(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】水熱交換器、水熱交換器の製造方法、および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F28F 13/18 20060101AFI20230517BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20230517BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20230517BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20230517BHJP
F25B 39/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
F28F13/18 Z
F28F3/08 311
F28F19/00 511Z
F28F21/06
F25B39/00 P
(21)【出願番号】P 2021543651
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028490
(87)【国際公開番号】W WO2021044760
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019161016
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅利 峻
(72)【発明者】
【氏名】岡田 覚
(72)【発明者】
【氏名】馬場 敦史
(72)【発明者】
【氏名】丸子 晃平
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 優子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506023(JP,A)
【文献】特開2016-125083(JP,A)
【文献】特開2017-032198(JP,A)
【文献】特開2005-273966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 13/18
F28F 3/08
F28F 19/00
F28F 21/06
F25B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の熱交換プレートと、
前記複数の熱交換プレートを挟み込む一対のカバープレートと、
前記一対のカバープレートの少なくとも一方に設けられる継手と、
前記継手に
亜鉛を含むろう材によって接合される冷媒管と、
前記冷媒管および前記継手を介して前記複数の熱交換プレートに流通される
、ヨードカーボン類を含む冷媒と前記ろう材との接触を防ぐよう設けられる保護部と、を備える水熱交換器。
【請求項2】
前記保護部は、ビニル樹脂により形成されている請求項1に記載の水熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の水熱交換器の製造方法であって、
ビニル樹脂を含む溶液に前記
カバープレートと前記継手との接続部を浸漬して前記保護部を形成する水熱交換器の製造方法。
【請求項4】
圧縮機と、
膨張装置と、
前記圧縮機、および前記膨張装置と接続し、蒸発器および凝集器の少なくともいずれか一方として機能する請求項1または2に記載の水熱交換器と、を備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、水熱交換器、水熱交換器の製造方法、および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度制御装置、例えばチラーは、温度制御対象である物、または空間を冷却または加熱する利用側ユニットと、冷凍サイクルユニット(以下、「冷凍サイクル装置」ともいう。)と、を備えている。冷凍サイクル装置は、圧縮機と、第1の熱交換器と、膨張装置と、第2の熱交換器と、四方弁と、を備えている。冷凍サイクル装置が加熱運転されると、チラーを循環する液体が加熱される。冷凍サイクル装置が冷却運転されると、チラーを循環する液体が冷却される。
【0003】
冷凍サイクル装置に利用される熱交換器として、プレート式の水熱交換器が知られている。プレート式の水熱交換器は、積層された複数の薄い熱交換プレートを備えている。複数の熱交換プレートには、チラーを循環する液体の流路を有する熱交換プレートと、冷凍サイクル装置を循環する冷媒の流路を有する熱交換プレートと、が含まれている。この水熱交換器は、チラーを循環する液体と冷凍サイクル装置を流れる冷媒との間で熱交換を行う。
【0004】
プレート式の水熱交換器は、積層された複数の熱交換プレートを挟み込んで固定する一対のカバープレートを備えている。カバープレートには熱交換プレートから離れる方向(反対方向、外向き方向)に伸びる継手が設けられている。冷媒が流通する配管は継手を介して水熱交換器に接続される。
【0005】
カバープレートや熱交換プレートの材質は、ステンレスやアルミニウムなどの金属である。継手の材質もカバープレートと同じである。一方、冷凍サイクル装置を流れる冷媒の配管の材質は銅である。このように、水熱交換器の冷媒の出入口は、例えば、ステンレスと銅といった異種の金属で構成される。異種の金属は、例えば、ろう付けにより接合される。
【0006】
近年、オゾン層への影響が少なく、地球温暖化への影響が小さいトリフルオロヨードメタン(CF3I、以下、「CF3I」と記載する。)などのヨードカーボン類を含む冷媒を冷凍サイクル装置へ採用することが検討されるようになった。
【0007】
しかしながら、ヨードカーボン類は、ヨウ素原子と炭素原子との結合が切断されやすい性質をもつ。ろう材に含まれる亜鉛は、例えば、水を触媒としてハロゲンと反応する。水の存在下で、亜鉛を含むろう材とヨードカーボン類を含む冷媒とが接触すると、亜鉛を含むろう材の腐食の原因となる。ろう材の腐食は、冷媒の漏えいの原因となる。また亜鉛とハロゲン原子とが反応して冷媒が分解される虞がある。
【0008】
また、亜鉛を触媒としてCF3Iが分解してヨウ素が生成されることが知られている。亜鉛を含むろう材とCF3Iを含む冷媒とが接触すると、ろう材に含まれる亜鉛がCF3Iのヨウ素原子と反応し、冷媒が分解される虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2012-506023号公報
【文献】特開2010-159310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ろう材の腐食および冷媒の劣化を防止可能な水熱交換器、水熱交換器の製造方法、および冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の水熱交換器は、積層された複数の熱交換プレートと、前記複数の熱交換プレートを挟み込む一対のカバープレートと、前記一対のカバープレートの少なくとも一方に設けられる継手と、前記継手に亜鉛を含むろう材によって接合される冷媒管と、前記冷媒管および前記継手を介して前記複数の熱交換プレートに流通される、ヨードカーボン類を含む冷媒と前記ろう材との接触を防ぐよう設けられる保護部と、を備えている。
また、実施形態の水熱交換器の製造方法、ビニル樹脂を含む溶液に前記カバープレートと前記継手との接続部を浸漬して前記保護部を形成する。
さらに、実施形態の冷凍サイクル装置は、圧縮機と、膨張装置と、前記圧縮機、および前記膨張装置と接続し、蒸発器および凝集器の少なくともいずれか一方として機能する前記水熱交換器と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の模式図。
【
図2】本発明の実施形態に係る水熱交換器の接続部の模式的な断面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る水熱交換器の製造方法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る水熱交換器、水熱交換器の製造方法、および冷凍サイクル装置の実施形態について、
図1から
図3を参照して説明する。なお、各図において同じ、または相当する構成には同一の符号を付す。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置100の模式図である。本実施形態に係るチラー200は、冷凍サイクル装置100と、利用側ユニット300と、を備えている。本実施形態に係るチラー200は、冷凍サイクル装置100を流れる第1の冷媒と利用側ユニット300を流れる第2の冷媒との間で熱交換することで、チラー200の温度制御対象である物または空間を冷却または加熱する。
【0015】
図1に示すように、冷凍サイクル装置100は、圧縮機1と、第1の熱交換器2と、ファン3と、膨張装置4と、第2の熱交換器5と、アキュムレータ6と、四方弁7と、第1の冷媒管10とを備えている。第1の熱交換器2、膨張装置4、第2の熱交換器5、アキュムレータ6、圧縮機1、および四方弁7は、第1の冷媒管10により順次接続されている。
【0016】
第1の冷媒管10は、銅などの金属製である。第1の冷媒管10は、第1の冷媒を流通させる。第1の冷媒は、例えば、ヨードカーボン類を含む混合冷媒である。ヨードカーボン類を含む混合冷媒とは、例えば、CF3Iを含む混合冷媒である。また、冷凍サイクル装置100に使用される冷媒は、ジフルオロメタン(HFC-32、R32、以下、「R32」と記載する。)、ペンタフルオロエタン(HFC125、R125、以下、「R125」と記載する。)及びCF3Iの混合冷媒である。冷凍サイクル装置100に使用される冷媒は、例えば、49.0重量パーセントのR32と、11.5重量パーセントのR125と、39.5重量パーセントのCF3Iと、を含む混合冷媒である。このような組成比(成分)の冷媒は、米国暖房冷凍空調学会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, ASHRAE)のStandard 34に冷媒番号R466Aとして仮登録されている。
【0017】
圧縮機1は、第1の冷媒を圧縮する。圧縮機1は、例えば公知のインバーター制御によって運転周波数を変更可能なものであっても良いし、運転周波数を変更できないもの、つまり運転周波数が固定のものであっても良い。
【0018】
第1の熱交換器2は、例えば、フィンアンドチューブ式の熱交換器である。第1の熱交換器2の近傍には、ファン3が配置されている。第1の熱交換器2は、ファン3から送られる空気と第1の熱交換器2内を通る第1の冷媒との間で熱交換を行う空気熱交換器である。
【0019】
膨張装置4は、例えばPMV(Pulse Motor Valve)である。膨張装置4は、弁開度を調節できる。膨張装置4は、例えば、貫通孔を有する弁本体と、貫通孔に対して進退可能なニードルと、ニードルを進退させる動力源と、を備えている。貫通孔をニードルで塞いだ場合、膨張装置4は、冷凍サイクル装置100を流れる第1の冷媒の流通を止める(遮断する)。このとき、膨張装置4は閉じた状態であり、膨張装置4の開度は最も小さい。ニードルが貫通孔から最も離れた場合、冷凍サイクル装置100の第1の冷媒の流通量は、最大化する。このとき、膨張装置4の開度は最も大きい。
【0020】
第2の熱交換器5は、加熱または冷却の対象である第2の冷媒管20を流れる第2の冷媒と第1の冷媒管10を流通する第1の冷媒との間で熱交換する。第2の冷媒は、例えば、水である。第2の冷媒は、ポンプ8により第2の冷媒管20を介してチラー200の循環ユニット(図示省略)から第2の熱交換器5に送られる。すなわち、第2の熱交換器5は、第1の冷媒管10に流れる第1の冷媒と第2の冷媒管20に流れる第2の冷媒としての水との間で熱交換を行う水熱交換器である。以下、第2の熱交換器5を単に水熱交換器5と呼ぶ。
【0021】
水熱交換器5は、例えば、プレート式の水熱交換器である。水熱交換器5は、積層された複数の熱交換プレートと、積層された複数の熱交換プレートを、その積層方向から挟み込む一対のカバープレートと、を備えている。少なくとも一方のカバープレート14は、冷媒の出入口としての複数の継手9を備えている。それぞれの熱交換プレートは、冷凍サイクル装置100を流れる第1の冷媒の流路、およびチラー200の循環ユニットを流れる第2の冷媒の流路を有している。なお、水熱交換器5と冷媒管(第1の冷媒管10)との接続部については、
図2で詳細に説明する。
【0022】
アキュムレータ6は、水熱交換器5と圧縮機1との間に設けられている。アキュムレータ6は、鉄鋼等の金属製のケースを有している。ケースの下部には液相の冷媒が収容されている。ケースの上部には気相の冷媒が収容されている。アキュムレータ6は、気相の冷媒を圧縮機1に供給する。
【0023】
四方弁7は、第1の冷媒の流れる向きを切り替えることで冷凍サイクル装置100の加熱運転と冷却運転とを切り替える。
【0024】
冷凍サイクル装置100が加熱運転する場合、水熱交換器5により第2の冷媒管20を流れる水が加熱される。加熱運転の場合、第1の冷媒は、圧縮機1、水熱交換器5、膨張装置4、第1の熱交換器2、アキュムレータ6の順に流れる。圧縮機1で高温高圧の気体となった第1の冷媒は、水熱交換器5において水と熱交換して凝集し、液体に変化する。この際、水熱交換器5は、第1の冷媒を凝集させる凝集器として機能する。水熱交換器5で凝集した第1の冷媒は、膨張装置4で減圧されることで一部蒸発し、その気化熱で低温低圧の液体に変化する。その後、低温低圧の液体となった第1の冷媒は、第1の熱交換器2において、ファン3から送風された空気と熱交換して蒸発し、低温低圧の気体に変化する。この際、第1の熱交換器2は、第1の冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
【0025】
一方、冷凍サイクル装置100が冷却運転する場合、第2の冷媒管20を流れる水が冷却される。冷却運転の場合、四方弁7が反転されて、加熱運転の場合と逆向きの冷媒の流れが生じている。したがって、第1の冷媒は、圧縮機1、第1の熱交換器2、膨張装置4、水熱交換器5、アキュムレータ6の順に流れる。この際、水熱交換器5を流れる第1の冷媒は、第2の冷媒管20を流れる水と熱交換し、第1の冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。また、第1の熱交換器2は、第1の冷媒を凝集させる凝集器として機能する。
【0026】
以上が冷凍サイクル装置100の説明である。次に、
図2を参照して、水熱交換器5の接続部15について詳細に説明する。接続部15は、水熱交換器5における冷媒の出入口である。
【0027】
図2は、本発明の実施形態に係る水熱交換器5の接続部15の概略的な断面図である。水熱交換器5は、第1の冷媒と第2の冷媒である水との間で熱交換を行う。そのため、水熱交換器5は、それぞれの冷媒に対応する出入口を備えている。この冷媒の出入口を接続部15と呼ぶ。
図2は、第1の冷媒が流れる第1の冷媒管10と水熱交換器5との接続部15の断面図である。なお、第2の冷媒が流れる第2の冷媒管20と水熱交換器5との接続部の図示は省略する。
【0028】
接続部15は、継手9と第1の冷媒管10とを接続する部位である。例えば、
図2に示すように、第1の冷媒管10が継手9に内嵌めされている場合、継手9と第1の冷媒管10とが重畳している部分から継手9とカバープレート14との接続部分までが接続部15である。この場合、接続部15の範囲は、継手9の範囲と一致する。なお、接続部15の範囲は、継手9と重畳していない第1の冷媒管10の部分を含んでいても良い。また、接続部15の範囲は、第1の冷媒管10のカバープレート14側の端部から継手9とカバープレート14との接続部分までであっても良い。
【0029】
継手9は、カバープレート14に設けられる。カバープレート14および継手9は、熱交換プレートと同じくステンレス製である。一方、第1の冷媒管10は、銅製である。継手9と第1の冷媒管10とは異種間の金属を接続するろう材11により接合される。例えば、
図2に示すように、第1の冷媒管10が継手9に内嵌めされる場合、ろう材11は、継手9および第1の冷媒管10が重畳した部分で、継手9と第1の冷媒管10との間に挟み込まれて両者を接合している。
【0030】
継手9と第1の冷媒管10との接合には、銀ろうなどの亜鉛を含むろう材が用いられる。ろう材に含まれる亜鉛は、例えば、水を触媒としてハロゲンと反応する。したがって、水の存在下で、亜鉛を含むろう材とヨードカーボン類を含む冷媒とが接触すると、亜鉛を含むろう材の腐食の原因となる。ろう材の腐食は、冷媒の漏えいの原因となる。また、水を触媒として亜鉛が冷媒を構成するヨウ素などのハロゲン原子と反応することで、冷媒が分解される虞がある。
【0031】
また、亜鉛を含むろう材とCF3Iを含む冷媒とが接触すると、ろう材に含まれる亜鉛がCF3Iのヨウ素原子と反応し、冷媒が分解される虞がある。
【0032】
そこで、本実施形態に係る水熱交換器5は、接続部15に保護部12を備えている。保護部12は、接続部15、つまり第1の冷媒管10と継手9とを介して積層された複数の熱交換プレートに流通される冷媒とろう材11との接触を防ぐよう設けられている。保護部12は、第1の冷媒の流路上に第1の冷媒の流通を妨げないよう設けられる。
【0033】
保護部12は、例えば、継手9と第1の冷媒管10とがろう材11により重畳して接続されている部分を覆うように設けられる。すなわち、保護部12は、継手9の内側、継手9と第1の冷媒管10の重畳部分の内側、第1の冷媒管10の内側に連続して設けられる。また、保護部12は、第1の冷媒管10のカバープレート14側の先端部分と継手9との間に生じた隙間に設けられてもよい。
【0034】
なお、保護部12は、カバープレート14よりも熱交換プレート側には設けられていないことが好ましい。
【0035】
保護部12は、例えば、ビニル樹脂を含むビニル化合物を重合して得られる高分子化合物で構成される。ビニル樹脂には、示性式CH2CH(OH)で示されるビニルアルコール基を有する合成樹脂が含まれる。また、ビニル樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどの合成樹脂が含まれる。ビニル樹脂は、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol:PVOH)やポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride:PVC)などの1種類の単量体が重合したポリマーであってもよいし、エチレンビニルアルコール共重合体(Ethylene Vinylalcohol copolymer:EVOH)などの2種類以上の化合物が結合した単量体が重合したポリマーであってもよい。
【0036】
なお、保護部12を形成する材料は、ビニル樹脂に限定されない。例えば、保護部12は、合成ゴム、合成繊維、金属などの材料で形成されてもよい。保護部12は、冷媒およびろう材と反応せず、ガスバリア性に優れ、冷凍サイクル装置の温度変化により変質せず、冷媒に溶出しない材料であればどのような材料であってもよい。
【0037】
次に、保護部12を水熱交換器5に設置する方法を説明する。
【0038】
図3は、本発明の実施形態に係る保護部12を有する水熱交換器5の製造方法の一例を説明する図である。
図3は、ディッピング(dipping)により水熱交換器5に保護部12を形成する方法を示している。
【0039】
保護部12は、保護部12を形成する材料を含む溶液に保護部12の形成対象を浸漬する方法、いわゆるディッピングによって形成される。例えば、保護部12の材料として水溶性のPVOHを利用する場合、水熱交換器5の一部、即ち、水熱交換器5の接続部15を有する部分をPVOH水溶液Lに浸漬することによって、保護部12が接続部15に形成される。
【0040】
水熱交換器5に接続される第1の冷媒管10の長さがPVOH水溶液Lの流入を妨げるほど長い場合、PVOH水溶液Lに圧力をかけて第1の冷媒管10にPVOH水溶液Lを押し込み、接続部15にPVOH水溶液Lを充填することで保護部12を確実に形成できる。保護部12の形成が不要な部位は、適宜にマスキングされる。そうすることで、所望の部分にPVOH水溶液Lを付着させて保護部12を形成することができる。
【0041】
なお、
図3では、ディッピングにより保護部12を形成する例を示したが、保護部12の形成方法はディッピングに限定されない。例えば、保護部12を形成する材料を含む溶液を、保護部12を設置したい部分に塗布あるいは吹き付けることで、保護部12を形成してもよい。
【0042】
また、保護部12を形成する方法は、液体の材料を用いる方法に限定されない。例えば、シート状の保護部12を目的の位置に貼り付けて接続部15の管壁面に接着させることで保護部12を形成しても良い。また、形状記憶合金や弾性体で形成された保護部12を折りたたんだ状態で管内部に挿入し、目的の位置で拡張させて、保護部12を接続部15の管壁面に突っ張らせて固定しても良い。
【0043】
このように、本実施形態に係る水熱交換器5、および冷凍サイクル装置100は、水熱交換器5の冷媒の出入口に冷媒とろう材11との接触を防ぐ保護部12を有している。また、本実施形態に係る水熱交換器5の製造方法は、水熱交換器5の冷媒の出入口に冷媒とろう材11との接触を防ぐ保護部12を形成する。そのため水熱交換器5、水熱交換器5の製造方法、および冷凍サイクル装置100、冷媒とろう材11との接触に起因するろう材11の腐食を防止することができる。これにより、水熱交換器5、水熱交換器5の製造方法、および冷凍サイクル装置100は、冷媒の漏出を防ぐことができる。また、水熱交換器5、水熱交換器5の製造方法、および冷凍サイクル装置100は、ろう材11に含まれる亜鉛と冷媒のハロゲン原子とが反応するのを防ぎ、冷媒の分解を防止することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
100…冷凍サイクル装置、1…圧縮機、2…第1の熱交換器、3…ファン、4…膨張装置、5…第2の熱交換器(水熱交換器)、6…アキュムレータ、7…四方弁、8…ポンプ、9…継手、10…第1の冷媒管、11…ろう材、12…保護部、14…カバープレート、15…接続部、20…第2の冷媒管、L…PVOH水溶液。