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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】引抜成形物、その製造および使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/76 20060101AFI20230517BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230517BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230517BHJP
   C08L 75/08 20060101ALI20230517BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20230517BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C08G18/76 057
C08G18/48 004
C08G18/08 038
C08L75/08
C08K7/06
C08J5/04 CFF
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019556699
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018059790
(87)【国際公開番号】W WO2018192927
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】17166812.2
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディルク、ベゲナー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト、ラッセルンベルク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ、シュミット
(72)【発明者】
【氏名】レナーテ、デルホフェン
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512322(JP,A)
【文献】特表2019-515070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 75/00-75/16
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40~80体積%の炭素繊維と>1.05g/cmの密度を有するポリウレタン樹脂からなるポリウレタン引抜成形物であって、前記ポリウレタンが、
ポリイソシアネート成分(A)、
b3)(B)の総重量に対して0~5重量%の1つ以上の触媒、
b4)(B)の総重量に対して0~20重量%の更なる助剤および/または添加物質、
の存在下で
b1)少なくとも2つのポリオールの混合物、
b2)(B)の総重量に対して0~20重量%の、b1)とは異なる1つ以上の更なるイソシアネート反応性化合物、
からなるポリオール成分(B)、
(B)の総重量に対して0.1~8重量%の少なくとも1つの内部離型剤(C)、
からなる反応混合物から得られ、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、
1)(A)の総重量に対して>55重量%のモノマージフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含有し、
2)2,2’-MDIと2,4’-MDIの和が(A)の総重量に対して<40重量%であり、かつ
3)プレポリマーを含有せず、
前記ポリオール成分(B)がポリマーポリオールを含有せず、
(B)の成分の全体の数平均ヒドロキシル価が、≧400mg KOH/gかつ≦2000mg KOH/gであり、
(B)の公称OH官能性の和が、2.5~3.5の数平均値を有し、かつ
(A)のNCO基の数の、(B)と(C)のOH基の数の和に100を乗じた数に対する比が90~120の値を有することを特徴とするポリウレタン引抜成形物。
【請求項2】
50~75体積%の炭素繊維と>1.05g/cmの密度を有するポリウレタン樹脂からなるポリウレタン引抜成形物であって、前記ポリウレタンが、
ポリイソシアネート成分(A)、
b3)(B)の総重量に対して0~5重量%の1つ以上の金属触媒、
b4)(B)の総重量に対して0~20重量%の更なる助剤および/または添加物質、
の存在下で
b1)少なくとも2つのポリエーテルポリオールの混合物、
b2)(B)の総重量に対して0~15重量%の脂肪族アルコール、
からなるポリオール成分(B)
(B)の総重量に対して0.1~6重量%の少なくとも1つの内部離型剤(C)、
からなる反応混合物から得られ、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、
1)(A)の総重量に対して>65重量%のモノマーMDIを含有し、
2)2,2’-MDIと2,4’-MDIの和が(A)の総重量に対して≦30重量%であり、かつ
3)プレポリマーを含有せず、
前記ポリオール成分(B)がポリマーポリオールを含有せず、
(B)の成分の全体の数平均ヒドロキシル価が、≧420mg KOH/gかつ≦700mg KOH/gであり、かつ
(B)の公称OH官能性の和が、2.6~2.8の数平均値を有し、かつ
(A)のNCO基の数の、(B)と(C)のOH基の数の和に100を乗じた数に対する比が90~120の値を有する
ことを特徴とするポリウレタン引抜成形物。
【請求項3】
i)前記成分(A)、(B)、および(C)を混合してポリウレタン反応性混合物を得る工程
ii)前記ポリウレタン反応性混合物を射出ボックスに運ぶ工程
iii)方法工程ii)と同時に、前記射出ボックスを通して炭素繊維を導入して前記炭素繊維に前記ポリウレタン反応性混合物を含浸させる工程
iv)前記ポリウレタン反応性混合物を含浸させた前記炭素繊維を加熱硬化金型に導入する工程
v)前記硬化金型で前記ポリウレタン反応性混合物を含浸させた前記炭素繊維を硬化させて、ポリウレタン引抜成形物を形成する工程
vi)引出し装置を用いて前記硬化ポリウレタン引抜成形物を前記硬化金型から引き出す工程
vii)前記硬化ポリウレタン引抜成形物を所望の長さに切断する工程
を含んでなる、請求項1または2に記載のポリウレタン引抜成形物を製造する方法。
【請求項4】
車両建造、航空機建造又は風力発電所における軽量補強形材又は構造要素としての請求項1または2に記載のポリウレタン引抜成形物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンと炭素繊維をベースとした引抜成形物ならびにその製造および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
押し出しは、一定断面の繊維強化形材を作るための連続プロセスである。典型的には、押出設備は、含浸ユニット、加熱された金型、およびプロセスを動かし続ける取り出し設備からなる。繊維の含浸は、開放浴または密閉された射出ボックスで行われる。熱硬化性反応性樹脂、例えばポリウレタンの場合、密閉射出ボックスが好ましい。射出ボックスは、実際の金型の上流に別のユニットとして取り付けるか、または金型に組み込むことができる(「直接射出」)。
【0003】
次いで、加熱された金型内で複合材の成形および硬化が行われる。完成した形材は、取り出し設備を用いて金型から取り出され、最後に所望の長さに切断される。引抜成形プロセスをできる限り効率的にするには、引抜成形物の非常に良好な機械的特性と高い表面品質と相まって高プロセス速度が求められる。
【0004】
この方法の非常に重要な工程は、補強材、例えば繊維ロービング、繊維マット、ノンクリンプ繊維織物、および織布を樹脂に含浸させることである。この目的のために、補強繊維の個々のフィラメントは、可能な限り効果的に樹脂を含浸させなければならない。非常に良好な含浸は、複合材の機能性を最終的に保証するマトリックスへの繊維の効果的な結合のための必要条件である。
【0005】
樹脂に対する含浸性の要求(impregnability demands)は、プロセス速度とともに自然に増加する。高い取り出し速度では、繊維の含浸は低い取り出し速度よりも短い時間で行わなければならない。同様に、異なる繊維材料は、樹脂の含浸性に異なる要求を課す。例えば、ガラス繊維で作られた補強材は、フィラメント径だけが大きくなるため、炭素繊維で作られた対応する補強材よりも含浸が実質的に容易である。
【0006】
引抜成形方法で炭素繊維複合材を効率的に製造するには、成分の混合直後の含浸段階で含浸樹脂の粘度をできるだけ低くし、続いて加熱引抜金型で急速硬化させる必要がある。
【0007】
ポリウレタン引抜成形物は、これまで何度も記載されてきた。
【0008】
したがって、国際公開第2011/067246A1号には、(a)ジ-またはポリイソシアネート、(b)少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含んでなる化合物、(c)触媒、(d)2つ以上の官能基を有する多官能性酸、ならびに任意選択で(e)更なる助剤および添加物質を含有する押出樹脂系が述べられている。多官能性酸は、大気圧下で少なくとも200℃の沸点を有し、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物に可溶である。引抜成形物および対応する引抜成形物(1ページ5~13行目)の製造方法についても述べられている。繊維材料としては、炭素繊維やガラス繊維(10ページ18行目)が特に好ましい。該発明の実施例は、ガラス繊維のみを使用し、記載の樹脂は最高で2.5m/分の引抜速度を達成する。炭素繊維による引き抜きに適するようにした引抜樹脂系の具体的な特性については言及されていない。記載のすべての繊維材料にあてはまる、(a)~(e)の成分を混合した直後の25℃(請求項9)における引抜樹脂系の粘度が1500mPa・s未満であることが述べられていることを除いては、該出願には、炭素繊維との引き抜きのために使用されたポリウレタン樹脂の化学組成および好適な粘度に関するいかなる情報も提供されていない。
【0009】
米国特許出願公開第2008/090966A1号には、エンドレスファイバー補強材と、少なくとも1つのポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と少なくとも1つのイソシアネート反応性物質を含有するイソシアネート反応性成分を含有する不混和性ポリウレタン配合物とを含有する繊維強化複合材を引抜方法で製造するための反応系が述べられている。また、引抜方法と、その方法で製造された繊維強化ポリウレタン複合材についても述べられている。好適な補強繊維として挙げられているのは、ガラス繊維および炭素繊維を含む、引き抜きに適したすべての繊維である。炭素繊維での引き抜きに適した反応系の具体的な特性、例えばポリウレタン形成中の好適な粘度プロファイルは言及されていない。
【0010】
米国特許出願公開第2008/0087373A1号には、ポリウレタン系および繊維強化複合材を製造するための引抜方法が記載されている。ポリウレタン系は、少なくとも1つのイソシアネートと、少なくとも1つのポリマーポリオールを含有するイソシアネート反応性成分とからなる。好適である記載された繊維補強材としては、特にガラス繊維および炭素繊維が挙げられる。炭素繊維を加工するための反応系の具体的な特性は該出願にない。それどころか、ポリマーポリオールは、粘度が高いので、引抜方法の含浸段階の間に炭素繊維の十分な含浸にむしろ不利であろうと予想される。
【発明の概要】
【0011】
すなわち、本発明は、繊維に樹脂を非常によく含浸し、しかも簡単かつ迅速に製造できる、補強材として炭素繊維を含んでなる引抜成形物を提供することを目的とする。
【0012】
この目的は、驚くべきことに、本発明によるポリウレタン引抜成形物および本発明による方法によって達成された。
【発明の具体的説明】
【0013】
本願の文脈において、「ポリイソシアネート」という用語は、2つ以上のイソシアナート基(-N=C=O)を含有する有機化合物を指す。
【0014】
本願の文脈において、「モノマーMDI」は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、および2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートから選択される1つまたは複数の化合物からなるポリイソシアネート混合物を意味すると理解されるべきである。
【0015】
本願の文脈において、「オリゴマーMDI」は、少なくとも3つの芳香核および少なくとも3の官能性を有するMDIの多核同族体からなるポリイソシアネート混合物を意味すると理解されるべきである。
【0016】
本願の文脈において、「ポリマーMDI」は、オリゴマーMDIおよびモノマーMDIからなる混合物を指すのに使用される。
【0017】
本発明は、40~80体積%、好ましくは50~75体積%の炭素繊維と>1.05g/cmの密度を有するポリウレタン樹脂からなるポリウレタン引抜成形物であって、ポリウレタンが、
ポリイソシアネート成分(A)、
b3)(B)の総重量に対して0~5重量%の1つ以上の触媒、
b4)(B)の総重量に対して0~20重量%の更なる助剤および/または添加物質、
の存在下で
b1)少なくとも2つのポリオールの混合物、
b2)(B)の総重量に対して0~20重量%の、b1)とは異なる1つ以上の更なるイソシアネート反応性化合物、
からなるポリオール成分(B)、ならびに
(B)の総重量に対して0.1~8重量%の少なくとも1つの内部離型剤(C)、
からなる反応混合物から得られ、
ポリイソシアネート成分(A)が、
1)(A)の総重量に対して>55重量%のモノマージフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含有し、
2)2,2’-MDIと2,4’-MDIの和が(A)の総重量に対して<40重量%であり、かつ
3)プレポリマーを含有せず、
ポリオール成分(B)がポリマーポリオールを含有せず、
(B)の成分の全体の数平均ヒドロキシル価が、≧400mg KOH/gかつ≦2000mg KOH/gであり、
(B)の公称OH官能性の和が、2.5~3.5の数平均値を有し、かつ
(A)のNCO基の数の、(B)と(C)のOH基の数の和に100を乗じた数に対する比(いわゆる指数)が90~120の値を有する
ことを特徴とするポリウレタン引抜成形物を提供する。
【0018】
特に好ましいのは、50~75体積%の炭素繊維と>1.05g/cmの密度を有するポリウレタン樹脂からなるポリウレタン引抜成形物であって、ポリウレタンが、
ポリイソシアネート成分(A)、
b3)(B)の総重量に対して0~5重量%、特に好ましくは0.1~2重量%、非常に特に好ましくは0.5~2重量%の1つ以上の金属触媒、
b4)(B)の総重量に対して0~20重量%の更なる助剤および/または添加物質、
の存在下で
b1)少なくとも2つのポリエーテルポリオールの混合物、
b2)(B)の総重量に対して0~15重量%の脂肪族アルコール、
からなるポリオール成分(B)、
(B)の総重量に対して0.1~6重量%、特に好ましくは0.1~4重量%の少なくとも1つの内部離型剤(C)、
からなる反応混合物から得られ、
ポリイソシアネート成分(A)が、
1)(A)の総重量に対して>65重量%、特に好ましくは>80重量%のモノマーMDIを含有し、
2)2,2’-MDIと2,4’-MDIの和が(A)の総重量に対して≦30重量%であり、かつ
3)プレポリマーを含有せず、
ポリオール成分(B)がポリマーポリオールを含有せず、
(B)の成分の全体の数平均ヒドロキシル価が、≧420mg KOH/gかつ≦700mg KOH/g、特に好ましくは≧450mg KOH/gかつ≦650mg KOH/gであり、
(B)の公称OH官能性の和が、2.6~2.8の数平均値を有し、かつ
(A)のNCO基の数の、(B)と(C)のOH基の数の和に100を乗じた数に対する比が90~120の値を有する
ことを特徴とするポリウレタン引抜成形物である。
【0019】
ポリイソシアネート成分(A)は、(A)の総重量に対して、55重量%超、好ましくは65重量%超、特に好ましくは80重量%超のモノマージフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含有することが好ましい。
【0020】
40重量%未満(好ましくは≦30重量%)の2,4’-MDIおよび/または2,2’-MDIに加えて、ポリイソシアネート成分は4,4’-MDIおよびオリゴマーMDIを含有することが好ましい。
【0021】
ポリイソシアネート成分(A)のNCO含有量は25重量%超、好ましくは30重量%超、特に好ましくは31.5重量%超であることが好ましい。
【0022】
ポリイソシアネート成分(A)の粘度は、DIN53019-1に従って測定して、(25℃で)≦250mPa・s、好ましくは(25℃で)≦50mPa・s、かつ特に好ましくは(25℃で)≦35mPa・sであることが好ましい。
【0023】
ポリイソシアネート成分(A)の官能性は2.1~2.9、好ましくは2.1~2.5、特に好ましくは2.1~2.3であることが好ましい。
【0024】
さらに、慣用の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatic)ジ-および/またはポリイソシアネート、特にポリウレタン化学で既知の芳香族イソシアネートを用いることができる。そのような好適なポリイソシアネートの例は、エチレンジイソシアネート、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,12-ドデカンジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-および-1,4-ジイソシアネートおよびこれらの異性体の混合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,4-および2,6-ヘキサヒドロトリレンジイソシアネートおよびこれらの異性体の混合物、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4,4’-、2,4’-、および2,2’-イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたはこれらの異性体の混合物、ならびにRが芳香族を含んでなる多価有機ラジカルであり、zが少なくとも2の整数である一般式R(NCO)zの芳香族イソシアネートである。その例は、1,3-ジイソシアナト-o-キシレン、1,3-ジイソシアナト-p-キシレン、1,3-ジイソシアナト-m-キシレン、2,4-ジイソシアナト-1-クロロベンゼン、2,4-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、2,5-ジイソシアナト-1-ニトロベンゼン、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-と2,6-トリレンジイソシアネートの混合物、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1-メトキシ-2,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、および3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネートおよび2,4,6-トルエントリイソシアネートなどのトリイソシアネート、ならびに4,4’-ジメチル-2,2’-5,5’-ジフェニルメタンテトライソシアネートなどのテトライソシアネート、ならびに1,3-および/または1,4-ビス(2-イソシアナトプロプ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)である。
【0025】
上記イソシアネートにくわえて、変性イソシアネート、例えばウレトジオン、イソシアヌレート、カルボジイミド、ウレトンイミン、アロファネート、またはビウレット構造を有するものも用いることができる。
【0026】
少なくとも2つのポリオールの混合物(b1)として本発明に従って使用できるのは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、および/またはポリカーボネートポリオールである。混合物(b1)に使用されるのは、好ましくはポリエーテルポリオールおよび/またはポリエステルポリオールであり、特に好ましくはポリエーテルポリオールである。
【0027】
OH官能基にくわえて、b1)として使用されるポリオールは、他のイソシアネート反応性水素原子(=活性水素原子)、例えばNH基およびNH基も含有しうる。そのような更なる活性水素原子が存在する限り、ポリオール配合物中のすべてのイソシアネート反応性水素原子の好ましくは90%超、特に95%超、特に好ましくは99%超、非常に特に好ましくは100%がOH官能基に由来する。
【0028】
そのようなポリオールは、Ionescuによって、例えば、「ポリウレタン用ポリオールの化学と技術(Chemistry and Technology of Polyols for Polyurethanes)」、Rapra Technology Limited,Shawbury 2005、31ページ以降(第3章:オリゴポリオールの一般的特性(The General Characteristics of Oligo-Polyols))、55ページ以降(第4章:弾性ポリウレタン用オリゴポリオール(Oligo-Polyols for Elastic Polyurethanes))、263ページ以降(第8章:弾性ポリウレタン用ポリエステルポリオール(Polyester Polyols for Elastic Polyurethanes))、ならびに特に321ページ以降(第13章:硬質ポリウレタンフォーム用ポリエーテルポリオール(Polyether Polyols for Rigid Polyurethane Foams))および419ページ以降(第16章:硬質ポリウレタンフォーム用ポリエステルポリオール(Polyester Polyols for Rigid Polyurethane Foams))に記載されている。
【0029】
好ましくは、混合物b1)として使用されるのは、プロピレンオキシドおよび/またはエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを触媒の存在下で多官能性スターター化合物に重付加することによるそれ自体既知の方法で製造可能な2つ以上のポリエーテルポリオールである。ポリヒドロキシルポリエーテルは、平均2~8個の活性水素原子と1つ以上のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、ブチレンオキシド、および/またはプロピレンオキシドを有するスターター化合物から製造されるのが好ましい。例えば、好ましいスターター化合物は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、およびスクロースなどの1分子あたり2~8個のヒドロキシル基を有する分子、ならびにエチレンジアミンおよびトリエタノールアミンなどのアミン開始化合物である。これらは単独でまたは混合して使用することができる。1,2-および1,3-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ソルビトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、スクロース、および列挙された製品の混合物が特に好ましい。引用された成分b1)の代表的なものは、例えば、Kunststoff-Handbuch、第VII巻「ポリウレタン」、第3版、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン/ウィーン、1993年、57-67ページおよび88-90ページに記載されている。
【0030】
ポリエステルポリオールは、エステル基を含んでなるポリヒドロキシル化合物、例えばヒマシ油またはポリヒドロキシルポリエステルであり、例えば、過剰量の上記の種類の単純な多価アルコールと、例えば好ましくは二塩基性カルボン酸またはそれらの無水物、例えばアジピン酸、フタル酸、または無水フタル酸との重縮合によって得られる。
【0031】
ポリウレタン系は、(B)の総重量に対して、0~20重量%、好ましくは0~15重量%の、混合物b1)とは異なる更なるイソシアネート反応性成分b2)を含有してもよい。これらは、それ自体がポリウレタンの成分として知られている。例としては、多価(polyhdric)アルコールならびに(オキシ)アルキレンジオール、例えばエチレングリコールおよびそのオリゴマー、プロピレングリコールおよびそのオリゴマー、1,6-ヘキサンジオール、グリセロールまたはトリメチロールプロパン、ならびに例えば、ソルビトールやビス(2-ヒドロキシエチルエンオキシ)ベンゼンなどの更なるOH官能性化合物が挙げられる。
【0032】
触媒成分(b3)として使用できるのは、例えば、既知のポリウレタン触媒、例えば、有機金属化合物、例えば有機カルボン酸カリウム塩またはナトリウム塩、例えば酢酸カリウム、同様にして有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、およびラウリン酸スズ(II)、および有機のカルボン酸のジアルキルスズ(IV)、例えば二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジメチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、および二酢酸ジオクチルスズジアセテート、さらに例えば、ジイソオクチル-2,2’-[(ジオクチルスタンニレン)ビス(チオ)]ジアセテート、ジ-n-ブチル-ビス(ドデシルチオ)スズ、2-エチルヘキシル-4,4`-ジブチル-10-エチル-7-オキソ-8-オキサ-3,5-ジチア-4-スタンナテトラデカノアート、ジメチルスズジチオグリコーレートおよび/または強塩基性アミン、例えば2,2,2-ジアザビシクロオクタン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミンまたはビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-メチルジベンジルアミン、およびN-メチルイミダゾール、ならびに潜在性触媒である。潜在性触媒およびそれらの作用機序は、例えば欧州特許出願公開第2531538A1号、1~4ページおよび9ページ26行目~10ページ2行目に記載されている。典型的な潜在性触媒は、ブロックされたアミンおよびアミジン触媒、例えば、Air Products製の触媒(例えば、Polycat(登録商標)SA-1/10、Dabco KTM60)およびTosoh Corporation製の触媒(例えば、Toyocat(登録商標)DB2、DB30、DB31、DB40、DB41、DB42、DB60、DB70など)である。触媒の更なる代表的なものと触媒の作用様式に関する詳細は、Kunststoff-Handbuch、第VII巻「ポリウレタン」、第3版、Carl Hanser Verlag、ミュンヘン/ウィーン、1993年、104~110ページに記載されている。
【0033】
好適な助剤および添加物質b4)としては、ポリウレタンの製造で既知のすべての助剤および添加物質が挙げられる。そのような物質は既知であり、例えば「Kunststoffhandbuch、volume 7、Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993年、第3.4.4および3.4.6から3.4.11に記載されている。例としては、例えば、界面活性物質、消泡剤、乳化剤、粘度低下剤、染料、顔料、難燃剤、水結合剤、例えばオルトギ酸トリス(クロロエチル)、アルカリ土類金属酸化物、ゼオライト、酸化アルミニウムおよびケイ酸塩、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、例えばガラスもしくは炭素で作られた短繊維、または天然鉱物、例えばタルク、珪灰石、もしくは白雲母が挙げられる。
【0034】
使用可能な内部離型剤(C)としては、ポリウレタンの製造に慣用のすべての離型剤、例えば、長鎖モノカルボン酸、特にステアリン酸などの脂肪酸、ステアラミドなどの長鎖カルボン酸のアミン、脂肪酸エステル、ステアリン酸亜鉛などの長鎖脂肪酸の金属塩、またはシリコーンが挙げられる。引抜成形専用に入手可能な内部離型剤、例えば、Axel Plasticsから入手可能なMOLD WIZ INT-1948 MCH、MOLD WIZ INT-1947 MCH、MOLD WIZ INT-1960 MCH、またはLehmann&Vossから入手可能なLuvotrent TL HB 550-D、Luvotrent TL HB 550が特に好適である。内部離型剤は、(B)の総重量に対して、0.1~8重量%、好ましくは0.1~6重量%、特に好ましくは0.1~4重量%の量で使用される。
【0035】
本発明はさらに、以下の工程を含んでなる、本発明によるポリウレタン引抜成形物を製造する方法を提供する。
i)成分(A)、(B)、および(C)を混合してポリウレタン反応性混合物を得ること
ii)ポリウレタン反応性混合物を射出ボックスに運ぶこと
iii)方法工程ii)と同時に、射出ボックスを通して炭素繊維を導入して炭素繊維にポリウレタン反応性混合物を含浸させること
iv)ポリウレタン反応性混合物を含浸させた炭素繊維を加熱硬化金型に導入すること
v)硬化金型でポリウレタン反応性混合物を含浸させた炭素繊維を硬化させて、ポリウレタン引抜成形物を形成すること
vi)引出し装置を用いて、硬化ポリウレタン引抜成形物を硬化金型から引き出すこと
vii)硬化ポリウレタン引抜成形物を所望の長さに切断すること。
【0036】
成分(A)、(B)、および(C)の混合は、ポリウレタン反応性混合物の製造に慣用の方法で、例えば、高圧法または低圧法で行うことができる。成分(B)と(C)が予め混合され、得られた混合物が成分(A)と混合される場合が好ましい。
【0037】
方法工程iii)における炭素繊維の含浸中の温度は、好ましくは0~75℃、特に好ましくは10~50℃、非常に特に好ましくは15~35℃である。硬化工程v)は、好ましくは、140~220℃の金型の温度で実施され、金型は、好ましくは、複数の、例えば3つまたは4つの異なる温度のゾーンを含んでなる。
【0038】
炭素繊維はエンドレスファイバーの形態をしている。エンドレスファイバーという用語は、少なくとも数メートルの長さを有する繊維材料を意味すると理解されるべきである。これらは、例えばロールまたはスプールからほどかれる。使用可能な繊維材料は、個々の繊維、いわゆる繊維ロービング、編組繊維、繊維マット、ノンクリンプ繊維織物、および織り繊維織物である。特に、編組繊維、撚り繊維、または織り繊維織布などの繊維集合体の場合、これらの繊維集合体の個々の繊維は、より短い個々の繊維も含みうる。繊維集合体自体はエンドレス(endless)材料の形態でなければならない。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、炭素繊維は繊維ロービングの形態で使用される。
【0040】
更なる実施形態では、好ましくはポリウレタン引抜成形物の縁部領域の炭素繊維の一部はガラス繊維で置き換えることができる。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施形態では、方法工程iii)は、炭素繊維だけでなく、いわゆるピールプライも、好ましくは完成したポリウレタン引抜成形物の少なくとも2つの外側を形成するように射出ボックスに通すことを含んでなる。本発明によるポリウレタン引抜成形物の更なる加工において、このピールプライは、外側から除去されて少なくとも2つの粗い表面を形成でき、したがって、例えばポリウレタン引抜成形物の接着結合を促進する。
【0042】
本発明によるポリウレタン引抜成形物は、例えば、車両および航空機建造ならびに風力発電所の軽量補強形材および構造要素として使用することができる。そのような軽量補強形材を使用して、例えば、風力発電所のローターブレードのいわゆる「スパーキャップ」を製造することができる。
【0043】
本発明は、以下の実施例でより具体的に説明されるものとする。
【実施例
【0044】
本発明のポリウレタン反応性混合物の粘度プロファイルを、成分(A)、(B)、および(C)を混合した後、レオメーターを使用して決定し、本発明のものではないポリウレタン反応性混合物と比較した。
【0045】
レオメーター:Anton Paar製のMCR 502
DIN 53019-1:2008-09(H<<R)に従う粘度測定(d/dt=100 1/秒):d/dt=せん断速度、プレート-プレート測定システムPP25、回転測定。
【0046】
粘度プロファイルを記録するために、表1に報告されているポリオール混合物をいずれの場合にも記載の量の内部離型剤と混合し、激しく攪拌し、23℃に温度制御した。続いて、表1に報告され、23℃に温度制御された指数に対応する量のイソシアネートを加え、混合物を20秒間攪拌した。次に、300μlの混合物を直ちにレオメーターの下部プレートに置き、測定を開始した。測定開始前にレオメーターのプレートを23℃に温度制御しておいた。測定の開始時に、プレート温度を33K/分の速度で139℃まで加熱し、異なる時間間隔後の粘度と最小粘度を測定した。最初のデータポイントは、ポリオール/離型剤混合物とイソシアネートの混合が完了してから15秒後に記録した。
【0047】
ポリウレタン反応性混合物の繊維含浸と硬化をポリウレタン引抜成形物の製造中にさらに評価した。
【0048】
内部寸法が60×5mmの加熱可能な金型と、金型の上流に接続された射出ボックスを備えた引抜成形設備を採用した。したがって、60mmの幅および5mmの壁厚を有する直角形材が生成された。炭素繊維ロービング(三菱レイヨン株式会社製Pyrofil(登録商標)TRW40 50L KNA)を補強材として使用し、射出ボックスと金型を通して引き出した。完成した形材の炭素繊維の濃度は約65体積%であった。表1に報告されているポリオール混合物を、いずれの場合にも指定された量の内部離型剤と混合し、激しく攪拌した。これらの混合物をいずれの場合にも、スタティックミキサーを備えた低圧混合機を使用して、表1に報告されているそれぞれのNCO指数を達成するのに十分なイソシアネートと23℃で混合し、得られたポリウレタン反応性混合物を射出ボックスに連続的に注入した。引抜成形設備の取り出し装置を用いて、湿った炭素繊維を加熱された金型を通して連続的に引き出し、1.50m/分の速度で硬化した。金型の温度制御は、ゾーン1(取り出し方向の金型入口)で170℃、ゾーン2(金型中央)で190℃、ゾーン3(金型出口)で200℃の3つのゾーンに分けた。次いで、完成した形材を連続的に所望の長さに切断した。
【0049】
以下の出発材料を用いた。
・ポリオール1:グリセロール開始トリオール、プロポキシル化、OHN=235mg KOH/g
・ポリオール2:グリセロール開始トリオール、プロポキシル化、OHN=1050mg KOH/g
・ポリオール3:グリセロール開始トリオール、プロポキシル化、OHN=400mg KOH/g
・ポリオール4:プロピレングリコール開始ジオール、プロポキシル化、OHN=28mg KOH/g
・ポリオール5:プロピレングリコール開始ジオール、プロポキシル化、OHN=515mg KOH/g
・ポリオール6:プロピレングリコール開始ジオール、プロポキシル化およびエトキシ化、OHN=57mg KOH/g
・ポリオール7:グリセロール開始トリオール、プロポキシル化、OHN=800mg KOH/g
・グリセロール
・触媒1:ジイソオクチル2,2’-[(ジオクチルスタンニレン)ビス(チオ)]ジアセテート
・触媒2:東ソー株式会社製TOYOCAT-DB30
・水結合剤1:MOLSIV(登録商標)L-UOP製の粉末
・水結合剤2:MOLSIV(登録商標)L-UOP製のペースト(ヒマシ油中のMOLSIV(登録商標)L粉末の50%分散体)
・多官能性酸:ジエチレングリコールとともにフタル酸エステルをベースとする酸、酸価=127mg KOH/g
・内部離型剤1:引抜成形用のLehmann&Voss製のLuvotrent(登録商標)TL HB 550
・内部離型剤2:MOLD WIZ INT-1947 MCH
・MDI1:NCO含有量が32.0重量%、モノマーMDIの含有量が69重量%のポリマーMDI;2,4’-MDIと2,2’-MDIの含有量は合計で8重量%
・MDI2:NCO含有量が31.5重量%、モノマーMDIの含有量が47.5重量%のポリマーMDI;2,4’-MDIと2,2’-MDIの含有量は合計で5.4重量%
・MDI3:NCO含有量が33.6重量%の単量体MDI;2,4’-MDIと2,2’-MDIの含有量は合計で55.1重量%
・MDI4:25℃での粘度が200mPa・s、モノマーMDIの含有量が39重量%のポリマーMDIが80pbw、2,4’-MDIと4,4’-MDIをベースとするモノマーMDIが20pbwの混合物
モノマーMDIの混合物の含有量は51.2重量%である。
【0050】
密度が>1.05g/cmのポリウレタンもたらす例で使用したポリウレタン反応性混合物を表1(重量部での量)に示し、対応する結果を表2にまとめる。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1および2は、反応の開始時に低粘度を示し、炭素繊維の良好な含浸をもたらした。227秒後の高粘度は、引き抜き実験で観察された良好な硬化を反映する。実施例3では、初期粘度は著しく高く、対応する炭素繊維の含浸が不十分であった。実施例4で使用した混合物は良好な繊維含浸をもたらしたが、用いた引出し速度では硬化は完全に不十分であった。実施例5では、成分Bの官能性が低いため、硬化挙動の低下をもたらし、指定の速度ではポリウレタン引抜成形物は金型の端において柔らかすぎた。実施例6および7は、ポリオール系を多官能性酸とともに使用する場合、本発明によるイソシアネートのみが、炭素繊維を用いた引抜成形における良好な繊維含浸と良好な硬化の所望の組み合わせを可能にすることを示している。