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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】端子接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/20 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
H01R13/20 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019200198
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072264
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 有哉
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503957(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167434(WO,A1)
【文献】米国特許第10389055(US,B1)
【文献】米国特許第05716244(US,A)
【文献】特開2006-313751(JP,A)
【文献】特開2004-139986(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167599(WO,A1)
【文献】特開2019-057411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一接続部を有する第一端子と、
第二接続部を有する第二端子と、
前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせた状態で挟持するばね部材と、を有し、
前記第一接続部と前記第二接続部の少なくとも一方の接触面が、他方の接触面に向かって曲面状に膨出する接点部を有し、
前記ばね部材が、前記接点部から離隔した位置で前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせ方向に押圧する押圧点を有しており、
前記ばね部材が、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされる一対の押圧片と、該一対の押圧片を連結する連結部を有しており、少なくとも一方の前記押圧片は、前記接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所において他方の前記押圧片に向かって膨出する形状の2つの前記押圧点を有しており、
前記ばね部材の前記押圧片が、前記2つの押圧点の間に延びて前記押圧片の突出端に開口するスリットを有し、
前記ばね部材が前記第一接続部と前記第二接続部の前記重ね合わせ方向に直交する方向で前記接点部を間に挟んで離隔する2箇所において前記押圧点を有し、
前記スリットにより前記2つの押圧点が相互に独立して変位可能であり、
前記ばね部材の前記一対の押圧片の両方にそれぞれ2つの前記押圧点が設けられており、一方の前記押圧片の前記押圧点と、前記他方の押圧片の前記押圧点が、前記重ね合わせ方向で対向している端子接続構造。
【請求項2】
第一接続部を有する第一端子と、
第二接続部を有する第二端子と、
前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせた状態で挟持するばね部材と、を有し、
前記第一接続部と前記第二接続部の少なくとも一方の接触面が、他方の接触面に向かって曲面状に膨出する接点部を有し、
前記ばね部材が、前記接点部から離隔した位置で前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせ方向に押圧する押圧点を有しており、
前記ばね部材が、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされる一対の押圧片と、該一対の押圧片を連結する連結部を有しており、少なくとも一方の前記押圧片は、前記接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所において他方の前記押圧片に向かって膨出する形状の2つの前記押圧点を有しており、
前記ばね部材の前記押圧片が、前記2つの押圧点の間に延びて前記押圧片の突出端に開口するスリットを有し、
前記ばね部材が前記第一接続部と前記第二接続部の前記重ね合わせ方向に直交する方向で前記接点部を間に挟んで離隔する2箇所において前記押圧点を有し、
前記スリットにより前記2つの押圧点が相互に独立して変位可能であり、
前記接点部は、前記接触面の長さ方向の一部において幅方向の全長に亘って帯状に広がっており、前記長さ方向と前記幅方向のそれぞれに所定の曲率で湾曲している端子接続構造。
【請求項3】
前記第一端子が前記第一接続部の前記接触面に前記接点部を有して第一ハウジングに収容保持されており、
前記第一ハウジングが、前記第一端子の前記第一接続部の周囲に前記ばね部材を収容保持する一方、
前記第一ハウジングが、前記第一接続部と前記ばね部材の前記押圧点の対向面間に連通する第二端子挿通孔を有しており、
前記第二端子挿通孔を挿通した前記第二端子の前記第二接続部が、前記対向面間に挿入されて、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向で重ね合わされた状態で前記ばね部材に挟持されるようになっている請求項1または請求項2に記載の端子接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2つの端子を電気的に接続する端子接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの端子を電気的に接続する端子接続構造として、例えば、特開2011-238558号公報(特許文献1)に記載のように、2つの端子の接続部同士をばね部材によって重ね合わせ状態で挟持する構造が提案されている。2つの端子の接続部間には、曲面状に突出する接点部が設けられており、接点部における確実な接触がばね部材により安定して確保されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-238558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような従来構造の端子接続構造においては、ばね部材の押圧力が接点部に集中する。そのため、端子に接続された電線の揺動等による外力が及ぼされた場合に、接点部を回転中心とした2つの端子の相対的な回転変位が生じる可能性があった。仮に2つの端子の回転変位が生じた場合には、この回転により端子表面のめっきが摩耗して接触抵抗が増加したり、電気的な接続が不安定になるおそれもあった。これに対して、ばね部材のばね力を大きくして押圧力を増大させることも考えられるが、ばね部材への端子の挿入抵抗が増大することが避けられず望ましい対策とは言い難かった。
【0005】
本開示は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ばね部材のばね力の増大を伴うことなく、2つの端子間の回転変位を有利に防止することができる、新規な構造の端子接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子接続構造は、第一接続部を有する第一端子と、第二接続部を有する第二端子と、前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせた状態で挟持するばね部材と、を有し、前記第一接続部と前記第二接続部の少なくとも一方の接触面が、他方の接触面に向かって曲面状に膨出する接点部を有し、前記ばね部材が、前記接点部から離隔した位置で前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせ方向に押圧する押圧点を有しており、前記ばね部材が、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされる一対の押圧片と、該一対の押圧片を連結する連結部を有しており、少なくとも一方の前記押圧片は、前記接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所において他方の前記押圧片に向かって膨出する形状の2つの前記押圧点を有しており、前記ばね部材の前記押圧片が、前記2つの押圧点の間に延びて前記押圧片の突出端に開口するスリットを有し、前記ばね部材が前記第一接続部と前記第二接続部の前記重ね合わせ方向に直交する方向で前記接点部を間に挟んで離隔する2箇所において前記押圧点を有し、前記スリットにより前記2つの押圧点が相互に独立して変位可能であり、前記ばね部材の前記一対の押圧片の両方にそれぞれ2つの前記押圧点が設けられており、一方の前記押圧片の前記押圧点と、前記他方の押圧片の前記押圧点が、前記重ね合わせ方向で対向している端子接続構造である。
また、本開示の別の端子接続構造は、第一接続部を有する第一端子と、第二接続部を有する第二端子と、前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせた状態で挟持するばね部材と、を有し、前記第一接続部と前記第二接続部の少なくとも一方の接触面が、他方の接触面に向かって曲面状に膨出する接点部を有し、前記ばね部材が、前記接点部から離隔した位置で前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせ方向に押圧する押圧点を有しており、前記ばね部材が、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされる一対の押圧片と、該一対の押圧片を連結する連結部を有しており、少なくとも一方の前記押圧片は、前記接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所において他方の前記押圧片に向かって膨出する形状の2つの前記押圧点を有しており、前記ばね部材の前記押圧片が、前記2つの押圧点の間に延びて前記押圧片の突出端に開口するスリットを有し、前記ばね部材が前記第一接続部と前記第二接続部の前記重ね合わせ方向に直交する方向で前記接点部を間に挟んで離隔する2箇所において前記押圧点を有し、前記スリットにより前記2つの押圧点が相互に独立して変位可能であり、前記接点部は、前記接触面の長さ方向の一部において幅方向の全長に亘って帯状に広がっており、前記長さ方向と前記幅方向のそれぞれに所定の曲率で湾曲している端子接続構造である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ばね部材のばね力の増大を伴うことなく、2つの端子間の回転変位を有利に防止することができる端子接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1にかかる端子接続構造を用いて接続された第一端子と第二端子が第一ハウジングに収容された状態を示す斜視図である。
図2図2は、図1の分解斜視図である。
図3図3は、図2の第一端子の組立状態を示す全体斜視図である。
図4図4は、図3の側面図である。
図5図5は、図4におけるV-V断面拡大図であって、斜め下方から見た場合の図である。
図6図6は、図4におけるVI-VI断面拡大図であって、斜め上方から見た場合の図である。
図7図7は、図3の平面図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII断面拡大図である(なお、第二端子が第一ハウジングに挿入された状態を示している)。
図9図9は、図7におけるIX-IX断面拡大図である。
図10図10は、図7におけるX-X断面拡大図である(なお、第二端子が第一ハウジングに挿入された状態を示している)。
図11図11は、実施形態2にかかる端子接続構造を用いて接続された第一端子と第二端子が第一ハウジングに収容された状態を示す分解斜視図であって、図2に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子接続構造は、
(1)第一接続部を有する第一端子と、第二接続部を有する第二端子と、前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせた状態で挟持するばね部材と、を有し、前記第一接続部と前記第二接続部の少なくとも一方の接触面が、他方の接触面に向かって曲面状に膨出する接点部を有し、前記ばね部材が、前記接点部から離隔した位置で前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせ方向に押圧する押圧点を有しており、前記ばね部材が、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされる一対の押圧片と、該一対の押圧片を連結する連結部を有しており、少なくとも一方の前記押圧片は、前記接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所において他方の前記押圧片に向かって膨出する形状の2つの前記押圧点を有しており、前記ばね部材の前記押圧片が、前記2つの押圧点の間に延びて前記押圧片の突出端に開口するスリットを有し、前記ばね部材が前記第一接続部と前記第二接続部の前記重ね合わせ方向に直交する方向で前記接点部を間に挟んで離隔する2箇所において前記押圧点を有し、前記スリットにより前記2つの押圧点が相互に独立して変位可能であり、前記ばね部材の前記一対の押圧片の両方にそれぞれ2つの前記押圧点が設けられており、一方の前記押圧片の前記押圧点と、前記他方の押圧片の前記押圧点が、前記重ね合わせ方向で対向している端子接続構造である。
【0010】
本開示の端子接続構造によれば、第一端子の第一接続部と第二端子の第二接続部がばね部材によって重ね合わせ状態で挟持されており、ばね部材の押圧点が第一接続部と第二端子の重ね合わせ面間に設けられた接点部から離隔した位置に設けられている。これにより、接点部を回転軸とする第一端子と第二端子の相対回転を阻止するためのばね部材による回転阻止力を、接点部と押圧点の離隔距離の分大きくすることができる。その結果、第一端子や第二端子に接続された電線から揺動等の外力が伝達された場合であっても、接点部を回転中心とする第一端子と第二端子の相対的な回転変位を、ばね部材のばね力を大きくすることなく有利に阻止することができる。
【0011】
なお、第一端子と第二端子の接触面間に設けられる接点部は、少なくとも一方の接触面に設けられていればよく、両方の接触面に設けられていてもよい。接触面間の接触面積を増やして低い接触抵抗を安定して確保するためには、一方の接触面に接点部を設け、他方の接触面を平面状とすることが好ましい。本態様では、第一接続部と第二接続部に重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされるばね部材の一対の押圧片の少なくとも一方に、他方の押圧片に向かって膨出する形状の押圧点が、接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所に設けられている。これにより、接点部を回転中心とする第一端子と第二端子の相対的な回転変位を、一層安定して阻止することができる。また、接点部を間に挟んだ両側に設けられた押圧点が相互に独立して変位可能とされており、第一端子と第二端子の相互の変位により柔軟に追従して押圧力を安定して及ぼすことができる。さらに、第一接続部と第二接続部に重ね合わせ方向の両側の同じ位置において、接点部を間に挟んで離隔した2箇所からばね部材の押圧力を及ぼすことができる。これにより、接点部を回転中心とする第一端子と第二端子の相対的な回転変位を、一層安定して阻止することができる。
【0015】
また、本開示の別の端子接続構造は、
第一接続部を有する第一端子と、第二接続部を有する第二端子と、前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせた状態で挟持するばね部材と、を有し、前記第一接続部と前記第二接続部の少なくとも一方の接触面が、他方の接触面に向かって曲面状に膨出する接点部を有し、前記ばね部材が、前記接点部から離隔した位置で前記第一接続部と前記第二接続部を重ね合わせ方向に押圧する押圧点を有しており、前記ばね部材が、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされる一対の押圧片と、該一対の押圧片を連結する連結部を有しており、少なくとも一方の前記押圧片は、前記接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所において他方の前記押圧片に向かって膨出する形状の2つの前記押圧点を有しており、前記ばね部材の前記押圧片が、前記2つの押圧点の間に延びて前記押圧片の突出端に開口するスリットを有し、前記ばね部材が前記第一接続部と前記第二接続部の前記重ね合わせ方向に直交する方向で前記接点部を間に挟んで離隔する2箇所において前記押圧点を有し、前記スリットにより前記2つの押圧点が相互に独立して変位可能であり、前記接点部は、前記接触面の長さ方向の一部において幅方向の全長に亘って帯状に広がっており、前記長さ方向と前記幅方向のそれぞれに所定の曲率で湾曲している端子接続構造である。
本開示の端子接続構造によれば、第一端子の第一接続部と第二端子の第二接続部がばね部材によって重ね合わせ状態で挟持されており、ばね部材の押圧点が第一接続部と第二端子の重ね合わせ面間に設けられた接点部から離隔した位置に設けられている。これにより、接点部を回転軸とする第一端子と第二端子の相対回転を阻止するためのばね部材による回転阻止力を、接点部と押圧点の離隔距離の分大きくすることができる。その結果、第一端子や第二端子に接続された電線から揺動等の外力が伝達された場合であっても、接点部を回転中心とする第一端子と第二端子の相対的な回転変位を、ばね部材のばね力を大きくすることなく有利に阻止することができる。また、第一接続部と第二接続部に重ね合わせ方向の両側からそれぞれ重ね合わされるばね部材の一対の押圧片の少なくとも一方に、他方の押圧片に向かって膨出する形状の押圧点が、接点部を間に挟んで相互に離隔する2箇所に設けられている。これにより、接点部を回転中心とする第一端子と第二端子の相対的な回転変位を、一層安定して阻止することができる。さらに、接点部を間に挟んだ両側に設けられた押圧点が相互に独立して変位可能とされており、第一端子と第二端子の相互の変位により柔軟に追従して押圧力を安定して及ぼすことができる。
本態様では、幅方向の全長に亘って帯状に広がる比較的大きな接点部であって、長さ方向と幅方向の両方にそれぞれ所定の曲率で湾曲していることから、第一端子と第二端子の微小な相対変位に対しても安定して大きな接触面積を保持することができ、低い接触抵抗を安定して確保できる。例えば、雌端子を構成する第一端子に本態様の接点部を設けることにより、第一端子の長さ方向や幅方向の何れの方向から雄端子を構成する第二端子が挿入される場合でも、挿入初期の抵抗を低減できる。
【0016】
)前記第一端子が前記第一接続部の前記接触面に前記接点部を有して第一ハウジングに収容保持されており、前記第一ハウジングが、前記第一端子の前記第一接続部の周囲に前記ばね部材を収容保持する一方、前記第一ハウジングが、前記第一接続部と前記ばね部材の前記押圧点の対向面間に連通する第二端子挿通孔を有しており、前記第二端子挿通孔を挿通した前記第二端子の前記第二接続部が、前記対向面間に挿入されて、前記第一接続部と前記第二接続部に前記重ね合わせ方向で重ね合わされた状態で前記ばね部材に挟持されるようになっていることが好ましい。第一ハウジングに接点部を有する第一端子と押圧点を有するばね部材が収容されていることから、接点部と押圧点を第一ハウジングを介して有利に位置決めできるからである。これにより、接点部と押圧点による回転阻止力を一層安定して発現できる。
【0017】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の端子接続構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、図1から図10を参照しつつ説明する。本実施形態における端子接続構造は、図2に示すように、第一端子10と、第二端子12と、ばね部材14と、を備えて構成されている。なお、以下では、図2のZ方向を上方、Y方向を幅方向左方、X方向を長さ方向後方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0019】
<コネクタハウジング18>
図1および図2に示すように、第一端子10は、ばね部材14と共にコネクタ16のコネクタハウジング18内に収容され、コネクタ16として用いられる。コネクタハウジング18は合成樹脂製とされており、長さ方向に伸びて前後方向に開口する角筒形状を有している。コネクタハウジング18の前方側には第二端子12が挿入される第二端子挿入孔20が形成されており、コネクタハウジング18の後方側には第一端子10が挿入される第一端子挿通孔22が形成されている。図1に示すコネクタ16の第二端子挿入孔20に第二端子12を挿入することによって本実施形態の端子接続構造が実現されて、第一端子10と第二端子12が不具合を有利に防止して電気的に接続されるようになっている。
【0020】
<第二端子12>
図2および図3に示すように、第二端子12は、平板状の接続端子である。第二端子12の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を適宜用いることができる。第二端子12は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、銀メッキ、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施していてもよい。第二端子12は、例えば、導電性に優れた金属板をプレス打ち抜き加工することによって形成することができる。第二端子12は、先端側(図2および図3中、後方側)に第二接続部24を有しており、基端側(図2および図3中、前方側)には図示しない外部機器と接続するための外部機器接続部26が形成されている。また、第二端子12は、コネクタハウジング18に挿入された際に第一端子10と対向する面に、第一端子10と接触される接触面30を有している。接触面30は、第二端子12の第二接続部24の下面に形成されており、平坦面となっている。そして、第二端子12は、コネクタハウジング18に挿入されることにより、第一端子10と電気的に接続されるようになっている。なお、第二端子12も第一端子10と同様、図示しないハウジングに収容されて用いられる。
【0021】
<第一端子10>
図2に示すように、第一端子10も、平板状の接続端子である。第一端子10の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を適宜用いることができる。第一端子10も第二端子12と同様、その構成金属の種類や使用環境に応じて、銀メッキ、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施していてもよく、例えば、導電性に優れた金属板をプレス打ち抜き加工することによって形成することができる。第一端子10は、先端側(図2中、前方側)に第二端子12と電気的に接続される第一接続部32を有しており、基端側(図2中、後方側)には被覆電線34と接続される電線接続部36が形成されている。この電線接続部36に対して、被覆電線34の芯線38が導通接続されている。被覆電線34は、導体である銅やアルミニウムその他の金属線の複数を束ね合わせた芯線38が、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆40で覆われた構造とされている。そして、被覆電線34の端末において絶縁被覆40を剥いで露呈された芯線38を、例えば抵抗溶接等の公知の技術を用いて第一端子10の電線接続部36に固着することにより被覆電線34の芯線38が第一端子10に対して導通接続されるようになっている。
【0022】
<接点部42>
第一端子10は、第二端子12と対向する面に、第二端子12と接触される接触面44を有している。接触面44は、第一端子10の第一接続部32の上面に形成されている。第一端子10の第一接続部32の接触面44は、第二端子12と接続される状態において、第二端子12の第二接続部24に向かって曲面状に膨出して形成される接点部42を有している。図2に示すように、接点部42は、ほぼ平坦面に近い緩やかな曲面状をなしている。本実施形態では、接点部42は、第一接続部32の接触面44の長さ方向の一部において幅方向の全長に亘って帯状に広がっており、長さ方向と幅方向のそれぞれに対して所定の曲率で湾曲して形成されている。
【0023】
<ばね部材14>
ばね部材14は、プレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えばばね鋼やステンレス鋼,黄銅,リン青銅,ベリリウム銅等の帯板を用いて形成されている。ばね部材14は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、銀メッキ、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施されていてもよい。ばね部材14は、例えば図8および図10に示すように、第一端子10の第一接続部32に第二端子12の第二接続部24が重ね合わされた状態において、重ね合わせ方向(図8および図10中、上下方向)の両側(上下)から第一接続部32と第二接続部24を挟持するように一対の押圧片46,46がそれぞれ重ね合わされている。一対の押圧片46,46の幅方向端部は矩形平板状の連結部48によって連結されている(図10参照)。ばね部材14の一対の押圧片46,46の両方にはそれぞれ接点部42を間に挟んで長さ方向に相互に離隔する2箇所において他方の押圧片46に向かって膨出する形状の押圧点50を有している(図8参照)。
【0024】
図8に示すように、ばね部材14に設けられたこれらの押圧点50は、接点部42から離隔した位置で第一接続部32と第二接続部24を重ね合わせ方向に押圧している。また、一方の押圧片46の押圧点50と、他方の押圧片46の押圧点50は、重ね合わせ方向で対向するように配置されている。加えて、図2および図8に示すように、ばね部材14の押圧片46の両方は、長さ方向に相互に離隔する2箇所に設けられた押圧点50の間に、第一接続部32と第二接続部24の幅方向延びて押圧片46の突出端に開口するスリット52を有している。これにより、接点部42を間に挟んだ両側に設けられた押圧点50が相互に独立して変位可能となっている。それゆえ、第一接続部32と第二接続部24の相互の変位により柔軟に追従して押圧力を安定して及ぼすことができる。
【0025】
<リテーナ56>
図2に示すように、第一端子10は、第一接続部32と電線接続部36との間に形成された長さ方向に伸びる矩形断面形状の係合孔54を有している。係合孔54は、第一端子10を板厚方向に貫通するように形成されている。リテーナ56は、例えば、耐熱性および剛性に優れた合成樹脂から形成されており、上側リテーナ分割体58と下側リテーナ分割体60を備えている。上側リテーナ分割体58は、矩形平板状の天壁58aと、天壁58aの幅方向両端縁部から下方に向かって突設された一対の矩形平板状の側壁58b,58bを有している。天壁58aの上面には、上方に向かって突出する三角断面形状の係合突起58cが設けられ、天壁58aの下面には、矩形断面で下方に向かって突出する係合突部58dが設けられている。また、一対の矩形平板状の側壁58b,58bの外面の下部にはそれぞれ、係合孔58eが矩形断面形状で板厚方向に貫通するように形成されている。下側リテーナ分割体60は、矩形平板状の底壁60aと、底壁60aの幅方向両端縁部から上方に向かって突設された一対の矩形平板状の側壁60b,60bを有している。底壁60aの上面には、矩形断面で上方に向かって突出する係合突部60cが設けられ、底壁60aの下面には、下方に向かって突出する三角断面形状の係合突起60dが設けられている(図8および図9参照)。また、一対の矩形平板状の側壁60b,60bの外面の下部にはそれぞれ、幅方向外方に向かって突出する三角断面形状の係合突起60eが設けられている。
【0026】
リテーナ56を第一端子10に固定する際には、まず下側リテーナ分割体60の係合突部60cを第一端子10の下方から係合孔54の前方側に挿入する。続いて、上側リテーナ分割体58の係合突部58dを第一端子10の上方から係合孔54の後方側に挿入後、上側リテーナ分割体58を下側リテーナ分割体60に向かって押し込む。これにより、上側リテーナ分割体58の係合孔58eに対して下側リテーナ分割体60の係合突起60eがそれぞれ係合されて、上側リテーナ分割体58と下側リテーナ分割体60が組み付けられた状態で第一端子10に固定される。
【0027】
<第一ハウジング62>
このようにしてリテーナ56が取り付けられた状態の第一端子10に対して、ばね部材14が収容された第一ハウジング62が前方側から組み付けられて、第一端子10が第一ハウジング62に収容保持されるようになっている。図2に示すように、第一ハウジング62は合成樹脂製とされており、長さ方向に伸びて前後方向に開口する角筒形状を有している。第一ハウジング62の前方側には第二端子12が挿入される第二端子挿通孔64が形成されており、第一ハウジング62の後方側にはリテーナ56が取り付けられた状態の第一端子10が挿入される第一端子挿通孔66が形成されている。図5図8および図10に示すように、第一ハウジング62の内面の前方側には、ばね部材14を構成する一対の押圧片46,46および連結部48を収容する凹所状のばね部材収容部68が形成されている。ばね部材収容部68は、長さ方向の後方に向かって開口しているが、ばね部材収容部68に収容されたばね部材14の後方側は、上側リテーナ分割体58の天壁58aと下側リテーナ分割体60の底壁60aによってばね部材収容部68内に収容保持されるようになっている(図5参照)。加えて、第一ハウジング62の天壁と底壁の後端部にはそれぞれ、スリットにより枠体状とされた係合枠体70が形成されており、係合枠体70の中央部にはリテーナ56の係合突起58c,60dと係合する係合孔72が貫設されている。
【0028】
<実施形態1の組付方法>
実施形態1の組付方法について以下に簡単に説明する。はじめに、第一端子10を準備し、この第一端子10の電線接続部36に対して、例えば抵抗溶接等の公知の技術を用いて被覆電線34の芯線38を導通接続する。続いて、被覆電線34の端部の絶縁被覆40にゴム製のシール部材74とコネクタハウジングカバー部材76を取付ける。コネクタハウジングカバー部材76の側壁にはそれぞれ、前方に向かって延び出す係合枠体78が形成されている。次に、この第一端子10の係合孔54に対して、上側リテーナ分割体58と下側リテーナ分割体60からなるリテーナ56を取り付ける。続いて、第一ハウジング62を準備し、この第一ハウジング62のばね部材収容部68に対して後方側からばね部材14を挿入し収容保持する。ばね部材14が収容保持された第一ハウジング62に対して、後方に開口する第一端子挿通孔66から、リテーナ56等が取付けられた第一端子10を挿入する。これにより、第一ハウジング62の係合枠体70の係合孔72に対してリテーナ56の係合突起58c,60dがロック嵌合されて、第一端子10が第一ハウジング62に対して固定されるようになっている。最後に、第一ハウジング62が取り付けられた第一端子10を、コネクタハウジング18に対して第一端子挿通孔22から挿入する。これにより、第一端子10のコネクタハウジングカバー部材76の係合枠体78がコネクタハウジング18の幅方向両側の側壁に突設された係合突起80に嵌合され、第一端子10がコネクタハウジング18に対して固定されて、コネクタ16が完成される。なお、第二端子12は、このように形成されたコネクタ16の第二端子挿入孔20から挿入されることにより、第一端子10に対して電気的に接続されるようになっている。
【0029】
以上の結果、図8および図10に示すように、第一ハウジング62は第一端子10の第一接続部32の周囲にばね部材14を収容保持している。また、図8に示すように、第一ハウジング62は、第一端子10の第一接続部32とばね部材14の押圧点50の対向面間に連通する第二端子挿通孔64を有している。さらに、第二端子挿通孔64を挿通した第二端子12の第二接続部24が、第一端子10の第一接続部32とばね部材14の押圧点50の対向面間に挿入される。この結果、第一端子10の第一接続部32と第二端子12の第二接続部24が重ね合わせ方向である上下方向に重ね合わされた状態でばね部材14の一対の押圧片46,46によって挟持されるようになっている。
【0030】
このような構造とされた本開示の端子接続構造によれば、図8に示すように、第一端子10の第一接続部32に第二端子12の第二接続部24が重ね合わされた状態で、第一接続部32と第二接続部24を上下から挟持するようにばね部材14の一対の押圧片46,46がそれぞれ重ね合わされている。しかも、ばね部材14の一対の押圧片46,46はそれぞれ接点部42を間に挟んで相互に離隔する2箇所に押圧点50を有している。これにより、第一端子10の第一接続部32や第二端子12の第二接続部24に揺動等の外力が伝達された場合であっても、接点部42を回転中心とする第一端子10と第二端子12の相対的な回転変位を、接点部42と押圧点50の離隔距離に比例してより一層有利に阻止することができる。すなわち、本実施形態では、接点部42を回転中心とする第一端子10と第二端子12の相対的な回転変位を、ばね部材14のばね力を大きくすることなく有利に阻止することができる。
【0031】
また、図8に示すように、一方の押圧片46の押圧点50と、他方の押圧片46の押圧点50は、重ね合わせ方向で対向するように配置されている。これにより、第一端子10と第二端子12を重ね合わせ方向に一層効率よく押圧することができることから、接点部42を回転中心とする第一端子10と第二端子12の相対的な回転変位を、一層安定して阻止することができる。しかも、接点部42を有する第一端子10と押圧点50を有するばね部材14が同じ第一ハウジング62内に収容されていることから、接点部42と押圧点50を第一ハウジング62を介して有利に位置決めできる。それゆえ、接点部42と押圧点50の離隔距離に比例する回転阻止力を一層安定して発現できる。
【0032】
加えて、本実施形態では、接点部42は、第一接続部32の接触面44の長さ方向の一部において幅方向の全長に亘って帯状に広がっており、長さ方向と幅方向のそれぞれに対して所定の曲率で湾曲して形成されている。それゆえ、第一接続部32の接触面44と第二接続部24の接触面30に微小な相対変位があったとしても安定して大きな接触面積を保持することができ、低い接触抵抗を安定して確保できる。すなわち、雌端子を構成する第一端子10に本態様の接点部42を設けることにより、第一端子10の長さ方向や幅方向の何れの方向から雄端子を構成する第二端子12が挿入される場合であっても、安定して大きな接触面積を保持することができ、低い接触抵抗を安定して確保できる。
【0033】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0034】
(1)上記実施形態1では、第一端子10の第一接続部32と第二端子12の第二接続部24が一直線上に配置された場合を例にとって説明を行ったが、これに限定されない。図11に示す本開示の実施形態2の端子接続構造のように、第一端子10の第一接続部32と第二端子12の第二接続部24が直交する方向に配置されていてもよい。実施形態2では、コネクタハウジング82,第一ハウジング84およびコネクタハウジングカバー部材86の形状が実施形態1と異なるだけで、その他の部材は実施形態1と同じものが使用可能となっている。したがって、上記部材を変更するだけで、第一端子10の第一接続部32と第二端子12の第二接続部24の接続方向を容易に変更することができることから、高い汎用性を有している。
【0035】
(2)上記実施形態1,2では、接点部42は、第一端子10の第一接続部32の接触面44のみに設けられていたが、これに限定されない。第二端子12の第二接続部24の接触面30のみに設けられていてもよいし、両方に設けられていてもよい。なお、接触面30,44間の接触面積を増やして低い接触抵抗を安定して確保するためには、例えば実施形態1のように、一方の接触面44のみに接点部42を設け、他方の接触面30を平面状とすることが好ましい。
【0036】
(3)上記実施形態1,2では、両方の押圧片46に2つの押圧点50がそれぞれ対向して設けられていたが、これに限定されない。両方の押圧片46に設けられる押圧点50が対向する必要はなく、相互にずれていてもよいし、一方の押圧片46のみに2つあるいは任意の数の押圧点50が設けられていてもよい。すなわち、押圧片46に設けられる押圧点50は、接点部42から離隔した位置に設けられていれば、いずれの態様も本発明に含まれる。例えば、押圧片46に設けられる押圧点50の数や形状,形成位置等はいずれも任意に設定可能である。
【0037】
(4)上記実施形態1,2では、接点部42は長さ方向と幅方向のそれぞれに対して所定の曲率で湾曲して形成されていたが、接点部42が長さ方向と幅方向で同じ曲率で湾曲して形成されていてもよい。さらに、任意の形状の接点部42が採用可能である。
【0038】
(5)ばね部材14において、スリット52を必ずしも採用しなくてもよい。また、ばね部材14の形状は例示のものに限定されず、コイルばね等その他の任意の形状が採用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 第一端子
12 第二端子
14 ばね部材
16 コネクタ
18 コネクタハウジング
20 第二端子挿入孔
22 第一端子挿通孔
24 第二接続部
26 外部機器接続部
30 接触面
32 第一接続部
34 被覆電線
36 電線接続部
38 芯線
40 絶縁被覆
42 接点部
44 接触面
46 押圧片
48 連結部
50 押圧点
52 スリット
54 係合孔
56 リテーナ
58 上側リテーナ分割体
58a 天壁
58b 側壁
58c 係合突起
58d 係合突部
58e 係合孔
60 下側リテーナ分割体
60a 底壁
60b 側壁
60c 係合突部
60d 係合突起
60e 係合突起
62 第一ハウジング
64 第二端子挿通孔
66 第一端子挿通孔
68 ばね部材収容部
70 係合枠体
72 係合孔
74 シール部材
76 コネクタハウジングカバー部材
78 係合枠体
80 係合突起
82 コネクタハウジング
84 第一ハウジング
86 コネクタハウジングカバー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11