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特許7280883キサンチンオキシダーゼを阻害するためのヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】キサンチンオキシダーゼを阻害するためのヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/18 20060101AFI20230517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C07D473/18 CSP
A61P43/00 111
A61P19/06
A61P13/12
A61P9/12
A61K31/522
A61P9/00
A61P3/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020539582
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033871
(87)【国際公開番号】W WO2020045558
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2018161925
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517038084
【氏名又は名称】テラ・ストーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】永松 朝文
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1996/026208(WO,A1)
【文献】特表平01-500996(JP,A)
【文献】特表2009-541356(JP,A)
【文献】特開平03-204879(JP,A)
【文献】NAGAMATSU, T. et al.,Novel xanthineoxidase inhibitor studies. Part 2.1 Synthesis and xanthine oxidase inhibitoryactivities of 2-substituted 6- alkylidenehydrazino-or 6-arylmethylidenehydrazino-7H-purines and 3-and/or 5-substituted 9H-1,2,4-triazolo[3,4-i]purines,JOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY, PERKIN TRANSACTIONS1,1999年,vol. 21,pp.3117-3125
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 473/00
A61P 43/00
A61P 19/06
A61P 13/12
A61P 9/12
C07D 473/24
A61K 31/522
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(I)
【化1】

(式中、 及びR が両方ともメチル基であり、R 及びR が両方とも水素原子であり、R がアルキル基又はアリール基である。)で表されるヒドラジノプリン化合物。
【請求項2】
次の一般式(I)
【化2】

(式中、R 、R 及びR が全て水素原子であり、R 及びR が、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基である。)で表されるヒドラジノプリン化合物。
【請求項3】
請求項1~に記載のヒドラジノプリン化合物らなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物。
【請求項4】
請求項1~に記載のヒドラジノプリン化合物らなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、医薬用組成物。
【請求項5】
前記医薬用組成物は、高尿酸血症、痛風、腎不全や慢性腎臓病の腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームからなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患を予防又は治療するための医薬用組成物である、請求項に記載の医薬用組成物。
【請求項6】
医薬用組成物を製造するための、請求項1~に記載のヒドラジノプリン化合物らなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する、新規なヒドラジノプリン化合物又はトリアゾロプリン化合物、及び該化合物を有効成分として含有する医薬用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿酸は、キサンチンやヒポキサンチンのようなオキシプリンからキサンチンオキシダーゼ(XO)によって合成される。ヒトや他の霊長類の多くでは、尿酸はプリン代謝の酸化最終生成物であり、血液中の尿酸値が高いと痛風発作を引き起こす。尿酸値を下げるために「尿酸の産生を抑える薬」が使用され、このような薬としてアロプリノール(商品名:ザイロリック)がある。アロプリノールはXOによって代謝され、オキシプリノールに変換される(オキシプリンとの競合阻害)。そして、このオキシプリノールにもXOを阻害する作用がある(XO酵素阻害)。つまり、このオキシプリノールが、キサンチンオキシダーゼの酵素活性中心のモリブドプテリンユニットに対して結合することで、酵素の阻害作用も示す。即ち、キサンチンとアロプリノールの構造を比較すると、構造が似ているため、キサンチンオキシダーゼはキサンチンの代わりにアロプリノールを間違えて取り込んでしまう。その結果、アロプリノールが酸化されてオキシプリノールが生成し、このオキシプリノールがさらにキサンチンオキシダーゼの働きを阻害して尿酸の生成が抑えられる。このような作用機序によって、アロプリノールは尿酸値を下げ、高尿酸血症や痛風を治療する。ザイロリック(アロプリノール)は腎排泄型の薬剤であるため、腎機能が低下している患者に対しては投与量を調節する必要がある。
【0003】
アロプリノールを処方された患者の3~5%には中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、剥脱性皮膚炎等の重篤な皮膚障害又は過敏性血管炎などの副作用が出てしまうため、或いは腎機能障害のある患者への代替薬として新薬開発が進められた結果、キサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害作用を有する新痛風治療薬が最近開発されている。即ち、2011年1月承認され、帝人ファーマ株式会社から非プリン型のキサンチンオキシダーゼ阻害薬として開発されたフェブキソスタット(商品名:フェブリク)はキサンチン酸化還元酵素(XOR)の作用を阻害することにより、尿酸産生を抑制し、血中及び尿中尿酸濃度を低下させる。フェブキソスタットは酵素蛋白の活性中心の構造に基づく阻害剤であることから、既存のXO阻害剤であるアロプリノールと異なり、その阻害様式はXORの酸化・還元状態に依存せず、酸化型及び還元型XORのどちらにも強く結合し、強い酵素阻害作用を示す混合型阻害であると考えられている。アロプリノールに比べより低い用量から血中及び尿中尿酸が低下する。また、ラットを用いた薬物動態試験では腎外排世経路の割合が約50%を占めている。フェブキソスタットは、競合阻害という概念はなく、アロステリック阻害(酵素の活性中心以外の部分に作用して、酵素のコンホメーションを変化させることにより間接的に、酵素の触媒活性等を低下させる)により、キサンチンオキシダーゼを阻害する。つまり、キサンチンオキシダーゼの活性中心であるモリブドプテリンユニットに対して直接的に結合して阻害するのがアロプリノールで、活性中心付近に結合することでヒポキサンチンやキサンチンが酵素活性部位へ到達するのを阻害するのがフェブキソスタットである、と考えられている。フェブキソスタットの特徴として、脂溶性が高く肝臓でも代謝されるので、腎障害の人に使いやすい。しかしながら、フェブキソスタットはアロプリノールより強い尿酸値低下作用を示すが、重大な副作用として肝機能障害:AST(GOT)、ALT(GPT)等の上昇を伴う肝機能障害があらわれることがあるので、本剤投与中は定期的に検査を行うなど、患者の状態を十分に観察しなければならない。また、メルカプトプリン又はアザチオプリンの代謝酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害して骨髄抑制等の副作用を増強する可能性があるので、併用は禁忌である。さらに、富士薬品がフェブキソスタットと類似の構造を持ち、同様のXOR阻害作用や副作用を有する新化合物のトピロキソスタット(商品名:トピロリック、ウリアデック)を開発し、2013年6月に承認された。
【0004】
一方で、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有するそのほかの化合物として、プリン誘導体化合物が報告されているが、未だ承認には至っていない(下記特許文献1及び非特許文献1を参照、該文献の全記載はここに開示として援用される)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第96/26208号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】永松ら著,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,3117-3125(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、キサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する、新規なヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物の提供を主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために上述の既存痛風治療薬より副作用が少なく安全で、しかもさらに少量の服用でキサンチン酸化還元酵素(XOR)作用を阻害する薬剤を鋭意合成・検索した結果、ヒドラジノプリン誘導体化合物(I)とトリアゾロプリン誘導体化合物(II)をその候補化合物として見出すことができた。これらはアロプリノールと同じ反応機構(競合阻害と酵素阻害)で尿酸生成を阻害し、ウシミルク由来のキサンチンオキシダーゼ(XO)を用いたin vitroでの尿酸生成阻害試験より、アロプリノールと比較して300倍から1000倍を超す強い阻害活性化合物を見出すことができた。さらに、コンピューターを駆使した計算化学を用い、キサンチン酸化還元酵素(XOR)への阻害様式とドッキングスコア(結合自由エネルギー,kcal/mol)を求めたところ、ドッキングスコア(縦軸)とXO阻害(in vitro IC50,横軸)とのグラフより有用な相関関係が得られた。また、数種のキサンチンオキシダーゼ(XO)へのアロプリノールや新規化合物のドッキング様式も明らかにした。このヒドラジノプリン誘導体化合物(I)とトリアゾロプリン誘導体化合物(II)はアロプリノールと同様の競合阻害及びフェブキソスタット同様のアロステリック阻害があることも明らかにした。したがって、これまでに開発されたキサンチンオキシダーゼ阻害剤よりもさらに強い阻害作用が期待でき、腎臓や肝臓などの負担が少なく代謝・排出が可能であると考えられる。今回開発した新規化合物は核酸関連化合物のプリンやキサンチン類縁化合物であるが、アロプリノールより脂溶性が高く、フェブキソスタットに近い脂溶性の誘導体の合成も可能である。アロプリノールよりバイオアベイラビリティが高く、尿への代謝排出も容易であり、毒性も弱いと考えている。しかも、より少量の服用で有効なXOR阻害作用が期待できるので、副作用もより軽度であると考えられる。本発明は、これらの知見や成功例に基づき完成された発明である。
【0009】
したがって、本発明の態様によれば、以下の[1]~[16]の態様のものが提供される。
[1]次の一般式(I)
【化1】

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。)で表されるヒドラジノプリン化合物。
[2]R、R、R及びRが全て水素原子であり、Rがアルキル基又はアリール基である、[1]に記載の化合物。
[3]R、R及びRが全て水素原子であり、Rがメチル基であり、Rがアルキル基又はアリール基である、[1]に記載の化合物。
[4]R及びRが両方ともメチル基であり、R及びRが両方とも水素原子であり、Rがアルキル基又はアリール基である、[1]に記載の化合物。
[5]R、R及びRが全て水素原子であり、R及びRが、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基である、[1]に記載の化合物。
[6]次の一般式(II)
【化2】

(式中、R及びRは両方とも水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。)で表されるトリアゾロプリン化合物。
[7]R、R及びRが全て水素原子であり、Rが水素原子、アルキル基又はアリール基である、[6]に記載の化合物。
[8]R及びRが両方ともアルキル基であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子、アルキル基又はアリール基である、[6]に記載の化合物。
[9]R及びRが両方とも水素原子であり、Rがアルキル基又はアリール基であり、Rが水素原子、アルキル基又はアリール基である、[6]に記載の化合物。
[10]次の一般式(III)
【化3】

(式中、R10及びR12は両方ともアルキル基を示し、R11は水素原子を示し、R13は水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。)で表されるトリアゾロプリン化合物。
[11]R10及びR12が両方ともメチル基であり、R11が水素原子であり、R13が水素原子、メチル基又はアリール基である、[10]に記載の化合物。
[12][1]~[5]に記載のヒドラジノプリン化合物及び[6]~[11]に記載のトリアゾロプリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物。
[13][1]~[5]に記載のヒドラジノプリン化合物及び[6]~[11]に記載のトリアゾロプリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、医薬用組成物。
[14]前記医薬用組成物は、高尿酸血症、痛風、腎不全や慢性腎臓病の腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームからなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患を予防又は治療するための医薬用組成物である、[13]に記載の医薬用組成物。
[15]医薬用組成物を製造するための、[1]~[5]に記載のヒドラジノプリン化合物及び[6]~[11]に記載のトリアゾロプリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用。
[16]被験体に、[1]~[5]に記載のヒドラジノプリン化合物及び[6]~[11]に記載のトリアゾロプリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の有効量を投与することを含む、高尿酸血症、痛風、腎不全や慢性腎臓病の腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームの予防方法又は治療方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様であるヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物は、アロプリノールと比較して強い阻害活性を有する。さらに、本発明の一態様であるヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物は、腎臓や肝臓などの負担が少ない代謝・排出や、アロプリノール等の従来のキサンチンオキシダーゼ阻害剤よりもキサンチンオキシダーゼとの安定した結合状態を形成することからバイオアベイラビリティが高く、毒性も弱いことが期待できる。しかも、より少量の服用で有効なキサンチンオキシダーゼ阻害作用が期待できるので、副作用もより軽度である。したがって、本発明の一態様であるヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物は、キサンチンオキシダーゼ阻害活性を有することから、本発明の一態様であるヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物を含む組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物として有用であり、さらに高尿酸血症の治療剤又は高尿酸血症に起因する痛風、痛風関節炎及び痛風結節といった尿酸塩沈着症を予防又は治療するための医薬用組成物として有用である。また、腎不全や慢性腎臓病といった腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームは高尿酸血症に起因及び深い関連があることから、本発明の一態様であるヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物を含む組成物は、腎不全や慢性腎臓病といった腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームを予防又は治療するための医薬用組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一態様であるヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物、製造方法及び該化合物を含む医薬用組成物の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0012】
本明細書において「キサンチンオキシダーゼ」とは、特に断りのない限り、ヒポキサンチンからキサンチン、さらに尿酸への酸化反応を触媒する酵素を総称する。この反応を担うキサンチン酸化還元酵素には、オキシダーゼ型とデヒドロゲナーゼ型の2つの型が存在するが、いずれの型も本明細書におけるキサンチンオキシダーゼに含まれる。「キサンチンオキシダーゼ阻害作用」、「キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物」等においても、特に断りのない限り、「キサンチンオキシダーゼ」は上記定義と同じ意味を有する。
【0013】
キサンチンオキシダーゼ阻害作用とは、上記のキサンチンオキシダーゼが触媒する反応の阻害作用を示す。本発明の化合物において、アロプリノールといった既存のキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有する痛風治療薬よりもより少量でキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有することがより好ましい。
【0014】
本発明の化合物は、より高いキサンチンオキシダーゼ阻害作用、又はより持続したキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有するために、化合物とキサンチンオキシダーゼとが結合した複合体の状態がより安定であることが好ましい。複合体の状態の安定を評価する指標として、例えば、結合定数や、化合物とキサンチンオキシダーゼとの複合体の状態の結合自由エネルギーで示してもよい。結合自由エネルギーで示す場合、値がより小さいほうが好ましい。
【0015】
本発明の一態様のヒドラジノプリン化合物は前記一般式(I)で表されるものであり、式中のR、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基又はアリール基を示す。以下、前記一般式(I)で表されるヒドラジノプリン化合物をヒドラジノプリン化合物(I)と示す。
【0016】
、R及びRで表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの炭素数1~7の直鎖又は分岐鎖を有する低級アルキル基が例示される。
【0017】
及びRで表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの炭素数1~7の直鎖又は分岐鎖を有する低級アルキル基が例示される。また、アリール基としてはフェニル基及び置換基を有するフェニル基が例示される。置換基を有するフェニル基の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、メチレンジオキシ基、ヒドロキシ基又はニトロ基を示し、置換基の数は1~5個である。
【0018】
このようなアリール基を具体的に例示すれば、フェニル基;メチルフェニル、エチルフェニルなどの炭素数1~5のアルキル基を有するアルキルフェニル基;メトキシフェニル、エトキシフェニルなどの炭素数1~5のアルコキシを有するアルコキシフェニル基;ジメチルアミノフェニル、ジエチルアミノフェニルなどの炭素数1~5のアルキルアミノを有するアルキルアミノフェニル基;フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ヨードフェニルなどのハロゲノフェニル基;メチレンジオキシフェニル基;ヒドロキシフェニル基;ニトロフェニル基などが挙げられる。
【0019】
本発明の一態様のヒドラジノプリン化合物(I)によれば、キサンチンオキシダーゼ阻害作用及びキサンチンオキシダーゼとの複合体との安定性の点で、好ましい化合物は以下の条件を少なくとも1つ満たす化合物である。
(i-1)R、R、R及びRが全て水素原子であり、Rがアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基又は下記一般式(IV)
【化4】
(IV)
(式中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を示す。)
で表される置換基である。
(i-2)R、R及びRが全て水素原子であり、Rがメチル基であり、Rがアルキル基、フェニル基又は下記一般式IV
【化5】
(IV)
(式中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を示す。)
で表される置換基である。
(i-3)R及びRが両方ともメチル基であり、R及びRが両方とも水素原子であり、Rがアルキル基又はアリール基である。
(i-4)R、R及びRが全て水素原子であり、R及びRが、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基である。
【0020】
本発明の一態様のヒドラジノプリン化合物(I)によれば、キサンチンオキシダーゼ阻害作用の点で、R、R及びRは全て水素原子が好ましく、Rは、π電子を有するアリール基が好ましく、1置換メチル、ハロゲン、水酸基、及びニトロフェニル基がより好ましい。
【0021】
本発明の一実施態様のヒドラジノプリン化合物(I)として、表1に記載の官能基を有する化合物が挙げられる。表1に記載のMeはメチル基、Phはフェニル基を示す。例えば、4-MeO-Cは4位にメトキシ基を有するフェニル基を示す。以下、本明細書中の表中及び文脈中においても同様である。なお、表1の化合物番号I-1~7及び14~18の化合物は以下の文献(該文献の全記載はここに開示として援用される)に記載されている化合物であり、参考として記載した。
(1)特許国際公開番号:PCT Int.Appl.(1996),WO96/26208、発明の名称:プリン化合物及びキサンチンオキシダーゼ阻害剤、発明者:永松朝文、渡辺洋子、遠藤和樹、今泉正洋
(2)T.Nagamatsu,H.Yamasaki,T.Fujita,K.Endo,and H.Machida,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,3117-3125(1999).
【表1】
【0022】
本発明の一態様の化合物の合成方法について以下に説明する。
一般式(I)で表されるヒドラジノプリン化合物(I)において、R、R及びRが全て水素原子であるヒドラジノプリン化合物3a,b(表1、化合物番号I-1~I-22)の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 1)。
【化6】

(Scheme 1中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基又はアリール基を示す。)
本明細書中において、Acはアセチル基を示し、AcOHは酢酸を示し、及びTFAはトリフルオロ酢酸を示す。
【0023】
すなわち、式1で表される化合物(以下、化合物1などとよぶ。)にヒドラジン水和物又はメチルヒドラジンを加熱反応させることにより、式2a,bで表される化合物(以下、化合物2a,bなどとよぶ。)が得られる(第1工程)。次に、該化合物2a,bに各種アルデヒドを反応させることにより、一般式3a,bで表される化合物3a,bを得ることができる(第2工程)。以下、各工程毎に説明する。
【0024】
(第1工程)
この工程は公知であり、化合物2a,bは既知文献(T.Nagamatsu,et al,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,3117(1999)、該文献の全記載はここに開示として援用される)及び(T.Nagamatsu,et al,PCT Int.Appl.(1996),WO9626208、該文献の全記載はここに開示として援用される)に従いそれぞれ調製することができる。
【0025】
(第2工程)
公知合成法(T.Nagamatsu,et al,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,3117(1999))に従い、表1に記した種々のプリンアルデヒドヒドラゾン類化合物3a,b(表1、化合物番号I-1~I-22)を調製することができる。なお、化合物番号I-1~I-7及びI-14~I-18は公知の化合物であり、化合物番号I-8~I-13及びI-19~I-22の化合物は新規の化合物である。
【0026】
化合物2a,b(3mmol)に対してR-CHO(式中、Rはアルキル基又はアリール基を示す。)で表されるアルデヒド(3.3~3.6mmol)を用い、酢酸やトリフルオロ酢酸などの有機溶媒中、10~30°Cで30分間反応させて化合物3a,b(表1、化合物番号I-1~I-22)を得る。
【0027】
一般式(I)で表されるヒドラジノプリン化合物(I)において、RとRが両方ともメチル基であり、RとRが両方とも水素原子であるヒドラジノプリン化合物6の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 2)。
【化7】
(Scheme 2中、Rはアルキル基又はアリール基を示す。)
本明細書中において、Etはエチル基を示し、EtOHはエタノールを示し、及びDMFはN,N’-ジメチルホルムアミドを示す。
【0028】
すなわち、式4で表される化合物4はテオブロミンから既知合成方法(K.R.H.Wooldrige,et al,J.Chem.Soc.,1863(1962))より誘導でき、これに包水ヒドラジン(NHNH・HO)を加熱反応させることにより、新規の化合物である化合物5を得ることができる(第3工程)。次に、該化合物5に各種アルデヒドを反応させることにより、一般式6で表される化合物6を得ることができる(第4工程)。以下、各工程毎に説明する。
【0029】
(第3工程)
この工程は、常法に従い化合物4より化合物5を調製することができる。
エタノール中、化合物4(1g)に対して包水ヒドラジン(4mL)を加え、30分間加熱還流する。反応後、析出した結晶を濾取し、これを水から再結晶すると無色の針状結晶の化合物5を得ることができる。
【0030】
(第4工程)
第2工程で述べた同様の合成法により、表1に記した種々の新規のプリンアルデヒドヒドラゾン類化合物6(表1、化合物番号I-23~I-28)を調製することができる。
化合物5(2.6mmol)に対してR-CHO(式中、Rはアルキル基又はアリール基を示す。)で表されるアルデヒド(3.1mmol)を用い、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)(40mL)中、10~30°Cで0.5~2時間反応させて化合物6(表1、化合物番号I-23~I-28)を得ることができる(Scheme 2)。
【0031】
一般式(I)で表されるヒドラジノプリン化合物(I)において、R、R及びRが全て水素原子であるヒドラジノプリン化合物10a-cの製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 3)。
【化8】

(Scheme 3中、Rはアルキル又はアリール基を示し、Rはアリール基を示す。)
【0032】
すなわち、式7a-cで表される化合物7a-c(7a:C.Henry,et al,J.Org.Chem.,23,1457(1958)に記載;7b,c:F.Yoneda,et al,Heterocycles.4,1759(1976)に記載。)に五硫化二りんを加熱反応させることにより、式8a-cで表される化合物8a-c(8a:F.Bergmann,et al,J.Chem.Soc.,4468(1961)に記載;8b:F.Bergmann,et al,J.Chem.Soc.(C),1254(1967)に記載。)が得られる(第5工程)。次に、該化合物8a-cに包水ヒドラジンを加熱反応させることにより、式9a-cで表される化合物9a-cが得られる(第6工程)。さらに、該化合物9a-cに各種アルデヒドを反応させることにより、一般式10a-cで表される化合物10a-cを得ることができる(第7工程)。以下、各工程毎に説明する。
【0033】
(第5工程)
この工程は、常法に従い化合物7a-cより化合物8a-cを調製することができる。
ピリジン又はβ-ピコリン(200mL)に化合物7a-c(15mmol)と五硫化二りん(45mmol)を加え、8時間加熱還流する。反応後、減圧下溶媒を留去し、熱水で処理し、析出した結晶を濾取する。これをDMFと水の混合溶媒中活性炭処理及び再結晶して黄色の粉末結晶の化合物8a-cを得ることができる。
【0034】
(第6工程)
この工程は、常法に従い化合物8a-cより化合物9a-cを調製することができる。
エタノール中(3~4mL)、化合物8a-c(1g)に対して包水ヒドラジン(3~4mL)を加え、1時間加熱還流する。反応後、析出した結晶を濾取し、これを水から再結晶すると無色の針状結晶の化合物9a-cを得ることができる。
【0035】
(第7工程)
この工程の化合物は第2工程で述べた合成法により、表1に記した種々のプリンアルデヒドヒドラゾン類化合物10a-c(表1、化合物番号I-29~I-43)を調製することができる。
TFA(8mL)に化合物9a-c(1.8~2.8mmol)と各種アルデヒド(2.2~3.3mmol)を加え、それぞれ室温で0.5~1時間撹拌する。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取する。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物10a-c(表1、化合物番号I-29~I-43)を得ることができる(Scheme 3)。
【0036】
本発明の一態様のトリアゾロプリン化合物は、前記一般式(II)及び(III)で表されるものであり、式中のR及びRは両方とも水素原子又はアルキル基を示し、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、R10及びR12は両方ともアルキル基を示し、R11は水素原子を示し、R13は水素原子、メチル基又はアリール基を示す。以下、前記一般式(II)及び(III)で表されるトリアゾロプリン化合物をトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)と示す。
【0037】
~R、R10、R12及びR13で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの炭素数1~7の直鎖又は分岐鎖を有する低級アルキル基が例示される。
【0038】
また、R、R及びR13で表されるアリール基としてはフェニル基及び置換基を有するフェニル基が例示される。置換基を有するフェニル基の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、メチレンジオキシ基、ヒドロキシ基又はニトロ基を示し、置換基の数は1~5個である。このようなアリール基を具体的に例示すれば、フェニル基;メチルフェニル、エチルフェニルなどの炭素数1~5のアルキル基を有するアルキルフェニル基;メトキシフェニル、エトキシフェニルなどの炭素数1~5のアルコキシを有するアルコキシフェニル基;ジメチルアミノフェニル、ジエチルアミノフェニルなどの炭素数1~5のアルキルアミノを有するアルキルアミノフェニル基;フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ヨードフェニルなどのハロゲノフェニル基;メチレンジオキシフェニル基;ヒドロキシフェニル基;ニトロフェニル基などが挙げられる。
【0039】
本発明の一実施態様のトリアゾロプリン化合物(II)によれば、キサンチンオキシダーゼ阻害作用及びキサンチンオキシダーゼとの複合体との安定性の点で、好ましい化合物は、以下の条件を少なくとも1つ満たす化合物である。
(ii-1)R、R及びRが全て水素原子であり、Rが水素原子、アルキル基又はアリール基である。
(ii-2)R、R及びRが全て水素原子であり、Rが炭素数2~7のアルキル基又はアリール基である。
(ii-3)R及びRが両方ともアルキル基であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子、アルキル基又はアリール基である。
(ii-4)R及びRが、両方ともアルキル基であり、Rが水素原子であり、並びにRが水素原子、アルキル基又は下記一般式(IV)
【化9】
(IV)
(式中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を示す。)
で表される置換基である。
(ii-5)R及びRが両方とも水素原子であり、Rがアルキル基又はアリール基であり、Rが水素原子、アルキル基又はアリール基ある。
(ii-6)R及びRが両方とも水素原子であり、Rがアルキル基又はアリール基であり、Rが水素原子、アルキル基又は下記一般式(IV)
【化10】
(IV)
(式中、X~Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を示す。)
で表される置換基である。
【0040】
本発明の一態様のトリアゾロプリン化合物(II)によれば、キサンチンオキシダーゼ阻害作用の点では、R及びRは水素原子が好ましく、Rは、π電子を有するアリール基が好ましく、フェニル基又はハロゲンフェニル基がより好ましい。
【0041】
本発明の一態様のトリアゾロプリン化合物(II)によれば、キサンチンオキシダーゼとの複合体との安定性の点では、R及びRは両方とも水素原子が好ましく、Rはπ電子を有するアリール基が好ましく、フェニル基、クロロフェニル基又はアルコキシフェニル基がより好ましい。
【0042】
本発明の一実施態様のトリアゾロプリン化合物(III)によれば、好ましい化合物は、R10及びR12が両方ともメチル基であり、R11が水素原子であり、R13が水素原子、メチル基又はアリール基である化合物である。
【0043】
本発明の一実施態様のトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)として、表2及び3に記載の官能基を有する化合物が挙げられる。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】

【0046】
一般式(II)で表されるトリアゾロプリン化合物(II)において、R、R及びRが全て水素原子であるトリアゾロ[5,1-]プリン化合物12(表2、化合物番号II-1~II-10)の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 4)。
【化11】


(Scheme 4中、Rは水素原子を示し、アルキル基又はアリール基を示す。)
【0047】
以前、化合物2aとオルトエステル類[RC(OEt):R=H、メチル基及びフェニル基]との縮合反応生成物及び化合物3a(表1、化合物番号I-2:R=4-Cl-C及び化合物番号I-5:R=4-MeO-C)の酸化閉環生成物として、トリアゾロ[3,4-]プリン化合物11の化学構造式を報告した(J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,3117(1999)及びPCT Int.Appl.(1996),WO9626208)。その後、化学反応及び生成物の各種スペクトルなどの精査や下記に述べる構造確信の確率高い別途合成により、真の生成物はトリアゾロ[3,4-]プリン化合物11ではなくトリアゾロ[5,1-]プリン化合物12(表2、化合物番号II-1~II-5)であることが明らかになった。つまり、先ず生成したトリアゾロ[3,4-]プリン化合物11(前記一般式(II)のR及びRが共に無置換の水素原子の化合物)が熱的に不安定であり、ジムロート型転位反応を起こして構造異性体であるトリアゾロ[5,1-]プリン化合物12を生成したものと構造を確定することができた。すなわち、一般式12で表される化合物12は、プリンヒドラジノ誘導体化合物2aにオルトエステル類を加え、加熱して転位体のトリアゾロ[5,1-]プリン化合物12を得ることができる(第8工程)。なお、トリアゾロ[3,4-]プリン類化合物11を安定に生成させるには、化合物11の6位の2級アミド(前記一般式(III)のR10)にメチル基などの置換基を導入すると転位することなく安定に生成できることが判った(後述)。さらに、前述の第2工程の方法で合成したプリンアルデヒドヒドラゾン類化合物3aを硝酸又はクロラニルで酸化することで、R(R=アルキル基又はアリール基)に各種置換基を導入した転位化合物のトリアゾロ[5,1-]プリン類化合物12を合成することができる(第9工程)。以下、各工程毎に説明する。
【0048】
(第8工程)
この工程は、ヒドラジノ化合物2aにオルトエステル類を加え加熱して化合物12(表2、化合物番号II-1~II-3)を調製することができる。
酢酸(8mL)に6-ヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物2a(1.2mmol)と各種オルトエステル(4.8mmol)を加え、それぞれ80℃で10~20分間加熱撹拌する。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取し、これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物12(表2、化合物番号II-1~II-3)を得ることができる。
【0049】
(第9工程)
この工程は、適切な酸化剤を用いて化合物3aを酸化し、化合物3aが閉環した化合物12(表2、化合物番号II-3~II-10)を調製することができる。
(Route i):TFA(6mL)に6--オクチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン又は6-アリールメチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン類化合物3a(1mmol)と70%硝酸(1.5mmol)を加え、それぞれ室温で10分間撹拌する。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取する。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物12(表2、化合物番号II-3~II-10)を得ることができる。
(Route ii):DMF(20mL)に6-アリールメチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン類化合物3a(1mmol)とクロラニル(1.5mmol)を加え、それぞれ10分間加熱還流する。反応後、減圧下溶媒を留去し、エタノールとジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取する。これをDMFと水の混合溶媒中活性炭処理及び再結晶して化合物12(表2、化合物番号II-3~II-10)を得ることができる。
【0050】
一般式(III)で表されるトリアゾロプリン化合物(III)において、R10及びR12が両方ともメチル基であるトリアゾロ[3,4-]プリン化合物13(表3、化合物番号III-1~III-7)の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 5)。
【化12】

(Scheme 5中、R10とR12は両方ともメチル基を示し、R11は水素原子を示し、R13は水素原子、メチル基又はアリール基を示す。)
本明細書中において、DMFDMAはN,N’-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールを示し、DNPAは、-(2,4-ジニトロフェニル)ヒドロキシルアミンを示し、MeONaMeOHはナトリウムメトキシドメタノール溶液を示す。
【0051】
すなわち、前述の第3工程で得た6-ヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン化合物5にオルトエステル類を加え、加熱して転位なしにトリアゾロ[3,4-]プリン類化合物13(表3、化合物番号III-1~III-3)を得ることができる(第10工程)。これは、化合物13の2級アミド部位が-メチル化されて3級アミドになるため骨格が安定になり、転位を受けにくいものと考えられる。同様に、第2工程で得られたプリンアルデヒドヒドラゾン類化合物6を硝酸酸化しても安定にトリアゾロ[3,4-]プリン類化合物13(表3、化合物番号III-2~III-7)を高収率で得ることができる(第11工程)。この化合物13は熱時でも中性溶液には安定であるが、第12工程に示したような強いアルカリ性溶液では3級アミドの部分が加水分解を受けて開環し、化合物14a-gとなる(第12工程)。次に、この化合物14をジフェニルエーテル中で加熱すると、再び閉環してより安定な転位異性体であるトリアゾロ[5,1-]プリンの1,4-ジメチル類化合物12(表2、化合物番号II-11~II-17)を得ることができる(第13工程)。この1,4-ジメチル類化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)は、第9工程で得たトリアゾロ[5,1-]プリン類化合物12(表2、化合物番号II-1~II-3)をDMFDMAでメチル化することで得た化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)と同定できる。したがって、第9工程の生成物が化合物11の構造ではなく、その転位異性体の化合物12(表2、化合物番号II-1~II-10)であると確定できる(第14工程)。さらに、別途合成として、6-アミノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン化合物15を-(2,4-ジニトロフェニル)ヒドロキシルアミン(DNPA)によるアミノ化で1-アミノ-6-イミノ-3,7-ジメチル-1,3,6,7-テトラヒドロ-2-プリン-2-オン化合物16へと導き(第15工程)、次いで、この化合物16にオルトエステル類を反応させ、転位化合物の1,4-ジメチル化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)を得ることもできる(第16工程)。以下、各工程毎に説明する。
【0052】
(第10工程)
この工程は、ヒドラジノプリン化合物5にオルトエステル類を加え加熱して化合物13(表3、化合物番号III-1~III-3)を調製することができる。
DMF(20mL)に6-ヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン化合物5(1.03mmol)と各種オルトエステル(2.06mmol)を加え、それぞれ1時間加熱還流する。反応後、減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルで処理し、析出した結晶を濾取する。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物13(表3、化合物番号III-1~III-3)を得ることができる。
【0053】
(第11工程)
この工程は、化合物6(表1、化合物番号I-23~I-28)を適切な酸化剤を用いて酸化し、閉環することで化合物13(表3、化合物番号III-2~III-7)を調製することができる。
DMF(30mL)に6-アルキリデンヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン又は6-アリールメチリデンヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン類化合物6(1mmol)と70%硝酸(1.5mmol)を加え、それぞれ100℃で0.5~1時間撹拌する。反応後、減圧下溶媒を留去し、水で処理し、析出した結晶を濾取する。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶すると化合物13(表3、化合物番号III-2~III-7)を得ることができる。
【0054】
(第12工程)
この工程は、化合物13(表3、化合物番号III-1~III-7)をアルカリ加水分解することによってその開環化合物である化合物14a-gを調製できる。
0.1ナトリウムメトキシドメタノール溶液(10~15mL)に6,9-ジメチル-9-1,2,4-トリアゾロ[3,4-]プリン-5(6)-オン類化合物13(表3、化合物番号III-1~III-7)(1mmol)を加え、それぞれ室温で0.5~1時間撹拌する。反応後、浮遊物を濾去して減圧下溶媒を留去し、水を加えて10%aq.HClで中和すると結晶が析出する。これを濾取し、適切な有機溶媒から再結晶して化合物14a-gを得ることができる。
【0055】
(第13工程)
この工程は、上述の化合物14a-gをジフェニルエーテル中で加熱閉環することで化合物12(表2、化合物番号II-11~II-17)を調製できる。
ジフェニルエーテル(8mL)に化合物14a-g(1mmol)を加え、それぞれ200℃で2時間加熱撹拌する。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、これをDMFから再結晶すると化合物12(表2、化合物番号II-11~II-17)を得ることができる。
【0056】
(第14工程)
この工程は、前述の第9工程で得た化合物12(II)の構造確定のための工程であり、化合物12(表2、化合物番号II-1~II-3)をDMFDMAによるメチル化で得た化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)は、第13工程から得られた化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)と同定できる。
DMF(10mL)に対応する1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物12(表2、化合物番号II-1~II-3)(1mmol)とN,N’-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(DMFDMA)(10mmol)を加え、それぞれ2~3時間加熱還流する。反応後、減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルで処理し、析出した結晶を濾取する。これをDMFから再結晶して化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)を得ることができる。
【0057】
(第15工程)
この工程は、さらに化合物12の構造確定のための工程で、別途合成法での出発物質である化合物16の合成である。
DMF(100mL)に既知の化合物である6-アミノ-2,3-ジヒドロ-3,7-ジメチル-2-オキソ-7-プリン化合物15(1.12mmol)と-(2,4-ジニトロフェニル)ヒドロキシルアミン(DNPA)(1.68mmol)を加え、80℃で1時間加熱撹拌する。反応後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 70-230 mesh)(酢酸エチル:エタノール=4:1)によって分離精製し、得られた固体をエタノールから再結晶して無色の粉末結晶の1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-3,7-ジメチル-2-オキソ-7-プリン化合物16を得ることができる。
【0058】
(第16工程)
この工程は、第15工程で得た化合物16にオルトギ酸エステル類を加え加熱して化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)を調製することができる。
ジフェニルエーテル(8mL)に1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-3,7-ジメチル-2-オキソ-7-プリン化合物16(1.03mmol)と各種オルトエステル(3.09mmol)を加え、それぞれ200℃で20分間加熱撹拌する。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、これをDMFから再結晶して化合物12(表2、化合物番号II-11~II-13)を得ることができる。
【0059】
一般式(II)で表されるトリアゾロプリン化合物(II)において、R及びRが両方とも水素原子であり、Rがメチル基、フェニル基又は4-Cl-Cであるトリアゾロ[5,1-]プリン化合物17a-c(表2、化合物番号II-18~II-38)の製造法は特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 6)。
【化13】

(Scheme 6中、Rは水素原子、メチル基又はアリール基を示す。)
本明細書中において、DEADはアゾジカルボン酸ジエチルを示す。
【0060】
すなわち、前述の第6工程で得たヒドラジノプリン誘導体化合物9a-cにオルトエステル類を加え、加熱すると転位化合物のトリアゾロ[5,1-]プリン類化合物17(表2、化合物番号II-18~II-20、化合物番号II-25~II-27、及び化合物番号II-32~II-34」を得ることができる(第17工程)。
さらに、第7工程で得たプリンアルデヒドヒドラゾン誘導体化合物10a-cに酸化剤のジエチルアゾジカルボン酸エステルを加え加熱すると、閉環転位して化合物17a-c(表2、化合物番号II-20~II-24、化合物番号II-27~II-31、及び化合物番号II-34~II-38)を得ることができる(第18工程)。以下、各工程毎に説明する。
【0061】
(第17工程)
この工程は、ヒドラジノプリン化合物9a-cにオルトエステル類を加え加熱して化合物17a-c(表2、化合物番号II-18~II-20,II-25~II-27及びII-32~II-34)を調製することができる。
即ち、酢酸(5~8mL)にヒドラジノプリン化合物9a-c(0.7~1.1mmol)と各種オルトエステル(2.2~3.3mmol)を加え、それぞれ80℃で10分間加熱撹拌する。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取する。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物17a-cを得ることができる。
【0062】
(第18工程)
この工程は、プリンアルデヒドヒドラゾン化合物10a-cに適切な酸化剤を用いて酸化し、その閉環化合物である化合物17a-c(表2、化合物番号II-20~II-24,化合物番号II-27~II-31及び化合物番号II-34~II-38)を調製することができる。
【0063】
即ち、DMF(15~20mL)に6-アリールメチリデンヒドラジノ-8-メチル-7-プリン-2(3)-オン類化合物10a-c(表1、化合物番号I-29~I-43)(1mmol)とDEAD(2mmol)を加え、それぞれ1~2時間加熱還流する。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、氷中冷却し、析出した結晶を濾取する。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物17a-cを得ることができる。
【0064】
一般式(II)で表されるトリアゾロプリン化合物(II)において、R及びRが共に水素原子であり、Rがフェニル基又は4-Cl-Cであるトリアゾロ[5,1-]プリン化合物17b,c(表2、化合物番号II-25~II-27及び化合物番号II-32~II-34)の構造確実な別製造法で、特に限定されないが、次に示す反応式に従って合成することができる(Scheme 7)。
【化14】

(Scheme 7中、Rは水素原子、メチル基又はフェニル基を示す。)
本明細書中において、HAOSはヒドロキシルアミン--スルホン酸を示す。
【0065】
即ち、第5工程で得たチオキソプリン化合物8b,cにアンモニア水溶液を加え、封管中で加熱するとそのアミノ化合物である化合物18b,cを得ることができる(第19工程)。ついで、この化合物18b,cにアルカリ水溶液中でHAOSを加えアミノ化を行い、1-アミノ-6-イミノプリン化合物19b,cが得られる(第20工程)。さらに、この化合物19b,cに各種オルトエステルを作用させると化合物17b,cを得ることができる(第21工程)。その他、ある種の誘導体は同様に無水酢酸中加熱、若しくはベンズアルデヒドを加えDEADで加熱酸化しても同様の生成物を得ることができる。以下、各工程毎に説明する。
【0066】
(第19工程)
この工程は、28%アンモニア水(50mL)にチオキソプリン化合物8b,c(8mmol)を加え、封管中160℃で48時間加熱する。反応後、氷中冷却し、析出した結晶を濾取し、水及びエタノールで洗浄して無色の粉末結晶の化合物18b,cを得ることができる。
【0067】
(第20工程)
この工程は、アミノ化合物18b,c(2mmol)を2 NaOH(15mL)に溶解させ、水3mLに溶解させたヒドロキシルアミン--スルホン酸(HAOS)(7.6~8.6mmol)を0~10℃で加え、反応後析出した結晶を濾取し、これを水に溶解させ10%aq.HClで中和すると結晶が析出する。これをエタノールから再結晶して無色の粉末結晶の1-アミノ-6-イミノ化合物である化合物19b,cを得ることができる。
【0068】
(第21工程)
この工程は、トリアゾロ[5,1-]プリン類の構造確実な別途合成法として下記の3ルートよりトリアゾロ[5,1-]プリン類化合物17b,c(表2、化合物番号II-25~II-27及び化合物番号II-32~II-34)を合成できる。
【0069】
(Route i):TFA(4mL)に8-置換1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-7-プリン化合物19b,c(0.8mmol)とオルトエステル(4mmol)を加え、室温で3時間撹拌する。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取する。これを0.5%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17b,c(表2、化合物番号II-25及びII-32)を得ることができる。
(Route ii):無水酢酸(4mL)に8-置換1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-7-プリン化合物19b,c(0.8mmol)を加え、3時間加熱還流する。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取する。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17b,c(表2、化合物番号II-26及びII-33)を得ることができる。
(Route iii):DMF(15mL)に8-置換1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-7-プリン化合物19b,c(0.8mmol)とベンズアルデヒド(1.2mmol)を加え、30分間加熱還流した後、DEAD(1.25mmol)を加え、1時間加熱還流する。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、水で処理し、析出した結晶を濾取する。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17b,c(表2、化合物番号II-27及びII-34)を得ることができる。
【0070】
なお、本発明のヒドラジノプリン化合物(I)及びトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)並びに合成中間体の単離精製は、通常の核酸塩基の単離精製手段を採用すればよく、例えば、再結晶、各種クロマトグラフィーなどを用いて行うことができる。
【0071】
本発明のヒドラジノプリン化合物(I)並びにトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)は、遊離型、塩型又は水和物型(含水塩も含む)のいずれの形態であってもよい、例えば、塩型としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩などの無機酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩などの有機酸塩、若しくはアンモニウム塩などを例示することができ、特に薬学的に許容される塩が好ましい。
【0072】
本発明の一態様のキサンチンオキシダーゼ阻害用組成物は、前記ヒドラジノプリン化合物(I)並びにトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物である。
【0073】
本発明の一態様の医薬用組成物は、前記ヒドラジノプリン化合物(I)又はトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有する、医薬用組成物である。一態様の医薬用組成物として、高尿酸血症、痛風、腎不全や慢性腎臓病の腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームからなる群から選ばれる少なくとも1種の疾患を予防又は治療するための医薬用組成物である。
【0074】
本発明の前記ヒドラジノプリン化合物(I)並びにトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)は、キサンチンオキシダーゼの阻害作用を有し、尿酸の合成を阻害することができる。したがって、血液中の尿酸値を低下させ、高尿酸血症を予防若しくは治療するための医薬用組成物、又は高尿酸血症に起因する痛風、痛風関節炎及び痛風結節といった尿酸塩沈着症を予防若しくは治療するための医薬用組成物として有用である。
【0075】
また、キサンチンオキシダーゼは、生体内で産み出される酸化ストレスの主要な源の一つであり、特に虚血や組織侵襲などで傷ついた組織において活性酸素種の産生に関与することから、過剰の尿酸によりキサンチンオキシダーゼが過剰に働くときに生じる活性酸素種が種々の細胞機能障害にかかわる。
【0076】
一方で、高尿酸血症は、尿酸トランスポーターとして働くトランスポーター分子群の活性化を促す。尿酸トランスポーターは脂肪細胞や血管平滑筋細胞などの血管構成細胞をはじめとして種々の細胞に発現しているため、高尿酸血症では種々の細胞に多くの尿酸が取り込まれる。尿酸が、例えば脂肪細胞や血管平滑筋細胞に取り込まれると、上記のとおり活性酸素種により炎症が起こる。脂肪細胞の炎症を介して、脂肪組織異常となる。また血管内皮や血管平滑筋細の炎症を介して腎内血管病変をきたし、さらに全身高血圧及び糸球体高血圧をきたして、腎障害の発症及び腎疾患の進展に至る。
【0077】
したがって、本発明の前記ヒドラジノプリン化合物(I)並びにトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)は、腎不全や慢性腎臓病といった腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームを予防又は治療するための医薬用組成物として有用である。
【0078】
本発明の一態様の予防方法又は治療方法は、被験体に、本発明の前記ヒドラジノプリン化合物(I)並びにトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の有効量を投与することを含む、高尿酸血症、痛風、腎不全や慢性腎臓病の腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームの予防方法又は治療方法である。
【0079】
上記疾患の予防又は治療のために、ヒトに経口、経腸、非経口などのいずれの経路によっても投与することができる。投与量は、患者の年齢、病態、体重などによって適宜決定されるが、通常は1日当たり0.01から100mg/kg体重の範囲から選ばれ、一回又は複数回に分けて投与される。
【0080】
本発明の一態様の使用は、医薬用組成物を製造するための、本発明の前記ヒドラジノプリン化合物(I)並びにトリアゾロプリン化合物(II)及び(III)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用である。
【0081】
本発明化合物を医薬用組成物として製造するための使用に際しては、薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、その他の添加剤を含む組成物として使用するのが好適である。担体としては、乳糖、カオリン、ショ糖、結晶セルロース、コーンスターチ、タルク、寒天、ペクチン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、塩化ナトリウムなどの固体状担体:グリセリン、落花生油、ポリビニルピロリドン、オリーブ油、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、水などの液状担体を例示することができる。
【0082】
医薬用組成物の形態、すなわち剤形としては任意の形態をとることができ、例えば固体状担体を使用する場合には錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル化剤、坐剤、トローチ剤などを、液状担体を使用する場合にはシロップ、乳液、軟ゼラチンカプセル、クリーム、ゲル、ペースト、注射などを例示することができる。
【実施例
【0083】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、これにより本発明は何等限定されるものではない。
【0084】
[例1.ヒドラジノプリン化合物の合成例]
前述のScheme 1に記載の反応式に従い、化合物3a(表1、化合物番号I-1~I-13、以下、記載の化合物番号は前記表1~3を参照する)及び化合物3b(化合物番号I-14~I-22)で表されるヒドラジノプリン化合物を合成した(Scheme 1中、Rは表1参照)。
【0085】
合成例1:
6--オクチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物3a(化合物番号I-8:R-C15)の合成
TFA(10mL)に6-ヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物2a(0.50g,3.0mmol)とオクタナール(0.42g,3.3mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をエタノールから再結晶して無色の粉末結晶の化合物3a(化合物番号I-8)を得た(表4及び5)。
【0086】
合成例2:
6-アリールメチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン類化合物3a(化合物番号I-9~I-13:R=アリール基)の一般合成
TFA(10mL)に6-ヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物2a(0.50g,3.0mmol)と各種アルデヒド(3.6mmol)を加え、それぞれ室温で30分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物3a(化合物番号I-9~I-13)を得た(表4及び5)。
【0087】
合成例3:
6-(1-メチル-2--オクチリデンヒドラジノ)-7-プリン-2(3)-オン化合物3b(化合物番号I-19:R-C15)の合成
TFA(10mL)に6-(1-メチルヒドラジノ)-7-プリン-2(3)-オン化合物2b(0.50g,2.78mmol)とオクタナール(0.39g,3.06mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をエタノールから再結晶して無色の粉末結晶の化合物3b(化合物番号I-19)を得た(表4及び5)。
【0088】
合成例4:
6-(2-アリールメチリデン-1-メチルヒドラジノ)-7-プリン-2(3)-オン類化合物3b(化合物番号I-20~I-22:R=アリール基)の一般合成
TFA(10mL)に6-(1-メチルヒドラジノ)-7-プリン-2(3)-オン化合物2b(0.50g,2.78mmol)各種アルデヒド(3.34mmol)を加え、それぞれ室温で30分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物3b(化合物番号I-20~I-22)を得た(表4及び5)。
【0089】
前述のScheme 2に記載の反応式に従い、化合物6(化合物番号I-23~I-28)で表されるヒドラジノプリン化合物を合成した(Scheme 2中、Rは表1参照)。
【0090】
合成例5:
6-ヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン化合物5の合成
エタノール(4mL)に1,2,3,6-テトラヒドロ-3,7-ジメチル-2-オキソ-6-チオキソ-7-プリン化合物4(1g,5.1mmol)とヒドラジン水和物(4mL,117mmol)を加え、30分間加熱還流した。反応後、析出した結晶を濾取し、これを水から再結晶して無色の針状結晶の化合物5 0.73g(収率74%)を得た。
【化15】
【0091】
合成例6:
6-アルキリデンヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン又は6-アリールメチリデンヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン類化合物6(化合物番号I-23~I-28)の一般合成
DMF(40mL)に6-ヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン化合物5(0.50g,2.57mmol)と各種アルデヒド(3.08mmol)を加え、それぞれ室温で0.5~2時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルで処理し、析出した結晶を濾取した。これをエタノール又はDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物6(化合物番号I-23~I-28)を得た(表6及び7)。
【0092】
前述のScheme 3に記載の反応式に従い、化合物10a-c(化合物番号I-29~I-43)で表されるヒドラジノプリン化合物を合成した(Scheme 3中、R及びRは表1参照)。
【0093】
合成例7:
8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2-オキソ-6-チオキソ-7-プリン化合物8c(R=4-Cl-C)の合成
ピリジン(200mL)に8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2,6-ジオキソ-7-プリン化合物7c(4g,15.2mmol)と五硫化リン(10g,45.6mmol)を加え、8時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、熱水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒中活性炭処理及び再結晶して黄色の粉末結晶の化合物8c(3.5g,82%,mp>330℃)を得た。
【化16】
【0094】
合成例8:
6-ヒドラジノ-8-メチル-7-プリン-2(3)-オン化合物9a(R=メチル基)の合成
エタノール(3mL)に1,2,3,6-テトラヒドロ-8-メチル-2-オキソ-6-チオキソ-7-プリン化合物8a(1g,5.49mmol)とヒドラジン水和物(3mL,85.6mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応後、析出した結晶を濾取し、水及びエタノールで洗浄して無色の粉末結晶の化合物9a(0.66g,67%,mp285℃(分解))を得た。汎用溶媒に対する溶解性が悪いため、再結晶は不可能であり、純度の指標となる元素分析は不可能であったが、単体化合物であることをTLC及びH-NMRスペクトルより確認した。
【化17】
【0095】
合成例9:
6-ヒドラジノ-8-フェニル-7-プリン-2(3)-オン化合物9b(R=フェニル基)の合成
エタノール(4mL)に1,2,3,6-テトラヒドロ-2-オキソ-8-フェニル-6-チオキソ-7-プリン化合物8b(1g,4.09mmol)とヒドラジン水和物(4mL,114mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応後、析出した結晶を濾取し、水及びエタノールで洗浄して無色の粉末結晶の化合物9b(0.65g,66%,mp280℃(分解))を得た。汎用溶媒に対する溶解性が悪いため、再結晶は不可能であり、純度の指標となる元素分析は不可能であったが、単体化合物であることをTLC及びH-NMRスペクトルより確認した。
【化18】
【0096】
合成例10:
8-(4-クロロフェニル)-6-ヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物9c(R=4-Cl-C)の合成
エタノール(4mL)に8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2-オキソ-6-チオキソ-7-プリン化合物8c(1g,3.59mmol)とヒドラジン水和物(4mL,114mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応後、析出した結晶を濾取し、水及びエタノールで洗浄して無色の粉末結晶の化合物9c(0.60g,60%,mp290℃(分解))を得た。汎用溶媒に対する溶解性が悪いため、再結晶は不可能であり、純度の指標となる元素分析は不可能であったが、単体化合物であることをTLC及びH-NMRスペクトルより確認した。
【化19】
【0097】
合成例11:
6-アリールメチリデンヒドラジノ-8-メチル-7-プリン-2(3)-オン類化合物10a(R=Me)(化合物番号I-29~I-33)の一般合成
TFA(8mL)に6-ヒドラジノ-8-メチル-7-プリン-2(3)-オン化合物9a(0.50g,2.77mmol)と各種アルデヒド(3.32mmol)を加え、それぞれ室温で30分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物10a(化合物番号I-29~I-33)を得た(表8及び9)。
【0098】
合成例12:
6-アリールメチリデンヒドラジノ-8-フェニル-7-プリン-2(3)-オン類化合物10b(R=フェニル基)(化合物番号I-34~I-38)の一般合成
TFA(8mL)に6-ヒドラジノ-8-フェニル-7-プリン-2(3)-オン化合物9b(0.50g,2.06mmol)と各種アルデヒド(2.47mmol)を加え、それぞれ室温で0.5~1時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物10b(化合物番号I-34~I-38)を得た(表10及び11)。
【0099】
合成例13:
6-アリールメチリデンヒドラジノ-8-(4-クロロフェニル)-7-プリン-2(3)-オン類化合物10c(R=4-Cl-C)(化合物番号I-39~I-43)の一般合成
TFA(8mL)に8-(4-クロロフェニル)-6-ヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物10c(0.50g,1.81mmol)と各種アルデヒド(2.17mmol)を加え、それぞれ室温で0.5~1時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物10c(化合物番号I-39~I-43)を得た(表12及び13)。
【0100】
[例2.トリアゾロプリン化合物の合成例]
前述のScheme 4に記載の反応式に従い、化合物12(化合物番号II-1~II-10)で表されるトリアゾロ[5,1-]プリン化合物を合成した。(Scheme 4中、Rは表2参照)
【0101】
合成例14:
-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物12(化合物番号II-1~II-3)の一般合成
酢酸(8mL)に6-ヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物2a(0.20g,1.2mmol)と各種オルトエステル(4.8mmol)を加え、それぞれ80℃で10~20分間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物12(化合物番号II-1~II-3)を得た(表14及び15)。
【0102】
合成例15:
8-置換1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物12(化合物番号II-3~II-10)の一般合成
(Route i):TFA(6mL)に対応する6--オクチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン又は6-アリールメチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン類化合物3a(1mmol)と70%硝酸(0.10mL,1.5mmol)を加え、それぞれ室温で10分間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを1%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物12(化合物番号II-3~II-10)を得た(表14及び15)。
(Route ii):DMF(20mL)に対応する6-アリールメチリデンヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン類化合物3a(1mmol)とクロラニル(0.37g,1.5mmol)を加え、それぞれ10分間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、エタノールとジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒中活性炭処理及び再結晶して化合物12(化合物番号II-3~II-10)を得た(表14及び15)。
【0103】
前述のScheme 5に記載の反応式に従い、化合物13(化合物番号III-1~III-7)で表されるトリアゾロ[3,4-]プリン化合物を合成した。(Scheme 5中、R13は表3参照)
【0104】
合成例16:
6,9-ジメチル-9-1,2,4-トリアゾロ[3,4-]プリン-5(6)-オン類13(化合物番号III-1~III-3)の一般合成
DMF(20mL)に6-ヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン化合物5(0.20g,1.03mmol)と各種オルトエステル(2.06mmol)を加え、それぞれ1時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルで処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物13(化合物番号III-1~III-3)を得た(表16及び17)。
【0105】
合成例17:
3-置換6,9-ジメチル-9-1,2,4-トリアゾロ[3,4-]プリン-5(6)-オン類化合物13(化合物番号III-2~III-7)の一般合成
DMF(30mL)に6-アルキリデンヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン又は6-アリールメチリデンヒドラジノ-3,7-ジメチル-7-プリン-2(3)-オン類化合物6(1mmol)と70%硝酸(0.10mL,1.5mmol)を加え、それぞれ100℃で0.5~1時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物13(化合物番号III-2~III-7)を得た(表16及び17)。
【0106】
合成例18:
メチル(1-メチル-5-(4-1,2,4-トリアゾール-3-イル)-1-イミダゾール-4-イル)カルバミン酸メチル化合物14aの合成
0.1ナトリウムメトキシドメタノール溶液(10mL)に6,9-ジメチル-9-1,2,4-トリアゾロ[3,4-]プリン-5(6)-オン化合物13(化合物番号III-1)(0.20g,0.98mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応後、浮遊物を濾去して減圧下溶媒を留去し、水を加えて10%aq.HClで中和した後、酢酸エチルで抽出し(20mL×4)、有機層をMgSOで乾燥させた。これを減圧下留去し、得られた結晶を酢酸エチルから再結晶して化合物14aを得た(表18及び19)。
【0107】
合成例19:
メチル(1-メチル-5-(5-メチル-4-1,2,4-トリアゾール-3-イル)-1-イミダゾール-4-イル)カルバミン酸メチル化合物14bの合成
0.1ナトリウムメトキシドメタノール溶液(10mL)に3,6,9-トリメチル-9-1,2,4-トリアゾロ[3,4-]プリン-5(6)-オン類化合物13(化合物番号III-2)(0.20g,0.92mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応後、浮遊物を濾去して減圧下溶媒を留去し、水を加えて10%aq.HClで中和した後、酢酸エチルで抽出し(20mL×4)、有機層をMgSOで乾燥させた。これを減圧下留去し、得られた結晶を酢酸エチルから再結晶して化合物14bを得た(表18及び19)。
【0108】
合成例20:
メチル(1-メチル-5-(5-アリール-4-1,2,4-トリアゾール-3-イル)-1-イミダゾール-4-イル)カルバミン酸メチル類化合物14c-gの一般合成
0.1ナトリウムメトキシドメタノール溶液(15mL)に3-アリール-6,9-ジメチル-9-1,2,4-トリアゾロ[3,4-]プリン-5(6)-オン類化合物13(化合物番号III-3~III-7)(1mmol)を加え、それぞれ室温で0.5~1時間撹拌した。反応後、浮遊物を濾去して減圧下溶媒を留去し、水を加えて10%aq.HClで中和すると結晶が析出した。これを濾取し、エタノール又はDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物14c-gを得た(表18及び19)。
【0109】
合成例21:
1,4-ジメチル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物12(化合物番号II-11~II-17)の一般合成
ジフェニルエーテル(8mL)に化合物14a-g(1mmol)を加え、それぞれ200℃で2時間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、これをDMFから再結晶して化合物12(化合物番号II-11~II-17)を得た(表20及び21)。
【0110】
合成例22:
1,4-ジメチル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物12(化合物番号II-11~II-13)の一般合成
DMF(10mL)に対応する1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物12(化合物番号II-1~II-3)(1mmol)とN,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(1.2g,10mmol)を加え、それぞれ2~3時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を留去し、酢酸エチルで処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFから再結晶して化合物12(化合物番号II-11~II-13)を得た(表20及び21)。
【0111】
合成例23:
1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-3,7-ジメチル-2-オキソ-7-プリン化合物16の合成
DMF(100mL)に既知(Z.Kazimierczuk,et al,Acta Biochim.Pol.,21,455(1974))の6-アミノ-2,3-ジヒドロ-3,7-ジメチル-2-オキソ-7-プリン化合物15(0.20g,1.12mmol)と-(2,4-ジニトロフェニル)ヒドロキシルアミン(DNPA)(0.33g,1.68mmol)を加え、80℃で1時間加熱撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Kieselgel 70-230 mesh)(酢酸エチル:エタノール=4:1)によって分離精製し、得られた固体をエタノールから再結晶して無色の粉末結晶の化合物16(0.12g,55%,mp226℃(分解))を得た。
【化20】
【0112】
合成例24:
1,4-ジメチル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物12(化合物番号II-11~II-13)の一般合成
ジフェニルエーテル(8mL)に1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-3,7-ジメチル-2-オキソ-7-プリン化合物16(0.20g,1.03mmol)と各種オルトエステル(3.09mmol)を加え、それぞれ200℃で20分間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄し、これをDMFから再結晶して化合物12(化合物番号II-11~II-13)を得た(表20及び21)。
【0113】
前述のScheme 6に記載の反応式に従い、化合物17a-c(化合物番号II-18~II-38)で表されるトリアゾロ[5,1-]プリン化合物を合成した(Scheme 6中、R及びRは表2参照)。
【0114】
合成例25:
2-メチル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17a(化合物番号II-18~II-20)の一般合成
酢酸(5mL)に6-ヒドラジノ-8-メチル-7-プリン-2(3)-オン化合物9a(0.20g,1.11mmol)と各種オルトエステル(3.33mmol)を加え、それぞれ80℃で10分間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物17a(化合物番号II-18~II-20)を得た(表22及び23)。
【0115】
合成例26:
8-アリール-2-メチル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17a(化合物番号II-20~II-24)の一般合成
A:DMF(15mL)に6-アリールメチリデンヒドラジノ-8-メチル-7-プリン-2(3)-オン類化合物10a(化合物番号I-29~I-32)(1mmol)とDEAD(0.26g,1.5mmol)を加え、それぞれ1時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、氷中冷却し、析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して化合物17a(化合物番号II-20~II-23)を得た(表22及び23)。
B:DMF(20mL)に8-メチル-6-(4-ニトロベンジリデンヒドラジノ)-7-プリン-2(3)-オン化合物10a(化合物番号I-33)(0.30g,0.96mmol)とDEAD(0.17g,0.96mmol)を加え、3時間加熱還流した。但し、DEADは1時間おきに0.17gを2回に分けて追加した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、氷中冷却し、析出した結晶を濾取した。これをDMFと水の混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17a(化合物番号II-24)を得た(表22及び23)。
【0116】
合成例27:
2-フェニル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17b(化合物番号II-25~II-27)の一般合成
酢酸(8mL)に6-ヒドラジノ-8-フェニル-7-プリン-2(3)-オン化合物9b(0.20g,0.83mmol)と各種オルトエステル(2.49mmol)を加え、それぞれ80℃で10分間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物17b(化合物番号II-25~II-27)を得た(表24及び25)。
【0117】
合成例28:
8-アリール-2-フェニル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17b(化合物番号II-27~II-31)の一般合成
A:DMF(20mL)に対応する6-アリールメチリデンヒドラジノ-8-フェニル-7-プリン-2(3)-オン類化合物10b(化合物番号I-34~I-37)(1mmol)とDEAD(0.26g,1.5mmol)を加え、それぞれ1~1.5時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物17b(化合物番号II-27~II-30)を得た(表24及び25)。
B:DMF(20mL)に6-(4-ニトロベンジリデンヒドラジノ)-8-フェニル-7-プリン-2(3)-オン化合物10b(化合物番号I-38)(0.30g,0.80mmol)とDEAD(0.14g,0.80mmol)を加え、2時間加熱還流した。但し、DEADは1時間後に0.14gを追加した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17b(化合物番号II-31)を得た(表24及び25)。
【0118】
合成例29:
2-(クロロフェニル)-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17c(化合物番号II-32~II-34)の一般合成
酢酸(8mL)に8-(4-クロロフェニル)-6-ヒドラジノ-7-プリン-2(3)-オン化合物9c(0.20g,0.72mmol)と各種オルトエステル(2.16mmol)を加え、それぞれ80℃で10分間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物17c(化合物番号II-32~II-34)を得た(表26及び27)。
【0119】
合成例30:
8-アリール-2-(クロロフェニル)-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17c(化合物番号II-34~II-38)の一般合成
A:DMF(20mL)に対応する6-アリールメチリデンヒドラジノ-8-(4-クロロフェニル)-7-プリン-2(3)-オン類化合物10c(化合物番号I-39~I-42)(1mmol)とDEAD(0.26g,1.5mmol)を加え、それぞれ1~1.5時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して化合物17c(化合物番号II-34~II-37)を得た(表26及び27)。
B:DMF(20mL)に8-(4-クロロフェニル)-6-(4-ニトロベンジリデンヒドラジノ)-7-プリン-2(3)-オン化合物10c(化合物番号I-43)(0.30g,0.73mmol)とDEAD(0.13g,0.73mmol)を加え、2時間加熱還流した。但し、DEADは1時間後に0.13gを追加した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17c(化合物番号II-38)を得た(表26及び27)。
【0120】
前述のScheme 7に記載の反応式に従い、化合物17b,c(化合物番号II-25~II-27及びII-32~II-34)で表されるトリアゾロ[5,1-]プリン化合物を別途合成した(Scheme 7中、R及びRは表2参照)。
【0121】
合成例31:
6-アミノ-2,3-ジヒドロ-2-オキソ-8-フェニル-7-プリン化合物18bの合成
28%アンモニア水(50mL)に1,2,3,6-テトラヒドロ-2-オキソ-8-フェニル-6-チオキソ-7-プリン化合物8b(2g,8.19mmol)を加え、封管中160℃で48時間加熱した。反応後、氷中冷却し、析出した結晶を濾取し、水及びエタノールで洗浄して無色の粉末結晶の化合物18b(1.4g,75%,mp>330℃)を得た。汎用溶媒に対する溶解性が悪いため、再結晶は不可能であり、純度の指標となる元素分析は不可能であったが、単体化合物であることをTLC及びH-NMRスペクトルより確認した。
【化21】
【0122】
合成例32:
6-アミノ-8-(4-クロロフェニル)-2,3-ジヒドロ-2-オキソ-7-プリン化合物18cの合成
28%アンモニア水(50mL)に8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-2-オキソ-6-チオキソ-7-プリン化合物8c(2g,7.18mmol)を加え、封管中160℃で48時間加熱した。反応後、氷中冷却し、析出した結晶を濾取し、水及びエタノールで洗浄して無色の粉末結晶の化合物18c(1.44g,77%,mp>330℃)を得た。汎用溶媒に対する溶解性が悪いため、再結晶は不可能であり、純度の指標となる元素分析は不可能であったが、単体化合物であることをTLC及びH-NMRスペクトルより確認した。
【化22】
【0123】
合成例33:
1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-8-フェニル-7-プリン化合物19bの合成
6-アミノ-2,3-ジヒドロ-2-オキソ-8-フェニル-7-プリン化合物18b(0.50g,2.20mmol)を2 NaOH(15mL)に溶解させ、水3mLに溶解させたヒドロキシルアミン--スルホン酸(1g,8.80mmol)を0~10℃で滴下し、30分間撹拌した。反応後、析出した結晶を濾取し、これを水に溶解させ10%aq.HClで中和すると結晶が析出した。これを濾取し、エタノールから再結晶して無色の粉末結晶の化合物19b(0.34g,64%,mp270℃(分解))を得た。
【化23】
【0124】
合成例34:
1-アミノ-8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-7-プリン化合物19cの合成
6-アミノ-8-(4-クロロフェニル)-2,3-ジヒドロ-2-オキソ-7-プリン化合物18c(0.50g,1.91mmol)を2 NaOH(15mL)に溶解させ、水3mLに溶解させたヒドロキシルアミン--スルホン酸(0.86g,7.64mmol)を0~10℃で滴下し、30分間撹拌した。反応後、析出した結晶を濾取し、これを水に溶解させ10%aq.HClで中和すると結晶が析出した。これを濾取し、エタノールから再結晶して無色の粉末結晶の化合物19c(0.33g,62%,mp292℃(分解))を得た。
【化24】
【0125】
合成例35:
2-フェニル-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17b(化合物番号II-25~II-27)の一般合成
(Route i):TFA(4mL)に1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-8-フェニル-7-プリン化合物19b(0.20g,0.83mmol)とオルトギ酸トリエチル(0.62g,4.15mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを0.5%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17b(化合物番号II-25)を得た(表24及び25)。
(Route ii):無水酢酸(4mL)に1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-8-フェニル-7-プリン化合物19b(0.20g,0.83mmol)を加え、3時間加熱還流した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17b(化合物番号II-26)を得た(表24及び25)。
(Route iii):DMF(15mL)に1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-8-フェニル-7-プリン化合物19b(0.20g,0.83mmol)とベンズアルデヒド(0.13g,1.25mmol)を加え、30分間加熱還流した後、DEAD(0.22g,1.25mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17b(化合物番号II-27)を得た(表24及び25)。
【0126】
合成例36:
2-(クロロフェニル)-1-[1,2,4]トリアゾロ[5,1-]プリン-5(4)-オン類化合物17c(化合物番号II-32~II-34)の一般合成
(Route i):TFA(4mL)に1-アミノ-8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-7-プリン化合物19c(0.20g,0.72mmol)とオルトギ酸トリエチル(0.53g,3.6mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応後、減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで処理し、析出した結晶を濾取した。これを0.5%aq.KHCOで洗浄し、得られた固体をDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17c(化合物番号II-32)を得た(表26及び27)。
(Route ii):無水酢酸(4mL)に1-アミノ-8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-7-プリン化合物19c(0.20g,0.72mmol)を加え、3時間加熱還流した。反応後、室温まで冷却して析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17c(化合物番号II-33)を得た(表26及び27)。
(Route iii):DMF(15mL)に1-アミノ-8-(4-クロロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロ-6-イミノ-2-オキソ-7-プリン化合物19c(0.20g,0.72mmol)とベンズアルデヒド(0.11g,1.08mmol)を加え、30分間加熱還流した後、DEAD(0.19g,1.08mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応後、減圧下溶媒を濃縮し、水で処理し、析出した結晶を濾取した。これをDMFとエタノールの混合溶媒から再結晶して無色の粉末結晶の化合物17c(化合物番号II-34)を得た(表26及び27)。
【0127】
[例3.化合物の物理データ及びNMRデータ]
例1~2で合成した化合物の物理データ及びH-NMRデータを以下表4~27に示す。
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】

【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
【表9】
【0134】
【表10】
【0135】
【表11】
【0136】
【表12】
【0137】
【表13】
【0138】
【表14】
【0139】
【表15】
【0140】
【表16】
【0141】
【表17】
【0142】
【表18】
【0143】
【表19】
【0144】
【表20】
【0145】
【表21】
【0146】
【表22】
【0147】
【表23】
【0148】
【表24】
【0149】
【表25】
【0150】
【表26】
【0151】
【表27】
【0152】
[例4.化合物の評価]
試験例1:キサンチンオキシダーゼ阻害作用
例1~2で合成した化合物についてキサンチンオキシダーゼ阻害作用を測定した。
【0153】
1.測定方法
50mMリン酸緩衝液(pH7.4)を用いて、キサンチン(100μM)、ウシミルク由来キサンチンオキシダーゼ(XOD)(10mU/mL)及び検体化合物を混合し、室温にて15分間インキュベートした後、キサンチンから尿酸への変化を292nmにおける吸光度(O.D.)変化として測定し、検体化合物の尿酸生成阻害作用を検討した。
尿酸生成阻害率を次式により求め、各検体化合物の用量反応曲線を作成し、50%阻害濃度(IC50,μM)を算出した。なお、対照化合物としてはアロプリノールを用いた。
尿酸生成阻害率(%)=100-[(D-D)/T]×100
T : (キサンチン+ XOD)溶液のO.D.
D : (検体化合物+ キサンチン+ XOD)溶液のO.D.
: (検体化合物+ XOD)溶液のO.D.
【0154】
2.評価
算出したIC50の結果を表に示す。
【表28】

【0155】
表28に示すとおり、得られた化合物番号I-8~13、37及び38のヒドラジノプリン化合物のXODに対する50%阻害濃度(IC50)は10μMより小さく、既存のキサンチンオキシダーゼ阻害剤であるアロプリノールのIC50と比較して約2.6倍~約1200倍低い値であった。つまり、化合物番号I-8~13、37及び38のヒドラジノプリン化合物は、アロプリノールより高いキサンチンオキシダーゼ阻害作用を示した。
【0156】
また、化合物番号II-3~10、25及び32のトリアゾロプリン化合物のXODに対する50%阻害濃度(IC50)は10μMより小さく、既存のキサンチンオキシダーゼ阻害剤であるアロプリノールのIC50と比較して約2.5倍~約370倍低い値であった。つまり、化合物番号II-3~10、25及び32のトリアゾロプリン化合物はアロプリノールより高いキサンチンオキシダーゼ阻害作用を示した。
【0157】
したがって、本発明のヒドラジノプリン化合物(I)及びトリアゾロプリン化合物(II)はキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有し、特に化合物番号I-8~13、37及び38のヒドラジノプリン化合物並びに化合物番号II-3~10、25及び32のトリアゾロプリン化合物は、アロプリノールより高いキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有した。このことから、本発明のヒドラジノプリン化合物(I)及びトリアゾロプリン化合物(II)を含む組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物、並びに高尿酸血症、痛風及び高尿酸血症に起因する疾患の予防又は治療のための医薬用組成物として有用である。
【0158】
試験例2:キサンチン酸化還元酵素とリガンドとのドッキング評価
例1~2で合成した化合物について、キサンチン酸化還元酵素へのドッキングスコア(結合自由エネルギー、kcal/mol)を計算した。
【0159】
1.計算方法
J Comput Aided Mol Des(2010)24:57-75に記載の計算方法に従って、例1~2で合成した化合物のキサンチン酸化還元酵素(XOR)(PDBコード 1N5X及び1V97)へのドッキングスコアを計算した。対照化合物として、アロプリノール、オキシプリノール、尿酸及びフェブキソスタットも同様に計算を行った。
【0160】
2.ドッキングスコアの計算結果
PDBコード 1N5XのXORへのドッキングスコアの結果を表29に、PDBコード 1V97のXORへのドッキングスコアの結果を表30に示す。
【表29】

【表30】
【0161】
表29及び30に示すとおり、化合物番号II-3~10のトリアゾロプリン化合物は、PDBコード 1N5X及びPDBコード 1V97のいずれのXORにおいても、アロプリノール、オキシプリノール、尿酸及びフェブキソスタットと比較してよりドッキングスコアの値が低く、XORへ結合した状態がアロプリノール、オキシプリノール、尿酸及びフェブキソスタットより安定であることが示唆された。また、化合物番号II-3~10のトリアゾロプリン化合物は、化合物番号I-1~8、10~13のヒドラジノプリン化合物と比較して、ドッキングスコアの値が低いことから、化合物番号II-3~10のトリアゾロプリン化合物は、化合物番号I-1~8、10~13のヒドラジノプリン化合物よりXORへ結合した状態が安定であることが示唆された。前記試験例1のIn vitro活性試験(キサンチンオキシダーゼ阻害作用の試験)において、一般的に化合物番号I-1~8、10~13のヒドラジノプリン化合物が化合物番号II-3~10のトリアゾロプリン化合物よりも強いキサンチンオキシダーゼ阻害作用が見られたのは、酵素阻害に加え、特にヒドラジノプリン化合物にはアロプリノールと同様のキサンチンとの競合阻害があるためと考えられる。
【0162】
また、PDBコード 1N5XのXORへのドッキングスコアを計算した場合(表29)、化合物番号I-10~13のヒドラジノプリン化合物並びに化合物番号II-1~2のトリアゾロプリン化合物は、アロプリノール、オキシプリノール及び尿酸と比較してドッキングスコアの値が低く、XORへ結合した状態がアロプリノール、オキシプリノール及び尿酸より安定であることが示唆された。
【0163】
また、PDBコード 1V97のXORへのドッキングスコアを計算した場合(表30)、化合物番号I-8、10、12及び13のヒドラジノプリン化合物並びに化合物番号II-1~2のトリアゾロプリン化合物は、アロプリノール、オキシプリノール、尿酸及びフェブキソスタットと比較してドッキングスコアの値が低く、XORへ結合した状態がアロプリノール、オキシプリノール、尿酸及びフェブキソスタットより安定であることが示唆された。
【0164】
したがって、本発明のヒドラジノプリン化合物(I)及びトリアゾロプリン化合物(II)は、XORへ持続的に結合することで、高いバイオアベイラビリティが期待できる。このことから、本発明のヒドラジノプリン化合物(I)及びトリアゾロプリン化合物(II)を含む組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害用組成物、並びに高尿酸血症、痛風及び高尿酸血症に起因する疾患の予防又は治療のための医薬用組成物として有用である。
【0165】
[例5.製剤の調製]
本発明の化合物のキサンチンオキシダーゼ阻害用組成物、並びに高尿酸血症、痛風及び高尿酸血症に起因する疾患の予防又は治療のための製剤の調製例を以下に示す。
【0166】
製剤例1:錠剤
本発明化合物 30.0 mg
微粉末セルロース 25.0 mg
乳糖 39.5 mg
スターチ 40.0 mg
タルク 5.0 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5 mg
上記組成から常法によって錠剤を調整する。
【0167】
製剤例2:カプセル剤
本発明化合物 30.0 mg
乳糖 40.0 mg
スターチ 15.0 mg
タルク 5.0 mg
上記組成から常法によってカプセル剤を調整する。
【0168】
製剤例3:注射剤
本発明化合物 30.0 mg
グルコース 100.0 mg
上記組成を注射用精製水に溶解して注射剤を調整する。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明のヒドラジノプリン化合物及びトリアゾロプリン化合物は、多くの誘導体において既存のアロプリノールよりも優れたキサンチンオキシダーゼ阻害作用を有し、高尿酸血症又は痛風発作を予防又は治療するための医薬用組成物として有用である。さらに腎不全や慢性腎臓病の腎障害、高血圧、心血管疾患、脂質異常及びメタボリックシンドロームといった疾患を予防又は治療するための医薬用組成物としても有用である。
【関連出願の相互参照】
【0170】
本出願は、2018年8月30日出願の日本特願2018-161925号の優先権を主張し、その全記載は、ここに開示として援用される。