(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】負荷時タップ切換器、および駆動トルク測定方法
(51)【国際特許分類】
H01F 29/04 20060101AFI20230517BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01F29/04 502Z
G01L5/00 Z
(21)【出願番号】P 2020198338
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】599041606
【氏名又は名称】三菱電機プラントエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】川添 正人
(72)【発明者】
【氏名】関山 哲生
(72)【発明者】
【氏名】田中 和徳
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-22143(JP,A)
【文献】特開平9-213542(JP,A)
【文献】特開2018-146424(JP,A)
【文献】特開2013-238551(JP,A)
【文献】特開平10-41162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00- 5/28
H01F 29/00-38/12
H01F 38/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷時タップ切換器本体を駆動させる電動操作機構を備える負荷時タップ切換装置において、
実運用モード時には、前記電動操作機構からの駆動力を前記負荷時タップ切換器本体に伝達するために、前記電動操作機構の出力軸と前記負荷時タップ切換器本体の駆動軸との間に製品用カップリングが接続され、
前記駆動力のトルク測定を行うための測定モード時には、前記駆動軸の駆動トルクを測定するトルクセンサを有するとともに、前記電動操作機構からの駆動力を前記負荷時タップ切換器本体に伝達するために、前記電動操作機構の出力軸と前記負荷時タップ切換器本体の駆動軸との間に、トルク測定用駆動力伝達機構部が前記製品用カップリングの代わりに接続され、
前記製品用カップリングと前記トルク測定用駆動力伝達機構部とは、前記出力軸と前記駆動軸との間でともに着脱自在であり、互換性を有する
負荷時タップ切換装置。
【請求項2】
前記トルク測定用駆動力伝達機構部は、アダプタ、前記トルクセンサ、接続軸、および専用カップリングを有して構成され、
トルク測定用駆動力伝達機構部が接続された状態では、
前記トルクセンサは、一端が前記アダプタを介して前記出力軸に接続され、他端が前記接続軸の一端に接続され、
前記接続軸の他端は、前記専用カップリングを介して前記駆動軸と接続される
請求項1に記載の負荷時タップ切換装置。
【請求項3】
負荷時タップ切換器本体の駆動軸を駆動させる電動操作機構を備える負荷時タップ切換装置に適用され、前記駆動軸の駆動トルクを測定する駆動トルク測定方法であって、
実運用モード時において前記電動操作機構からの駆動力を前記負荷時タップ切換器本体に伝達するために、前記電動操作機構の出力軸と前記負荷時タップ切換器本体の前記駆動軸との間に接続されている製品用カップリングを取り外す第1ステップと、
前記出力軸に対してアダプタを取り付ける第2ステップと、
前記出力軸に取り付けられた前記アダプタに対して前記駆動トルクの測定結果であるトルク値を出力するトルクセンサの一端を取り付ける第3ステップと、
前記トルクセンサの他端と前記駆動軸との間に接続軸を取り付ける第4ステップと、
専用カップリングを用いて前記接続軸と前記駆動軸とを結合する第5ステップと、
前記電動操作機構を駆動させることで、前記アダプタ、前記トルクセンサ、前記接続軸、および専用カップリングを有して構成されたトルク測定用駆動力伝達機構部を介して前記駆動軸を駆動させた際に、前記トルクセンサから出力される前記トルク値をモニタすることで、負荷時タップ切換装置の動作中におけるピークトルク値を測定し、測定結果を表示器に表示させる第6ステップと
を有する駆動トルク測定方法。
【請求項4】
前記第6ステップは、前記電動操作機構の駆動を開始した後の期間を、検出待ち時間と、前記検出待ち時間に続く検出時間の2つに分割して設定可能であり、前記検出時間において前記トルクセンサから出力される前記トルク値をモニタすることで前記ピークトルク値を測定する
請求項3に記載の駆動トルク測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器の中に組み込まれている負荷時タップ切換器本体の駆動トルクの測定に適した負荷時タップ切換器、および負荷時タップ切換器に適用される駆動トルク測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所で発電された電気は、変圧器により、昇圧され、1次変電所に送出され、1次変電所でさらに変圧器を経由し、市街地近郊の2次変電所に送電され、大型ビルや工場に直接送られる。また、配電用変電所からは、小規模工場へ、あるいは柱上変圧器を介して一般家庭へと送電される。これら種々の変電所の各拠点には、様々な変圧器が設置されている。
【0003】
図9は、変電所に設置された変圧器を示した説明図である。
図9に示した構成では、発電所1で発電された電気が、変電所2内の変圧器100で変圧され、家庭3に供給されている。このような変圧器100の中には、負荷時タップ切換器10(On Load Tap Changer:以下の説明では、LTC10と略して説明する)が組み込まれている。
【0004】
LTC10は、変圧器100の1次側コイルにおけるタップ点数分のタップリードのいずれと接続するかを切り換え、1次側コイルと2次側コイルとの巻数比を変えることによって、負荷に供給する電圧を変えている。換言すると、LTC10は、必要な電圧に切換えるために、複数のタップが設けてられており、負荷側の電圧が変動した場合に、適切なタップに切り換えることにより、電圧を調整し、定電圧維持を図っている。
【0005】
ここで、LTC10は、変圧器の中で唯一の可動機器であり、タップを切り換える際のスライドコンタクト部が異常摩耗を起こすと、重大事故に繋がる。そこで、LTC10の定期点検時に、変圧器100の内部にあるタップ選択器の健全性を確認することが重要となる。なお、タップ選択器を含むLTC10の内部構成に関しては、実施の形態の中で詳述する。
【0006】
タップ選択器は、目視点検ができない。そこで、タップ切換を行うための駆動軸における駆動トルクを、トルクセンサを用いて測定することで、健全性を定量的に測定する従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に係るLTCは、駆動軸の駆動トルクを測定するトルクセンサ本体が耐候性ケース内に収納されたトルクセンサ装置を、駆動軸に着脱自在に取り付ける構成を備えている。この結果、風雨といった外部環境に悪影響を受けやすい、すでに設置されたLTCに対しても、トルクセンサの取り付けを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術は、以下のような課題がある。
特許文献1に係るLTCは、定期点検時にはトルクセンサ装置を取り付け、通常運転時にはトルクセンサ装置を取り外すことを目的としているものではなく、風雨といった外部環境に悪影響を受けやすい設置状態において、常時、トルクセンサ装置を取り付けておくことを念頭に置いている。従って、耐候性ケース内にトルクセンサ本体を収納する構成を採用することが必須であり、高価な装置となっている。
【0010】
また、特許文献1に係るLTCは、定期点検時のみトルクセンサを取付け、定期点検後はトルクセンサを取り外すことを可能とするための着脱容易性を備えた構成までは、考慮されていない。さらに、特許文献1に係るLTCは、トルクセンサの着脱を行った場合にも、定期点検時におけるトルク測定に要する作業時間を短縮することについてまでは、何ら考慮されていない。
【0011】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、比較的安価で、かつ、従来の手動作業と比較して短時間で、トルクセンサを用いたタップ切換器の健全性の確認作業を実現できる構成を備えた負荷時タップ切換器、および駆動トルク測定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る負荷時タップ切換装置は、負荷時タップ切換器本体を駆動させる電動操作機構を備える負荷時タップ切換装置において、実運用モード時には、電動操作機構からの駆動力を負荷時タップ切換器本体に伝達するために、電動操作機構の出力軸と負荷時タップ切換器本体の駆動軸との間に製品用カップリングが接続され、駆動力のトルク測定を行うための測定モード時には、駆動軸の駆動トルクを測定するトルクセンサを有するとともに、電動操作機構からの駆動力を負荷時タップ切換器本体に伝達するために、電動操作機構の出力軸と負荷時タップ切換器本体の駆動軸との間に、トルク測定用駆動力伝達機構部が製品用カップリングの代わりに接続され、製品用カップリングとトルク測定用駆動力伝達機構部とは、出力軸と駆動軸との間でともに着脱自在であり、互換性を有するものである。
【0013】
また、本発明に係る駆動トルク測定方法は、負荷時タップ切換器本体の駆動軸を駆動させる電動操作機構を備える負荷時タップ切換装置に適用され、駆動軸の駆動トルクを測定するための駆動トルク測定方法であって、実運用モード時において電動操作機構からの駆動力を負荷時タップ切換器本体に伝達するために、電動操作機構の出力軸と負荷時タップ切換器本体の駆動軸との間に接続されている製品用カップリングを取り外す第1ステップと、出力軸に対してアダプタを取り付ける第2ステップと、出力軸に取り付けられたアダプタに対して駆動トルクの測定結果であるトルク値を出力するトルクセンサの一端を取り付ける第3ステップと、トルクセンサの他端と駆動軸との間に接続軸を取り付ける第4ステップと、専用カップリングを用いて接続軸と駆動軸とを結合する第5ステップと、電動操作機構を駆動させることで、アダプタ、トルクセンサ、接続軸、および専用カップリングを有して構成されたトルク測定用駆動力伝達機構部を介して駆動軸を駆動させた際に、トルクセンサから出力されるトルク値をモニタすることで、負荷時タップ切換装置の動作中におけるピークトルク値を測定し、測定結果を表示器に表示させる第6ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的安価で、かつ、従来の手動作業と比較して短時間で、トルクセンサを用いたタップ切換器の健全性の確認作業を実現できる構成を備えた負荷時タップ切換器、および駆動トルク測定方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る実運用モード時におけるLTCの構成を示した説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る測定モード時におけるLTCの構成を示した説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係るトルク測定用駆動力伝達機構部の構成を示した説明図である。
【
図4A】本発明の実施の形態1において、製品用カップリングを取り外し、トルク測定用駆動力伝達機構部を取り付けるための一連の手順を示した説明図である。
【
図4B】本発明の実施の形態1において、製品用カップリングを取り外し、トルク測定用駆動力伝達機構部を取り付けるための一連の手順を示した説明図である。
【
図4C】本発明の実施の形態1において、製品用カップリングを取り外し、トルク測定用駆動力伝達機構部を取り付けるための一連の手順を示した説明図である。
【
図5】本発明の実施の形態1において、トルク測定用駆動力伝達機構部の取り付けが完了した後に、トルクセンサの出力をモニタできる表示器を取り付けた状態を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態1において、表示器に取り込まれたトルク値を時系列波形として示した説明図である。
【
図7】本発明の実施の形態1における自動測定方法を用いた場合のトルク測定時間を、従来の手動測定方法を用いた場合のトルク測定時間と比較して示した説明図である。
【
図8】本発明の実施の形態1における自動測定方法を用いた場合のLTC点検時間を、従来の手動測定方法を用いた場合のLTC点検時間と比較して示した説明図である。
【
図9】変電所に設置された変圧器を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の負荷時タップ切換器、および駆動トルク測定方法の好適な実施の形態につき、図面を用いて、具体的に説明する。
本発明は、電動操作機構の出力軸と負荷時タップ切換器本体の駆動軸との間に接続されている製品用カップリングと、トルクセンサを有するトルク測定用駆動力伝達機構部との交換を容易に実現できる構成を備えるとともに、トルクセンサを用いたタップ切換器の健全性の確認作業を、トルクセンサを用いない従来の手動確認作業よりも短時間で容易に実現できる構成を備える点を技術的特徴としている。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る実運用モード時におけるLTC10の構成を示した説明図である。
図1に示した実運用モード時におけるLTC10は、出力軸11aを有する電動操作機構11、製品用カップリング12、駆動軸13、切換開閉器14、およびタップ選択器15を備えて構成されている。
【0018】
タップ選択器15は、駆動力を持たず、電動で切換開閉器14およびタップ選択器15を動かす装置が、電動操作機構11に相当する。電動操作機構11の出力軸11aと、駆動軸13とは、製品用カップリング12を介して接続されている。従って、電動操作機構11の出力が駆動軸13に伝達される。そして、駆動軸13の駆動力により、切換開閉器14とタップ選択器15とが連動で動作し、タップ切換が行われる。
【0019】
LTC10は、変圧器100の中で唯一の可動機器であり、タップ選択器15のスライドコンタクト部が異常摩耗を起こすと、重大事故に繋がる。このため、LTC10は、定期点検が必要となる。
【0020】
具体的には、スライドコンタクト部が異常摩耗を起こすと、スライドコンタクト部における接触抵抗が過大となり、可燃性ガスが発生する。さらに、可燃性ガスが発生することでガス検出器が動作し、変圧器100がトリップする結果に至る。
【0021】
ここで、異常摩耗が発生した場合には、駆動軸13を駆動するためのトルクに異常値が発生する。従って、駆動軸13の駆動トルクを測定することで、異常摩耗に至っているか否かを定量的に判断することができる。
【0022】
図1に示した構成においては、電動操作機構11内にトルクレンチをセットし、トルクレンチを手動で回すことで、トルク測定を実施することができる。具体的には、一例として、1タップ当たりトルクレンチを54回転させ、最大トルクを測定する。
【0023】
タップ点数が18タップであるとすると、上げ方向、下げ方向の往復で36タップでのトルク測定を実施することとなる。1タップ当たり約2.5分かかると仮定すると、36タップ全てのトルク測定を行うには、約1.5時間が必要となる。
【0024】
また、LTC10の機種によってトルク値は異なるため、機種に応じたトルクレンチを選定し、手動によるトルク測定を行う必要があった。さらに、LTC10の機種によっては、最大ピークトルクが約60N・mとなり、約1.5時間にわたって手動によるトルク測定を行うことは、作業者にとって酷であり、かなりの体力を必要としていた。
【0025】
これに対して、
図2は、本発明の実施の形態1に係る測定モード時におけるLTC10の構成を示した説明図である。
図2に示した測定モード時におけるLTC10は、先の
図1の構成における製品用カップリング12を、トルク測定用駆動力伝達機構部20に付け換えた構成を備えている。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1に係るトルク測定用駆動力伝達機構部20の構成を示した説明図である。
図3に示すように、トルク測定用駆動力伝達機構部20は、アダプタ21、トルクセンサ22、接続軸23、および専用カップリング24を備えて構成されている。このような構成を有するトルク測定用駆動力伝達機構部20は、出力軸11aと駆動軸13との間で着脱可能であり、製品用カップリング12の代わりに取付ることができる。
【0027】
すなわち、本実施の形態1におけるLTC10は、変圧器100を実運用しているモードに相当する実運用モードにおいては、
図1に示したように、出力軸11aと駆動軸13とを製品用カップリング12によって結合している。このような構成を採用することで、電動操作機構11からの駆動力を、切換開閉器14およびタップ選択器15から構成される負荷時タップ切換器本体に伝達している。
【0028】
一方、本実施の形態1におけるLTC10は、変圧器100の点検作業を行うモードに相当する測定モードにおいては、
図2、
図3に示したように、出力軸11aと駆動軸13とをトルク測定用駆動力伝達機構部20によって結合している。このような構成を採用することで、電動操作機構11からの駆動力を、切換開閉器14およびタップ選択器15から構成される負荷時タップ切換器本体に伝達するとともに、トルクセンサ22を用いて駆動軸13の駆動トルクを定量的に測定することを可能としている。
【0029】
図3を用いて、本実施の形態1におけるトルク測定用駆動力伝達機構部20の構成について、詳細に説明する。トルクセンサ22を組み込むために、電動操作機構11の出力軸11aとトルクセンサ22との間をつなぐアダプタ21を用いるとともに、トルクセンサ22と駆動軸13と間をつなぐ接続軸23を用いている。さらに、接続軸23と駆動軸13との接続に、専用カップリング24を用いている。
【0030】
図1に示した製品用カップリング12と、
図2および
図3に示したトルク測定用駆動力伝達機構部20とは、LTCの製品として使用している出力軸11aと駆動軸13との間で、ともに着脱自在であり、かつ、いずれか一方を取付可能な互換性を有している。
【0031】
次に、製品用カップリング12が用いられている実運用モードから、トルクセンサ22を有するトルク測定用駆動力伝達機構部20を用いる測定モードに切り換える手順について、
図4A~
図4Cを用いて説明する。
【0032】
図4A~
図4Cは、本発明の実施の形態1において、製品用カップリング12を取り外し、トルク測定用駆動力伝達機構部20を取り付けるための一連の手順を示した説明図である。
図4A~
図4Cを参照しながら、負荷時タップ切換装置に適用される駆動トルク測定方法を実現するための一連の手順について、(a)から(h)の順番に従って詳細に説明する。
【0033】
<(a)初期状態>
初期状態では、電動操作機構11の出力軸11aと駆動軸13との間には、製品用カップリング12が接続されている。
【0034】
<(b)ステップS1>
ステップS1において、作業員は、出力軸11aと駆動軸13との間にある製品用カップリング12を取り外す。
【0035】
<(c)ステップS2>
ステップS2において、作業員は、出力軸11aに対してアダプタ21の一端を取り付ける。
【0036】
<(d)ステップS3>
ステップS3において、作業員は、アダプタ21の他端に対してトルクセンサ22の一端を取り付ける。
【0037】
<(e)ステップS4>
ステップS4において、作業員は、トルクセンサ22の他端と、駆動軸13との間に接続軸23を取り付ける。
【0038】
<(f)ステップS5-1>
専用カップリング24は、第1カップリング24a、第2カップリング24b、および第3カップリング24cの3分割式として構成されている。そして、ステップS5-1において、作業員は、接続軸23と駆動軸13とを結合するために、第1カップリング24aを取り付ける。
【0039】
<(g)ステップS5-2>
ステップS5-2において、作業員は、接続軸23と駆動軸13とを結合するために、上側に相当する第2カップリング24bを取り付ける。
【0040】
<(h)ステップS5-3>
ステップS5-3において、作業員は、接続軸23と駆動軸13とを結合するために、下側に相当する第3カップリング24cを取り付ける。
【0041】
ステップS5-1~ステップS5-3により、接続軸23と駆動軸13とが専用カップリング24により結合され、トルク測定用駆動力伝達機構部20の取り付けが完了する。
【0042】
次に、トルク測定用駆動力伝達機構部20の取り付けが完了した後に、トルクセンサ22から駆動トルクの測定結果として出力されるトルク値を、電動操作機構11内のモータが駆動されている期間にわたってモニタすることで、負荷時タップ切換装置の動作中におけるピークトルク値を特定する手法について説明する。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態1において、トルク測定用駆動力伝達機構部20の取り付けが完了した後に、トルクセンサ22の出力をモニタし、表示できる表示器22aを取り付けた状態を示す説明図である。
【0044】
表示器22aは、一定のサンプリング周期でトルクセンサ22から出力されるトルク値を取り込むとともに、ピークトルク値をホールドする機能を有している。
【0045】
図6は、本発明の実施の形態1において、表示器22aに取り込まれたトルク値を時系列波形として示した説明図である。
図6においては、一例として、電動操作機構11内のモータ駆動時間が6秒間である場合を示している。また、モータ駆動時間は、次の3つの時間帯に大別されて示されている。
【0046】
・検出待ち時間:モータが始動してからLTC10が動作を開始するまでの時間に相当する。
図6においては、0秒~1秒の1秒間として示されている。
・検出時間:モータが始動した後、トルク測定を行うためにLTC10が起動しているLTC起動時間に相当する。
図6においては、1秒~4.5秒の3.5秒間として示されている。
・モータ停止時間:LTC動作時間が終了し、モータが実際に停止するまでの時間に相当する。
図6においては、4.5秒~6秒の1.5秒間として示されている。
【0047】
図6では、検出待ち時間におけるトルク値の最大値がモータ始動トルクとして得られ、LTC動作時間におけるトルク値の最大値がLTCピークトルクとして得られている状態が示されている。
【0048】
ここで、定期点検時に駆動軸13のピークトルク値として得たい値は、LTCピークトルクである。しかしながら、
図6に示したように、このLTCピークトルクの値よりも、モータ始動トルクの値の方が大きいことがある。従って、モータ駆動時間である0秒~6秒までの間で単純にピークホールドを行うと、モータ始動トルクの値を取得してしまうこととなる。
【0049】
そこで、本実施の形態1で使用する表示器22aは、検出待ち時間と検出時間とを個別設定可能にするとともに、検出時間におけるピークトルク値をホールドする機能を持たせている。すなわち、
図6の例では、作業員は、検出待ち時間を1秒、検出待ち時間に続く検出時間を3.5秒として設定することができ、検出時間中におけるピークトルク値をホールドさせることで、モータ始動トルクをピークホールドすることなしに、LTCピークトルクを得ることが可能となる。
【0050】
次に、トルクレンチを用いた従来の手動測定方法と、トルクセンサを用いた実施の形態1に係る自動測定方法とのトルク測定時間の比較結果について説明する。
図7は、本発明の実施の形態1における自動測定方法を用いた場合のトルク測定時間を、従来の手動測定方法を用いた場合のトルク測定時間と比較して示した説明図である。
【0051】
図7における上段は、トルクレンチによる従来の手動測定方法を用いた場合のトルク測定時間である。トータルのトルク測定時間として、1.5時間を要している。これに対して、
図7における下段は、トルクセンサ22による本実施の形態1に係る自動測定方法を用いた場合のトルク測定時間である。トータルのトルク測定時間として、20分を要するだけであり、トルク測定時間が大幅に短縮できることがわかる。
【0052】
図8は、本発明の実施の形態1における自動測定方法を用いた場合のLTC点検時間を、従来の手動測定方法を用いた場合のLTC点検時間と比較して示した説明図である。
図8においては、LTC点検時間を以下のT1~T5に5分割して示している。
T1:切換開閉器点検時間
T2:駆動軸点検時間
T3:操作機構点検時間
T4:トルク測定時間
T5:動作試験時間
【0053】
図7および
図8に示したように、トルク測定時間T4が、従来の手動測定方法では1.5時間かかっていたものが、本実施の形態1に係る自動測定方法を採用することで、約0.3時間に短縮することができる。また、自動測定方法を採用することで、作業時間の短縮ばかりでなく、作業員の体力消耗を抑制し、かつ、計測精度の向上を実現することができる。
【0054】
さらに、本実施の形態1に係るLTC、および駆動トルク測定方法は、測定モード時のみトルク測定用駆動力伝達機構部20を用い、測定モード時には製品用カップリング12を用いるようにしている。すなわち、トルク測定用駆動力伝達機構部20と製品用カップリング12とは、出力軸11aと駆動軸13との間で、ともに着脱自在であり、かつ、いずれか一方を取付可能な互換性を有している。
【0055】
従って、トルクセンサを用いたタップ切換器の健全性の確認作業を、トルクセンサを用いない従来の確認作業よりも短時間で容易に実現できる。さらに、トルク測定用駆動力伝達機構部20と製品用カップリング12とを容易に交換することができるため、耐候性ケース内にトルクセンサを収納するような高価な装置構成を採用する必要もない。
【0056】
以上のように、本実施の形態1によれば、比較的安価で、かつ、従来の手動作業と比較して短時間で、トルクセンサを用いたタップ切換器の健全性の確認作業を実現できる構成を備えた負荷時タップ切換器、および駆動トルク測定方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 負荷時タップ切換器(LTC)、11a 出力軸、11 電動操作機構、12 製品用カップリング、13 駆動軸、14 切換開閉器、15 タップ選択器、20 トルク測定用駆動力伝達機構部、21 アダプタ、22 トルクセンサ、22a 表示器、23 接続軸、24 専用カップリング、24a、24b、24c カップリング、100 変圧器。