(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】電極シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230517BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20230517BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230517BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230517BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20230517BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230517BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230517BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20230517BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230517BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20230517BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230517BHJP
B05C 1/08 20060101ALN20230517BHJP
B05C 9/06 20060101ALN20230517BHJP
B05C 9/14 20060101ALN20230517BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/04 Z
H01M4/62 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 D
B05D7/14 G
B05D7/00 A
B05D3/02 Z
B05D3/12 C
B05D7/24 301A
B05D1/28
B05D3/00 B
B05C1/08
B05C9/06
B05C9/14
(21)【出願番号】P 2021083730
(22)【出願日】2021-05-18
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 桃香
(72)【発明者】
【氏名】上薗 知之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 壮吉
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 汀
(72)【発明者】
【氏名】松山 美由紀
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-149862(JP,A)
【文献】特開2019-137060(JP,A)
【文献】特開2016-182579(JP,A)
【文献】特開2022-106594(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115051(WO,A1)
【文献】特開2008-258055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01G11/00-11/86
B05D 1/00- 7/26
B05C 1/00- 3/20
B05C 7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる帯状の集電箔と、前記集電箔上に形成された活物質層と、を有する電極シートの製造方法において、
前記集電箔上に、活物質粒子の表面にバインダ粒子が結合した複合粒子からなる複合粒子層を形成する成膜工程と、
前記集電箔上に前記複合粒子層が形成された成膜シートを、熱プレスして、前記電極シートを作製する熱プレス工程と、を備え、
前記成膜工程は、
前記集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送するバックアップロールと、
前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第1間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置された第1マグネットロールであって、磁性キャリア粒子の表面に前記複合粒子が付着した複合キャリア粒子を、当該第1マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向けて当該第1マグネットロールの周方向に搬送する第1マグネットロールと、
前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第2間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置されると共に、前記第1マグネットロールに対して前記搬送方向に離間して配置された第2マグネットロールであって、前記複合キャリア粒子を、当該第2マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第2間隙に向けて当該第2マグネットロールの周方向に搬送する第2マグネットロールと、を用いて、
前記バックアップロールと前記第1マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第1間隙を含む位置に形成した第1電界において、前記第1マグネットロールによって搬送された前記複合キャリア粒子に含まれていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に前記複合粒子を堆積させると共に、
前記バックアップロールと前記第2マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第2間隙を含む位置に形成した第2電界において、前記第2マグネットロールによって搬送された前記複合キャリア粒子に含まれていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に前記複合粒子を堆積させて、
前記集電箔上に前記複合粒子層を形成する工程であり、
前記第1マグネットロールの回転方向を、前記バックアップロールの回転方向と逆方向とし、且つ、前記第2マグネットロールの回転方向を、前記バックアップロールの回転方向と同じ方向として、前記成膜工程を行う
電極シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電極シートの製造方法であって、
前記成膜工程では、前記第1マグネットロールの前記外周面に磁気吸着する前記複合キャリア粒子に含まれる前記複合粒子である第1複合粒子と、前記第2マグネットロールの前記外周面に磁気吸着する前記複合キャリア粒子に含まれる前記複合粒子である第2複合粒子とを、異種の複合粒子とする
電極シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の電極シートの製造方法であって、
前記第1複合粒子と前記第2複合粒子とは、バインダ含有率が異なる
電極シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長手方向に延びる帯状の集電箔と、集電箔上に形成された活物質層と、を有する電極シートの製造方法が開示されている。具体的には、集電箔上に、活物質粒子の表面にバインダ粒子が結合した複合粒子からなる複合粒子層を形成する成膜工程と、集電箔上に複合粒子層が形成された成膜シートを、熱プレスして、電極シートを作製する熱プレス工程とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
成膜工程は、集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送するバックアップロールと、バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される集電箔に第1間隙を空けて、バックアップロールに平行に配置されたマグネットロールであって、磁性キャリア粒子の表面に複合粒子が付着した複合キャリア粒子を、当該マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向けて当該マグネットロールの周方向に搬送するマグネットロールを用いて行う。より具体的には、バックアップロールとマグネットロールとの間に直流電圧を印加して、第1間隙を含む位置に形成した第1電界において、マグネットロールによって搬送された複合キャリア粒子に含まれていた複合粒子を、バックアップロールによって搬送されている集電箔に向けて空中移動させて、集電箔上に複合粒子を堆積させて、集電箔上に複合粒子層を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マグネットロールによって搬送される複合粒子は、マグネットロールと共に回転運動(円運動)をしているので、マグネットロールから脱離するとき、脱離するときの複合粒子の速度方向(回転円弧の接線方向)またはこれに近い方向に飛び立つ。その後、複合粒子は、第1間隙を含む位置に形成された第1電界において、バックアップロールによって搬送されている集電箔との間に働く静電気力によって、集電箔へ引き寄せられるようにして空中移動して、集電箔上に堆積する。
【0006】
しかしながら、上述のような成膜工程では、第1間隙の寸法を大きくする必要がある(例えば、約4mmにする)ため、マグネットロールから脱離して、マグネットロールとバックアップロール上の集電箔との間に形成される第1電界内を空中移動する複数の複合粒子のうちの一部が、集電箔上に到達する前に、第1電界の外部へ飛んで行ってしまうことがあった。第1電界の外部へ飛んで行った複合粒子は、集電箔に付着(堆積)する可能性が低いため、集電箔への複合粒子の付着率(堆積率)が低下することがあった。
【0007】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、集電箔への複合粒子の付着率(堆積率)を向上させることができる電極シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、長手方向に延びる帯状の集電箔と、前記集電箔上に形成された活物質層と、を有する電極シートの製造方法において、前記集電箔上に、活物質粒子の表面にバインダ粒子が結合した複合粒子からなる複合粒子層を形成する成膜工程と、前記集電箔上に前記複合粒子層が形成された成膜シートを、熱プレスして、前記電極シートを作製する熱プレス工程と、を備え、前記成膜工程は、前記集電箔をその長手方向に沿った搬送方向に搬送するバックアップロールと、前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第1間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置された第1マグネットロールであって、磁性キャリア粒子の表面に前記複合粒子が付着した複合キャリア粒子を、当該第1マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第1間隙に向けて当該第1マグネットロールの周方向に搬送する第1マグネットロールと、前記バックアップロールの外周面に沿って周方向に搬送される前記集電箔に第2間隙を空けて、前記バックアップロールに平行に配置されると共に、前記第1マグネットロールに対して前記搬送方向に離間して配置された第2マグネットロールであって、前記複合キャリア粒子を、当該第2マグネットロールの外周面に磁気吸着して前記第2間隙に向けて当該第2マグネットロールの周方向に搬送する第2マグネットロールと、を用いて、前記バックアップロールと前記第1マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第1間隙を含む位置に形成した第1電界において、前記第1マグネットロールによって搬送された前記複合キャリア粒子に含まれていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に前記複合粒子を堆積させると共に、前記バックアップロールと前記第2マグネットロールとの間に直流電圧を印加して、前記第2間隙を含む位置に形成した第2電界において、前記第2マグネットロールによって搬送された前記複合キャリア粒子に含まれていた前記複合粒子を、前記バックアップロールによって搬送されている前記集電箔に向けて空中移動させて、前記集電箔上に前記複合粒子を堆積させて、前記集電箔上に前記複合粒子層を形成する工程であり、前記第1マグネットロールの回転方向を、前記バックアップロールの回転方向と逆方向とし、且つ、前記第2マグネットロールの回転方向を、前記バックアップロールの回転方向と同じ方向として、前記成膜工程を行う電極シートの製造方法である。
【0009】
上述の電極シートの製造方法では、1つのバックアップロールに対して2つのマグネットロール(第1マグネットロールと第2マグネットロール)を設けた成膜装置を用いて、成膜工程を行う。2つのマグネットロールのうち第2マグネットロールは、第1マグネットロールに対して搬送方向(バックアップロールの外周面に沿った集電箔の搬送方向)に離間して配置されている。すなわち、第2マグネットロールは、第1マグネットロールに対して、バックアップロールの外周面に沿って集電箔が搬送されてゆく側(換言すれば、集電箔の搬送経路の下流側)に間隔を空けて配置されている。
【0010】
従って、上述の成膜工程では、第1マグネットロールによって搬送された複合キャリア粒子に含まれていた複合粒子が、第1間隙を含む位置に形成された第1電界において、バックアップロールによって搬送されている集電箔との間に働く静電気力によって、集電箔に向けて空中移動して、集電箔上に堆積する。さらに、第2マグネットロールによって搬送された複合キャリア粒子に含まれていた複合粒子が、第2間隙を含む位置に形成された第2電界において、バックアップロールによって搬送されている集電箔との間に働く静電気力によって、集電箔に向けて空中移動して、集電箔上(第1マグネットロールから空中移動して集電箔上に堆積した複合粒子の層上)に堆積する。これにより、集電箔上に、複数の複合粒子からなる複合粒子層が形成される。
【0011】
さらに、上述の成膜工程では、第1マグネットロールの回転方向を、バックアップロールの回転方向と逆方向としている。これにより、第1マグネットロールの外周面は、集電箔と第1間隙を形成する位置において、第2電界に近づく方向へ進行する。一方、第2マグネットロールの回転方向を、バックアップロールの回転方向と同じ方向としている。これにより、第2マグネットロールの外周面は、集電箔と第2間隙を形成する位置において、第1電界に近づく方向へ進行する。
【0012】
従って、第1マグネットロールによって搬送されることによって、第1マグネットロールと共に回転運動(円運動)をしている複合粒子は、第1間隙(第1電界)において第1マグネットロールから脱離して空中移動するとき、第1マグネットロールから脱離するときの複合粒子の速度方向(回転円弧の接線方向)またはこれに近い方向に飛び立って、第2電界に近づく方向へ飛翔する。このため、第1マグネットロールから脱離して、第1マグネットロールとバックアップロール上の集電箔との間に形成される第1電界内を空中移動する複数の複合粒子のうち、集電箔上に到達する前に第1電界の外部へ飛んで行った複合粒子を、第2マグネットロールとバックアップロール上の集電箔との間に形成される第2電界内に進入させて、第2電界において、前記静電気力によって集電箔へ引き寄せて集電箔上に付着させることが可能となる。これにより、第1マグネットロールによって搬送された複合粒子について、集電箔への付着率(堆積率)を高めることができる。
【0013】
また、第2マグネットロールによって搬送されることによって、第2マグネットロールと共に回転運動(円運動)をしている複合粒子は、第2間隙(第2電界)において第2マグネットロールから脱離して空中移動するとき、第2マグネットロールから脱離するときの複合粒子の速度方向(回転円弧の接線方向)またはこれに近い方向に飛び立って、第1電界に近づく方向へ飛翔する。このため、第2マグネットロールから脱離して、第2マグネットロールとバックアップロール上の集電箔との間に形成される第2電界内を空中移動する複数の複合粒子のうち、集電箔上に到達する前に第2電界の外部へ飛んで行った複合粒子を、第1電界内に進入させて、第1電界において、前記静電気力によって集電箔へ引き寄せて集電箔上に付着させることが可能となる。これにより、第2マグネットロールによって搬送された複合粒子についても、集電箔への付着率(堆積率)を高めることができる。以上説明したように、上述の製造方法によれば、集電箔への複合粒子の付着率(堆積率)を向上させることができる。
【0014】
その後、熱プレス工程において、集電箔上に複合粒子層が形成された成膜シートを、熱プレスすることで、複合粒子層が活物質層になり、集電箔上に活物質層が形成された電極シートが作製される。従って、上述の製造方法によれば、集電箔上に形成する活物質層の目付(単位面積当たりの重量)を増大させることができる。
【0015】
さらに、前記の電極シートの製造方法であって、前記成膜工程では、前記第1マグネットロールの前記外周面に磁気吸着する前記複合キャリア粒子に含まれる前記複合粒子である第1複合粒子と、前記第2マグネットロールの前記外周面に磁気吸着する前記複合キャリア粒子に含まれる前記複合粒子である第2複合粒子とを、異種の複合粒子とする電極シートの製造方法とすると良い。
【0016】
上述の製造方法では、第1マグネットロールによって搬送される第1複合粒子と第2マグネットロールによって搬送される第2複合粒子とを異種の複合粒子として、前述の成膜工程を行う。これにより、厚み方向にグラデーションを有する複合粒子層を形成することができる。
【0017】
具体的には、例えば、成膜工程において、集電箔上に複合粒子が付着するエリアのうち、集電箔の搬送経路の上流側に位置する上流側エリア(例えば、第1電界のうちの上流側の領域)では、第1複合粒子が集電箔の表面に堆積して第1複合粒子層が形成され、集電箔の搬送経路の下流側に位置する下流側エリア(例えば、第2電界のうちの下流側の領域)では、第2複合粒子が集電箔上(第1複合粒子層よりも厚み方向外側)に堆積して第2複合粒子層が形成され、上流側エリアと下流側エリアとの間に位置する中間エリア(例えば、第1電界のうちの下流側の領域と第2電界のうちの上流側の領域)では、第1複合粒子と第2複合粒子が混合して第1複合粒子層上に堆積して、混合粒子層が形成される。このうち、中間エリア内において集電箔上に付着する第1複合粒子と第2複合粒子との混合比は、集電箔の搬送経路の上流側において第1複合粒子の比率が高く、下流側に向かうにしたがって(搬送方向に進むにしたがって)第2複合粒子の比率が増加してゆき、下流側において第2複合粒子の比率が高くなる。
【0018】
これにより、例えば、第1複合粒子からなる第1複合粒子層と、第1複合粒子と第2複合粒子が混合してなる混合粒子層と、第2複合粒子からなる第2複合粒子層とが、集電箔側から順に厚み方向に配置された複合粒子層が形成される。このうち、混合粒子層では、集電箔側において第1複合粒子の比率が高く、外表面に向かうにしたがって(集電箔から遠ざかるにしたがって)第2複合粒子の比率が増加してゆき、外表面側において第2複合粒子の比率が高くなる。すなわち、第1複合粒子が集電箔側に配置され、第2複合粒子(第1複合粒子とは種類が異なる複合粒子)が外表面側に配置され、厚み方向の中間部には、2種類の複合粒子(第1複合粒子と第2複合粒子)の混合比が厚み方向に段階的に変化する態様で2種類の複合粒子が混合して配置された、厚み方向にグラデーションを有する複合粒子層が形成される。グラデーションの種類としては、例えば、バインダ濃度(含有率)、導電材の含有率、活物質の粒子径である。
【0019】
さらに、前記の電極シートの製造方法であって、前記第1複合粒子と前記第2複合粒子とは、バインダ含有率が異なる電極シートの製造方法とすると良い。
【0020】
上述の製造方法では、第1複合粒子と第2複合粒子とを、バインダ含有率が異なる異種の複合粒子として、成膜工程を行う。これにより、厚み方向にバインダ濃度(含有率)のグラデーションを有する複合粒子層を形成することができる。例えば、第1複合粒子のバインダ含有率を、第2複合粒子のバインダ含有率よりも高くした場合には、「集電箔側においてバインダ濃度が最も高く、外表面に向かうにしたがって(集電箔から遠ざかるにしたがって)バインダ濃度が低下してゆき、外表面側においてバインダ濃度が最も低くなる」態様のバインダ濃度のグラデーションを有する複合粒子層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態にかかる電極シート製造装置の側面視概略図である。
【
図8】集電箔上に活物質層が形成された電極シートの断面概略図である。
【
図9】変形形態にかかる電極シートの製造方法を説明する図である。
【
図11】変形形態にかかる成膜シートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態>
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本実施形態にかかる電極シート製造装置100について説明する。電極シート製造装置100は、長手方向DLに延びる帯状の集電箔3と、集電箔3の第1表面3b上に形成された活物質層5と、を有する電極シート1(
図8参照)を製造する。この電極シート製造装置100は、成膜装置103と熱プレス装置105とを備える(
図1参照)。
【0023】
成膜装置103は、帯状の集電箔3の第1表面3b上に、複数の第1複合粒子15からなる複合粒子層7を形成して、集電箔3と複合粒子層7とからなる成膜シート9を作製する(
図1参照)。なお、第1複合粒子15は、溶媒を含むことなく、活物質粒子11と、活物質粒子11の表面に結合した複数のバインダ粒子13とからなる。なお、本実施形態では、集電箔3として銅箔を用いている。
【0024】
成膜装置103は、第1粒子混合部120と第2粒子混合部180とバックアップロール130と第1マグネットロール140と第2マグネットロール160と第1直流電源150と第2直流電源190とを備える(
図1参照)。このうち、第1粒子混合部120は、第1複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、磁性キャリア粒子200の表面に第1複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製する。この第1粒子混合部120は、第1マグネットロール140の下方に配置されており、第1複合粒子15及び磁性キャリア粒子200を収容する収容部121bと、この収容部121b内に設けられた2つの攪拌翼(第1攪拌翼123と第2攪拌翼124)とを有する(
図2参照)。なお、収容部121bは、箱体121の一部である。また、磁性キャリア粒子200は、フェライト粒子と、その表面を被覆するシリコーン樹脂膜と、からなる粒子である。この磁性キャリア粒子200は、第1粒子混合部120の収容部121b内に一定量収容される。また、第1複合粒子15は、図示しない第1粒子供給部から第1粒子混合部120へ供給される。
【0025】
第1攪拌翼123と第2攪拌翼124は、第1複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、磁性キャリア粒子200の表面に第1複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製しつつ、複合キャリア粒子205を上方の第1マグネットロール140に向けて送る。なお、磁性キャリア粒子200と第1複合粒子15は、両者間に働く静電気力やファンデルワールス力によって結合して、複合キャリア粒子205を形成する。
【0026】
第2粒子混合部180は、第1粒子混合部120と同等の構造を有し、第1複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、磁性キャリア粒子200の表面に第1複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製する。この第2粒子混合部180は、第2マグネットロール160の下方に配置されており、第1複合粒子15及び磁性キャリア粒子200を収容する収容部181bと、この収容部181b内に設けられた2つの攪拌翼(第1攪拌翼123と第2攪拌翼124)とを有する(
図2参照)。なお、収容部181bは、箱体121の一部である。この収容部181b内には、磁性キャリア粒子200が一定量収容される。また、第1複合粒子15は、図示しない第2粒子供給部から第2粒子混合部180へ供給される。
【0027】
バックアップロール130は、第1マグネットロール140及び第2マグネットロール160の上方に配置されている。また、バックアップロール130の近傍には、バックアップロール130と平行に搬送ロール135が配置されている。バックアップロール130及び搬送ロール135は、集電箔3を、その長手方向DLに沿った搬送方向DMに搬送する(
図1及び
図2参照)。具体的には、搬送ロール135は、集電箔3の第1表面3bに接触して、集電箔3をバックアップロール130に向けて搬送する。
【0028】
また、バックアップロール130には、バックアップロール130を回転駆動させるモータ(不図示)が連結されている。これにより、バックアップロール130は、
図1及び
図2において時計回りに回転し、当該バックアップロール130の外周面130mに集電箔3の第2表面3cが接触する態様(すなわち、集電箔3の第1表面3bを外側に向ける態様)で、搬送ロール135から送られてきた集電箔3を外周面130mに巻き付けるようにして、集電箔3を熱プレス装置105に向けて搬送する。
【0029】
第1マグネットロール140は、バックアップロール130の外周面130mに沿って周方向に搬送される集電箔3に第1間隙K1を空けて、バックアップロール130に平行に配置されている(
図1及び
図2参照)。なお、第1マグネットロール140は、バックアップロール130に第3間隙K3を空けて配置されている。本実施形態では、第3間隙K3の最小寸法は4.0mmであり、第1間隙K1の最小寸法は、第3間隙K3の最小寸法よりも集電箔3の厚み分だけ小さい。
【0030】
この第1マグネットロール140は、外周面140mに生じた磁力Fgによって、複合キャリア粒子205を外周面140mに吸着可能に構成されている。この第1マグネットロール140は、第1粒子混合部120に存在する複合キャリア粒子205を、当該第1マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着しつつ、第1間隙K1に向けて当該第1マグネットロール140の周方向に搬送する(
図2及び
図5参照)。これにより、複数の第1複合粒子15(第1複合粒子15の粉粒体)が第1間隙K1に向けて搬送される。なお、第1マグネットロール140の外周面140mに生じる磁力Fgの大きさは、第1マグネットロール140の周方向位置によって異なっており、外周面140mのうち、第1間隙K1を形成する第1間隙形成部140mp(第1磁石143N1が径方向内側に存在する部位、
図3参照)において最も強い。
【0031】
具体的には、第1マグネットロール140は、
図3に示すように、アルミニウムからなる円筒状の金属筒141と、この金属筒141の内部に金属筒141と同軸に配置された、5極構造を有する円柱状のマグネット部143とを有する。金属筒141の外周面141mは、第1マグネットロール140の外周面140mをなす。この金属筒141には、金属筒141を回転駆動させるモータ(不図示)が連結されており、これにより、金属筒141は、
図1及び
図2において反時計回りに回転する。従って、本実施形態では、第1マグネットロール140の回転方向を、バックアップロール130の回転方向と逆方向としている。
【0032】
一方、マグネット部143は、固定されており回転しない。マグネット部143は、第1マグネットロール140のロール軸に直交する断面が、それぞれ扇状の5つのフェライト磁石からなる磁石(第1磁石143N1、第2磁石143S1、第3磁石143S2、第4磁石143N2、及び第5磁石143S3)により構成されている。第1磁石143N1及び第4磁石143N2は、それぞれ、径方向外側にN極を有する磁石であり、第2磁石143S1、第3磁石143S2、及び第5磁石143S3は、それぞれ、径方向外側にS極を有する磁石である(
図2及び
図3参照)。このうち第1磁石143N1は、上方(バックアップロール130に最も近くなる位置)に配置されており、金属筒141、及び、バックアップロール130で搬送される集電箔3を介して、バックアップロール130に対向する(
図2参照)。
図2及び
図3において、この第1磁石143N1から反時計回りに、第2磁石143S1、第3磁石143S2、第4磁石143N2、第5磁石143S3が配置されている。
【0033】
第2マグネットロール160は、バックアップロール130の外周面130mに沿って周方向に搬送される集電箔3に第2間隙K2を空けて、バックアップロール130に平行に配置されている(
図1及び
図2参照)。この第2マグネットロール160は、第1マグネットロール140に対して搬送方向DM(バックアップロール130の外周面130mに沿った集電箔3の搬送方向)に離間して配置されている。すなわち、第2マグネットロール160は、第1マグネットロール140に対して、集電箔3が搬送されてゆく側(換言すれば、集電箔3の搬送経路TRの下流側)に間隔を空けて配置されている。
【0034】
なお、第2マグネットロール160は、第1マグネットロール140を、バックアップロール130の中心線を回転移動の中心として、バックアップロール130の周方向に90°(より好ましくは60°)の回転移動をさせた位置よりも、第1マグネットロール140に近い位置に配置するのが好ましい。また、第2マグネットロール160は、バックアップロール130に第4間隙K4を空けて配置されている。本実施形態では、第4間隙K4の最小寸法は、第3間隙K3の最小寸法と等しく4.0mmであり、第2間隙K2の最小寸法は、第4間隙K4の最小寸法よりも集電箔3の厚み分だけ小さい。従って、第1間隙K1の最小寸法と第2間隙K2の最小寸法とは等しい。
【0035】
第2マグネットロール160は、第1マグネットロール140と同様、外周面160mに生じた磁力Fgによって、複合キャリア粒子205を外周面160mに吸着可能に構成されている。この第2マグネットロール160は、第2粒子混合部180に存在する複合キャリア粒子205を、当該第2マグネットロール160の外周面160mに磁気吸着しつつ、第2間隙K2に向けて当該第2マグネットロール160の周方向に搬送する(
図2及び
図6参照)。これにより、複数の第1複合粒子15(第1複合粒子15の粉粒体)が第2間隙K2に向けて搬送される。なお、第2マグネットロール160の外周面160mに生じる磁力Fgの大きさは、第2マグネットロール160の周方向位置によって異なっており、外周面160mのうち、第2間隙K2を形成する第2間隙形成部160mp(第1磁石163N1が径方向内側に存在する部位、
図3参照)において最も強い。
【0036】
具体的には、第2マグネットロール160は、第1マグネットロール140と同等であり、アルミニウムからなる円筒状の金属筒161と、この金属筒161の内部に金属筒161と同軸に配置された、5極構造を有する円柱状のマグネット部163とを有する(
図3参照)。マグネット部163は、第2マグネットロール160のロール軸に直交する断面が、それぞれ扇状の5つのフェライト磁石からなる磁石(第1磁石163N1、第2磁石163S1、第3磁石163S2、第4磁石163N2、及び第5磁石163S3)により構成されている。このうち、第1磁石163N1は、上方(バックアップロール130に最も近くなる位置)に配置されており、金属筒161、及び、バックアップロール130で搬送される集電箔3を介して、バックアップロール130に対向する(
図2参照)。
【0037】
但し、第2マグネットロール160は、回転軸の左右の向きを第1マグネットロール140とは逆向きにして設けられている。このため、マグネット部163は、
図2及び
図3において、第1磁石163N1から時計回り(マグネット部143とは逆回り)に、第2磁石163S1、第3磁石163S2、第4磁石163N2、第5磁石163S3が配置される。また、本実施形態では、第2マグネットロール160の回転方向を、バックアップロール130の回転方向と同じ方向(
図1及び
図2において時計回り)としている。
【0038】
第1直流電源150は、バックアップロール130と第1マグネットロール140との間に直流電圧Vdを印加して、第1間隙K1を含む位置に形成した第1電界E1において、第1マグネットロール140によって搬送されていた複数の第1複合粒子15(複合キャリア粒子205に含まれていた第1複合粒子15)を、バックアップロール130によって搬送されている集電箔3に向けて空中移動させて、集電箔3の第1表面3b上に第1複合粒子15を堆積させる(
図2及び
図7参照)。また、第2直流電源190は、バックアップロール130と第2マグネットロール160との間に直流電圧Vdを印加して、第2間隙K2を含む位置に形成した第2電界E2において、第2マグネットロール160によって搬送されていた複数の第1複合粒子15(複合キャリア粒子205に含まれていた第1複合粒子15)を、バックアップロール130によって搬送されている集電箔3に向けて空中移動させて、集電箔3の第1表面3b上に第1複合粒子15を堆積させる(
図2及び
図7参照)。これにより、複数の第1複合粒子15からなる複合粒子層7が、集電箔3の第1表面3b上に形成されて、成膜シート9が作製される(
図1参照)。
【0039】
具体的には、第1直流電源150は、その負極が第1マグネットロール140に電気的に接続され、正極がバックアップロール130に電気的に接続されている。なお、バックアップロール130は接地されている。本実施形態では、第1直流電源150により、第1マグネットロール140の電位が-600V、バックアップロール130の電位が0Vとなるため、第1マグネットロール140とバックアップロール130との間に直流電圧Vd=-600Vが掛けられる。また、第2直流電源190は、その負極が第2マグネットロール160に電気的に接続され、正極がバックアップロール130に電気的に接続されている。バックアップロール130は接地されている。本実施形態では、第2直流電源190により、第2マグネットロール160の電位が-600V、バックアップロール130の電位が0Vとなるため、第2マグネットロール160とバックアップロール130との間に直流電圧Vd=-600Vが掛けられる。
【0040】
これにより、バックアップロール130に巻きつけられて搬送される集電箔3と第1マグネットロール140との第1間隙K1を含む位置に第1電界E1が形成され、この第1電界E1内において静電気力Fsが生じる(
図7参照)。さらには、バックアップロール130に巻きつけられて搬送される集電箔3と第2マグネットロール160との第2間隙K2を含む位置に第2電界E2が形成され、この第2電界E2内においても静電気力Fsが生じる。
【0041】
本実施形態では、第1マグネットロール140によって搬送されていた複数の第1複合粒子15(複合キャリア粒子205に含まれていた第1複合粒子15)が、第1電界E1において、バックアップロール130(その外周面130m上に位置する集電箔3)との間に働く静電気力Fsによって、集電箔3の第1表面3bに向かって空中移動(飛翔)して、集電箔3の第1表面3b上に付着する(
図2及び
図7参照)。さらに、第2マグネットロール160によって搬送されていた複数の第1複合粒子15(複合キャリア粒子205に含まれていた第1複合粒子15)が、第2電界E2において、バックアップロール130(その外周面130m上に位置する集電箔3)との間に働く静電気力Fsによって、集電箔3の第1表面3bに向かって空中移動(飛翔)して、集電箔3の第1表面3b上に付着する。なお、
図1及び
図2では、磁性キャリア粒子200及び第1複合粒子15の図示を一部省略している。
【0042】
また、熱プレス装置105は、第1加熱加圧ロール171と、この第1加熱加圧ロール171の下方に第7間隙K7を空けて第1加熱加圧ロール171に平行に配置された第2加熱加圧ロール173とを有する(
図1参照)。第1加熱加圧ロール171及び第2加熱加圧ロール173には、それぞれ、これらを回転駆動させるモータ(不図示)が連結されている。また、第1加熱加圧ロール171及び第2加熱加圧ロール173には、それぞれヒータ(不図示)が内蔵されている。この熱プレス装置105は、成膜装置103によって作製されて搬送される成膜シート9(集電箔3の第1表面3b上に複合粒子層7が形成されたシート)を、第1加熱加圧ロール171と第2加熱加圧ロール173との間で、ホットロールプレス(熱プレス)して、電極シート1を作製する。
【0043】
次に、本実施形態の電極シート1の製造方法について説明する。本実施形態では、前述した電極シート製造装置100を用いて、電極シート1を製造する。まず、成膜工程において、複数の第1複合粒子15からなる複合粒子層7を、集電箔3の第1表面3b上に形成して、成膜シート9(
図1参照)を作製する。具体的には、まず、第1粒子混合部120において、第1複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、磁性キャリア粒子200の表面に第1複合粒子15が付着した複合キャリア粒子205を作製する。これと同様に、第2粒子混合部180においても、第1複合粒子15と磁性キャリア粒子200とを混合して、複合キャリア粒子205を作製する(
図2参照)。
【0044】
続いて、第1粒子混合部120において作製された複合キャリア粒子205を、第1マグネットロール140の下側において、第1マグネットロール140の外周面140mに吸着させる。具体的には、第1粒子混合部120の第2攪拌翼124と第3攪拌翼125によって上方の第1マグネットロール140に向けて送られた複合キャリア粒子205が、第1マグネットロール140の外周面140mに生じている磁力Fgによって、第1マグネットロール140の外周面140mに吸着する。これにより、第1マグネットロール140の外周面140mに、複数の複合キャリア粒子205からなる複合キャリア粒子層210が形成される(
図5参照)。これと同様に、第2粒子混合部180において作製された複合キャリア粒子205を、第2マグネットロール160の下側において、第2マグネットロール160の外周面160mに吸着させる。これにより、第2マグネットロール160の外周面160mに、複数の複合キャリア粒子205からなる複合キャリア粒子層210が形成される(
図6参照)。
【0045】
第1マグネットロール140の外周面140m上の複合キャリア粒子層210は、第1マグネットロール140の回転に伴って上方に移動し、スキージ127によって均される(
図5参照)。なお、スキージ127は、第1粒子混合部120の上方において、第1マグネットロール140の外周面140mに対して第5間隙K5を空けて第1マグネットロール140の側方に配置されている。このため、複合キャリア粒子層210の厚みは、スキージ127によって第5間隙K5の寸法に調整される。その後、この複合キャリア粒子層210は、第1マグネットロール140の回転に伴って、第1間隙K1に向かって移動する。また、バックアップロール130によって、集電箔3が長手方向DLに沿った搬送方向DM搬送される。
【0046】
これと同様に、第2マグネットロール160の外周面160m上の複合キャリア粒子層210は、第2マグネットロール160の回転に伴って上方に移動し、スキージ187によって均される(
図6参照)。なお、スキージ187は、第2粒子混合部180の上方において、第2マグネットロール160の外周面160mに対して第6間隙K6を空けて第1マグネットロール140の側方に配置されている。このため、複合キャリア粒子層210の厚みは、スキージ187によって第6間隙K6の寸法(第5間隙K5と同寸法)に調整される。その後、この複合キャリア粒子層210は、第2マグネットロール160の回転に伴って、第2間隙K2に向かって移動する。
【0047】
ところで、第1マグネットロール140の外周面140mに生じる磁力Fgの大きさは、第1間隙K1を形成する第1間隙形成部140mpにおいて最も強くなる。このため、第1マグネットロール140によって搬送されて第1間隙K1に達した複合キャリア粒子205(複合キャリア粒子層210を形成していた複合キャリア粒子205)は、複数の複合キャリア粒子205が線状に連なった磁気穂220を形成する(
図7参照)。そして、第1間隙K1において磁気穂220が形成されるとき(あるいは形成された後)、複合キャリア粒子205に含まれる第1複合粒子15が、磁性キャリア粒子200の表面から脱離して、第1電界E1に放出されて空中移動(飛翔)する。
【0048】
そして、この第1複合粒子15は、第1電界E1において、バックアップロール130上の集電箔3との間に働く静電気力Fsによって集電箔3の第1表面3bに引き寄せられるようにして、バックアップロール130上の集電箔3の第1表面3bに向かって空中移動し、集電箔3の第1表面3b上に付着(堆積)する(
図7参照)。なお、第1電界E1は、第1直流電源150によって、バックアップロール130と第1マグネットロール140との間に直流電圧Vdを印加することによって、第1間隙K1を含む位置に形成されている。また、第1マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着している磁性キャリア粒子200は、そのまま外周面140m上に残る。
【0049】
これと同様に、第2マグネットロール160によって搬送されて第2間隙K2に達した複合キャリア粒子205(複合キャリア粒子層210を形成していた複合キャリア粒子205)も、複数の複合キャリア粒子205が線状に連なった磁気穂220を形成する(
図7参照)。そして、第2間隙K2において磁気穂220が形成されるとき(あるいは形成された後)、複合キャリア粒子205に含まれる第1複合粒子15が、磁性キャリア粒子200の表面から脱離して、第2電界E2に放出されて空中移動(飛翔)する。
【0050】
そして、この第1複合粒子15は、第2電界E2において、バックアップロール130上の集電箔3との間に働く静電気力Fsによって集電箔3の第1表面3bに引き寄せられるようにして、バックアップロール130上の集電箔3の第1表面3bに向かって空中移動し、集電箔3の第1表面3b上(詳細には、第1マグネットロール140から空中移動して集電箔3の第1表面3b上に堆積した第1複合粒子15の層上)に付着(吸着)する(
図7参照)。なお、第2電界E2は、第2直流電源190によって、バックアップロール130と第2マグネットロール160との間に直流電圧Vdを印加することによって、第2間隙K2を含む位置に形成されている。また、第2マグネットロール160の外周面160mに磁気吸着している磁性キャリア粒子200は、そのまま外周面160m上に残る。これにより、集電箔3の第1表面3b上には、第1複合粒子15が堆積した複合粒子層7が連続して形成される。
【0051】
その後、第1マグネットロール140の外周面140mに吸着したまま残った磁性キャリア粒子200は、第1マグネットロール140の回転に伴って反時計回りに下方に移動する。そして、S極同士が隣り合う第2磁石143S1と第3磁石143S2との境界部140mq(
図3参照)で、外周面140mから剥がれ落ち、第1粒子混合部120の収容部121b内に戻る。その後、この磁性キャリア粒子200は、第1粒子混合部120において第1複合粒子15と混合され、新たな第1複合粒子15が付着して複合キャリア粒子205を形成する。
【0052】
これと同様に、第2マグネットロール160の外周面160mに吸着したまま残った磁性キャリア粒子200も、第2マグネットロール160の回転に伴って時計回りに下方に移動する。そして、S極同士が隣り合う第2磁石163S1と第3磁石163S2との境界部160mq(
図4参照)で、外周面160mから剥がれ落ち、第2粒子混合部180の収容部181b内に戻る。その後、この磁性キャリア粒子200は、第2粒子混合部180において第1複合粒子15と混合され、新たな第1複合粒子15が付着して複合キャリア粒子205を形成する。このようにして、帯状の集電箔3と、集電箔3の第1表面3b上に形成された複合粒子層7と、を備える成膜シート9が作製される。
【0053】
ところで、本実施形態の成膜工程では、第1マグネットロール140の回転方向を、バックアップロール130の回転方向と逆方向としている。これにより、第1マグネットロール140の外周面140mは、集電箔3と第1間隙K1を形成する位置において、第2電界E2に近づく方向へ進行する(
図2及び
図7参照)。一方、第2マグネットロール160の回転方向を、バックアップロール130の回転方向と同じ方向としている。これにより、第2マグネットロール160の外周面160mは、集電箔3と第2間隙K2を形成する位置において、第1電界E1に近づく方向へ進行する。
【0054】
従って、第1マグネットロール140によって搬送されることによって、第1マグネットロール140と共に回転運動(円運動)をしている第1複合粒子15は、第1間隙K1(第1電界E1)において第1マグネットロール140から脱離して空中移動するとき、第1マグネットロール140から脱離するときの第1複合粒子15の速度方向(回転円弧の接線方向)またはこれに近い方向に飛び立って、第2電界E2に近づく方向へ飛翔する(
図7参照)。このため、第1マグネットロール140から脱離して、第1電界E1内を空中移動する複数の第1複合粒子15のうち、集電箔3上に到達する前に第1電界E1の外部へ飛んで行った第1複合粒子15を、第2電界E2内に進入させて、第2電界E2において、静電気力Fsによって集電箔3へ引き寄せて集電箔3上に付着させることが可能となる。これにより、第1マグネットロール140によって搬送された第1複合粒子15について、集電箔3への付着率(堆積率)を高めることができる。
【0055】
また、第2マグネットロール160によって搬送されることによって、第2マグネットロール160と共に回転運動(円運動)をしている第1複合粒子15は、第2間隙K2(第2電界E2)において第2マグネットロール160から脱離して空中移動するとき、第2マグネットロール160から脱離するときの第1複合粒子15の速度方向(回転円弧の接線方向)またはこれに近い方向に飛び立って、第1電界E1に近づく方向へ飛翔する(
図7参照)。このため、第2マグネットロール160から脱離して、第2電界E2内を空中移動する複数の第1複合粒子15のうち、集電箔3上に到達する前に第2電界E2の外部へ飛んで行った第1複合粒子15を、第1電界E1内に進入させて、第1電界E1において、静電気力Fsによって集電箔3へ引き寄せて集電箔3上に付着させることが可能となる。これにより、第2マグネットロール160によって搬送された第1複合粒子15についても、集電箔3への付着率(堆積率)を高めることができる。
【0056】
なお、第1マグネットロール140の回転方向を、バックアップロール130の回転方向と同じ方向とした場合は、第1複合粒子15は、第1マグネットロール140から脱離して空中移動するとき、第2電界E2から遠ざかる方向(
図7において右側)へ飛翔することになるので、集電箔3上に到達する前に第1電界E1の外部へ飛んで行った第1複合粒子15が集電箔3に付着(堆積)する可能性は、本実施形態に比べて低くなる。また、第2マグネットロール160の回転方向を、バックアップロール130の回転方向と逆方向とした場合は、第1複合粒子15は、第2マグネットロール160から脱離して空中移動するとき、第1電界E1から遠ざかる方向(
図7において左側)へ飛翔することになるので、集電箔3上に到達する前に第2電界E2の外部へ飛んで行った第1複合粒子15が集電箔3に付着(堆積)する可能性も、本実施形態に比べて低くなる。
【0057】
次に、熱プレス工程に進み、成膜装置103によって作製されて搬送される成膜シート9を、熱プレス装置105によってホットロールプレス(熱プレス)する。これにより、複合粒子層7が厚み方向DTに圧縮(圧密化)されて活物質層5となり、電極シート1(
図8参照)が作製される。以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、集電箔3への第1複合粒子15の付着率(堆積率)を向上させることができる。さらには、活物質層5の目付(単位面積当たりの重量)を増大させることができる。この電極シート1は、例えば、リチウムイオン二次電池の電極シート(負極シートまたは正極シート)として用いることができる。また、本実施形態では、集電箔3の第1表面3bのみに活物質層5を形成したが、第2表面3cにも活物質層5を形成するようにしても良い。
【0058】
<変形形態>
次に、変形形態にかかる電極シート301の製造方法について説明する。本変形形態の製造方法は、実施形態の製造方法と比較して、使用する製造装置は同じ(電極シート製造装置100)であるが、第2マグネットロール160によって搬送する複合粒子が異なる。従って、ここでは、実施形態と異なる点を中心に説明し、実施形態と同様な点については説明を省略または簡略化する。
【0059】
本変形形態の成膜工程では、第1マグネットロール140の外周面140mに磁気吸着する複合キャリア粒子205に含まれる複合粒子(第1複合粒子15)と、第2マグネットロール160の外周面160mに磁気吸着する複合キャリア粒子405に含まれる複合粒子(第2複合粒子315)とを、異種の複合粒子とする。具体的には、第1複合粒子15と第2複合粒子315とを、バインダ含有率(複合粒子におけるバインダ粒子13の含有率、換言すれば、活物質粒子11の表面に結合するバインダ粒子13の量)のみが異なる異種の複合粒子として、成膜工程を行う(
図9及び
図10参照)。
【0060】
これにより、厚み方向DTにバインダ濃度(含有率)のグラデーションを有する複合粒子層307を形成することができる(
図11参照)。具体的には、本変形形態では、第2複合粒子315のバインダ含有率を、第1複合粒子15のバインダ含有率よりも低くしているので、「集電箔3側においてバインダ濃度(バインダ粒子13の含有率)が最も高く、外表面(
図11において上面)に向かうにしたがって(集電箔3から遠ざかるにしたがって)バインダ濃度が低下してゆき、外表面側においてバインダ濃度が最も低くなる」態様のバインダ濃度のグラデーションを有する複合粒子層307を形成することができる。
【0061】
具体的には、成膜工程において、飛翔した複合粒子(第1複合粒子15または第2複合粒子315)が集電箔3上に付着するエリアAR(第1電界E1及び第2電界E2に含まれる領域、
図10参照)のうち、集電箔3の搬送経路TRの上流側(
図10において右側)に位置する上流側エリアAR1(第1電界E1に含まれる領域のうちの上流側の領域)では、第1複合粒子15が集電箔3の第1表面3bに堆積して第1複合粒子層307bが形成され(
図11参照)、集電箔3の搬送経路TRの下流側(
図10において左側)に位置する下流側エリアAR3(第2電界E2に含まれる領域のうちの下流側の領域)では、第2複合粒子315が集電箔3上(第1複合粒子層307bよりも厚み方向DTの外側)に堆積して第2複合粒子層307dが形成され、上流側エリアAR1と下流側エリアAR3との間に位置する中間エリアAR2(第1電界E1のうちの下流側の領域と第2電界E2のうちの上流側の領域)では、第1複合粒子15と第2複合粒子315が混合して第1複合粒子層307b上に堆積して、混合粒子層307cが形成される。このうち、中間エリアAR2内において集電箔3上に付着する第1複合粒子15と第2複合粒子315との混合比は、集電箔3の搬送経路TRの上流側において第1複合粒子15の比率が高く、下流側に向かうにしたがって(搬送方向DMに進むにしたがって)第2複合粒子315の比率が増加してゆき、下流側において第2複合粒子315の比率が高くなる。
【0062】
これにより、第1複合粒子15(
図11において黒丸で示す)からなる第1複合粒子層307bと、第1複合粒子15と第2複合粒子315(
図11において白丸で示す)が混合してなる混合粒子層307cと、第2複合粒子315からなる第2複合粒子層307dとが、集電箔3側から順に厚み方向DTに配置された複合粒子層307が形成される(
図10及び
図11参照)。このうち、混合粒子層307cでは、集電箔3側において第1複合粒子15の比率が高く、外表面(
図11のいて上面)に向かうにしたがって(集電箔3から遠ざかるにしたがって)第2複合粒子315の比率が増加してゆき、外表面側において第2複合粒子315の比率が高くなる。従って、「集電箔3側においてバインダ濃度が最も高く、外表面(
図11において上面)に向かうにしたがってバインダ濃度が段階的に低下してゆき、外表面側においてバインダ濃度が最も低くなる」態様のバインダ濃度のグラデーションを有する複合粒子層307を形成することができる。
【0063】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態に即して説明したが、本発明は前記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。例えば、実施形態では、複合粒子として、活物質粒子11と、活物質粒子11の表面に結合したバインダ粒子13と、からなる第1複合粒子15を用いたが、活物質粒子と、活物質粒子の表面に結合したバインダ粒子及び導電粒子と、からなる複合粒子を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1,301 電極シート
3 集電箔
5,305 活物質層
7,307 複合粒子層
9,309 成膜シート
11 活物質粒子
13 バインダ粒子
15 第1複合粒子
100 電極シート製造装置
103 成膜装置
130 バックアップロール
140 第1マグネットロール
160 第2マグネットロール
200 磁性キャリア粒子
205,405 複合キャリア粒子
315 第2複合粒子