(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】固体撮像素子、撮像装置、および、固体撮像素子の制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/69 20230101AFI20230517BHJP
【FI】
H04N25/69
(21)【出願番号】P 2020521770
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2019016119
(87)【国際公開番号】W WO2019230217
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2018105731
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】榊原 雅樹
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533140(JP,A)
【文献】特開2017-050853(JP,A)
【文献】特開2015-206785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成する複数の画素と、
テストが指示されていない場合には前記複数の画素のそれぞれの前記リクエストを出力リクエストとして出力し、前記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を前記出力リクエストとして出力するテスト回路と、
前記出力リクエストを調停するアービタと、
前記アービタの調停結果に基づいて前記検出信号を送信する通信回路と、
前記テストが指示された場合には前記検出信号に基づいて前記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定部と
を具備する固体撮像素子。
【請求項2】
前記テスト回路は、前記テストが指示された場合には前記アービタに接続された信号線に所定電位を供給するトランジスタを備え、
前記リクエストは、前記信号線を介して出力される
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記テスト回路は、前記リクエストと前記テストを指示する制御信号との論理積を前記出力リクエストとして出力する論理積ゲートを備える
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記複数の画素のそれぞれには、互いに異なるアドレスが割り当てられ、
前記テスト回路は、前記アドレスのうち一部に対応する前記新たなリクエストを前記出力リクエストとして出力させる
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記複数の画素が配列された画素アレイ部は、所定数の領域に分割され、
前記アービタは、前記領域ごとにアービタブロックを含み、
前記故障判定部は、前記検出信号に基づいて前記アービタブロックのうち故障したアービタブロックを特定する
請求項4記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記画素の一部は、受光チップに配置され、
前記画素の残りは、回路チップに配置され、
前記受光チップは、前記回路チップに積層される
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項7】
所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成する複数の画素と、
テストが指示されていない場合には前記複数の画素のそれぞれの前記リクエストを出力リクエストとして出力し、前記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を前記出力リクエストとして出力するテスト回路と、
前記出力リクエストを調停するアービタと、
前記アービタの調停結果に基づいて前記検出信号を送信する通信回路と、
前記テストが指示された場合には前記検出信号に基づいて前記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定部と、
前記検出信号に対して所定の処理を実行する信号処理部と
を具備する撮像装置。
【請求項8】
複数の画素が所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成するリクエスト生成手順と、
テストが指示されていない場合には前記複数の画素のそれぞれの前記リクエストを出力リクエストとして出力し、前記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を前記出力リクエストとして出力するテスト手順と、
アービタが、前記出力リクエストを調停する調停手順と、
前記アービタの調停結果に基づいて前記検出信号を送信する通信手順と、
前記テストが指示された場合には前記検出信号に基づいて前記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定手順と
を具備する固体撮像素子の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像素子、撮像装置、および、固体撮像素子の制御方法に関する。詳しくは、輝度の変化量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとして検出する固体撮像素子、撮像装置、および、固体撮像素子の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、垂直同期信号などの同期信号に同期して画像データ(フレーム)を撮像する同期型の固体撮像素子が、撮像装置などにおいて用いられている。この一般的な同期型の固体撮像素子では、同期信号の周期(例えば、1/60秒)ごとにしか画像データを取得することができない。このため、自動運転やウェアラブルデバイスのユーザインターフェースなどに関する分野において、より高速な処理が要求された場合に対応することが困難になる。そこで、輝度の変化量が閾値を超えた旨をアドレスイベントとしてリアルタイムに検出してリクエストを送信する複数の画素と、それらのリクエストを調停するアービタとを設けた非同期型の固体撮像素子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このような固体撮像素子の動作をテストする方法としては、例えば、パルス光を照射する変調光源を載置し、そのパルス光の照射時の検出結果を分析するテスト方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の非同期型のテスト方法では、パルス光の照射時の検出結果を分析することにより、異常のある欠陥画素を特定している。しかしながら、その検出結果は、画素からのリクエストを調停するアービタを経由して出力されるため、欠陥画素が検出されても、画素内の回路とアービタとのいずれで故障が生じたのかを特定することができないという問題がある。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、リクエストをアービタが調停する固体撮像素子において、故障個所を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成する複数の画素と、テストが指示されていない場合には上記複数の画素のそれぞれの上記リクエストを出力リクエストとして出力し、上記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を上記出力リクエストとして出力するテスト回路と、上記出力リクエストを調停するアービタと、上記アービタの調停結果に基づいて上記検出信号を送信する通信回路と、上記テストが指示された場合には上記検出信号に基づいて上記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定部とを具備する固体撮像素子、および、その制御方法である。これにより、アービタが故障しているか否かが判定されるという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記テスト回路は、上記テストが指示された場合には上記アービタに接続された信号線に所定電位を供給するトランジスタを備え、上記リクエストは、上記信号線を介して出力されてもよい。これにより、所定電位のリクエストが強制的に出力されるという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記テスト回路は、上記リクエストと上記テストを指示する制御信号との論理積を上記出力リクエストとして出力する論理積ゲートを備えてもよい。これにより、リクエストを伝送する信号線と接地端子との短絡が防止されるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記複数の画素のそれぞれには、互いに異なるアドレスが割り当てられ、上記テスト回路は、上記アドレスのうち一部に対応する上記新たなリクエストを上記出力リクエストとして出力させてもよい。これにより、アービタ内の故障個所がさらに特定されるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記複数の画素が配列された画素アレイ部は、所定数の領域に分割され、上記アービタは、上記領域ごとにアービタブロックを含み、上記故障判定部は、上記検出信号に基づいて上記アービタブロックのうち故障したアービタブロックを特定してもよい。これにより、アービタ内の故障個所がさらに特定されるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記画素の一部は、受光チップに配置され、上記画素の残りは、回路チップに配置され、上記受光チップは、上記回路チップに積層されてもよい。これにより、チップの面積の増大が抑制されるという作用をもたらす。
【0012】
また、本技術の第2の側面は、所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成する複数の画素と、テストが指示されていない場合には上記複数の画素のそれぞれの上記リクエストを出力リクエストとして出力し、上記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を上記出力リクエストとして出力するテスト回路と、上記出力リクエストを調停するアービタと、上記アービタの調停結果に基づいて上記検出信号を送信する通信回路と、上記テストが指示された場合には上記検出信号に基づいて上記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定部と、上記検出信号に対して所定の処理を実行する信号処理部とを具備する撮像装置である。これにより、アービタが故障しているか否かが判定され、所定の処理が実行されるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、リクエストをアービタが調停する固体撮像素子において、アービタの故障の有無を判断するという優れた効果を奏し得る。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の積層構造の一例を示す図である。
【
図3】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の一構成例を示すブロック図である。
【
図4】本技術の第1の実施の形態における画素の一構成例を示す回路図である。
【
図5】本技術の第1の実施の形態におけるコンパレータの入出力特性の一例を示すグラフである。
【
図6】本技術の第1の実施の形態におけるAER(Address Event Representation)ロジック回路の一構成例を示すブロック図である。
【
図7】本技術の第1の実施の形態における行テスト回路の一構成例を示す回路図である。
【
図8】本技術の第1の実施の形態における行テスト回路の動作の一例を示す図である。
【
図9】本技術の第1の実施の形態における列テスト回路の一構成例を示す回路図である。
【
図10】本技術の第1の実施の形態における行AER回路の一構成例を示すブロック図である。
【
図11】本技術の第1の実施の形態における行AERブロックの一構成例を示す回路図である。
【
図12】本技術の第1の実施の形態における列AER回路の一構成例を示すブロック図である。
【
図13】本技術の第1の実施の形態における列AERブロックの一構成例を示すブロック図である。
【
図14】本技術の第1の実施の形態における行アービタの一構成例を示すブロック図である。
【
図15】本技術の第1の実施の形態におけるハンドシェイクの一例を示すタイミングチャートである。
【
図16】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17】本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における行テスト回路の一構成例を示す回路図である。
【
図18】本技術の第1の実施の形態の第1の変形例におけるAND(論理積)ゲートの一構成例を示す回路図である。
【
図19】本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における行テスト回路の動作の一例を示す図である。
【
図20】本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における列テスト回路の一構成例を示す回路図である。
【
図21】本技術の第1の実施の形態の第2の変形例における画素の一構成例を示す回路図である。
【
図22】本技術の第1の実施の形態の第2の変形例におけるバッファまでを受光チップに配置した画素の一構成例を示す回路図である。
【
図23】本技術の第1の実施の形態の第2の変形例におけるコンパレータまでを受光チップに配置した画素の一構成例を示す回路図である。
【
図24】本技術の第1の実施の形態の第2の変形例におけるグランドを接続した画素の一構成例を示す回路図である。
【
図25】本技術の第2の実施の形態におけるテスト制御回路の一構成例を示すブロック図である。
【
図26】本技術の第2の実施の形態における行テスト回路の一構成例を示す回路図である。
【
図27】本技術の第2の実施の形態における行側デコーダの動作の一例を示す図である。
【
図28】本技術の第2の実施の形態における列テスト回路の一構成例を示す回路図である。
【
図29】本技術の第2の実施の形態におけるテスト方法を説明するための図である。
【
図30】本技術の第2の実施の形態におけるエリアをさらに分割して故障個所を絞り込む方法を説明するための図である。
【
図31】本技術の第2の実施の形態における故障個所の検出例を示す図である。
【
図32】車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【
図33】撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(テスト時にテスト回路にリクエストを出力させる例)
2.第2の実施の形態(テスト時に特定のアドレスのリクエストをテスト回路に出力させる例)
3.移動体への応用例
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置の構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。この撮像装置100は、画像データを撮像するための装置であり、光学部110、固体撮像素子200およびDSP(Digital Signal Processing)回路120を備える。さらに撮像装置100は、表示部130、操作部140、バス150、フレームメモリ160、記憶部170および電源部180を備える。撮像装置100としては、産業用ロボットに搭載されるカメラや、車載カメラなどが想定される。
【0017】
光学部110は、被写体からの光を集光して固体撮像素子200に導くものである。固体撮像素子200は、画素毎に、輝度の変化量の絶対値が閾値の絶対値を超えた旨をアドレスイベントとして検出するものである。この固体撮像素子200は、画素ごとにアドレスイベントの有無を表す検出信号を生成し、DSP回路120に信号線209を介して供給する。
【0018】
DSP回路120は、検出信号からなる画像データに対して所定の信号処理を実行するものである。このDSP回路120は、処理後の画像データ、及び、イベントデータをバス150を介してフレームメモリ160などに出力する。なお、DSP回路120は、特許請求の範囲に記載の信号処理部の一例である。
【0019】
表示部130は、画像データ、及び、イベントデータを表示するものである。表示部130としては、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネルが想定される。操作部140は、ユーザの操作に従って操作信号を生成するものである。
【0020】
バス150は、光学部110、固体撮像素子200、DSP回路120、表示部130、操作部140、フレームメモリ160、記憶部170および電源部180が互いにデータをやりとりするための共通の経路である。
【0021】
フレームメモリ160は、画像データを保持するものである。記憶部170は、画像データなどの様々なデータを記憶するものである。電源部180は、固体撮像素子200、DSP回路120や表示部130などに電源を供給するものである。
【0022】
[固体撮像素子の構成例]
図2は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の積層構造の一例を示す図である。この固体撮像素子200は、受光チップ201と、その受光チップ201に積層された回路チップ202とを備える。
【0023】
図3は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の一構成例を示すブロック図である。この固体撮像素子200は、列アービタ213、列AER回路220、列アドレスエンコーダ214、画素アレイ部300およびステートマシン215を備える。また、固体撮像素子200は、行アドレスエンコーダ216、行AER回路260、行アービタ600、列テスト回路410、行テスト回路420およびテスト制御回路430を備える。テスト制御回路430は、制御信号供給部431および故障判定部432を備える。また、画素アレイ部300には、二次元格子状に複数の画素310が配列される。以下、画素アレイ部300において所定の方向に配列された画素の集合を「行」と称し、行に垂直な方向に配列された画素の集合を「列」と称する。
【0024】
画素310は、光電流に応じた電圧の変化量を示す微分信号を生成し、その信号のレベルと所定の閾値とを比較する。この比較結果は、アドレスイベントの検出結果を示す。ここで、微分信号と比較するための閾値は、互いに異なる2つの閾値を含み、それらのうち大きい方の閾値を上限閾値とし、小さい方の閾値を下限閾値とする。また、アドレスイベントは、オンイベントおよびオフイベントを含み、その検出結果は、1ビットのオンイベントの検出結果と1ビットのオフイベントの検出結果とを含む。オンイベントは、微分信号が上限閾値を超えた際に検出され、オフイベントは、その微分信号が下限閾値を下回った際に検出される。
【0025】
画素310は、アドレスイベントを検出した際に行テスト回路420との間で、リクエストおよび応答の送受信(以下、「ハンドシェイク」と称する。)を行う。ここで、リクエストは、アドレスイベントの検出信号の外部送信をステートマシン215に要求する信号である。次に画素310は、列テスト回路410との間でハンドシェイクを行う。
【0026】
列テスト回路410は、列AER回路220との間でリクエストおよび応答を送受信するものである。この列テスト回路410は、テスト制御回路430からの制御信号によりテストが指示されていない場合には全行からのリクエストをそのまま列AER回路220に出力する。一方、テストが指示された場合に列テスト回路410は、全列について新たにリクエストを生成して列AER回路220に出力する。また、列テスト回路410は、列AER回路220からの応答をそのまま画素310に出力する。
【0027】
行テスト回路420は、行AER回路260との間でリクエストおよび応答を送受信するものである。この行テスト回路420は、テスト制御回路430からの制御信号によりテストが指示されていない場合には全行からのリクエストをそのまま行AER回路260に出力する。一方、テストが指示された場合に行テスト回路420は、全行について新たにリクエストを生成して行AER回路260に出力する。また、行テスト回路420は、行AER回路260からの応答をそのまま画素310に出力する。
【0028】
なお、列テスト回路410および行テスト回路420からなる回路は、特許請求の範囲に記載のテスト回路の一例である。
【0029】
列アービタ213は、列AER回路220からのリクエストを調停して調停結果に基づいて応答を列AER回路220に送信するものである。
【0030】
列AER回路220は、列のそれぞれと、列アービタ213と、ステートマシン215との間で、リクエストおよび応答を送受信(ハンドシェイク)するものである。
【0031】
列アドレスエンコーダ214は、アドレスイベントの発生した列のアドレスをエンコードしてステートマシン215に送信するものである。
【0032】
行アドレスエンコーダ216は、アドレスイベントの発生した行のアドレスをエンコードしてステートマシン215に送信するものである。
【0033】
行アービタ600は、行AER回路260からのリクエストを調停して調停結果に基づいて応答を行AER回路260に送信するものである。なお、列アービタ213および行アービタ600は、特許請求の範囲に記載のアービタの一例である。
【0034】
行AER回路260は、行のそれぞれと、行アービタ600と、ステートマシン215との間でリクエストおよび応答を送受信(ハンドシェイク)するものである。
【0035】
ステートマシン215は、列アービタ213および行アービタ600の調停結果に基づいて検出信号を送信するものである。このステートマシン215は、列AER回路220および行AER回路260からリクエストを受信すると、列アドレスエンコーダ214および行アドレスエンコーダ216からのデータをデコードして、アドレスイベントの検出されたアドレスを特定する。画素毎のアドレスイベントの検出信号を2次元格子状に配列することにより、画像データが生成される。ステートマシン215は、その画像データをDSP回路120および故障判定部432に送信する。なお、ステートマシン215は、特許請求の範囲に記載の通信回路の一例である。
【0036】
制御信号供給部431は、モード信号MODEによりテストが指示された場合に、列テスト回路410および行テスト回路420のそれぞれに制御信号を供給するものである。ここで、モード信号MODEは、固体撮像素子200のテストを行うテストモードと、テストを行わない通常モードとのいずれかを示す信号である。このモード信号MODEは、ユーザの操作や、所定のアプリケーションの実行により生成される。
【0037】
故障判定部432は、テストが指示された場合に、ステートマシン215からの検出信号に基づいて、列アービタ213や行アービタ600の故障の有無を判定するものである。テストの際には、列テスト回路410および行テスト回路420により、全行および全列、すなわち全画素についてリクエストが出力される。このため、ステートマシン215に故障が無く、列アービタ213や行アービタ600にも故障が無ければ、ステートマシン215から全画素の検出信号が送信される。一方、ステートマシン215に故障が無く、列アービタ213や行アービタ600に故障がある場合には、一部の画素の検出信号が出力されなくなるおそれがある。このため、故障判定部432は、全画素の検出信号が送信されたか否かにより、列アービタ213や行アービタ600の故障の有無を判定することができる。
【0038】
また、全画素にパルス光を照射する変調光源を載置し、そのパルス光の照射時の検出結果を分析するテスト方法と組み合わせれば、画素およびアービタのいずれかに故障があるのかを特定することができる。
【0039】
あるいは、変調光源を用いずに、後述
図4の対数応答部320、バッファ330や微分回路340の後段にテスト信号と前段からの信号とを選択して後段に出力するセレクタを追加してテストを行うこともできる。このテスト方法と組み合わせれば、画素内の各回路とアービタとのいずれに故障があるのかを特定することができる。
【0040】
なお、テスト制御回路430を固体撮像素子200内に配置しているが、テスト制御回路430内の回路の一部または全てを固体撮像素子200の外部(DSP回路120など)に配置することもできる。
【0041】
[画素の構成例]
図4は、本技術の第1の実施の形態における画素310の一構成例を示す回路図である。この画素310は、対数応答部320、バッファ330、微分回路340、コンパレータ350およびAERロジック回路360を備える。
【0042】
対数応答部320は、nMOS(negative channel MOS)トランジスタ321および323と、フォトダイオード322と、pMOS(positive channel MOS)トランジスタ324とを備える。
【0043】
フォトダイオード322は、入射光に対する光電変換により光電流を生成するものである。pMOSトランジスタ324およびnMOSトランジスタ323は、電源と接地端子との間において直列に接続される。また、nMOSトランジスタ321のゲートは、pMOSトランジスタ324およびnMOSトランジスタ323の接続点に接続され、ソースはフォトダイオード322に接続され、ドレインは電源端子に接続される。そして、pMOSトランジスタ324のゲートには、バイアス電圧Vblogが印加される。このような接続により、フォトダイオード322に流れる光電流は、対数的に電圧Vpに変換される。
【0044】
また、フォトダイオード322は受光チップ201に配置され、それ以外の回路は、回路チップ202に配置される。また、受光チップ201のグランドと回路チップ202のグランドとは、干渉対策のために互いに分離されている。
【0045】
また、バッファ330は、電源および接地端子の間において直列に接続されたpMOSトランジスタ331および332を備える。接地側のpMOSトランジスタ332のゲートは、対数応答部320に接続され、電源側のpMOSトランジスタ331のゲートには、バイアス電圧Vbsfが印加される。また、pMOSトランジスタ331および332の接続点は、微分回路340に接続される。この接続により、Vpに対するインピーダンス変換が行われる。
【0046】
微分回路340は、容量341および343と、pMOSトランジスタ342および344と、nMOSトランジスタ345とを備える。
【0047】
容量341の一端は、バッファ330に接続され、他端は、容量343の一端とpMOSトランジスタ344のゲートとに接続される。pMOSトランジスタ342のゲートにはリセット信号xrstが入力され、ソースおよびドレインは容量343の両端に接続される。pMOSトランジスタ344およびnMOSトランジスタ345は電源と接地端子との間において直列に接続される。また、容量343の他端は、pMOSトランジスタ344およびnMOSトランジスタ345の接続点に接続される。接地側のnMOSトランジスタ345のゲートには、バイアス電圧Vbaが印加され、pMOSトランジスタ344およびnMOSトランジスタ345の接続点はコンパレータ350にも接続される。このような接続により、微分信号が生成されてコンパレータ350に出力される。また、微分信号は、リセット信号xrstにより初期化される。
【0048】
コンパレータ350は、pMOSトランジスタ351および353とnMOSトランジスタ352および354とを備える。pMOSトランジスタ351およびnMOSトランジスタ352は、電源と接地端子との間において直列に接続され、pMOSトランジスタ353およびnMOSトランジスタ354も、電源と接地端子との間において直列に接続される。また、pMOSトランジスタ351および353のゲートは、微分回路340に接続される。nMOSトランジスタ352のゲートには、所定の上限閾値Vonが印加され、nMOSトランジスタ354のゲートには、所定の下限閾値Voffが印加される。
【0049】
pMOSトランジスタ351およびnMOSトランジスタ352の接続点は、AERロジック回路360に接続され、この接続点の電圧が比較結果VCHとして出力される。pMOSトランジスタ353およびnMOSトランジスタ354の接続点も、AERロジック回路360に接続され、この接続点の電圧が比較結果VCLとして出力される。このような接続により、微分信号が上限閾値Vonを超えた場合にコンパレータ350は、ハイレベルの比較結果VCHを出力し、微分信号が下限閾値Voffを下回った場合にローレベルの比較結果VCLを出力する。この比較結果VCHは、オンイベントの検出結果を示し、比較結果VCLは、オフイベントの検出結果を示す。
【0050】
なお、コンパレータ350は、オンイベントおよびオフイベントの両方を検出しているが、一方のみを検出してもよい。例えば、オンイベントのみを検出する際には、対応するpMOSトランジスタ351およびnMOSトランジスタ352のみが配置される。
【0051】
AERロジック回路360は、比較結果VCHおよびVCLに基づいてハンドシェイクを行うものである。このAERロジック回路360は、アドレスイベントが生じた場合に行AER回路260との間でハンドシェイクを行う。次にAERロジック回路360は、列AER回路220との間でハンドシェイクを行い、リセット信号xrstにより微分回路340をリセットする。
【0052】
図5は、本技術の第1の実施の形態におけるコンパレータ350の入出力特性の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、コンパレータ350の出力信号(VCHまたはVCL)のレベルを示し、横軸はコンパレータ350の入力信号(微分信号)のレベルを示す。また、実線は、比較結果VCHの軌跡を示し、一点鎖線は、比較結果VCLの軌跡を示す。
【0053】
輝度に応じた電圧の変化量(すなわち、微分信号)が上限閾値Vonを超えると、比較結果VCHはローレベルからハイレベルに変化してオンイベントが検出される。一方、微分信号が下限閾値Voffを下回ると、比較結果VCLはハイレベルからローレベルに変化してオフイベントが検出される。
【0054】
[AERロジック回路の構成例]
図6は、本技術の第1の実施の形態におけるAERロジック回路360の一構成例を示すブロック図である。このAERロジック回路360は、nMOSトランジスタ361乃至363、365乃至368、370および371と、pMOSトランジスタ364および369と、容量372とを備える。
【0055】
nMOSトランジスタ361および362は直列に接続される。nMOSトランジスタ362および363のゲートには、比較結果VCHが入力され、nMOSトランジスタ361のゲートには応答AckYp1が入力される。また、nMOSトランジスタ362および363のソースは接地され、nMOSトランジスタ361のドレインから列テスト回路410へリクエストReqHXp1が出力される。nMOSトランジスタ363のドレインから行テスト回路420へリクエストReqYp1が出力される。
【0056】
pMOSトランジスタ364およびnMOSトランジスタ365は電源と接地端子との間において直列に接続される。また、pMOSトランジスタ364のゲートには比較結果VCLが入力され、nMOSトランジスタ365のゲートには、バイアス電圧Vbaerが印加される。
【0057】
nMOSトランジスタ366および367は直列に接続される。nMOSトランジスタ367および368のゲートは、pMOSトランジスタ364およびnMOSトランジスタ365の接続点に接続される。nMOSトランジスタ366のゲートには応答AckYp1が入力される。また、nMOSトランジスタ367および368のソースは接地され、nMOSトランジスタ366のドレインから列テスト回路410へリクエストReqLXp1が出力される。nMOSトランジスタ368のドレインから行テスト回路420へリクエストReqYp1が出力される。
【0058】
pMOSトランジスタ369とnMOSトランジスタ370および371とは、電源と接地端子との間において直列に接続される。また、pMOSトランジスタ369のゲートにはバイアス電圧Vbrstが印加される。nMOSトランジスタ370のゲートには応答AckYp1が入力され、nMOSトランジスタ371のゲートには応答AckXp1が入力される。容量372の一端は、電源に接続され、他端は、pMOSトランジスタ369およびnMOSトランジスタ370の接続点に接続される。また、pMOSトランジスタ369およびnMOSトランジスタ370の接続点の電圧は、リセット信号xrstとして微分回路340へ出力される。
【0059】
上述の構成により、ハイレベルの比較結果VCHが入力される(すなわち、オンイベントが検出される)とAERロジック回路360は、ローレベルのリクエストReqYp1を行AER回路260へ送信する。そして、行テスト回路420からハイレベルの応答AckYp1を受信するとAERロジック回路360は、ローレベルのリクエストReqHXp1を列AER回路410に送信する。次いで列テスト回路410からハイレベルの応答AckXp1を受信するとAERロジック回路360は、ローレベルのリセット信号xrstを微分回路340に出力する。
【0060】
また、ローレベルの比較結果VCLが入力される(すなわち、オフイベントが検出される)とAERロジック回路360は、ローレベルのリクエストReqYp1を行テスト回路420へ送信する。そして、行テスト回路420からハイレベルの応答AckYp1を受信するとAERロジック回路360は、ローレベルのリクエストReqLXp1を列テスト回路410に送信する。次いで列テスト回路410からハイレベルの応答AckXp1を受信するとAERロジック回路360は、ローレベルのリセット信号xrstを微分回路340に出力する。
【0061】
図7は、本技術の第1の実施の形態における行テスト回路420の一構成例を示す回路図である。この行テスト回路420には、行ごとにnMOSトランジスタ421が配置される。
【0062】
nMOSトランジスタ421は、テスト制御回路430からの制御信号T_ReqYに従って、対応する行のリクエストを伝送する信号線に所定電位を供給するものである。リクエストとして、ローレベルの信号が伝送される場合には、ローレベル(接地電位など)が信号線に供給される。
【0063】
テストが指示された場合にテスト制御回路430は、ハイレベルの制御信号T_ReqYを送信する。これにより、画素アレイ部300の1行目のリクエストReqYp1に関わらず、信号線は強制的にローレベルに制御され、ローレベルのリクエストReqYq1が行AER回路260に出力される。2行目以降についても同様である。なお、リクエストReqYp1は、特許請求の範囲に記載の出力リクエストの一例である。
【0064】
一方、テストが指示されていない場合にテスト制御回路430は、ローレベルの制御信号T_ReqYを送信する。これにより、画素アレイ部300の1行目のリクエストReqYp1がそのままリクエストReqYq1として行AER回路260に出力される。2行目以降についても同様である。
【0065】
また、行AER回路260からの1行目の応答AckYp1は、そのまま画素アレイ部300に供給される。2行目以降についても同様である。
【0066】
図8は、本技術の第1の実施の形態における行テスト回路420の動作の一例を示す図である。制御信号T_ReqYがローレベルである場合に行テスト回路420は、リクエストReqYp1をそのままリクエストReqYq1としてスルー出力する。
【0067】
一方、制御信号T_ReqYがハイレベルである場合に行テスト回路420は、リクエストReqYp1に関わらず、リクエスト有りを示すローレベルのリクエストReqYq1を強制的に出力する。
【0068】
[列テスト回路の構成例]
図9は、本技術の第1の実施の形態における列テスト回路410の一構成例を示す回路図である。この列テスト回路410には、行ごとにnMOSトランジスタ411および412が配置される。
【0069】
nMOSトランジスタ411は、テスト制御回路430からの制御信号T_ReqLXpに従って、対応する列のリクエストを伝送する信号線に所定電位(接地電位など)を供給するものである。nMOSトランジスタ412は、テスト制御回路430からの制御信号T_ReqHXpに従って、対応する列のリクエストを伝送する信号線に所定電位を供給するものである。
【0070】
テストが指示された場合にテスト制御回路430は、制御信号T_ReqLXpおよびT_ReqHXpの一方をハイレベルに、他方をローレベルにする。オンイベントの検出信号を出力させる場合には制御信号T_ReqHXpがハイレベルに制御され、オフイベントの検出信号を出力させる場合には制御信号T_ReqLXpがハイレベルに制御される。これらの制御信号により、ローレベルのリクエストReqLXq1、または、ローレベルのReqHXq1が列AER回路220に出力される。2行目以降についても同様である。なお、リクエストReqLXq1およびReqHXq1は、特許請求の範囲に記載の出力リクエストの一例である。
【0071】
一方、テストが指示されていない場合にテスト制御回路430は、ローレベルの制御信号T_ReqLXpおよびT_ReqHXpを送信する。これにより、画素アレイ部300の1行目のリクエストReqLXp1およびReqHXp1がそのままリクエストReqLXq1およびReqHXq1として列AER回路220に出力される。2行目以降についても同様である。
【0072】
なお、上述したように列テスト回路410および行テスト回路420は、リクエストを伝送する信号線がローレベルでない場合においても強制的に、その電位をローレベルにしている。このときに応答(AckYp1など)が返信されると、本来、リクエストが送信されていないにも関わらず、応答が返信されるために想定外の画素状態となり、デッドロックなどの状態になるおそれがある。このため、テストモードにおいて、テスト制御回路430は、全画素をリセット状態にすることが望ましい。例えば、テスト制御回路430は、
図6に例示したAERロジック回路360において、ハイレベルのバイアス電圧Vbrstを入力することにより、リセット状態にする。
【0073】
[行AER回路の構成例]
図10は、本技術の第1の実施の形態における行AER回路260の一構成例を示すブロック図である。この行AER回路260は、行ごとに、行AERブロック270を備える。行AERブロック270は、対応する行と行アービタ600とステートマシン215との間でハンドシェイクを行うものである。
【0074】
[行AERブロックの構成例]
図11は、本技術の第1の実施の形態における行AERブロック270の一構成例を示す回路図である。この行AERブロック270は、pMOSトランジスタ271と、nMOSトランジスタ272および273と、NOR(否定論理和)ゲート276と、インバータ274および275とを備える。
【0075】
pMOSトランジスタ271と、nMOSトランジスタ272および273とは、電源と接地端子との間において直列に接続される。また、pMOSトランジスタ271およびnMOSトランジスタ272のゲートには、ステートマシン215からの制御信号LOADが入力される。この制御信号LOADは、アドレスイベントの検出結果の読出しを指示する信号である。また、nMOSトランジスタ273のゲートには、ステートマシン215からの応答CHIP_ACKを反転したxCHIP_ACKが入力される。
【0076】
NORゲート276は、2つの入力値の否定論理和をリクエストReqYa1として行アービタ600に出力するものである。NORゲート276の入力端子の一方には、ステートマシン215からの応答CHIP_ACKが入力される。NORゲート276の入力端子の他方は、pMOSトランジスタ271およびnMOSトランジスタ272の接続点と、行テスト回路420からのリクエストReqYq1を伝送する信号線とに接続される。
【0077】
インバータ275は、行アービタ600からの応答AckYa1を反転してインバータ274に出力するものである。インバータ274は、インバータ275からの信号を反転して応答AckYp1として、行テスト回路420へ出力するものである。
【0078】
上述の構成により、行AERブロック270は、ローレベルのリクエストReqYq1が入力されると、応答CHIP_ACKがハイレベルであれば、ローレベルのリクエストReqYa1を出力する。また、行AERブロック270は、ハイレベルの応答AckYa1を遅延させて応答AckYp1として出力する。
【0079】
[列AER回路の構成例]
図12は、本技術の第1の実施の形態における列AER回路220の一構成例を示すブロック図である。この列AER回路220は、列ごとに列AERブロック221を備える。列AERブロック221は、対応する列と、ステートマシン215と、列アービタ213との間でハンドシェイクを行うものである。
【0080】
[列AERブロックの構成例]
図13は、本技術の第1の実施の形態における列AERブロック221の一構成例を示すブロック図である。この列AERブロック221は、H側列AERブロック222、L側列AERブロック223およびOR(論理和)ゲート224を備える。
【0081】
H側列AERブロック222は、ローレベルのリクエストReqHXq1が入力されるとハンドシェイクを行うものである。このH側列AERブロック222は、ハイレベルの応答AckHXa1を遅延させた信号をORゲート224に出力する。L側列AERブロック223は、ローレベルのリクエストReqLXq1が入力されるとハンドシェイクを行うものである。このL側列AERブロック223は、ハイレベルの応答AckLXa1を遅延させた信号をORゲート224に出力する。また、H側列AERブロック222およびL側列AERブロック223により、画素アレイ部300からのローレベルのリクエストが反転される。これらのH側列AERブロック222およびL側列AERブロック223の構成は、
図11に例示した行AERブロック270と同様である。なお、これらの行や列のAERブロックの構成は、ハンドシェイクを行うことができるものであれば、
図12に例示した回路に限定されない。
【0082】
ORゲート224は、H側列AERブロック222およびL側列AERブロック223からの信号の論理和を応答AckXp1として出力するものである。
【0083】
[行アービタの構成例]
図14は、本技術の第1の実施の形態における行アービタ600の一構成例を示すブロック図である。この行アービタ600は、アービタブロック610、650乃至654とインバータ601および602とを備える。なお、同図は、垂直のイベントドリブンの画素数を7画素とした場合の図である。例えば、垂直のイベントドリブンの画素数が1000画素であれば、2^10段(=1024画素分)までカバーする10段のアービタが設けられる。
【0084】
アービタブロック610は、1行目からのリクエストと2行目からのリクエストとを調停するものである。このアービタブロック610は、アービタブロック652との間でハンドシェイクを行い、調停結果に基づいて応答を1行目または2行目に出力する。
【0085】
アービタブロック650は、3行目からのリクエストと4行目からのリクエストとを調停するものである。このアービタブロック650は、アービタブロック652との間でハンドシェイクを行い、調停結果に基づいて応答を3行目または4行目に出力する。
【0086】
アービタブロック651は、5行目からのリクエストと6行目からのリクエストとを調停するものである。このアービタブロック651は、アービタブロック653との間でハンドシェイクを行い、調停結果に基づいて応答を5行目または6行目に出力する。
【0087】
アービタブロック652は、アービタブロック610からのリクエストとアービタブロック650からのリクエストとを調停するものである。このアービタブロック652は、アービタブロック654との間でハンドシェイクを行い、調停結果に基づいて応答をアービタブロック610または650に出力する。
【0088】
アービタブロック653は、アービタブロック651からのリクエストと7行目からのリクエストとを調停するものである。このアービタブロック653は、アービタブロック654との間でハンドシェイクを行い、調停結果に基づいて応答をアービタブロック651または7行目に出力する。
【0089】
アービタブロック654は、アービタブロック652からのリクエストとアービタブロック653からのリクエストとを調停するものである。このアービタブロック654は、早い方のリクエストに対する応答をインバータ601および602で遅延させてアービタブロック652または653に供給する。
【0090】
なお、列アービタ213の構成は、行アービタ600と同様である。また、これらのアービタの構成は、リクエストを調停することができるのであれば、同図に例示した構成に限定されない。
【0091】
図15は、本技術の第1の実施の形態におけるハンドシェイクの一例を示すタイミングチャートである。画素310がローレベルのリクエストReqYp1を出力すると、行AERブロック270は、応答CHIP_ACKがハイレベルであれば、ハイレベルの応答AckYp1を返す。
【0092】
応答AckYp1を受け取ると画素310は、オンイベントが生じた場合にはローレベルのリクエストReqHXp1を出力する。なお、オフイベントが生じた場合にはローレベルのリクエストReqLXp1が出力される。
【0093】
リクエストReqHXp1を受け取ると列AERブロック221は、応答CHIP_ACKがハイレベルであれば、ハイレベルの応答AckXp1を返す。応答AckXp1を受け取ると画素310は、ローレベルのリセット信号xrstを生成してリクエストReqYp1およびReqHXp1とをハイレベルに初期化する。
【0094】
また、応答AckXp1を出力すると、列AERブロック221は、ローレベルのリクエストCHIP_REQを出力する。リクエストCHIP_REQを受け取るとステートマシン215は、アドレスイベントの検出結果をDSP回路120に転送し、ローレベルの応答CHIP_ACKを返す。
【0095】
応答CHIP_ACKを受け取ると行AERブロック270は、リクエストReqYp1がハイレベルであれば、応答AckYp1をローレベルに初期化する。また、応答CHIP_ACKを受け取ると列AERブロック221は、リクエストReqHXp1がハイレベルであれば、応答AckXp1をローレベルに初期化する。
【0096】
応答AckXp1が初期化されると画素310は、リセット信号xrstをハイレベルに初期化し、列AERブロック221は、リクエストCHIP_REQをハイレベルに初期化する。また、ステートマシン215は、応答CHIP_ACKをハイレベルに初期化する。
【0097】
[固体撮像素子の動作例]
図16は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、例えば、モード信号MODEによりテストが指示されたときに開始される。
【0098】
固体撮像素子200内のテスト制御回路430は、列テスト回路410および行テスト回路420を制御して全行および全列についてリクエストを強制的に出力させる(ステップS901)。そして、列アービタ213および行アービタ600は、それらのリクエストを調停する(ステップS902)。
【0099】
ステートマシン215は、調停結果に基づいて画素毎に検出信号を送信する(ステップS903)。テスト制御回路430は、それらの検出信号に基づいて列アービタ213および行アービタ600の故障の有無を判定する(ステップS904)。ステップS904の後に、固体撮像素子200は、テストのための動作を停止する。
【0100】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、テスト時に列テスト回路410および行テスト回路420がリクエストを生成してアービタに供給するため、アービタによるリクエストの調停結果から、そのアービタの故障の有無を判定することができる。これにより、画素およびアービタのいずれが故障しているかを判断することができるため、それらを含む固体撮像素子内の故障個所を特定することができる。
【0101】
[第1の変形例]
上述の第1の実施の形態では、テスト制御回路430は、テスト時にnMOSトランジスタ411および421をオン状態に移行させることによりローレベルのリクエストを出力させていた。しかし、この構成では、リクエストを伝送する信号線と接地端子とがテスト時に短絡されるため、消費電力が増大するおそれがある。この第1の実施の形態の第1の変形例は、nMOSトランジスタ411等の代わりにANDゲートを配置して消費電力の増大を抑制した点において第1の実施の形態と異なる。
【0102】
図17は、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における行テスト回路420の一構成例を示す回路図である。この第1の実施の形態の変形例の行テスト回路420は、nMOSトランジスタ421の代わりにAND(論理積)ゲート422が配置される点において第1の実施の形態と異なる。
【0103】
ANDゲート422は、画素アレイ部300内の対応する行からのリクエスト(ReqYp1など)とテスト制御回路430からの制御信号T_ReqYとの論理積を行AER回路260へ出力するものである。
【0104】
図18は、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例におけるANDゲート422の一構成例を示す回路図である。このANDゲート422は、pMOSトランジスタ422-1乃至422-3と、nMOSトランジスタ422-4乃至422-6とを備える。pMOSトランジスタ422-1とnMOSトランジスタ422-4および422-5とは、電源端子と接地端子との間に直列に接続される。また、pMOSトランジスタ422-3とnMOSトランジスタ422-6とは、電源端子と接地端子との間に直列に接続される。nMOSトランジスタ422-2のソースは、電源端子に接続される。nMOSトランジスタ422-2のドレインは、pMOSトランジスタ422-1およびnMOSトランジスタ422-4の接続点とpMOSトランジスタ422-3およびnMOSトランジスタ422-6のゲートとに接続される。
【0105】
また、nMOSトランジスタ422-4およびpMOSトランジスタ422-2のゲートには、画素アレイ部300内の対応する行からのリクエスト(ReqYp1など)が入力される。pMOSトランジスタ422-1およびnMOSトランジスタ422-5のゲートには、テスト制御回路430からの制御信号T_ReqYが入力される。pMOSトランジスタ422-3およびnMOSトランジスタ422-6の接続点からは、対応する行のリクエスト(ReqYq1など)が出力される。
【0106】
図19は、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における行テスト回路420の動作の一例を示す図である。制御信号T_ReqYがローレベルである場合に行テスト回路420は、リクエストReqYp1に関わらず、ローレベルのリクエストReqYq1を強制的に出力する。
【0107】
一方、制御信号T_ReqYがハイレベルである場合に行テスト回路420は、リクエストReqYp1をそのままリクエストReqYq1としてスルー出力する。
【0108】
図18および
図19に例示したように、テスト時には、ローレベルの制御信号T_ReqYによりnMOSトランジスタ425がオフ状態となる。このため、テスト時にリクエストを伝送する信号線と接地端子を充放電する必要が無くなり、第1の実施の形態と比較して消費電力の増大を抑制することができる。
【0109】
図20は、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例における列テスト回路410の一構成例を示す回路図である。この第1の実施の形態の第1の変形例の列テスト回路410は、nMOSトランジスタ411および412の代わりにANDゲート413および414が配置される点において第1の実施の形態と異なる。これらのANDゲート413および414の回路構成は、ANDゲート422と同様である。
【0110】
このように、本技術の第1の実施の形態の第1の変形例では、リクエスト(ReqYp1など)と制御信号T_ReqYとの論理積をANDゲート422等が出力するため、リクエストを伝送する信号線と接地端子との短絡を防止することができる。これにより、消費電力の増大を抑制することができる。
【0111】
[第2の変形例]
上述の第1の実施の形態では、フォトダイオード322以外の素子を回路チップ202に配置していたが、画素数の増大に伴って、回路チップ202内の回路の回路規模が増大するおそれがある。この第1の実施の形態の第2の変形例の固体撮像素子200は、nMOSトランジスタ321および323を受光チップ201に設けた点において第1の実施の形態と異なる。
【0112】
図21は、本技術の第1の実施の形態の第2の変形例における画素310の一構成例を示す回路図である。この第1の実施の形態の第2の変形例の画素310は、受光チップ201に、フォトダイオード322に加えて、nMOSトランジスタ321および323がさらに配置される点において第1の実施の形態と異なる。
【0113】
nMOSトランジスタ321および323を受光チップ201に配置することにより、それらのトランジスタの分、回路チップ202の回路規模を削減することができる。また、受光チップ201内のトランジスタをN型のみにすることにより、N型トランジスタおよびP型トランジスタを混在させる場合と比較して、トランジスタを形成する際の工程数を削減することができる。これにより、受光チップ201の製造コストを削減することができる。
【0114】
なお、対数応答部320の一部を受光チップ201に配置し、それ以外を回路チップ202に配置しているが、それぞれのチップへ配置する回路は、この構成に限定されない。例えば、
図22に例示するように対数応答部320およびバッファ330を受光チップ201に配置し、それ以外を回路チップ202に配置することもできる。また、
図23に例示するように対数応答部320、バッファ330、微分回路340およびコンパレータ350を受光チップ201に配置し、それ以外を回路チップ202に配置することもできる。
【0115】
また、
図21に例示した積層構造において、
図24に例示するように受光チップ201のグランドと回路チップ202のグランドとを分離せずに接続することもできる。
図4および
図23に例示した構成においても同様に、グランドを接続することができる。
【0116】
このように、本技術の第1の実施の形態の第2の変形例によれば、フォトダイオード322に加えて、nMOSトランジスタ321および323も受光チップ201に配置したため、回路チップ202の回路規模を削減することができる。
【0117】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、画素およびアービタのいずれに故障があるかを判断して固体撮像素子200内の故障個所を特定していた。しかし、第1の実施の形態では、固体撮像素子200は、アービタ内の複数のアービタブロックのいずれに故障があるかについて故障個所をさらに特定することができなかった。この第2の実施の形態の固体撮像素子200は、特定の行または列にリクエストを出力させて故障個所をさらに特定する点において第1の実施の形態と異なる。
【0118】
図25は、本技術の第2の実施の形態におけるテスト制御回路430の一構成例を示すブロック図である。この第2の実施の形態のテスト制御回路430は、制御信号供給部433および故障判定部434を備える。
【0119】
制御信号供給部433は、テストが指示されると、制御信号により全行および全列について強制的にリクエストを出力させる。
【0120】
一方、故障判定部434は、テストが指示されると、画素アレイ部300を複数のエリアに分割し、エリアごとにアドレスイベントの検出頻度を統計量として算出する。また、故障判定部434は、各エリアの検出頻度の平均値を算出する。そして、故障判定部434は、検出頻度が平均値未満のエリアを、故障のあるアービタブロックに対応するエリアとして抽出し、そのエリアのアドレス範囲を制御信号供給部433に供給する。
【0121】
制御信号供給部433は、故障判定部434により抽出されたエリアの行および列について強制的にリクエストを出力させる。
【0122】
そして、故障判定部434は、抽出したエリアを複数のエリアにさらに分割し、エリアごとに検出頻度を算出する。そして、故障判定部434は、検出頻度が平均値未満のエリアを抽出し、そのエリアのアドレス範囲を制御信号供給部433に供給する。以降、故障判定部434および制御信号供給部433は、同様の制御を繰り返して故障のあるアービタブロックに対応するエリアを絞り込んでゆく。そして、故障検出可能な最小単位のエリア(例えば、2行×2列のエリア)まで絞り込むと、故障判定部434は、そのエリアに対応するアービタブロックを故障個所として示す故障信号をDSP回路120に出力する。
【0123】
ここでアービタは、フェアアービタとアンフェアアービタとに分類することができる。フェアアービタは、同時刻に入力された信号を内部ステートとして持ち、優先的に処理をすることができる回路である。優先処理された後は再入力の信号の優先度が下がり、他の優先度の高い個所の処理が終わった後に入力を受け付けるようになる。一方でアンフェアアービタは、同時入力の内部ステートを持たないため応答は早い。しかし、処理が終わった後、すぐにリクエストが再入力されると優先順位いかんにかかわらず処理しようとするため、製造ばらつきなどにより高速に応答可能となった回路が優先的に処理をしてしまう。このため、フェアアービタでは、全画素についてリクエストを出力させた際に、アドレスイベントの検出個所が特定の行、列や画素に集中せずに分散される。一方、アンフェアアービタでは、特定の行や列に検出箇所が集中するおそれがある。故障個所を絞り込む際には、検出箇所が集中しない方が望ましいため、第2の実施の形態の列アービタ213および行アービタ600として、フェアアービタを用いることが望ましい。
【0124】
図26は、本技術の第2の実施の形態における行テスト回路420の一構成例を示す回路図である。この第2の実施の形態の行テスト回路420は、OR(論理和)ゲート426および行側デコーダ427をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。これらのORゲート426および行側デコーダ427は、行ごとに設けられる。また、全行の行側デコーダ427には、テスト制御回路430からの制御信号Y_Ctrlが入力される。この制御信号Y_Ctrlは、リクエストを出力させる行アドレスと、モード信号MODEとを符号化したものである。
【0125】
行側デコーダ427は、制御信号Y_Ctrlを復号するものである。この行側デコーダ427は、復号した行アドレスおよびモード信号MODEに基づいて制御信号T_ReqYおよびENを生成し、制御信号T_ReqYをnMOSトランジスタ421のゲートへ、制御信号ENをORゲート426へ供給する。
【0126】
ORゲート426は、制御信号ENと、対応する行のリクエスト(ReqYp1など)との論理和を行AER回路260へ出力するものである。
【0127】
図27は、本技術の第2の実施の形態における行側デコーダ427の動作の一例を示す図である。モード信号MODEが通常モードを示す値(例えば、論理値「0」)の場合、行側デコーダ427は、ローレベルの制御信号T_ReqYおよびENを出力する。
【0128】
一方、モード信号MODEがテストモードを示す値(例えば、論理値「1」)の場合、行側デコーダ427は、復号した行アドレスが、自身に対応する行アドレスに一致するか否かを判断する。
【0129】
一致する場合に行側デコーダ427は、ハイレベルの制御信号T_ReqYと、ローレベルの制御信号ENとを出力する。これにより、その行から強制的にローレベルのリクエストが出力される。また、不一致の場合に行側デコーダ427は、ローレベルの制御信号T_ReqYと、ハイレベルの制御信号ENとを出力する。これにより、その行から強制的にハイレベルが出力され、リクエストが遮断される。
【0130】
このようにテスト制御回路430は、制御信号Y_Ctrlにより、特定の行アドレスのリクエストのみを出力させ、残りの行アドレスのリクエストを遮断させることができる。列アドレスについても同様である。
【0131】
図28は、本技術の第2の実施の形態における列テスト回路410の一構成例を示す回路図である。この第2の実施の形態の列テスト回路410は、ORゲート415および417と、列側デコーダ416および418とを列ごとにさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0132】
列側デコーダ416および418との構成は、行側デコーダ427と同様である。ただし、列側デコーダ416は、制御信号X_CtrlLを復号し、列側デコーダ418は、制御信号X_CtrlHを復号する。これらの制御信号は、列アドレスおよびモード信号MODEを符号化したものである。オンイベントの検出信号を出力させる場合にテスト制御回路430は、制御信号X_CtrlHにより特定の列アドレスからリクエストを出力させ、制御信号X_CtrlLにより全ての列アドレスのリクエストを遮断させる。一方、オフイベントの検出信号を出力させる場合にテスト制御回路430は、制御信号X_CtrlLにより特定の列アドレスからリクエストを出力させ、制御信号X_CtrlHにより全ての列アドレスのリクエストを遮断させる。
【0133】
ORゲート415および417の構成は、ORゲート426と同様である。
【0134】
図29は、本技術の第2の実施の形態におけるテスト方法を説明するための図である。同図における縦軸は、アドレスイベントの検出頻度を示し、横軸は、アドレスを示す。同図におけるaは、エリアB1の検出結果の一例を示し、同図におけるbは、エリアB1に隣接するエリアB2の検出結果の一例を示す。同図におけるcは、エリアB2に隣接するエリアB3の検出結果の一例を示す。
【0135】
故障判定部434は、テストが指示されると、同図におけるaに例示するようにエリアB1の検出頻度を算出する。また、故障判定部434は、同図におけるbおよびcに例示するようにエリアB2およびB3の検出頻度を算出する。エリアB1乃至B3以外のエリアのそれぞれについても同様にエリアごとに検出頻度が算出される。
【0136】
ここで、エリアB3の検出頻度が、全アドレスの平均値よりも低いものとする。この場合に故障判定部434は、そのエリアを、故障のあるアービタブロックに対応するエリアとして抽出する。制御信号供給部433は、抽出されたエリアB3の行および列について強制的にリクエストを出力させ、残りのエリアについてはリクエストを遮断させる。
【0137】
図30は、本技術の第2の実施の形態におけるエリアをさらに分割して故障個所を絞り込む方法を説明するための図である。同図におけるaは、エリアB3を分割したエリアのうちエリアB31の検出結果の一例を示す。同図におけるbは、エリアB3を分割したエリアのうちエリアB31に隣接するエリアB32の検出結果の一例を示す。同図におけるcは、エリアB32を分割したエリアのいずれかの検出結果の一例を示す。
【0138】
故障判定部434は、同図におけるaおよびbに例示するように、抽出したエリアB3をさらに分割した複数のエリアのうちエリアB31およびB32のそれぞれの検出頻度を算出する。
【0139】
ここで、エリアB32の検出頻度が、平均値よりも低いものとする。この場合に故障判定部434は、そのエリアを、故障のあるアービタブロックに対応するエリアとして抽出する。制御信号供給部433は、抽出されたエリアB32の行および列について強制的にリクエストを出力させ、残りの行および列についてリクエストを遮断させる。
【0140】
故障判定部434は、同図におけるcに例示するように、抽出したエリアB32をさらに分割した複数のエリアのいずれかの検出頻度を算出する。固体撮像素子200は、
図29および
図30に例示した処理を繰り返し、エリアを細分化して故障個所を絞り込んでゆく。
【0141】
図31は、本技術の第2の実施の形態における故障個所の検出例を示す図である。エリアB32を細分化したエリアの一部において、検出頻度が非常に小さくなる。故障判定部434は、そのエリアに対応するブロックアービタについて故障があると判定する。
【0142】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、テスト制御回路430は、全アドレスのうち一部に対応するリクエストを出力させるため、リクエストを出力させるアドレスを絞り込んでアービタ内の故障個所を特定することができる。
【0143】
<3.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0144】
図32は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0145】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図32に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0146】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0147】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0148】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0149】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0150】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0151】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0152】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0153】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0154】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図32の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0155】
図33は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0156】
図33では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0157】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0158】
なお、
図33には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0159】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0160】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0161】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0162】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0163】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031に適用され得る。具体的には、例えば、
図1の撮像装置100は、撮像部12031に適用することができる。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、その故障個所を特定することができるため、システムの安全性や信頼性を向上させることができる。
【0164】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0165】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0166】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成する複数の画素と、
テストが指示されていない場合には前記複数の画素のそれぞれの前記リクエストを出力リクエストとして出力し、前記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を前記出力リクエストとして出力するテスト回路と、
前記出力リクエストを調停するアービタと、
前記アービタの調停結果に基づいて前記検出信号を送信する通信回路と、
前記テストが指示された場合には前記検出信号に基づいて前記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定部と
を具備する固体撮像素子。
(2)前記テスト回路は、前記テストが指示された場合には前記アービタに接続された信号線に所定電位を供給するトランジスタを備え、
前記リクエストは、前記信号線を介して出力される
前記(1)記載の固体撮像素子。
(3)前記テスト回路は、前記リクエストと前記テストを指示する制御信号との論理積を前記出力リクエストとして出力する論理積ゲートを備える
前記(1)記載の固体撮像素子。
(4)前記複数の画素のそれぞれには、互いに異なるアドレスが割り当てられ、
前記テスト回路は、前記アドレスのうち一部に対応する前記新たなリクエストを前記出力リクエストとして出力させる
前記(1)から(3)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(5)前記複数の画素が配列された画素アレイ部は、所定数の領域に分割され、
前記アービタは、前記領域ごとにアービタブロックを含み、
前記故障判定部は、前記検出信号に基づいて前記アービタブロックのうち故障したアービタブロックを特定する
前記(4)記載の固体撮像素子。
(6)前記画素の一部は、受光チップに配置され、
前記画素の残りは、回路チップに配置され、
前記受光チップは、前記回路チップに積層される
前記(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(7)所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成する複数の画素と、
テストが指示されていない場合には前記複数の画素のそれぞれの前記リクエストを出力リクエストとして出力し、前記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を前記出力リクエストとして出力するテスト回路と、
前記出力リクエストを調停するアービタと、
前記アービタの調停結果に基づいて前記検出信号を送信する通信回路と、
前記テストが指示された場合には前記検出信号に基づいて前記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定部と、
前記検出信号に対して所定の処理を実行する信号処理部と
を具備する撮像装置。
(8)複数の画素が所定のイベントを検出した場合には所定の検出信号の送信を要求するリクエストを生成するリクエスト生成手順と、
テストが指示されていない場合には前記複数の画素のそれぞれの前記リクエストを出力リクエストとして出力し、前記テストが指示された場合には新たな複数のリクエストを生成して各々を前記出力リクエストとして出力するテスト手順と、
前記出力リクエストを調停する調停手順と、
前記アービタの調停結果に基づいて前記検出信号を送信する通信手順と、
前記テストが指示された場合には前記検出信号に基づいて前記アービタが故障しているか否かを判定する故障判定手順と
を具備する固体撮像素子の制御方法。
【符号の説明】
【0167】
100 撮像装置
110 光学部
120 DSP回路
130 表示部
140 操作部
150 バス
160 フレームメモリ
170 記憶部
180 電源部
200 固体撮像素子
201 受光チップ
202 回路チップ
213 列アービタ
214 列アドレスエンコーダ
215 ステートマシン
216 行アドレスエンコーダ
220 列AER回路
221 列AERブロック
222 H側列AERブロック
223 L側列AERブロック
224、415、417、426 OR(論理和)ゲート
260 行AER回路
270 行AERブロック
271、324、331、332、342、344、351、353、364、369、422-1、422-2、422-3 pMOSトランジスタ
272、273、321、323、345、352、354、361~363、365~368、370、371、411、412、421、422-4、422-5、422-6 nMOSトランジスタ
274、275、601、602 インバータ
276 NOR(否定論理和)ゲート
300 画素アレイ部
310 画素
320 対数応答部
322 フォトダイオード
330 バッファ
340 微分回路
341、343、372 容量
350 コンパレータ
360 AERロジック回路
410 列テスト回路
413、414、422 AND(論理積)ゲート
416、418 列側デコーダ
420 行テスト回路 427 行側デコーダ
430 テスト制御回路
431、433 制御信号供給部
432、434 故障判定部
600 行アービタ
610、650~654 アービタブロック
12031 撮像部