(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20230517BHJP
C08G 81/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B32B27/30 D
C08G81/00
(21)【出願番号】P 2019570909
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2018065807
(87)【国際公開番号】W WO2018234150
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】102017210657.3
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500525405
【氏名又は名称】ライプニッツ-インスティチュート フュア ポリマーフォルシュング ドレスデン エーファウ
【氏名又は名称原語表記】Leibniz-Institut fuer Polymerforschung Dresden e.V.
【住所又は居所原語表記】Hohe Strasse 6,D-01069 Dresden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ディーター レーマン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/045044(WO,A1)
【文献】特表2007-510027(JP,A)
【文献】特開2014-065784(JP,A)
【文献】特開2016-056363(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101472965(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08G81/00
C08J7/04
C08J7/00
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質されたペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面において、反応変換の前にプラスチックの表面に存在する反応性-NH-基および/または-OH-基が少なくとも、室温で摩擦学的負荷下での反応変換の後に、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末の少なくとも表面付近の領域に存在する反応性のカルボン酸ハロゲン化物と、ならびに/または前記ペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマーラジカルおよび/またはペルフルオロ-ペルオキシラジカルを介して存在するグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と化学的に共有結合により結合して存在する、改質されたプラスチック表面。
【請求項2】
反応変換の前の前記プラスチックが、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物である成形品および/または部材である、請求項1記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項3】
反応変換の前の前記プラスチックとして、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物が存在し、これ
は、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド尿素、ポリエステル尿素、ポリエステルアミド尿素、ポリエーテルエステル尿素、ポリエーテルエステルアミド尿素であって、それぞれ-NH
2-アミノ基および/または-NHR-アミノ基(ただし、R=アルキル、アルキルアリールおよびアリール)および/または-NH
2-アミド基および/または-NHR
*-アミド基(ただし、R
*=アルキルおよびアルキルアリール)および/または-OH-基を有するもの、ならびにそれらの混合物、または
前記のポリマーとは異なるその他のポリマーとの混合物である、請求項1記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項4】
前記反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物として、
- 脂肪族および/または半芳香族ポリアミド、それらの混合物/ブレンド、および/または
前記のポリマーとは異なるその他のポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- PUR注型用樹脂、ならびに/あるいは
- TPU(熱可塑性ポリウレタン)、TPU混合物/ブレンド、および
前記のポリマーとは異なるその他のポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- 脂肪族置換された-NH-基を有する熱可塑性ポリエステルアミドおよび/またはポリエーテルアミドおよび/またはポリエーテルエステルアミド(PEBA)、それらの混合物/ブレンド、および
前記のポリマーとは異なるその他のポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- 熱硬化性樹脂
または繊維強化された熱硬化性樹脂、
および/または表面の後改質が行われていないか、または後改質が行われているエポキシ樹脂をベースとする
硬化材料、ならびに/あるいは
- 反応性-NH-基および/または-OH-基の他に、さらにオレフィン性不飽和二重結合を有するポリマーまたはポリマー混合物/ブレンドであって、さらに表面の改質反応により
、さらに改質されてもよいもの、
- オレフィン性不飽和二重結合を有するポリマーまたはポリマー混合物/ブレンドであって、表面の改質反応により
、さらに改質されてもよいもの、
が存在する、請求項3記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項5】
放射化学的および/またはプラズマ化学的な処理により改質されている、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が存在する、請求項1記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項6】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末として、改質されたPTFEおよび/またはPFAおよび/またはFEP
が存在する、請求項1記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項7】
前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、ペルフルオロポリマーカルボン酸塩化物を前記反応性のカルボン酸ハロゲン化物として有し、(メタ)アクリル酸塩化物をラジカルによりグラフトされた前記(メタ)アクリル酸ハロゲン化物として有する、請求項1記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項8】
局所的に、または少なくとも部分的に
、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末により被覆されており、かつ共有結合によって結合されている、請求項1記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項9】
粒径が60~80nmから500μmまでの範
囲にある改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が存在する、請求項1記載の改質されたプラスチック表面。
【請求項10】
反応性のカルボン酸ハロゲン化物を、および/またはペルフルオロポリマーラジカルおよび/またはペルフルオロ-ペルオキシラジカルによりグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を、粉末粒子の少なくとも表面付近の領域に有する前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、反応性-NH-基および/または-OH-基を少なくとも表面に有するプラスチックの固体表面に室温で施与され、前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末の施与の間および/または施与後に、摩擦学的負荷下で反応変換が実施される、
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を有する改質されたプラスチック表面を製造する方法。
【請求項11】
前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末をペルフルオロポリマーラジカルおよび/またはペルフルオロ-ペルオキシラジカルによりグラフトするために、グラフト反応後および反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質される(メタ)アクリル酸モノマーが添加される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末として、改質されたPTFE粉末および/またはPFA粉末および/またはFEP粉
末が使用される、請求項10記載の方法。
【請求項13】
50kGy
超の放射線量で改質された、放射化学的に改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
反応体の存在下で
、酸素の影響下で放射化学的に改質された、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記反応性のカルボン酸ハロゲン化物として、ペルフルオロポリマーカルボン酸塩化物を有し、かつ前記ペルフルオロポリマーラジカルおよび/またはペルフルオロ-ペルオキシラジカルによりグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物として、(メタ)アクリル酸塩化物を有する、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
カルボン酸ハロゲン化物
基を、ペルフルオロポリマー1kgあたり少なくとも5mmo
lの濃度で有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用される、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記プラスチックとして、反応性-NH-基および/または-OH-基を有し、-NH-基でアルキル化および/またはアシル化が可能なポリマー化合物が使用される、請求項10記載の方法。
【請求項18】
前記プラスチックとして、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物が使用され、これ
は、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド尿素、ポリエステル尿素、ポリエステルアミド尿素、ポリエーテルエステル尿素、ポリエーテルエステルアミド尿素であって、それぞれ-NH
2-アミノ基および/または-NHR-アミノ基(ただし、R=アルキル、アルキルアリールおよびアリール)および/または-NH
2-アミド基および/または-NHR
*-アミド基(ただし、R
*=アルキルおよびアルキルアリール)および/または-OH-基を有するもの、ならびにそれらの混合物、または
前記のポリマーとは異なるその他のポリマーとの混合物である、請求項10記載の方法。
【請求項19】
18~25℃で、前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が前記プラスチック表面に施与される、請求項10記載の方法。
【請求項20】
前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、200℃ま
での温度を有する固体プラスチック表面上に施与される、請求項10記載の方法。
【請求項21】
摩擦学的負荷下での前記反応変換が、
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の
物体を用いることなく、または前記
物体を用いて、圧力負荷下でのラビングおよび/またはブラッシングにより、および/または超音波により、ならびに/あるいは
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の
物体の加速による負荷により、
実現され、
ここで、前記摩擦学的負荷は、前記放射化学的および/またはプラズマ化学的に改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を前記固体プラスチックの表面上へ施与している間に、および/または施与後に行われる、請求項10記載の方法。
【請求項22】
前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末の施与が、摩擦学的負荷下での前記反応変換の前に実現され、前記改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、静電気吸着により前記固体プラスチック表面上に配置される、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学の分野に関連し、摩擦学的条件下で使用するために組立て特性(Montageeigenschaften)および/または滑り摩擦特性が改善されており、かつ摩耗が低減されており、特に、機械製造において一般的に、またシーリング技術/動的シーリング系および自動車技術の専門領域で使用可能な、ペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面、ならびにそのような改質を行う方法に関する。
【0002】
プラスチックとは、主に高分子からなる材料を指す(Wikipedia、キーワード プラスチック)。
【0003】
ポリマーとは、高分子からなる化学物質である(Wikipedia、キーワード ポリマー)。
【0004】
ペルフルオロアルキルポリマー、例えばPTFEおよび/またはPFAは、高エネルギーの/エネルギーに富む放射線、例えば電子線および/またはガンマ線の作用により放射化学的に分解されることが知られている[K.Lunkwitz等、Journal of Fluorine Chemistry125(2004)863~873]。
【0005】
「酸素の存在下でPTFEに照射すると、まず生成されるペルフルオロアルキルラジカルからペルオキシラジカルおよびアルコキシラジカルが形成され...。
【0006】
アルコキシラジカル形成の中間段階を経由して、末端ペルフルオロアルキルラジカルは、鎖短縮(Kettenverkuerzung)およびカルボニルジフルオリドの形成により段階的に分解され...。
【0007】
それに対して、側鎖アルコキシラジカルから、ペルフルオロアルカン酸フッ化物および末端ペルフルオロアルキルラジカルが生成し...。
【0008】
未焼結および未圧縮のPTFE乳化重合体およびPTFE懸濁重合体は、繊維状ないしフェルト状の性質を有する。例えばPTFEの付着防止特性および滑り特性は、水性分散液または有機分散液、ポリマー、染料、塗料、樹脂または滑剤へ導入することによって別の媒体に移すことはできない。というのも、このPTFEは、均質化が不可能であり、凝固の傾向を示し、凝集し、浮遊または沈殿してしまうからである。
【0009】
約100kGyのエネルギー線量を有するエネルギーに富む放射線の作用により、ポリマー鎖の部分的な分解に基づいて、繊維状ないしフェルト状の重合体から、流動性の微粉末が得られる。この粉末は、なおも脆い凝集物を含んでおり、この凝集物は、容易に粒径5μm未満の一次粒子へと分割されうる。反応体の存在下で照射すると、官能基がポリマーに組み込まれる。照射が空気中で行われると、...(および続いて、空気中の水分による-COF-基の加水分解)カルボキシル基が得られる。...このPTFEの有利な特性、例えば優れた滑り特性、分離特性および乾燥潤滑特性、ならびに高い化学的安定性および熱的安定性は、維持される...」[A.Heger等、Technologie der Strahlenchemie an Polymeren、Akademie-Verlag Berlin 1990]。
【0010】
ペルフルオロアルキルポリマーへのそのような照射において、別の材料と非相容性であることは、様々な不利な結果をもたらす。
【0011】
(1.)液体アンモニア中のナトリウムアミドおよび(2.)非プロトン性不活性溶媒中のアルカリアルキル化合物およびアルカリ芳香族化合物を用いた公知の方法によるPTFEの化学的活性化によっても、PTFEの改質を達成することができる。この改質により、改善された界面相互作用を達成することができる。
【0012】
照射後のPTFE分解生成物は、様々な使用分野において利用され、例えば、滑り特性または付着防止特性の達成を目的として、プラスチックへの添加剤としても利用される。これらの微粉末物質は、多少なりとも微細に分散されて充填剤成分としてマトリックス中に存在する[Ferse等、Plaste u. Kautschuk、29(1982)、458;DD146 716]。
【0013】
PTFE微粉末を使用することにより、市販のフルオロカーボン不含添加剤に比べて、特性の改善が達成される。
【0014】
米国特許第5,576,106号明細書によると、その表面に非単独重合エチレン性不飽和化合物がグラフトされているフッ素含有プラスチック粒子、例えばETFEからなる、グラフトされたフッ素含有プラスチックが知られているが、これはペルフルオロポリマーに属するものではない。この場合、非単独重合エチレン性不飽和化合物は、酸、エステルまたは無水物であってもよい。
【0015】
また、独国特許出願公開第19823609号明細書から、ポリアミド物質とペルフルオロアルキル物質(複数可)とからなるコンパウンドおよびこのコンパウンドとさらなるポリマー物質との混合物の製造、ならびにこれを製造する方法、およびその使用が知られており、ここで、改質されたペルフルオロアルキル物質(複数可)は、ポリアミド化合物(複数可)と一緒に反応変換を介して均質化されて溶融物になる。
【0016】
独国特許出願公開第10351812号明細書には、「酸素の影響下で放射化学的および/またはプラズマ化学的に改質されたペルフルオロポリマーからなり、同時にその表面に、-COOH-基および/または-COF-基と、反応性ペルフルオロアルキル(ペルオキシ)ラジカル中心とを有する改質されたペルフルオロプラスチックであって、後の反応により、幾つかもしくはすべての基を介して、および/または幾つかもしくはすべての中心に、さらなる低分子量および/もしくはオリゴマー状および/もしくはポリマー状の物質、ならびに/またはオレフィン性不飽和モノマー、ならびに/またはオレフィン性不飽和オリゴマー、ならびに/またはオレフィン性不飽和ポリマー、またはそれらの混合物が結合されている」と記載されている。
【0017】
独国特許出願公開第102014225672号明細書には、「少なくとも官能性および/または熱活性の基を有するPTFE微粉末が、少なくとも1種の反応性もしくは熱反応性の、および/または触媒により活性化可能な-NH-基を有する、少なくとも1種の低分子量および/またはオリゴマー状の化合物と、低分子量および/またはオリゴマー状の化合物100mmol未満に対してPTFE微粉末100gの比で混合され、熱的および機械的な負荷で、または機械的な負荷で、反応により変換される、改質されたPTFE固体滑剤を製造する方法」が記載されている。
【0018】
放射化学的および/またはプラズマ化学的な改質および/または重合プロセスに由来する-COOH-および/または-COF-官能基での反応変換による、ペルフルオロポリマーまたはペルフルオロアルキル物質、特にPTFEと、-NH-基を有する低分子量および/またはオリゴマー状および/またはポリマー状の化合物との結合反応は、溶融により行われ、改質されたペルフルオロポリマーが-NH-基含有化合物と反応により変換されて溶融物になるか、またはペルフルオロポリマー固体粉末押出で行われて、粉末としてのペルフルオロポリマーが-NH-基含有化合物と反応により変換される。
【0019】
さらに、基材表面の改質方法としては、プラズマ重合が知られており、この方法では、例えば、ペルフルオロ層も基材表面で直接生成される。
【0020】
「プラズマ重合とは、プラズマ活性化による化学気相蒸着(PE-CVD)の特殊な変形形態である。
【0021】
プラズマ重合では、まず蒸気状の有機前駆体化合物(前駆体モノマー)が、プロセスチャンバ内でプラズマにより活性化される。この活性化により、イオン化された分子が生成され、すでに気相において、第一の分子断片がクラスターまたは鎖の形態で形成される。続いて、この断片を基材表面において縮合させることで、基材温度、電子衝突およびイオン衝突の作用により重合が起こり、それにより、密閉層が形成される。
【0022】
生成される「プラズマポリマー」の構造は、プラズマポリマーが非常にランダムな共有結合による網目構造を形成するため、強く架橋された熱硬化性樹脂と類似している。よって、単結晶または多結晶の形態にある鎖状ポリマーの堆積は、プラズマ重合では不可能である。」[wikipedia.org/wiki/Plasmapolymerisation]。
【0023】
独国特許出願公開第10042566号明細書から、成形プロセスの間または直後、または成形プロセス後に、1種以上の改質剤を、成形されたプラスチックの表面と完全にまたは部分的に接触させ、かつプラスチック表面の温度が少なくともDSC曲線の反応ピークのオンセット温度である、プラスチック表面の改質方法であって、改質剤として、成形されたプラスチックの表面と反応を生じ、かつ/または相互拡散により表面に侵入し、かつ/または表面で溶融する物質が使用される方法が知られている。
【0024】
その際、プラスチックとして、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、TPUおよびPVCが表面改質され、ここで改質反応としては、置換反応における官能性基の変換のみが挙げられ、これには、カルボニル化合物の反応も含まれていた。さらに、例においては、射出成形中の表面改質だけが、「界面反応射出成形」法のベースとして記載されている。
【0025】
独国特許出願公開第10042566号明細書の特殊な方法では、表面のパッシベーションを行い、「同じ材料から可動部を製造...。表面が改質されたプラスチック予備射出成型部材を製造した後に、少なくとも1種の反応性基を有する化合物からなる改質剤を用いてパッシベーションするために、1種以上のさらなる成分を、射出、施与または注入してもよく、ここで、少なくとも1種の官能基を有する、好適には過フッ素化および/もしくはフッ素含有および/もしくはケイ素含有および/もしくはパラフィン性の低分子量および/もしくはオリゴマー状および/もしくはポリマー状の化合物またはそれらの混合物が使用される。官能基は、改質により表面で改質剤の一部を直接結合する役割、および/またはそれ自体を反応させて分岐および/または架橋した薄い膜にする役割を果たし、この膜はさらに、残りの官能基と溶融物表面のポリマーとの化学結合を介して反応し、これらを改質し...。組立て射出成形(Montagespritzgiessen)において可動部品を製造するための要素間の界面における十分な分離のために....」。このために、例15では、射出成形プロセスにおけるPA6の表面改質/パッシベーションのために、ペルフルオロヘプタン酸無水物が使用される。
【0026】
「表面技術において、パッシベーションとは、ベース材料の腐食を防止するか、または大幅に遅らせる、金属材料上の保護層が自発的に生成されること、または意図的に作製されることと理解される」[https://de.wikipedia.org/wiki/Passivierung]。
【0027】
また、特にペルフルオロポリマー粒子の表面付近の領域にある、酸素の影響下での照射プロセス中に生成されたフッ化カルボニル基が、水分の影響により加水分解されて、かなり反応性の低いカルボン酸になることが知られている。独国特許出願公開第19823609号明細書から知られているように、カルボン酸は、せん断下での反応押出成形の間、溶融接触においてのみ、例えばポリアミドと反応する。よって、立体的に覆われた状態にあることを理由にペルフルオロポリマー粒子内部で小さな水分子が結合できない残りのフッ化カルボニル基は、維持され、すなわち、反応性押出成形のように、極度のせん断条件下で結合反応が可能であるにすぎない。
【0028】
D.Fischer等は、放射化学的に改質されたPTFEの加水分解挙動について調査した[D.Fischer等、Polymer39(1998)3、573~582]。疎水性であるにもかかわらず、PTFEには水分が吸着されているため、形成されたフッ化カルボニル基の加水分解は、すでに照射の間に始まり、フッ化水素酸が放出され、それにより、照射されるペルフルオロポリマー、例えばPTFEの表面および表面付近の領域には、室温で結合反応に反応性を示さないカルボン酸だけが存在する。
【0029】
LappanおよびGeisslerは、カルボン酸で官能化されたPTFE微粉末の調査において、粒子表面における僅かな割合のカルボン酸基のみが滴定に利用可能であること、すなわち、粒子表面のこれらの-COOH-基が特に迅速に加水分解することを発見した[Macromol.Mater.Eng.2008、293、538~542]。特に高分子電解質滴定により、表面付近におけるカルボン酸基の濃度が非常に低いことが証明されている。カルボン酸基は200℃超の温度で熱的に安定していないことも記載されていた。
【0030】
摩擦学的条件での使用が意図されているプラスチック表面にとって、組立て特性および/または滑り摩擦特性がなおも十分に良好ではないこと、ならびに摩耗がなおも高過ぎることは、従来技術の公知の解決策における欠点である。
【0031】
本発明の課題は、ペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面であって、それにより、摩擦学的条件での使用が意図されているプラスチック表面の組立て特性および/または滑り摩擦特性が著しく改善され、かつ摩耗が非常に僅かになるプラスチック表面を記載することにある。さらに、本発明の課題は、ペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面を製造するための単純かつコスト面で有利な方法を記載することである。
【0032】
これらの課題は、特許請求の範囲に記載の本発明により解決される。有利な形態は、従属請求項の対象である。
【0033】
ペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面において、プラスチック表面に存在する反応性-NH-基および/または-OH-基は少なくとも、室温における機械的負荷下での反応変換の後に、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末の少なくとも表面付近の領域に存在するペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物と、ならびに/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルを介して存在するグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、および/もしくは反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質される(メタ)アクリル酸と化学的に共有結合で結合して存在する。
【0034】
プラスチックは、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物である成形品および/または部材であることが有利である。
【0035】
プラスチックとしては、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物が存在することが同様に有利であり、これは、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド尿素、ポリエステル尿素、ポリエステルアミド尿素、ポリエーテルエステル尿素、ポリエーテルエステルアミド尿素であって、それぞれ-NH2-アミノ基および/または-NHR-アミノ基(ただし、R=アルキル、アルキルアリールおよびアリール)および/または-NH2-アミド基および/または-NHR*-アミド基(ただし、R*=アルキルおよびアルキルアリール)および/または-OH-基を有するもの、ならびにそれらの混合物、またはその他のポリマーとの混合物であることが有利である。
【0036】
反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物としては、以下のものが存在することがさらに有利である:
- 脂肪族および/または半芳香族ポリアミド、それらの混合物/ブレンド、および/またはさらなるポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- PUR注型用樹脂、ならびに/あるいは
- TPU(熱可塑性ポリウレタン)、TPU混合物/ブレンド、およびさらなるポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- 脂肪族置換された-NH-基を有する熱可塑性ポリエステルアミドおよび/またはポリエーテルアミドおよび/またはポリエーテルエステルアミド(PEBA)、およびそれらの混合物/ブレンド、およびさらなるポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- デュロマー、特に繊維強化されたデュロマー、例えば、プリプレグおよび/または硬化材料としてのBMC(バルク成形コンパウンド)またはSMC(シート成形コンパウンド)、有利には、例えばアンモニアおよび/または(ポリ)アミンによる表面の後改質が行われていないか、または後改質が行われているエポキシ樹脂をベースとするもの、ならびに/あるいは
- 反応性-NH-基および/または-OH-基の他に、さらにオレフィン性不飽和二重結合を有するポリマーまたはポリマー混合物/ブレンドであって、さらに表面の改質反応により、有利にはクロロヒドリン形成またはエポキシド化により、場合により、さらにそれに引き続き、アンモニアおよび/または(ポリ)アミンとのさらなる反応によってさらに改質されるもの、
- オレフィン性不飽和二重結合を有するポリマーまたはポリマー混合物/ブレンドであって、表面の改質反応により、有利にはクロロヒドリン形成またはエポキシド化により、場合により、さらにそれに引き続き、アンモニアおよび/またはアミンとの反応でさらに改質されるもの。
【0037】
また、放射化学的および/またはプラズマ化学的な処理により改質された改質ペルフルオロポリマー(微)粉末が存在することが有利である。
【0038】
また、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末としては、改質されたPTFEおよび/またはPFAおよび/またはFEPが、有利には放射化学的および/またはプラズマ化学的な処理により改質されたPTFEおよび/またはPFAおよび/またはFEPが存在すると有利である。
【0039】
さらに、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、ペルフルオロポリマーカルボン酸塩化物をペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物として有し、(メタ)アクリル酸塩化物をラジカルグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物として有すると有利である。
【0040】
プラスチック表面が、局所的に、または少なくとも部分的に、好適にはほぼ完全に、または完全に、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末で被覆されており、かつ共有結合で結合されていると同様に有利である。
【0041】
また、粒径が60~80nmから500μmまでの範囲、好適には200nmから5μmまでの範囲にある改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が存在すると有利である。
【0042】
ペルフルオロポリマー(微)粉末を有する改質されたプラスチック表面を製造する本発明による方法では、反応性カルボン酸ハロゲン化物を、および/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルによりグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の少なくとも表面付近の領域に有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、反応性-NH-基および/または-OH-基を少なくとも表面に有するプラスチックの固体表面に室温で施与され、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を施与している間および/または施与後に、機械的負荷下で反応変換が実施される。
【0043】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末をペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルによりグラフトするには、グラフト反応後および反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質される(メタ)アクリル酸モノマーが添加されることが有利である。
【0044】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末としては、改質されたPTFE粉末および/またはPFA粉末および/またはFEP粉末、有利には、放射化学的および/またはプラズマ化学的な処理により改質されたPTFE粉末および/またはPFA粉末および/またはFEP粉末が使用されることが同様に有利である。
【0045】
さらに、50kGy超、好適には100kGy以上の放射線量で改質された、放射化学的に改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用されることが有利である。
【0046】
また、反応体の存在下で、好適には酸素の影響下で放射化学的に改質された改質ペルフルオロポリマー(微)粉末が使用されることが有利である。
【0047】
また、ペルフルオロポリマーカルボン酸塩化物をペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物として有し、(メタ)アクリル酸塩化物をラジカルグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物として有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用されると有利である。
【0048】
さらに、カルボン酸ハロゲン化物基、好適にはカルボン酸塩化物基を、ペルフルオロポリマー1kgあたり少なくとも5mmol、好適には1kgあたり30mmol超の濃度で有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用されると有利である。
【0049】
プラスチックとしては、反応性-NH-基および/または-OH-基を有し、-NH-基でアルキル化および/またはアシル化が可能なポリマー化合物が使用されると同様に有利である。
【0050】
また、プラスチックとしては、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物が使用されると有利であり、これは、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド尿素、ポリエステル尿素、ポリエステルアミド尿素、ポリエーテルエステル尿素、ポリエーテルエステルアミド尿素であって、それぞれ-NH2-アミノ基および/または-NHR-アミノ基(ただし、R=アルキル、アルキルアリールおよびアリール)および/または-NH2-アミド基および/または-NHR*-アミド基(ただし、R*=アルキルおよびアルキルアリール)および/または-OH-基を有するもの、ならびにそれらの混合物、または別のポリマーとの混合物であることが有利である。
【0051】
また、室温、好適には18~25℃で、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末がプラスチック表面に施与されると有利である。
【0052】
さらに、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、200℃まで、好適には150℃までの温度を有する固体プラスチック表面に施与されると有利である。
【0053】
機械的負荷下での反応変換は、
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体を用いずに、または前記担体を用いて、圧力負荷、例えば、ラビングおよび/またはブラッシングおよび/または超音波により、ならびに/あるいは
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体の加速による負荷により、
実現されると同様に有利であり、
ここで、機械的負荷は、放射化学的および/またはプラズマ化学的に改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を固体プラスチック表面へ施与している間に、および/または施与後に実現される。
【0054】
また、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末の施与が、機械的負荷下での反応変換の前に実現され、かつ改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、静電気吸着により固体プラスチック表面に配置されると有利である。
【0055】
本発明により、ペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面を記載することが初めて可能になり、それにより、摩擦学的条件での使用が意図されているプラスチック表面は、組立て特性および/または滑り摩擦特性が著しく改善され、かつ摩耗が非常に僅かになる。同様に、そのような改質されたプラスチック表面を単純かつコスト面で有利な方法で製造することも初めて可能になる。
【0056】
これは、プラスチック表面に存在する反応性-NH-基および/または-OH-基が少なくとも、室温での機械的負荷下での反応変換の後に、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末の少なくとも表面付近の領域に存在するペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物と、ならびに/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルを介して存在するグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、および/もしくは反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質される(メタ)アクリル酸と化学的に共有結合により結合して存在する、ペルフルオロポリマーを有する改質されたプラスチック表面により達成される。
【0057】
本発明による解決策により、カルボン酸ハロゲン化物を、ならびに/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルによりグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を、および/もしくはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルによりグラフトされ、事後的に、ただし反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質された(メタ)アクリル酸を、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の表面に少なくとも有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、反応性-NH-基および/または-OH-基を少なくとも表面に有するプラスチック表面と化学的に共有結合により結合されており、それにより、摩擦学的な条件での使用が意図されているプラスチック表面は、摩擦学的特性が著しく改善される。
【0058】
本発明の文脈において、ペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルとは、ペルフルオロポリマーのすべてのラジカル、特にまたペルフルオロアルキル(ペルオキシ)ラジカルであって、ペルフルオロポリマーを製造している間の、および/または事後的な改質、例えば放射化学的および/またはプラズマ化学的な改質の間に生成したものと理解されるべきである。
【0059】
プラスチックとしては、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマー化合物である成形品および/または部材が存在することが有利である。
【0060】
本発明の文脈において、反応性-NH-基とは、第一級および第二級アミン、ならびに/あるいはアミド基、尿素基、ウレタン基、アロファネート基、ビウレット基およびスルホンアミド基を有するあらゆる脂肪族化合物、ならびにまた、アンモニアおよび/または第一級脂肪族アミンにより形成され、かつ少なくともさらに1個の-NH2-基および/または-NH-基を有する、アミド化合物、尿素化合物、ウレタン化合物、アロファネート化合物、ビウレット化合物およびスルホン化合物であると理解されるべきである。すなわち、反応性-NH-基を有する化合物とは、-NH-基でアルキル化可能であり、かつ/またはカルボン酸ハロゲン化物と反応するあらゆる化合物、特にポリマーであると理解される。
【0061】
本発明の文脈において、-OH-基を有するプラスチックとは、アルコール性の、例えば脂肪族結合した、および/またはフェノール性の、例えば芳香族結合した-OH-基を有するあらゆるポリマー化合物であると理解されるべきであり、ここで、ペルフルオロアルキルカルボン酸ハロゲン化物を有する、反応変換で形成されたエステル基は、カルボニル活性(Carbonylaktivitaet)を理由に、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物で形成されたエステル基よりも耐加水分解性が低くなる。よって、-OH-基のみを有するプラスチック表面において、改質されたペルフルオロポリマーのエステル基の共有結合を介した結合のもとで反応変換するには、さらにグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を使用することが好ましい。
【0062】
多くの場合、プラスチックは、表面に、反応性-NH-基および-OH-基を有するか、反応性-NH-基のみを有するか、または-OH-基のみを有しており、そのため、当業者であれば、その専門知識を用いて、どのような改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を表面改質に使用することが好ましいか、すなわち、ペルフルオロアルキルカルボン酸ハロゲン化物のみを有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末、および/またはグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物のみを有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末、またはペルフルオロアルキルカルボン酸基と、グラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物とを有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末、またはペルフルオロアルキルカルボン酸ハロゲン化物と、グラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物とを有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を、機械的負荷下での反応変換に使用するのかを判断することができ、当業者であれば、どのようなペルフルオロポリマー改質体で最適な表面改質が得られるのかを、わずかな実験で容易に試験することができる。
【0063】
そのようなポリマー化合物群は、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエーテル尿素、ポリエーテルアミド尿素、ポリエステル尿素、ポリエステルアミド尿素、ポリエーテルエステル尿素、ポリエーテルエステルアミド尿素であって、それぞれ-NH2-アミノ基および/または-NHR-アミノ基(ただし、R=アルキル、アルキルアリールおよびアリール)および/または-NH2-アミド基および/または-NHR*-アミド基(ただし、R*=アルキルおよびアルキルアリール)および/または-OH-基を有するもの、ならびにそれらの混合物、またはその他のポリマーとの混合物であることが有利である。
【0064】
反応性-NH-基を有する有利なポリマー化合物は、以下のものである:
- 脂肪族および/または半芳香族ポリアミド、それらの混合物/ブレンド、および/またはその他のポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- -OH-基も含み得るPUR注型用樹脂、ならびに/あるいは
- TPU(熱可塑性ポリウレタン)、-OH-も含み得るTPU混合物/ブレンド、およびその他のポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- 脂肪族置換された-NH-基を有する熱可塑性ポリエステルアミドおよび/またはポリエーテルアミドおよび/またはポリエーテルエステルアミド(PEBA)、および-OH-基も含み得るそれらの混合物/ブレンド、およびその他のポリマーとの混合物/ブレンド、ならびに/あるいは
- デュロマー、特に繊維強化されたデュロマー、例えば、プリプレグおよび/または硬化材料としてのBMC(バルク成形コンパウンド)またはSMC(シート成形コンパウンド)であって、特殊な改質により反応性-NH-基を表面に有するもの、ならびに/あるいは
- エラストマーおよび/または熱可塑性樹脂および/またはデュロマーまたはポリマー混合物/ブレンドであって、反応性-NH-基の他に、さらに-OH-基および/またはオレフィン性不飽和二重結合を有するもの。
【0065】
放射化学的および/またはプラズマ化学的な処理により改質された改質ペルフルオロポリマー(微)粉末が存在することが有利である。
【0066】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末としては、その表面付近の(ペルフルオロアルキルカルボン酸フッ化物から加水分解で生成した)ペルフルオロアルキルカルボン酸基が改質されてカルボン酸ハロゲン化物になった、放射化学的および/またはプラズマ化学的な処理により改質されたPTFEおよび/またはPFAおよび/またはFEPが、および/または有利には(メタ)アクリル酸ハロゲン化物および/または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質された(メタ)アクリル酸でのラジカルグラフトにより化学的に改質されたPTFEおよび/またはPFAおよび/またはFEPが存在することが有利である。
【0067】
その際、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、ペルフルオロポリマーカルボン酸塩化物をペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物として有すると、および/または(メタ)アクリル酸塩化物をラジカルグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物として有すると有利である。
【0068】
本発明による共有結合は、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物、および/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルにグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、および/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルにグラフトされた、反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質される(メタ)アクリル酸と、少なくともプラスチック表面にある反応性-NH-基および/または-OH-基との間で行われ、それにより、ペルフルオロポリマー(微)粉末は、プラスチック表面に化学的に共有結合で結合され、それにより固定されている。
【0069】
その際、プラスチック表面は、少なくとも部分的にまたは局所的に画定されて、好適にはほぼ完全に、または完全に、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末により被覆されており、かつ共有結合によって結合されているべきである。
【0070】
ペルフルオロポリマー(微)粉末としては、特殊なPTFEエマルションポリマーの下限一次粒子径としての60~80nmから、凝集物としての500μmまでの範囲にある粒径を有する粉末が存在し、殊に、凝集したペルフルオロポリマー粒子が200nm~5μmの範囲で存在することが好ましい。
【0071】
プラスチック成形体および/または部材であって、ペルフルオロポリマー(微)粉末が機械的負荷により施与および共有結合で結合されることで、ペルフルオロポリマー固体滑剤が、プラスチック成形体および/または部材の表面に存在し、そこで化学的に結合および固定されているプラスチック成形体および/または部材が、本発明により改質されたプラスチック表面と共に存在する。
【0072】
それにより、プラスチック成形体および/または部材の摩擦学的適用において、組立て特性および/または滑り摩擦特性が著しく改善され、かつ摩耗が非常に僅かになり、それにより、プラスチック成形体および/または部材の寿命も延長される。
【0073】
本発明による方法では、反応性カルボン酸ハロゲン化物を、および/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルによりグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の少なくとも表面付近の領域に有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、反応性-NH-基および/または-OH-基を少なくとも表面に有するプラスチックの固体表面に室温で施与され、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末の施与の間および/または後に、機械的負荷下で反応変換が実施される。
【0074】
本発明によると、本発明による改質されたプラスチック表面を製造するための出発物質としては、(メタ)アクリル酸モノマーでグラフトされたペルフルオロポリマー(微)粉末も添加されてもよいが、ただしここで、グラフトされた(メタ)アクリル酸は、反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質され、その後に、反応変換において、ペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルによりグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物として存在する。その点で、反応変換前には常に、グラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を有するペルフルオロポリマー(微)粉末が存在する。
【0075】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末としては、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物との、および/または事後的に、ただし反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質された(メタ)アクリル酸とのペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルを介したラジカルグラフトにより化学的に生成されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用されることが有利であり、ここで、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物のグラフト反応は、ペルフルオロポリマー(微)粉末上で行われる。これらのペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルは、ペルフルオロポリマー(微)粉末の重合プロセスに由来するか、またはペルフルオロポリマー(微)粉末の放射化学的および/またはプラズマ化学的な改質の後に存在する。
【0076】
そのような改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末は、改質されたPTFE(微)粉末および/またはPFA(微)粉末および/またはFEP(微)粉末、および/または有利には、その表面付近のペルフルオロポリマーカルボン酸基が改質されてペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物になった、放射化学的および/またはプラズマ化学的な処理により改質されたPTFE(微)粉末および/またはPFA(微)粉末および/またはFEP(微)粉末であることが有利である。
【0077】
反応性ペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物を、および/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルによりグラフトされた、好適には(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の表面に少なくとも有する改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末としては、50kGy超、好適には100kGy以上の放射線量で改質された、放射化学的に改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用されることが有利である。
【0078】
ペルフルオロポリマー(微)粉末が放射化学的に改質される場合、これを反応体の存在下、好適には酸素の影響下で実現することがさらに有利である。ペルフルオロポリマー(微)粉末を酸素の存在下で放射化学的および/またはプラズマ化学的に処理することにより、ペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルおよび官能基が生成され、その際、酸素の存在下で、処理する際に、酸素が結合し易いペルフルオロポリマーペルオキシラジカルが、ペルフルオロポリマー粒子表面に生成される。
【0079】
その際、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末としては、ペルフルオロポリマーカルボン酸塩化物をペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物として有する粉末、および/または(メタ)アクリル酸塩化物をラジカルグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物として有する粉末が使用されると有利である。
【0080】
全体としては、使用される改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、カルボン酸ハロゲン化物基、好適にはカルボン酸塩化物基を、ペルフルオロポリマー1kgあたり少なくとも5mmol、好適には1kgあたり30mmol超の濃度で、ペルフルオロポリマー粒子の表面付近の領域に有すると非常に有利である。
【0081】
放射化学的および/またはプラズマ化学的に改質させる際に、ペルフルオロポリマー(微)粉末は、純粋な形態で使用されても、または混合物として使用されてもよく、ここで、再生品/再利用品が使用されてもよい。放射化学的および/またはプラズマ化学的に改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を粉砕することが有利であると判明したが、これは必ずしも必要ではない。ペルフルオロポリマー(微)粉末の放射化学的および/またはプラズマ化学的な改質は、公知の方法に従って実施され、この方法では、ペルフルオロポリマー(微)粉末が、高エネルギーの電磁放射線、例えばガンマ線および/もしくはレントゲン照射、ならびに/または粒子放射線、例えば電子線により、少なくとも50kGy、有利には100kGy以上の放射線量で、不活性ガスのもと、または好適には反応体、例えば(空気中の)酸素の存在下にて照射され、ペルフルオロポリマー1gあたり5×1016スピン超、好適にはペルフルオロポリマー1gあたり1018スピン超の濃度のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルが、ペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の表面付近の領域において、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物の、および/または事後的に、ただし反応変換前に(メタ)アクリル酸ハロゲン化物へと改質された(メタ)アクリル酸の、場合によって引き続き行われるラジカルグラフトのために、また表面付近の領域において、ペルフルオロポリマー粒子のペルフルオロポリマー1kgあたり少なくとも5mmol、好適には1kgあたり30mmol超の濃度のペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物基およびペルフルオロポリマーカルボン酸基との(直接の)ペルフルオロポリマー官能化のために生成される。ペルフルオロポリマー(微)粉末に100~2000kGyの放射線量を照射することが工業的に有利であることが判明し、ここで、生じたラジカル濃度は、各放射プロセスの形式および使用されるペルフルオロポリマー(微)粉末の種類に強く依存する。また他方では、(メタ)アクリル酸(ハロゲン化物)でのグラフトにより官能化/改質される重合プロセスおよび/またはプラズマ改質プロセスからの、ペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の表面付近の領域にあるペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルの濃度がペルフルオロポリマー1gあたり0.5×1017スピン超である、特別に重合および/またはプラズマ処理されたペルフルオロポリマー(微)粉末が使用されてもよい。
【0082】
本発明によると、プラスチックとしては、反応性-NH-基および/または-OH-基をプラスチック表面に有するポリマー化合物を使用することが有利であり、これは、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリアミドアミン、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリウレタン尿素、ポリエーテル尿素、ポリエステル尿素、ポリエーテルエステル尿素であって、それぞれ反応性-NH2-アミノ基および/または-NHR-アミノ基(ただし、R=アルキルおよび/またはアリール)および/または-NH2-アミド基および/または-NHR-アミド基(ただし、R=アルキル)および/または-OH-基を有するもの、ならびにそれらの混合物、または別のポリマーとの混合物であることが有利である。
【0083】
機械的負荷下での反応変換が、室温、好適には18~25℃で実施されることが同様に有利である。また、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、耐熱性および/または耐熱変形性を考慮して200℃まで、好適には150℃までの温度を有する固体プラスチック表面に施与可能であることが有利である。
【0084】
本発明による解決策にとって特に重要なのは、反応変換が機械的負荷で実現されることであり、これは
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体を用いずに、または担体を用いて、圧力負荷、例えば、ラビングおよび/またはブラッシングおよび/または超音波により、ならびに/あるいは
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体の加速による負荷により、
実現可能であることが有利であり、
ここで、機械的負荷は、プラスチック表面上に存在する、1つ以上の反応性-NH-結合基および/または-OH-結合基に相応して、ペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物および/または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物で改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を、固体プラスチック表面へ施与している間に、および/または施与後に行われる。
【0085】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が機械的負荷下での反応変換前に施与されることにより、有利には、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、例えばマスクを通して局所的にまたは平面全体に、静電気吸着により固体プラスチック表面に配置することができる。
【0086】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を、室温で固体プラスチック表面へ施与している間に、および/または施与後に、本発明により機械的負荷をかけることで、プラスチック表面とペルフルオロポリマー(微)粉末との間の化学結合が初めて達成される。化学結合は、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末のカルボン酸ハロゲン化物基、および/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロアルキル(ペルオキシ)ラジカルにグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と、プラスチックの反応性-NH-基および/または-OH-基とが反応して共有結合を形成することにより生じ、それにより、ペルフルオロポリマー(微)粉末粒子がプラスチック表面に固定される。
【0087】
ただしその際、有利には放射化学的および/またはプラズマ化学的にペルフルオロポリマー(微)粉末を処理する際に生成した、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマーカルボン酸フッ化物基および加水分解により形成されたペルフルオロポリマーカルボン酸基、ならびに/またはペルフルオロポリマー(微)粉末のペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルは、大部分がペルフルオロポリマー粒子表面に直接存在しているのではなく、部分的に表面付近の非晶質領域に存在し、ペルフルオロポリマー鎖により覆われて自由には結合できず、それにより反応において立体的に阻害されていることが重要であり、注目すべきである。
【0088】
さらに、放射化学的な改質により生じた反応性-COF-基は、(空気中の)水分/水分子と接触するとすぐにフッ化水素を開裂し、反応性の低いペルフルオロポリマー-COOH-基へと加水分解される。空気中の水分による加水分解は、表面からペルフルオロポリマー粒子端部域の深さ方向に向かう水分子に対する-COF-基の結合のし易さに相応して起こる。
【0089】
よって、化学的および工業的に本発明によるこれらの改質されたプラスチック表面の製造を可能にするには、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を使用する前に、少なくとも表面付近の、かつ機械的負荷により結合可能なペルフルオロポリマーカルボン酸基を再活性化させてペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物、好適には酸塩化物にすること、および/またはペルフルオロポリマー粒子の(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、好適には(メタ)アクリル酸塩化物をラジカルグラフトにより活性化させること、および結合可能な反応性-NH-基および/または-OH-基を有する成形品または部材の表面における穏やかな条件での結合反応が起こる前にこれらの基をさらなる加水分解から保護することも必要になる。
【0090】
さらに、放射化学的に改質された、およびカルボン酸塩化物として再活性化された、および/または(メタ)アクリル酸塩化物でグラフトされて活性化されたペルフルオロポリマーが、粉末として、または分散液として、好適にはペーストの形態で、不活性媒体(溶媒/分散剤/油)中で、機械的負荷のもとに施与された後に、反応性-NH-基および/または-OH-基を有するプラスチック製の成形品または部材の表面に化学結合が実現される。化学結合は、表面付近に存在する反応性ペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物および/またはグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と、プラスチック表面上の反応性-NH-基および/または-OH-基とが反応して共有結合を形成することにより生じ、それにより、ペルフルオロポリマー粒子がプラスチック表面に固定される。
【0091】
本発明による解決策により、粒子表面の僅かな割合のカルボン酸基しか滴定に用いられない、すなわち、粒子表面のこれらの-COOH-基が特に速く加水分解するという従来技術から公知の欠点[Macromol.Mater.Eng.2008、293、538~542]、および非常に低い濃度の表面付近のカルボン酸しか存在しないという従来技術から公知の欠点を初めて克服することができる。これらの欠点の原因は、表面および表面付近の領域における非晶質領域の官能基が、大部分においてペルフルオロポリマーのペルフルオロアルキル鎖により覆われており、それにより滴定または反応に用いられないことである。
【0092】
本発明により必要な機械的負荷により、ペルフルオロポリマー(微)粉末粒子表面のペルフルオロポリマー鎖が移動し、それにより、それまでペルフルオロポリマー鎖により覆われていたペルフルオロポリマーハロゲン化物および/または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物の形態の官能基が放出され、プラスチック表面の反応性-NH-基および/または-OH-基と直接接触して反応して共有結合を形成することができ、これは、ペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物および/またはグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と反応性-NH-基および/または-OH-基との間で直接接触する際にのみ生じることが可能であり、そのため、プラスチック表面において、非常に強固な粉末の共有結合が実現される。
【0093】
また、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、施与の後に、例えば静電気吸着により、固体プラスチック表面において、後から摩擦学的に負荷をかけるべき箇所でのみ局所的に配置されると有利である。
【0094】
それにより、プラスチック表面、すなわち成形品および部材の形態のプラスチック表面の移動も機械的負荷前に可能になり、粉末は、静電気により固定されているため、表面におけるその位置を変えることができないか、または実質的に変えることができない。
【0095】
改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、不活性媒体中でプラスチック表面に施与される場合、不活性媒体としては、カルボン酸ハロゲン化物基を変化させないあらゆる不活性液、例えば、ガソリン、トルエン、キシレン、ポリエステル油、PAO油、鉱油、シリコーン油、PFPE(ペルフルオロポリエーテル油)またはそれらの混合物が使用されてもよく、ここで、分散液またはさらに良好にはペーストを使用することが有利であり、またエーテル溶媒およびハロゲン化溶媒、ならびにアミド溶媒、例えば、無水DMF、NMP、ジメチルアセトアミド、ジエチルエーテルなどを使用することができるが、これらは、当業者に公知の様々な理由、例えば、防火、防爆、毒性などから推奨できない。
【0096】
さらに、本発明によると、反応変換が機械的負荷下で行われることが重要であり、この機械的負荷は、
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体を用いないか、または担体を用いた圧力負荷、例えばラビングおよび/またはブラッシングおよび/または超音波、ならびに/あるいは
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体の加速による負荷であって、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が、プラスチック表面に予め配置されており、かつ/または加速された担体と一緒に、および/もしくは担体表面に、例えば静電気により吸着して存在した状態で使用される負荷
であることが有利である。
【0097】
パッシベーションのために、高圧および高温を適用して特に少なくとも1種の官能基を有する過フッ素化されたポリマー化合物を施与および固定する独国特許出願公開第10042566号明細書の従来技術に対し、本発明では、機械的負荷により、ペルフルオロポリマー粒子凝集体、続いて個別のペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の表面付近の領域をばらす必要があり、それにより、ペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物および/またはグラフトされた(メタ)アクリル酸ハロゲン化物の放出が達成され、かつそれにより、反応変換および結合が十分な程度で生じることが可能になる。
【0098】
機械的負荷は、例えば以下の方法により実現される。
【0099】
- 純粋な改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末をプラスチック表面上で対向物体(Gegenkoerper)と摩擦する方法、ならびに/あるいは
- 金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体と、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末とを組み合わせて摩擦する方法、ならびに/あるいは
- 改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が荷電/静電気により表面に吸着されて存在する、金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体と組み合わせて摩擦する方法、ならびに/あるいは
- 改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末をプラスチック表面上でブラッシングする方法、ならびに/あるいは
- 改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を、金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体と組み合わせてブラッシングする方法、ならびに/あるいは
- ソノトロードを直接的に対向物体として用いて、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末をプラスチック表面上で平面全体または局所的に擦り込む、超音波(振動)、ならびに/あるいは
- ソノトロードを対向物体として用いて、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末を、金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の担体と組み合わせて、プラスチック表面上で平面全体または局所的に擦り込む、超音波(振動)、ならびに/あるいは
- ソノトロードを用いて、プラスチック部材/成形品が、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末と、金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の(担体)物体、好適には球形のものと一緒に配置されている容器を刺激する、超音波(振動)、ならびに/あるいは
- プラスチック部材/成形品が、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末と、金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の(担体)物体、好適には球形のものと一緒に配置されている振動ミル内で改質させる方法、ならびに/あるいは
- プラスチック部材/成形品が、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末と、金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の(担体)物体、好適には球形のものと一緒に配置されている振とう器/振動機内で改質させる方法、ならびに/あるいは
- プラスチック部材/成形品が、改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末と、金属および/またはセラミックおよび/またはプラスチック製の(担体)物体、好適には球形のものと一緒に配置されている回転式乾燥機(Taumeltrockner)内で改質させる方法、ならびに/あるいは
- 改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が荷電/静電気により表面に吸着されて存在しており、かつ変形/修正された(サンド)ブラスト法の形態で圧縮空気[例えばwww.kst-hagen.de、Kugelstrahltechnik GmbH Hagen]またはTwister[www.twister-sand-strahl-anlage.de、BMF GmbH、Chemnitz]により加速されてプラスチック表面にぶつけられる、金属またはセラミックまたはガラスまたはプラスチック製の担体を加速する方法、ならびに/あるいは
- 改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末と一緒に、変形/修正されたサンドブラスト法の形態で圧縮空気により加速されてプラスチック表面にぶつけられる、金属またはセラミックまたはプラスチック製の担体を加速する方法、ならびに/あるいは
- 改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末が荷電/静電気により表面に吸着されて存在しており、かつ磁性担体材料の場合は磁気により加速されてプラスチック表面にぶつけられる、金属またはセラミックまたはプラスチック製の担体を加速する方法、ならびに/あるいは
- 改質されたペルフルオロポリマー(微)粉末と一緒に、磁性担体材料の場合は磁気により加速されてプラスチック表面にぶつけられる、金属またはセラミックまたはプラスチック製の担体を加速する方法。
【0100】
その際、乾燥条件で機械的負荷が実現されることが好ましく、すなわち、摩擦要素および/または担体の表面、ならびに改質すべきプラスチック表面は、乾燥状態で使用される。
【0101】
機械的負荷の個別の方法形態は、プラスチック表面を改質させる際、個別に使用されても、または技術的に可能であれば組み合わせて使用されてもよい。さらに、個別の方法としての使用でも、または組み合わされた方法としての使用でも、プラスチック表面が局所的にのみ、または平面全体で改質されるべきであるかに依存し、これは当業者であれば、容易に判断でき、かつわずかな実験で検証することができる。
【0102】
プラスチック表面を改質させる間および/または適用において、機械的負荷、すなわち摩擦学的負荷により、化学的に結合したペルフルオロポリマー(微)粉末粒子がさらに砕かれ、その一部は、すぐ近くで、または別の箇所で、機械的負荷、特に摩擦により、再び遊離反応性基と結合可能であり、それによりプラスチック表面に固定され、さらなる分割および分布が、所望のプラスチック表面またはその部分領域で調整および/または達成される。
【0103】
他方、すでに本発明による製造条件で改質されたプラスチック表面を製造する際に、結合したペルフルオロポリマー(微)粉末粒子による被覆が、できるだけ完全に、かつ最適に実現されることが有利である。
【0104】
プラスチック表面におけるさらなる分割および分布は、不活性媒体、例えばPAOおよび/または鉱油および/またはエステル油および/またはシリコーン油またはPFPE(ペルフルオロポリエーテル油)中に分散された(再)活性化されたペルフルオロポリマー粒子により達成されることが有利である。他方で、すでに相応する改質条件での製造の際に、固定されたペルフルオロポリマー粒子の最適な被覆が実現されることが有利である。
【0105】
不活性媒体中で分散および(再)活性化されたペルフルオロポリマー粒子でプラスチック表面を改質させる場合、ペルフルオロポリマー粒子の改質および結合/固定の後に、残りの結合していないペルフルオロポリマー粒子を有する不活性媒体は、例えば洗浄により再び除去されてもよく、あるいはこれは、改質されたプラスチック表面に残留するべきであり、これは当業者により、それぞれ使用分野に相応して判断される。
【0106】
プラスチック表面全体を摩擦学的に改質させる場合、または局所的にのみ、すなわち、反応性-NH-基および/または-OH-基を表面に有する成形品または部材の表面の一部に制限して改質させる場合、以下のプラスチックが使用される:
- 脂肪族および/または半芳香族ポリアミド、それらの混合物/ブレンド、ならびにさらなるポリマーとの混合物/ブレンドからの成形品、
- デュロマー状のPUR注型用樹脂からの成形品および部材、
- TPU(熱可塑性ポリウレタン)およびTPU混合物/ブレンド、ならびにさらなるポリマーとの混合物/ブレンドからの成形品および部材、
- 熱可塑性ポリエステルアミドおよび/またはポリエーテルアミドおよび/またはポリエーテルエステルアミド(PEBA)、ならびにそれらの混合物/ブレンド、ならびにさらなるポリマーとの混合物/ブレンドからの成形品および部材、
- デュロマー、特に繊維強化されたデュロマー、例えば、プリプレグおよび/もしくは硬化材料としてのBMC(バルク成形コンパウンド)またはSMC(シート成形コンパウンド)、有利には、例えばアンモニアおよび/または(ポリ)アミンによる表面の後改質を行っていないか、または後改質が行われているエポキシ樹脂をベースとするものからの成形品および部材、
- ポリマーまたはポリマー混合物/ブレンドとして、反応性-NH-基および/または-OH-基の他に、さらにオレフィン性不飽和二重結合を有する成形品および部材であって、さらに表面の改質反応により、例えばクロロヒドリン形成またはエポキシド化により、場合によってさらにそれに引き続き、アンモニアおよび/または(ポリ)アミンとのさらなる反応によりさらに改質されるもの、
- ポリマーまたはポリマー混合物/ブレンドとして、オレフィン性不飽和二重結合を有する成形品および部材であって、表面の改質反応により、例えばクロロヒドリン形成またはエポキシド化により、場合により、さらにそれに引き続き、アンモニアおよび/または(ポリ)アミンとのさらなる反応によりさらに改質されるもの。
【0107】
結合されたペルフルオロポリマー(複数可)により表面改質された成形品および部材を製造する本発明による方法において、ペルフルオロポリマーによる先のバルク改質(Bulkmodifizierung)は、従来技術に記載されているように必要ではなく、また多くの場合で推奨もできない。というのも、これらの適用時にペルフルオロポリマーは表面で作用するべきであって、馴染み摩耗(Einlaufverschleiss)後に初めて摩擦学的特性を発揮するべきではないからである。しかしながら、他方で、そのようなバルク改質された生成物をこの表面改質に使用してもよい。
【0108】
「軟質」材料製の成形品または部材の場合、本発明による表面改質を行わないと、摩擦学的に負荷をかけられた帯域において全体にまたは局所的にのみ、エラストマー/ゴム/TPE材料/TPU材料の「消しゴム効果(Radiergummieffektes)」の形態のスティックスリップ効果により、対向物体上で摩擦学的に作用する層の形成が阻害される。表面が化学的に結合したペルフルオロポリマー材料で改質された材料では、これらの欠点は示されない。というのも、固体滑剤は、馴染み摩耗なしで、対向物体と接触してすぐに、その作用を発揮することができるからである。さらに、油もしくは脂肪を添加する場合、または油もしくは脂肪の存在下では、結合したペルフルオロポリマー粒子が、さらにある程度まで油貯蔵体(Oelspeicher)として機能し、これにより、特に馴染み特性(Einlaufverhalten)または異常運転条件(Notlaufbedingungen)での摩擦学的特性が実質的に改善されることが示された。そのような表面改質された成形品および部材は、滑りがより容易になることで、組立て条件でも有利であると判明した。
【0109】
ペルフルオロポリマーを好適には放射化学的に改質ペルフルオロポリマー微粉末へと改質させる際、官能基およびラジカルが生成され、ここで驚くべきことに、表面付近の(再)活性化された基は、加水分解によりペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物基から生じた本発明による条件下で非反応性の表面付近のペルフルオロポリマーカルボン酸基が反応して再びペルフルオロポリマーカルボン酸ハロゲン化物になった場合、ならびに/あるいは(メタ)アクリル酸ハロゲン化物のモノマー、および/または引き続きグラフト後に活性化されて(メタ)アクリル酸ハロゲン化物になる(メタ)アクリル酸のモノマーが、ラジカルグラフト反応においてペルフルオロポリマー(ペルオキシ)ラジカルを介してペルフルオロポリマーに結合されている場合に、かつペルフルオロポリマー(微)粉末粒子の表面層にせん断作用をかけて立体障害カルボン酸ハロゲン化物、好適にはカルボン酸塩化物(-COCl)基を放出させる必要のある機械的負荷が生じている場合に、成形品および部材のプラスチック表面における反応変換で反応性-NH-基および/または-OH-基を有するポリマーと初めて結合することができる。同様に、プラズマ処理により表面に官能基を生成することができ、この結合反応に使用することができる。
【0110】
本発明による方法によると、REM、EDXおよびATR分光法により、摩擦による表面処理の後および結合されていないペルフルオロポリマーの洗浄の後に、TPUプレートとして、ポリウレタン塗料層として、およびポリウレタン注型用樹脂プレートとしての成形体(プレート)、例えば、PA6、PA66/GF30、PEBA(TPE-A、ポリエーテルブロックアミド)およびPU(ポリウレタン)製のものについて、化学的に固定されたペルフルオロポリマーを表面に検出することができた。摩擦なしでは、結合および固定は確認されなかった。結合および固定は、室温で処理しても、また100℃に予熱したプレート/基材表面/成形品表面を用いて処理しても検出可能であった。
【0111】
ペルフルオロポリマー(微)粉末を成形品表面で本発明により結合および固定すると、ブロック/リング実験では、改質されていない表面に比べて、滑り摩擦特性が改善され、摩耗強さが向上する。
【0112】
摩耗強さをさらに改善するには、化学的に結合したペルフルオロポリマー(微)粉末粒子を同時に油および脂肪の貯蔵媒体として利用し、またペルフルオロポリエーテル油PFPEを利用することが有利である。PFPEは、ポリマーマトリックスと非相溶性であり、従来の油、脂肪および溶媒にも溶解しない。PFPEで後処理され、ペルフルオロポリマー(微)粉末で改質された本発明による成形体および部材の表面は、摩擦係数が低く、摩耗強さが高い。PFPEと一緒にペーストに加工された-COCl-基を有するペルフルオロポリマー(微)粉末が、機械的負荷で表面改質に使用される場合、類似した摩擦学的な特性が得られる。
【0113】
本発明によると、ペルフルオロポリマーで改質されたプラスチック表面は、例えば、PFA乳化重合体(3M/Dyneon)に500kGyの電子線を照射するか、またはPTFE乳化重合体(TF2025、3M/Dyneon)に空気の存在下で750kGyのガンマ線を照射し、本発明による方法において表面改質に使用した後に製造される。照射の間に分解して微粉末になる間に、特に微粉末粒子の表面付近の領域において加水分解して-COOH-基になる-COF-基の形態の官能基およびラジカルが生成される。非晶質領域においてさらに内側にあり結合が難しい-COF-基は、本発明による表面改質に適していないため、ペルフルオロポリマー(微)粉末をまず(再)活性化させ、これを、成形品および部材の反応性-NH-表面基および/または-OH-表面基との結合、すなわち、本発明による表面改質に使用可能にする必要がある。
【0114】
そのようにして、(再)活性化されたペルフルオロポリマー(微)粉末を用いることで初めて、狙い通りに、結合を介して化学的にペルフルオロポリマーで改質された表面を生成することができる。ポリマー表面におけるペルフルオロポリマーのこのような表面改質は、本発明以前には、まだ実現されても、または記載されてもいなかった。
【0115】
この表面結合により、成形品および部材は、マトリックス構造が変化されないため、圧縮強さ、引張強さおよび剛性に関して、ペルフルオロポリマーでバルク改質された材料に比べて、機械的特性がより良好であり、また摩擦学的(表面)特性が極めてより良好である。これらの生成物は、滑り摩擦プロセスについて特に有利である。成形品および部材の表面においてペルフルオロポリマーが結合されることで、この接合により摩耗強さの改善が達成される。というのも、機械的負荷によってはペルフルオロポリマー粒子を(完全に)こすり落とすことができないからである。
【0116】
成形品および部材の表面においてペルフルオロポリマーを化学的に結合することで、滑り摩擦係数が低く、かつ摩耗強さが改善された、すなわち、適用時の寿命が延長された生成物が得られる。これは、摩擦学的に加工された表面(領域)を有する動的シーリング系について、寿命を延長させるために適用することができ、同様に、自動車領域において、きしみ音および/またはガタつき音の形態の不所望なスティックスリップ現象を防止するために適用することができる。一般的に、機械製造では、部材、例えば、滑り面、ベアリングシェル、ベアリングケージ、滑りブロック、ワイパーなどが表面改質可能であり、これらは摩擦学的に最適化された表面を備えていてもよい。同様に、摩擦学的に負荷をかけた表面にポリアミド層またはポリウレタン層を有するプラスチックまたは繊維強化されたプラスチック製の、動かされる部品または可動部品、例えば、軸、歯車(制御ギアまたは作動ギア(Steuer- oder Stellgetrieben)における)および歯付きベルト(作動ギア/制御ギアとして、またはドライブベルトとして)を、この本発明による方法で表面改質させる、すなわち、摩擦学的に加工することができる。これは、すでに製造において行われても、または事後的に実現されてもよく、その際、この表面に、薄くかつ良好に分布した形で、例えばPAO中の放射化学的に改質された(再)活性化されたPFAからの(再)活性化されたペルフルオロポリマーペーストが施与され、ここで、稼働の際に、滑り摩擦特性が改善され、かつ摩耗がより少ない摩擦学的に改質された部材表面が、摩擦により形成/生成される。
【0117】
これまでは、このために滑り塗料が、組立て助剤として、または摩擦学的な馴染みプロセス(Einlaufprozesse)のために何度も施与されてきたが、これはたいていの場合、少し時間が経っただけでその効果を失ってしまう。
【0118】
高く安定した被覆度が達成され、従来技術において、この被覆度は、圧縮/圧力だけ、ならびに圧縮/圧力および温度だけでは実現することができない。局所的にのみ限定して、または平面全体にも画定されて、摩擦学的に加工された表面を成形品および部材上に生成することができ、これは、未処理の表面に比べて滑り摩擦係数が低く、かつ摩耗強さが高い。表面改質は、好適には後から、すなわち、成形後に低温の状態で実施される。
【0119】
本発明により、プラスチック部分の表面を摩擦学的に加工することができ、それにより、不所望なスティックスリップ現象を排除し、および/またはより低い摩擦係数によるエネルギー削減と、より高い摩耗強さとを達成することができる。また、バルク改質された材料に比べて、摩擦学的な滑り摩擦特性を達成するのに、馴染み摩耗が必要ではない。
【0120】
以下で、複数の実施例について発明をより詳細に説明する。
【0121】
ペルフルオロポリマー(微)粉末の(再)活性化:
(I) 25gのZonyl MP1100(DuPont、放射化学的に改質されたPTFE微粉末として納品されたもの、約500kGyを照射)を、250mlの丸底フラスコ内で5mlの塩化チオニルと混合し、6時間にわたり、真空回転式蒸発器により、真空を適用せずに、50℃の水浴温度で動かし続ける。粉末中の吸着された水分痕跡を同時に除去しながら、PTFE微粉末の表面付近のカルボン酸をフッ化カルボニル基に転化させる。冷却後、丸底フラスコを取り外し、栓で気密に閉じ、さらに1週間にわたり貯蔵する。
【0122】
変換されていない塩化チオニルを、真空回転式蒸発器により、50℃の水浴温度で、真空を適用して除去する。
【0123】
反応性PTFE微粉末を丸底フラスコ内で密閉して保管する→PTFE-1
(II) 25gのPFA粉末をPE袋内に収縮包装し、500kGyの電子線を照射し、続いて(I)のように再活性化させる→PFA-1
(III) 25gのAlgoflon L620(Solvay Solexis、改質されたPTFE微粉末)を、独国特許出願公開第102006041511号明細書に記載のように、アクリル酸塩化物で活性化させる→PTFE-2
(IV) 25gのPFA粉末をPE袋内に収縮包装し、750kGyの電子線を照射し、続いて、独国特許出願公開第102006041511号明細書に記載のように、アクリル酸塩化物で活性化させ、その後、さらに(I)のように再活性化させる→PFA-2
(V) 25gのZonyl MP1100(DuPont、放射化学的に改質されたPTFE微粉末として納品されたもの、約500kGyを照射)を、250mlの三ツ口フラスコ内で、歯付きディスク撹拌機(Zahnscheibenruehrer)および還流冷却器により、5mlの塩化チオニルと、150mlのn-ヘキサンおよび10mlのPAO-8(Lehmann&Voss&Co.KG、Hamburg)中で混合する。この分散液を、6時間にわたり50℃の水浴温度で激しく撹拌する。粉末中の吸着した水分痕跡を同時に除去しながら、PTFE微粉末の表面付近のカルボン酸基をカルボン酸塩化物基に転化させる。冷却後、この分散液を丸底フラスコに移す。変換されていない塩化チオニルを、n-ヘキサンと一緒に、真空回転式蒸発器により、50℃の水浴温度で、真空を適用して除去する。
【0124】
反応性PTFE微粉末は、PAO-8により、ある種のペースト状の塊として存在し、丸底フラスコ内で密閉して保管される→PTFE-3。
【0125】
比較例1:
60mm×60mmの鋼板上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmのTPUプレートを配置し、これを薄層PTFE粉末Zonyl MP1100(DuPont、約500kGyで電子線照射、その表面付近の層は、加水分解により、-COOH-基のみ含み、-COF-基を含まない)で被覆する。この上に、60mm×60mmの鋼板を置く。この鋼板の上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmの加硫NBRプレートを置き、この上に、60mm×60mmの鋼板を再び置く。この束を、打抜き直径120mmのプレス機内に入れ、室温にて100kNで負荷をかける。30分後、放圧し、この束を取り出す。PTFE粉末で被覆されたTPUプレートを取り出し、ブラシで軽くブラッシングしながらエタノールで入念に洗浄する。このプレートの乾燥後に、表面は開始材料の表面のような手触りになる。水は、表面から撥かれるのではなく、開始材料の場合のように、ゆっくりと流れ落ちる。
【0126】
REM画像において、PTFEは平面全体に検出できず、EDX画像において、フッ素は検出できず、すなわち、圧力のみで、PTFEの(再)活性化なしでは、表面改質は起こらない。
【0127】
ブロック/リング試験における摩擦学的調査により、スティックスリップ現象が生じ、滑り摩擦特性において開始材料に対する差異が見られないことが示された。
【0128】
比較例2:
60mm×60mmの鋼板上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmのTPUプレートを配置し、これを薄層PTFE粉末Zonyl MP1100(DuPont、約500kGyで電子線照射、その表面付近の層は、加水分解により、-COOH-基のみ含み、-COF-基を含まない)で被覆する。この上に、60mm×60mmの鋼板を置く。この鋼板の上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmの加硫NBRプレートを再び置き、この上に、60mm×60mmの鋼板を再び置く。この束を、打抜き直径120mmのプレス機内に入れ、100℃の温度にて100kNで負荷をかける。30分後、放圧し、この束を取り出す。PTFE粉末で被覆されたTPUプレートを取り出し、ブラシで軽くブラッシングしながらエタノールで入念に洗浄する。このプレートの乾燥後に、表面は開始材料の表面のような手触りになる。これらの結果は、比較例1に類似しており、すなわち、圧力および温度のみで、PTFEの(再)活性化なしでは、表面改質は起こらず、また滑り摩擦特性においても開始材料に対する差異は見られない。
【0129】
比較例3:
60mm×60mmの鋼板上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmの加硫TPUプレートを配置し、これを薄層PTFE粉末(TF9205、3M/Dyneon、照射なし、熱機械的に分解、官能基およびラジカルなし)で被覆する。この上に、60mm×60mmの鋼板を置く。この鋼板の上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmの加硫NBRプレートを再び置き、この上に、60mm×60mmの鋼板を再び置く。この束を、打抜き直径120mmのプレス機内に入れ、120℃の温度にて100kNで負荷をかける。そして、プレートの中央に振動機を配置し、これにより、このプレートを振動させて刺激する。20分後、実験を終了し、放圧し、この束を取り出す。TF9205粉末で被覆されたTPUプレートを取り出し、ブラシで軽くブラッシングしながらエタノールで入念に洗浄する。このプレートの乾燥後に、表面は開始材料の表面のような手触りになる。これらの結果は、比較例1に類似しており、すなわち、官能基およびラジカルなしのペルフルオロポリマー粉末によっては、圧力、温度およびせん断で表面改質は起こらず、また滑り摩擦特性においても開始材料に対する差異は見られない。
【0130】
実施例1:
比較例1と同様に、60mm×60mmの鋼板上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmの乾燥させたTPUプレートを配置し、これを薄層PTFE-1(-COCl-基を有する反応性PTFE粉末Zonyl MP1100)で被覆する。この上に、60mm×60mmの鋼板を置く。この鋼板の上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmの加硫NBRプレートを置き、この上に、60mm×60mmの鋼板を再び置く。この束を、打抜き直径120mmのプレス機内に入れ、室温にて100kNで負荷をかける。そして、プレートの中央に振動機を配置し、これにより、このプレートを振動させて刺激する。10分後、放圧し、この束を取り出す。PTFE-1粉末で被覆されたTPUプレートを取り出し、ブラシで軽くブラッシングしながらエタノールで入念に洗浄する。プレートの乾燥後、処理された表面は、未処理のプレートとは外観に差異がある。処理された表面は、非常に滑らかな手触りがあり、ここでは、未処理のTPUプレートとは異なり、水が撥かれる。
【0131】
REM画像において、PTFE粒子は平面全体で目視することができ、EDX画像において、フッ素は、非常に集中的かつ均一にTPU表面に分布して目視することができる。EDXスペクトルにおいて、強いフッ素ピークが検出可能であり、すなわち、圧力および振動(せん断)により、加熱処理なしでも表面改質が達成されていた。
【0132】
ブロック/リング試験における摩擦学的調査により、これらの表面改質されたTPU材料においてスティックスリップ現象が生じないことが示された。滑り摩擦係数を測定したところ、0.22~0.28の間であり、すなわち、これらの表面改質されたTPU材料は、改質されていないTPU開始材料に比べて、滑り摩擦特性に大きく差異がある。
【0133】
実施例2:
100mm×100mmの鋼板上に、50mm×50mmおよび厚さ2mmの予め乾燥させたTPE-A/PEBAプレート(Vestamid、Evonik)を配置し、これを中央に直径20mmの円形の穴を窓として有する100mm×100mmの鋼板で覆い、それにより、PEBAは中抜きにおいてのみ目視可能となる。PEBA試料を有する2枚の鋼板をねじで締め、真空において80℃で再び乾燥させ、同様に乾燥させたPETフィルムの下で、加熱テーブルに固定し、80℃に加熱する。そして、窓内の目視可能/接触可能なPEBAに、PFA-1粉末(-COCl-基を有する反応性PFA粉末)を施与し、硬いブラシで円を描くような動きでPEBA表面上に擦り込む。5分後、実験を中断し、PEBAプレートを取り出す。局所的にPTFE粉末で被覆されたPEBAプレートに吸引を行い、ブラシで軽くブラッシングしながらエタノールで入念に洗浄する。プレートの乾燥後、局所的に処理された表面は、未処理の部分とは外観に差異がある。処理された表面は、非常に滑らかな手触りがあり、未処理の端部域とは異なり、PFA-1で処理された表面では、水が撥かれる。
【0134】
PFA粒子はREM画像において平面全体に目視でき、EDX画像において、フッ素は、集中的かつ均一に、PEBA表面に分布して目視できる。局所的に処理された表面のEDXスペクトルにおいて、強いフッ素ピークが検出可能であり、すなわち、圧力、温度および摩擦(せん断)により、表面改質が達成されていた。
【0135】
ブロック/リング試験における摩擦学的調査により、これらの表面改質されたPEBA材料においてスティックスリップ現象が生じないことが示された。滑り摩擦係数を測定したところ、0.20~0.25の間であり、すなわち、これらの表面改質されたPEBA材料は、改質されていないPEBA開始材料に比べて、滑り摩擦特性に大きく差異がある。
【0136】
実施例3:
100mm×100mmの鋼板上に、予め乾燥させた50mm×50mmおよび厚さ2mmのPA6プレートを配置し、中央に直径20mmの円形の穴を窓として有する100mm×100mmの鋼板でこれを覆い、ねじで締め、それにより、PA6は中抜きにおいてのみ目視可能となる。PA6試料を有する2枚の鋼板を、真空において80℃で再び乾燥させ、同様に乾燥させたPETフィルムの下で、テーブルに固定する。そして、フィルムを取り外した後に、窓内の目視可能/接触可能なPA6に、PTFE-2微粉末(グラフトされたアクリル酸塩化物を有する活性化されたPTFE粉末Algoflon L620)および直径0.3mmのセラミック球を施与する。プラスチック打抜き機(Kunststoffstempel)(PET)を用いて、室温で、圧力下に、および円を描くような動きで、セラミック球をPTFEと一緒に表面上で転がしながら動かし、それにより、PA6を接触可能な表面上にてPTFE-2微粉末で処理する。約5分後、実験を中断し、セラミック球を除去し、過剰なPTFEを吸引する。PA6プレートを取り出し、局所的にPTFE-2微粉末で処理された箇所を、ブラシで軽くブラッシングしながらエタノールで入念に洗浄する。プレートの乾燥後、局所的に処理された表面は、未処理の部分とは外観に差異がある。処理された表面は、滑らかな手触りがあり、ここでは、未処理の端部域とは異なり、水が撥かれる。
【0137】
PTFE粒子はREM画像において平面全体に目視でき、EDX画像において、フッ素は、集中的かつ均一にPA6表面に分布して目視できる。局所的に処理された表面のEDXスペクトルにおいて、強いフッ素ピークが検出可能であり、すなわち、室温での圧力および摩擦(せん断)により、表面改質が達成されていた。
【0138】
ブロック/リング試験における摩擦学的調査により、これらの表面改質されたPA6材料においてスティックスリップ現象が生じないことが示された。滑り摩擦係数を測定したところ、0.19~0.21の間であり、摩耗係数を測定したところ、3.2~6.9×10-7mm3/Nmであり、すなわち、これらの表面改質されたPA6材料は、改質されていないPA6開始材料に比べて、滑り摩擦特性および摩耗特性に大きく差異がある。
【0139】
実施例4:
100mm×100mmの鋼板上に、予め乾燥させた50mm×50mmおよび厚さ2mmのPA66/GF30プレートを配置し、中央に直径20mmの円形の穴を窓として有する100mm×100mmの鋼板でこれを覆い、ねじで締め、それにより、PA66/GF30は中抜きにおいてのみ目視可能となる。PA66/GF30試料を有する2枚の鋼板を、真空において80℃で再び乾燥させ、同様に乾燥させたPETフィルムの下で、テーブルに固定する。そして、フィルムを取り外した後、窓内の目視可能/接触可能なPA66/GF30に、ペースト状の塊としてのPTFE-3(PAO-8中の-COCl-基を有する反応性PTFE粉末Zonyl MP1100)を薄く施与する。ソノトロードを用いて、短いインパルスで、軽い圧力およびゆっくりと円を描くような動きにより、PA66/GF30表面上のPTFE-3ペーストを超音波で処理する。約4分後、実験を中断する。局所的にPTFE-3ペーストで処理されたPA66/GF30プレートを、ブラシで軽くブラッシングしながら、まずガソリンで、続いてエタノールで、入念に洗浄する。プレートの乾燥後、局所的に処理された表面は、未処理の部分とは外観に差異がある。処理された表面は、非常に滑らかな手触りがあり、ここでは、未処理の端部域とは異なり、水が撥かれる。
【0140】
REM画像において、PTFE粒子は平面全体に目視でき、EDX画像において、フッ素は、局所的に処理されたPA66/GF30表面に集中的かつ均一に分布して目視できる。局所的に処理された表面のEDXスペクトルにおいて、強いフッ素ピークが検出可能であり、すなわち、圧力および超音波の処理により、表面改質が達成された。
【0141】
ブロック/リング試験における摩擦学的調査により、これらの表面改質されたPA66/GF30材料においてスティックスリップ現象が生じないことが示された。滑り摩擦係数を測定したところ、0.18~0.20の間であり、摩耗係数を測定したところ、0.25~3.9×10-7mm3/Nmであり、すなわち、これらの表面改質されたPA66/GF30材料は、改質されていないPA66/GF30開始材料に比べて、滑り摩擦特性および摩耗特性に大きく差異がある。
【0142】
実施例5:
80mm×80mmのエポキシ樹脂/ガラス布-プリプレグ-単板を、片側[表面A]において、0.5%のポリエチレンイミン水溶液(PEI=ポリエチレンイミン、Aldrich、Mn=10,000)で短時間処理し、その後、これを十分に蒸留水で濯ぐ。表面A上でのPEI結合の検出および均一性は、着色料Eosinで着色することにより容易に調べることができ、またそれにより、改質された側を表面Aとしてマーキングする。続いて、片側がPEIで改質されたエポキシ樹脂/ガラス布-プリプレグ-単板を乾燥させる。
【0143】
100mm×100mmの鋼板上に、予め乾燥させ、PEIで表面改質された、80mm×80mmのエポキシ樹脂/ガラス布-プリプレグ-単板を、改質された表面Aが上になるように配置し、中央に直径50mmの円形の穴を窓として有する100mm×100mmの鋼板でこれを覆い、ねじで締め、それにより、表面Aを有するエポキシ樹脂/ガラス布-プリプレグ-単板は中抜きにおいてのみ目視可能となる。エポキシ樹脂/ガラス布-プリプレグ-単板を有する2枚の鋼板を、真空において80℃で再び乾燥させ、同様に乾燥させたPETフィルムの下で、テーブルに固定する。この乾燥させたアミノ基で改質された表面Aの目視可能な部分に、PFA-2粉末(グラフトされたアクリル酸塩化物で活性化され、さらにペルフルオロアルキル-COCl-基で再活性化されたPFA粉末)を施与する。中抜きにおいて、PFA-2粉末を有する表面Aを、硬いブラシでブラッシングすることにより処理する。続いて、ばらの過剰なPFA-2粉末を吸引する。80mm×80mmの9枚のさらなるエポキシ樹脂/ガラス布-プリプレグ-単板を用い、この表面改質されたエポキシ樹脂/ガラス布-プリプレグ-単板を、上部において着色された側を目視できるように上に向けて、2枚のPTFEフィルム間に重ねて、プレス金型内で、30分にわたり160℃で圧縮して複合板にする。冷却後、表面Aをブラシで軽くブラッシングしながらエタノールで入念に洗浄する。複合板の乾燥後、処理された表面Aの切り抜き部分は、非常に滑らかな手触りであり、ここでは、未処理の表面とは異なり、水が撥かれる。
【0144】
PFA粒子はREM画像において平面全体に目視でき、EDX画像において、フッ素は、集中的かつ均一に、複合板の処理された表面Aに分布して目視できる。表面AのEDXスペクトルにおいて、強いフッ素ピークが検出可能であり、すなわち、表面改質が達成されていた。
【0145】
ブロック/リング試験における摩擦学的調査により、未処理の表面とは異なり、複合板の表面改質された側(表面A)を有する試料物体においてスティックスリップ現象が生じないことが示された。滑り摩擦係数を測定したところ、0.21~0.23の間であり、摩耗係数を測定したところ、1.5~5.3×10-7mm3/Nmであり、すなわち、例えば切削により滑りブロックへとさらに加工することができる複合板の表面改質された側(表面A)は、改質されていないプレート材料に比べて、滑り摩擦特性および摩耗特性に大きく差異がある。