(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】広範囲・低周波アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/08 20060101AFI20230517BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20230517BHJP
H01F 27/02 20060101ALI20230517BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
H01Q7/08
H01F5/00 Z
H01F27/02 120
H01F27/32 103
(21)【出願番号】P 2021083575
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520161894
【氏名又は名称】プレモ,エスアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス デ ラ フエンテ,ホセ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】カネテ カベツァ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ロハス クエバス,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ナバッロ ペレス,フランシスコ エツェクイエル
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163097(JP,A)
【文献】特開2011-109305(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190948(WO,A1)
【文献】特開平06-084642(JP,A)
【文献】特開2013-126008(JP,A)
【文献】特開2015-002316(JP,A)
【文献】国際公開第2005/038982(WO,A1)
【文献】特開2016-066728(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1814378(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0194983(US,A1)
【文献】国際公開第2016/135949(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/00-11/20
H01F 5/00
H01F 27/02
H01F 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広範囲の低周波アンテナにおいて、
細長い磁性コア(5)と、
前記磁性コア(5)を包囲するコイル(8)と、
空洞内に前記磁性コア(5)が挿入される空洞を有するボビン(2,3)と、
前記ボビン(2,3)上に防水仕様でオーバーモールドされたハウジング(1)と、
前記磁性コア(5)の端部に配置されるダンパー(4)と、
を有し、
前記ダンパー(4)は
熱的に安定な弾性化合物で形成され、前記弾性化合物は樹脂と第1充填材を含有し、前記第1充填材は天然無機充填材を含み、前記天然無機充填材は石英、珪岩、大理石、砂、炭酸カルシウムのいずれかを含み、
前記磁性コア(5)の軸方向の伸長、収縮、機械的衝撃、振動のいずれもが、前記ダンパー(4)で吸収され、前記コイル(8)のインダクタンスの変動に及ぼす影響を回避する
ことを特徴とする広範囲の低周波アンテナ。
【請求項2】
前記ダンパー(4)を2個有し、それぞれが、前記磁性コア(5)の端部に当てて配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項3】
前記ダンパー(4)を複数個有し、それぞれが複数の磁性コア(5)の端部に当てて配置され、前記複数の磁性コア(5)が連続して又は離れて配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項4】
前記ダンパー(4)が、前記磁性コア(5)を完全にカバーしケーシングを形成する
ことを特徴とする請求項
1記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項5】
前記弾性化合物は、所定量の水酸化アルミニウムを含む第2充填材を含む
ことを特徴とする請求項
1-4のいずれかに記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項6】
前記磁性コア(5)は、200-500mmの範囲の長さを有する
ことを特徴とする請求項
1-4のいずれかに記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項7】
前記磁性コア(5)は、複数の磁性コア部分(5A、5B,5C)から構成され、前記磁性コア部分(5A、5B,5C)は、互いに突きあわせて接続される
ことを特徴とする請求項
1に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項8】
前記突きあわせて接続される部分は、複数の自己接着性強磁性シート状スティフナー(6)を有する
ことを特徴とする請求項
7に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項9】
複数の弾性環状ホルダー(7)を更に有し、前記弾性環状ホルダー(7)は、前記磁性コア部分(5A、5B,5C)を、複数の場所に沿って、包囲する
ことを特徴とする請求項
7又は8に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項10】
前記ボビン(2,3)は、2つの中空部品を有し、前記2つの中空部品は、そのエッジに形成された複数の相互接続特徴を介して、互いに組み合わされる
ことを特徴とする請求項
1に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項11】
前記ボビン(2,3)は、その端部に形成された貫通穴を有する単一部品を有し、前記磁性コア(5)の挿入を容易にする
ことを特徴とする請求項
1に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項12】
前記ボビン(2,3)は、溝が切られているか又はスロットを有し、前記溝又はスロットに、前記磁性コア(5)のコイル(8)のワイヤが配置される
ことを特徴とする請求項
10又は11に記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項13】
前記天然無機充填材は、様々な粒子サイズの複数の充填材を含む
ことを特徴とする請求項
1-4のいずれかに記載の広範囲の低周波アンテナ。
【請求項14】
前記弾性化合物内の第1充填材の比率は、50-90%の間である
ことを特徴とする請求項
1-4のいずれかに記載の広範囲の低周波アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気誘導子の分野に関し、特に本発明の目的として、広範囲・低周波アンテナ、特に送信用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の広範囲・低周波アンテナは、キーレス・エントリー・システム(KES:keyless Entry System)(パッシブ・キーレス・エントリー(PKE:Passive Keyless Entry)とも称する)と、他のLF通信子システムに関する。
【0003】
低周波FRID通信システムは、パワー・システムとタグ即ち受動システムを用いて常に動作する。このパワー・システムは、電源(バッテリー又はネットワーク)に接続された送信用アンテナ(TX)に高(強い)磁界を発生させる。このタグ即ち受動システムは、応答機能を活性化する為に、タグの電子部品を駆動する小(弱い)磁界に極めて敏感な受信用アンテナ(RX)を有する。
【0004】
1Dとハイブリッド・システム用の送信用アンテナ(TX)は、以下の特徴を有する。
*送信用アンテナは高磁界Hを放射する。
*送信用アンテナは高電流に耐えられる。
*送信用アンテナは、ローカル・キャパシター(アンテナ側の)又はセントラル・キャパシター(ECU側の)と組み合わせた動作周波数又は共振周波数で共振する。
*強磁性コアが飽和するのを回避するために、NxI(電流当たりの巻回数)の最大値が存在する。この最大値は、磁気飽和のしきい値B1satを決定し、巻回数が少なく低インダクタンス(100μH-800μHのオーダー)のアンテナを構成できる。
*巻き線は、直径が0.1-1mmのオーダーの太いワイヤを使用し、アンテナは、巻回数は、80-150回で、一層である。
*送信用アンテナは、50-500mmの大きさで、その長さと範囲に応じて以下の3グループに分類される。
*小型(50-100mm)、到達範囲(1-2m)
*中型(100-200mm)、到達範囲(1.5-3m)
*大型(200-500mm)、到達範囲(3m以上)
【0005】
Q係数と感受性はこのタイプのアンテナでは臨界的パラメータではない。同様にこのタイプのアンテナは、通常単一方向性であり、L/D(長さ/直径)の比率は、非常に大きく(通常10以上)、コア内の有効透磁率(effective magnetic permeability)の影響/効果を最大にしている。ワイヤが正方形又は長方形の場合はLは等価の直径に相当する。フェライト・コアの特定の形状は、アンテナのインダクタンス、感受性、到達範囲を最大にするよう、企図されている。フェライト・コアは他の軟磁性材料からでも形成できる。軟磁性材料の一例は、ナノ結晶金属、アモルファス金属、PBM等である。
【0006】
特許文献1は、コネクターを組み込んだアンテナ装置とこのアンテナ装置の製造方法を開示する。この製造方法は、電子部品が、半田付けの際に、動くのを阻止する。
【文献】JP2017103549A1
【文献】EP1450436B1
【文献】US2015116171A1
【文献】US20180342895A1
【文献】EP472199A1
【文献】US5514913
【0007】
特許文献2は、以下の(1)~(6)を具備する送信用アンテナを開示する。
(1)フェライト・コア上に巻回されたアンテナコイルと、
(2)アンテナコイルに接続されたキャパシター、
これで直列共振回路を形成する、
(3)ネジ形状の小型のフェライト・コア、
この小型のフェライト・コアの断面積はフェライト・コアのそれより小さく、
(4)非磁性の距離調整機、
これは、フェライト・コアの長手方向端の一端に適合し、小型のフェライト・コアをフェライト・コアに磁気的に結合し、
(5)前記距離調整機に形成されたホール、
前記小型のフェライト・コアは、前記ホール内に移動可能に配置され、フェライト・コアと小型のフェライト・コアの間に距離を調整し、
(6)ケース、
このケースは、アンテナコイル、フェライト・コア、小型のフェライト・コア、距離調整機,キャパシターを収納する。前記フェライト・コアと小型のフェライト・コアとの間に距離調整して、前記直列共振回路の共振周波数を所定の値に設定する。
【0008】
特許文献3は、以下の(1)~(4)を具備する棒状アンテナを開示する。
(1)複数のコア部品を直列接続する棒状コア
(2)前記棒状コアの少なくとも一部をカバーするボビン、
(3)前記ボビンの所定範囲に巻かれる巻き線、
(4)棒状コアとその中に配置されたボビンを有するケース
前記棒状コアとボビンは、ケース内にポッティング材料で充填され、前記棒状コアは、前記複数のコア部品の連結部分で、所定の外力で、曲げることができる。
【0009】
特許文献4は、磁性材料製のコアとこのコアを搭載する要素とを具備するバー形状の誘導性構造物を開示する。このコアは、一連の個別の磁気コアに分割されている。この一連の個別の磁気コアの端部は、保持要素の手段により、重なり合うように、互いに隣接している。この一連の個別の磁気コアは、複数の層内で、互いにずれて、配置されている。
【0010】
特許文献4の解決方法は、個別の磁気コアの間のギャップで発生する磁気フラックスのリークを回避するのを、個別の磁気コアをジグザグに即ち互い違いに配置して、それらを再度チャネリングすることにより、行っている。これにより、剛性が増し、Q係数は低くなり、個別の磁気コアの組の有効透磁率はギャップのない単一のコアのそれよりも低くなるからである。バー形状の誘導性要素の高さは2倍になる不利な点があるが、このアンテナは衝撃に耐えられる利点がある。
【0011】
他の公知の解決法は、スプリングにより圧縮された円筒状磁気コア要素の使用すること、アモルファス金属又はナノ結晶金属を保護しカプセル化することである。
【0012】
磁気コアに沿って一定の断面積を有するアンテナは公知である。広い範囲のアンテナを提供するために、磁気コアは、より小型のコア部品を複数個一体に組み立てることにより、形成される。
【0013】
これは、長いコアの製造は複雑だからである。「バナナ効果」が原因である。この「バナナ効果」は、フェライト、セラミックの湾曲による変形が原因である。これは、複数の部品の大きさに大きな差がある場合、高温による焼き入れ又は焼結過程を経る時に起きる。理想的な球や立方体ではこのような効果/影響は受けない。しかし、X軸,Y軸,Z軸の寸法差が大きくなると、焼結過程で発生する収縮力の差も大きくなる。その結果、これらは、湾曲した不均一な部品となる。この湾曲がバナナに似ていることから、「バナナ効果」と命名された。
【0014】
幅と高さより長さが大きいフェライトは、Y/X比が5-12になることがあるが、非常に脆く、その熱分布変動により最長の軸即ちY軸でより伸びる。
【0015】
Y軸方向における膨張により物が細長くなり、その結果、その軸方向の圧縮が起こる。これが、フェライトの透磁率に影響し、アンテナのインダクタンスLに影響し、LCタンクの共振周波数の偏りを生じさせる。このことが、実務上、アンテナの到達範囲を減らし、アンテナを動作不能にする。これは共振周波数の偏りが原因である。
【0016】
同じ非対称の効果/影響は低温時の収縮でも起きる。この収縮はY軸でより顕著である。このことは、同じ好ましくない効果/影響とは逆の符号の偏りを引き起こす。
【0017】
これらの好ましくない効果/影響即ち磁化時における形状又は寸法の変化は、全てのフェライトと強磁性材料で発生し、「磁気ひずみ」として知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、機械的信頼性と熱的安定性が高く広範囲受信が可能で、衝撃抵抗のある広範囲・低周波アンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この為、本発明は、細長い剛性のあるアンテナ/インダクターの使用を提案する。このアンテナ/インダクターは、ある実施例では1つの要素或いは別の実施例では複数の要素即ち剛性の強磁性コアを有する。複数の要素は、その端部でジョイント形式で結合される。その結果、剛性の組立体が形成され、インダクターの完全性を壊すリスク無しに、性能低下と偏りを吸収できる。
【0020】
本明細書において、「細長いインダクター」とは、そのL/D(長さ/直径)比が、30-45である単一の磁性コア又は組み合わせた磁性コアで形成される。コアが四角形の場合は、(排水量の)直径が等価である。
de=1.30(a*b)0.625/(a+b)0.25
ここで、a,bは、四角形の側面の長さである。
μrod:は、3000<μrod<4000であり、初期の透磁率が3000と4000の間のコア材料の有効透磁率である。
L=μ0μrodN2A/I(H)
ここで、
L:インダクタンス(単位:ヘンリー)
μ0:真空中で透磁率:4π10-7N/A2
μrod:有効透磁率
N:巻回数
A:断面積
L:長さ
I:電流
【0021】
表Iは、コアのL/D比と
図3に基づいて、最終インダクタンスに与える影響を示す。これは、有効透磁率の変動に起因するインダクタンスの変動を示す。表Iと
図3から解るように、所定の磁性材料において、有効透磁率の変動とL/D比との関係を対数で表す。
本発明の目的は、請求項1記載の特徴を有するアンテナで達成される。
【0022】
本発明の一実施例によれば、広範囲・低周波アンテナ即ちインダクターは、磁性コア、特に剛性の磁性コアと、前記磁性コアを包囲するコイルと、ボビン(前記磁性コアが前記ボビンの空洞内に入り込み)と、前記ボビン上に防水仕様でオーバーモールドされたハウジングとを有する。
【0023】
本発明のアンテナは、前記磁性コアの端部に配置されるダンパーを有する。好ましくは、このダンパーは、樹脂を含む熱的に安定な弾性化合物と、天然無機充填材により形成された第1充填材とで形成される。
【0024】
前記磁性コアの軸方向の伸長、収縮、機械的衝撃、振動のいずれもが、ダンパーで吸収され、前記コイルのインダクタンスの変動に及ぼす影響を回避する。ここに提案された解決法は、磁性コアが、破損するのを防止し、クラックが生じた場合、コイルのインダクタンスの変動の発生を阻止する。
【0025】
前記磁性コアは、複数の磁性コア部分から構成され、それらは、互いに突きあわせて接続される。前記突きあわせて接続される部分は、様々な自己接着性強磁性シート状スティフナーを有する。更に磁性コアを、複数の場所に沿って包囲する弾性環状ホルダーも有する。
【0026】
本発明の一実施例によれば、本発明のアンテナは、ダンパーを2個有し、それぞれが、前記磁性コアの端部に当てて配置される。別の構成として、本発明のアンテナは、ダンパーを複数個有し、磁性コアの壁に当てて、連続的又は個別に配置される。
【0027】
本発明の一実施例によれば、本発明のアンテナは、ダンパーを有し、このダンパーが、磁性コアを完全にカバーし、ケーシングを形成する。
【0028】
本発明の一実施例によれば、天然無機充填材は、石英、珪岩、大理石、砂、炭酸カルシウムのいずれかを含む。これらは微細粒になっている。第1充填材は、熱的に安定な弾性化合物内に含まれており、その割合は50-90%の間である。一実施例によれば、前記天然無機充填材は、様々な粒子サイズの複数の充填材を含む。
【0029】
本発明の一実施例によれば、熱的に安定な弾性化合物は、所定量の水酸化アルミニウムを含む第2充填材を含む。一例として、所定量の水酸化アルミニウムは、熱的に安定な弾性化合物の全重量に対し、1-5w%の範囲である。
【0030】
前記磁性コアは、200-500mmの範囲の長さを有する。
前記ボビンは、2つの別個の中空部品を有し、前記2つの中空部品は、そのエッジに形成された複数の相互接続特徴を介して、互いに組み合わされる。前記ボビンは、その端部に形成された貫通穴を有する単一部品を有し、前記磁性コアの挿入を容易にする。前記ボビンは、溝が切られているか又はスロットを有し、前記溝又はスロットに、前記磁性コア5のコイル8のワイヤが配置される。
【0031】
ボビン上でのハウジングのオーバーモールディングは、例えば、固化可能な熱安定性材料を型枠内に注入することにより、行い、漏れのないシェルを形成する。このオーバーモールディングを行う公知の技術は、特許文献5,6(ハウジングを型枠内に保持する格納可能な位置決めピンの使用)に開示されているもの、或いは、ハウジングをフレキシブル容器内に又は変形可能なシェル内に、熱安定性材料が固まる間、入れて形成することである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施例の広範囲・低周波アンテナを構成する部品の展開図。
【
図2】本発明の他の実施例の広範囲・低周波アンテナを構成する部品の展開図。
【
図3】有効透磁率の変動に起因するインダクタンスの変動の感受性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に、本発明の広範囲・低周波アンテナの実施例が示されている。この実施例によれば、広範囲・低周波アンテナは、ハウジング1と、ボビン2,3と、
細長い磁性コア5と、ダンパー4とから構成される。このボビン2,3は、2つの別々の中空部品(サンドウイチ構造に類似する)から構成され、これらの部品を、ボビン2,3の各エッジに形成された三角形状の相互接続特徴を介して、互いに係合させる。
【0034】
磁性コア5は、圧縮され(>300T)焼結された磁性材料を、順次行われる切断プロセスを適用するプロセスにより製造/形成される。かくして、この種のコアの通常の製造プロセスで発生することにある不良品と「バナナ効果」を回避できる。
【0035】
磁性コア5は、特に軟磁性材料製で、形成される。このコアは、フェライト(例、MnZn)製の平行六面体の立体構造をしており、形は、長い(200-500mm)が、幅は狭く、厚さは極小である。これにより、焼結プロセスで発生する「バナナ効果」を回避している。
【0036】
一実施例においては、磁性コア5は、(A)圧縮行程と焼結行程を経たブロックを確保し、(B)このスーパー・ブロックを、その一方の側に接着材を配置した金属製支持部材の手段により、包み込み、(C)このスーパー・ブロックを、所望のサイズの矩形体に、切断する。この切断プロセス(C)は、ダイアモンド製の刃で、ゆっくりと正確な操作で、常時、フェライトの切断、貫通、剥離の深さを制御しながら、行う。全体プロセスは、冷却材で冷却し、監視して行う。スーパー・ブロックの包み込みプロセス(B)により、切断は、同時に可能になり、矩形体が切り出された後は、残った部分の位置決め機能を失うことなく、行われる。磁性コア5が得られた後は、設計と最終組立プロセスと、フェライトに直接接触する或いは近くに配置される材料の選択が行われ、最小の透磁率の変動(<5%)が達成できる。
【0037】
図1において、
磁性コア5はコイル8を受け止める(拡大Iを参照のこと)。コイル8は、強磁性材料のワイヤ製であり、ボビン2,3の外側側面壁内に、壁に切られた溝内、スロット内のいずれかに、配置される。溝又はスロットにより、コイル8のワイヤは、自動的に調整可能に取り付けられ、製造プロセス又はストレスをかけるプロセスの間、ワイヤが横方向に動かないようにしている。
【0038】
図1のアンテナの様々な構成要素を組み立てる為に、一実施例においては、ダンパー4が
磁性コア5の端部に配置され、ダンパー4が、
磁性コア5を完全にカバーする。磁性コア5は、その後、ボビン2,3の空洞内に挿入され、溝又はスロットに沿って、コイル8のワイヤと係合する。ボビン2,3が閉じられると、ハウジング1は、ボビン2,3上に、防水仕様で、オーバーモールドされる。
【0039】
他の一実施例において、図示していないが、本発明の広範囲・低周波アンテナは、磁性コア5の一端のみに配置されるダンパー4を1個有してもよい。さらに、広範囲・低周波アンテナは、ダンパー4を複数個有してもよい。これらのダンパー4は、磁性コア5の側面、上面、底面の何れか又は全てに当てて、配置できる。これらのダンパー4は、連続的に、又は離れて、配置される。
【0040】
ダンパー4は、樹脂(特にシロキサン又はシリコン系の樹脂)と天然無機充填材等を含む熱的に安定な弾性化合物から形成される。天然無機充填材は、石英、珪岩、大理石、砂、炭酸カルシウムのいずれかを含む。これらは、細かく粉砕されている。この熱的に安定な弾性化合物は、組み合わせた硬度と膨張係数を有し、通常の温度変動(-40℃から85℃)の条件下で、磁性矩形コア5にかかる疲労度と圧力を、最小にする又は無くす。これは、「ビラリー(Vilary)」効果(ジュールの磁気ひずみの逆作用/効果)を発生させない為である。そのため、ダンパー4を広範囲・低周波アンテナに含めることにより、磁性矩形コア5の軸方向の伸長、収縮、機械的衝撃、振動が吸収され、コイル8のインダクタンス変動に対する影響を回避できる。
【0041】
熱的に安定な弾性化合物内にある第1充填材の比率は、50-90%の間で変化する。一実施例によれば、この第1充填材は異なった粒子サイズの複数の天然無機充填材を含む。
【0042】
一実施例によれば、熱的に安定な弾性化合物は、所定量の水酸化アルミニウム又はその誘導体を含有する第2充填材を含む。前記水酸化アルミニウムの所定量は、樹脂を含む熱的に安定な弾性化合物の総重量の1-5重量%である。
【0043】
一実施例によれば、ハウジング1は、HPM技術でオーバーモールドされる。即ち、ボビンの動的なホルダーによる完全なオーバーモールディングにより、ガラス・ファイバー・ロードPA66,PBTによる熱安定性ポリマーの注入の最終フェーズにおいて、気泡が存在しなくなる。支持部材は動的に取り除かれ、ボビンはキャスチング上に浮遊しており、支持部材の痕跡を残さない。かくしてハウジング1の機械的剛性、衝撃耐性、防水性が得られる。
【0044】
図2に、広範囲・低周波アンテナの別の実施例を示す。
図1の実施例とは異なり、
磁性コア5は、複数の
磁性コア部分5A、5B,5Cで置換される。これらは、端部を突きあわせて接続又は連結されている。更に広範囲・低周波アンテナは、ダンパー4を2つ有する。それぞれ、磁性コア5の各端部に当てられている。
【0045】
各磁性コア部分5A、5B,5Cは、端部で湾曲している(凹凸状に)。この湾曲形状により、2重の機能が得られる。1つは衝撃と落下に対する感受性を減らすこと、他はこれらの部品の間の接触面積を提供することである。落下と曲げによる破損のリスクを増やす構造的な接着材が不要となる。
【0046】
磁性コア部分5A、5B,5Cの接続部は、自己接着性強磁性シート状スティフナー6を有する。その厚さは0.1-0.4mmの間で、初期透磁率は200以上である。これは二重の効果/作用を有する。その1つは磁性コア5の透磁率の変動を最小にすること、他はQ係数とインダクタンスの低下を回避できることである。同様に、磁性コア5とボビン2,3との間の機械的分離を達成する為に、複数の弾性環状(リング状)ホルダー7を含む。この弾性環状ホルダー7は、その材料の一例はシリコン・ゴム、低硬度の粘弾性材料であり、外部からの振動、落下、曲げに対する吸収材として、機能する。
【0047】
図示しない実施例においては、ボビン2,3は、その端部に形成された貫通穴を有する単一部品を有し、前記磁性コア5の挿入を容易にする。
【0048】
本明細書と特許請求の範囲において、特に指定されない限り、記載された長さ、幅、濃度、割合(%)を表す数字(値)は、ある実施例では±10%、別の実施例では±5%の変動幅を有することがある。かくして、上記したように、本明細書と特許請求の範囲に記載した数字は、製品性能の望む特性により変化する。
【0049】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0050】
1:ハウジング
2,3:ボビン
4:ダンパー
5:磁性コア
5A,5B,5C:磁性コア部分
6:自己接着性強磁性シート状スティフナー
7:弾性環状ホルダー
8:コイル