(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20230518BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20230518BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G21/14
G03G15/04 114
(21)【出願番号】P 2019115914
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕典
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-271029(JP,A)
【文献】特開昭59-105673(JP,A)
【文献】実開昭61-89878(JP,U)
【文献】特開平08-146849(JP,A)
【文献】特開平07-043966(JP,A)
【文献】特開平01-297270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0107447(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムと、
前記感光体ドラムを帯電させる帯電装置と、
前記感光体ドラムを露光し前記感光体ドラム上に静電潜像を形成する露光装置と、
2成分方式で前記感光体ドラム上の前記静電潜像にトナーを付着させる現像装置と、
電源断が検知されると、前記露光装置による前記感光体ドラムの露光位置を、プリント画像現像時の露光位置より前記現像装置に近い位置に変更する露光位置変更部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記露光位置変更部は、前記露光装置の光源の位置または向きを変更することで、前記露光位置を、プリント画像現像時の露光位置より前記現像装置に近い位置に変更することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記露光位置変更部を駆動するドライバー回路と、
前記ドライバー回路を制御するコントローラーとをさらに備え、
前記露光位置変更部は、前記露光装置の光源の向きがプリント画像現像時の所定向きになるように、前記露光装置の光源を電磁力で付勢するソレノイドを備え、
前記コントローラーは、(a)前記ドライバー回路で前記ソレノイドに通電して、前記ソレノイドに、前記露光装置の光源の向きがプリント画像現像時の所定向きになるように、前記露光装置の光源を電磁力で付勢させ、(b)電源断が検知されると、前記ドライバー回路による前記ソレノイドの通電をただちに停止させて前記ソレノイドによる前記露光装置の光源の付勢を停止することで、前記露光装置の光源の向きを変更すること、
を特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2成分現像方式の画像形成装置では、電源断時に、感光体ドラムが帯電されている状態で現像装置の電位が低下すると、キャリア現像(現像装置から感光体ドラムへのキャリアの飛翔)が発生することがある。そのため、ある画像形成装置は、電源断時に、露光装置を全点灯させることで感光体ドラムを露光し帯電量を減少させて、キャリア現像を抑制している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように電源断時の露光を行っても、感光体ドラムの表面において、露光位置(つまり、照射位置)から、現像装置との最近接位置(つまり、現像位置)までの区間においては露光されないため、感光体ドラムの惰性回転によって、その区間が現像位置に到達した際にキャリア現像が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、電源断の直後の短時間におけるキャリア現像を抑制する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、感光体ドラムと、前記感光体ドラムを帯電させる帯電装置と、前記感光体ドラムを露光し前記感光体ドラム上に静電潜像を形成する露光装置と、2成分方式で前記感光体ドラム上の前記静電潜像にトナーを付着させる現像装置と、電源断が検知されると、前記露光装置による前記感光体ドラムの露光位置を、プリント画像現像時の露光位置より前記現像装置に近い位置に変更する露光位置変更部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源断の直後の短時間におけるキャリア現像を抑制する画像形成装置が得られる。
【0008】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2における露光位置変更部23の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1および
図2に示す画像形成装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を示す側面図である。
図1に示す画像形成装置は、プリンター、ファクシミリ装置、複写機、複合機などといった、電子写真方式の印刷機能を有する装置である。
【0012】
図1に示す画像形成装置は、感光体ドラム1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、搬送ベルト5、駆動ローラー6aおよび従動ローラー6b、転写ローラー7、クリーニング装置8、並びに定着器9を備える。
【0013】
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定電位になるように帯電させる。
【0014】
露光装置3は、光源3aで感光体ドラム1を露光し感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。ここでは、光源3aは、LED(Light Emitting Diode)ヘッドであるが、レーザースキャニングユニット(LSU)でもよい。
【0015】
現像装置4は、2成分方式で感光体ドラム1上の静電潜像にトナーを付着させる。例えば、現像装置4は、現像ローラー4aを備える。現像ローラー4aは、その表面に2成分現像剤を保持する。現像ローラー4aには、図示せぬバイアス回路によって所定電圧の現像バイアスが印加される。そして、通常のプリント画像現像時の現像バイアスの場合、2成分現像剤のうちのトナーのみが、現像バイアスによって現像ローラー4aから離れ、感光体ドラム1上の静電潜像に付着する。電源断時には、現像ローラー4aの現像バイアスはただちにゼロボルトへ変化していく。
【0016】
搬送ベルト5は、駆動ローラー6aからの駆動力によって周回して、プリント用紙101を、感光体ドラム1と転写ローラー7との間へ搬送する。
【0017】
転写ローラー7は、搬送されてくるプリント用紙101を感光体ドラム1に接触させ、感光体ドラム1上のトナー画像をプリント用紙101に転写する。
【0018】
クリーニング装置8は、転写後に感光体ドラム1上に残留しているトナーを回収する。例えば、クリーニング装置8は、クリーニングブレード8aを感光体ドラム1に接触させて、感光体ドラム1上のトナーを除去し回収する。
【0019】
定着器9は、例えば加熱加圧方式で、プリント用紙101上のトナー画像を定着する。
【0020】
図2は、
図1に示す画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、この実施の形態に係る画像形成装置は、プリントエンジン21、電源回路22、および露光位置変更部23を備える。
【0021】
プリントエンジン21は、所定機能のASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロコンピューター、その他の電子回路などを備え、露光装置3などを制御して、画像のプリントを実行する。電源回路22は、商用電源から得られる電力に基づいて、プリントエンジン21などに所定電圧(例えば24ボルト)で電源電力を供給する。
【0022】
露光位置変更部23は、後述の電源断検知回路34で電源断が検知されると、露光装置3による感光体ドラム1の露光位置を、プリント画像現像時の露光位置より現像装置4に近い位置に変更する。
【0023】
その際、この実施の形態では、露光位置変更部23は、露光装置3の光源3aの位置または向きを変更することで、露光位置を、プリント画像現像時の露光位置より現像装置に近い位置に変更する。
【0024】
図3は、
図2における露光位置変更部23の一例を示す図である。
【0025】
例えば
図3に示すように、露光位置変更部23は、光源3aの回動軸23a、ソレノイド23b、およびバネ23cを備える。ソレノイド23bは、露光装置3の光源3aの向き(つまり、光の出射方向)がプリント画像現像時の所定向きになるように、露光装置3の光源3aを電磁力で付勢する。なお、光源3aには、ソレノイド23bに対向する位置に軟磁性材料(鉄など)の部材が設けられている。バネ23cは、ソレノイド23bへの通電がなくなりソレノイド23bの付勢力が解除された際に、例えば
図3の破線で示すように、バネ23cの復元力で回動軸23aを中心として光源3aを所定向きまで回動させる。
【0026】
つまり、プリント画像現像時にはソレノイド23bが通電され、光源3aの向きが所定の第1の向きとされ、光源3aから出射した光は、感光体ドラム1上の所定位置PE0に照射される。他方、電源断時には、ソレノイド23bの通電がただちに停止され、光源3aの向きが所定の第2の向きとされ、光源3aから出射した光は、位置PE0より現像位置に近い感光体ドラム1上の所定位置PE1に照射される。
【0027】
プリントエンジン21は、ドライバー回路31,32、コントローラー33、および電源断検知回路34を備える。
【0028】
ドライバー回路31は、露光装置3の光源3aを駆動する。ドライバー回路32は、露光位置変更部23を駆動する。コントローラー33は、ドライバー回路31,32を制御する。
【0029】
具体的には、コントローラー33は、(a)点灯制御信号で、露光装置3の露光(つまり、光源3aの発光)のオン/オフをドライバー回路31に設定するとともに、(b)露光位置制御信号で、露光装置3の露光位置(光源3aから出射される光が照射される感光体ドラム1上の位置)をドライバー回路32に設定する。
【0030】
電源断検知回路34は、電源回路22による電源電圧が所定値未満になると、電源断が発生したことを検知する。そして、コントローラー33は、電源断検知回路34により電源断が検知されると、露光装置3の露光のオンをドライバー回路31に設定する。このとき、ドライバー回路31は、点灯制御信号に従って、光源3aをオン/オフする。これによる露光は、プリント可能な全領域に対して実行される。
【0031】
例えば
図3に示す露光位置変更部23の場合、コントローラーは、(a)ドライバー回路32でソレノイド23bに通電して、ソレノイド23bに、露光装置3の光源3aの向きがプリント画像現像時の所定向きになるように、露光装置3の光源3aを電磁力で付勢させ、(b)電源断が検知されると、ドライバー回路32によるソレノイド23bの通電をただちに停止させてソレノイド23bによる露光装置3の光源3aの付勢を停止することで、露光装置3の光源3aの向きを変更し、ただちに露光位置を現像装置4に近づける。
【0032】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
図4は、
図1および
図2に示す画像形成装置の動作を説明するタイミングチャートである。
【0033】
時刻T1において、商用AC電源の遮断が発生すると、電源回路22の出力電圧(つまり直流の内部電源電圧)が徐々に低下していき、所定の閾値THより低くなると、電源断検知回路34が、電源断を検知し(時刻T2)、電源断検知信号のレベルを、ハイからローへ変化させる。
【0034】
なお、プリントエンジン21内の各部(コントローラー33など)の動作可能な電源電圧(例えば5ボルトや3.3ボルト)は、電源回路22の出力電圧(例えば24ボルト)より低いため、この時点でも、プリントエンジン21は、動作を継続する。プリントエンジン21内の各部(コントローラー33など)の電源は、電源回路22の出力電圧を電圧変換された電源、別の電源回路による電源などが使用される。
【0035】
コントローラー33は、電源断検知信号がローレベルになると、ドライバー回路32を使用して、露光位置変更部23で、感光体ドラム1の表面の周方向において、露光装置3による露光位置を現像装置4に近づける。
【0036】
また、コントローラー33は、電源断検知信号がローレベルになると、点灯制御信号のレベルをハイからローへ変化させる。ドライバー回路31は、点灯制御信号がローレベルになると、露光装置3の光源3aを連続的に点灯させる。
【0037】
これにより、感光体ドラム1の表面において電源断時の露光が行われない領域が少なくなる。つまり、
図3における位置PE0で電源断時の露光を行う場合に比べ、位置PE1で電源断時の露光を行う場合のほうが、短時間で(例えば電源断直後に現像バイアスがなくなるまでに)、惰性回転中の感光体ドラム1の現像位置における電位(絶対値)が低くなる。
【0038】
以上のように、上記実施の形態によれば、帯電装置2は、感光体ドラム1を帯電させる。露光装置3は、感光体ドラム1を露光し感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。現像装置4は、2成分方式で感光体ドラム1上の静電潜像にトナーを付着させる。露光位置変更部23は、電源断が検知されると、露光装置3による感光体ドラム1の露光位置を、プリント画像現像時の露光位置より現像装置4に近い位置に変更する。
【0039】
これにより、電源断の直後に帯電量を低下させていない感光体ドラム1表面の領域が現像位置に到達しにくくなり、電源断の直後の短時間におけるキャリア現像が抑制される。
【0040】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0041】
例えば、上記実施の形態に係る画像形成装置は、直接転写方式の画像形成装置であるが、間接転写方式の画像形成装置としてもよい。
【0042】
また、上記実施の形態に係る画像形成装置は、モノクロ画像形成装置であるが、カラー画像形成装置としてもよい。
【0043】
さらに、上記実施の形態では、光源3aの位置または向きを変更して露光位置を変更しているが、光学系(ミラーなど)を光源3aと感光体ドラム1との間に挿入して光路を変更することで、露光位置を変更するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば、電子写真方式の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 感光体ドラム
2 帯電装置
3 露光装置
3a 光源
4 現像装置
23 露光位置変更部
23b ソレノイド
32 ドライバー回路
33 コントローラー