(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0587 20100101AFI20230517BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20230517BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230517BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20230517BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/133
(21)【出願番号】P 2021073929
(22)【出願日】2021-04-26
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 将史
(72)【発明者】
【氏名】竹野 一基
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059131(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157416(WO,A1)
【文献】特開2016-110969(JP,A)
【文献】特開2014-194852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 10/0567
H01M 10/052
H01M 4/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と電極体と電解液とを含み、
前記外装体は、前記電極体と前記電解液とを収納しており、
前記電極体は積層体を含み、
前記積層体は、正極板とセパレータと負極板とを含み、
前記セパレータは、前記正極板と前記負極板とを分離しており、
前記積層体は渦巻状に巻回されており、
前記積層体の巻回軸と直交する断面において、前記電極体は、角丸長方形状の輪郭線を有し、
前記輪郭線は、第1弧状部と直線部と第2弧状部とからなり、
前記直線部は、2本の線分からなり、
前記直線部は、前記第1弧状部と前記第2弧状部とを接続しており、
前記輪郭線は、1.20から1.35の高さ比を有し、
前記高さ比は、式(α):
R
1=H
0/H
1 …(α)
により求まり、
前記式(α)中、
R
1は、前記高さ比を示し、
H
0は、前記輪郭線上において、最も離れた2点間の距離を示し、
H
1は、2本の前記線分の平均長さを示し、
前記セパレータは、第1主面と第2主面とを含み、
前記第1主面は、前記負極板と接触しており、
前記第1主面と前記負極板との間の第1動摩擦係数は0.52から0.66である、
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記負極板は負極活物質層を含み、
前記負極活物質層は前記第1主面と接触しており、
前記負極活物質層は負極活物質粒子を含み、
前記負極活物質粒子は、0.60から0.85の真円度の中央値を有する、
請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記負極活物質層は、帯状の平面形状を有し、
前記電極体は、2.0から2.5のアスペクト比を有し、
前記アスペクト比は、式(β):
R
2=W/H
1…(β)
により求まり、
前記式(β)中、
R
2は、前記アスペクト比を示し、
Wは、前記負極活物質層の幅方向の長さを示し、
H
1は、2本の前記線分の前記平均長さを示す、
請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記第2主面は、前記正極板と接触しており、
前記第2主面と前記正極板との第2動摩擦係数は0.70から0.85である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記電解液はプロピオン酸メチルを含む、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2007/037145号(特許文献1)は、負極とセパレータとの間に、非水電解質の浸透性に優れた多孔質層を配置することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)は、電極体を含む。電極体は積層体を含む。積層体は、正極板とセパレータと負極板とが積層されることにより形成される。電極体は巻回型であり得る。すなわち積層体が渦巻状に巻回されることにより、電極体が形成され得る。巻回型の電極体は扁平状に成形されることもある。電極体が扁平状に成形されることにより、電極体が平坦部と湾曲部とを含むことになる。平坦部では積層体が平坦である。湾曲部では積層体が湾曲している。
【0005】
電極体には電解液が含浸される。電解液は、電極体内の空隙(例えば電極間の隙間等)に浸透し得る。電極体は充電時に膨張し、放電時に収縮し得る。主に負極板が充電時に膨張し、放電時に収縮するためと考えられる。充電時、電極体が膨張すると共に、電極体内の空隙が減少し得る。空隙の減少により、電極体から電解液が排出され得る。放電時、電極体が収縮すると共に、電極体内の空隙が増加する。空隙の増加により、電極体の周囲の電解液が、電極体に吸収され得る。しかし放電時の電解液の吸収量は、充電時の電解液の排出量に比して小さい傾向がある。そのため、電池が長期間にわたって使用された場合、電極体内において電解液が枯渇する可能性がある。電解液の枯渇により、例えば、リチウム(Li)が析出する可能性がある。
【0006】
本技術の目的は、長期使用に伴うLiの析出を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含む。作用メカニズムは本技術の範囲を限定しない。
【0008】
1.非水電解質二次電池は、外装体と電極体と電解液とを含む。外装体は、電極体と電解液とを収納している。電極体は積層体を含む。積層体は、正極板とセパレータと負極板とを含む。セパレータは、正極板と負極板とを分離している。積層体は渦巻状に巻回されている。
積層体の巻回軸と直交する断面において、電極体は、角丸長方形状の輪郭線を有している。輪郭線は、第1弧状部と直線部と第2弧状部とからなる。直線部は、2本の線分からなる。直線部は、第1弧状部と第2弧状部とを接続している。輪郭線は、1.20から1.35の高さ比を有する。
高さ比は、下記式(α):
R1=H0/H1 …(α)
により求まる。
上記式(α)中、R1は高さ比を示す。H0は、輪郭線上において、最も離れた2点間の距離を示す。H1は、2本の線分の平均長さを示す。
セパレータは、第1主面と第2主面とを含む。第1主面は負極板と接触している。第1主面と負極板との間の第1動摩擦係数は0.52から0.66である。
【0009】
本技術においては、「高さ比(R1)」と「第1動摩擦係数」とが特定の範囲内にあることにより、長期使用に伴うLiの析出が軽減され得る。
【0010】
電極体は巻回型である。電極体は扁平状である。巻回軸と直交する断面において、電極体の輪郭線は、角丸長方形状である。輪郭線上において、最も離れた2点を結ぶ線分は、長軸とも記される。長軸と平行な方向は、「高さ方向」とも記される。高さ方向の寸法は、「高さ寸法」とも記される。なお高さ方向は呼称に過ぎない。高さ方向と鉛直方向との関係は任意である。
【0011】
輪郭線の長軸の長さは、「電極体の高さ寸法(H
0)」である。輪郭線の直線部は、2本の線分からなる。直線部は、電極体の平坦部の輪郭線である。2本の線分に挟まれた部分が、平坦部に相当する。2本の線分の平均長さは、「平坦部の高さ寸法(H
1)」である。電極体の高さ寸法(H
0)は、平坦部の高さ寸法(H
1)と、湾曲部の高さ寸法(H
2)との合計である(
図4参照)。高さ比(R
1=H
0/H
1)が大きい程、電極体における平坦部の構成比が小さいことを示す。別言すれば、高さ比が大きい程、電極体における湾曲部の構成比が大きいことを示す。
【0012】
湾曲部は、平坦部に比して、電極間の隙間が広い傾向がある。充電時、平坦部においては、電解液に高い圧力が加わる。電極間の隙間が狭いためと考えられる。平坦部から押し出された電解液の一部は、相対的に圧力が低い湾曲部に押し出される。高さ比が大きいことにより(すなわち湾曲部の構成比が大きいことにより)、充電時、湾曲部に貯留できる電解液の量(以下「貯留量」とも記される。)が増加する傾向がある。湾曲部が適度な貯留量を有することにより、充電時、湾曲部がバッファ機能を有し得る。すなわち、平坦部から押し出された電解液が湾曲部に一時的に留まることにより、電極体からの電解液の排出量が減少することが期待される。その結果、電極体における電解液の枯渇が軽減されることが期待される。ただし、貯留量が過度に多くなると、却ってLiの析出等が促進される可能性がある。すなわち、電解液が湾曲部に留まりやすいことにより、電極体内における電解液の分布が不均一となり得る。その結果、電極反応が不均一になり、局所的にLiが析出する可能性がある。高さ比が、1.20~1.35である時、湾曲部が適度な貯留量を有し得る。
【0013】
第1動摩擦係数は、セパレータと負極板との間における、電解液の浸透性を反映していると考えられる。セパレータは多孔質である。セパレータの表面は微小な凹凸を有し得る。負極板の表面も微小な凹凸を有し得る。負極板の表面の起伏が大きくなることにより、セパレータと負極板との間の摩擦力が大きくなり、第1動摩擦係数が大きくなると考えられる。負極板の表面の起伏が大きくなることにより、セパレータと負極板との間に、凹凸による隙間が形成されると考えられる。該隙間は電解液の浸透経路になり得る。第1動摩擦係数が大きい程、セパレータと負極板との間における、電解液の浸透性が向上する傾向がある。セパレータと負極板との間における、電解液の浸透性が向上することにより、電極体が電解液を吸収する際に、電解液が電極体の内部まで戻りやすくなることが期待される。その結果、Liの析出が軽減されることが期待される。電極体内における電解液の分布にムラが生じ難いためと考えられる。ただし電解液の浸透性が過度に高くなると、却ってLiの析出等が促進される可能性がある。すなわち電解液の浸透性が過度に高くなることにより、電極体から電解液が流出しやすくなる可能性がある。電解液の流出により、電解液の枯渇が促進される可能性がある。第1動摩擦係数が0.52~0.66である時、セパレータと負極板との間において、電解液が適度な浸透性を示し得る。
【0014】
以上の作用の相乗により、本技術においては、長期使用に伴うLiの析出が軽減されることが期待される。
【0015】
2.負極板は負極活物質層を含む。負極活物質層は第1主面と接触している。負極活物質層は負極活物質粒子を含む。負極活物質粒子は、0.60から0.85の真円度の中央値を有していてもよい。
【0016】
真円度の中央値が大きい程、負極活物質粒子が球形に近いことを示す。負極板の表面の起伏は、隣接する粒子間の溝に対応し得る。負極活物質粒子が適度に丸みを帯びることにより、溝が深くなる傾向がある。逆に、真円度の中央値が小さい場合、負極板または電極体が圧縮成形される際に、負極活物質粒子が負極板の面方向に横たわって配置されやすい。「面方向」は、負極板の厚さ方向と直交する方向を示す。負極活物質粒子が面方向に横たわると、隣接する粒子間の溝が浅くなる傾向がある。真円度の中央値が0.60~0.85である時、負極板の表面に適度な起伏が形成され得る。負極板の表面に適度な起伏があることにより、0.52~0.66の第1動摩擦係数が得られやすくなり得る。
【0017】
3.負極活物質層は、帯状の平面形状を有する。電極体は、2.0から2.5のアスペクト比を有していてもよい。
アスペクト比は、下記式(β):
R2=W/H1…(β)
により求まる。
上記式(β)中、R2はアスペクト比を示す。Wは、負極活物質層の幅方向の長さを示す。H1は、2本の線分の平均長さを示す。
【0018】
負極活物質層の幅方向は、電極体の幅方向に対応する。電極体の幅方向は、巻回軸と平行であり得る。幅方向の両端から、電解液が電極体から排出され得る。幅方向の両端は、電解液の出口と考えられる。
【0019】
負極活物質層の幅方向の長さは、「平坦部の幅寸法(W)」である。電極体の輪郭線において、直線部の長さ(2本の線分の平均長さ)は、「平坦部の高さ寸法(H1)」である。よってアスペクト比(R2)は、平坦部のアスペクト比とも考えられる。
【0020】
アスペクト比(R2)が大きい程、平坦部の中心から見た時、幅方向の両端(出口)よりも、湾曲部(バッファ)が相対的に近くなり得る。よって、出口に向かって移動する電解液よりも、バッファに向かって移動する電解液が相対的に多くなり得る。アスペクト比(R2)が2.0~2.5である時、長期使用に伴う電解液の枯渇が軽減される傾向がある。電極体から電解液が流出し難くなるためと考えられる。
【0021】
4.第2主面は、正極板と接触している。第2主面と正極板との第2動摩擦係数は0.70から0.85であってもよい。
【0022】
第2動摩擦係数は、正極板の表面の凹凸を反映していると考えられる。第2動摩擦係数が大きい程、正極板の表面の起伏が大きいと考えられる。正極板の表面の起伏が大きいことにより、正極板とセパレータとの間に、隙間が形成され得る。セパレータと正極板との間の隙間も、電解液の浸透経路となり得る。第2動摩擦係数が0.70~0.85である時、初期抵抗が小さくなることが期待される。さらに、充放電サイクル後の抵抗増加率も小さくなることが期待される。正極板の表面と、負極板の表面とに、それぞれ適量の電解液が分配され得るためと考えられる。
【0023】
5.電解液はプロピオン酸メチルを含んでいてもよい。
【0024】
プロピオン酸メチル(MP)を含む電解液は、低粘度を有し得る。電解液が低粘度を有することにより、電極体内における電解液の分布が均一になりやすい傾向がある。電解液の浸透が促進されるためと考えられる。さらに、電解液がMPを含むことにより、初期抵抗、および充放電サイクル後の抵抗増加率が改善することも期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における電極体の輪郭線の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、動摩擦係数の測定方法を示す概略図である。
【
図6】
図6は、第1動摩擦係数の測定結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本技術の実施形態(本明細書においては「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。例えば本明細書中の作用効果に関する記載は、当該作用効果が全て奏される範囲内に、本技術の範囲を限定しない。
【0027】
<用語の定義等>
本明細書において、「備える、含む(comprise, include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(encompass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry, support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に…からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須要素に加えて追加要素をさらに含んでいてもよい。例えば、本技術の属する分野において通常想定される要素(例えば不可避不純物等)が、追加要素として含まれていてもよい。
【0028】
本明細書において、「…してもよい(may)、…し得る(can)」等の表現は、義務的な意味「…しなければならない(must)という意味」ではなく、許容的な意味「…する可能性を有するという意味」で使用されている。
【0029】
本明細書において、単数形(a, an, the)で表現される要素は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も意味し得る。
【0030】
本明細書において、例えば「1μmから10μm」および「1~10μm」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「1μmから10μm」および「1~10μm」は、いずれも「1μm以上10μm以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分、表中、図中等に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0031】
本明細書において、全ての数値は用語「約」によって修飾されている。用語「約」は、例えば±5%、±3%、±1%等を意味し得る。全ての数値は、本技術の利用形態によって変化し得る近似値である。全ての数値は有効数字で表示される。全ての測定値等は有効数字の桁数に基づいて、四捨五入により処理され得る。全ての数値は、例えば測定装置の検出限界等に伴う誤差を含み得る。
【0032】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「平行」、「垂直」、「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0033】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。さらに、微量元素によるドープ、置換等も許容され得る。
【0034】
<非水電解質二次電池>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両等において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。電池100は、例えば1~200Ahの定格容量を有していてもよい。
【0035】
電池100は外装体90を含む。外装体90は、電極体50と電解液(不図示)とを収納している。すなわち電池100は電極体50と電解液とを含む。例えば、電解液の一部が、外装体90の底部に貯留されていてもよい。電極体50の一部が、電解液に浸っていてもよい。電極体50は、例えば袋状のホルダ(不図示)に保持されていてもよい。
【0036】
外装体90は、任意の形態を有し得る。外装体90は、例えばアルミニウム(Al)合金製のケース等であってもよい。外装体90は、例えばAlラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0037】
外装体90は、例えば角形(扁平直方体状)であってもよい。外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ加工等により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。
【0038】
封口板91に、正極端子81と負極端子82とが設けられていてもよい。封口板91に、注入口(不図示)、ガス排出弁(不図示)等がさらに設けられていてもよい。注入口から外装体90の内部に電解液が注入され得る。注入口は、例えば封止栓等によって閉塞され得る。正極集電部材71は、正極端子81と電極体50とを接続している。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。負極集電部材72は、負極端子82と電極体50とを接続している。負極集電部材72は、例えば銅(Cu)板等であってもよい。
【0039】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
電極体50は積層体40を含む。電極体50は、実質的に積層体40からなっていてもよい。積層体40は、正極板10とセパレータ30と負極板20とを含む。セパレータ30の少なくとも一部は、正極板10と負極板20との間に介在している。セパレータ30は、正極板10と負極板20とを分離している。積層体40は、1枚のセパレータ30を単独で含んでいてもよい。積層体40は、2枚のセパレータ30を含んでいてもよい。例えば正極板10が2枚のセパレータ30に挟まれていてもよい。例えば負極板20が2枚のセパレータ30に挟まれていてもよい。積層体40は、例えば、セパレータ30(第1セパレータ)と、負極板20と、セパレータ30(第2セパレータ)と、正極板10とがこの順序で積層されることにより形成されていてもよい。正極板10、負極板20およびセパレータ30の各々は、例えば帯状の平面形状を有し得る。
【0040】
電極体50は巻回型である。すなわち積層体40は渦巻状に巻回されている。例えば、円柱状の巻き芯に積層体40が巻き取られることにより、筒状の巻回体が形成されてもよい。筒状の巻回体が径方向に圧縮されることにより、扁平状の電極体50が形成されてもよい。例えば巻き芯の直径等により、後述の高さ比(R1)が調整され得る。例えば、巻き芯の直径が小さくなる程、高さ比(R1)が大きくなる傾向がある。
【0041】
図3は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略断面図である。
図3には巻回軸と直交する断面が示されている。電極体50は、平坦部51と湾曲部52とを含む。平坦部51においては、積層体40が平坦である。湾曲部52においては、積層体40が湾曲している。平坦部51は、2つの湾曲部52に挟まれている。平坦部51は、2つの湾曲部52を接続している。湾曲部52は、平坦部51に比して、電極間の隙間が広い傾向がある。
【0042】
平坦部51は、成形時に、成形金型に押圧された部分であり得る。湾曲部52は、成形時に、成形金型と接触しなかった部分であり得る。電極体50の最外周において、平坦部51におけるセパレータ30の厚さは、湾曲部52におけるセパレータ30の厚さに比して薄いことがあり得る。例えば、最外周におけるセパレータ30の厚さの変化により、平坦部51と湾曲部52との境界が特定され得る。
【0043】
(積層数)
各部材の積層数は、電極体50の径方向(例えば
図3のY軸方向)に、電極体50を横断する直線が、対象部材と交差する回数を示す。正極板10は、例えば60~80の積層数を有していてもよい。負極板20は、例えば60~80の積層数を有していてもよい。セパレータ30は、例えば120~160の積層数を有していてもよい。
【0044】
(高さ比)
図4は、本実施形態における電極体の輪郭線の一例を示す概略図である。
図4には、
図3の電極体50の輪郭線が示されている。電極体50は、角丸長方形状の輪郭線L
0を有する。輪郭線L
0は、第1弧状部L
1と、直線部L
3と、第2弧状部L
2とからなる。
【0045】
第1弧状部L1および第2弧状部L2の各々は、湾曲部52の輪郭線である。第1弧状部L1および第2弧状部L2の各々は、弧を描いている。第1弧状部L1および第2弧状部L2の各々は、円弧状であってもよいし、楕円弧状であってもよいし、半円弧状であってもよいし、半楕円弧状であってもよい。
【0046】
直線部L3は、平坦部51の輪郭線である。直線部L3は、2本の線分からなる。2本の線分の各々は、第1弧状部L1と第2弧状部L2とを接続している。
【0047】
輪郭線L0は、1.20~1.35の高さ比(R1)を有する(上記式(α)参照)。高さ比(R1)は、2本の線分の平均長さ(H1)に対する、長軸の長さ(H0)の比である。平均長さ(H1)は、直線部L3を構成する2本の線分の長さの算術平均である。長軸の長さ(H0)は、輪郭線L0上において、最も離れた2点間の距離である。すなわち長軸の長さ(H0)は、第1弧状部L1の先端と第2弧状部L2の先端との距離である。先端は、高さ方向(Z軸方向)に最も突出した部分を示す。各部の長さは、例えばノギス等により測定され得る。例えば、ミツトヨ社製のデジタルノギス(定圧タイプ)等、またはこれと同等品が使用されてもよい。各部の長さは、例えば画像寸法測定器等により測定されてもよい。
【0048】
高さ比(R1)が1.20~1.35である時、長期使用に伴うLiの析出が軽減されることが期待される。湾曲部52が電解液のバッファとして機能し得るためと考えられる。輪郭線L0は、例えば1.21~1.30の高さ比(R1)を有していてもよいし、1.22~1.28の高さ比(R1)を有していてもよいし、1.22~1.26の高さ比(R1)を有していてもよい。輪郭線L0は、例えば1.20~1.24の高さ比(R1)を有していてもよいし、1.24~1.35の高さ比(R1)を有していてもよい。
【0049】
《セパレータ》
セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は、例えば10~30μmの厚さを有していてもよい。セパレータ30は、例えば100~400s/100mLの透気度を有していてもよい。本明細書における「透気度」は、「JIS P 8117:2009」に規定される「透気抵抗度(air resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定される。
【0050】
セパレータ30は電気絶縁性である。セパレータ30は、例えば多孔質樹脂層等を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば実質的に多孔質樹脂層からなっていてもよい。多孔質樹脂層は、例えばポリオレフィン等を含んでいてもよい。多孔質樹脂層は、例えば、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ30は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えばPP層とPE層とPP層とがこの順序に積層されることにより形成されていてもよい。セパレータ30は、多孔質樹脂層に加えて、多孔質セラミックス層等をさらに含んでいてもよい。例えば、多孔質セラミックス層は、実質的に、質量分率で1~10%のバインダと、残部のセラミックス粒子とからなっていてもよい。多孔質セラミックス層は、例えばセパレータ30の最表面に配置されていてもよい。
【0051】
(動摩擦係数)
図5は、動摩擦係数の測定方法を示す概略図である。
セパレータ30は、第1主面31と第2主面32とを含む。第1主面31は、負極板20との接触面である。電極体50において、第1主面31は、負極活物質層22と接触している。第2主面32は、第1主面31の反対面である。第2主面32は、正極板10との接触面である。電極体50において、第2主面32は、正極活物質層12と接触している。
【0052】
第1主面31と負極板20との間の第1動摩擦係数は、0.52~0.66である。第1動摩擦係数は、セパレータ30と負極板20との間における電解液の浸透性を反映していると考えられる。第1動摩擦係数が0.52~0.66である時、長期使用に伴うLiの析出が軽減され得る。電解液が適度な浸透性を示すためと考えられる。第1動摩擦係数は、例えば0.54~0.64であってもよいし、0.56~0.62であってもよいし、0.58~0.60であってもよい。第1動摩擦係数は、例えば0.52~0.56であってもよいし、0.56~0.66であってもよい。
【0053】
第2主面32と正極板10との間の第2動摩擦係数は、例えば0.70~0.85であってもよい。第2動摩擦係数は、セパレータ30と正極板10との間における電解液の浸透性を反映していると考えられる。第2動摩擦係数が0.70~0.85である時、初期抵抗が小さくなることが期待される。さらに、充放電サイクル後の抵抗増加率も小さくなることが期待される。第2動摩擦係数は、例えば0.72~0.83であってもよいし、0.74~0.81であってもよいし、0.76~0.79であってもよい。第2動摩擦係数は、例えば0.70~0.72であってもよいし、0.72~0.85であってもよい。
【0054】
動摩擦係数は、次の手順で測定され得る。
電池100が準備される。電池100が完全放電される。ドライボックス内において、電池100(外装体90)が開封される。電池100内から電極体50が回収される。電極体50が解体されることにより、正極板10、セパレータ30および負極板20が回収される。負極板20から第1試料片が切り出される。第1試料片は、負極活物質層22が負極基材21から剥離していない部分から切り出され得る。第1試料片は、例えば湾曲部52に対応する部分から切り出され得る。
【0055】
正極板10から第2試料片が切り出される。第2試料片は、正極活物質層12が正極基材11から剥離していない部分から切り出される。第2試料片は、例えば湾曲部52に対応する部分から切り出され得る。
【0056】
セパレータ30から第3試料片が切り出される。第3試料片は、正極活物質粒子および負極活物質粒子等により、細孔が埋まっていない部分から切り出される。第3試料片は、例えば湾曲部52に対応する部分から切り出され得る。
【0057】
各試料片に付着した電解液が、ジメチルカーボネート(DMC)により洗い流される。各試料片は、ドライボックス内で乾燥される。乾燥後、各試料片がドライボックス内から取り出される。
【0058】
試験装置が準備される(
図5参照)。試験装置は「JIS K 7125:1999」に準拠する。第3試料片(セパレータ30)が、例えば80mm×200mmの平面サイズに切断される。試験テーブル201の表面に、相手材料202が固定される。相手材料202は、例えば粘着テープ等により固定され得る。相手材料202は、第1試料片(負極板20)である。相手材料202は、第3試料片に比して、十分大きい平面サイズを有する。相手材料202と第1主面31とが接触するように、第3試料片が相手材料202の上に配置される。第3試料片の上に、滑り片203が配置される。このとき、第1試料片(負極板20)および第3試料片(セパレータ30)の各々は、少なくとも湾曲部52から切り出された部位が押圧されるように、対向して配置される。滑り片203は、63mm×63mmの平面サイズを有する。滑り片203の底面(第3試料片との接触面)は、例えばフェルトで覆われている。滑り片203の質量は、200g±2gである。摩擦面に対して平行に、第3試料片が引っ張られる。試験速度は100mm/min±10mm/minである。試験速度で第3試料片が移動するのに要する試験力が測定される。試験力はロードセル(不図示)により測定され得る。なお、本明細書における第1~3試料片のサイズは一例である。第1~3試料片のサイズは、例えば、電極板、セパレータ30、電極体50、湾曲部52等のサイズに応じて、適当な大きさに設定され得る。第1~3試料片が、少なくとも滑り片203よりも大きいサイズを有することにより、摩擦係数の測定は可能であると考えられる。
【0059】
図6は、第1動摩擦係数の測定結果の一例を示すグラフである。
第3試料片の変位に対して、試験力がプロットされる。試験開始直後、試験力は直線的に増加し得る。試験力は最大値に達する。試験力は最大値に達した後、漸減する。
【0060】
動摩擦係数は、下記式(γ):
μD=FD/Fp …(γ)
により求まる。
上記式(γ)中、μDは動摩擦係数を示す。FDは、10~30mmの変位範囲における試験力の平均を示す。Fpは、滑り片203の質量によって生じる法線力(1.96N)を示す。第1動摩擦係数は5回測定される。5回の測定値の算術平均が採用される。
【0061】
相手材料202が第2試料片(正極板10)に変更され、かつ相手材料202と第2主面32とが接触するように、第3試料片(セパレータ30)が相手材料202の上に配置されることを除いては、第1動摩擦係数と同様に、第2動摩擦係数が測定され得る。
【0062】
《負極板》
負極板20は負極活物質層22を含む(
図2参照)。負極板20は、実質的に負極活物質層22からなっていてもよい。負極板20は、例えば負極基材21をさらに含んでいてもよい。例えば、負極活物質層22は負極基材21の表面に配置されていてもよい。負極基材21の片面のみに負極活物質層22が配置されていてもよい。負極基材21の表裏両面に負極活物質層22が配置されていてもよい。負極基材21は導電性のシートである。負極基材21は、例えば純Cu箔、Cu合金箔等を含んでいてもよい。負極基材21は、例えば5~30μmの厚さを有していてもよい。負極板20の幅方向(
図2のY軸方向)において、一方の端部に負極基材21が露出していてもよい。負極基材21が露出した部分には、負極集電部材72が接合され得る(
図1参照)。
【0063】
負極活物質層22は、例えば10~150μmの厚さを有していてもよいし、50~100μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、例えば0.5~2.0g/cm3の密度を有していてもよいし、1.0~1.5g/cm3の密度を有していてもよい。負極活物質層22の密度は、負極活物質層22の質量が、負極活物質層22の見かけ体積で除されることにより求まる。見かけ体積は、負極活物質層22内の空隙の体積を含む。
【0064】
(アスペクト比)
負極活物質層22は、帯状の平面形状を有する(
図2参照)。電極体50は、例えば、2.0~2.5のアスペクト比を有していてもよい。アスペクト比(R
2)は、平坦部51の高さ寸法(H
1)に対する、平坦部51の幅寸法(W)の比である(
図2、4参照)。幅寸法(W)は、負極活物質層22の幅方向の長さに相当する。アスペクト比(R
2)が2.0~2.5である時、長期使用に伴う電解液の枯渇が軽減される傾向がある。アスペクト比(R
2)は、例えば2.1~2.4であってもよいし、2.2~2.4であってもよい。アスペクト比(R
2)は、例えば2.0~2.1であってもよいし、2.1~2.5であってもよい。
【0065】
(負極活物質粒子)
負極活物質層22は、セパレータ30の第1主面31と接触している。負極活物質層22は負極活物質粒子を含む。負極活物質層22は、実質的に負極活物質粒子からなっていてもよい。負極活物質粒子は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、珪素、酸化珪素、錫、酸化錫、およびLi4Ti5O12からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。負極活物質粒子は、例えば複合粒子であってもよい。負極活物質粒子は、例えば基材粒子と皮膜とを含んでいてもよい。皮膜は基材粒子の表面を被覆し得る。基材粒子は、例えば天然黒鉛等を含んでいてもよい。皮膜は、例えば非晶質炭素等を含んでいてもよい。
【0066】
負極活物質粒子は任意の形状を有し得る。負極活物質粒子は、例えば球状、塊状、フレーク状等であってもよい。負極活物質粒子は、例えば球形化黒鉛等であってもよい。負極活物質粒子の形状は、負極活物質層22の表面の凹凸に反映され得る。圧縮後の負極活物質層22において、負極活物質粒子が球形に近似した形状を有することにより、粒子間の溝が深くなる傾向がある。その結果、第1動摩擦係数が大きくなることが期待される。圧縮後の負極活物質層22における負極活物質粒子の形状は、例えば、真円度によって評価され得る。
【0067】
(真円度)
真円度は次の手順で測定され得る。圧縮後の負極板20から、所定のサイズの試験片が切り出される。試験片が樹脂材料に包埋される。包埋後の試験片が切断されることにより、負極活物質層22の断面試料が作製される。断面試料は、負極活物質層22の表面に対して垂直な断面を含む。断面試料に対して、清浄化処理(イオンミリング処理)が施される。清浄化後、断面試料がSEM(scanning electron microscope)により観察されることにより、断面SEM画像が取得される。断面SEM画像において、30個の負極活物質粒子がランダムに抽出される。30個の負極活物質粒子の真円度が測定される。30個の真円度から中央値が求められる。
【0068】
個々の粒子の真円度は、下記式(δ):
C=4πS/P2 …(δ)
により求まる。
上記式(δ)中、「C」は真円度を示す。「S」は、粒子の断面像の面積を示す。「P」は、粒子の断面像の周長(輪郭線の長さ)を示す。真円の真円度は1となる。
【0069】
真円度の中央値は、例えば0.60~0.85であってもよい。真円度の中央値が0.60~0.85である時、負極活物質層22の表面に適度な起伏が形成されることが期待される。真円度の中央値は、例えば0.65~0.80であってもよいし、0.70~0.80であってもよい。真円度の中央値は、例えば0.60~0.76であってもよいし、0.76~0.85であってもよい。
【0070】
(粒子サイズ)
負極活物質粒子は、例えば5~20μmのD50を有していてもよいし、9.5~15μmのD50を有していてもよいし、10~12μmのD50を有していてもよい。本明細書における「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%になる粒子径と定義される。体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。例えば、島津製作所製のレーザ回折式粒子径分布測定装置「製品名 SALD-2200」等、またはこれと同等品が使用されてもよい。
【0071】
負極活物質粒子は、例えば5~20μmの算術平均径を有していてもよいし、9.5~15μmの算術平均径を有していてもよいし、10~12μmの算術平均径を有していてもよい。本明細書における「算術平均径」は、圧縮後の負極活物質層22において測定され得る。上記の断面SEM画像において、30個の負極活物質粒子の径が測定される。個々の負極活物質粒子の径は、負極活物質粒子の輪郭線上の最も離れた2点間の距離を示す。30個の径の算術平均が算術平均径とみなされる。負極板20の製造方法によっては、D50と算術平均径との間に差が生じることもあるし、D50と算術平均径とが実質的に同一であることもある。
【0072】
(任意成分)
負極活物質層22は、負極活物質粒子に加えて、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。例えば負極活物質層22は、実質的に、質量分率で0~10%の導電材と、0.1~10%のバインダと、残部の負極活物質粒子とからなっていてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびスチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0073】
《正極板》
正極板10は、例えば正極基材11と正極活物質層12とを含んでいてもよい(
図2参照)。正極基材11は導電性シートである。正極基材11は、例えば純Al箔、Al合金箔等を含んでいてもよい。正極基材11は、例えば10~30μmの厚さを有していてもよい。正極板10の幅方向(
図2のY軸方向)において、一方の端部に正極基材11が露出していてもよい。正極基材11が露出した部分には、正極集電部材71が接合され得る(
図1参照)。
【0074】
正極活物質層12は、正極基材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、正極基材11の表裏両面に配置されていてもよい。正極活物質層12は、例えば10~150μmの厚さを有していてもよいし、50~100μmの厚さを有していてもよい。
【0075】
正極活物質層12は、セパレータ30の第2主面32と接触している。正極活物質層12は正極活物質粒子を含む。正極活物質粒子は、例えば1~30μmの算術平均径を有していてもよい。正極活物質粒子は任意の成分を含み得る。正極活物質粒子は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式においては、括弧内の組成比の合計が1である。すなわち「CNi+CCo+CMn=1」の関係が満たされている。例えば「CNi」はNiの組成比を示す。組成比の合計が1である限り、各成分の組成比は任意である。
【0076】
正極活物質層12は正極活物質粒子に加えて、例えば、導電材、バインダ等をさらに含んでいてもよい。例えば正極活物質層12は、実質的に、質量分率で0.1~10%の導電材と、0.1~10%のバインダと、残部の正極活物質粒子とからなっていてもよい。導電材は、例えばアセチレンブラック等を含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。
【0077】
《電解液》
電解液は液体電解質である。電解液は溶媒と支持電解質とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、炭酸エステル、カルボン酸エステル、エーテル、およびラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。例えば溶媒は、実質的に炭酸エステルからなっていてもよい。例えば溶媒は、炭酸エステルと、カルボン酸エステルとを含んでいてもよい。カルボン酸エステルの配合量は、例えば、100体積部の炭酸エステルに対して、0.1~50体積部であってもよいし、1~10体積部であってもよいし、1~5体積部であってもよい。
【0078】
炭酸エステルは、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0079】
カルボン酸エステルは、例えば、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、およびプロピオン酸メチル(MP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。すなわち、電解液はMPを含んでいてもよい。MPを含む電解液は低粘度を有し得る。電解液がMPを含むことにより、電極体50内における電解液の分布が均一になりやすい傾向がある。さらに、電解液がMPを含むことにより、初期抵抗、および充放電サイクル後の抵抗増加率が改善することが期待される。
【0080】
エーテルは、例えば、1,2―ジメトキシエタン(DME)、1,4―ジオキサン(DOX)、テトラヒドロフラン(THF)等を含んでいてもよい。ラクトンは、例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、δ-バレロラクトン等を含んでいてもよい。
【0081】
支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO2)2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は、例えば0.5~2.0mоl/Lのモル濃度を有していてもよいし、0.8~1.2mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。
【0082】
電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば電解液は、質量分率で0.01~5%の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、フルオロスルホン酸リチウム(FSO3Li)、およびリチウムビスオキサラトボラート(LiBOB)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【実施例】
【0083】
以下、本技術の実施例(本明細書においては「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0084】
<電池の製造>
以下のようにNo.1~14に係る試験電池(非水電解質二次電池)が製造された。
各部の設計寸法等は下記のとおりである。
【0085】
《設計寸法等》
定格容量:4Ah
外装体の材質:Al合金
外装体の外形寸法:幅 120mm×奥行 12.5mm×高さ 65mm
電極体の外形寸法:幅 116mm×奥行 10.5mm×高さ 58mm
正極板:幅寸法 105mm
正極活物質層:幅寸法 90mm
正極板の積層数:66
負極板:幅寸法 107mm
負極活物質層:幅寸法 95mm
負極板の積層数:68
セパレータ:幅寸法:100mm
【0086】
本実施例において、幅寸法は、
図1等のX軸方向の寸法を示す。奥行寸法は、
図2等のY軸方向の寸法を示す。高さ寸法は、
図1等のZ軸方向の寸法を示す。
【0087】
《正極板の製造》
下記材料が準備された。
正極活物質粒子:Li(NiCoMn)O2
導電材:アセチレンブラック
バインダ:PVdF
分散媒:N-メチル-2-ピロリドン
正極基材:Al合金箔
【0088】
正極活物質粒子と導電材とバインダと分散媒とが混合されることにより、正極スラリーが調製された。正極スラリーが正極基材の表裏両面に塗布され、乾燥されることにより、正極活物質層が形成された。これにより正極原反が製造された。正極原反が圧縮された。圧縮後、正極原反が帯状に切断されることにより、正極板が製造された。
【0089】
正極板の幅寸法は105mmであった。正極活物質層の幅寸法は90mmであった。正極板の幅方向の一端には、15mmにわたって正極基材が露出していた。
【0090】
《負極板の製造》
下記材料が準備された。
負極活物質粒子:球形化天然黒鉛
バインダ:CMC、SBR
分散媒:水
負極基材:Cu合金箔
【0091】
負極活物質粒子のD50が測定された。D50は下記表1、2に示される。
【0092】
負極活物質粒子とバインダと分散媒とが混合されることにより、負極スラリーが調製された。負極スラリーが負極基材の表裏両面に塗布され、乾燥されることにより、負極活物質層が形成された。これにより負極原反が製造された。負極原反が圧縮された。圧縮後、負極原反が帯状に切断されることにより、負極板が製造された。
【0093】
負極板の幅寸法は107mmであった。負極活物質層の幅寸法は95mmであった。負極板の幅方向の一端には、12mmにわたって負極基材が露出していた。
【0094】
負極板において、前述の手順により、負極活物質粒子の真円度の中央値が測定された。真円度の中央値は下記表1、2に示される。
【0095】
《セパレータの準備》
セパレータが準備された。セパレータは多孔質樹脂層からなっていた。多孔質樹脂層は、ポリオレフィンからなっていた。
【0096】
《電極体の形成》
セパレータと、正極板と、セパレータと、負極板とがこの順序で積層されることにより、積層体が形成された。積層体が巻き芯に巻き取られることにより、筒状の巻回体が形成された。巻回軸と直交する方向に、巻回体が圧し潰されることにより、巻回体が扁平状に成形された。これにより電極体が形成された。本実施例においては、巻き芯の直径により、高さ比(R1)が調整された。
【0097】
電極体において各部の寸法が測定されることにより、高さ比(R1)およびアスペクト比(R2)が求められた。高さ比(R1)およびアスペクト比(R2)は、下記表1、2に示される。
【0098】
(電解液の注入)
外装体に電極体が収納された。外装体に電解液が注入された。電解液の注入後、電解液が電極体に十分含浸された。含浸後、所定量の充電が実施された。充電時に電極体から発生したガスが、外装体から排出された。ガスの排出後、外装体が密閉された。以上より、電池が製造された。No.1~13に係る試験電池においては、下記成分を含む電解液が使用された。
【0099】
溶媒:「EC/EMC/DMC=30/35/35(体積比)」
支持電解質:LiPF6(1mоl/L)
添加剤:VC(質量分率で0.3%)
【0100】
No.14に係る試験電池においては、下記成分を含む電解液が使用された。
【0101】
溶媒:「EC/EMC/DMC/MP=28/34/35/3(体積比)」
支持電解質:LiPF6(1mоl/L)
添加剤:VC(質量分率で0.3%)
【0102】
《浸透性の評価》
電解液の注入後、2.0時間にわたって静置された電池が準備された。ドライボックス内で電池が開封されることにより、電極体が回収された。電極体の最外周側から電極体が解かれた。1周(1層)分の積層体が解かれる毎に、セパレータが電解液に濡れているか否かが目視により確認された。電解液に濡れた部分と、電解液に濡れていない部分とは、表面色の違いにより判別された。
【0103】
電解液の注入後の静置時間が0.5時間刻みで延ばされながら、セパレータがどこまで濡れているかが確認された。下記表1、2の「電解液の浸透性 含浸時間」の項目に示される値は、セパレータが全周にわたって濡れていることが確認された時間を示す。含浸時間が短い程、電解液の浸透性が良好であると考えられる。
【0104】
《摩擦係数》
電池の完成後、ドライボックス内で電池が開封されることにより、電極体が回収された。前述の手順により、第1動摩擦係数および第2動摩擦係数が測定された。第1動摩擦係数および第2動摩擦係数は、下記表1、2に示される。
【0105】
《初期抵抗》
25℃の温度環境下において、定電流-定電圧(CC-CV)充電により、電池のSOC(state of charge)が50%に調整された。定電流(CC)充電時の電流は1Itであった。合計充電時間は1.5時間であった。「1It」は、電池の定格容量を1時間で流し切る電流と定義される。50%のSOCにおいて、電池の電圧は3.69Vであった。SOCの調整後、30分の休止を挟んで、180Aの電流で電池が10秒間放電された。下記式により、初期の放電抵抗(初期抵抗)が求められた。
【0106】
r=(V0-V10)/180
【0107】
上記式中、rは放電抵抗を示す。V0は、放電開始時の電圧を示す。V10は、放電開始から10秒経過時の電圧を示す。なお、下記表1、2の初期抵抗は相対値である。No.1の初期抵抗が100と定義される。
【0108】
《抵抗増加率》
初期抵抗の測定後、25℃の温度環境下において、CC-CV充電により、電池のSOCが80%に調整された。CC充電時の電流は1Itであった。合計充電時間は1.5時間であった。SOCの調整後、25℃の温度環境下において、サイクル試験が実施された。すなわち1200時間にわたって、下記放電と充電とが交互に繰り返された。
【0109】
放電:電流=1It、放電容量=20%のSOCに相当する容量
充電:電流=1It、充電容量=20%のSOCに相当する容量
【0110】
サイクル試験後、初期抵抗と同様に、サイクル後の放電抵抗(サイクル後抵抗)が測定された。サイクル後抵抗が初期抵抗で除されることにより、抵抗増加率(百分率)が求められた。抵抗増加率は、下記表1、2に示される。
【0111】
《Li析出》
サイクル試験後、ドライボックス内で電池が開封されることにより、電極体が回収された。電極体の最外周側から電極体が解かれた。1周(1層)分の積層体が解かれる毎に、負極板の表面にLiが析出しているか否かが目視により確認された。Liが析出した部分と、Liが析出していない部分とは、表面色の違いにより判別された。下記表1、2の「Li析出」の項目において、「OK」は全周にわたってLiの析出が確認されなかったことを示す。「NG」は、部分的にLiの析出が確認されたことを示す。
【0112】
【0113】
<結果>
上記表1、2において、高さ比(R1)が1.20~1.35であり、かつ第1動摩擦係数が0.52~0.66である時、サイクル試験後のLiの析出が軽減される傾向がみられる(No.1~9参照)。電極体において電解液の枯渇が発生し難く、かつ電極体内の電解液の分布が均一になりやすいためと考えられる。
【0114】
高さ比(R1)が1.20~1.35であり、かつ第1動摩擦係数が0.52~0.66である時、抵抗増加率が小さい傾向もみられる。電解液の移動量が大きいことにより、電解液が攪拌されやすくなり、支持電解質の濃度にムラが生じ難いためと考えられる。
【0115】
高さ比(R1)が1.20~1.35であり、かつ第1動摩擦係数が0.52~0.66である時、含浸時間が短い傾向もみられる。電極体に電解液が浸透しやすく、かつ電極体から気泡が抜けやすいことにより、含浸時間が短縮したと考えられる。含浸時間の短縮により、生産性の向上が期待される。
【0116】
上記表1、2において、第2動摩擦係数が0.70~0.85である時、初期抵抗が小さくなる傾向がみられる(No.10~13参照)。さらに抵抗増加率が小さくなる傾向もみられる。また電解液がMPを含むことにより、初期抵抗および抵抗増加率が改善する傾向もみられる(No.10、14参照)。
【0117】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
【符号の説明】
【0118】
10 正極板、11 正極基材、12 正極活物質層、20 負極板、21 負極基材、22 負極活物質層、30 セパレータ、31 第1主面、32 第2主面、40 積層体、50 電極体、51 平坦部、52 湾曲部、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池(非水電解質二次電池)、201 試験テーブル、202 相手材料、203 滑り片、L0 輪郭線、L1 第1弧状部、L2 第2弧状部、L3 直線部。