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特許7280854電解水生成装置及び次亜塩素酸水生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】電解水生成装置及び次亜塩素酸水生成方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/26 20060101AFI20230517BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230517BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20230517BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20230517BHJP
【FI】
C25B1/26 C
C25B9/00 D
C25B9/00 C
C25B9/19
C02F1/461 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020091220
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021188065
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】橘 孝士
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070919(JP,A)
【文献】特開2012-196643(JP,A)
【文献】特開2015-181996(JP,A)
【文献】特開平09-085250(JP,A)
【文献】特開平11-114569(JP,A)
【文献】特開平08-052475(JP,A)
【文献】特開平10-140384(JP,A)
【文献】特開2003-205289(JP,A)
【文献】特開2018-187576(JP,A)
【文献】特開2001-340857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
C02F 1/46-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水生成装置であって、
水を電気分解するための電解槽と、
前記電解槽の内部を第1室と第2室とに区画するための隔膜と、
前記第1室に配された第1陰極給電板及び前記第2室に配された第1陽極給電板を含み、前記第1室及び前記第2室に供給された前記水を電気分解することにより1次電解水を生成するための第1電極対と、
前記第2室に配され、前記第2室で生成された前記1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成するための第2電極対と、
前記隔膜に連なって前記第1室と前記第2室とを隔てる第1隔壁を含み、
前記第1隔壁には、前記第1室と前記第2室との間での水の移動を制限する逆止弁が設けられ、
前記逆止弁は、前記第2室から前記第1室への前記水の流入を許容し、前記第1室で生成された前記1次電解水の前記第2室への流出を阻止する、
電解水生成装置。
【請求項2】
前記第2電極対は、前記第2室に配された第2陰極給電板及び第2陽極給電板を含み、
前記第1陰極給電板の電極面積及び前記第1陽極給電板の電極面積は、前記第2陰極給電板の電極面積及び前記第2陽極給電板の電極面積のいずれよりも大きい、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記第2電極対は、前記第2室に配された第2陰極給電板及び第2陽極給電板を含み、
前記第1陰極給電板の高さ及び前記第1陽極給電板の高さは、前記第2陰極給電板の高さ及び前記第2陽極給電板の高さのいずれよりも大きい、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記第2電極対は、前記第2室に配された第2陰極給電板及び第2陽極給電板を含み、
前記第1陽極給電板と前記第2陰極給電板及び前記第2陽極給電板とは、平面視でT字状に交差するように配置されている、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記電解槽は、前記第1室とは反対側に、前記第2室から前記2次電解水を取り出すための注ぎ口を有し、
前記注ぎ口は、前記第2陰極給電板及び前記第2陽極給電板を延長した面上に配されている、請求項4に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記第2室を、塩化物水溶液を生成するための溶解室と、前記第1陽極給電板及び前記第2電極対によって電気分解を行うための電解室とに区画するための第2隔壁をさらに含み、
前記第2隔壁には、前記溶解室と前記電解室との間で水の行き来を可能とする貫通孔が形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記電解槽は、前記第1室で生成された前記1次電解水を排出するための排出口を有し、前記排出口は、平面視で前記第2室とは反対側に開口する、請求項1ないし6のいずれかに記載の電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解によって次亜塩素酸水を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気分解によって次亜塩素酸水を生成する技術が、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-301541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている装置では、塩酸を無隔膜電解槽で電解し、生成した電解液を水で希釈して微酸性電解水にする。しかしながら、電解に供される塩酸は、取扱いが困難で一般家庭での使用に不向きであった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、一般家庭等でも容易に次亜塩素酸水を生成できる技術を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、電解水生成装置であって、水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽の内部を第1室と第2室とに区画するための隔膜と、前記第1室に配された第1陰極給電板及び前記第2室に配された第1陽極給電板を含み、前記第1室及び前記第2室に供給された前記水を電気分解することにより1次電解水を生成するための第1電極対と、前記第2室に配された第2陰極給電板及び第2陽極給電板を含み、前記第2室で生成された前記1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成するための第2電極対とを含み、前記第1陰極給電板の電極面積及び前記第1陽極給電板の電極面積は、前記第2陰極給電板の電極面積及び前記第2陽極給電板の電極面積のいずれよりも大きい。
【0007】
本発明の第2発明は、電解水生成装置であって、水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽の内部を第1室と第2室とに区画するための隔膜と、前記第1室に配された第1陰極給電板及び前記第2室に配された第1陽極給電板を含み、前記第1室及び前記第2室に供給された前記水を電気分解することにより1次電解水を生成するための第1電極対と、前記第2室に配された第2陰極給電板及び第2陽極給電板を含み、前記第2室で生成された前記1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成するための第2電極対とを含み、前記第1陰極給電板の高さ及び前記第1陽極給電板の高さは、前記第2陰極給電板の高さ及び前記第2陽極給電板の高さのいずれよりも大きい。
【0008】
本発明の第3発明は、電解水生成装置であって、水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽の内部を第1室と第2室とに区画するための隔膜と、前記第1室に配された第1陰極給電板及び前記第2室に配された第1陽極給電板を含み、前記第1室及び前記第2室に供給された前記水を電気分解することにより1次電解水を生成するための第1電極対と、前記第2室に配された第2陰極給電板及び第2陽極給電板を含み、前記第2室で生成された前記1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成するための第2電極対とを含み、前記第1陽極給電板と前記第2陰極給電板及び前記第2陽極給電板とは、平面視でT字状に交差するように配置されている。
【0009】
本第3発明に係る前記電解水生成装置において、前記電解槽は、前記第1室とは反対側に、前記第2室から前記2次電解水を取り出すための注ぎ口を有し、前記注ぎ口は、前記第2陰極給電板及び前記第2陽極給電板を延長した面上に配されている、ことが望ましい。
【0010】
本発明の第4発明は、電解水生成装置であって、水を電気分解するための電解槽と、前記電解槽の内部を第1室と第2室とに区画するための隔膜と、前記第1室に配された第1陰極給電板及び前記第2室に配された第1陽極給電板を含み、前記第1室及び前記第2室に供給された前記水を電気分解することにより1次電解水を生成するための第1電極対と、前記第2室に配され、前記第2室で生成された前記1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成するための第2電極対と、前記隔膜に連なって前記第1室と前記第2室とを隔てる第1隔壁を含み、前記第1隔壁には、前記第1室と前記第2室との間での水の移動を制限する逆止弁が設けられ、前記逆止弁は、前記第2室から前記第1室への前記水の流入を許容し、前記第1室で生成された前記1次電解水の前記第2室への流出を阻止する。
【0011】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記第2室を、塩化物水溶液を生成するための溶解室と、前記第1陽極給電板及び前記第2電極対によって電気分解を行うための電解室とに区画するための第2隔壁をさらに含み、前記第2隔壁には、前記溶解室と前記電解室との間で水の行き来を可能とする貫通孔が形成されている、ことが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記電解水生成装置において、前記電解槽は、前記第1室で生成された前記1次電解水を排出するための排出口を有し、前記排出口は、平面視で前記第2室とは反対側に開口する、ことが望ましい。
【0013】
本発明の第5発明は、次亜塩素酸水生成方法であって、塩化物水溶液を有隔膜電解することにより、酸性の1次電解水を生成する第1ステップと、前記第1ステップで生成された前記1次電解水を対流させる第2ステップと、前記第2ステップを経て対流する前記1次電解水を無隔膜電解することにより、2次電解水を生成し、適性濃度の次亜塩素酸水を得る第3ステップとを含む。
【0014】
本発明に係る前記次亜塩素酸水生成方法において、前記第3ステップで生成された前記2次電解水を対流させる第4ステップを含む、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本第1ないし第4発明の前記電解水生成装置では、前記第1電極対を用いた有隔膜電解によって、前記第2室で酸性の前記1次電解水が生成される。そして、前記第2電極対を用いた無隔膜電解によって、前記第2室で前記2次電解水が生成される。この前記第2室で得られた前記2次電解水は、次亜塩素酸水とも称され、除菌・消臭に有効とされる。従って、塩酸等を用いることなく、容易に次亜塩素酸水が得られる。
【0016】
本第5発明の前記次亜塩素酸水生成方法では、前記第1ステップの有隔膜電解により酸性の前記1次電解水が生成される。そして、前記第3ステップで前記1次電解水が無隔膜電解されることにより、前記2次電解水が生成される。従って、塩酸等を用いることなく、容易に前記次亜塩素酸水が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の電解水生成装置の概略構成を示す斜視図である。
図2図1の電解水生成装置の構成を示す断面図である。
図3図1の電解水生成装置の構成を示す断面図である。
図4】1次電解及び2次電解を実行中の第1電極対及び第2電極対を示す斜視図である。
図5】第1電極対及び第2電極対の配置を示す平面図である。
図6】本発明の次亜塩素酸水生成方法における食塩水生成工程を示す電解槽の断面図である。
図7図6に続いて、食塩水生成工程を示す電解槽の断面図である。
図8】本発明の次亜塩素酸水生成方法における電解工程を示す電解槽の断面図である。
図9】本発明の次亜塩素酸水生成方法における取水工程を示す電解槽の断面図である。
図10図9の取水工程を終えた電解槽の断面図である。
図11】本発明の次亜塩素酸水生成方法における排水工程を示す電解槽の断面図である。
図12】本発明の電解水生成装置の変形例の概略構成を示す斜視図である。
図13図12の電解水生成装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の電解水生成装置1の外観を示している。図2は、電解水生成装置1の構成を示す断面図である。
【0019】
電解水生成装置1は、電解槽2と、隔膜3と、第1電極対4と、第2電極対5とを含んでいる。
【0020】
電解槽2は、底壁及び側壁によって囲まれた室の内部に、隔膜3、第1電極対4及び第2電極対5を収容する。電解槽2には、電気分解される水が供給される。電解槽2内で、水が電気分解される。
【0021】
電解槽2に供給される水は、塩化物水溶液が望ましい。塩化物としては、例えば、食塩(塩化ナトリウム)及び塩化カリウム等が用いられる。塩化物は、電解槽2内で生成されてもよい。例えば、水道水等の水が充填された電解槽2に塩化物を投入し、攪拌等することにより、塩化物水溶液が生成される。以下、塩化物として、食塩が用いられる形態について説明するが、他の塩化物についても同様である。
【0022】
隔膜3は、電解槽2の内部を第1室21と第2室22とに区画する。隔膜3には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)親水膜が用いられている。隔膜3は、例えば、格子状に形成されたホルダー31によって、第1室21側及び第2室22側の両面で支持されている。
【0023】
第1電極対4は、第1室21に配された第1陰極給電板41と、第2室22に配された第1陽極給電板42とを含んでいる。第1陰極給電板41及び第1陽極給電板42には、両者間に直流電圧を印加するための給電端子が接続されている。給電端子は、第1陰極給電板41及び第1陽極給電板42の下方に延びている。隔膜3は、第1陰極給電板41と第1陽極給電板42との間に配されている。第1陰極給電板41、第1陽極給電板42及び隔膜3は、平行に配されている。
【0024】
第1電極対4は、第1室21及び第2室22に供給された水を電気分解することにより1次電解水を生成する(以下、第1電極対4による電気分解を1次電解とする)。第1陰極給電板41と第1陽極給電板42との間には、隔膜3が配されているため、第1電極対4による電気分解は、有隔膜電解である。第1電極対4を用いた有隔膜電解によって、第1室21でアルカリ性の1次電解水が生成され、第2室22で酸性の1次電解水が生成される。
【0025】
第2電極対5は、第2室22に配されている。本実施形態の電解水生成装置1では、第2電極対5は、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52を含んでいる。第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52は、第2室22に配されている。第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52には、両者間に直流電圧を印加するための給電端子が接続されている。給電端子は、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52の下方に延びている。第2陰極給電板51と第2陽極給電板52とは、平行に配されている。
【0026】
第2電極対5は、第2室22に存在する酸性の1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成する(以下、第2電極対5による電気分解を2次電解とする)。第2電極対5による2次電解は、第1電極対4による1次電解と同時に進行してもよい。
【0027】
電解水生成装置1は、上記構成の他、第1電極対4及び第2電極対5に電解電流を供給するための電解制御部(図示せず)を有している。第1電極対4及び第2電極対5に供給される電解電流は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。上記電解制御部は、第1電極対4及び第2電極対5に所望の電解電流が供給されるように、第1電極対4及び第2電極対5に印加する電解電圧をフィードバック制御する。本実施形態の電解制御部は、電源回路と共に、電解槽2の下方に配されている。
【0028】
第2陰極給電板51と第2陽極給電板52との間には、隔膜が配されていないので、第2電極対5による電気分解は、無隔膜電解である。この第2室で得られた2次電解水は、次亜塩素酸(HOCL)水とも称され、除菌・消臭に有効とされる。従って、本電解水生成装置1では、塩酸等を用いることなく、水道水及び食塩のみで容易に次亜塩素酸水が得られる。
【0029】
本電解水生成装置1で生成される次亜塩素酸水のpHは、第1電極対4の電解強度すなわち1次電解水のpHに依存する。本電解水生成装置1によって生成可能なpHが5~6.5の微酸性の次亜塩素酸水は、強い殺菌力を備え、病原菌やウィルスの除去効果が期待されている。
【0030】
第2室22の容積は、第1室21の容積よりも大きい、のが望ましい。これにより、短時間で大量の次亜塩素酸水が生成できるようになる。
【0031】
同一の電解電圧で、効率よく電気分解を行うためには、極板間の間隔を詰める等の手法により、電気抵抗を小さくすることが有効である。ところが、第1陰極給電板41と第1陽極給電板42との間には、隔膜3が配されているため、第1陰極給電板41と第1陽極給電板42との間隔を十分に詰めることが困難となる場合がある。
【0032】
そこで、本実施形態では、第1陰極給電板41及び第1陽極給電板42の電極面積は、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52の電極面積よりも大きい、のが望ましい。これにより、第1陰極給電板41と第1陽極給電板42との間での電気抵抗が容易に低減され、1次電解での電解効率が向上する。
【0033】
また、第1陰極給電板41及び第1陽極給電板42の高さは、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52の高さよりも大きい、のが望ましい。これにより、第1陰極給電板41と第1陽極給電板42の電極面積を容易に大きく設定できる。また、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52の上方に大きな空間を容易に確保することが可能となる。上記空間は、食塩水の攪拌に好適である。
【0034】
図4は、1次電解及び2次電解を実行中の第1電極対4及び第2電極対5を示している。
1次電解によって第1陽極給電板42の表面から酸素ガスが生成され、気泡となって上方に移動する。同様に、2次電解によって第2陰極給電板51の表面から水素ガスが、第2陽極給電板52の表面から酸素ガスがそれぞれ生成され、気泡となって上方に移動する。
【0035】
これらの酸素ガス及び水素ガスの移動の際に、周辺の水が巻き込まれ、第2室22内で対流が生ずる(同様に、第1室21内でも対流が生ずる)。このような対流によって、第2室22内及び第1室21内の水が拡散され、2次電解及び1次電解が促進される。従って、第1陰極給電板41、第1陽極給電板42及び第2陰極給電板51、第2陽極給電板52は起立姿勢で電解槽2の筐体等に支持されるのが望ましい。
【0036】
図5は、第1電極対4及び第2電極対5の配置を示す平面図である。第1陰極給電板41及び第1陽極給電板42と第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52とは、平面視で直交するように配置されている、のが望ましい。これにより、第2室22内で、複雑な対流が発生し、水の拡散が促進される。「直交するように」とは、第1陽極給電板42と第2陰極給電板51とのなす角及び第1陽極給電板42と第2陽極給電板52とのなす角が、90゜である形態に限られず、上記作用に鑑み、例えば、±10゜(望ましくは±5゜)誤差を許容する趣旨である。
【0037】
また、本実施形態では、第1電極対4と第2電極対5とが平面視でT字状に配置されている。このような配置によって、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52に対する1次電解水の拡散が均等となり、2次電解による次亜塩素酸水の生成が促進される。
【0038】
本電解槽2では、第2室22の上端部が開放され、第2室22に食塩を投入するための食塩投入口25を構成する。これにより、第2室22での食塩水の調製が容易に行える。
【0039】
第2室22には、隔壁(第2隔壁)26が設けられている。隔壁26は、第2室22を、食塩水を生成するための溶解室33と、第1陽極給電板42及び第2電極対5によって電気分解を行うための電解室34とに区画する。隔壁26は、第1陽極給電板42及び第2電極対5を覆い、食塩水を生成する際に、第1陽極給電板42及び第2電極対5を保護する。
【0040】
隔壁26には、貫通孔26aが適宜設けられ、溶解室と電解室との間で水が行き来可能である。これにより、食塩水が第1陽極給電板42及び第2電極対5の周辺に行き渡る。
【0041】
電解槽2は、第1室21と第2室22とを隔てる隔壁(第1隔壁)27を有する、のが望ましい。このような構成では、隔壁27の一部に隔膜3が設けられる。隔壁27によってアルカリ性の1次電解水と酸性の次亜塩素酸水とが分離される。なお、本実施形態では、隔壁26と隔壁27とが一体に形成されている。
【0042】
隔壁27には、第1室21と第2室22との間での水の移動を制限する逆止弁28が設けられる、のが望ましい。逆止弁28は、第2室22から第1室21への水の流入を許容し、第1室21で生成された1次電解水の第2室22への流出を阻止する。逆止弁28には、例えば、ダックビル弁の他、アンブレラ弁等が適用される。隔壁27及び逆止弁28によって、アルカリ性の1次電解水が酸性の次亜塩素酸水に混合されることが防止される。
【0043】
本電解槽2では、第1室21とは反対側に、第2室22から2次電解水を取り出すための注ぎ口29が設けられている、のが望ましい。注ぎ口29は、第2室22の上端部で、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52を延長した面上に配されている。このような構成では、第2室22で生成された次亜塩素酸水が、第2陰極給電板51及び第2陽極給電板52によって堰き止められることなく、注ぎ口29から別の容器等に容易に移し替えられる。
【0044】
第2室22から2次電解水を取り出す際に電解槽2を傾けたとき、隔壁27は、第1室21で生成されたアルカリ性の1次電解水の第2室22への流出を阻止する、ように構成されているのが望ましい。例えば、隔壁27は、第2室22の上端よりも上方に延出されているのが望ましい。さらに隔壁27の上端は、第2室22とは反対側に延出されているのが望ましい。
【0045】
電解槽2は、第1室21で生成された1次電解水を排出するための排出口35を有する、のが望ましい。排出口35は、平面視で第2室22とは反対側に開口している。このような構成では、第1室21で生成されたアルカリ性の1次電解水を、容易に次亜塩素酸水から分離して排出できる。
【0046】
図6ないし11は、電解水生成装置1を用いた次亜塩素酸水生成方法を示している。次亜塩素酸水生成方法は、食塩水生成工程と、電解工程と、取水工程と、排水工程とを含んでいる。
【0047】
図6、7は、食塩水生成工程を示している。図6に示される工程では、食塩投入口25から第2室22に電気分解前の原水が供給される。原水には、一般的には水道水が利用されるが、その他、例えば、純水、井戸水、地下水等を用いることができる。この工程では、逆止弁28を介して第2室22から第1室21に原水が流入する。第2室22の水位と第1室21の水位が等しくなる。
【0048】
図7に示される工程では、食塩投入口25から第2室22に食塩が投入される。そして、第2室22内の水を攪拌することにより、食塩水が生成される。なお、食塩水生成工程は、電解工程と同時に実行されてもよい。
【0049】
図8は、電解工程を示している。電解工程は、第1電極対4を用いて1次電解水を生成する第1ステップS1と、1次電解水を対流させる第2ステップS2と、第2電極対5を用いて2次電解水を生成し、次亜塩素酸水を得る第3ステップS3とを含んでいる。
【0050】
第1ステップS1では、食塩水を第1電極対4で有隔膜電解することにより、1次電解水が生成される。電解槽2の内部は、隔膜3によって第1陰極給電板41側の第1室21と第1陽極給電板42側の第2室22とが分離されているので、第1ステップS1では、第1室21でアルカリ性の1次電解水が生成され、第2室22で酸性の1次電解水が生成される。
【0051】
第2ステップS2では、第1ステップS1で生成された1次電解水が対流する。すなわち、第1室21では、アルカリ性の1次電解水が対流し、第2室22では、酸性の1次電解水が対流する。
【0052】
第3ステップS3では、第2室22内で対流する酸性の1次電解水を第2電極対5で無隔膜電解することにより、2次電解水が生成される。従って、塩酸等を用いることなく、容易に適正濃度の次亜塩素酸水が得られる。
【0053】
第1ステップS1及び第2ステップS2と、第3ステップS3は、同時に実行されるのが望ましいが、交互に実行されてもよい。また、先に第3ステップS3を開始した後、第1ステップS1及び第2ステップS2を開始し、第1ステップS1ないし第3ステップS3が同時に継続する形態であってもよい。
【0054】
第1ステップS1における1次電解及び第3ステップS3における2次電解によって発生した水素ガス及び酸素ガスは、食塩投入口25及び排出口35から電解槽2の外部に排出される。
【0055】
一方、第1ステップS1における1次電解及び第3ステップS3における2次電解によって、第1室21及び第2室22の水は消費される。本実施形態の電解槽2では、第2室22の容積は、第1室21の容積よりも大きいので、電解工程の進行に伴い、第1室21の水位が第2室22の水位よりも低くなる場合がある。この場合、逆止弁28を介して第2室22から第1室21に水が流入するので、第2室22の水位と第1室21の水位が等しくなる。逆に、第2室22の水位が第1室21の水位よりも低くなる場合、逆止弁28を介しての水の移動は生じない。
【0056】
本次亜塩素酸水生成方法では、第3ステップS3で生成された2次電解水を対流させる第4ステップS4を含む、ことが望ましい。上記第2ステップS2及び第4ステップS4によって、第2室22内で複雑な対流が発生し水の拡散が促進されるので、次亜塩素酸水の生成が効率よく生成される。
【0057】
図9は、取水工程を示している。取水工程では、電解槽2を傾けることにより、第2室22で生成された次亜塩素酸水が、注ぎ口29から注ぎ出される。このとき、第1室21で生成されたアルカリ性の1次電解水の流出が、隔壁27によって阻止される。
【0058】
図10は、取水工程を終え正立された電解槽2を示している。この状態にあっても、逆止弁28の働きによって、アルカリ性の1次電解水は、第2室22に移動することなく、第1室21内に留められる。
【0059】
図11は、排水工程を示している。排水工程では、電解槽2が図9とは逆向きに傾けられ、第1室21内のアルカリ性の1次電解水が、排出口35から排出される。
【0060】
図12、13は、図1ないし図11の電解水生成装置1の変形例である電解水生成装置1Aの斜視図である。電解水生成装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1の構成が採用されうる。
【0061】
電解水生成装置1Aは、電解槽2Aと、隔膜3Aと、第1電極対4Aと、第2電極対5Aとを含んでいる。
【0062】
電解槽2Aは、隔膜3A、第1電極対4A及び第2電極対5Aを収容する。電解槽2Aには、電気分解される水が供給される。
【0063】
隔膜3Aは、電解槽2Aの内部を第1室21Aと第2室22Aとに区画する。隔膜3Aには、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)親水膜が用いられている。隔膜3Aは、例えば、格子状に形成されたホルダー31Aによって、第1室21A側及び第2室22A側の両面で支持されている。
【0064】
第1電極対4Aは、第1室21Aに配された第1陰極給電板41Aと、第2室22Aに配された第1陽極給電板42Aとを含んでいる。隔膜3Aは、第1陰極給電板41Aと第1陽極給電板42Aとの間に配されている。
【0065】
第1陰極給電板41A及び第1陽極給電板42Aには、両者間に直流電圧を印加するための給電端子が接続されている。本電解槽2の給電端子は、第1陰極給電板41A及び第1陽極給電板42Aの上方に延びている。
【0066】
第1電極対4Aは、第1室21A及び第2室22Aに供給された水を電気分解することにより1次電解水を生成する。第1電極対4Aを用いた有隔膜電解によって、第1室21Aでアルカリ性の1次電解水が生成され、第2室22Aで酸性の1次電解水が生成される。
【0067】
第2電極対5Aは、第2室22Aに配されている。本実施形態の電解水生成装置1Aでは、第2電極対5Aは、第2陰極給電板51A及び第1陽極給電板42Aを含んでいる。すなわち、第1電極対4Aの第1陽極給電板42Aは、第2電極対5Aの陽極給電板としても機能する。そして、第2陰極給電板51Aは、第1陽極給電板42Aに対向するように配置されている。
【0068】
第2陰極給電板51Aには、第2陰極給電板51A及び第1陽極給電板42Aとの間に直流電圧を印加するための給電端子が接続されている。給電端子は、第2陰極給電板51Aの上方に延びている。
【0069】
第2電極対5Aは、第2室22Aに存在する酸性の1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成する。
【0070】
電解槽2Aの上部には、第1電極対4A及び第2電極対5Aを吊下支持するための支持部材24Aが設けられている。第1電極対4A及び第2電極対5Aは、電解制御部から電解電流の供給を受ける。
【0071】
第2陰極給電板51Aと第1陽極給電板42Aとの間には、隔膜が配されていないので、第2電極対5による電気分解は、無隔膜電解である。従って、本電解水生成装置1Aでも、塩酸等を用いることなく、水道水及び食塩のみで容易に次亜塩素酸水が得られる。
【0072】
第1陰極給電板41A、第1陽極給電板42A及び第2陰極給電板51Aの電極面積は、それぞれ同一である。また、第1陰極給電板41A、第1陽極給電板42A及び第2陰極給電板51Aの高さは、それぞれ同一である。第2陰極給電板51Aの電極面積は、第1陽極給電板42Aの電極面積よりも小さくてもよく、第2陰極給電板51Aの高さは、第1陽極給電板42Aの高さよりも低くてもよい。
【0073】
以上、本発明の電解水生成装置1等及び次亜塩素酸水生成方法が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0074】
例えば、電解水生成装置1等は、少なくとも、水を電気分解するための電解槽2と、電解槽2の内部を第1室21と第2室22とに区画するための隔膜3と、第1室21に配された第1陰極給電板41及び第2室22に配された第1陽極給電板42を含み、第1室21及び第2室22に供給された水を電気分解することにより1次電解水を生成するための第1電極対4と、第2室22に配され、第2室22で生成された1次電解水を電気分解することにより、2次電解水を生成するための第2電極対5とを含んでいればよい。
【0075】
また、次亜塩素酸水生成方法は、少なくとも、食塩水を有隔膜電解することにより、酸性の1次電解水を生成する第1ステップと、第1ステップで生成された1次電解水を無隔膜電解することにより、2次電解水を生成し、次亜塩素酸水を得る第2ステップとを含んでいればよい。
【符号の説明】
【0076】
1 電解水生成装置
2 電解槽
3 隔膜
4 第1電極対
5 第2電極対
21 第1室
22 第2室
25 食塩投入口
26 カバー部材
27 隔壁
28 逆止弁
29 注ぎ口
35 排出口
41 第1陰極給電板
42 第1陽極給電板
51 第2陰極給電板
52 第2陽極給電板
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13