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特許7281063カルシウム、スズ、窒素からなる化合物を含む半導体材料及びそれを用いた顔料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】カルシウム、スズ、窒素からなる化合物を含む半導体材料及びそれを用いた顔料
(51)【国際特許分類】
   C01G 19/00 20060101AFI20230518BHJP
   H01L 33/26 20100101ALI20230518BHJP
【FI】
C01G19/00 A
H01L33/26
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019123525
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021008381
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、文部科学省、科学技術試験研究委託事業、東工大元素戦略拠点(TIES)産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】川村 史朗
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 尚
【審査官】廣野 知子
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00-23/08
H01L 33/00-33/46
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム、スズ、窒素を含む半導体材料であって、
CaSn(a+b+c=1)によって表すことができ、
これらa、b、cは、
0.10≦a≦0.40、
0.10≦b≦0.40、及び
0.20≦c≦0.80
を満足する化合物を含む、半導体材料。
【請求項2】
前記a、b、cは、
0.15≦a≦0.35、
0.15≦b≦0.35、及び
0.25≦c≦0.75
を満足する請求項1に記載の半導体材料。
【請求項3】
約2~3eVのバンドギャップを備える、請求項1又は2に記載の半導体材料。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体材料を含む、顔料。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体材料からp型半導体ないしn型半導体、或いはその両方を構成し、これらの少なくとも1つを用いて構成される半導体素子。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体素子を含む、発光ダイオード。
【請求項7】
カルシウムを含む化合物と、スズを含む化合物と、及び窒素を含む化合物とを、それぞれ、Ca、Sn、及び、窒素のモル等量において、所定の割合で、混合するステップと、
3GPa以上の圧力をかけるステップと、
700℃以上の温度まで加熱するステップと、
前記圧力及び前記温度で、所定時間処理するステップと、を含む半導体材料を構成する無機化合物を製造する方法。
【請求項8】
前記カルシウムを含む化合物がフッ化物であり、前記スズを含む化合物がフッ化物であり、前記窒素を含む化合物がアジ化ナトリウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
xモル相当のカルシウムからなるフッ化カルシウムと、(2-x)モル相当のスズからなるフッ化スズと、(8-2x)モル又はそれ以上のアジ化ナトリウムと、を混合することにより、CaSn2-xを生成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
更に、得られた生成物を水洗するステップを含む、請求項7から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
更に、得られた生成物を希塩酸で処理するステップを含む、請求項7から10のいずれかに1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛やカドミウム等の毒性元素又は希土類元素のような希少元素を含まない化合物を含む半導体材料及びそれを用いた顔料に関し、特に、窒化物系の化合物を含む半導体材料、更には、カルシウム、スズ、窒素を含む三成分系の化合物を含む半導体材料及びそれを用いた顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷物質の使用を制限する等、生活環境に使われる材料に関し、持続的経済発展のため、地球環境に配慮することが不可欠となっている。半導体として使用される材料には、例えば、ヒ素、カドミウム、セレン等、毒性のある元素が使用される。また従来より、典型的な不透明黄色顔料としては、硫化カドミウムを主成分とする無機顔料であるカドミウムイエローのような鉛やカドミウム等の毒性元素が多く使われてきた(例えば、特許文献1)。しかしながら、硫化カドミウム系顔料は、耐アルカリ性・耐熱性・耐光性に優れるが、耐酸性が低い上に、毒性の高いカドミウムを含んでいる。そのため、環境配慮への観点から、無毒の新規顔料の開発が進められてきた。例えば、鮮やかな黄色無機顔料のバナジン酸ビスマス(ビスマスバナジウム黄)が使用されている。しかしながら、バナジウムも毒性を有している。一方、無毒又は毒性の低い半導体材料も数多く存在するが、ガリウムやインジウムのようにレアメタルに該当するものもある。また、無毒の黄色顔料として、プラセオジムを添加したジルコン(プラセオジム黄)が用いられる(例えば、特許文献2及び3)が、プラセオジムは希少元素(レアメタルにも該当)であり、大量使用の観点から問題が大きい。更に、LaTiONやSrNbONなどのペロブスカイト型の酸窒化物が検討されてきた。しかしながら、ランタンは、レアアースと呼ばれ、ニオブと共に希少金属(レアメタルに相当)である。また、これらの生産国も限られているため、戦略若しくは準戦略レアメタルとも位置付けられている(「レアメタル確保戦略」平成21年7月28日 経済産業省)。従って、より入手が容易で、環境に対する負荷の少ない材料が望まれている。
【0003】
半導体は、一般に、電気伝導性の良い金属などの導体(良導体)と電気抵抗率の大きい絶縁体(不導体)の中間的な抵抗率をもつ物質等のことを言い、半導体材料は、そのような物質等を構成する材料を意味することができる。例えば、バンド理論を用いれば、半導体は、所定の大きさのバンドギャップを備える。例えばシリコンのバンドギャップは約1.1eV、ヒ化ガリウムでは約1.4eV、窒化ガリウムでは約3.4eVである。このようなバンドギャップ幅以上の大きさのエネルギー(光や熱)を吸収または放出する特徴を備える。そして、このエネルギーを持つ光、即ち、特定の波長の光が吸収され始めるところを吸収端と言うことができ、その光のエネルギーをオプティカルギャップと言うことができる。これが、特定の色の光のエネルギーに対応する場合は、その半導体材料は、所望の発光色を有する材料となり得る。ここで、色材の三原色の1つとされる黄色は重要であり、それを実現する黄色系の顔料は、重要な素材の1つとされる。このためには、黄色に類似するオレンジ色対応した吸収端をもち、大きな吸収係数をもった物質/材料が好ましい。しかるに、物質/材料の色は、その構成元素及びそれらの構造に依存するものであり、実際にその物質/材料を合成し、試験をするまでは予測することが困難である。
【0004】
ところで、酸化物やハロゲン化物、カルコゲン化物は自然界において鉱物として産出することが多いところ、窒素と金属元素から構成される窒化物は、天然では隕石中でその存在が確認される程度である。一般に、窒化物は、酸化物に比べると、不安定で、酸素や水を除いた雰囲気下での合成や取り扱いが必要なことも多い。また、大気圧下では、窒化物の多くが高温で溶融せずに分解又は昇華するため、酸化物のように融液を徐冷して単結晶を作ることは必ずしも容易ではない。近年、Si、BN、AlN、GaN、TiN等について、多くの研究が行われているが、それらの特徴は多彩であり、統一的に語ることはできない。これらの窒化物については、想像を絶する広大で多様な物質群が実は未開拓のままであるのかもしれない(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6215595号明細書
【文献】特開2000-128538号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】山根久典「多元系窒化物および窒化物関連の新規化合物」日本結晶学会誌 第47巻 第5号(2005)第323-333頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明においては、上記背景に基づき、環境負荷の少ない元素から成る所望のバンドギャップや、オプティカルギャップ或いは吸収端を備える物質/材料を提供することができる。このような物質(化合物等)を含む半導体材料を提供し、更には、それを含む顔料等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者においては、かかる状況の下で、主に窒化物に着目し、未知と考えられる窒化物系の物質/材料を合成し、それらの特性を調べることにより、所望のバンドギャップや、オプティカルギャップ或いは吸収端を備える新規な化合物を合成することに成功した。そして、かような化合物を含む半導体材料及びそれを用いた顔料を提供することに成功した。
【0009】
本発明の実施例に関する化合物は、アルカリ土類金属、第14族元素、及び窒素から構成されてもよい。アルカリ土類金属としては、カルシウムであってもよい。また、第14族元素としては、スズであってもよい。例えば、このような化合物は、A(但し、Aは、アルカリ土類金属から選択される1又は2以上の元素であり、Bは、第14族元素から選択される1又は2以上の元素であり、a+b+c=1である。)と表すことができる。特に、Aが、カルシウムであることが好ましい。Bが、スズであることが好ましい。また、このような化合物(窒化物)は、CaSnと表されてもよい。このとき、x+y=2であってもよい。
【0010】
このような窒化物は、α-NaFeO構造:もしくは層状岩塩型構造として、
【数1】
又は、NaCl構造として、
【数2】
の対称性を持った結晶構造を有する化合物であってもよい。
【0011】
格子定数a、bは、3.313オングストローム±0.5オングストローム又は±0.1オングストローム或いは±0.05オングストロームの範囲内にあってもよい。格子定数cは、16.462オングストローム±2.5オングストローム又は±0.5オングストローム或いは±0.25オングストロームの範囲内にあってもよい。この結晶構造において、Ca及びSnは、互いに、同種のサイトを占めることができてもよい。
【0012】
特に、本発明の実施例に関する窒化物は、一般式CaSn(但し、a+b+c=1)によって表すことができる。ここで、a、b、cは、それぞれ以下の範囲を満足してもよい。
0.15≦a≦0.35、
0.15≦b≦0.35、及び
0.35≦c≦0.65
【0013】
また、a、b、cは、それぞれ以下の範囲を満足してもよい。
0.10≦a≦0.40、
0.10≦b≦0.40、及び
0.25≦c≦0.75
【0014】
Ca2+のイオン半径(6配位)は、1.00オングストロームであり、Sn4+のイオン半径(6配位)は、0.69オングストロームであり、両者は近いので、結晶構造において、同種のサイトを相互置換可能に占めることができる。
【0015】
また、このような窒化物は、所定の値のオプティカルギャップを備えてもよい。この所定の値は、約2eV以上であってもよく、約2.2eV以上であってもよい。また、約3eV以下であってもよく、約2.8eV以下であってもよい。また、約2.4eVであってもよい。このようなオプティカルギャップを備えるため、例えば、光・電子デバイスのような所望の発光色を有する半導体としても機能してもよい。
【0016】
このような窒化物は、所定量のCaを含むCa化合物と、所定量のSnを含むSn化合物と、窒素源として所定量のNを含む化合物とを混合し、所定の圧力、及び温度で処理することにより、得ることができる。例えば、CaSnNを得るためには、次のような反応が利用できる。
CaF+SnF+6NaN → CaSnN+6NaF+8N (1)
また、CaSn2-x(但し、0<x<2)を得るためには、次のような反応が利用できる。
xCaF+(2-x)SnF+(8-2x)NaN
→ CaSn2-x+(8-2x)NaF+(11-3x)N (2)
ここで、副産物のNaFは、水溶性であるため、生成物を水洗することにより除去できる。
【0017】
即ち、xモルのCaを含むCa化合物と、(2-x)モルのSnを含むSn化合物と、十分な量のNを含む化合物とを、混合して原料混合材料とすることができる。混合は、水及び酸素との反応を避けるため、例えば、それらの濃度が100ppm以下、50ppm以下、10ppm以下の環境で行うことが好ましい。下限は特に必要ではないが、技術的に可能な限り低い水(又は水蒸気)及び酸素濃度が好ましい。例えば、Ca化合物として、フッ化物を用いることができる。また、Sn化合物として、フッ化物を用いることができる。そして、CaSn2-xを得るためには、(8-2x)モルのNaNを用いることができる。過剰なNa等は、生成物を水又は希塩酸等で洗浄することで除去可能であるので、(8-2x)モルより過剰なNaNを用いることができる。
【0018】
具体的には、以下のものを含むことができる。
カルシウム、スズ、窒素を含む半導体材料であって、CaSn(a+b+c=1)によって表すことができ、これらa、b、cは、0.10≦a≦0.40、0.10≦b≦0.40、及び0.20≦c≦0.80を満足する化合物を含む、半導体材料。
上述する半導体材料において、前記a、b、cは、0.15≦a≦0.35、0.15≦b≦0.35、及び0.25≦c≦0.75を満足する。
上述するいずれかの半導体材料において、約2~3eVのバンドギャップを備える。
上述するいずれかの半導体材料を含む顔料。
上述するいずれかの半導体材料からp型半導体ないしn型半導体、或いはその両方を構成し、これらの少なくとも1つを用いて構成される半導体素子。
上述する半導体素子を含む、発光ダイオード。
カルシウムを含む化合物と、スズを含む化合物と、及び窒素を含む化合物とを、それぞれ、Ca、Sn、及び、窒素のモル等量において、所定の割合で、混合するステップと、3GPa以上の圧力をかけるステップと、700℃以上の温度まで加熱するステップと、前記圧力及び前記温度で、所定時間処理するステップと、を含む半導体材料を構成する無機化合物を製造する方法。
上述する方法において、前記カルシウムを含む化合物がフッ化物であり、前記スズを含む化合物がフッ化物であり、前記窒素を含む化合物がアジ化ナトリウムである。
上述するいずれかの方法において、前記混合するステップは、xモル相当のカルシウムからなるフッ化カルシウムと、(2-x)モル相当のスズからなるフッ化スズと、(8-2x)モル又はそれ以上のアジ化ナトリウムと、を混合し、その結果、CaSn2-xを生成する。
上述するいずれかの方法において、得られた生成物を水洗するステップを更に含む。
上述するいずれかの方法において、得られた生成物を希塩酸で処理するステップを更に含む。
【0019】
得られた原料混合材料は、所定の圧力で、所定の温度で、所定の時間処理されてよい。前記圧力は、2GPa以上が好ましく、3GPa以上が好ましく、4GPa以上が好ましい。生成については、特に圧力の上限は無くてもよいが、生産設備の関係から、10GPa以下が工業的に好ましい。前記温度は、500℃以上が好ましく、600℃以上が好ましく、700℃以上がこのましい。生成物が熱分解しない温度以下で処理することが好ましく、例えば、1500℃以下が例示されるかもしれない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施例にかかる窒化物は、カルシウム及びスズという豊富な元素から構成されるので、有用性が高い。また、そのような窒化物は、岩塩型若しくは層状岩塩型の結晶構造を備えることができる。好ましいオプティカルギャップを備えるので、顔料として機能し、また、光・電子デバイスのような所望の発光色を有する半導体として機能し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】CaSnN結晶を含むCa-Sn-N系の組成図。
図2】CaSnN結晶の結晶構造を示す図。
図3】本発明の実施例に関する窒化物を製造する装置の模式図。
図4】本発明の実施例に関する窒化物を製造する装置の試料部を示す模式的断面図。
図5】本発明の実施例に関する窒化物の実験例を示す写真。
図6】本発明の実施例に関する窒化物の実験例を示すSEM写真。
図7】本発明の実施例に関する窒化物の実験例におけるEDX分析結果を示すグラフ。
図8】本発明の実施例に関する窒化物の実験例におけるXRDプロファイル。
図9】本発明の実施例に関する窒化物の実験例におけるリートベルト解析結果を示す図。
図10】本発明の実施例に関する窒化物における結晶面の関係を図解する図。
図11】本発明の実施例に関する窒化物の実験例における拡散反射スペクトルを示す図。
図12】CaSnN系結晶のカソードルミネッセンス測定結果
図13】本発明の実施例に関する窒化物を利用したLEDの動作原理を例示する概念図。
図14】本発明の実施例に関する窒化物を利用したLEDの構造を例示する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、図面を参照しつつ、実施例を挙げて詳しく説明する。
【0023】
本発明の実施例に関する無機化合物を含む顔料において、該無機化合物は窒化物を含んでよい。該無機化合物は、アルカリ土類金属、第14族元素、及び窒素を含んでよい。アルカリ土類金属としては、カルシウムが好ましい。また、第14族元素としては、スズが好ましい。また、このような無機化合物は、CaSnと表され得る。このとき、x+y=2を満足することができる。
【0024】
このような無機化合物は、α-NaFeO構造:もしくは層状岩塩型構造として、
【数3】
又は、NaCl構造として、
【数4】
の対称性を持った結晶構造を有することが好ましい。
【0025】
また、このような無機化合物は、CaSnNからなる岩塩型結晶構造を有する結晶を含むことができる。図1に、Ca-Sn-N系の3成分系の組成を図解する。図1において、CaSnN結晶が●で示されている。また、これを中心にこの結晶を含む領域が線分10、20、及び30により囲まれている。CaSnN結晶の結晶構造は、X線回折や中性子線回折により同定することができる。この結晶構造について、格子定数、空間群、原子位置のデータは、表1にまとめられる。純粋なCaSnN結晶又はCaSnN固溶体結晶もここで言う窒化物を構成することができる。ここで、得られたCa、Sn、及びNからなる化合物や、いわゆる複合物は、少なくとも本発明者らの知る限りではこれまで合成されたことがなく、本願の実施例においてはじめて合成された。従って、Ca、Sn、及びNからなる化合物又は複合物は、その組成から特定できる。また、組成から特定される化合物又は複合物は、その結晶構造や形態に限られることなく、同一の化合物又は複合物と言える。また、得られた化合物や、いわゆる複合物は、以下に述べるような特有の性質を有しており、単に、Ca、Sn、及びNを混ぜ合わせただけの混合物とは明確に異なる。
【0026】
【表1】
【0027】
上述する無機化合物は、表1に表される結晶構造を備える無機結晶を含んでよい。CaSnN結晶の構造を図2において図解する。図中、小さい球はN原子を表し、大きい球はカルシウムであり、中くらいの大きさの球はスズであるが、カルシウムとスズは相互に置換可能である。カルシウムとスズが交互に配列する場合がα-NaFeO構造であり、ランダムに配列する場合がNaCl構造である。全てのカチオンサイトに対してCa、Snのどちらが入っても良いので、ランダムに配列し得るということになる。カチオンサイトはCaとSnが平均的に占めるために、等価なサイトともいうことができる。そして、CaとSnが区別されず、NaCl構造特有のピークが生じ得る。層状岩塩型構造は、CaとSnが交互に並ぶために、X線回折測定からは岩塩型構造には無かった新たな面が生まれてもよく、ピークが分裂することもあり得る。従って、岩塩型構造と層状岩塩型構造は空間群が異なると言うことができる。CaとSnがきちんと並ぶことになる場合は、成功裏に合成されたサンプルのピークは、よりシャープになるかもしれない。無機結晶の組成は、CaSn2-x (但し、0<x<2)と表すこともできる。エンドメンバー(x=2)に相当する窒化カルシウムは、一般に、化学式Caで表されるカルシウムと窒素からなる無機化合物であり、常温常圧で赤茶色の粉末である。Caは、立方晶系のanti-bixbyite構造を有しており(Cubic、cI80)、空間群は、Ia-3、No.206である。一方、エンドメンバー(x=0)に相当する窒化スズは、必ずしも明らかではないが、スピネル型Snと閃亜鉛鉱型SnNの結晶相が生成することが報告されている。従って、xの値は、これらのエンドメンバーを生じない範囲で、0より大きく、2より小さいと言えるかもしれない。また、Nの量も、2±0.1であってもよいかもしれない。図2の結晶構造に戻れば、かかる無機化合物が含む無機結晶は、以下のような結晶パラメータを備えてもよい。格子定数a、bは、3.313オングストローム±0.5オングストローム又は±0.1オングストローム或いは±0.05オングストロームの範囲内にあってもよい。格子定数cは、16.462オングストローム±2.5オングストローム又は±0.5オングストローム或いは±0.25オングストロームの範囲内にあってもよい。この結晶構造において、Ca及びSnは、互いに、同種のサイトを占めることができてもよい。また、角度α、βは90度以外であってもよい。γは、120度以外であってもよい。
【0028】
上記無機化合物は、平均粒径0.1μm以上100μm以下の単結晶粒子或いは前記単結晶粒子の集合体であってもよい。上記無機化合物中のCa、Snサイトは、Fe、Co、Ni、Cu、Na、Liのような不純物元素を含んでいてもよく、それらの合計は、5at.%以下であってもよい。また、窒素サイトは酸素と置換していても良く、元素比でN>Oであればよい。このOは、本発明の実施例にかかる無機化合物を生成する際に、不可避的に含まれるものであってもよい。例えば、生成工程で混入する酸化物、雰囲気酸素又は酸素化合物であるかもしれない。更に、原料に含まれる酸素及び/又は酸素化合物(例えば、酸化物)に起因するものであるかもしれない。これ以外にも、上述してきた3元系窒化物の組成を大きく変えるものでなく、また、結晶構造を変化させるものでなければ、酸素は含まれてもよい。例えば、10重量%以下、また、5重量%以下、更に2.5重量%以下であってもよい。上記無機化合物は、前記無機結晶以外の結晶相又はアモルファス相を更に含んでもよい。これらの結晶相又はアモルファス相の合計は、20重量%以下、また、10重量%以下、更に、5重量%以下であってもよい。
【0029】
本発明の実施例に関し、上述する無機化合物は、一般式CaSn(但し、a+b+c=1)によって表すことができる(図1の範囲10参照)。ここで、a、b、cは、それぞれ以下の範囲を満足してもよい。
0.10≦a≦0.40、
0.10≦b≦0.40、及び
0.20≦c≦0.80。
【0030】
更に、以下の範囲を満足してもよい(図1の範囲20参照)。
0.15≦a≦0.35、
0.15≦b≦0.35、及び
0.25≦c≦0.75。
【0031】
更に、以下の範囲を満足してもよい(図1の範囲30参照)。
0.20≦a≦0.30、
0.20≦b≦0.30、及び
0.40≦c≦0.60。
【0032】
或いは、a、b、cは、以下の範囲を満足する場合もある。
0<a<0.40、
0<b<0.40、及び
0.46≦c≦0.54。
更に、a、b、cは、以下の範囲を満足する場合もある。
0<a<0.38、
0<b<0.38、及び
0.48≦c≦0.52。
【0033】
上述する範囲を組み合わせると、例えば次のような場合もある。
(1)0.10≦a≦0.40、0.10≦b≦0.40、及び0.20≦c≦0.80、
又は、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.46≦c≦0.54。
(2)0.15≦a≦0.35、0.15≦b≦0.35、及び0.25≦c≦0.75、
又は、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.46≦c≦0.54。
(3)0.20≦a≦0.30、0.20≦b≦0.30、及び0.40≦c≦0.60、
又は、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.46≦c≦0.54。
(4)0.10≦a≦0.40、0.10≦b≦0.40、及び0.20≦c≦0.80、
又は、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.42≦c≦0.52。
(5)0.15≦a≦0.35、0.15≦b≦0.35、及び0.25≦c≦0.75、
又は、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.42≦c≦0.52。
(6)0.20≦a≦0.30、0.20≦b≦0.30、及び0.40≦c≦0.60、
又は、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.42≦c≦0.52。
(7)0.10≦a≦0.40、0.10≦b≦0.40、及び0.20≦c≦0.80、
且つ、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.46≦c≦0.54。
(8)0.15≦a≦0.35、0.15≦b≦0.35、及び0.25≦c≦0.75、
且つ、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.46≦c≦0.54。
(9)0.20≦a≦0.30、0.20≦b≦0.30、及び0.40≦c≦0.60、
且つ、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.46≦c≦0.54。
(10)0.10≦a≦0.40、0.10≦b≦0.40、及び0.20≦c≦0.80、
且つ、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.42≦c≦0.52。
(11)0.15≦a≦0.35、0.15≦b≦0.35、及び0.25≦c≦0.75、
且つ、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.42≦c≦0.52。
(12)0.20≦a≦0.30、0.20≦b≦0.30、及び0.40≦c≦0.60、
且つ、
0<a<0.40、0<b<0.40、及び0.42≦c≦0.52。
【実施例
【0034】
本発明を以下に示す実施例によってさらに詳しく説明するが、これはあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示したものであって、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[使用した原料]
用いた原料粉末は、弗化カルシウム(CaF)(ステラケミファ株式会社製、純度>98%)、弗化スズ(SnF)(シグマ アルドリッチ社製、純度>98%)、及び、窒素源としてアジ化ナトリウム(NaN)(シグマ アルドリッチ社製、純度>99.5%)を用いた。ここでは、以下の反応が生じるとして、原料粉末の所定のモル量を計量した。
CaF+SnF+6NaN → CaSnN+6NaF+8N (1)
即ち、CaF対SnF対6NaNの重量比は、約1対3対6であった。ここで、副産物のNaFは、水溶性であるため、生成物を水洗することにより除去できる。これらの粉末を瑪瑙の乳鉢及び乳棒により、十分に混合して混合粉末原料を準備した。この混合粉末原料は、Moカプセル内に投入された。これまでの工程は、Arで満たされたグローブボックス内で、HO及びOの濃度が1ppm以下の条件で行った。混合粉末原料を封入したMoカプセルは、図4に示されるような高圧セル内に配置された。
【0036】
高圧セルは、円筒状のパイロフィライトと、パイロフィライトの筒内に、筒内壁面上部側及び下部側に接するように配置された2つのスチールリングと、スチールリングの中心軸側に配置された円筒状のカーボンヒーターと、カーボンヒーターの内部に配置された金属製カプセル(Mo capsule)と、金属製カプセルの内部に充填された原料混合粉末と備える。パイロフィライトとカーボンヒーターとの間の隙間には充填用粉末が充填されており、カーボンヒーターと金属製カプセルとの間の隙間にも充填用粉末が充填されている。カーボンヒーターにはMo等の金属電極が配置される。
【0037】
一端側を円板状の蓋で閉じた円筒状のカーボンヒーターの内底部に充填用粉末を敷き詰めてから、金属製カプセルを円筒状のカーボンヒーター内に同軸となるように配置し、金属製カプセルとカーボンヒーターの内壁面との隙間に充填用粉末を充填し、更に、金属製カプセルの上部に充填用粉末を敷き詰めてから、他端側を円板状の蓋で密封する。
【0038】
この円筒状のカーボンヒーターを、筒状のパイロフィライト内に同軸となるように配置してから、カーボンヒーターとパイロフィライトの内壁面との隙間に充填用粉末を充填する。充填用粉末としては、例えば、NaCl+10wt%ZrOを挙げることができる。
【0039】
次に、パイロフィライトの内壁面上部側の充填用粉末に埋め込むようにスチールリングを押し込むとともに、パイロフィライトの内壁面下部側の充填用粉末に埋め込むように別のスチールリングを押し込む。以上のようにして、原料混合粉末を金属製カプセルに充填した高圧セルが得られる。
【0040】
図3は、本発明の実施例にかかる窒化物の製造に用いるベルト型高圧装置を模式的に示す図である。ベルト型高圧装置の左右のシリンダーの間であって、上下に配置されるアンビルの間の所定の位置に、薄い金属板からなる導電体を接触させて、図4に示されるような高圧セルを配置する。次に、これらの部材と高圧セルとの間に、ガスケットとしてパイロフィライトを充填する。
【0041】
アンビル及びシリンダーを高圧セル側に移動して、高圧セルを所定の圧力(例えば、2.5GPa、5.5GPa、6.5GPa)を満たすように加圧する。加圧した状態で、850℃となるまで加熱し、所定時間(例えば、1時間)、保持する。
【0042】
その後、急冷され、除圧される。得られた試料は、約80℃の水中に1時間浸漬され、その後、5vol.%の希塩酸中で10時間処理される。仮に、金属スズ又は亜鉛が生成物中にあったとしても、このような処理でそれらは分解される。得られた試料は脱イオン水ですすがれ、140℃のホットプレートで乾燥される。
【0043】
上述したような工程を、準備した混合粉末原料を、それぞれ、2.5GPa、5.5GPa、6.5GPaで処理し生成物を得た。図5は、5.5GPaで処理した生成物の光学顕微鏡写真を示す。本図では色は再現されていないが、オレンジ色を呈していた。また、図6は、そのSEM写真を示す。この写真から分かるように、約1μmのサイズの無機結晶が得られた。従って、このような生成物(粉体)を含むものは、オレンジ色若しくは類似する色或いは色合成のための色を呈する顔料としてそのまま或いは粒径調整を行ってから使用することができる。
【0044】
得られた生成物は、それぞれ、エネルギー分散型X線分析法により測定された。図7は、5.5GPaで処理した生成物の結果を示すグラフである。このEDX分析から、組成分析がなされ、CaSnNであることが判明した。
【0045】
図8は、それぞれ、2.5GPa、5.5GPa、6.5GPaで処理した生成物のX線解析パターンを示す(CuKα、RIGAKU RINT-2200V)。RIETAN-FPソフトを用いて、リートベルト解析を行った。X線解析は、10秒のステップあたりの測定時間で0.02度のステップ間隔でステップスキャンを行った。
【0046】
図9は、解析結果から計算されたピークパターン及び実際の実施例のサンプルのピークパターンを示す。これにより、表1に示すような結晶であることが確認された。
【0047】
ここで得られた結晶構造は、発明者らが知る限りにおいて、これまで報告されておらず、新規のCaSnN結晶である。逆に、かかるX線回折パターンが得られるCaSnN化合物は、CaSnN結晶であると言える。例えば、上位4個、5個、6個、又は7個のピークが一致すれば、同一の結晶又は同一の結晶構造を有する化合物であると言える。5個のピークの一致でもよい。同一の結晶構造とは、回折パターンが同じものとすることができる。また、層状岩塩型構造(層状NaCl構造)を有するCaSnN結晶はNaCl構造と類似のX線回折パターンを与える。ここで、カチオンサイトがCa又はSnでランダムに占められている場合、NaCl構造になり得る。層状岩塩型構造の場合は、カチオンサイトがCaとSnが交互に配列した構造となり得る。従って、二つの構造は骨格が同じで、カチオンが交互に並んでいるか、ランダムに並んでいるかの違いとなり得る。
【0048】
また、図9に示すように、主生成物の構造は、X線回折測定からNaCl構造(岩塩型構造)における(111)、(200)、(220)、(311)、(222)に起因するピークが特徴的に観測されるが、CaとSnの並びが変化することで各々のピークは分裂、或いは付属のピークが発生することが有り得る。CaとSnが完全に交互に配列した場合には、層状岩塩型構造と呼ばれてもよいが、基本骨格は岩塩型構造と同じであると言うことができる。即ち、図9に示すようなピークと一致していると、層状岩塩型構造を有していると判定ができ得る。
【0049】
図10は、実施例について得られたCaSnN結晶について、GaN結晶の(0001)面とのCaSnN結晶の(111)面とのマッチングを検討する図である。即ち、岩塩型の結晶構造について考えると、これは、面心立方格子結晶を構成する。面心立方格子における(111)面は、六方格子における(0001)面に相当する。岩塩型結晶構造を有するCaSnの六方格子の格子定数a(h)は、0.3313nmであるが、これは、GaNの格子定数a(h)である0.318nmに近い。従って、GaNの当該面にかかるCaSnN結晶をエピタキシャル成長させると、優れた半導体デバイスを形成することができる。これは、近年注目されているScN半導体デバイスの代替デバイスとなるかもしれない。このようにGaNの格子とのマッチングや約2.2eVバンドギャップから、第3族の窒化物半導体における所謂グリーンギャップを埋める窒化物半導体として使用可能である。
【0050】
図11は、5.5GPaで処理した生成物の拡散反射法によるスペクトルであって、クベルカ-ムンク変換(K-M変換)後のスペクトルである。(F(R)=α/S。ここで、α及びSは、それぞれ、吸収係数及び散乱係数である。)。この図から、オプティカルギャップが、2.2eVであることが分かる。このギャップにより、生成物が、所望の色を呈し、これを含むものが好ましい顔料となることも分かる。
【0051】
5.5GPaで得られた生成物のカソードルミネッセンス測定の結果を図12に示す。カソードルミネッセンス測定から2.1eV(587nm)付近に明瞭な発光が認められており、本材料が発光材料として有用であることが示された。また、発光時、拡散反射スペクトルから得られたエネルギーよりも若干低エネルギー側に発光ピークがシフトするのは通常の現象であり、測定結果は妥当である。この結果から、CaSnNが蛍光体を含む発光素子として利用可能であることが実証された。
【0052】
CaSnN結晶はバンドギャップが2~3eV領域に収まる上に、カソードルミネッセンス測定から直接遷移の半導体であることが分かる。従って、現在発光ダイオード、レーザーダイオードの緑色領域の発光が弱いという問題(グリーンギャップ問題)を解決する材料となり得る。図13は、本発明の実施例に関する具体例の1つであるLEDの動作原理を示す概略図である。P型CaSnN、N型CaSnNを用いたLEDの原理図である。ここで得られるCaSnNについて、従来から知られているドーピング技術を用いて、それぞれ、n型及びp型の素子とすることができる。例えば、Snの代わりにSbを不純物としてドープしたり、Snの代わりにInを不純物としてドープしたりすること等があるかもしれない。P型CaSnNとN型CaSnNを接合させ、バイアスを印加することで緑色領域の発光が得られる。図14は、もう1つの実施例であるLED構造を模式的に示す。サファイア基板110の上に、N型GaNを積層し、図中N型GaN層112の上で左側にN側ワイヤーボンド用パッド114を備え、N型GaN層112の上にCaSnN発光層116を配置して、更にその上にP型GaN層118を配置する。そして、P型GaN層118の上で右側にP側ワイヤーボンド用パッド120を備える。このようにして、N側及びP側ワイヤーボンド用パッド114及び120から、所定の電圧をかけることにより、CaSnN発光層116を発光させることができる。このようにして、CaSnNを発光層として用いたLED構造を作ることができる。CaSnNがGaNと格子整合するため、P型GaN層118とN型GaN層112の間にCaSnN層116を発光層として挟み込むことが可能となっている。そして、その光学的特性により、グリーンギャップ領域で発光することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の無機化合物において、CaSnN結晶及び/又はCaSnN固溶体結晶を含むことができ、この無機化合物を含む顔料は、所望の色を呈することができる。これは、CaSnN結晶及び/又はCaSnN固溶体結晶が、所定のバンドギャップを有するため、所望の色を呈するため、所定の光を吸収することができるからである。この無機化合物は、レアメタルを含む必要がなく、入手が容易であり、また、毒性も極めて低いと考えられるため、広く産業に利用可能である。また、所定の面においては、GaNとの整合性がよく、ScNのバンドギャップに近いバンドギャップを備えるため、光・電子デバイスとして利用が期待される。
【符号の説明】
【0054】
10 CaSnN結晶を含む無機化合物に関する第1の組成領域
20 CaSnN結晶を含む無機化合物に関する第2の組成領域
30 CaSnN結晶を含む無機化合物に関する第3の組成領域
110 サファイア基板 112 N型GaN層
114 N側ワイヤーボンド用パッド 116 CaSnN発光層
118 P型GaN層 120 P側ワイヤーボンド用パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14