(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】軸流水車発電装置のディフューザおよび軸流水車発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 3/04 20060101AFI20230517BHJP
F03B 11/00 20060101ALI20230517BHJP
F03B 7/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
F03B3/04
F03B11/00 E
F03B7/00
(21)【出願番号】P 2020000530
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】久保 幸一
(72)【発明者】
【氏名】川尻 秀之
(72)【発明者】
【氏名】榎本 保之
(72)【発明者】
【氏名】中村 高紀
(72)【発明者】
【氏名】塙 直紀
(72)【発明者】
【氏名】西本 篤人
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0195489(US,A1)
【文献】特開2014-145347(JP,A)
【文献】特開2013-130110(JP,A)
【文献】実開昭62-000170(JP,U)
【文献】実開昭61-200469(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0178856(US,A1)
【文献】特開平03-063311(JP,A)
【文献】特開2003-049607(JP,A)
【文献】特開2002-180999(JP,A)
【文献】特開平03-081569(JP,A)
【文献】特開平05-026147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフトチューブから
下池に流出される水流を案内する軸流水車発電装置のディフューザであって、
前記ドラフトチューブの中心軸線に沿う軸方向に延びる筒体と、
前記筒体に設けられた鍔部であって、前記ドラフトチューブの出口端部よりも下流側に位置し、前記筒体の外周側を流れる水流の向きを前記中心軸線から離れる方向に向ける鍔部と、を備え
、
前記鍔部は、前記下池の壁面に対向している、軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項2】
前記筒体の流路断面は、下流側に向かって拡大している、請求項1に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項3】
前記筒体の入口端部は、前記ドラフトチューブの出口端部よりも上流側に位置している、請求項1または2に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項4】
前記鍔部は、前記筒体の出口端部に設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項5】
前記鍔部は、前記筒体の全周にわたって設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項6】
前記鍔部は、前記筒体の周方向の一部に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項7】
前記ドラフトチューブの出口端部に対応する前記軸方向の位置
における前記筒体の外形寸法は、前記ドラフトチューブの出口端部における流路寸法の80%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項8】
前記軸方向に直交する方向における前記鍔部の寸法は、前記筒体の出口端部における流路寸法の5%~20%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項9】
前記軸方向における前記筒体の寸法は、前記筒体の出口端部における流路寸法の30%~180%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項10】
前記軸方向における前記ドラフトチューブの出口端部と前記鍔部との距離は、前記筒体の出口寸法の20%以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項11】
前記筒体の外周面に、周方向に配列された複数の案内翼が設けられ、
前記案内翼は、前記筒体の外周側を流れる水流の旋回成分を低減させるように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項12】
前記案内翼は、前記筒体に回動可能に設けられている、請求項11に記載の軸流水車発電装置のディフューザ。
【請求項13】
ランナと、
前記ランナから流出した水流の圧力を回復させるドラフトチューブと、
前記ドラフトチューブから流出された水流を案内する請求項1~12のいずれか一項に記載の軸流水車発電装置のディフューザと、を備えた、軸流水車発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、軸流水車発電装置のディフューザおよび軸流水車発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低落差で大流量の水車の高性能化のために、ランナやガイドベーン等、翼の形状に起因する損失低減を図ることが多い。また、ドラフト損失の低減を図ることも行われているが、ドラフトチューブの出口端部における開口形状は、土木工事の観点から制限されているために、現状からの大幅な損失低減は困難な状況にある。
【0003】
しかしながら、低落差の水車における全損失のうちドラフト損失が占める割合は大きい。このため、水車の性能を更に向上させるためには、ドラフト損失の低減を図ることは効果的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4001485号公報
【文献】特開2005-240786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ドラフト損失を低減することができる軸流水車発電装置のディフューザおよび軸流水車発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態による軸流水車発電装置のディフューザは、ドラフトチューブから流出される水流を案内する。この軸流水車発電装置のディフューザは、ドラフトチューブの中心軸線に沿う軸方向に延びる筒体と、筒体に設けられた鍔部と、を備えている。鍔部は、ドラフトチューブの出口端部よりも下流側に位置し、筒体の外周側を流れる水流の向きを中心軸線から離れる方向に向ける。
【0007】
また、実施の形態による軸流水車発電装置は、ランナと、ランナから流出した水流の圧力を回復させるドラフトチューブと、ドラフトチューブから流出された水流を案内する上述の軸流水車発電装置のディフューザと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ドラフト損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態における軸流水車発電装置の全体構成を示す正面断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のディフューザを下流側から見た図である。
【
図3】
図3は、
図1のディフューザを拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の軸流水車発電装置におけるドラフトチューブ内の流れを説明するための図である。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態における軸流水車発電装置の全体構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図6のディフューザの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における軸流水車発電装置のディフューザおよび軸流水車発電装置について説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
まず、
図1~
図5を参照して、第1の実施の形態における軸流水車発電装置のディフューザおよび軸流水車発電装置について説明する。
【0012】
図1に示すように、軸流水車発電装置10は、図示しない上池から流水を導く流水路1内に設置されている。流水路1は、土木構造物として形成された流路壁2によって画定されている。本実施の形態では、流路壁2は、水平方向に延びており、土木構造物として形成された下池3(または放水路)に接続されている。
【0013】
図1に示すように、軸流水車発電装置10は、流水路1内に設置された内筒11と、内筒11に回転可能に設けられ、水流の流体エネルギを回転エネルギに変換するランナ12と、内筒11に内蔵され、ランナ12の回転エネルギを電気エネルギに変換する発電機(図示せず)と、を備えている。本実施の形態における軸流水車発電装置10は、一例として、バルブ水車として構成されている。
【0014】
ランナ12の上流側に、複数のガイドベーン13が設けられている。ガイドベーン13は、内筒11の周方向に配列されている。各ガイドベーン13は、内筒11に対して回動可能になっており、ガイドベーン13の開度が調整可能になっている。これにより、ランナ12に流入する水流の流量が調整可能になっている。
【0015】
ランナ12は、ランナボス14と、ランナボス14に保持された複数のランナベーン15と、を含んでいる。ランナベーン15は、ランナボス14に対して回動可能になっており、ランナベーン15の開度が調整可能になっている。ランナボス14は、図示しない回転軸を介して上述した発電機に連結されている。このことにより、ランナベーン15が水流を受けると、ランナベーン15、ランナボス14および回転軸が共に回転して水流の流体エネルギが回転エネルギに変換される。この回転エネルギによって発電機が発電を行い、回転エネルギが電気エネルギに変換される。
【0016】
本実施の形態による軸流水車発電装置10は、ランナ12の下流側に設けられたドラフトチューブ16と、ドラフトチューブ16の下流側に設けられた軸流水車発電装置のディフューザ(以下、単にディフューザ20と記す)と、を更に備えている。
【0017】
ドラフトチューブ16は、ランナ12から流出した水流の圧力を回復させるように構成されている。ドラフトチューブ16は、土木構造物として形成された上述した流路壁2の一部を構成している。ランナ12から流出した水流は、このドラフトチューブ16を通って、下池3に導かれる。下池3は、壁面3aを有しており、この壁面3aは、ドラフトチューブ16の軸方向X(後述する中心軸線CLに沿う方向)に垂直になっていてもよい。
【0018】
ドラフトチューブ16は、水平方向(
図1における左右方向)に延びる中心軸線CLを有している。ドラフトチューブ16の流路断面は、下流側に向かって漸次拡大している。すなわち、ドラフトチューブ16の流路寸法が、下流側に向かって増大している。これにより、ドラフトチューブ16の流路で水流が剥離することを抑制でき、水流の圧力回復を効果的に行うことができる。また、ランナ12から流出した水流の損失低減を図っている。
【0019】
本実施の形態においては、ドラフトチューブ16の中心軸線CLに直交する断面は、
図2に示すように、高さ方向(
図2における上下方向)に長手方向を有するように矩形状に形成されている。矩形の角部は丸みを帯びている。
図2に示すようなドラフトチューブ16である場合、上述した流路寸法は、ドラフトチューブ16の中心軸線CL(または軸方向X)に直交する断面で見たときの流路の最大寸法であってもよく、
図2に示す例では、流路高さ寸法(
図2の上下方向寸法)であってもよい。本実施の形態によるドラフトチューブ16の流路高さ寸法が、下流側に向かって増大している。ドラフトチューブ16の流路幅寸法(
図2の左右方向寸法)も、下流側に向かって増大していてもよい。
図1に示すように、中心軸線CLを含む断面で見たときに、ドラフトチューブ16は、流路高さ寸法を一定の割合で増大させるように直線状に形成されていてもよいが、曲線状に形成されていてもよい。
【0020】
ドラフトチューブ16は、中心軸線CLに対して高さ方向に対称形状であってもよい。同様に、筒体21は、中心軸線CLに対して幅方向に対称形状であってもよい。
【0021】
なお、ドラフトチューブ16の中心軸線CLに直交する断面は矩形状に形成されていることに限られることはなく、例えば、円筒状に形成されていてもよい。この場合、流路寸法は、流路径であってもよい。
【0022】
次に、本実施の形態によるディフューザ20について説明する。ディフューザ20は、ドラフトチューブ16から流出される水流を案内するように構成されている。
【0023】
図1に示すように、ディフューザ20は、筒体21と、筒体21に設けられた鍔部22と、を備えている。
【0024】
筒体21は、ドラフトチューブ16の中心軸線CLに沿う軸方向Xに延びている。すなわち、筒体21は、ドラフトチューブ16と共通に中心軸線CLを有している。筒体21は、ドラフトチューブ16と同芯状に形成されていてもよい。また、筒体21の入口端部21aは、ドラフトチューブ16の出口端部16aよりも上流側に位置している。すなわち、筒体21の入口側部分が、ドラフトチューブ16の流路に入り込んでいる。筒体21の出口端部21bは、ドラフトチューブ16の出口端部16aよりも下流側に位置しており、下池3内に位置している。この出口端部21bに鍔部22が設けられている。
【0025】
筒体21の流路断面は、ドラフトチューブ16と同様に、下流側に向かって漸次拡大している。すなわち、筒体21の流路寸法が、下流側に向かって増大している。これにより、筒体21の内周面21cで画定される内部流路で水流が剥離することを抑制でき、水流の圧力回復を効果的に行うことができる。なお、筒体21の出口端部21bにおける流路断面積と入口端部21aにおける流路断面積との差を、軸方向Xにおける筒体21の寸法L(後述)で除した値を、ディフューザ20の筒体21の流路断面積の拡大率としたとき、この拡大率は、例えば、1.2~1.4であってもよい。
【0026】
本実施の形態においては、筒体21の中心軸線CLに直交する断面は、
図2に示すように、ドラフトチューブ16と同様に、高さ方向に長手方向を有するように矩形状に形成されている。この場合、筒体21の流路寸法は、中心軸線CLに直交する断面で見たときの筒体21の流路の最大寸法であってもよく、
図2に示す例では、流路高さ寸法であってもよい。本実施の形態による筒体21の流路高さ寸法が、下流側に向かって増大している。筒体21の流路幅寸法も、下流側に向かって増大していてもよい。
図1に示すように、中心軸線CLを含む断面で見たときに、筒体21は、流路高さ寸法を一定の割合で増大させるように直線状に形成されていてもよいが、曲線状に形成されていてもよい。
【0027】
図1に示すように、筒体21の外形寸法が、流路寸法と同様に、下流側に向かって増大している。筒体21の板厚は、入口端部21aから出口端部21bにわたって一定であってもよい。筒体21の外形寸法は、中心軸線CLに直交する断面で見たときの筒体21の外形の最大寸法であってもよく、
図2に示す例では、外形高さ寸法であってもよい。本実施の形態による筒体21の外形高さ寸法も、下流側に向かって増大している。筒体21の外形幅寸法も、下流側に向かって増大していてもよい。
【0028】
筒体21は、中心軸線CLに対して高さ方向に対称形状であってもよい。同様に、筒体21は、中心軸線Clに対して幅方向に対称形状であってもよい。
【0029】
なお、筒体21の中心軸線CLに直交する断面は矩形状に形成されていることに限られることはなく、例えば、円筒状に形成されていてもよい。この場合、流路寸法は、流路径であってもよく、外形寸法は、外径であってもよい。また、筒体21の中心軸線CLに直交する断面形状は、ドラフトチューブ16の中心軸線CLに直交する断面形状と相似であってもよい。
【0030】
図1に示すように、鍔部22は、ドラフトチューブ16の出口端部16aよりも下流側に位置している。そして、鍔部22は、筒体21の外周側を流れる水流の向きを、中心軸線CLから離れる方向に向けるように構成されている。より具体的には、鍔部22は、筒体21の出口端部21bから、中心軸線CLに対して離れる方向に(半径方向外側に)延びている。本実施の形態では、鍔部22は、軸方向Xに直交する方向に延びている。また、鍔部22は、
図2に示すように、筒体21の全周にわたって設けられている。
【0031】
このように構成されたドラフトチューブ16とディフューザ20とは、以下のような寸法関係を有していてもよい。
【0032】
例えば、
図3に示すように、ドラフトチューブ16の出口端部16aに対応する軸方向Xの位置における筒体21の外形寸法D1は、ドラフトチューブ16の出口端部16aにおける流路寸法D2の80%以下であってもよい。ここでの外形寸法D1は、出口端部16aと同じ軸方向Xにおける位置での筒体21の外形寸法であって、より詳細には、出口端部16aを通って中心軸線CLに垂直な線(または面)と筒体21の外周面21dとの交点における筒体21の外形寸法を意味する。一方、外形寸法D1は、流路寸法D2の40%以上であってもよい。
【0033】
また、例えば、軸方向Xに直交する方向における鍔部22の寸法Bは、筒体21の出口端部21bにおける流路寸法D3の5%~20%であってもよい。
【0034】
また、例えば、軸方向Xにおける筒体21の寸法Lは、筒体21の出口端部21bにおける流路寸法D3の30%~180%であってもよい。
【0035】
さらに、例えば、ドラフトチューブ16の出口端部16aと鍔部22との軸方向Xにおける距離D4は、筒体21の出口端部21bにおける流路寸法D3(出口寸法)の20%以上であってもよい。
【0036】
ところで、上述したディフューザ20は、図示しない支持部材を介して下池3の壁面3aや、下池3の底面に支持されるようにしてもよい。
【0037】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0038】
ランナ12から流出した水流は、ドラフトチューブ16内の流路を流れる。この間、ドラフトチューブ16の流路断面が下流側に向かって漸次拡大していることから、ドラフト水流は、圧力を回復しながら下流側に流れる。また、ドラフトチューブ16内の水流は、ランナ12の回転方向と同じ方向に旋回しながら下流側に流れる。このことから、ドラフトチューブ16内の水流は、ドラフトチューブ16の内壁面の近傍に偏って流れ、
図4に示すように、当該内壁面の近傍であって出口端部16aの近傍に、流速が比較的高い高流速領域R1が形成される。このような高流速領域R1が形成されることにより、ドラフトチューブ16の出口端部16aにおける水流の圧力(計測位置Xmにおける圧力)が低くなる。この場合、落差が高く計測されるため、軸流水車発電装置10の効率は低く算出されてしまう。中心軸線CLの近傍には、流速が比較的低い低流速領域R2(または死水域)が形成される。
【0039】
高流速領域R1の水流は、旋回しながら、
図1に示すように、ドラフトチューブ16とディフューザ20の筒体21との間の流路に流入する。この水流は、ディフューザ20の筒体21の外周面21dに沿って流れ、その後、鍔部22に案内されて、流れの方向が中心軸線CLから離れる方向に変えられる。そして、下池3の壁面3aと鍔部22との間の流路から、中心軸線CLから離れる方向に、流速が高い状態を維持しながら流出する。
【0040】
一方、低流速領域R2の水流は、ディフューザ20の筒体21の内部流路に流入し、この内部流路を流れる。この間、ドラフトチューブ16の流路断面が下流側に向かって漸次拡大していることから、水流は、圧力を回復しながら下流側に流れる。そして、筒体21内の水流は、筒体21の出口端部21bから、軸方向Xに流出される。
【0041】
上述したように、下池3の壁面3aと鍔部22との間の流路から流出した水流は、中心軸線CLから離れる方向に流れる。一方、筒体21の内部流路から流出した水流は、軸方向Xに沿って流れる。このことにより、鍔部22の下流側では、水流が剥離し、渦が形成される。このため、鍔部22の下流側には、周囲の静圧よりも水流の圧力が低下し、負圧領域R3が形成される。
【0042】
この負圧領域R3に、ドラフトチューブ16内の低流速領域R2の水流が引き込まれる。このため、ドラフトチューブ16の流路における水流の流速およびディフューザ20の筒体21の内部流路における水流の流速が増大する。この場合、
図4に示す高流速領域R1における水流の流速を低減することができ、ドラフトチューブ16の出口端部16aにおける水流の圧力(計測位置Xmにおける圧力)が高くなる。このため、落差が低く計測され、軸流水車発電装置10の効率を高く算出することができる。
【0043】
このように本実施の形態によれば、ディフューザ20の軸方向Xに延びる筒体21と、筒体21に設けられた鍔部22であって、ドラフトチューブ16の出口端部16aよりも下流側に位置し、筒体21の外周側を流れる水流の向きを中心軸線CLから離れる方向に向ける鍔部22と、を有している。このことにより、ドラフトチューブ16の内壁面の近傍に形成される比較的高速の水流の向きを、ディフューザ20を通過させることで、筒体21の外周側を流れる水流の向きを中心軸線CLから離れる方向に向けることができる。このため、鍔部22の下流側で、水流を剥離させることができ、渦を形成することができる。この渦によって、鍔部22の下流側の領域では、周囲の静圧よりも圧力を低下させることができる。このため、ドラフトチューブ16内の低流速領域R2の水流を引き込むことができ、ドラフトチューブ16の流路における水流およびディフューザ20の筒体21の内部流路における水流の流速を高めることができる。この結果、低流速領域R2の水流の速度を高めることができ、ドラフト損失を低減することができる。また、ドラフトチューブ16内の水流の流速を高めることができるため、ドラフトチューブ16内の水流の流速を均一化させることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、筒体21の流路断面が、下流側に向かって拡大している。このことにより、筒体21の内部流路で、水流が剥離することを抑制でき、水流の圧力回復を効果的に行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、ディフューザ20の筒体21の入口端部21aは、ドラフトチューブ16の出口端部16aよりも上流側に位置している。このことにより、ドラフトチューブ16内の高流速領域R1の水流を、ドラフトチューブ16と筒体21との間の流路に流入させることができる。このため、下池3の壁面3aと鍔部22との間の流路から流出する水流の速度を高めることができ、鍔部22の下流側で水流を効果的に剥離させて渦を形成することができる。この結果、鍔部22の下流側の負圧領域R3における水流の圧力を効果的に低下させることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、鍔部22が、筒体21の出口端部21bに設けられている。このことにより、鍔部22の下流側における圧力が低下した負圧領域R3に、ドラフトチューブ16内の低流速領域R2の水流を引き込みやすくすることができる。このため、ドラフトチューブ16の流路における水流およびディフューザ20の筒体21の内部流路における水流の流速を高めることができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、鍔部22が、筒体21の全周にわたって設けられている。このことにより、ディフューザ20の筒体21の出口端部21bの周囲の全周にわたって、水流を剥離させて渦を形成することができ、出口端部21bの全周にわたって、水流の圧力を低下させることができる。このため、ドラフトチューブ16内の低流速領域R2の水流を引き込みやすくすることができ、ドラフトチューブ16の流路における水流およびディフューザ20の筒体21の内部流路における水流の流速を高めることができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、ドラフトチューブ16の出口端部16aに対応する軸方向Xの位置における筒体21の外形寸法D1は、ドラフトチューブ16の出口端部16aにおける流路寸法D2の80%以下になっている。このことにより、ドラフトチューブ16の出口端部16aにおいてドラフトチューブ16の内壁面と筒体21の外周面21dとの間に、水流の流路を確保することができ、ドラフトチューブ16内の高流速領域R1の水流をドラフトチューブ16と筒体21との間の流路に流入させることができる。このため、鍔部22の下流側に渦を効果的に形成することができる。一方、ドラフトチューブ16の出口端部16aにおける筒体21の外形寸法D1は、ドラフトチューブ16の出口端部16aにおける流路寸法D2の40%以上であってもよい。このことにより、下池3の壁面3aと鍔部22との間の流路が大きくなることを抑制し、当該流路から流出する水流の速度が低下することを抑制できる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、軸方向Xに直交する方向における鍔部22の寸法Bは、筒体21の出口端部21bにおける流路寸法D3の5%~20%である。寸法Bを出口端部21bにおける流路寸法D3の5%以上とすることにより、鍔部22の下流側において形成される渦が小さくなることを抑制でき、圧力を効果的に低減することができる。一方、寸法Bを出口端部21bにおける流路寸法D3の20%以下とすることにより、鍔部22の下流側に形成される渦が、筒体21の出口端部21bから離れることを抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、軸方向Xにおける筒体21の寸法Lは、筒体21の出口端部21bにおける流路寸法D3の30%~180%である。寸法Lを出口端部21bにおける流路寸法D3の30%以上とすることにより、ディフューザ20による圧力回復効果を効果的に発揮させることができる。一方、寸法Lを出口端部21bにおける流路寸法D3の180%以下とすることにより、ディフューザ20の筒体21の内部流路を流れる水流が受ける摩擦損失が増大することを抑制できる。
【0051】
また、本実施の形態によれば、軸方向Xにおけるドラフトチューブ16の出口端部16aと鍔部22との距離D4は、筒体21の出口端部21bにおける流路寸法D3の20%以上である。このことにより、下池3の壁面3aと鍔部22との間に、水の流路を確保することができ、ドラフトチューブ16内の高流速領域R1の水流を、この流路に効果的に流入させることができる。このため、鍔部22の下流側に渦を効果的に形成することができる。一方、距離D4は、上述した寸法Bの2倍以下であってもよい。このことにより、下池3の壁面3aと鍔部22との間の流路が大きくなることを抑制し、当該流路から流出する水流の速度が低下することを抑制できる。
【0052】
なお、上述した本実施の形態においては、鍔部22が、筒体21の全周にわたって設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、鍔部22は、筒体21の周方向の一部に設けられていてもよい。例えば、
図5に示すように、筒体21に2つの鍔部22が設けられており、2つの鍔部22が、筒体21の周方向において離間していてもよい。筒体21の周方向における各鍔部22の位置は、運転条件に応じて高流速領域R1が形成される位置に配置してもよい。すなわち、運転条件によってドラフトチューブ16の出口端部16aにおける流速分布は変化し、筒体21の周方向における高流速領域R1の位置が、偏る場合がある。このため、偏った高流速領域R1に鍔部22を配置することにより、鍔部22の下流側における負圧領域R3の圧力を効果的に低下させることができる。そして、筒体21の周方向のうち鍔部22が存在しない部分では、水流を下流側に流すことができ、水流の圧力損失が低減することを抑制できる。
図5に示す例では、2つの鍔部22が、中心軸線CLに対して点対称となる位置に配置されているが、これに限られることはない。鍔部22の個数は任意である。
【0053】
(第2の実施の形態)
次に、
図6~
図8を用いて、第2の実施の形態による軸流水車発電装置のディフューザおよび軸流水車発電装置について説明する。
【0054】
図6~
図8に示す第2の実施の形態においては、筒体の外周面に、周方向に配列された複数の案内翼が設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図5に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図6~
図8において、
図1~
図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
本実施の形態においては、
図6および
図7に示すように、筒体21の外周面に、周方向に配列された複数の案内翼23が設けられている。
【0056】
案内翼23は、筒体21の外周側を流れる水流の旋回成分を低減させるように構成されている。すなわち、筒体21の外周側を流れる水流は、上述したように旋回しながら流れているため、流速の旋回成分を低減させるように、水流の向きを変えるように構成されている。より具体的には、
図7に示すように、案内翼23の入口角度(案内翼23のキャンバーラインの入口端における接線と軸方向Xとがなす角度)は、旋回する水流の向きに沿うような角度に設定されていてもよい。一方、案内翼23の出口角度(案内翼23のキャンバーラインの出口端における接線と軸方向Xとがなす角度)は、入口角度よりも小さく設定されている。出口角度は、軸方向Xに沿うような角度に設定されていてもよい。案内翼23の入口端と出口端の間の部分は、入口端と出口端とを滑らかに接続するように曲線状に形成されている。なお、案内翼23は、筒体21の外周面に対して、固定されていてもよい。この場合、所望の運転条件でドラフト損失が低減できるように、案内翼23の入口角度と出口角度を設定してもよい。
【0057】
本実施の形態において、ドラフトチューブ16とディフューザ20の筒体21との間の流路に流入した高速の水流は、旋回しながら筒体21の外周面21dに沿って流れ、その後、水流の一部は、互いに隣り合う案内翼23同士の間に形成された流路に、旋回しながら流入する。すると、水流は、案内翼23に沿って流れて流れの角度が小さくなるように整流され、流速の旋回成分が低減される。そして、この整流された状態で、水流は、下池3の壁面3aと鍔部22との間の流路から流出される。
【0058】
このように本実施の形態によれば、ディフューザ20の筒体21の外周面21dに、周方向に配列された複数の案内翼23が設けられており、案内翼23が、筒体21の外周側を流れる水流の旋回成分を低減させるように構成されている。このことにより、下池3の壁面3aと鍔部22との間の流路を流れる水流の旋回成分を低減するように整流することができ、当該流路から流出する水流の向きを、中心軸線CLから離れる方向に効果的に変えることができる。このため、鍔部22の下流側に形成される渦を強めることができ、鍔部22の下流側における負圧領域R3の水流の圧力をより一層低下させることができる。従って、ドラフトチューブ16の流路における水流およびディフューザ20の筒体21の内部流路における水流の流速をより一層高めることができる。この結果、低流速領域R2の水流の速度をより一層高めることができ、ドラフト損失をより一層低減することができる。
【0059】
なお、上述した本実施の形態においては、案内翼23は、筒体21の外周面に固定されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、案内翼23は、筒体21の外周面21dに対して回動可能になっていてもよい。すなわち、
図8に示すように、案内翼23は、筒体21に回動可能に設けられていてもよい。そして、案内翼23は、駆動機構24によって筒体21に対して回動するように構成されていてもよい。このことにより、案内翼23の入口角度を、運転条件に応じて変わる水流の向きに整合させることができる。このため、旋回する水流を、案内翼23に流入させやすくすることができ、案内翼23による整流効果を高めることができる。
図8に示す例では、筒体21の中心軸線CLに直交する断面は、円筒状に形成されていてもよい。この場合、ドラフトチューブ16の中心軸線CLに直交する断面も、円筒状に形成されていてもよい。
【0060】
図8に示す案内翼23の駆動機構24について説明する。駆動機構24は、各案内翼23を連結する駆動リング25と、駆動リング25を回動させる駆動モータ26と、駆動モータ26の駆動力を駆動リング25に伝達する伝達部27と、を有していてもよい。駆動リング25は、筒体21の周方向に延びており、各案内翼23が連結されている。駆動リング25が筒体21の周方向(中心軸線CLを中心)に回動すると、各案内翼23を筒体21に対して入口角度を変更するように(回動軸線Yを中心に)回動させることができる。駆動モータ26は、鍔部22にサポート部材28を介して取り付けられていてもよい。駆動モータ26は、軸方向Xに延びる駆動軸29を含み、駆動軸29の先端に伝達部27が連結されている。伝達部27は、駆動軸29の回動駆動力を駆動リング25に伝達する。伝達部27は、例えば、歯車により構成されていてもよい。また、例えば、図示しない制御部において、各種運転条件における案内翼23の好適な入口角度を設定して記憶しておき、運転条件に基づいて案内翼23の入口角度が好適な入口角度となるように駆動機構24を制御するようにしてもよい。なお、案内翼23を回動する駆動機構24の構成は、これに限られることはない。
【0061】
以上述べた実施の形態によれば、ドラフト損失を低減することができる。
【0062】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0063】
なお、上述した実施の形態では、軸流水車発電装置10がバルブ水車として構成されている例を説明したが、このことに限られることはなく、バルブ水車以外の水車として構成される軸流水車発電装置にも、上述したディフューザ20を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10:軸流水車発電装置、12:ランナ、16:ドラフトチューブ、16a:出口端部、20:ディフューザ、21:筒体、21a:入口端部、21b:出口端部、22:鍔部、23:案内翼、CL:中心軸線、X:軸方向、