(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】車両強制停止装置
(51)【国際特許分類】
E01F 13/12 20060101AFI20230518BHJP
E01F 13/04 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
E01F13/12
E01F13/04 Z
(21)【出願番号】P 2019136478
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】512220721
【氏名又は名称】株式会社ハナイ
(72)【発明者】
【氏名】花井 幹夫
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125333(JP,A)
【文献】特開2014-080744(JP,A)
【文献】特開2019-078120(JP,A)
【文献】特開2006-132172(JP,A)
【文献】特開2017-150200(JP,A)
【文献】登録実用新案第3029853(JP,U)
【文献】特開2001-248119(JP,A)
【文献】実開平06-020516(JP,U)
【文献】特開2014-227051(JP,A)
【文献】特開2013-221274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 13/12
E01F 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重要施設や、歩行者天国のように人が多く集まる場所へ突入する車両を強制的に停止させる車両強制停止装置であって、
道路面に接触する面にピン部材を備えたベース部と、
前記ベース部の片側に立設する衝撃緩衝部と、
底部と前記底部の両側に屈曲部を有する車両保持部と、
前記車両保持部の前記底部と垂直になるように設置した先端にピン部材を備えた停止棒状部材と、
前記車両保持部から前記停止棒状部材を支えるように設置した補強部材を備えており、
前記補強部材は、前記衝撃緩衝部材に寄り掛かるように設置されており、
さらに、前記ベース部と前記補強部材に車輪を設置することを特徴とする車両強制停止装置。
【請求項2】
前記車両保持部材の両端には爪部材が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両強制停止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重要施設や、歩行者天国のように人が多く集まる場所へ車両を突入させる手段を用いたテロ行為時において、人的被害を最小限に軽減すべく、車両を停止させることができる車両強制停止装置に関する。さらに言えば、人的被害を最小限に軽減するのに充分な車両停止効果を有するとともに、迅速に設置することができる等、ハンドリング性にも優れた車両強制停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際的にテロリストによる無差別殺人が問題になっている。その中の一つの手段である自動車等の車両を暴走させ、人混みの中に突入することによる無差別殺人の被害も出ているという現状がある。従来から見られたような道路工事等で車線規制を行っている際に、誤って車両が進入して来る場合とは異なり、テロ行為等、故意による突入であっても人が居る所に突入して来た車両を強制的に停止させる手段が必要になってきた。
【0003】
従来、突入して来た車両を強制的に停止させる手段として、鉄柵、セフティコーン、水ドラム、砂袋等が使用されていたのであるが、車両等を強制に停止させる手段が、大袈裟であり、重量も大きいため、実際に現場に設置する際、移動、及び設置自体に手間が掛かり好ましく無く、現場からの要望として、車両強制停止装置の軽量化を含んだハンドリング性の向上が望まれていた。オリンピック等の国際的な祭典等が開催される場面を鑑みても緊急なテロ対策が望まれているという状況もある。
【0003】
特許文献1には、「コンパクト化、及び軽量化を図りつつも、従来の車両強制停止装置程度の車両停止効果を有する車両強制停止装置を提供すること。を課題とし、「ベース部と、ベース部に立設された車両止め部と、車両止め部から道路面まで延びる車両乗り上げ部と、車両乗り上げ部と車両止め部を接続するための接続部材を備え、さらに、車両止め部の周囲であって、接続部材の両端直下には、弾性部材が設置されていることを特徴とする車両強制停止装置(特許文献1:要約:解決手段から抜粋)。」車両強制停止装置(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る発明は、コンパクト化、及び軽量化を図った車両強制停止装置(特許文献1:発明の名称)であり、それ以前の車両を強制的に停止させる器具等との比較において、非常に優れた機能を備えた車両強制停止装置(特許文献1:発明の名称)であるが、それでもなお、車両強制停止装置自体を移動させるのに重量があるため、現場まで搬入した後の、持ち運びや取り扱いに手間が掛かってしまう。テロ対策という緊急性を要するような場面、要するに、極めて機敏な対応をしなければならないという観点からすれば、設置に手間と時間が掛かるものであった。
【0006】
本発明の目的は、重要施設や、歩行者天国のように人が多く集まる場所へ車両が突入する手段を用いたテロ行為時において、人的被害を最小限に軽減すべく、車両を停止させることができる車両強制停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、重要施設や、歩行者天国のように人が多く集まる場所へ突入する車両を強制的に停止させる車両強制停止装置であって、道路面に接触する面にピン部材を備えたベース部と、前記ベース部の片側に立設する衝撃緩衝部と、底部と前記底部の両側に屈曲部を有する車両保持部と、前記車両保持部の前記底部と垂直になるように設置した先端にピン部材を備えた停止棒状部材と、前記車両保持部から前記停止棒状部材を支えるように設置した補強部材を備えており、前記補強部材は、前記衝撃緩衝部材に寄り掛かるように設置されており、さらに、前記ベース部と前記補強部材に車輪を設置する車両強制停止装置であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記車両保持部材の両端には爪部材が設置されている車両強制停止装置であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、重要施設や、歩行者天国のように人が多く集まる場所へ突入する車両を強制的に停止させる車両強制停止装置である。ベース部は、道路面に接触する面にピン部材を備えており、車両保持部の底部と垂直になるように設置した先端にピン部材を備えた停止棒状部材を備えているので、車両が車両強制停止装置に衝突した際、車両の重量が掛かるためピン部材の先端部分、及び先端にピン部材を備えた停止棒状部材が道路面に突き刺さることで、道路面との間に強烈な摩擦抵抗(道路面を削る力によりアスファルトを破壊)を生じるので車両が停止する方向に作用する。
【0010】
そして、ベース部の片側に立設する衝撃緩衝部と、底部と底部の両側に屈曲部を有する車両保持部を備えており、車両保持部材の両端には爪部材が設置されており、車両保持部から停止棒状部材を支えるように設置した補強部材を備えており、補強部材は、衝撃緩衝部材に寄り掛かるように設置されているので、車両が突入した際、衝撃緩衝部が折れ曲がることにより、車両突入時における衝撃力を緩和するし、車両保持部材、及び車両保持部材の両端に設置された爪部材により、突入した車両を保持することができる。
【0011】
さらに、ハンドリング性に関して言えば、ベース部と前記補強部材に車輪を設置するので、テロ対策等の緊急時であっても現場に搬入された後の移動、及び設置が極めて手軽に、かつ、迅速に行うことができる。尚、設置時同様、撤収時においても、極めて手軽に、かつ、迅速に行うことができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る車両強制停止装置の側面図、及び背面図である。
【
図2】車両強制停止装置の衝突直前の状態を説明するための図である。
【
図3】車両強制停止装置の衝突後の状態を説明するための図である。
【
図4】車両強制停止装置の運搬時の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<車両強制停止装置の構造>
以下、本発明に係る車両強制停止装置10について、
図1~
図5を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車両強制停止10の側面図(a)、及び背面図(b)である。そして、
図5は、本発明に係る車両強制停止装置10の全体斜視図である(本発明に係る車両強制停止装置10を視覚的に理解するのに最適な図であると考えて記載した)。
【0014】
本発明に係る車両強制停止装置10は、
図1(a)に記載したように、道路面に接触する面にピン部材80を備えたベース部20と、ベース部20の片側に立設する衝撃緩衝部30と、底部90(車両保持部40に含まれる)と底部90の両側に屈曲部を有する車両保持部40と、車両保持部40の底部90と垂直になるように設置した先端にピン部材100を備えた停止棒状部材50と、車両保持部40から停止棒状部材50を支えるように設置した補強部材60を備えている。補強部材60は、衝撃緩衝部材30との接点部分において、衝撃緩衝部材30に寄り掛かるように設置されており(
図1(a)参照)、さらに、ベース部20と補強部材60に車輪70が設置されている。そして、車両保持部40の両端には爪部材110が設置されている。
【0015】
車両強制停止装置10は、
図1(b)に記載したように、車両保持部40(停止棒状部材50、及び補強部材60も含む)の配置は、ベース部20、衝撃緩衝部30の両端付近、及びベース部20、衝撃緩衝部30略中心の位置になるように(等間隔になるように)車両保持部40(停止棒状部材50、及び補強部材60も含む)が、ベース部20、衝撃緩衝部30と垂直の位置関係になるように配置されている。尚、ピン部材80(ベース部20に含まれる)と、ピン部材100(停止棒状部材50に含まれる)にはアンカーピン、ボルトピン等が採用されているが、これら以外であっても同様の効果を得られるものであれば何でも良い。
【0016】
車両保持部40、停止棒状部材50、補強部材60の(ベース部20、衝撃緩衝部30に対する)配置は、ベース部20、衝撃緩衝部30の両端付近にのみ配置する態様であっても良いし、ベース部20、衝撃緩衝部30略中心の位置から見て左右対称になるように配置されていても良い。車両強制停止装置10は、道路上に設置した時の幅が1200mm程度、高さが1050mm程度、奥行きが1200mm程度であり、材質はステンレス鋼等が採用されている。尚、
図5は、本発明をより視覚的に理解できるようにするための図である。即ち、
図1を補完する目的で添付したものである。
【0017】
<車両強制停止装置の車両強制停止原理>
図2は、本発明に係る車両強制停止装置10の衝突直前の状態を説明するための図である。
図3は、車両強制停止装置10の衝突後の状態を説明するための図である。
図2、及び
図3に基づいて、車両強制停止装置10の車両を強制的に停止させる原理を説明する。先に説明しておくと、車両の衝突前後で顕著に形状や位置等に変化が観察されるのは、車両保持部40と衝撃緩衝部30、及び停止棒状部材50である。
【0018】
車両強制停止装置10は、車両が衝突する直前までは、
図2に記載したように、衝撃緩衝部30が道路面に対して垂直に真っ直ぐ延伸した状態にあり、その上に車両保持部40が(補強部材60を介して)載置された状態になっている。車両が衝突することにより、衝撃緩衝部30は折れ曲がり(
図3において「への字型」に折れ曲がっている)、車両保持部40の車両に近い側の(爪部材110を含んだ)先端部分が跳ね上げられた状態、になる(
図3参照)。
【0019】
要するに、車両の床面を爪部材110が「矢印で示した軸(
図2参照)」を中心軸として上方向に力が働き、(ピン部材100は「矢印で示した軸(
図2参照)」を中心軸として下方向に力が働くことになる)いわゆるテコの原理で、下から押し上げるように作用し、車両を上方向に突き上げるようになる。(尚、
図3には、明瞭に記載されていないが、車両に遠い側の先端(特に爪部材110)部分は車両を上から掴むように作用することになる)。さらに、停止棒状部材50は先端のピン部材100が道路面に突き刺さった状態になる(
図3参照)。
【0020】
要するに、車両強制停止装置10の車両強制停止原理は、衝撃緩衝部30は折れ曲がる(
図3において「への字型」に折れ曲がっている)ことにより、車両に運動エネルギーによる衝撃力そのものを緩和し、車両保持部40の車両に近い側の(爪部材110を含んだ)先端部分が跳ね上げられた状態になることで、上方に突入方向を変えることにより、推進力を逃がすことで緩和し、停止棒状部材50は先端のピン部材100が道路面に突き刺さる状態になることで、道路面との間に生ずる強烈な摩擦力(道路面を削る力によりアスファルトを破壊)により推進力を抑えることによる。さらに、ベース部20に設置されたピン部材80も道路面との間に生ずる摩擦力により推進力を抑えることになる。
【0021】
<車両強制停止装置のハンドリング性>
図4は、車両強制停止装置10の運搬時の状態を説明するための図である。本発明の特徴は、テロ行為により、重要施設や、歩行者天国のように人が多く集まる場所へ突入する車両を強制的に停止させることを目的に開発された車両強制停止装置である。現場まで搬入した後の、持ち運びや取り扱いに手間が掛かってしまっては、テロ対策、即ち、多くの人命をテロ行為から回避させることで救うという、極めて緊急性を要するような場面、要するに、機敏な対応をしなければならないという観点からすれば、設置に手間と時間が掛かってしまい好ましく無い。車両強制停止装置10は、ベース部20と補強部材60に車輪70が設置することにより、即ち、
図4に記載したように、設置時の位置から90°回転させた状態で車輪70を道路面に接するようにすることで容易に運搬することができる。
【0022】
<車両強制停止装置の効果>
本発明に係る車両強制停止装置10は、車両を強制的に停止させるための、様々な工夫がなされている。ベース部20は道路面に接触する面にピン部材80、停止棒状部材50は先端にピン部材100を備えているので、道路面との摩擦により、車両を強制的に停止させることができる。即ち、ベース部20のピン部材80、及び停止棒状部材50のピン部材100が道路面に突き刺さることで、道路面との間に強烈な摩擦抵抗(道路面を削る力によりアスファルトを破壊)を生じるので車両が停止する方向に作用する。
【0023】
そして、ベース部20の片側に立設する衝撃緩衝部30と、底部90と底部90の両側に屈曲部を有する車両保持部40を備えており、車両保持部40の両端には爪部材110が設置されており、車両保持部40から停止状部材50を支えるように設置した補強部材60を備えている。補強部材60は、衝撃緩衝部材50に寄り掛かるように設置されているので(
図1参照)、車両が突入した際、衝撃緩衝部30が折れ曲がることにより、車両突入時における衝撃力を緩和するし、車両保持部40、及び車両保持部40の両端に設置された爪部材110により、突入した車両を掴むように捕獲することができる。
【0024】
さらに、ハンドリング性に関して言えば、ベース部20と補強部材60に車輪70を設置するので、テロ対策等の緊急時であっても現場に搬入された後の移動、及び設置が極めて手軽に、かつ、迅速に行うことができる。尚、設置時同様、撤収時においても、極めて手軽に、かつ、迅速に行うことができることは言うまでもない。
【0025】
尚、本発明は、重要施設や、歩行者天国のように人が多く集まる場所へ突入する車両を強制的に停止させる車両強制停止装置であるが、従来から見られた道路工事等で車線規制を行っている際に、誤って車両が突入するのを防御する態様で使用したとしても何ら問題は無い。
【0026】
<車両強制停止装置の変更例>
本発明に係る車両強制停止装置は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、ベース部、衝撃緩衝部、車両保持部、停止棒状部材、補強部材、車輪、ピン部材(ベース部に含まれる)、底部(車両保持部に含まれる)、ピン部材(停止棒状部材に含まれる)、爪部材等の構成を本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る車両強制停止装置は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、テロ対策に関する分野及び、道路工事に関連する分野等で好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
10・・車両強制停止装置
20・・ベース部
30・・衝撃緩衝部
40・・車両保持部
50・・停止棒状部材
60・・補強部材
70・・車輪
80・・ピン部材(ベース部20に含まれる)
90・・底部(車両保持部40に含まれる)
100・・ピン部材(停止棒状部材50に含まれる)
110・・爪部材