(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ウレタンおよびグラフェンの内装トリムパネル
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20230517BHJP
B60R 21/215 20110101ALI20230517BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230517BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230517BHJP
B29C 41/18 20060101ALI20230517BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20230517BHJP
B29L 31/58 20060101ALN20230517BHJP
B29K 75/00 20060101ALN20230517BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R21/215
C08L75/04
C08K3/04
B29C41/18
B29C41/36
B29L31:58
B29K75:00
(21)【出願番号】P 2021028523
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2021-02-25
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521082259
【氏名又は名称】シーピーケイ インテリオール プロダクツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムラリ モハン レッディ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジェームス ファラー
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/108522(WO,A1)
【文献】特開2017-071106(JP,A)
【文献】特開2004-352179(JP,A)
【文献】特開2018-178117(JP,A)
【文献】特表2015-509474(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60R 21/215
C08L 75/04
C08K 3/04
B29C 41/18
B29C 41/36
B29L 31/58
B29K 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80~97重量%のウレタンと
1~20重量%のグラフェンと
を含む
成形された外側スキン
と、基材と、を備え、
前記外側スキンは、可撓性およびEMI遮蔽性を有し、
前記グラフェンは、最大10層を有する、複数のグラフェン粒子を含み、
前記外側スキンは、車両用内装トリムパネルのための形状に形成され
、かつ、前記基材に取り付けられる、車両用内装トリムパネル。
【請求項2】
さらに、相溶化剤および安定剤のうちの少なくとも1つを、2~4重量%含む、請求項1に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項3】
前記グラフェン粒子は少なくとも溶融前に6~10層を含み、
平均約40μmのフレークサイズを有し、前記ウレタン内に剥離され、
前記ウレタンは熱可塑性ポリウレタンマトリックスである、請求項1または2に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項4】
前記グラフェンは、前記グラフェン粒子として前記ウレタン全体にわたって混合されるパウダナノ粒子を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項5】
前記基材は、堅いポリマー基材と、前記外側スキンの一部と前記ポリマー基材との間に位置する
ようにモールド内の前記外側スキンと前記基材との間のギャップに射出された柔
らかいオープンセルフォームと、をさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項6】
前記外側スキンは、脆いテアシームを除き、エアバッグドアにおいて原型をとどめており、-30℃でのエアバッグ展開によるスキンの破砕が起こらない、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項7】
前記外側スキンの伸びは、120℃で500時間熱老化させても30%を超えて変化せず、
前記外側スキンの引張強度は、120℃で500時間熱老化させても30%を超えて変化せず、
前記外側スキンのテアシームの引裂強度は、120℃で500時間熱老化させても30%を超えて変化しない、請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項8】
前記外側スキンの回転成形またはスラッシュ成形に先立って前記ウレタンおよび前記グラフェンと混合される、少なくとも1種の光およびUV安定剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項9】
前記外側スキンの回転成形またはスラッシュ成形に先立って前記ウレタンおよび前記グラフェンと混合される、無水マレイン酸およびエチレン酢酸ビニルのうちの少なくとも1つの相溶化剤をさらに含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項10】
前記外側スキンは、前記グラフェン粒子と前記熱可塑性ポリウレタンマトリックスとが混合された粒子から形成されており、前記粒子の安息角は26~34°である、請求項
3から9のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項11】
前記外側スキンのEMI遮蔽効果は5~10dBである、請求項1から10のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項12】
エアバッグのテアシームは前記外側スキンの裏側表面において部分的に切断されたままであり、前記テアシームに最初に切り込みが入れられた後、前記テアシームにおける前記外側スキンの自己治癒は生じない、請求項1から11のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項13】
前記車両用内装トリムパネルは、前記外側スキンの柔らかさにより衝撃を吸収するパネルであり、前記パネルは、(a)車輪付き自動陸上車両、(b)列車車両、(c)航空機、(d)船舶のいずれかに取り付け可能である、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用内装トリムパネル。
【請求項14】
熱可塑性ポリウレタンおよび
その中に混合される1~20重量%のグラフェンを含み、可撓性およびEMI遮蔽性を有する
、成形された外側スキンと、
前記外側スキンよりも堅い内側ポリマー基材と、
前記外側スキンの一部分と前記内側ポリマー基材との間に位置し、かつ、前記外側スキンの一部分を前記内側ポリマー基材に付着させる可撓性フォームと、を含み、
前記グラフェンは、最大10層を有する、複数のグラフェン粒子を含む車両用内装トリムパネル。
【請求項15】
ウレタンおよびグラフェンを含む、
成形された可撓性を有する外側スキンであって、
前記グラフェンは、
前記ウレタンと混合される、最大10層を有する複数のグラフェン粒子を含む外側スキンと、
前記外側スキンよりも堅い内側基材と、
前記外側スキンの一部分と前記内側基材との間に位置し、かつ、前記外側スキンの一部分を前記内側基材に付着させる可撓性フォームと、
前記外側スキンの裏側表面が部分的に切断された脆いエアバッグのテアシームと、を含み、車輪付き自動陸上車両のインストルメントパネルであ
って、EMI遮蔽性を有する、インストルメントパネル。
【請求項16】
車両用内装トリムパネルの製造方法であって、
TPUとグラフェンとを混合する工程と、
前記グラフェンは、
前記TPU全体にわたって混合された、最大10層を有する複数のグラフェン粒子を含み、
前記TPUとグラフェンとの混合物を溶融押出しする工程と、
安定剤および相溶化剤のうちの少なくとも1つを、前記TPUに添加する工程と、
前記グラフェン
と前記TPUとを混合したペレットを作出する工程と、
前記ペレットを粉砕する工程と、
前記粉砕したペレットをモールドに配置する工程と、
前記モールドを回転させて、EMI遮蔽の特性を有
し、基材に取り付け可能な、前記車両用内装トリムパネルの可撓性の
外側スキンを作製する工程と、を含む、車両用内装トリムパネルの製造方法。
【請求項17】
180~220℃で前記TPU中の前記グラフェンの層を剥離する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材を射出成形する工程と、
前記
外側スキンの一部分と前記基材との間に柔軟なフォームを射出する工程と、をさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記
外側スキンの裏側表面にテアシームを切り込む工程と、
前記
外側スキン中に80~97重量%の前記TPUを使用する工程と、
前記
外側スキン中に1~20重量%の前記グラフェンを使用する工程と、
前記
外側スキン中に2~4重量%の相溶化剤および/または安定化剤を使用する工程と、をさらに含む、請求項16から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記グラフェンは、原料形態で6~10層を有するナノ粒子を含む、請求項16から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
-30℃でのエアバッグ展開によるスキン破砕が生じない、請求項16から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記
外側スキンの伸びは、120℃で500時間熱老化させても30%を超えて変化しない、請求項16から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記
外側スキンの前記EMI遮蔽の効果は5~10dBである、請求項16から22のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して内装トリムパネルに関し、より詳細には、ウレタンおよびグラフェンの内装トリムパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインストルメントパネルのスキンは、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、熱可塑性ポリオレフィン(「TPO」)、および熱可塑性エラストマー(「TPE」)を含む様々な高分子材料から作製される。これらのスキンは、スラッシュ回転成形または熱成形のような方法によって作製することができる。一例が、Farrarによって発明された「Polyvinylchloride for Seamless Airbag Doors」と題された米国出願公開第2017/0240736号、および2009年7月14日にTanseyに特許付与された「PVC Alloy for Use in Air Bag Doors」と題された米国特許第7,560,515号に開示されている。これらの両方が参照により本明細書に援用される。
【0003】
かつては、インストルメントパネルに組み付けられたセパレートのエアバッグドアには、TPUが使用されていた。より最近では、1998年10月20日にHumphreyらに特許付与された「Light Stable Aliphatic Thermoplastic Urethane Elastomers and Method of Making of Same」と題された米国特許第5,824,738号は、スラッシュ成形によって形成された光安定性の脂肪族熱可塑性ポリウレタンの伝統的な使用を論じている。この特許は本明細書に参照として援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国出願公開第2017/0240736号
【文献】米国特許第7,560,515号
【文献】米国特許第5,824,738号
【文献】韓国特許第2014‐0005684号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のTPUは、エアバッグカバードアのテアシームが、ナイフなどでスキンに刻み目を付けることによって意図的に形成される場合に、望ましくない「自己治癒」または再結合を生ずる。さらに、脂肪族TPUおよびPVCのブレンド/合金は、内装部品の使用期間に高熱に曝されると、徐々に、それらの元の物理的な特性の低減を示し、また脆弱になる傾向があると考えられている。
【0006】
韓国特許第2014‐0005684号では、30~40重量%のグラフェンパウダを含有する熱可塑性ポリウレタンフィルムが開示されている。この非常に高濃度のグラフェンは、望ましくないことに、TPUを硬くし、また堅くする。したがって、その可撓性の欠如によって、モールドからフィルムを取り外すことが困難となる。そして、最終製品は、車両乗員にとって望ましい、柔らかい感触と衝撃吸収性を欠き、また、十分なエアバッグ展開を可能にするために必要な曲げ特性が含まれない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ウレタンおよびグラフェンの内装トリムパネルが提供される。別の態様では、該内装トリムパネルは、自動車両のインストルメントパネル、エアバッグカバー、ドアトリムパネル、センターコンソール、ニーボルスタ、シート機構カバー、ピラーカバーなどであってもよい。さらなる態様は、グラフェン注入熱可塑性ポリウレタン化合物を含み、より具体的には、粉砕し、成形し、そして車両内装用に用いることができる、TPU‐グラフェン組成物または混合物を含む。ウレタンおよびグラフェンの内装トリムパネルを作製する方法も開示される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る装置および方法は、従来のものに比べて有利である。例えば、本発明に係るグラフェン注入熱可塑性ポリウレタンは、電磁干渉(「EMI:electromagnetic interference」)遮蔽特性の改善に加えて、熱性能の向上をもたらす。さらに、本発明に係る方法は、粉砕プロセスを採用する。当該粉砕プロセスは、PVCおよびTPUのような従来の低温展開可能グレードのプラスチックと比較して、スラッシュ成形または回転成形の間に優れた流動性および粘度を有する、最終製品をもたらす。本発明に係る装置および方法は、有利な濃度のグラフェンを使用する。当該有利な濃度のグラフェンは、最終的なパネルの可撓性および柔軟性を維持しながら、該トリムパネルに組み付けられた、またはその背後に配置された、電子制御装置、センサなどの電子部品の所望の電磁干渉遮蔽を達成する、。
【0009】
さらなる特徴および利点は、添付の図面と併せて以下の説明および特許請求の範囲から確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る内装トリムパネルを示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る内装パネルを示す、
図1の線2-2に沿った断面図である。
【
図3】本発明に係る内装トリムパネルの製造方法を示す模式図である。
【
図4】本発明に係る内装トリムパネルを製造するための方法の工程を示すダイアグラムフローチャートである。
【
図5】本発明に係る内装トリムパネルを製造するための方法の工程を示すダイアグラムフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
車輪付き陸上自動車の内装トリムパネルを
図1および
図2に示す。内装トリムパネルは、好ましくはインストルメントパネル11である。あるいは、内装トリムパネルは、センターコンソール13、セパレートエアバッグカバー、ドアトリムパネル、センターコンソール、ニーボルスタ、シート機構カバー、ピラーカバー等を含んでもよい。インストルメントパネル11は、外側スキン15と、中間の柔軟なフォーム層17と、内側の堅い基材19(基板)とを含む。
【0012】
スキン15の一部分は、シュート25を含むエアバッグアセンブリ23を背後に備える一体型エアバッグドア21として作用する。エアバッグドア21は、膨張するエアバッグがスキン15のテアシーム31を破裂させると、略水平に伸長した基材エッジ27に隣接する上部屈曲線または下部屈曲線の周囲に蝶着または枢着する。「縫い目のない(シームレス)」または縫い目が隠れた様式のスキン15が好ましい。そのため、テアシーム31はスキンの裏面にあり、車両の乗員またはユーザには見えない。テアシーム31は好ましくはH字形状を有するが、U字形状やX字形状のような他の構成を採用することもできる。
【0013】
テアシーム31は、スキン15が形成された後に、その裏側表面に沿って水平にスライドする、ガントリ駆動レーザ(gantry driven laser)または関節式ロボット駆動ナイフを用いて作成することができる。切り込みを入れた後に残っているテアシーム31材の厚さは、0.3~0.66mmの間であり、平均は0.50mmである。テアシームをより薄くすることも可能であるが、テアシームの厚さが0.457mm未満である場合、部品の表面を通して切り込み線が読取られるであろう。したがって、切り込みの深さはスキンの厚さの半分よりも大きいが、全部よりも小さい。スキンにおける切り込み線は、120℃で1000時間熱に曝された場合にいかなる治癒または再結合も示さない。言い換えれば、グラフェン注入TPUは、自己治癒せず、部分的に切断され分離された壁様式で切り込み線を維持するのに役立つ。
【0014】
TPUとグラフェンとを混合して組み合わせた組成物は、最後のパネルが車両に取り付けられるときに、高温と低温の両方で優れた性能をもたらす。本明細書で使用される当該組成物の引張強度、伸び、および引裂強度は、120℃で500時間熱老化後させても±30%を超えて変化しないはずである。より詳しくは、好ましい実施形態では±15%を超えて逸脱しないことが予想される。さらに、物性は、寒冷気象でのエアバッグ展開の指標としての-30℃でも機能している。-30℃における老化なしの物性は、300%を超える伸び値を有する室温での性質と一致することが予想される。このことは、この材料がこの温度でのエアバッグ展開中に破砕しないはずであるということを示す指標である。
【0015】
スキン15全体は、混合された、グラフェン注入熱可塑性ポリウレタンのドライブレンドから作製され、必要に応じて、無水マレイン酸およびエチレン酢酸ビニル(「EVA」)などの一対の相溶化剤を含んでもよい。好ましい原料グラフェンナノ粒子41は、6~10層を有する、機械的に剥離されたグラフェンパウダ形態であり、平均約40μmのフレークサイズを有する。前記グラフェンパウダは、スキン15、ならびに、当該スキンがその一部を形成する最終的に作られたインストルメントパネルが、EMI遮蔽、力学的(機械的)特性の向上、熱放散、静電気放電、帯電防止、UV耐性、およびガスバリア機能を達成することに寄与する。さらに、TPUマトリックス中でのグラフェン層の剥離は、耐熱性の程度を制御し、剥離が大きい(多い)ほど、耐熱性、伝導性およびEMI遮蔽が大きくなる。
【0016】
好ましいTPU脂肪族は、500~700kg/m3の嵩密度を有する。好ましい懸濁グレードの樹脂は、脂環式イソシアネートとポリエーテルポリオールとの反応から製造されるCovestro製のTexin(登録商標) 3042である。さらに、相溶化剤としては、無水マレイン酸グラフト重合TPUおよび/または無水マレイン酸グラフト重合ポリプロピレン/ポリエチレン(例えば、Westlake製のEpolene(登録商標) E‐43/C‐19)、無水プロピレンマレイン酸共重合体(例えば、Honeywell製のA-C(登録商標) 597P)、およびエチレン酢酸ビニル共重合体(例えば、Honeywell製のA-C(登録商標) 400A)が挙げられ得る。無水マレイン酸/エチルビニルコアセテートは、好ましくは全ブレンド配合の1~8重量%、より好ましくは2~5重量%であり、所望の力学的特性に寄与する。
【0017】
スラッシュ成形(回転成形またはロートキャスティング(rotocasting)としても知られている)後、エアバッグ領域21におけるスキン15の代表的な平均材料厚さは約1.10mmであるが、0.70mm程度に薄くすることができる。非限定的な例として、通常の許容範囲は、好ましくは0.9~1.1mmである。複合後、材料は-30~-65℃のガラス転移温度値を有する。
【0018】
ここで
図3および4を参照すると、グラフェン41および熱可塑性ポリウレタン43の組成物は、二軸スクリュー押出機45に供給され、次いで溶融ブレンドされ、続いて粉砕されてスラッシュグレードのパウダが得られる。任意選択の添加剤47、例えば光およびUV安定剤、相溶化剤、着色顔料などを添加してもよい。この配合は、自動車車両の内部におけるシームレスエアバッグ用途に理想的に適した高性能スラッシュTPUをもたらす。
【0019】
スキン15は、以下のプロセスを使用して作成してもよい。押出の熱プロフィールは180~220℃である。所定量のTPU、着色顔料、および安定剤-添加剤パッケージを押出機45に供給し、次いでグラフェンを添加する。押出工程は、グラフェン層をTPUマトリックス中に分散させ、混合するのに役立つ。次に、スラリーブレンドを押出機ノズルからポンプで送り出し、水中でペレット化する。次に、そこから得られた乾燥ペレット51を粉砕機53に送り、スラッシュグレードのパウダ55を得る。粉砕機は、極低温粉砕、水中粉砕、微粉砕(pulverize)、湿式/乾式粉砕などを行ってもよい。
【0020】
図3および
図4に示されるように、ニッケルベースの金属から作られた多部品スラリーモールド61は180℃~250℃に予熱される。パウダ55はモールド61の内部の閉じられたパウダボックス内に配置される。機械は、パウダ55を前記ボックス内で溶融しつつ、モールド61を回転させる。このボックスは、当該パウダが液化されると、前記モールド内で自動的にクランプ解除され、開放される。それによって、前記モールドが加熱され回転している間に、液体TPU‐グラフェン混合物が分散し、モールド内部表面を完全にコーティングする。続いて、この混合物はモールド61内で硬化し、当該モールドは約50℃まで冷却する。その後、前記モールドは開かれ、可撓性のスキンは当該モールドから離型または取り外すことができる。
【0021】
ナイフまたはレーザによる切り込みによって、前述のように、前記スキンの裏面にテアシームを部分的に刻む。続いて、切り込みを入れたスキンを別の第2のモールドキャビティ内に配置し、予め射出成形された堅いポリマー基材(基板)を、前記スキンと前記ポリマー基材との間に局所的なギャップを有するように第2のモールドキャビティ内に挿入する。この第2のモールドを閉じ、オープンセルソフトフォームを第2のモールド内のスキンと基材との間のギャップに射出する。このプロセスは、「現場発泡(foam-in-place)」または低圧射出成形プロセスと呼ぶことができる。次いで、前記フォームを硬化させ、完成した内装トリムパネルを第2のモールドから取り出す。さらに、貫通孔を形成してもよく、その後、ブラケット、クリップ、ファスナ、装飾アップリケ、HVACコンセントなどの追加の構成要素を内装トリムパネルに組み付けて、トリムパネルサブアセンブリまたはモジュールを作成してもよい。
【0022】
一例では、前記スキンの材料は、80~95重量%のTPU樹脂と、1~20重量%のグラフェンと、1~5重量%の無水物相溶化剤とを有する。一例では、原料グラフェンパウダは、最大10層を有していてもよい。
【0023】
エアバッグの展開において、-30℃でのエアバッグ展開由来および2分の遅延由来の、スキンの破砕は起こらないはずである。スキン材料の伸びは、120℃で熱老化させても+30%を超えて変化しない。さらに、スキン材料の引張強度は、120℃で熱老化させても+30%を超えて変化しない。そのうえ、テアシームでの引裂強度は、120℃で熱老化させても30%を超えて変化しない。
【0024】
安息角(「Angle of Repose:AOR」)は、通常の大気の状態下で物質が流動する能力を測定するために用いることのできる、単純な試験によって決定される。パウダは、汎用的な目的でなければ、いくつかの流動性のクラスに分割することができる。30°未満の角度は、物質が優れた流動性を有することを示す。40°未満なら中程度の流動性だということになる。45°を超えると、物質の流動性が乏しいことを示す。可撓性スキンの材料の流動能力は、当該材料の摩擦係数、当該材料の密度、当該材料の粒子のサイズ、形状/ポロシティ、ならびに使用される樹脂および可塑剤系の含有量および種類を含む、多くの因子に帰することができる。一例として、インストルメントパネル用に製造された高度に可塑化されたPVCは、良好な低温性能を有し、高い安息角(45°を超える)を有する。これは、乏しい物質流動性、スクラップの増加、および所与の部品設計を許容する幾何学的自由度の減少をもたらす。対照的に、本明細書に記載の、本発明に係るグラフェンを使用する材料は、優れた流動性を有し、スクラップの減少、設計自由度の増加、および粒状構造の改善をもたらす。本発明に係るTPU-グラフェン材料の安息角は26~34°である。
【0025】
電磁干渉(Electromagnetic interference(EMI))は、破壊的な電磁エネルギーが放射経路または伝導経路、あるいはその両方を介して、1つの電子デバイスから別の電子デバイスに伝達されるプロセスである。自動車の電子システムでは、EMIが内部で集積回路の性能に悪影響を及ぼすばかりでなく、近接している他の電子部品の性能にも悪影響を及ぼす可能性がある。本発明に係るグラフェンナノ粒子は、EMIを遮蔽するのに理想的に適した導電性充填剤であり、この問題を効果的に抑制または軽減する。本グラフェン注入TPUは、適度に高い導電率(約1S・m-1)を示す。さらに、本発明に係るグラフェン注入TPU材料について得られるEMI遮蔽効果は、5~10dBである。
【0026】
水中粉砕を用いる場合、次の粒度分布を有する球状粒子を形成することができる。
【0027】
【0028】
実施形態の前述の説明は例示の目的で提供されており、変形例が想定される。例えば、幾つかの利点が達成できないかもしれないが、前記テアシームおよび/またはエアバッグドアは、異なる形状または配置であってもよい。さらに、前記基材は、任意選択で、一体成形フランジまたはオフセット角度付き壁を備えていてもよい。中間のフォーム層が開示されているが、しかしながら、いくつかのトリムパネルについては省略されてもよい。ただし、現在の利点のいくつかは観察されないかもしれない。本内装トリムパネルは、代替的に、飛行機、船舶および列車の車両を含む他の輸送車両に使用することができる。特定の実施形態の個々の要素または特徴は、概してその特定の実施形態に限定されず、適用可能な場合には、交換が可能であり、たとえ具体的には図示または説明されていなかったとしても、選択した実施形態で使用することができる。そして、従属請求項のすべては、任意の組合せで多数項従属としてもよい。そのような変形は、本開示からの逸脱と見なされるべきではなく、そのような修正はすべて、本開示の範囲および精神の中に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0029】
11 インストルメントパネル
13 センターコンソール
15 スキン
17 フォーム層
19 基材
21 エアバッグドア
23 エアバッグアセンブリ
25 シュート
27 基材エッジ
31 テアシーム
41 グラフェン
43 熱可塑性ポリウレタン
45 押出機
47 添加剤
51 乾燥ペレット
53 粉砕機
55 パウダ
61 モールド