(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ホットメルト接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20230517BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20230517BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20230517BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20230517BHJP
C09J 165/00 20060101ALI20230517BHJP
C09J 193/04 20060101ALI20230517BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230517BHJP
H01M 8/0284 20160101ALI20230517BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J7/10
C09J7/25
C09J153/02
C09J165/00
C09J193/04
C09J201/00
H01M8/0284
(21)【出願番号】P 2020518348
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2019018689
(87)【国際公開番号】W WO2019216402
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2018091264
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】青池 周平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 貴彰
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-236965(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056468(WO,A1)
【文献】特開2016-007748(JP,A)
【文献】特開2015-168724(JP,A)
【文献】特開2016-062719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/35
C09J 7/10
C09J 7/25
C09J 109/06
C09J 165/00
C09J 193/04
C09J 201/00
H01M 8/0284
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着シートであって、
単層又は複数層で形成され、
被着体に接着される接着層を少なくとも一層備え、
前記接着層は、スチレン系ゴムと、粘着付与剤とを含有するポリマー組成物で形成されており、
前記スチレン系ゴムは、SEBS、SEPS、及び、SEEPSからなる群から選択される1種であり、
前記粘着付与剤は、ロジン系樹脂、脂環族系樹脂、及び、テルペン系樹脂からなる群から選択される少なくとも2種であ
り、
前記ポリマー組成物は、前記スチレン系ゴムを37質量部以上53質量部以下含有し、前記粘着付与剤を47質量部以上63質量部以下含有する
ホットメルト接着シート。
【請求項2】
前記接着層は、150℃での貯蔵弾性率が40,000Pa以上である
請求項1に記載のホットメルト接着シート。
【請求項3】
燃料電池の膜/電極接合体の膜に接着させて用いられ、
前記膜はフッ素樹脂で形成されている
請求項1または2に記載のホットメルト接着シート。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、
前記スチレン系ゴム
として、前記SEBSを含有し、前記粘着付与剤として、ロジン系樹脂、及び、テルペン系樹脂を含有する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のホットメルト接着シート。
【請求項5】
ポリマーシートで形成された基材層をさらに備え、
前記ポリマーシートが、ポリエチレンテレフタレートを含有する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホットメルト接着シート。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2018-091264号の優先権を主張し、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ホットメルト接着シートに関する。
【背景技術】
【0003】
ホットメルト接着シートとしては、例えば、ポリマーシートで形成された基材層と、該基材層に積層され、ホットメルト接着剤で形成された接着層とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1等)。
また、ホットメルト接着シートは、例えば、燃料電池の電解質膜の周囲をシールするために用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のホットメルト接着シートは、熱変形(熱収縮や熱膨張)することがある。そのため、ホットメルト接着シートの熱変形により被着体の所望の箇所に貼り合せ難くなるといった問題や、被着体に貼り合せた後に被着体に熱が掛かり、ホットメルト接着シートが変形して被着体から剥がれてしまうといった問題が生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、熱変形し難いホットメルト接着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るホットメルト接着シートは、
ホットメルト接着シートであって、
単層又は複数層で形成され、
被着体に接着される接着層を少なくとも一層備え、
前記接着層は、スチレン系ゴムと、粘着付与剤とを含むポリマー組成物で形成されており、
前記粘着付与剤は、ロジン系樹脂、脂環族系樹脂、及び、テルペン系樹脂からなる群から選択される2種である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】膜/電極接合体へのホットメルト接着シートの使用状態を示す断面図。
【
図2】ホットメルト接着シートの試験片における、熱変形率を求めるための印箇所を示す図(加熱前)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態に係るホットメルト接着シートは、ポリマーシートで形成された基材層と、該基材層の少なくとも片面に積層された接着層とを備えている。本実施形態に係るホットメルト接着シートは、前記基材層の片面に接着層が積層された2層構造となっている。ホットメルト接着シートでは、前記接着層は被着体に接着される。
【0011】
前記接着層は、ポリマー組成物で形成される。また、前記接着層は、150℃での貯蔵弾性率が、40,000Pa以上であることが好ましく、40,000~100,000Paがより好ましく、40,000~60,000Paがさらに好ましい。
前記接着層は、150℃での貯蔵弾性率が、100,000Pa以下であることにより、ホットメルト接着しやすいものとなる。
貯蔵弾性率は、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0012】
なお、ポリマー組成物を構成するポリマーの分子量の高い程、ポリマー組成物で形成される接着層の貯蔵弾性率は高くなる傾向にある。また、ポリマー組成物を構成するポリマーが、架橋されたり、或いは、硬化反応することで、ポリマー組成物で形成される接着層の貯蔵弾性率は高くなる傾向にある。
【0013】
前記ポリマー組成物は、ゴム成分として、スチレン系ゴムを含む。スチレン系ゴムは、150℃での貯蔵弾性率が高いので、前記ポリマー組成物は、スチレン系ゴムを含むことにより、150℃での貯蔵弾性率を高めることができる。前記ポリマー組成物は、スチレン系ゴムに加えて、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ポリアミド系ゴム、シリコーン系ゴムなどの他のゴム成分を含んでいてもよい。前記ポリマー組成物は、他のゴム成分を2種以上含んでいてもよい。
【0014】
前記ポリマー組成物は、スチレン系ゴムを、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%含有する。
前記スチレン系ゴムとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)ゴム、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)ゴム、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SEEPS)などが挙げられ、耐湿熱性に優れ、且つ、水素ガスが透過し難いという観点から、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)ゴムが好ましい。
前記スチレン系ゴムは、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)ゴムを、好ましくは10~100質量%、より好ましくは50~100質量%含有する。
【0015】
前記スチレン系ゴムは、構成単位としてのスチレンを、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%含有する。
【0016】
また、前記スチレン系ゴムの水添率は、好ましくは50~100%、より好ましくは80~100%である。
なお、水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0017】
さらに、前記スチレン系ゴムの重量平均分子量は、好ましくは10,000~1,000,000、より好ましくは100,000~1,000,000である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0018】
前記ポリマー組成物は、粘着付与剤を含有する。該粘着付与剤は、ロジン系樹脂、脂環族系樹脂、及び、テルペン系樹脂からなる群から選択される2種である。前記ポリマー組成物が粘着付与剤を含有することにより、接着層としたときに、該接着層のタック性を高めることができるとともに、前記接着層の凝集力を高めることができる。テルペン系樹脂は、テルペンフェノールであってもよい。前記粘着付与剤の内、脂環族系樹脂を含有することにより、得られる接着剤層の常温(23℃)での貯蔵弾性率を低下させることができる。これにより、得られる接着層を常温で比較的軟らかいものとすることできる。
前記ポリマー組成物は、前記粘着付与剤として、フェノール樹脂、炭化水素系樹脂、石油樹脂などを含有していてもよい。このような粘着付与剤は複数種含有されていてもよい。
前記ポリマー組成物は、前記粘着付与剤以外に、エポキシ樹脂を含有していてもよい。
【0019】
前記ポリマー組成物は、前記群から選択される2種の粘着付与剤を、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~60質量%含有する。
前記ポリマー組成物は、スチレン系ゴムを含有する場合、スチレン系ゴム100質量部に対して、前記群から選択される2種の粘着付与剤を、好ましくは50~150質量部、より好ましくは80~120質量部含有する。
また、前記ポリマー組成物は、前記群から選択される一方の粘着付与剤と他方の粘着付与剤とを、好ましくは90:10~50:50、より好ましくは80:20~60:40の質量比で含有することが好ましい。
【0020】
前記粘着付与剤は、ロジン系樹脂及び脂環族系樹脂の2種であるか、または、ロジン系樹脂及びテルペン系樹脂の2種であることが好ましい。前記粘着付与剤としてロジン系樹脂及び脂環族系樹脂の2種を用いるか、または、ロジン系樹脂及びテルペン系樹脂の2種を用いることにより、後述の実施例の項で示すように、TD方向の熱変形率(150℃、30分)を比較的小さくすることができる。
【0021】
前記ポリマーシートを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリスルホン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。
また、該樹脂としては、液晶ポリマー(LCP)も挙げられる。該液晶ポリマー(LCP)としては、液晶ポリエステルなどが挙げられる。
前記ポリマーシートを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0022】
本実施形態に係るホットメルト接着シート10は、
図1に示すように、基材層10aと、該基材層10aの少なくとも片面に積層された接着層10bとを備えている。
前記接着層10bを接着する被着体としては、
図1に示すように燃料電池の膜/電極接合体(MEA)20などが挙げられる。
本実施形態での前記被着体である膜/電極接合体(MEA)20は、負極側から正極側に向けて水素ガスを透過させるとともに正極側に供給された酸素と前記水素とを反応させて電気を生じさせ得るように構成されている。
【0023】
膜/電極接合体(MEA)20では、
図1に示すように、固体電解質膜201の互いに対向する両面に、正極202及び負極203が積層されている。正極202は、正極触媒層202aと正極触媒層202a上に積層された正極ガス拡散層202bとを備えており、正極触媒層202aが固体電解質膜201の一面に積層されている。負極203は、負極触媒層203aと負極触媒層203a上に積層された負極ガス拡散層203bとを備えており、負極触媒層203bが固体電解質膜201の他面に積層されている。
【0024】
図1に示すように、正極触媒層202a及び負極触媒層203aは、固体電解質膜201よりも平面寸法が小さくなるように形成され、正極ガス拡散層202b及び負極ガス拡散層203bは、正極触媒層202a及び負極触媒層203aよりも平面寸法が小さくなるように形成されている。即ち、膜/電極接合体(MEA)20では、正極202及び負極203の平面寸法が、固体電解質膜201の平面寸法よりも小さくなっている。
上記のように、正極202の平面寸法が固体電解質膜201の平面寸法よりも小さくなることにより、膜/電極接合体(MEA)20の正極側には、固体電解質膜201が正極触媒層202aよりも外側に延出して固体電解質膜201が表面露出している正極側電解質膜露出領域201aが外周部に形成されている。
また、負極203の平面寸法が固体電解質膜201の平面寸法よりも小さくなることにより、膜/電極接合体(MEA)20の負極側には、固体電解質膜201が負極触媒層203aよりも外側に延出して固体電解質膜201が表面露出している負極側電解質膜露出領域201bが外周部に形成されている。
【0025】
また、膜/電極接合体(MEA)20の正極側には、正極触媒層202aが正極ガス拡散層202bよりも外側に延出して正極触媒層202aが表面露出している正極側触媒層露出領域202a1が形成されている。
正極側触媒層露出領域202a1は、正極側電解質膜露出領域201aの内側、且つ、正極ガス拡散層202bの外側に形成されている。
本実施形態の正極側電解質膜露出領域201aは、膜/電極接合体(MEA)20の外周部を周回するように形成されており、環状に形成されている。
正極側触媒層露出領域202a1は、正極側電解質膜露出領域201aよりも小さい環状に形成されている。
即ち、膜/電極接合体(MEA)20の正極側には、正極側電解質膜露出領域201aと正極側触媒層露出領域202a1との境界線である第1境界線L1の内側に正極側触媒層露出領域202a1と正極ガス拡散層202bとの境界線である第2境界線L2が形成されている。
【0026】
膜/電極接合体(MEA)20の負極側には、負極触媒層203aが負極ガス拡散層203bよりも外側に延出して負極触媒層203aが表面露出している負極側触媒層露出領域203a1が形成されている。
負極側触媒層露出領域203a1は、負極側電解質膜露出領域201bの内側、且つ、負極ガス拡散層203bの外側に形成されている。
本実施形態の負極側電解質膜露出領域201bは、膜/電極接合体(MEA)20の外周部を周回するように形成されており、環状に形成されている。
負極側触媒層露出領域203a1は、負極側電解質膜露出領域201bよりも小さい環状に形成されている。
即ち、膜/電極接合体(MEA)20の負極側には、負極側電解質膜露出領域201bと負極側触媒層露出領域203a1との境界線である第3境界線L3の内側に負極側触媒層露出領域203a1と負極ガス拡散層203bとの境界線である第4境界線L4が形成されている。
【0027】
図1に示す使用状態においては、膜/電極接合体(MEA)20の正極側に接着される第1のホットメルト接着シート10と、膜/電極接合体(MEA)20の負極側に接着される第2のホットメルト接着シート10との2枚のホットメルト接着シート10が燃料電池のサブガスケット材として用いられている。
【0028】
第1のホットメルト接着シート10は、環状であり、膜/電極接合体(MEA)20に重ねた際に外周縁が膜/電極接合体(MEA)20よりも外側になり、且つ、内周縁が正極側触媒層露出領域202a1及び負極側触媒層露出領域203a1に収まる形状を有している。
即ち、第1のホットメルト接着シート10の中抜き部分は、前記正極ガス拡散層202bよりも一回り大きな形状を有している。
【0029】
第2のホットメルト接着シート10も同様の形状を有している。
【0030】
本実施形態においては、第1のホットメルト接着シート10と第2のホットメルト接着シート10とが、膜/電極接合体(MEA)20よりも外側において接着層10bの外周部を直接接着させて前記サブガスケット材として用いられている。
【0031】
第1のホットメルト接着シート10は、第2のホットメルト接着シート10と接着している外周部以外の(内周部)が膜/電極接合体(MEA)20の外周部に接着されており、正極側電解質膜露出領域201aから第1境界線L1を越えて正極側触媒層露出領域202a1に至る範囲に接着されている。第2のホットメルト接着シート10も同様に接着されている。
【0032】
ホットメルト接着シート10を、上記のように、膜/電極接合体(MEA)20に被着させることにより、前記正極ガス及び前記負極ガスの一部が正極側電解質露出領域201a及び負極側電解質膜露出領域201bを透過することにより、燃料電池としての機能が低下することを抑制することができる。
また、上記したように、本実施形態に係るホットメルト接着シート10は、150℃での貯蔵弾性率が40,000Pa以上と比較的高い値を示す。そのため、膜/電極接合体(MEA)の固体電解質膜201が、従来のホットメルト接着シートの接着層(例えば、ゴム成分として、ポリウレタン系ゴムまたはポリエステル系ゴムを含有する接着層)とは比較的接着し難い、後述のフッ素樹脂で形成されたものであったとしても、本実施形態に係るホットメルト接着シート10は、固体電解質膜201との接着状態を比較的良好に維持することができる。
なお、本実施形態に係るホットメルト接着シート10は、正極触媒層202a及び負極触媒層203aとの接着状態も比較的良好に維持することができる。
【0033】
ここで、膜/電極接合体(MEA)20において、正極触媒層202a及び負極触媒層203aは、一般に、触媒を担持した炭素材料等の触媒担持材料、プロトン伝導性ポリマー、及び、溶媒を含む触媒インキ組成物を用いて形成されるものであり、粉体と液体との間の性質を示す。そのため、上記したような従来のホットメルト接着シートの接着層は、正極触媒層202a及び負極触媒層203aとの接着状態を十分に維持することができないことがある。特に、高温(例えば、150℃)においては、この傾向は顕著になる。その結果、従来のホットメルト接着シートを膜/電極接合体(MEA)20に被着させた場合には、前記正極ガス及び前記負極ガスの一部が正極側電解質膜露出領域201a及び負極側電解質膜露出領域201bを透過することを十分に抑制できないことがある。これに対し、本実施形態に係るホットメルト接着シート10は、150℃における貯蔵弾性率が比較的高い値を示すので、高温においても、正極触媒層202a及び負極触媒層203aとの接着状態を比較的十分に維持することができる。その結果、高温で使用される場合においても、正極ガス及び負極ガスの一部が正極側電解質膜露出領域201a及び負極側電解質膜露出領域201bを透過することを比較的十分に抑制することができる。
また、製造コスト面などから、固体電解質膜201のロスを抑制するために、正極側電解質膜露出領域201a及び負極側電解質膜露出領域201bを極めて小さく構成した場合であっても、例えば、固体電解質膜201の表面積と正極触媒層202aの表面積とをほぼ同じ大きさとし、かつ、固体電解質膜201の表面積と負極触媒層203aの表面積とをほぼ同じ大きさとした場合であっても、サブガスケット材としての機能を十分に発揮させることができる。
【0034】
膜/電極接合体(MEA)20の固体電解質膜201は、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂等のフッ素樹脂で形成されている。
前記パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂としては、デュポン社製の商品名「ナフィオン」、旭化成株式会社製商品名「フレミオン」旭硝子株式会社製商品名「アシプレックス」が挙げられる。
パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、例えば、下記式(1)に示されるポリマー構造を有する樹脂である。
下記式(1)におけるm、nおよびxについて、例えば、前記の「ナフィオン」では、m≧1、n=2、x=5~13.5であり、「アシプレックス」では、m=0,1、n=2~5、x=1.5~14であり、「フレミオン」では、m=0,1、n=1~5である。
【0035】
【0036】
正極触媒層202a及び負極触媒層203aは、触媒粒子を含有する層である。正極触媒層202aに含有される触媒粒子としては、白金が挙げられる。負極触媒層202bに含有される触媒粒子としては、白金化合物が挙げられ、白金化合物としては、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、モリブデン、イリジウム、鉄等からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、白金との合金が挙げられる。
【0037】
正極ガス拡散層202b及び負極ガス拡散層203bは、多孔質の導電性基材から構成されている。多孔質の導電性基材としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス等が挙げられる。
【0038】
また、本実施形態に係るホットメルト接着シートは、レドックス・フロー電池においても用いることができる。
レドックス・フロー電池に用いるホットメルト接着シートは、電解液の透過を抑えるのに用いられる。
【0039】
本実施形態に係るホットメルト接着シートは、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0040】
本実施形態に係るホットメルト接着シートは、
ホットメルト接着シートであって、
単層又は複数層で形成され、
被着体に接着される接着層を少なくとも一層備え、
前記接着層は、スチレン系ゴムと、粘着付与剤とを含むポリマー組成物で形成されており、
前記粘着付与剤は、ロジン系樹脂、脂環族系樹脂、及び、テルペン系樹脂からなる群から選択される2種である。
【0041】
斯かるホットメルト接着シートは、前記接着層が、スチレン系ゴムと、粘着付与剤とを含むポリマー組成物で形成されており、前記粘着付与剤が、ロジン系樹脂、脂環族系樹脂、及び、テルペン系樹脂からなる群から選択される2種であることにより、熱がかかっても形状が保持されやすくなり、その結果、熱変形し難いものとなる。
これにより、熱変形し難いホットメルト接着シートを提供し得る。
【0042】
なお、本発明に係るホットメルト接着シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るホットメルト接着シートは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係るホットメルト接着シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
すなわち、本実施形態に係るホットメルト接着シートは、基材層と接着層とを有する2層構造となっているが、本発明に係るホットメルト接着シートは、基材層と、該基材層の両面に設けられた接着層とを有する3層構造であってもよく、また、接着層のみの単層構造であってもよい。言い換えれば、本発明に係るホットメルト接着シートは、単層又は複数層で形成され、接着層を少なくとも一層備えていればよい。
【実施例】
【0044】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0045】
(実施例1)
ゴム成分としてのスチレン系ゴム(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)ゴム)、及び、樹脂成分としてのロジン系樹脂及びテルペン系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させたワニスを調整した。なお、SEBSの構成単位としてのスチレンの質量割合は29質量%であった。
そして、該ワニスをポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:12μm)にコーティングした後に乾燥させて、乾燥厚み約50μmの接着層を有するホットメルト接着シートを作製した。
【0046】
(実施例2)
ゴム成分としてのスチレン系ゴム(スチレン?イソプレン?ブタジエン?スチレン共重合体(SEEPS)ゴム)、及び、樹脂成分としてのロジン系樹脂及び脂環族系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。なお、SEEPSの構成単位としてのスチレンの質量割合は30質量%であった。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0047】
(実施例3)
ゴム成分としてのスチレン系ゴム(SEEPS)、及び、樹脂成分としての脂環族系樹脂及びテルペン系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0048】
(実施例4)
ゴム成分としてのスチレン系ゴム(スチレン?イソプレン?スチレン共重合体(SEPS)ゴム)、及び、樹脂成分としての脂環族系樹脂及びテルペン系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。なお、SEPSの構成単位としてのスチレンの質量割合は30質量%であった。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0049】
(実施例5)
ゴム成分としてのスチレン系ゴム(SEBS)、及び、樹脂成分としての脂環族系樹脂及びテルペン系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0050】
(実施例6)
ゴム成分としてのスチレン系ゴム(SEBS)、及び、樹脂成分としての脂環族系樹脂及びテルペン系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0051】
(比較例1)
ゴム成分としてのポリウレタン系ゴム及びポリエステル系ゴム、樹脂成分としてのエポキシ系樹脂、及び、充填剤としてのシリカを、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0052】
(比較例2)
ゴム成分としてのポリエステル系ゴム、樹脂成分としてのエポキシ系樹脂、及び、充填剤としてのタルクを、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0053】
(比較例3)
ゴム成分としてのポリウレタン系ゴム及びポリエステル系ゴム、並びに、樹脂成分としてのロジン系樹脂及びテルペン系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0054】
(比較例4)
ゴム成分としてのポリエステル系ゴム、並びに、樹脂成分としてのロジン系樹脂及びテルペン系樹脂を、下記表1に示す配合で有機溶媒中に含有させてワニスを調整した。
そして、実施例1と同様にして、ホットメルト接着シートを作製した。
【0055】
<貯蔵弾性率>
各実施例及び各比較例に係るホットメルト接着シートの接着層の貯蔵弾性率を測定した。
具体的には、まず、各実施例及び各比較例に係るホットメルト接着シートから、接着層部分を切りだした。
そして、接着層の150℃での貯蔵弾性率をJIS K7244-7:2007「プラスチック-動的機械特性の試験方法-第7部:ねじり振動-非共振法」に従い以下の条件で測定した。
測定温度範囲:30℃~200℃
昇温速度:5℃/min
周波数:1Hz
ひずみ:0.1%
【0056】
<熱変形率>
各実施例及び各比較例に係るホットメルト接着シートの熱変形率を測定した。
具体的には、まず、各実施例及び各比較例に係るホットメルト接着シートから、70mm(TD方向)×70mm(MD方向)の試験片を切りだした。
そして、試験片において、
図2に示す4か所に印をつけ、TD方向及びMD方向について、印をつけた2点間の距離(約50mm)を2つずつ測定した。
その後、試験片を150℃で30分間加熱し、試験片において、TD方向及びMD方向について、印をつけた2点間の距離を2つずつ測定した。
そして、加熱前後の前記距離の値及び下記式から、TD方向及びMD方向の熱変形率を2つずつ求めた後、TD方向及びMD方向の熱変形率の平均値を求めた。
【0057】
【0058】
【0059】
表1に示すように、各実施例に係るホットメルト接着シートは、いずれも貯蔵弾性率が40,000Pa以上であり、貯蔵弾性率が40,000Pa未満である各比較例に係るホットメルト接着シートに比べて、MD方向の熱変形率が低かった。
また、実施例3、5、及び6に係るホットメルト接着シートは、他の例に係るホットメルト接着シートに比べて、MD方向の熱変形率が特に低かった。
さらに、実施例1及び2に係るホットメルト接着シートは、他の例に係るホットメルト接着シートに比べて、TD方向の熱変形率が特に低かった。
【符号の説明】
【0060】
10 ホットメルト接着シート
10a 基材層
10b 接着層
20 膜/電極接合体(MEA)
201 固体電解質膜
201a 正極側電解質膜露出領域
201b 負極側電解質膜露出領域
202 正極
202a 正極触媒層
202a1 正極側触媒層露出領域
202b 正極ガス拡散層
203 負極
203a 負極触媒層
203a1 負極側触媒層露出領域
203b 負極ガス拡散層
L1 第1境界線
L2 第2境界線
L3 第3境界線
L4 第4境界線