(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ポリアミド-イミド共重合体およびそれを含むフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/14 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
C08G73/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021139677
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506021156
【氏名又は名称】律勝科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,タン-チー
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ボ-ハン
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127503(JP,A)
【文献】特開平03-045625(JP,A)
【文献】国際公開第2020/141713(WO,A1)
【文献】特開2018-119141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00 - 73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミンモノマー、二無水物モノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーを共重合して得られるポリアミド-イミド共重合体であって、
芳香族ジカルボニルモノマーのモル数が、二無水物モノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーの合計モル数の40%~60%を占め;
芳香族ジアミンモノマーは、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンを含み、アミド基を含むジアミンは、下記式(1)で表され、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンは、芳香族ジアミンモノマーの全モル数の5~20%を占めており;
【化1】
式中、mは、0~5の整数であり;Q
1は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CO-、-SO
2-、-SO
2NH-、または-NHSO
2-であり;X
1及びX
2は、同じ又は異なるものであり、X
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CONHCH
2-、-CH
2CONH-、-CH
2NHCO-、-NHCOCH
2-、-COO-、-OCO-、-COOCH
2-、-CH
2COO-、-CH
2OCO-、-OCOCH
2-、-CO-、-CH
2CO-、-COCH
2-、-CH
2SO
2NH-、
-SO
2
NHCH
2
-、-NHSO
2C
H
2
-、または-CH
2NHSO
2-であり;R
1及びR
2は、同じ又は異なるものであり、R
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、単結合、C1-C30アルキレン、二価のC1-C30炭素環、または二価のC1-C30複素環であり、アルキレン、二価の炭素環、および二価の複素環は、1つ以上のフッ素または有機基で置換されていてもよく;Y
1及びY
2は、同じ又は異なるものであり、Y
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、水素原子または-CONH
2であり、但し、Y
1及びY
2のうち少なくとも1つは、-CONH
2である、
ポリアミド-イミド共重合体。
【請求項2】
前記芳香族ジアミンモノマーが、さらに、2-(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレンジアミン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、パラ-メチレンジアニリン(pMDA)、メタ-メチレンジアニリン(mMDA)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、2,2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(33-6F)、(2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ-フェニル)-ヘキサフルオロプロパン(DBOH)、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン(FFDA
)、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記アミド基を含むジアミンが、下記:
【化2-1】
【化2-2】
又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
前記二無水物モノマーが、芳香族二無水物、脂肪族二無水物、又はそれらの任意の組み合わせからなる、請求項1に記載の共重合体。
【請求項5】
前記芳香族二無水物が、4,4’-(4,4’-イソプロピルジエンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピレン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項4に記載の共重合体。
【請求項6】
前記脂肪族二無水物が、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、オクタヒドロ-ペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、(8aS)-ヘキサヒドロ-3H-4,9-メチルフラン[3,4-g]イソペンテン-1,3,5,7(3aH)-テトラケトン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デク-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項4に記載の共重合体。
【請求項7】
前記芳香族ジカルボニルモノマーが、4,4’-ビフェニルジカルボニルクロリド(BPC)、イソフタロイルクロリド(IPC)、テレフタロイルクロリド(TPC)、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の共重合体。
【請求項8】
前記芳香族ジアミンモノマーは、ニトリル基で置換された芳香族ジアミンを除くものである、請求項1記載の共重合体。
【請求項9】
請求項1に記載の共重合体を含む、フィルム。
【請求項10】
5GPa以上の弾性率を有する、請求項9に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高剛性(弾性率>5GPa)、良好な耐薬品性、低熱膨張率を有する無色透明なポリアミド-イミド共重合体(polyamide-imide copolymer)およびそのフィルムに関する。また、本発明は、そのフィルムを用いた電子デバイス材料、TFT基板、透明電極基板、フレキシブルディスプレイ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの開発では、薄型化、軽量化、さらにはフレキシブル化が現在の方向性となっている。そのため、ガラス基板をいかに薄く、軽くしていくか、さらにはガラス基板をプラスチック基板に置き換えていくかは、当業界が考えている課題である。
【0003】
ポリイミドポリマーは、熱安定性、高い機械的強度、耐薬品性を持つプラスチック材料の一種である。しかし、分子構造上、分子間や分子内での電荷移動が起こりやすく、その結果、ポリイミドの外観が黄色くなってしまうため、用途が限られてしまう。電荷移動の現象を抑えるために、一般的には連結基を導入して主鎖を柔軟にしたり、いくつかの大きな基を導入してスタッキング状況を壊したりすることで、効果を得ることもできる。一般的な基としては、例えば、(-O-)、(-CO-)、(-CH2-)、(-C(CF3)2-)などが挙げられる。
【0004】
また、電荷移動を起こさない脂環式テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを組み合わせて形成した透明性の高い半脂環式ポリイミドを用いることも提案されている。このような半脂環式ポリイミドは、透明性と屈曲性を兼ね備えている。しかし、上記提案に従って製造されたポリイミド樹脂は、湾曲構造や脂肪族環化合物のために十分な耐熱性を発揮することが難しく、このポリイミド樹脂を用いて製造されたフィルムは、機械的特性が悪く、剛性が不十分であるという課題が残る。
【0005】
近年、ポリイミドの剛性や耐スクラッチ性を向上させるために、ポリアミド単位構造を組み込んだポリアミド-イミド共重合体が開発されている。しかし、ポリアミド単位構造をポリイミドに導入すると、耐スクラッチ性は向上するが、耐溶剤性に限界がある。特に、後工程のフォトレジストインクや耐スクラッチ性ハードコート塗料の塗布時にアトマイゼーション(atomization)が発生しやすくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記技術的課題に鑑み、本発明の目的は、フレキシブルディスプレイや太陽電池の基板に用いるのに適したフィルムを提供することである。本発明のフィルムは、透明性、高剛性、良好な耐薬品性、低い線熱膨張係数を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、芳香族ジアミンモノマー、二無水物モノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーを共重合して得られるポリアミド-イミド共重合体であって、芳香族ジカルボニルモノマーのモル数が、二無水物モノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーの合計モル数の40%~60%を占めるポリアミド-イミド共重合体を提供する。芳香族ジアミンモノマーは、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンを含み、アミド基を含むジアミンは、下記式(1)で表され、アミド基(-CONH)
2を含むジアミンが、芳香族ジアミンモノマーの総モル数の5~20%を占める。
【化1】
式中、mは、0~5の整数であり;Q
1は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、それぞれ独立に、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CO-、-SO
2-、-SO
2NH-、または-NHSO
2-であり;X
1及びX
2は、同じ又は異なるものであり、X
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CONHCH
2-、CH
2CONH-、-CH
2NHCO-、-NHCOCH
2-、-COO-、-OCO-、-COOCH
2-、-CH
2COO-、-CH
2OCO-、-OCOCH
2-、-CO-、-CH
2CO-、-COCH
2-、-CH
2SO
2NH-、-SO2NHCH
2-、-NHSO
2CH
2-、または-CH
2NHSO
2-であり;R
1及びR
2は、同じ又は異なるものであり、R
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、単結合、C1-C30アルキレン、二価のC1-C30炭素環、または二価のC1-C30複素環であり、アルキレン、二価の炭素環、および二価の複素環は、1つ以上のフッ素または有機基で置換されていてもよく;Y
1及びY
2は、同じ又は異なるものであり、Y
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、水素原子、または-CONH
2であり、但し、Y
1及びY
2のうち少なくとも1つは-CONH
2である。
【0008】
好ましくは、芳香族ジアミンモノマーは、さらに、2-(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレンジアミン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、パラ-メチレンジアニリン(pMDA)、メタ-メチレンジアニリン(mMDA)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、2,2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(33-6F)、(2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ-フェニル)-ヘキサフルオロプロパン(DBOH)、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン(FFDA)、ポリエーテルアミン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0009】
好ましくは、アミド基を含むジアミンは、下記:
【化2-1】
【化2-2】
又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0010】
好ましくは、二無水物モノマーは、芳香族二無水物、脂肪族二無水物、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0011】
好ましくは、芳香族二無水物は、4,4’-(4,4’-イソプロピルジエンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピレン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0012】
好ましくは、脂肪族二無水物は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、オクタヒドロ-ペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、(8aS)-ヘキサヒドロ-3H-4,9-メチルフラン[3,4-g]イソペンテン-1,3,5,7(3aH)-テトラケトン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デク-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボキシル二無水物、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0013】
好ましくは、芳香族ジカルボニルモノマーは、4,4’-ビフェニルジカルボニルクロリド(BPC)、イソフタロイルクロリド(IPC)、テレフタロイルクロリド(TPC)、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0014】
好ましくは、芳香族ジアミンモノマーは、ニトリル基で置換された芳香族ジアミンは除く。
【0015】
また、本発明は、上記の共重合体を含む、フィルムを提供する。
【0016】
好ましくは、フィルムは5GPa以上の弾性率を有する。
【0017】
本発明によれば、透明性、高剛性、良好な耐薬品性、低い線熱膨張係数を有するポリアミド-イミドフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で提供されるポリアミド-イミド共重合体は、芳香族ジアミンモノマー、二無水物モノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーを共重合して得られるものであり、芳香族ジカルボニルモノマーのモル数が、二無水物モノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーの合計モル数の40%~60%を占めるものである。芳香族ジアミンモノマーが、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンを含み、アミド基を含むジアミンが下記式(1)で表され、アミド基(-CONH
2)を含むジアミンが、芳香族ジアミンモノマーの総モル数の5~20%を占める。
【化3】
式中、mは、0~5の整数(1、2、3、4など)であり;Q
1は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、複数のQ
1が存在する場合、複数のQ
1は、互いに、同じでも異なっていてもよい)、それぞれ独立に、-CH
2-、-C
2H
4-、-C
2H
2-、-C
3H
6-、-C
3H
4-、-C
4H
8-、-C
4H
6-、-C
4H
4-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CONH-、-NHCO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-CO-、-SO
2-、-SO
2NH-、または-NHSO
2-であり;X
1及びX
2は、同じ又は異なるものであり、X
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、複数のX
2が存在する場合、複数のX
2は、互いに、同じでも異なっていてもよい)、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CONHCH
2-、-CH
2CONH-、-CH
2NHCO-、-NHCOCH
2-、-COO-、-OCO-、-COOCH
2-、-CH
2COO-、-CH
2OCO-、-OCOCH
2-、-CO-、-CH
2CO-、-COCH
2-、-CH
2SO
2NH-、-SO2NHCH
2-、-NHSO
2CH
2-、または-CH
2NHSO
2-であり;R
1及びR
2は、同じ又は異なるものであり、R
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、複数のR
2がある場合、複数のR
2は、互いに、同じでも異なっていてもよい)、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、単結合、C1-C30アルキレン、二価のC1-C30炭素環、または二価のC1-C30複素環であり、アルキレン、二価の炭素環、および二価の複素環は、1つまたは複数のフッ素または有機基で置換されていてもよく;Y
1及びY
2は、同じ又は異なるものであり、Y
2は、現れる毎に同じ又は異なるものであり(すなわち、複数のY
2が存在する場合、複数のY
2は、互いに、同じでも異なっていてもよい)、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、水素原子または-CONH
2であり、但し、Y
1及びY
2のうち少なくとも1つは-CONH
2である。
【0019】
芳香族ジアミンモノマーは、他の芳香族ジアミンモノマーを含んでいてもよく、そのようなものとして、2-(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレンジアミン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、
パラ-メチレンジアニリン(pMDA)、メタ-メチレンジアニリン(mMDA)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、2,2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(33-6F)、(2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(44-6F)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(4DDS)、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(3DDS)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン(6HMDA)、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ-フェニル)-ヘキサフルオロプロパン(DBOH)、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン(DBSDA)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン(FFDA)、ポリエーテルアミン、または、上記うちの2つ以上(例えば:3つ以上)を組み合わせたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリエーテルアミンとしては、例えば、JEFFAMINE(登録商標)M600、M1000、D400、D2000、ED600、ED900が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明において、式(1)で表されるアミド基を含むジアミンは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。式(1)で表されるアミド基を含むジアミンの具体例としては、下記:
【化4-1】
【化4-2】
が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
好ましい一実施形態では、芳香族ジアミンモノマーは、ケイ素原子を含まず、および/または、ニトリル基で置換された芳香族ジアミンを含まない。
【0022】
二無水物モノマーは、芳香族二無水物、脂肪族二無水物、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。芳香族二無水物としては、例えば、4,4’-(4,4’-イソプロピルジエンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピレン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物、またはスルホニルジフタル酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。芳香族二無水物は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。脂肪族二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビ(シクロヘキサン)-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、オクタヒドロ-ペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、(8aS)-ヘキサヒドロ-3H-4,9-メチルフラン[3,4-g]イソペンテン-1,3,5,7(3aH)-テトラケトン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.2.02,5]デク-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’スピロ-2’-ノルボルナン-5,5’,6,6’-テトラカルボン酸二無水物、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物、または(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸二無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。脂肪族二無水物は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明において、芳香族ジカルボニルモノマーは、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、芳香族ジカルボニルモノマーは、4,4’-ビフェニルジカルボニルクロリド、イソフタロイルクロリド、またはテレフタロイルクロリドでありうる。
【0024】
好ましい一実施形態では、ポリアミド-イミド共重合体は、ポリアミック酸のイミド化生成物であり、芳香族ジアミンモノマー、芳香族二無水物モノマー、および芳香族ジカルボニルモノマーの共重合によって得られる。ポリアミック酸は、ブロック共重合体またはランダム共重合体でありえ、ポリアミド-イミド共重合体もまた、ブロック共重合体またはランダム共重合体でありうる。
【0025】
好ましい一実施形態では、ポリアミド-イミド共重合体は、少なくとも2つの芳香族ジアミンモノマー、少なくとも2つの芳香族二無水物モノマー、および少なくとも1つの芳香族ジカルボニルモノマーの共重合によって得られる。他の好ましい実施形態では、ポリアミド-イミド共重合体は、少なくとも3つの芳香族ジアミンモノマー、少なくとも2つの芳香族二無水物モノマー、および少なくとも1つの芳香族ジカルボニルモノマーの共重合によって得られる。
【0026】
ポリアミック酸を調製する際の重合条件は、特に限定されない。ポリアミック酸の重合は、好ましくは、不活性環境下で1℃~100℃で溶液重合することにより行うことができる。ポリアミック酸の重合に適した溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホン、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、またはγ-ブチロラクトンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
ポリアミック酸のイミド化は、熱的または化学的に行うことができる。例えば、無水酢酸やピリジンなどの化合物により、ポリアミック酸を化学的にポリイミド化することができる。
【0028】
また、本発明は、ポリアミド-イミド共重合体を含むフィルムを提供する。好ましい一実施形態では、フィルムは、ポリアミド-イミド共重合体によって作られる。
【0029】
好ましい一実施形態では、フィルムは、ポリアミド-イミド共重合体を溶媒に溶解してポリアミド-イミド溶液を得た後、当該溶液をろ過してろ過液を得て、当該ろ過液を基材上にコーティングしてコーティング基材を得て、当該コーティング基材を焼成することによって得られる。塗布方法は特に限定されず、ドロップコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、スロットダイコーティングなどが挙げられる。焼成温度は、230~400℃、例えば、250~350℃、275~325℃、290~310℃とすることができる。フィルムの厚さは、5μm~50μmが好ましく、例えば、10μm、20μm、30μmまたは40μmである。
【0030】
好ましい一実施形態では、50℃~200℃の範囲で、フィルムの線熱膨張係数(CTE)を30%以上、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上低減することができる。
【0031】
好ましい一実施形態では、フィルムのYI(黄色度指数)は、3よりも低く、例えば、2.5、2.2、2、または1.8よりも低い。他の好ましい実施形態では、フィルムの弾性率は5GPaより大きく、例えば、5.3、5.7、6.0、6.3、または6.5より大きい。
【0032】
好ましい一実施形態では、フィルムの全光線透過率は、89%以上である。他の好ましい実施形態では、フィルムのヘイズが1%未満であり、ヘイズのばらつきが5%未満である。
【0033】
本発明の有効性を強調するために、本発明者らは、以下に示す方法で実施例および比較例を完成させた。以下の実施例および比較例は、本発明をさらに説明するものである。しかしながら、これらの実施例および比較例は、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。本発明の技術分野において通常の技能を有する者が、本発明の精神から逸脱することなく行うあらゆる変更および修正は、本発明の範囲に含まれる。
【0034】
例において使用したモノマー
【0035】
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)
【化5】
【0036】
2-(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレンジアミン
【化6】
【0037】
3,5-ジアミノベンズアミド(3,5-DABAM)
【化7】
【0038】
5,5’-メチレンビス(2-アミノベンズアミド)
【化8】
【0039】
2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)
【化9】
【0040】
シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)
【化10】
【0041】
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)
【化11】
【0042】
4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)
【化12】
【0043】
【0044】
【0045】
実施例1:
【0046】
9mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0047】
実施例2:
【0048】
9mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのs-BPDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0049】
実施例3:
【0050】
9mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのODPAと3mmolの6FDAを加え、4時間攪拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0051】
実施例4:
【0052】
9mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と1mmolの5,5’-メチレンビス(2-アミノベンズアミド)を反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0053】
実施例5:
【0054】
9.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0055】
実施例6:
【0056】
8mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と2mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmoleの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0057】
実施例7:
【0058】
7mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2mmolの2-(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレンジアミン、1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0059】
実施例8:
【0060】
9.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのIPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0061】
実施例9:
【0062】
9.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと2mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、6mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。その後、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0063】
実施例10:
【0064】
9.5mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と0.5mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、3mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間攪拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、4mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0065】
比較例1:
【0066】
10mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の15重量%に相当する量であった。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0067】
比較例2:
【0068】
9.9mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と0.1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0069】
比較例3:
【0070】
7mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と3mmol3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、5mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0071】
比較例4:
【0072】
10mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、3mmolのCBDAと3mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、4mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0073】
比較例5:
【0074】
10mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を反応容器に加え、窒素雰囲気下で攪拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、2mmolのCBDAと2mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、6mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0075】
比較例6:
【0076】
9mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固体重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、3.5mmolのCBDAと3.5mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、3mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分撹拌した後、70℃に加熱して1時間撹拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0077】
比較例7:
【0078】
9mmolの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)と1mmolの3,5-ジアミノベンズアミドを反応容器に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながらジメチルアセトアミドに溶解させた。溶媒の量は、全固形重量含有量の15重量%に相当した。完全に溶解した後、1.5mmolのCBDAと1.5mmolの6FDAを加え、4時間撹拌して溶解と反応を行い、溶液の温度を15℃に保った。その後、7mmolのTPCを加え、さらに12時間撹拌して反応を続けた。次に、15mmolのピリジンと30mmolの無水酢酸を加えて30分攪拌した後、70℃に加熱して1時間攪拌し、その後、室温まで冷却した。最後に、多量のメタノールを用いて沈殿させた後、沈殿した固体をパルベライザーで粉砕し、真空乾燥して粉末にした。
【0079】
ポリアミド-イミドフィルムの製造方法は以下の通りである。
【0080】
上記の実施例および比較例で調製したポリアミド-イミド共重合体粉末を、ジメチルアセトアミドに溶解し、濃度が15重量%になるように調合した。配合された溶液をフィルターで濾過した後、ガラス基板上にブレードコート法で塗布し、300℃の高温窒素雰囲気中でポストベークして、25μmの一定厚さのポリアミド-イミドフィルムを形成した。
【0081】
調製したポリアミド-イミドフィルムを、以下の試験に供した。
【0082】
<全光線透過率(TT:Total Transmittance)とヘイズ(Haze)>。
【0083】
ポリアミド-イミドフィルムの全光線透過率およびヘイズは、日本電色COH 5500を用いて、ASTM D1003に準じて測定した。
【0084】
<黄色度指数 YI(Yellowness Index)>
【0085】
ポリアミド-イミドフィルムの黄色度指数YI値は、ASTM E313に準拠して、日本電色COH 5500を用いて測定した。黄色度指数YIは、400~700nmの光の透過率を、分光光度計を用いて測定した三刺激値(x、y、z)であり、YIは以下の式で算出した。
YI=100×(1.2769x-1.0592z)/y
【0086】
<熱膨張係数(Thermal Expansion Coefficient)>および<ガラス転移温度(Tg:Glass Transition Temperature)>
【0087】
熱機械分析装置(TA Instrument TMA Q400EM)を用いて,50℃から200℃までのCTE値とガラス転移温度(Tg)を測定した。熱分析の前に、すべてのポリアミド-イミドフィルムを220℃で1時間熱処理した後、TMAでガラス転移温度を測定した。フィルムモードでは,加熱速度は10℃/分、荷重は30mNで一定とした。同様に、50~200℃の線熱膨張係数をTMAで測定した。このとき、負荷ひずみは30mN,加熱速度は10℃/分であった。
【0088】
熱膨張係数の減少率の算出方法
二無水物モノマーと芳香族ジカルボニルモノマーの比率が同じ条件下で、ジアミン含有アミド基を添加したポリアミド-イミドフィルムと添加しないポリアミド-イミドフィルムの熱膨張係数の減少率を比較する。その計算式は以下の通りである。
ΔCTE=(CTE0-CTE1)/CTE0
式中、CTE0は、ジアミンを含むアミド基を添加していないポリアミド-イミドフィルムの熱膨張率である。
CTE1は、ジアミンを含むアミド基を付加したポリアミド-イミドフィルムの熱膨張率である。
【0089】
<引張強度(Tensile Strength)>について
【0090】
ポリアミド-イミドフィルムを10mm×80mmの大きさの試験片に切り出し、引張試験機(Cometech社製QC-505M2F)を用いて、引張速度5mm/分でMD方向とTD方向の引張強度を測定した。MD方向とTD方向の引張強度の平均値を算出し、表1に記録した。
【0091】
<弾性率(Elastic Modulus)>
【0092】
ポリアミド-イミドフィルムを10mm×80mmの大きさの試験片に切り出し、引張試験機(Cometech社製QC-505M2F)を用いて、引張速度5mm/分でMD方向とTD方向の弾性率を測定した。MD方向とTD方向の弾性率の平均値を算出し、表1に記録した。
【0093】
<耐溶剤性試験(Solvent Resistance Test)>
【0094】
リアミド-イミドフィルムを50mm×50mmの大きさの試験片に切り出した。溶剤に浸す前にフィルムの光学ヘイズを測定して記録した後、試験片を室温25℃の試験用有機溶剤(PGMEA、トルエン)に10分間浸した。浸漬後、再度試験片のヘイズを測定し、浸漬前後のヘイズ変化を算出した。
ヘイズの変化が1%未満:◎
ヘイズの変化は1~5%:○
ヘイズの変化が5%以上:×
【0095】
試験結果を表1に示す。
【0096】
【0097】
実施例1、5、6と比較例1、2、3を比較すると、アミド官能基を含むジアミンの添加量が増えると、耐薬品性の度合いが増し、それに伴い熱膨張係数も低下している。アミド基を含むアミン基の添加量が5%未満の場合、その耐薬品性および熱膨張係数は、未添加の対照群の結果と同様である。アミド基を含むジアミンの添加量が20%を超えると、フィルムの全光線透過率が88.7%、YI値が3.5となり、影響を受ける。また、アミド基を含むジアミンを5%以上添加した場合には、アミド基を含まないジアミン(比較例1)と比較して、減少率が30%以上になることが結果からわかる。
【0098】
実施例5、9、10および比較例5、6の結果から、アミド基の割合が40~60%に収まると、弾性率を5GPaより上に保つことができ、アミド基の割合が40%より少ないと、弾性率が5GPaより小さくなり、アミドの割合が60%を超えると、弾性率はまだ5GPaより上にできるものの、アミドの構造が増えるとフィルムが結晶化しやすくなり、ヘイズが10%以上になってしまい、用途が制限されることがわかった。
【0099】
要約すると、本発明は、特定のモノマーを特定の比率で用いて共重合した共重合体である。この共重合体を用いたフィルムは、透明性、耐熱性(例えば、ガラス転移温度が高く、熱膨張係数が低い)、弾性率に優れている。
【0100】
しかし、上記は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の実施範囲を限定するために使用されるべきではない。したがって、本願の特許請求の範囲および明細書に従って行われる単純かつ同等の変更および修正はすべて、依然として本発明の範囲内である。