(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】透明液状組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20230517BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230517BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20230517BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230517BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20230517BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C11B9/00 Z
A61Q13/00 102
A61Q15/00
A61K8/31
A61K8/33
A61K8/86
(21)【出願番号】P 2020556443
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2018041614
(87)【国際公開番号】W WO2020095429
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】福原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】ドーファン アメリ
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03372282(EP,A1)
【文献】国際公開第2007/125460(WO,A1)
【文献】特開2009-091271(JP,A)
【文献】特開2005-288427(JP,A)
【文献】特開2018-030793(JP,A)
【文献】特開2011-038030(JP,A)
【文献】特開2011-120985(JP,A)
【文献】特開平08-176587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00- 9/02
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C09K23/00-23/56
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)香料成分を3-20質量%
(b)30~60モルのポリオキシエチレンが付加した硬化ヒマシ油
(c)20~30モルのポリオキシプロピレンと20~30モルのポリオキシエチレンが付加重合したアルカノール
(d)
次の(i)、(ii)及び(iii)からなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤
(i)酸化エチレン及び酸化プロピレンが付加重合したデシルテトラデカノール
(ii)酸化エチレン及び酸化プロピレンが付加重合したフィトステロール
(iii)ピログルタミン酸及びイソステアリン酸でエステル化されたポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(e)エチルアルコール以外の水性成分を40質量%以上
とを含み、
成分(b)と(c)の配合量の和に対する成分(d)の配合量比(d/(b+c))が0.03-0.60であり、
エチルアルコールを実質的に含まない、
ことを特徴とする透明液状組成物。
【請求項2】
成分(d)の界面活性剤について、無機性値の二乗と有機性値の二乗の和の平方根が2000-5000である、請求項1に記載の透明液状組成物。
【請求項3】
成分(b)-(d)の配合量の和に対する成分(a)の配合量比(a/(b+c+d))が0.4-1.1であることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明液状組成物。
【請求項4】
成分(b)が、PEG-40水添ヒマシ油であることを特徴とする、請求項1-
3のいずれかに記載の透明液状組成物。
【請求項5】
成分(c)が、PPG-26-ブテス-26であることを特徴とする、請求項1-
4のいずれかに記載の透明液状組成物。
【請求項6】
成分(b)の配合量に対する成分(c)の配合量比(c/b)が0.7-2.5であることを特徴とする、請求項1-
5のいずれかに記載の透明液状組成物。
【請求項7】
(a)香料成分以外の油分を実質的に含まないことを特徴とする、請求項1-
6のいずれかに記載の透明液状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明液状組成物に関し、さらに詳しくは、エチルアルコールを実質的に含まないフレグランスに関する。
【背景技術】
【0002】
フレグランス製品は、通常、エチルアルコールを主溶媒としてさまざまな香料を溶解させたものである。しかしながら、エチルアルコールに対して感受性を示す人もいるため、安全性を重視する需要者においては、エチルアルコールの使用を極力控えた製品が好まれる傾向がある。さらに、2004年の大気汚染防止法の改正により、エチルアルコールは排出量を規制すべき揮発性有機化合物(volatile organic compound;VOCと略記)に指定されたことから、その使用量の削減は社会的な課題となっている。
このような事情から、フレグランス市場では、エチルアルコールを実質的に含まない製品(以降、ノンアルコール フレグランス製品と呼ぶ場合がある)の開発が精力的に行われている。
【0003】
既に上市されているノンアルコール フレグランス製品には、油分を主溶媒とするもの(例として、特許文献1)と、水を主溶媒とするものがある。
フレグランス製品に通常用いられる香料は、極性が異なる油性成分の混合物であるため、油分を主溶媒とした場合には、多量の香料を安定に溶解させることが可能である。しかしながら、それらの製品では使用時に油っぽさが感じられ、それを好まない需要者も多い。
【0004】
これに対し、水を主溶媒とするものでは油っぽさの問題は基本的に生じないが、本来水になじまない香料を水中に安定に配合するための工夫が必要である。通常は、界面活性剤を用いて香料を可溶化または乳化させるが、界面活性剤の配合量が多くなるとべたつき感を生じるため、その使用量は制限される。そうすると、多量の香料の可溶化は難しく、また、香料の種類によっては微細乳化も難しいため、白濁した外観となって需要者に敬遠されるという問題が生じていた。需要者にとって、見た目の美しさは、フレグランス製品に対する重要な評価基準だからである。
よって、現在の市場では、水を主溶媒とする透明なノンアルコール フレグランス製品としては、賦香率の低いもの(5%以下)が主流となっている。
【0005】
このような事情から、エチルアルコールを実質的に含まずに水を主溶媒とし、透明な外観で、且つ、賦香率の高い液状組成物を製造する技術が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、エチルアルコールを実質的に含まずに水を主溶媒とし、賦香率の高い透明液状組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記目的を達成するために鋭意研究を行った結果、PEG-40水添ヒマシ油及びPPG-26-ブテス-26を主可溶化剤、IOB値が0.70-1.20である界面活性剤を副可溶化剤とし、主可溶化剤に対する副可溶化剤の配合量比(副可溶化剤/主可溶化剤)が0.03-0.60となる範囲内で併用することにより、多量の香料を水中に安定に可溶化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] (a)香料成分を3-20質量%
(b)30~60モルのポリオキシエチレンが付加した硬化ヒマシ油
(c)20~30モルのポリオキシプロピレンと20~30モルのポリオキシエチレンが付加重合したアルカノール
(d)無機性値/有機性値が0.70-1.20である界面活性剤を1種以上
(e)エチルアルコール以外の水性成分を40質量%以上
とを含み、
成分(b)と(c)の配合量の和に対する成分(d)の配合量比(d/(b+c))が0.03-0.60であり、
エチルアルコールを実質的に含まない、
ことを特徴とする透明液状組成物。
[2] 成分(d)の界面活性剤について、無機性値の二乗と有機性値の二乗の和の平方根が2000-5000である、前記[1]に記載の透明液状組成物。
[3] 成分(b)-(d)の配合量の和に対する成分(a)の配合量比(a/(b+c+d))が0.4-1.1であることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の透明液状組成物。
[4] 成分(d)が、酸化エチレン及び酸化プロピレンが付加重合したデシルテトラデカノール及びフィトステロール、ならびに、ピログルタミン酸及びイソステアリン酸でエステル化されたポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選ばれる1種以上の界面活性剤であることを特徴とする、前記[1]-[3]のいずれかに記載の透明液状組成物。
[5] 成分(b)が、PEG-40水添ヒマシ油であることを特徴とする、前記[1]-[4]のいずれかに記載の透明液状組成物。
[6] 成分(c)が、PPG-26-ブテス-26であることを特徴とする、前記[1]-[5]のいずれかに記載の透明液状組成物。
[7] 成分(b)の配合量に対する成分(c)の配合量比(c/b)が0.7-2.5であることを特徴とする、前記[1]-[6]のいずれかに記載の透明液状組成物
[8] (a)香料成分以外の油分を実質的に含まないことを特徴とする、前記[1]-[7]のいずれかに記載の透明液状組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、エチルアルコールを実質的に含まず、水を主溶媒とし、賦香率の高い透明液状組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】各可溶化剤のIOB値をプロットしたグラフ中に、ジステアリン酸PEG-8(I
OB=0.63、No.5)、PPG-20デシルテトラデセス-20(IOB=0.76、No.6)、PPG-7/PEG-30フィトステロール(IOB=1
.17、No.9)、オレス-20(IOB=1.33、No.10)の各プロットと原点をそれぞれ結んだ直線(四本)を書き入れた図である。
【
図2】各可溶化剤のIOB値をプロットしたグラフ中に、本発明の副可溶化剤のIOB値の上限値と下限値、及び、本発明の副可溶化剤のd値として好ましい値の上限値と下限値を表す直線(四本の点線)を書き入れた図である。
【
図3】水-可溶化剤-調合香料の三相図の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る好適な実施形態について説明する。
本明細書における“ノンアルコール”は、“エチルアルコールを実質的に含まない”の意であり、ここにいう“実質的”とは、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下を意味する。これらの値は、市販の香料成分中にはエチルアルコールが含まれている場合があり、香料成分由来の持ち込みを考慮したものである。
また、本発明における“透明”とは、そのL値が80以上のものを意味する。L値とはLab表色系におけるLの値を意味し、例えば、Color-EYE7000(GretagMacbeth社製)等の公知の色差計、又は公知の分光光度計を用いて、組成物の照射光強度に対する透過光強度の割合(%)として測定することができる値である。
【0013】
本発明に係る透明液状組成物は、特定の可溶化剤の作用により、香料を、水を主溶媒とする媒体中に可溶化させたものである。よって、香料の乳化物ではない。
【0014】
(a)香料成分
本発明に用いられる香料は、天然香料、合成香料のいずれでもよく、また、これらの香料を任意の香調が得られるように調合した調合香料であってもよい。
【0015】
(1)合成香料
代表的な合成香料としては、アルコール類、炭化水素類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、カルボン酸類、ラクトン類、ニトリル類、シッフ塩基類等の香料成分が挙げられる。
【0016】
アルコール類としては、テルペン系アルコール、芳香族アルコール、脂肪族アルコール等が挙げられる。
テルペン系アルコールとしては、リナロール、エチルリナロール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、α-ターピネオール、ジヒドロミルセノール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、メントール、ボルネオール、イソボルニルシクロヘキサノール等が挙げられる。
芳香族アルコールとしては、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、フェニルエチルジメチルカルビノール、フェニルヘキサノール等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、シス-3-ヘキセノール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)-3-ヘキサノール、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、エチルノルボニルシクロヘキサノール、4-メチル-3-デセン-5-オール等が挙げられる。
【0017】
炭化水素類としては、リモネン、α-ピネン、β-ピネン、テルピネン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセン等が挙げられる。
【0018】
フェノール類としては、グアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、チモール、パラクレゾール、バニリン、エチルバニリン等が挙げられる。
【0019】
エステル類としては、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、ヘキサン酸エステル、ヘプタン酸エステル、ノネン酸エステル、安息香酸エステル、桂皮酸エステル、サリチル酸エステル、ブラシル酸エステル、チグリン酸エステル、ジャスモン酸エステル、ジヒドロジャスモン酸エステル、グリシド酸エステル、アンスラニル酸エステル等が挙げられる。
ギ酸エステルとしては、リナリルホルメート、シトロネリルホルメート、ゲラニルホルメート等が挙げられる。
酢酸エステルとしては、ヘキシルアセテート、シス-3-ヘキセニルアセテート、リナリルアセテート、シトロネリルアセテート、ゲラニルアセテート、ネリルアセテート、テルピニルアセテート、ノピルアセテート、ボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、アセチルオイゲノール、アセチルイソオイゲノール、o-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、トリシクロデセニルアセテート、ベンジルアセテート、フェニルエチルアセテート、スチラリルアセテート、シンナミルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、3-ペンチルテトラヒドロピラン-4-イルアセテート等が挙げられる。
プロピオン酸エステルとしては、シトロネリルプロピオネート、トリシクロデセニルプロピオネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、ベンジルプロピオネート、スチラリルプロピオネート等が挙げられる。
酪酸エステルとしては、シトロネリルブチレート、ジメチルベンジルカルビニルn-ブチレート、トリシクロデセニルイソブチレート等が挙げられる。
吉草酸エステルとしては、メチルバレレート、エチルバレレート、ブチルバレレート、アミルバレレート、ベンジルバレレート、フェニルエチルバレレート等;ヘキサン酸エステルとしては、メチルヘキサノエート、エチルヘキサノエート、アリルヘキサノエート、リナリルヘキサノエート、シトロネリルヘキサノエート等が挙げられる。
ヘプタン酸エステルとしては、メチルヘプタノエート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。
ノネン酸エステルとしては、メチル2-ノネノエート、エチル2-ノネノエート、エチル3-ノネノエート等が挙げられる。
フェニル酢酸エステルとしては、フェニルエチルフェニルアセテート、p-クレジルフェニルアセテート等が挙げられる。
安息香酸エステルとしては、メチルベンゾエート、ベンジルベンゾエート等が挙げられる。
桂皮酸エステルとしては、メチルシンナメート、ベンジルシンナメート等が挙げられる。
サリチル酸エステルとしては、メチルサリシレート、n-ヘキシルサリシレート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、シクロヘキシルサリシレート、ベンジルサリシレート等が挙げられる。
ブラシル酸エステルとしては、エチレンブラシレート等が挙げられる。
チグリン酸エステルとしては、ゲラニルチグレート、1-ヘキシルチグレート、シス-3-ヘキセニルチグレート等が挙げられる。
ジャスモン酸エステルとしては、メチルジャスモネート等が挙げられる。
ジヒドロジャスモン酸エステルとしては、メチルジヒドロジャスモネート等が挙げられる。
アンスラニル酸エステルとしては、メチルアンスラニレート、エチルアンスラニレート、ジメチルアンスラニレート(メチルN-メチルアンスラニレート)等が挙げられる。
その他のエステルとしては、エチル2-メチルブチレート、メチルアトラレート、アリルシクロヘキシルグリコレート、2-ペンチロキシグリコール酸アリル、エチル2-シクロヘキシルプロピオネート、2-メチルペンチル2-メチルバレレート、エチル3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2-エチルカプロン酸エチル、メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート等が挙げられる。
【0020】
カーボネート類としては、シス-3-ヘキセニルメチルカーボネート、メチルシクロオクチルカーボネート、エチル2-tert-ブチルシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。
【0021】
アルデヒド類としては、n-オクタナール、n-ノナナール、n-デカナ-ル、n-ウンデカナ-ル、n-ドデカナ-ル、2-メチルウンデカナール、10-ウンデセナール、シトロネラール、シトラール、ヒドロキシシトロネラール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、ジメチル-3-シクロヘキセニル-1-カルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド、ブルゲオナール(Givaudan社商品名、3-(p-tert-ブチルフェニル)-プロパナール)、ヒドロキシマイラックアルデヒド、2-シクロヘキシルプロパナール、リリアール(Givaudan社商品名、p-tert-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド)、p-イソプロピル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、フロラロゾン(IFF社商品名、p-エチル-α,α-ジメチルヒドロシンナミックアルデヒド)、α-アミルシンナミックアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール(IFF社商品名、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド)等が挙げられる。
【0022】
ケトン類としては、α-イオノン、β-イオノン、γ-イオノン、α-メチルイオノン、β-メチルイオノン、γ-メチルイオノン、ダマセノン、メチルヘプテノン、4-メチレン-3,5,6,6-テトラメチル-2-ヘプタノン、アセトフェノン、アミルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、ローズケトン、カルボン、メントン、樟脳、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、アニシルアセトン、メチルβ-ナフチルケトン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、マルトール、ムスコン、シベトン、シクロペンタデカノン、カロン(Firmenich社商品名、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピン-3-オン)、ラズベリーケトン、ヘリオトロピルアセトン等が挙げられる。
【0023】
アセタール類としては、アセトアルデヒドエチルフェニルプロピルアセタール、シトラールジエチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、エチルアセトアセテートエチレングリコールアセタール等が挙げられる。
【0024】
エーテル類としては、セドリルメチルエーテル、エストラゴール、アネトール、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、リモネンオキサイド、ローズオキサイド、ネロールオキサイド、1,8-シネオール、ローズフラン、[3aR-(3aα,5aβ,9aα,9bβ)]-ドデカハイドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2.1-b]フラン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル、ガラクソリド(IFF社商品名、ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン)等が挙げられる。
【0025】
カルボン酸類としては、安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、ヒドロ桂皮酸、酪酸、2-ヘキセン酸等が挙げられる。
【0026】
ラクトン類としては、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ウンデカラクトン、δ-ヘキサラクトン、γ-ジャスモラクトン、ウイスキーラクトン、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド、アンブレットリド、11-オキサヘキサデカノリド、ブチリデンフタリド等が挙げられる。
【0027】
ニトリル類としては、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、ドデカンニトリル等が挙げられる。
【0028】
シッフ塩基類としては、オーランチオール、リガントラール等が挙げられる。
【0029】
これらのうち、アルコール類、炭化水素類、フェノール類、エステル類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類及びエーテル類が好ましく、特に、アルコール類、エステル類がより好ましい。
【0030】
(2)天然香料
本発明に用いることができる天然香料としては、特に限定されることはなく、例えば、アニスシード、イランイラン、エレミ、オリス、オレンジ、ガルバナム、クラリーセージ、クローブ、コリアンダー、サンダルウッド、シトロネラ、シナモン、ジャスミン、スペアーミント、セダーウッド、ゼラニウム、セロリ、タンジェリン、トンカビーンズ、ネロリ、バイオレット、パチョリ、ピーチ、ベチバー、ペチグレン、ペパーミント、ペルーバルサム、ベルガモット、ユーカリ、ライラック、ラズベリー、ラベンダー、リリーオブザバレー、レモン、レモングラス、ライム、ローズなどの天然精油;アンバー、カストリウム、シベット、ムスクなどの動物性香料等が挙げられる。また、ハッカ油等の植物抽出物を用いてもよい。
【0031】
(3)調合香料
本発明に用いることができる調合香料としては、特に限定されることはなく、例えば、シトラス調、フローラル調、フルーティ調、ハーバル調、スパイシー調、グリーン調、ウッディ調、バルサミック調、アルデハイディック調、ミンティ調、アロマティック調、アーシー調、モッシー調、ハニー調、レザー調、アニマリック調、アンバー調、および/またはムスキー調の香調を有する調合香料を用いることができる。
【0032】
上記のうち、本発明には、アルコール類、炭化水素類、アルデヒド類を好適に用いることができ、具体的な化合物例としては、フェニルエチルアルコール、n-ウンデカナ-ル、リモネン、ゼラニウム、ハッカ油等が挙げられる。
【0033】
本発明に係る透明液状組成物に対し、(a)香料成分は、3-20質量%となるように配合することができ、好ましくは5-15質量%、さらに好ましくは7-12質量%である。3質量%未満では十分な香りの強さ及び持続時間が得られない場合があり、20質量%という賦香率は水系溶媒ではほぼ限界量だからである。
【0034】
(b)30~60モルのポリオキシエチレンが付加した硬化ヒマシ油及び(c)20~30モルのポリオキシプロピレンと20~30モルのポリオキシエチレンが付加重合したアルカノール
本発明においては、30~60モルのポリオキシエチレンが付加した硬化ヒマシ油及び20~30モルのポリオキシプロピレンと20~30モルのポリオキシエチレンが付加重合したアルカノールを、香料成分の主可溶化剤として用いることができる。このうち、成分(b)は、香料の水性溶媒への可溶化に汎用される界面活性剤である。また、成分(c)は、成分(b)とともに、香料の可溶化に用いられることが知られている界面活性剤である。ここで、アルカノールとは、アルカンが有する1個以上の水素がヒドロキシル基によって置換された化合物の総称であり、飽和アルコール、パラフィンアルコールとも呼ばれることがある。
【0035】
成分(b)におけるポリオキシエチレンの平均付加モル数は、30-60が好ましく、より好ましくは35-45、最も好ましくは40である。
また、成分(c)として好適に用いることができる化合物の例としては、PPG-26-ブテス-26(INCI名:PPG-26-Buteth-26、26モルのポリオキシプロピレンと26モルのポリオキシエチレンが付加重合したブタノール)が最も好ましい。
【0036】
成分(b)及び(c)の本願組成物における配合量は、可溶化する香料の配合量に応じて調整することができるが、3-30質量%、好ましくは5-20質量%、さらに好ましくは7-15質量%程度を目安とすることができる。配合量が3質量%より少ないと、香料の配合量によっては十分に可溶化できずに組成物が透明にならない場合があり、また、30質量%より多いと、べたつき感が非常に強くなる場合や、高次の会合体を形成してゲル化する場合がある。
【0037】
成分(b)に対する成分(c)の配合量比((c)/(b))は、0.7以上であることが好ましく、さらに好ましくは、0.7-2.5、より好ましくは、0.8-2.0である。当該配合量比が0.7より小さいと、香料の配合量によっては、十分に可溶化できずに組成物が透明にならない場合があるからである。
【0038】
(d)IOB値が0.70-1.20である界面活性剤
本発明においては、IOB値(=無機性値/有機性値)が0.70-1.20である界面活性剤を、香料を可溶化するための副可溶化剤として用いることができる。IOB値(Inorganic Organic Blance)とは、化合物の無機性値を有機性値で除した値(=無機性値/有機性値)であり、無機性と有機性のバランスを示す指標として汎用されているものである。ここで、無機性値(Inorganic value、IVと略記)、有機性値(Organic value、OVと略記)とは、有機概念図(藤田穆、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域VOL.11,No.10(1957)719-715)に基づいて定められる値である。この有機概念図では、化合物の物理化学的物性について、主にファンデルワールス力による物性の程度を“有機性”、主に電気的親和力による物性の程度を“無機性”と定義して表現している。
よって、IOB値は、無機性値を縦軸、有機性値を横軸とするグラフにおいて、原点からの角度(すなわち、tanα)として与えられる値である。IOB値は、値が0に近いほど非極性(疎水性、有機性が大きい)の有機化合物であることを示し、値が大きいほど極性(親水性、無機性が大きい)の有機化合物であることを示す。
【0039】
本発明における副可溶化剤は、さらに、無機性値の二乗と有機性値の二乗の和の平方根(本書では、当該値を“d値”と呼ぶ場合がある)が2000-5000であると一層好ましい。この範囲内では、多量の香料を可溶化できることが確認されているからである。
d値は、有機概念図において原点からの距離として表され、同系列の化合物であれば分子量と相関する値である(参照:日本エマルション株式会社カタログ「乳化処方設計へのアプローチ」、第2頁、https://www.nihon-emulsion.co.jp/shared/pdf/tech/emulsification_prescription.pdf)。
【0040】
成分(d)として好適に用いることができる化合物の例としては、酸化エチレン及び酸化プロピレンが付加重合したデシルテトラデカノール及びフィトステロール、ならびに、ピログルタミン酸及びイソステアリン酸でエステル化されたポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0041】
本発明においては、上述した(d)IOB値が0.70-1.20である界面活性剤の1種または2種以上を、副可溶化剤として用いることができる。
【0042】
本発明における(d)IOB値が0.70-1.20である界面活性剤の配合量は、組成物全体に対し、0.01-10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3-5質量%、さらに好ましくは0.5-3質量%である。0.01質量%より少ない、または10質量%を超えると香料を十分に可溶化できずに組成物が透明にならない場合がある。
【0043】
(e)エチルアルコール以外の水性成分
成分(e)は、本発明に係る組成物の溶媒である。成分(e)は、エチルアルコール以外の水性成分であればよく、好ましくは水である。当該水は、イオン交換水、精製水、水道水等であってよい。
【0044】
成分(e)は溶媒なので、その配合量は他成分の残余となるが、目安としては、組成物全体に対し、40質量%以上であることが好ましい。
【0045】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、液状化粧料に一般的に用いられる成分を配合することができる。そのような成分としては、保湿剤、ビタミン類、酸化防止剤、薬剤、安定化剤、高分子化合物、着色剤等が例示される。
【0046】
保湿剤としては、特に限定されることはなく、例えば、ショ糖、ソルビトール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのサッカロイド類又はポリオール類、分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコール母核に、プロピレンオキサイド2~100モルと、エチレンオキサイド50モル以下とを付加重合したポリエーテル系化合物、エチルグルセス-10、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、胆汁酸モノ塩、dl-ピロリドンカルボン酸モノ塩、短鎖可溶性コラーゲン、イザヨイバラ抽出液、セイヨウノコギリソウ抽出物、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、それ以上の分子量のポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、それ以上の分子量のポリグリセリン類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、トレハロース等の糖類、ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体またはそのジメチルエーテル等が例示される。
このうち、特に、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量1000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール・ポリエチレングリコール共重合体およびそのジメチルエーテルを好適に用いることができる。
【0047】
本発明の透明液状組成物は、成分(b)、(c)、(d)以外の界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。ここでいう“実質的”とは、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であることを意味する。
また、本発明の透明液状組成物は、成分(a)以外の油分を実質的に含まないことが好ましい。ここでいう“実質的”とは、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であることを意味する。
【0048】
本発明の透明液状組成物は、フレグランスとして好適に用いることができ、特に、香水(パルファム)、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなどの芳香化粧料として好適である。また、家庭用芳香剤としても利用可能である。
【0049】
本発明の透明液状組成物は、特別な装置を必要とせず、基本的に各成分を混合することにより、製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明に係る実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記処方中の配合量は、特に断りが無い限り質量%を表す。
最初に、実施例で行った組成物の評価方法について説明する。
【0051】
<評価方法>
本願実施例においては、下記(1)において“透明”と判定され、且つ、(2)において“透明均一”と判定された場合に、“香料が完全に可溶化している”と判断した。
【0052】
(1)組成物の外観
製造直後の組成物について、まず、目視による観察を行い、“白濁”の有無を判定した。白濁していないと判断された組成物については、希釈せずに石英ガラスセル(光路長10mm)に充填し、積分球分光光度計(Color-EYE7000(GretagMacbeth社製)を用いてL値を測定した。最終的な判定基準は次の通りである。
・白濁:目視で白濁が確認、または、L値が80未満
・透明:L値が80以上
【0053】
(2)遠心処理後の状態
製造直後の組成物について、遠心処理を行い(2000rpm、30分間)、遠心処理後の状態を目視にて観察した。沈殿が生じていたものを“分離”、沈殿物が認められなかったもの(すなわち、透明均一な状態だったもの)を“透明均一”と判定した。
【0054】
表中、アスタリスクを付記した化合物は、以下のものである。
*1:混合香料1
リモネン50%、ウンデカナール50%からなる混合香料。
*2:混合香料2
リモネン30%、フェニルエチルアルコール35%、ウンデカナール35%からなる混合香料。
【0055】
試験例1:副可溶化剤の種類の検討
下表1の処方のフレグランス(以下、単に組成物と呼ぶ場合がある)を製造し、各評価項目について評価した。結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
表1に示されるように、可溶化剤として主可溶化剤(PPG-26-ブテス-26及びPEG-40水添ヒマシ油)のみを配合した組成物では、5.0質量%の香料が可溶化されずに乳化され、白濁した外観となった(比較例1、評価(1))。比較例1の組成物中で香料が可溶化されていないことは、低速遠心処理後に沈殿を生じたことからも確認された(比較例1、評価(2))。
【0058】
これに対し、副可溶化剤として、PPG-13デシルテトラデセス-24(実施例1)、PPG-20デシルテトラデセス-10(実施例2)、PPG-7/PEG-30フィトステロール(実施例3)、またはPCAイソステアリン酸水添ヒマシ油(実施例4)を配合した組成物では、透明な外観となり、遠心後にも沈殿を生じなかった。よって、これらの組成物では、5.0質量%の香料が水中に可溶化されていることが確認された。
【0059】
一方、副可溶化剤として、イソステアリン酸PEG-60グリセリル(比較例2)、ジステアリン酸PEG-8(比較例3)、ジステアリン酸ポリグリセリル-2(比較例4)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(比較例5)、ステアリン酸PEG-100(比較例6)を配合した組成物では、白濁した外観となり、遠心後に沈殿を生じた。よって、これらの組成物では、5.0質量%の香料が水中で可溶化されないことが確認された。
【0060】
以上の結果から、主可溶化剤だけでは香料を水に可溶化できない場合でも、特定の界面活性剤を副可溶化剤として追加することにより、香料の水への可溶化が可能になることが示された。
【0061】
なお、以下の表2に示されるように、表1で副可溶化剤として使用した界面活性剤は、主可溶化剤の非存在下、すなわち、単独では香料を水に可溶化できないことを確認している。
【0062】
【0063】
試験例2:副可溶化剤の物性の検討
主可溶化剤と併用することで香料の水への可溶化を可能にする副可溶化剤と、そのような効果を奏しない副可溶化剤について、物性の違いを検討した。
表3に、各可溶化剤の有機性値、無機性値、IOB値、及びd値を示す(有機性値、無機性値、及びd値の一の位は四捨五入)。また、各副可溶化剤について、試験例1の処方に従って作製した組成物の外観を合わせて記載した。
【0064】
【0065】
表3では、各副可溶化剤をIOB値の小さい順に記載した。これにより、IOB値が0.76-1.17である界面活性剤(No.6-9)では、副可溶化剤として使用した場合に組成物の外観が透明になるが、IOB値が当該範囲から外れる界面活性剤(No.3-5、10-11)では、副可溶化剤として使用した場合に組成物が白濁する、という関係があることがわかる。
【0066】
各可溶化剤のIOB値をプロットしたグラフを
図1に示す。そして、ジステアリン酸PEG-8(No.5)、PPG-20デシルテトラデセス-20(No.6)、PPG-7/PEG-30フィトステロール(No.9)、イソステアリン酸PEG-60グリセリル(No.11)のプロットをそれぞれ原点と結んだ線を
図1中に示す。
図1において、組成物を透明にし得る副可溶化剤(No.6-9)は、IOB値=0.76とIOB値=1.17の二本の直線の間(直線上も含む)にすべて存在している。これに対し、組成物を白濁させる副可溶化剤(No.3-5、10-11)は、IOB値=0.63となる直線より下側(直線上も含む)、または、IOB値=1.64となる直線より上側(直線上も含む)にすべて存在している。
【0067】
よって、主可溶化剤(PEG-40水添ヒマシ油及びPPG-26-ブテス-26)と共同して香料を水に可溶化させることができる可溶化剤は、IOB値が0.70-1.20、好ましくは0.75-1.17の範囲内にある界面活性剤であることが明らかとなった。
【0068】
図2に、IOB値=0.70とIOB値=1.20の二本の直線(点線)を示す。本発明に好適に用いることができる副可溶化剤は、(IOB値が)この二本の直線の間にプロットされる界面活性剤である。
さらに、d値について検討すると、
図2より、組成物を透明にし得る副可溶化剤(No.6-9)のd値は2060-4700の範囲内にあることがわかる。
【0069】
よって、本発明に用いることができる副可溶化剤は、IOB値が0.70-1.20、好ましくは0.75-1.17の範囲内の界面活性剤であって、さらに、d値が2000-5000の範囲内のものであると一層好ましいことが明らかとなった。
【0070】
試験例3:主可溶化剤と副可溶化剤の配合量比の検討
次に、主可溶化剤と副可溶化剤の配合量比を検討した。下表4の処方の組成物を製造し、各評価項目について評価した。結果を表4に示す。
【0071】
【0072】
表4より、主可溶化剤に対する副可溶化剤の配合量比(=(4)副可溶化剤/主可溶化剤)が0.01である組成物は、白濁し、遠心処理によって沈殿を生じた(比較例15)。これに対し、当該配合量比が0.05-0.43の範囲内にある組成物は、透明で、遠心処理後も透明均一なままであった(実施例5-8、1)。一方、当該配合量比が0.67の組成物では、白濁し、遠心処理後に沈殿を生じた(比較例16)。
【0073】
よって、香料を可溶化して水系の透明液状組成物を得るためには、主可溶化剤に対する副可溶化剤の配合量比は0.03-0.60であることを要し、好ましくは0.04-0.50、さらに好ましくは0.05-0.45であることが明らかとなった。
【0074】
試験例4:主可溶化剤2成分の配合量比の検討
主可溶化剤を構成するPEG-40水添ヒマシ油とPPG-26-ブテス-26の配合量比について、検討した。下表5の処方の組成物を製造し、各評価項目について評価した。結果を表5に示す。
【0075】
【0076】
表5より、PEG-40水添ヒマシ油に対するPPG-26-ブテス-26の配合量比(=(5)PPG-26-ブテス-26/PEG-40水添ヒマシ油)が0.82-1.50の範囲内である組成物は、透明な外観で、遠心処理後も均一透明なままであったが(実施例9-11)、当該配合量比が0.61である組成物は、白濁し、遠心処理によって沈殿を生じた(比較例17)。
よって、本発明に係る主可溶化剤では、PPG-26-ブテス-26/PEG-40水添ヒマシ油の値が0.7-2.5であることを要し、好ましくは0.75-2.0、さらに好ましくは0.8-1.7であることが明らかとなった。
【0077】
試験例5:香料の種類と配合量の検討
香料の種類を変えて、検討を行った。下表6の処方の組成物を製造し、各評価項目について評価した。結果を表6に示す。
【0078】
【0079】
香料として、複数の合成香料を混合した混合香料(実施例12、13)、合成香料(実施例14、15)、植物抽出物(実施例16)、精油(実施例17)のいずれを用いた場合にも、透明な外観で、遠心処理後も均一透明なままの液状組成物が得られた。これに対し、香料に代えて等量の非極性油(ミネラルオイルとシリコーン油、比較例18と19)を配合した場合には、白濁し、遠心処理後には沈殿を生じた。
【0080】
よって、本発明に係る可溶化剤(主可溶化剤と副可溶化剤との組み合わせ)を用いることにより、さまざまな香料成分、具体的には、精油を含む天然香料、合成香料、及び調合香料を水中に可溶化して、透明液状組成物を作製できることが示された。
【0081】
図3に、水-可溶化剤-調合香料の三相図の一部を示す。図中のプロットは、透明液状組成物を示す。
図3より、透明液状となった組成物はすべて、可溶化剤の総量(=主可溶化剤と副可溶化剤の和)に対する香料の配合量比(香料/総可溶化剤)が0.44-1.11の範囲内であることがわかる。
よって、エチルアルコールを実質的に含まずに水を主溶媒とし、賦香率の高い透明液状組成物を得るには、可溶化剤の総量(=主可溶化剤と副可溶化剤の和)に対する香料の配合量比(香料/総可溶化剤)が0.44-1.11の範囲内であることが好ましいことが明らかとなった。
【0082】
以下に、本発明に係る透明液状組成物の実施例の処方を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記いずれの組成物も、25℃で透明な外観を呈し、前記遠心分離後に沈殿を生じないものであった。
【0083】
実施例18:フレグランス 配合量(質量%)
混合香料*1 15
PEG-40水添ヒマシ油 7.9
PPG-26ブテス-26 7.9
PPG-13デシルテトラデセス-24 1.6
ブチレングリコール 5
フェノキシエタノール 適量
クエン酸 適量
クエン酸Na 適量
EDTA-2Na 適量
精製水 残余
計 100.0
【0084】
実施例19:フレグランス 配合量(質量%)
混合香料*1 18
PEG-40水添ヒマシ油 9.5
PPG-26ブテス-26 7.9
PPG-13デシルテトラデセス-24 1.9
ブチレングリコール 5
フェノキシエタノール 適量
クエン酸 適量
クエン酸Na 適量
EDTA-2Na 適量
精製水 残余
計 100.0