の投与は、多様な非経口ルート、例えば皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻内、経口または経皮ルートによることができる。非経口投与は、ボーラス注射によってまたは時間をかけて徐々に灌流することによって実施できる。いくつかの実施態様では、本明細書に開示する免疫原性組成物は筋肉内または皮下適用による。
【0096】
いくつかの実施態様では、インフルエンザウイルス関連病変を予防、抑制、または治療するレジメンは、本明細書に記載のワクチン組成物の有効量の投与を含み、前記は、単回治療として投与されるか、または、1週間から約24ヶ月まで、またはその間の任意の期間範囲若しくは期間値を含む期間にわたって強化投薬若しくはブースター投薬として繰り返される。いくつかの実施態様では、本明細書に開示するインフルエンザワクチンは毎年投与される。
【0097】
本発明にしたがえば、ワクチン組成物の“有効量”は、所望の生物学的効果を達成するために十分な量である。いくつかの実施態様では、有効な投薬量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、もしあれば併用治療の種類、治療頻度、並びに希望する効果の本質に左右されることは理解される。下記に提供する有効な用量の範囲は制限を意図せず、例示的用量範囲を提示する。したがって、いくつかの実施態様では、投薬量は、当業者が理解し決定できるように、個々の対象動物にしたがって調整されるであろう。哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約101-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲または数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約102-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲またたは数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約103-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲または数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約104-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲または数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約105-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲または数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約106-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその中の任意の値域であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約107-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその中の任意の値域であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約108-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲または数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約109-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲または数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、約109-1010プラーク形成単位(PFU/kg)またはその間の任意の数値範囲または数値であり得る。いくつかの実施態様では、哺乳動物(例えば人間)の成人のための弱毒化ウイルスワクチンの投薬量は、1010プラーク形成単位(PFU/kg)を超えることができる。不活化ワクチンの用量は、ヘマグルチニンタンパク質の約0.1から200、例えば50μgの範囲であり得る。しかしながら、投薬量は、出発点として既存のワクチンを用いる慣例的方法によって決定される安全で有効な量である。
【0098】
C.皮内デリバリー
かぜ(flu)生ワクチンは慣例的には鼻内デリバリーされ、自然の感染経路を模倣して自然のウイルス感染の免疫応答に類似する応答を促進する。代替として、本明細書では皮内デリバリーの方法が開示される。前記方法は、新規なマイクロ針装置の使用を必要とし皮内デリバリーの免疫学的利点を活用する。いくつかの実施態様では、弱毒化ウイルス(例えばBM2ウイルス変異体)が皮内投与用ワクチン組成物で用いられる。いくつかの実施態様では、BM2ウイルス変異体(感染性子孫ウイルスを生じない)がワクチンとして提供される。したがって、野生型循環インフルエンザウイルスとの再編成の可能性は実質的にはいっさい排除される。
【0099】
本明細書に開示する実施態様では、皮内(intradermal, intracutaneous)デリバリーはワクチンを皮膚に投与する。いくつかの実施態様では、皮内デリバリーはマイクロ針デリバリー装置を用いて実施される。本明細書に開示するように、皮内デリバリーは多数の利点を有する。例えば、ワクチンの免疫原性は、皮膚免疫系の免疫学的潜在能力を始動することによって強化される。ワクチンは、皮膚の強力な抗原提示樹状細胞(すなわち表皮ランゲルハンス細胞および皮膚樹状細胞)に直接アクセスする。皮膚細胞は炎症促進シグナルを生じ、前記シグナルは皮膚から導入された抗原に対し免疫応答を強化する。さらに、皮膚免疫系は抗原特異的抗体および細胞性免疫応答を生じる。皮内デリバリーは、ワクチンの用量軽減を可能にする。すなわち、皮内デリバリーされるときは、上記の要件を考慮すれば低用量の抗原で有効であり得る。
さらに、ワクチンは装置のマイクロ針列から皮膚にデリバリーされるので、意図しない針刺しリスクが軽減され、通常的な針と注射器による筋肉内注射と比較して、マイクロ針列による皮内ワクチンデリバリーは比較的痛みが少ない。
【0100】
マイクロ針装置は当業界で公知であり、例えば公開された米国特許出願2012/0109066、2011/0172645、2011/0172639、2011/0172638、2011/0172637および2011/0172609に記載されたものが含まれる。マイクロ針装置は、ウェットエッチングによるステンレススチールシートの加工によって作製される(Trinity Brand Industries, Georgia; SS 304(厚さ50μm))。いくつかの実施態様では、個々のマイクロ針は約500μmから1000μm(例えば約750μm)の長さ、および約100μmから500μm(例えば約200μm)の幅を有する。続いてワクチンをコーティングとしてマイクロ針に適用することができる。制限ではなく例示として、コーティング溶液は、1%(w/v)カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(低粘度、USP grad;Carbo-Mer, San Diego CA)、0.5%(w/v)Lutrol F-68 NF(BASF, Mt.Olive, NJ)および抗原(例えば、5ng/mLの可溶性HAタンパク質;生弱毒化ウイルス、例えば本明細書に記載のBM2変異ウイルスなど)を含むことができる。より高濃度を達成するために、コーティング溶液を室温(約23°C)で5から10分間蒸発させてもよい。コーティングはディップコーティングプロセスによって実施することができる。マイクロ針の一列当たりのワクチンの量は、マイクロ針を200μLのリン酸緩衝食塩水(PBS)に5分間沈め、当業界で公知の方法によって抗原についてアッセイすることによって決定することができる。
【0101】
いくつかの実施態様では、用いられるマイクロ針装置は、主にプロピレンおよびステンレススチールのファーストカット片で作られ、前記は簡単なスナップフィットおよび加熱シーリングによって1つにまとめらる。いくつかの実施態様では、装置は完全に自己完結型であり、ワクチン、ポンプ機構、活性化機構、およびマイクロ針ユニットを含む。これらの成分はプラスチックカバー内に隠れている。この装置により、ワクチン注入は作動ボタンを押すことによって開始する。ボタンを押すのと同時にマイクロ針を皮膚に挿入してポンプ機構を開始し、ポンプ機構は一次薬剤容器を加圧する。スプリング機構がワクチン溜めに十分な圧をかけるとき、ワクチンはマイクロ針列から皮膚の中に流れ始める。いくつかの実施態様では、ワクチン用量のデリバリーは装置の作動後約2分以内に完了する。注入が完了した後、装置を穏やかに皮膚から取り去る。
【0102】
いくつかの実施態様では、マイクロ針装置を用いる免疫原性組成物(例えばワクチン)の皮内投与の方法が提供される。いくつかの実施態様では、マイクロ針装置は、穿刺機構および免疫原性組成物層を含み、前記は皮膚を穿刺することができさらに免疫原性組成物を皮内に投与することを可能にする複数のマイクロ針を含む。いくつかの実施態様では、本方法は穿刺機構を弱める工程を含む。いくつかの実施態様では、免疫原性組成物(例えばワクチン)は、発現される変異BM2タンパク質または発現されないBM2タンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスを含み、ここで、当該発現される変異BM2タンパク質は、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4および配列番号:5から成る群から選択されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含むかまたは前記から成る。いくつかの実施態様では、まず初めにマイクロ針列は装置ハウジングの内部に配置され、レバーの作動時に装置のボタンによってマイクロ針を伸長させ、それによってワクチン液の皮膚内への注入を可能にする。
【0103】
本明細書に記載するデリバリー装置を利用して、所望し得る任意の物質をデリバリーすることができる。ある実施態様では、デリバリーされる物質は薬剤であり、デリバリー装置は対象動物に当該薬剤をデリバリーするために構成された薬剤デリバリー装置である。本明細書で用いられるように、“薬剤”という用語は、任意の治療的、予防的、または薬用目的のために対象動物にデリバリーされる任意の物質を含むことが意図される(例えばワクチン、医薬、栄養物、栄養補助食品など)。そのようなある実施態様では、薬剤デリバリー装置はかぜのワクチンをデリバリーするために構成される。本明細書で考察する実施態様は、主に、経皮的に物質をデリバリーするために構成される装置に関する。いくつかの実施態様では、装置は皮膚以外の器官に物質を直接デリバリーするために構成され得る。
【実施例】
【0104】
以下の実施態様は、単に例示としてかつ制限ではなく提供される。当業者は、本質的に同じまたは同様な結果を得るために変更または改変することが可能な多様な非決定的パラメータを容易に認識するであろう。これら実施例は、添付の特許請求の範囲に規定される本技術の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0105】
[実施例1]
BM2ウイルス変異体の作製
B/Florida/4/2006のセグメント7を土台にする一連の新規な5つのBM2ヌル変異体構築物(BM2SR-1、BM2SR-2、BM2SR-3、BM2SR-4およびBM2SR-5)(
図2)を設計し、続いて二本鎖DNAフラグメントとして合成した。前記フラグメントは、当業界で公知の標準的技術を用いる標準的なin vitro遺伝子アッセンブリーのために適切である。BM2SR-1(配列番号:1)、BM2SR-2(配列番号:2)、BM2SR-3(配列番号:3)、BM2SR-4(配列番号:4)、およびBM2SR-5(配列番号:5)の一本鎖mRNAまたはプラスセンスDNAヌクレオチド配列は表1に提供される。
【0106】
[実施例2]
BM2変異ウイルスの作製および培養
本実施例は、B/Florida/04/2006セグメント7を土台とするBM2SR変異体(BM2SR-1(配列番号:1)、BM2SR-2(配列番号:2)、BM2SR-3(配列番号:3)、BM2SR-4(配列番号:4)またはBM2SR-5(配列番号:5)を含む)、およびB/Lee/1940コントロール、BM2欠失セグメント7を土台とするBM2SR変異体の培養を示す。変異ウイルス(例えば変異BM2核酸を保持するもの)をNeumannらが記載したプラスミド系逆遺伝学によって作製することができる(Neumann et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:9345-9350, 1999)。簡単に記せば、8つのインフルエンザBセグメントの各々に対応する、8つのウイルスRNAをコードする1つ以上のプラスミドを293T宿主細胞にトランスフェクトした。各ウイルスRNA配列は、RNAポリメラーゼIプロモーターおよびRNAポリメラーゼIターミネーターによってフランキングされていた。特に、BM2タンパク質をコードするウイルスRNAは変異BM2核酸配列を含む。加えて、ウイルスタンパク質(例えばポリメラーゼ、核タンパク質および構造タンパク質)(野生型BM2タンパク質を含む)をコードする1つ以上の発現プラスミドを宿主細胞にトランスフェクトする。
プラスミドをトランスフェクション試薬(DNA1μgに付き2μLのTransIT(商標)LT1(Mirus Bio, Madison, WI))と混合し、室温で15-30分インキュベートし、1x106 293T細胞に添加した。48時間後に、上清中のウイルスを段階希釈し、BM2CK細胞に接種した。接種から2-4日後に、ストックウイルスの生成のために、明瞭な細胞変性効果(CPE)を示す最終希釈のウェルの上清ウイルスをBM2CK細胞に接種した。生じたウイルスのM遺伝子の配列を決定して当該遺伝子および意図した変異を確認し、さらに望ましくない変異が存在しないことを担保した。
【0107】
以下のように変異BM2ウイルスを増殖および継代した。BM2CK宿主細胞を10%ウシ胎児血清補充MEMの存在下で増殖させた。PBSで洗浄し、その後ウイルスを37℃で吸着させることによって、細胞を0.001のMOIで感染させた。トリプシン/TPCKを含むウイルス増殖培地を添加し、細胞変性効果が観察されるまで2-3日間細胞をインキュベートした。
12のBM2不完全インフルエンザB BM2SR変異ウイルス(表4に記載)を構築した。表4に示すB/FL/4/2006-1、B/FL/4/2006-2、B/FL/4/2006-3、B/FL/4/2006-4、およびB/FL/4/2006-5は、それぞれBM2SR-1、BM2SR-2、BM2SR-3、BM2SR-4、およびBM2SR-5に対応する。
【0108】
[実施例3]
BM2SRウイルスタンパク質の発現
本実施例は、表4に記載の12のBM2不完全インフルエンザB BM2SRウイルスによって発現されるタンパク質を示す。
ベロ細胞(200,000)を10%ウシ胎児血清(FCS)補充MEM培地で24時間TC-12プレートのウェルで培養した。D-PBSで2回洗浄した後、構築した12のB/Florida/4/2006 BM2SR-1からBM2SR-5およびB/Lee/40 BM2SR変異ウイルスを2つの野生型ウイルスコントロールB/Lee/1940およびB/Florida/4/2006とともに、1.0の高い感染多重度で前記ベロ細胞に感染させた。一巡複製を可能にするために35°Cで5%CO2雰囲気下で6時間インキュベートした後、サンプルをウェスタン分析のために採集した。
【0109】
感染細胞を、プロテアーゼ阻害剤を含む50mM Tris-HCl(pH 8.0)、300mM NaCl、1%トリトンX-100中で穏やかに溶解した。核および不溶性デブリを14,000xGでの遠心分離によってペレットにした。ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)(MES緩衝液中で4-12%グラディエントアクリルアミドゲル(Invitrogen))の前に、清澄化上清を変性させ、さらに還元した。分解されたタンパク質を二フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜に半乾燥装置によって7分間移動させた。3%脱脂粉乳(NFDM)を含む0.1%トゥイーン20含有リン酸緩衝食塩水(PBS-T)中で前記PVDFを遮断した。
タンパク質は、2つのインフルエンザB抗原HAおよびM1、並びに細胞基材コントロールタンパク質グリセロアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対して特異的な抗血清によって、1%NFDM PBS-T中で検出した。インフルエンザB M1は、3つの1000:1希釈モノクローナル抗体(sc-101353、sc-101408、sc-101409;Santa Cruz Biotechnology)の一次抗体カクテルおよび2000:1希釈抗マウスIgG二次抗体-セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合物によって検出した。インフルエンザBヘマグルチニンタンパク質(HA)は、2000:1のヤギ抗HAポリクローナル一次血清(NR-3120, BEI)および2000:1の二次抗ヤギIgG抗体-HRP複合物によって検出した。コントロールGAPDHは、GAPDHに対するポリクローナル一次抗血清(NB100-56875, Novusbio)および2000:1の二次抗ウサギIgG-HRP複合物によって検出した。特異的バンドは、発色性HRP基質3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて検出した。
【0110】
図4に提供する結果は、インフルエンザB/Lee/40 M1およびHAの発現は、B/FL/4/2006のものよりも低いことを示している。同様に、B/Lee/40 BM2SRウイルスは、B/Brisbane/60/2008およびB/WI/01/2010 HA:NAバックグラウンドの双方で低レベルまたは検出不能のM1およびHAタンパク質を発現する。BM2SR-1におけるBM2SRセグメントのB/Lee/1940からB/Florida/4/2006への変更は、M1およびHAの両方のタンパク質量を増加させるように思われる。BM2SR-2変異では増加は観察されなかった。BM2SR-3のM86V変異は、M1およびHA発現の両方を増加させる非常に大きな効果を有する。BM2SR-4変異もまたB/Lee/40コントロールと比較して発現を改善する。最後のBM2SR-5の変異の組合せもまた、完全な欠失株と比較してM1およびHA発現で大きな改善をもたらす。これらの結果もまた、
図2の模式図のBM2発現の破壊がBM1タンパク質発現を破壊し得ることを示している。
【0111】
[実施例4]
BM2SRウイルス複製
本実施例は、表4に記載の12のBM2不完全インフルエンザB BM2SRウイルスの増殖カイネティクスを示す。
構築したインフルエンザBM2SRウイルスのウイルス増殖カイネティクスをBM2Vero(B/Lee/40 BM2タンパク質を持続的に発現するベロ由来細胞株)で試験した。10%ウシ胎児血清(FCS)を含むMEM培地でBM2Vero細胞をP-060ディッシュで24時間培養した。1マイクログラム/mLのトシルフェニルアラニルクロロメチルケトン処理トリプシン(T-TPCK)を添加し、0.001のMOIで12のウイルスのウイルス感染を三複製(triplicate)で実施した。さらに、T-TPCKを1日に1回3日間(感染後1、2、3日目)(合計添加4μg/mL)添加した。感染物を5%CO
2、35°Cインキュベートした。2日間隔で(感染後2、4、6、8日目)、分泌されたインフルエンザBウイルスを含む感染ベロ細胞組織培養上清を無菌的にサンプル採取し、アリコットを-80℃で凍結保存した。増殖曲線が終了した後で、BM2CK細胞(BM2タンパク質を発現するMDCK細胞)を用い標準的な50%組織培養阻害用量(TCID
50)を決定することによって凍結アリコットの力価を測定した。標準的な世界保健機構ヘマグルチニンアッセイ分析(WHO HAアッセイ)を用いて、与えられた希釈の生産性感染を決定した。各時点における各ウイルスの三複製TCID
50測定の平均および標準偏差を計算した。結果は
図5Aおよび5Bに提供される。
【0112】
図5に提供するB/Brisbane/60/2008のHAおよびNAを発現する6つのウイルスの増殖曲線は、ほぼ完全長変異体BM2SR-4および特にM1 M86V変異体BM2SR-3およびBM2SR-5はより速いウイルス増殖を指令し、より高い最終力価に達することを示した。M1 M86V変異は、変異体BM2SR-3でBM2SR-2変異と、およびBM2SR-5変異体でBM2SR-4変異と組合わされるとき、BM2Vwro4細胞基材でウイルス増殖を改善するように思われた。最良の変異株BM2SR-5は、BM2Vero細胞基材で7.50 log10±0.1 log10 TCID
50等価/mLの最終力価に達した。B/FL/04 2006 BM2SR-3、-4、-5変異は、B/Brisbane/60 HAおよびNAと組合わされるとき、B/Lee/1940 BM2SR株のTCID
50値(2.42 log10±0.39 log10 TCID
50/等価/mL)と比較して2 log10から5 log10を超える改善を付与する。
B/Wisconsin/01/2010のHAおよびNAを有するインフルエンザB株の増殖はより均一であった(
図5B)。約10^0.5 TCID
50/mLの繊細な改善が、増殖曲線の4日目でBM2SR-2、BM2SR-3およびBM2SR-4変異体について認められた。6日目までにこの相違は失われ、最終力価は実質的に類似した。したがって、B/Wisconsin/01/2010のHAおよびNAを含むウイルスの関係では、操作されたBM2SR構築物(特にBM2SR-4およびBM2SR-5)はほんのわずかウイルス増殖カイネティクスを改善できるが、最終的なウイルス収量ではより小さな影響を示した。与えられたウイルスの性能は当該株のHAおよびNAの構成に左右される。
【0113】
[実施例5]
BM2SR変種の安定性
野生型細胞におけるBM2SR変種のBM2遺伝子の安定性を試験するために、BM2SR変種を野生型MDCK細胞(BM2タンパク質発現を欠く)とともにBM2CK細胞(BM2タンパク質発現MDCK細胞である)で継代した。全てのBM2SR変種および野生型インフルエンザBウイルス(WT B/WI01)が、少なくとも10継代まで全く変異を生じないでBM2CK細胞で継代できた(
図6A)。しかしながら、BM2SR変種は野生型MDCK細胞では継代できなかった(
図6B)。
【0114】
[実施例6]
BM2変異ウイルスはin vivoで弱毒化される
BM2SR変異ウイルスはin vivoで弱毒化されることを示すために実験を行った。6週齢のBALB/c雌マウスに以下の変異体の1つを鼻内に接種した:BM2SR Bris60およびBM2SR Wisc01(前記はともに配列番号:6に示されるB/Lee/40由来変異Mセグメントを含む(BM2SR-0))。前記変異体を1.2x10
6 TCID
50/マウスの用量で投与した。コントロールマウスグループにはPBSを投与した。体重の変化および感染徴候について、これらのマウスを接種後14日間観察した。
図7に示すように、BM2SRウイルスおよびPBSを接種したマウスは感染の臨床徴候を一切示さず、14日間にわたって体重も全く低下しなかった。グループ間の体重の変化は14日間にわたって類似していた。総合すれば、臨床徴候の欠如および体重低下の欠如は、BM2SR変異ウイルスは弱毒化されマウスで非病原性であることを示す。
【0115】
[実施例7]
BM2変異体はインフルエンザBウイルスチャレンジに対する抗体を誘発する
上記に記載したマウスの血清サンプル中の2つのインフルエンザB系統(ヤマガタおよびビクトリア)に対する抗体力価を決定するために、試験を実施した。プライム接種後7、14および21日目に、さらに28日目の第二の免疫後35、42および49日目に血清サンプルを採取した。当該血清サンプルの抗HA IgG抗体を、B/Wisconsin/01/2010およびB/Brisbane/60/2008に対する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定した。液性応答を
図8A-8Bに示す。前記図は、両BM2SR変異体(M2の欠失を有するB/Lee/40由来Mセグメントを含む(配列番号:6;BM2SR-0))は、両抗原に対してPBSコントロールグループよりも高く抗インフルエンザウイルス抗体を上昇させたことを示す。BM2SR変異ウイルスをブースター投与されたマウスは、プライム投与後のレベルよりも高いレベルの抗インフルエンザHA抗体を第二の免疫後に有した。
【0116】
[実施例8]
M2不完全インフルエンザAおよびBM2不完全インフルエンザB株のBM2発現細胞基材での増殖
インフルエンザA M2およびインフルエンザB BM2がM2不完全インフルエンザA(A/CA/07 M2SRおよびA/Brisbane/10 M2SR(前記はともに配列番号:33に示されるM2変異体を含む))およびB(B/WI/01 BM2SR-0およびB/Brisbane/60 BM2SR-0)ウイルスを補完する能力を試験するために実験を行った。標準的な50%組織培養感染用量(TCID
50)アッセイ(WHO)を用いた。96ウェルの組織培養プレートで調製したM2CKおよびBM2CK細胞のコンフルエントな単層に、4つのインフルエンザウイルスの10倍連続希釈から0.2mLを用い四複製で感染させた。前記4つのウイルスのうち、2つの希釈はインフルエンザA M2SRから調製され、2つはインフルエンザB BM2SRウイルス株から調製された。35°C、5%CO
2雰囲気で4日間インキュベートした後、細胞変性効果および赤血球凝集アッセイ(HA)(WHO)を終末点で用いて、培養上清をインフルエンザの複製について試験した。インフルエンザの複製が複製感染物の各々から観察される最高希釈因子を用い、
図9に示す4ウイルスによる2つの細胞株の各感染におけるlog
10 TCID
50値を決定した。
【0117】
驚くべきことに、BM2CK細胞基材は、血清型適合M2CK細胞と同様に、インフルエンザA M2不完全M2SRの両株を補完できた(
図9)。ヒトインフルエンザの一般的HA NA亜型、H1N1およびH3N2の双方に由来する表面抗原を含むM2SRは、ともに約7.0に匹敵するlog
10 TCID
50値で複製できた。反対に、M2CK細胞のインフルエンザA M2タンパク質は、試験したBM2不完全インフルエンザB BM2SR株の複製をほんのわずかしか支援できず、型適合BM2CK細胞によって提供されるTCID
50力価よりも低い約3 log
10力価を生じた。このことは、インフルエンザB M2タンパク質はインフルエンザAタンパク質を代用することができ、2つの亜系のインフルエンザAウイルスの複製を支援できることを示している。対照的に、インフルエンザA M2タンパク質は、インフルエンザB複製のためにBM2タンパク質を代用することができないように見える。
【0118】
[実施例9]
キメラM2タンパク質
キメラM2タンパク質の機能を試験するために、典型的な遺伝子アッセンブリー手順によって融合構築物を標準的なプラスミドに挿入した。前記標準的プラスミドは、培養哺乳動物細胞での高レベル発現のために、CMV IEプロモーターおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化転写制御配列を含んでいる。野生型M2およびBM2 cDNA発現プラスミドもまた構築した。加えて、CMVさえも超える可能な最高レベルの発現のために、野生型BM2 cDNA配列をpCAGGSプロモーターターミネータープラスミドに挿入した。前記プラスミドを用いて、インフルエンザB BM2SRウイルスの逆遺伝学(RG)でM2機能を供給した。RGの効率は、BM2不完全子孫の回収のために、293T-RG産生ウイルスの1%を96の独立ウェルのレシピエントBMCK細胞に接種することによって概算した。35°C、5%CO
2下で4日間インキュベートした後、BM2CK培養上清を標準的血球凝集アッセイ(WHO HA)によってウイルス複製について試験した。WHO HA陽性となったウェルのパーセンテージを
図11に示す。
【0119】
BM2ヌル変異はRGを支援せず、インフルエンザの複製にはM2プロトンチャネル活性が必要であることを確認した。野生型インフルエンザA M2もまた複製を支援しなかった。キメラM2タンパク質、ABBおよびAA’B(インフルエンザA M2エクトドメイン(M2e)を含む)は、野生型BM2またはBA’B変異体(M2eを欠く)と同様にほとんどRGを支援せず、インフルエンザAエクトドメインは阻害性であることを示唆する。データを総合すれば、インフルエンザBエクトドメインはインフルエンザBの複製に必要であり、一方、インフルエンザAトランスメンブレン(TM)ドメインはBM2のTMの代用となり得ることが示される。標準的なCMVプロモーターと比較して、pCAGGSベクターによる発現の増加は野生型BM2 cDNAの性能を改善し、BM2の総発現レベルもまたRGに対する制限となり得ることを示している。
【0120】
[実施例10]
野生型およびキメラM2タンパク質のBM2タンパク質を発現する能力
細胞基材ゲノムから発現されたとき、M2不完全およびBM2不完全ウイルスの増殖を支援する能力についてM2タンパク質を試験した。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子(タンパク質合成のアミノグリコシド阻害剤(G418)に対する耐性を付与する)とともにM2およびキメラ変異体をコードするプラスミドを、ベロ細胞に化学的にトランスフェクトした。
2日間培養した後、トランスフェクト細胞を分離しG418を含む培地に再プレートした。細胞をG418選別下で数週間培養し、プラスミドDNAが細胞株ゲノムにランダムに組み込まれたクローンを選別した。G418耐性クローンのいくらかの部分はまた、組み込まれたM2キメラ変異体トランスジーンの機能的コピーを含んでいるであろう。続いてこれらの機能的なクローンをウイルス選別を支援する能力について試験することができる。複製は、一括選別したG418耐性クローンプールによって、または標準的な限界希釈クローニング(LDC)手順を用いて選別および単離した個々のクローンによって試験することができる。クローンプールの分析は構築物の性能について数週間以内に測定を提供し、一方、LDCははるかに長期間を要する。しかしながら、人間で使用するために規制を受けるワクチン生産に適切な細胞基材を単離するためには、数巡のLDCが要求される。
【0121】
野生型および変異cDNAプラスミドの双方を用いて数巡の選別およびLDCを実施した後で、高レベルのBM2を発現する適切なクローンは単離されなかった(データは示されていない)。ウェスタン分析は、培養細胞の各継代後にBM2検出量が急速に減少することを示した。初期継代クローンプールのM2SRおよびBM2SRウイルスの複製データは、構築物は機能を有するが細胞ゲノムによる構築物の安定的な発現はベロ細胞では確立されないことを示唆した。インフルエンザによってコードされる遺伝子配列の分析は、それらは60%A-Tであること、およびウイルスコドン使用頻度バイアスは宿主ベロのそれと有意に相違することを示した。さらに、転写を停止または抑制できる複数の配列モチーフが自然のままのウイルス遺伝子コード領域内で認定された。この現象は、ある生物由来の遺伝子が別の生物に移されるときに一般的であるが、インフルエンザウイルスでは過小評価される可能性がある。インフルエンザウイルスはヒト細胞で複製しなければならないが、前記ウイルスは宿主と同じコドン使用頻度パターンを利用しない。
【0122】
野生型M2、BM2およびキメラ変異体の発現を増強させるために、コード配列のコドン最適化を実施して、負の調節モチーフを除去しcDNAを約50%A-Tにし、さらにインフルエンザの遺伝子をベロ細胞のコドンバイアスに変更した。これらの構築物をベロ細胞の化学媒介トランスフェクションによって試験した。トランスフェクションから2日後に、タンパク質の一過性発現を査定した。総細胞タンパク抽出物をBM2に特異的なポリクローナル抗血清を用いて分析した。
図12のデータは、自然のままの配列の一過性アッセイで以前に得られたものよりもはるかに高いタンパク質発現が当該設計トランスジーンから得られることを示している(自然のままのものは示されていない)。特筆すべきは、BBA変異体は、抗BM2抗血清がBM2エンドドメインに向けられていたので検出できなかった。
【0123】
[実施例11]
M2不完全およびBM2不完全ウイルスの増殖を支援するコドン最適化キメラM2タンパク質の能力を試験する
M2不完全およびBM2不完全ウイルスの増殖を支援する能力について、コドン最適化キメラM2タンパク質を試験した。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(
neo)遺伝子(タンパク質合成のアミノグリコシド阻害剤(G418)に対する耐性を付与する)とともにコドン最適化M2キメラ変異体をコードするプラスミドを、ベロ細胞に化学的にトランスフェクトした。2日間培養した後、トランスフェクト細胞を分離しG418を含む培地に再プレートした。細胞をG418下で2週間培養し、プラスミドDNAが細胞株ゲノムにランダムに組み込まれたクローンを選別した。G418耐性クローンのいくらかの部分はまた、組み込まれたM2キメラ変異体トランスジーンの機能的コピーを含んでいるであろう。BM2およびキメラをトランスフェクトされ一括選別されたクローンプールに、インフルエンザA/Brisbane/10 M2SR(配列番号:33に示されるM2変異体を含む)およびインフルエンザB/Brisbane/60 BM2SR-0(配列番号:6に示されるBM2変異体を含む)M2不完全ウイルスをMOI 0.01で感染させた。感染6日後に標準的なTCID
50手順を用い、培養上清のウイルス力価を測定した。データは
図13に提示される。
【0124】
試験したM2クローンプールの全てがベロ細胞でインフルエンザA M2SRの増殖を支援した。野生型BM2(BBB)クローンのみがインフルエンザB BM2SRの増殖を支援した。したがって、3つ全てのBM2ドメインがベロ細胞でのインフルエンザB BM2SR複製に特有であるように思われる。インフルエンザA M2eおよびトランスメンブレン(TM)ドメインを欠くが、M2エンドドメインを含むBBA変異体を発現するクローンプールが、インフルエンザA M2SRの増殖の支援に最良であることが見出された。BM2エンドドメインはそれほど有効ではなく、M2エンドドメインはある程度インフルエンザAに特有であるように進化したことを示唆する。ABBおよびAABキメラ変異体はBABおよびBBA構築物よりも不良な性能を提示し、インフルエンザAエクトドメインは、ウイルス増殖に対して(インフルエンザAそのものに対しても)阻害性であり得ることを示した。M2eを含む(ただしM2eに限定されない)阻害性領域を除去し、複製および力価を増強する改変ドメインを付加することができる。
したがって、M2不完全インフルエンザA M2SRウイルスおよびBM2不完全BM2SRワクチンウイルスを産生する細胞基材の性能は、完全に異なる血清型インフルエンザAおよびインフルエンザBに由来するM2遺伝子のキメラ融合物を含むM2操作タンパク質を使用し、これを発現させることによって改善することができる。
【0125】
[実施例12]
BM2発現ベロ細胞基材におけるM2不完全インフルエンザA/California/07/H1N1pdm M2SRの増殖
A/California/07/2009pdm H1N1 M2SR(A/CA/07)はA/California/07/2009pdmのH1およびN1セグメントを含むM2不完全インフルエンザAウイルスであり、配列番号:33に示されるM2変異体を含む。正常細胞では複製不能のこのワクチン候補ウイルスを用いて、2つのM2タンパク質型を構成的に発現する2つの細胞株に感染させた。第一のM2細胞基材はMDCK系統の標準的な細胞株M2CKであり、前記はA/PR8 M2タンパク質を発現する(前記タンパク質は配列番号:23に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)。MDCK細胞は、インフルエンザウイルスの高力価への迅速な複製を培養で支援することが知られているので、典型的にはインフルエンザの研究開発に用いられる。残念ながら、MDCK細胞はそれ自体が発癌性であることが示されたので、MDCKに由来するいずれの生物製剤も規制庁の承認を得ることは困難である。第二の細胞株、BM2Vero4は、コドン最適化野生型インフルエンザB/Lee/40 BM2タンパク質(配列番号:27に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)を含むが、前記はベロ(アフリカミドリザル腎細胞株)から誘導された。ベロ細胞基材は、承認された細胞系ワクチン製造に1960年代から用いられている(ポリオおよびMMRワクチン)。
【0126】
ウイルスの感染は、0.3%BSAおよび1.0μg/mLのトリプシン-TTPKを補充した最小必須培地(MEM)で2通りの感染多重度(MOI)レベル(0.01および0.001)で実施された。接種後2日目から6日目まで毎日アリコットを引き出した。細胞培養上清サンプルに含まれる生存インフルエンザAウイルスの濃度を標準的なTCID
50アッセイを用いてアッセイし、インフルエンザA M2SRパーミッシブM2CK細胞およびBM2Verp4細胞とともに35°C、5% CO
2で4日間インキュベートした。結果は
図14に提示される。
予想したように、インフルエンザA/CA/07/2009pdm M2SRはM2CK細胞で良好に複製し、2日目の時点で迅速にピーク力価に達した。ベロ系統での力価はピークに達するまで5-6日を要した。A/CA/07は、M2CK細胞で得られたlog
10 7.00および6.33の力価と比較して、BM2Vero細胞ではlog
10 5.67および6.00の力価に増殖した。前記は、MDCK細胞と比較してインフルエンザ複製についてパーミッシブ性がはるかに低いベロ細胞に由来するBM2Vero4にもかかわらず観察された。
したがって、ベロ細胞でコドン最適化インフルエンザB/Lee/40 BM2タンパク質(配列番号:27に示されるヌクレオチド配列によってコードされる)は、M2タンパク質のインフルエンザA形を発現するR&D品質MDCK細胞のレベルとほとんど等価のレベルでインフルエンザA H1N1 M2SRウイルス産生を達成する。
【0127】
[実施例13A]
インフルエンザBM2タンパク質はキメラインフルエンザA M2SRウイルスにウイルス脱外被に必要なイオンチャネル活性を提供できる
M2SRはM2タンパク質を発現せず、したがって子孫ビリオンを生成できないが、M2SRはde novoタンパク質合成を行い正常細胞でウイルス抗原を生成する。本実施例は、インフルエンザBM2タンパク質は、キメラインフルエンザA M2SRウイルスにウイルス脱外被に必要なイオンチャネル活性を提供できることを示す(すなわち、補完性BM2細胞株で生成されたインフルエンザA M2SRはウイルス膜に取り込まれるBM2をもたらす)。
前記を実際に示すために、インフルエンザA M2SR Hong Kong/4801/2014(H3N2)ウイルスをA M2発現M2VeroA細胞で3回継代し、キメラM2SR Hong Kong/4801/2014(H3N2)をインフルエンザB BM2発現BM2Vero細胞で3回継代した。続いて、ヒトA549、イヌMDCKまたはアフリカミドリザルベロ細胞にM2SRまたはキメラM2SRウイルスをMOI 4で接種し、トリプシンを含まない培地で培養してウイルスがただ1回の生活環を完結することを担保した。
【0128】
細胞の粗細胞質抽出を感染後(p.i.)6、9および12時間の時点で実施した。細胞を50mM Tris HCl(pH=8.0)、150mM NaCl、1%トリトンX-100中で溶解し、続いて遠心分離した(15,000xG)。上清の可溶性タンパク質をLDSサンプル緩衝液(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)および5mM TCEPと一緒にし、70°Cで10分間加熱して変性させた。タンパク質をMES緩衝液中の4-12%変性Bis-Tris NuPAGEポリアクリルアミドゲル(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)で分離し、PVDF膜に移した。予め染色したタンパク質分子量標準物をサイズ比較のために泳動させた。膜を1%(w/v)脱脂粉乳で封鎖し、2000:1希釈の抗インフルエンザウイルスマトリックスタンパク質ポリクローナルヤギ一次抗血清NR-3134(BEI Resources , NIAID, NIH)とともにインキュベートし、続いて3000:1希釈のセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ヤギIgG(H+L)二次抗体(SeraCare KPL, Milford, MA)とインキュベートした。TMB膜ペルオキシダーゼ基質(SeraCare KPL, Milford, MA)を用いてバンドを可視化した。M1マトリックスタンパク質に対するポリクローナル抗血清によって、M2SRおよびキメラM2SRウイルスについて非常に類似する28kDalの分子量タンパク質発現が検出され、試験した3つ全ての細胞株で約9時間のほぼ同一の誘発カイネティクスが示された(
図15A)。
【0129】
[実施例13B]
補完性BM2細胞株で生成されたキメラインフルエンザA M2SRウイルスではインフルエンザB BM2タンパク質のみが検出され、インフルエンザA M2タンパク質は検出されなかった
M2SRは、インフルエンザA M2タンパク質またはインフルエンザB BM2タンパク質を発現する支援性細胞株で増殖させないかぎり、M2SRはM2タンパク質を発現できないので子孫ビリオンを生成することができない。本実施例は、補完性BM2細胞株で生成されたキメラインフルエンザA M2SRウイルスは当該ウイルス膜に取り込まれたBM2タンパク質のみを生じることを示す。補完性M2細胞株で増殖させたM2SRウイルスはM2タンパク質のみを含む。
このことを実際に示すために、インフルエンザA M2SR Brisbane/10/2008(H3N2)ウイルスをインフルエンザA M2発現M2CK細胞で継代し、キメラM2SR Brisbane/10/2008(H3N2)をインフルエンザB BM2発現BM2Vero細胞で0.3%BSA含有MEM培地で3回継代した。培養上清を遠心分離によって清澄化した。清澄化培養液をベンゾナーゼ(Novagen EMD, Merck KGaA, Darmstadt, Germany)またはSAN(Articzymes, Tromso, Norway)ヌクレアーゼで処理し、残留細胞基材DNAを除去することによって粘度を低下させた。ヌクレアーゼ処理培養液を遠心分離濃縮装置(100,000名目分子量カットオフ再生セルロース膜(Amicon, Merck KGaA, Darmstadt, Germany)使用)を用いて60倍に濃縮した。上清のウイルスタンパク質をLDSサンプル緩衝液(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)および5mM TCEPと一緒にし、70°Cで10分間加熱して変性させた。タンパク質をMES緩衝液中の4-12%変性Bis-Tris NuPAGEポリアクリルアミドゲル(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)で分離し、3枚のPVDF膜に移した。予め染色したタンパク質分子量標準物をサイズ比較のために泳動させた。膜を1%(w/v)脱脂粉乳で封鎖し、3つの異なる一次および二次抗体対とともにインキュベートした。第一の膜は、2000:1希釈のインフルエンザAウイルスM2タンパク質モノクローナルマウス抗血清14C2(Santa Cruz Biotechnology, Dallas, TX)とともにインキュベートし、続いて3000:1希釈のセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(H+L)二次抗体(SeraCare KPL, Milford, MA)とインキュベートした。第二の膜は、2000:1希釈のインフルエンザBウイルスBM2タンパク質ポリクローナルウサギ抗血清(Hatta-M, et al, J.Virol, 78(11): 5576-5583, 2004)とともにインキュベートし、続いて3000:1希釈のセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG(H+L)二次抗体(SeraCare KPL, Milford, MA)とインキュベートした。第三の膜は、2000:1希釈のインフルエンザウイルスマトリックスタンパク質ポリクローナルヤギ抗血清NR-3134(BEI Resources , NIAID, NIH)とともにインキュベートし、続いて3000:1希釈のセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合抗ヤギIgG(H+L)二次抗体(SeraCare KPL, Milford, MA)とインキュベートした。TMB膜ペルオキシダーゼ基質(SeraCare KPL, Milford, MA)を用いてバンドを可視化した。モノクローナル抗M2抗体はインフルエンザA M2SRウイルス調製物中のM2を検出し、インフルエンザA M2タンパク質はキメラM2SR調製物では検出されなかった。逆に、ポリクローナル抗BM2血清はキメラウイルスのエンベロープでBM2を検出し、標準的M2SRウイルスではBM2は検出されなかった。M1マトリックスタンパク質に対するポリクローナル抗血清は、M2SRおよびキメラM2SRウイルスの両方で28kDalの分子量のPR8 M1タンパク質を検出した(
図15B)
【0130】
[実施例14]
個々のBM2変異体のワクチンとしての使用
BM2変異ウイルスがマウスで抗体応答を引き出すことができるか否かを試験するために、BM2変異ウイルス(B/YamagataおよびB/Victoriaを表すBM2SR-4ウイルス)をインフルエンザA H1N1またはH3N2 M22SRワクチンとともに一価、三価または四価ワクチンとして処方した。6週齢BALB/c雌マウスの鼻内に一価、三価、または四価ワクチンを10
6から10
7 TCID50/マウスの範囲の用量で接種した。コントロールマウスグループにはPBSを投与した。血清サンプルをプライム接種後14日目に採取した。B/Victoria系統およびB/Yamagata系統を表す抗原に対する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、血清サンプルの抗HA IgG抗体力価を決定した。加えて、インフルエンザA H1N1およびH3N2抗原に対する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、血清サンプルの抗HA IgG抗体力価を決定した(
図16Aおよび16B)。両BM2SRワクチン成分(B/Victoria系統およびB/Yamagata系統を表す)が、2つのインフルエンザB系統を表すインフルエンザB抗原に対してコントロールPBSグループよりも高い抗インフルエンザウイルス抗体を多価処方物で上昇させた(
図16Cおよび16D)。これらの結果は、BM2SRワクチンは目的のHAに対して抗体応答を生じること、および多価ワクチンとして処方されるとき一価成分の間で干渉は存在しないことを示している。多価処方物で、免疫応答は一価成分の各々に対して生じる。
【0131】
BM2SR変異体は、一価、三価または四価処方物として、マウスを致死性インフルエンザBウイルスチャレンジから防御することを示すために、BALB/c雌マウス(N=4)を致死用量の異種亜型インフルエンザBウイルス(例えばB/Malaysia/2706/2004ウイルス(20マウス50%致死用量(MLD
50))で接種から22日後にチャレンジした。BM2SR、三価および四価ワクチンでワクチン接種した全てのマウスがチャレンジを生き残り、体重は低下しなかった(
図16Eおよび16F)。しかしながら、PBSのみを投与されたコントロールマウスは体重が低下し、チャレンジから7日経過後には生存しなかった。これらの結果は、BM2SRウイルスは、ウイルスがワクチン成分と一致しないときですら、インフルエンザBウイルスチャレンジに対して防御することを示している。防御は、一価処方物と同様に多価処方物でBM2SRによって提供される。
【0132】
[実施例15]
フェレットモデルで一価および四価ワクチン処方物のBM2SRによって引き出される免疫応答および防御有効性
概要
本実施例は、BM2SRワクチンがフェレットモデルで一価または多価処方物で免疫応答を引き出すことができることを示す。すなわち、BM2SRによって引き出される防御免疫応答は、四価として処方されるとき他のワクチン成分の干渉を受けず、BM2SRも他の成分の免疫応答に干渉しない(すなわち免疫応答を抑制しない)。12匹の雄のフェレットにBM2SR候補ウイルスを1x107 TCID50(一価)または4x107 TCID50(四価)の用量レベルで鼻内投与した。コントロールとして、1つのフェレットグループにプラセボとしてOPTI-MEMTMを投与した。各処置グループに対してプライム-ブーストワクチン接種レジメンを用いた。フェレットにプライムワクチン(0日目)および28日後にブーストワクチン(28日目)を投与した。各ワクチン接種に続いて、フェレットを接種後14日間死亡率について観察し、体重、体温および臨床徴候を毎日測定した。全てのフェレットからワクチン接種後21、35および56日目に血清を収集し、時間経過における抗体レベルを査定した。
70日目に、全ての動物を1x106 PFUのインフルエンザAウイルスA/California/07/2009(H1N1pdm)で鼻内チャレンジした。チャレンジに続いて、フェレットを接種後14日間死亡率について観察し、体重、体温および臨床徴候を毎日測定した。チャレンジ後1、3、5および7日目に鼻洗浄物を各グループのフェレット(N=8)からウイルス力価のために収集した。加えて、チャレンジ後(82日目)に生存フェレットから分析のために血清を収集した。チャレンジから3日後に(73日目)、各グループにつき4匹のフェレットで剖検を実施した。ウイルス量(力価)の決定のために、チャレンジ後に器官を収集した。
5グループでワクチン関連の有害な事象は観察されなかった。チャレンジ後、プラセボコントロールグループは体重の減少(~15%)を示した。体重低下はまた抗原的に一致しない一価BM2SRワクチン接種グループで観察されたが、減少はプラセボグループで観察されたものよりも少なかった(~5-8%)。四価M2SRは、チャレンジ後有意な体重低下を全く示さなかった。
【0133】
B.材料と方法
ワクチンウイルスの接種:表9に示すように、一価BM2SRワクチン(1用量1x107 TCID50)の2回投与または四価M2SRワクチン(1用量4x107 TCID50)の2回投与によりフェレットに鼻内接種した。凍結ウイルスストックを室温で少なくとも10分間解凍し、続いて使用まで冷蔵(または氷上)保存した。フェレットをケタミン/キシラジンで麻酔し、500μLの体積(250μL/鼻孔)で鼻内に当該ウイルス用量を投与した。各ワクチン接種後7日間毎日動物を観察した。体重、体温および臨床徴候を7日間モニターした。
【0134】
【0135】
BM2SRウイルスは、機能的BM2タンパク質を発現しない組換えインフルエンザBウイルスであり、配列番号:11を含むBM2SR-0変異体を含み、B/Brisbane/60/2008(Victoria)またはB/Wisconsin/01/2010(Yamagata)のHAおよびNAをコードする。四価M2SRは、H1N1、H3N2、B/Victoria、B/YamagataのHAおよびNAをコードする2つのM2SRおよび2つのBM2SRウイルスで構成される。
【0136】
動物と動物の取り扱い:雄のフェレットを業者(Triple F Farms)から購入し、当該フェレットの48匹を試験に供した。動物は試験開始時に約4ヶ月齢であった。動物が健康であることおよび伝染病に対する抗体を持たないことは供給業者によって証明された。到着時に、動物を吊りワイヤケージに単独で収容した。前記ケージは紙を並べた汚物パン上に吊り下げられた平らな底を有する。動物室およびケージは、容認された動物取り扱い慣行および標準的作業手順にしたがって、動物の受け入れ前に清掃されている。公認フェレット飼料(Certified Teklad Global Ferret Diet #2072(Teklad Diets, Madison WI))およびシカゴ市の水道水が自由に供され、週に少なくとも3回新しくされた。動物室の蛍光照明は12時間点灯/消灯周期で維持された。動物室の温度および相対湿度は対応するプロトコルの限界内にあり、試験中はそれぞれ20.0から25.0°Cおよび30から63%の範囲であった。
【0137】
動物の隔離およびランダム化:ランダム化の前に7日間フェレットを隔離し、毎日観察した。動物が全般的に良好な健康状態にあることを示す日々の観察に基づいて、これらのフェレットをランダム化および試験のために隔離から解放した。隔離に続いて、フェレットの体重を測定し、体重を基準とするコンピュータ制御ランダム化手順(類似するグループ平均値をもたらす)を用いて処理グループに割り当てた(ToxData(商標)、バージョン2.1.E.11(PDS Pathology Data Systems, Inc., Basel, Switzerland))。グループ内では、すべての体重はそれらの平均の20%内にあった。試験のために選別した動物は永久識別番号を耳タグおよびトランスポンダによって与えられ、個々のケージカードもまた個体番号およびグループによって試験動物を識別した。割り当てられた識別番号は本試験内で固有であった。
【0138】
実験設計:ワクチンの免疫原性および有効性を査定するために、フェレットをBM2SRまたは四価M2SRウイルスの各々で免疫するか、または培地(OPTI-MEMTM)によって擬似免疫した。フェレットの体重、体温および臨床徴候をモニターし、免疫学的応答を評価した。48匹の雄のフェレット(Triple F Farms, Sayre PA)(試験開始時に4ヶ月齢)をこの試験に用いた。全ての動物に関する手順は、動物生物安全レベル2の施設で、IITリサーチインスティチュートの動物取扱い使用委員会が承認したプロトコルにしたがって実施された。接種前にフェレットを3日間モニターして体重を測定し、基準体温を確立した。温度の読取りは、各フェレットの皮下に埋め込まれたトランスポンダ(BioMedic data systems, Seaford, DE)を介して毎日記録された。試験の開始前に血液を収集し、インフルエンザ抗体について試験した。ワクチン接種前血清サンプルを受容体破壊酵素(RDE)で処理して非特異的阻害物質を除去し、続いて連続希釈して、規定量のインフルエンザAウイルス(A/California/07/2009様(H1N1pdm)、A/Switzerland/9715293/2013(H3N2))、インフルエンザBウイルス(B/Brisbane/60/2008(Victoria系統)およびB/Wisconsin/01/2010(Yamagata系統))に対して試験し、0.5%のシチメンチョウ赤血球または0.75-1.0%のモルモット赤血球と混合した。抗体力価は、赤血球凝集阻害を引き起こす最低血清希釈によって規定される。40未満のHAI力価(血球凝集阻害)を有するフェレットのみが血清陰性と考えられ、この試験に用いられた。試験動物をランダム化し、表9に示すように4グループ(12フェレット/グループ)に分けた。
フェレットの鼻内に、BM2SRの1回用量1x107 TCID50を0日目および28日目に、または四価M2SRの1回用量4x107 TCID50を0日目および28日目に投与した。コントロールグループにはOPTI-MEMTMを鼻内に0日目および28日目に擬似接種した。接種後14日間、フェレットの体温、体重および臨床徴候を毎日モニターした。鼻洗浄サンプルは-65℃で保持した。血液を接種前(-3および-5日目)並びに21、35および56日目に収集し、血清をELISAおよびHAIアッセイによる抗体力価測定まで-65℃で保持した。
【0139】
C.結果
血清サンプルの抗HA IgG抗体力価を、A/Brisbane/10/2007(H3N2)、A/California/07/2009(H1N1pdm)、B/Wisconsin/01/2010(ヤマガタ系統)、およびB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)に対して酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定した。簡単に記せば、ELISAプレートを各株の組換えHAタンパク質で被覆し、ウシ血清アルブミン(BSA)で封鎖してサンプルを適用した。フェレットIgG抗体をセイヨウワサビペルオキシダーゼ標識抗フェレットIgGヤギ抗体(KPL, Inc., Gaithersburg, MD)およびSureBlue TMB(KPL, Inc.))基質で検出した。
予想したように、それぞれの免疫グループのフェレットが、対応する抗原に対して血清の抗HA抗体の有意な上昇を示した。BM2SR免疫グループの血清は予想した特異性を示し、インフルエンザA抗原(CA07-H1N1、Bris10-H3N2)とは反応しなかった。より重要な事に、四価M2SRグループは、4つ全ての抗原に対して血清の抗HA抗体の有意な上昇を提示し(
図18)、BM2SRは、四価ワクチンとして処方されるときに免疫原性であり、多価処方物の成分間で干渉は存在しないことを示した。これらのデータは、BM2SRおよび四価M2SRウイルスは有意な免疫応答をフェレットで引き出すことを示唆する。
【0140】
血清サンプルを血球凝集阻害(HAI)アッセイによって分析し、ELISAで検出された抗体の機能的な活性を明示した。血清サンプルを受容体破壊酵素(RDE)(Denka Seiken, Tokyo, Japan)で処理して、非特異的な血球凝集阻害物質を除去した。RDEは製造業者の指示にしたがって再構成した。血清をRDEで1:3に希釈し、37°C±2°Cの水浴中で18-20時間インキュベートした。等体積の2.5%(v/v)クエン酸ナトリウムを添加した後、サンプルを56°C±2°Cの水浴中で30±5分インキュベートした。RDE処理後に、0.85% NaClを各サンプルに最終血清希釈1:10で添加した。続いて前記希釈サンプルをリン酸緩衝食塩水(PBS)で4つの2倍希釈(1:10から1:80)に希釈し(二複製)、続いて4血球凝集単位のA/Brisbane/10/2007(H3N2)、A/California/07/2009(H1N1pdm)、B/Wisconsin/01/2010(ヤマガタ系統)およびB/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)インフルエンザウイルスとともにインキュベートした。インキュベーションの後で、0.5%のトリ赤血球を各サンプルに添加し、30±5分間インキュベートした。続いて血球凝集の有無を採点した。
図19Aおよび19Bに示すように、免疫された全てのフェレットが、それらの対応する試験ウイルスに対して有意なHAI抗体力価を示した。四価M2SRは、4つの試験ウイルス全てに対して有意なHAI力価を示した。プラセボ(ナイーブ)グループは、いずれのインフルエンザ特異抗体も引き出さなかった。CDCは、血清HAI抗体力価40は集団におけるインフルエンザ感染または疾患リスクの少なくとも50%減少を示すと明言している。したがって、これらの結果は、BM2SRウイルスは、これらウイルスがインフルエンザA M2SRウイルスとともに四価ワクチンとして処方されるときに維持される防御免疫応答を引き出すことを示唆する。
【0141】
A/California/09/2009(H1N1pdm)でチャレンジした後、BM2SR免疫動物では5-8%の体重低下がチャレンジ後6日目に観察された。OPTI-MEM
TMフェレット(プラセボグループ)は最大の体重低下を示した(15%)。ワクチン接種フェレットの体重低下はワクチンの抗原性に左右された。四価M2SR(H1N1pdm M2SRを含む)を投与されたフェレットは有意な体重低下を全く示さなかった。どちらかのBM2SRワクチンを投与されたフェレットは~5-8%の体重低下を示した。
チャレンジ後1、3、5および7日目に鼻洗浄サンプルを全てのフェレットから収集し、MDCK細胞でプラークアッセイによってチャレンジウイルスの存在について評価した。
図20は、四価M2SRはチャレンジウイルスの複製を制御したことを示す。プラセボおよび一価BM2SRはチャレンジウイルスを制御せず、感染後5日間少なくとも5 logのウイルスが検出された。BM2SRワクチンはインフルエンザAチャレンジウイルスを制御しなかったが、疾患の進行で緩和効果を示した(前記緩和効果はプラセボグループよりも体重低下が少ないことによって立証される(データは示されていない))。
【0142】
さらに4匹のフェレットから感染後3日目に採集した呼吸系器管はチャレンジウイルスの制御を示した。
図21A、21Bおよび21Cで示すように、四価M2SRは上下部呼吸組織(例えば鼻甲介、気管および肺組織)でチャレンジウイルスを全く複製させなかった。対照的に、チャレンジウイルスは、他のグループの上部呼吸組織(例えば鼻甲介および気管)では高力価で増殖した。より下部の気道(肺)では、一価BM2SRワクチンはプラセボグループと比較してチャレンジウイルスを制御した。これらの結果は、四価M2SRはインフルエンザ感染の確立自体を予防したこと、およびBM2SRワクチンは感染の重篤度を緩和したことを示唆する。
【0143】
D.結論
本実施例は、フェレットへのBM2SRおよび四価M2SRワクチンウイルスの鼻内投与は、いずれのワクチン関連有害事象(例えば体温上昇、体重低下または臨床徴候)も伴わなかったこと、および鼻内インフルエンザワクチンとして有用であることを示す。これらの結果は、BM2SRはフェレットで免疫応答を引き出すこと、および四価M2SRウイルスに処方されたときには当該多価処方物に含まれる各株に対して防御免疫応答を引き出すことを示している。
【0144】
[実施例16]
ベロ細胞におけるインフルエンザAOFの増殖
ウイルス作製:以前に記載されたようにM2SRおよびBM2SR-4ウイルスを作製した。M2SRについては、インフルエンザA/Puerto Rico/1934由来のインフルエンザAウイルスRNAセグメント1、2、3、5、8およびM2SRセグメント7、並びにインフルエンザ A/Hong Kong/4801/2014(H3N2)のHAおよびNAウイルスRNAセグメント4、6を用いた。BM2SRについては、インフルエンザB/Yamagata/1973由来のインフルエンザBウイルスRNAセグメント1、2、3、5、8およびB/Florida/2006由来のセグメント7 BM2SR-4、並びにインフルエンザB/California/12/2015(ヤマガタ系統)のHAおよびNAウイルスRNAセグメント4、6を用いた。インフルエンザcDNAをRNAポリメラーゼI発現カセットでクローニングした。得られたプラスミドをウイルスポリメラーゼ、NPおよびMPタンパク質発現プラスミドとともにBM2Vero細胞にトランスフェクトし、上清に放出されたウイルスをBM2Vero細胞で増幅させた。
【0145】
細胞及びウイルスの培養:メイディン-ダービーイヌ腎(MDCK)細胞は10%ウシ胎児血清(FBS)補充MEMで維持した。M2CKおよびBM2CK細胞(それぞれインフルエンザA M2およびBM2タンパク質を安定的に発現するMDCK細胞株)は、10%FBSおよび150μg/mLのヒグロマイシンBを補充したMEMで37°C、5%CO2で維持した。ベロ(アフリカミドリザル腎)細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)補充MEMまたはOptiVero(製造業者(Invitria, Fort Collins, C)の推奨にしたがって処方した動物由来物質フリー(AOF)培地)のどちらかで増殖させた。M2VeroAおよびBM2Vero細胞(それぞれインフルエンザA M2およびB BM2タンパク質を安定的に発現するベロ細胞株)は、500または1000μg/mLのG418硫酸塩を補充したOptiVero培地で維持した。
野生型インフルエンザA/Hong Kong/4801/2014(H3N2)はMDCK細胞で増殖させ、野生型インフルエンザB/CA/12/2015は、0.3%ウシ血清アルブミン(BSA)および1μg/mLトリプシン-TPCKを補充したMEMでベロ細胞で増殖させた。M2SRおよびBM2SR-4ウイルスは、OptiVero培地および1μg/mLT-TPCKを用いてM2VeroAまたはBM2Vero細胞で増殖させた。
【0146】
ウイルスの増殖カイネティクスを直接比較するために、以下のようなウイルス/細胞株の各組合せについて同一のAOF培養条件を用いてウイルス増殖曲線を作成した。指数増殖期のベロ、M2VeroAまたはBM2Vero細胞を1,000,000細胞/60mm組織培養皿でAOF培地にプレートした。37°C、5%CO
2の湿潤インキュベーターで24時間培養した後、AOF培地のベロ細胞株に0.001 TCID
50ユニット/細胞の感染多重度(MOI)で試験ウイルスを三複製として感染させた。37°C、5%CO
2で120分間インキュベートした後、ウイルス接種物を除去し、1mg/mLのトリプシン-TPCKを含む新しいAOF培地を前記細胞に適用した。ウイルスの培養は、37°C、5%CO
2の湿潤インキュベーターで実施した。24時間毎に4日間、前記ウイルス培養からアリコットを取り出して、後の力価測定分析のために-80°Cで凍結保存した。培養上清のウイルス力価は50%組織培養阻害用量(TCID
50)アッセイによって決定した(M2SRウイルスについては増殖を支援するM2CK細胞、BM2SR4ウイルスサンプルについては増殖を支援するBM2CK細胞を用いた)。野生型ウイルスサンプルは、MDCKまたはM2発現M2CKおよびBM2CK細胞で力価を測定した。野生型ベロ細胞ではM2不完全M2SR(
図22A)またはBM2不完全BM2SR4(
図22B)ウイルス培養についてアッセイ検出限界(log
10 TCID
50/mL=1.67)を超えるウイルス力価は検出されなかった。インフルエンザA M2SR HK4801は同系のM2VeroA細胞で、およびインフルエンザB BM2SR4 CA12はBM2Vero細胞で、野生型A/Hong Kong/2014(H3N2)およびB/CA/12/2015の野生型ベロ細胞におけるそれぞれの増殖曲線と類似する増殖曲線で複製した。M2またはBM2の過剰発現は、非改変野生型ベロ細胞株における複製と比較して野生型インフルエンザAまたはBウイルスの複製に影響を与えなかった。
【0147】
M2VeroA細胞株で増殖させたBM2SR-4インフルエンザBウイルスでウイルス複製は観察されなかった(
図22B)。対照的に、インフルエンザA M2SRウイルスはBM2Vero細胞で確かに複製し、M2VeroA細胞で増殖させたインフルエンザA M2SRで観察されるカイネティクスと非常に類似するカイネティクスを示した(
図22A)。したがって、BM2Vero細胞株のインフルエンザBM2タンパク質の発現は、インフルエンザA M2不完全M2SRウイルス株の複製を可能にし、それは野生型インフルエンザAの増殖カイネティクスに匹敵する。一方、インフルエンザA M2はインフルエンザBの複製でBM2の機能を代替しない。
【0148】
[実施例17]
BM2Vero細胞基材でのインフルエンザA M2SRの遺伝的安定性
ウイルス作製:インフルエンザA M2SRウイルスをM2VeroA細胞でプラスミド系逆遺伝学を用いて作製した。インフルエンザA/Puerto Rico/1934由来のインフルエンザAウイルスRNAセグメント1、2、3、5、8およびM2SRセグメント7、並びにインフルエンザA/Hong Kong/4801/2014(H3N2)のHAおよびNAウイルスRNAセグメント4、6を用いてM2SR HK4801ウイルスを作製した。
【0149】
インフルエンザセグメントcDNAをユニディレクショナルRNAポリメラーゼI発現カセットでクローニングした。得られた8つのRNA発現プラスミドを、5つのタンパク質発現プラスミド(3つのウイルスポリメラーゼプラスミド、NPプラスミドおよびM2プラスミドを含む)と一緒にM2VeroA細胞にコトランスフェクトした。上清に放出されたウイルスを新しいM2VeroA細胞で3回ウイルス継代して増幅させた。3継代後、ウイルス力価を決定し、遺伝的同一性を株の全ゲノムを配列決定することによって確認した。簡単に記せば、インフルエンザA特異的cDNA反応生成物をインフルエンザA特異的PCRプライマーを用いて増幅させた。セグメント特異的内部プライマーを用いて、8つ全てのセグメントの増幅生成物を色素ターミネーター配列決定に付した。続いて、インフルエンザA M2SR HK4801をBM2タンパク質発現BM2Vero細胞株でさらに10回継代した。M2VeroA P3/BM2Vero P10ウイルス株(合計13代ベロ細胞株で継代されてある)を、完全なゲノムヌクレオチド配列決定によって遺伝的同一性について再び試験した。逆遺伝学によって作製されたM2SR HK4801 M2VeroA P3ウイルス株から得られたヌクレオチド配列は、8つのウイルスセグメント配列の全てが出発cDNAプラスミドのそれと同一であることを示した。BM2Vero細胞株でさらに10継代培養した後、ウイルスは非常に繊細な順応を示した。合計4つのヌクレオチド置換が2つの株間で観察された。観察された変化のいずれもサイレント変異で、これは、観察された置換のいずれも順応セグメントのアミノ酸コードの変更を予想しないことを意味する(表10)。したがって、これらの結果は、第一に、ベロ細胞で逆遺伝学によって作製されたM2SR HK4801ウイルスは、合計13回のウイルス増幅後に13,588塩基のインフルエンザA gRNAゲノムで4塩基置換が観察されただけであるから遺伝的に安定であることを示す。第二に、BM2タンパク質を発現するBM2Vero細胞株は全ての必要とされるインフルエンザA M2の機能を提供し、さらにインフルエンザA M2SRウイルスに対して過度な選別を全く示さないように見える。なぜならば、ゲノム配列は、BM2タンパク質によってのみ支援された10回のウイルス継代後に安定に維持されたからである。
【0150】
【配列表】