(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】原料糖及び精製糖の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
C13B 20/08 20110101AFI20230518BHJP
C13B 10/08 20110101ALI20230518BHJP
C13B 10/02 20110101ALI20230518BHJP
C13B 20/14 20110101ALI20230518BHJP
C13B 20/02 20110101ALI20230518BHJP
C13B 25/00 20110101ALI20230518BHJP
C13B 30/06 20110101ALI20230518BHJP
C13B 40/00 20110101ALI20230518BHJP
【FI】
C13B20/08
C13B10/08
C13B10/02
C13B20/14
C13B20/02
C13B25/00
C13B30/06
C13B40/00
(21)【出願番号】P 2021568683
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2021041858
(87)【国際公開番号】W WO2022014725
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2020198547
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303032384
【氏名又は名称】新東日本製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】松山 貴久
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-106749(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109530290(CN,A)
【文献】国際公開第2001/014594(WO,A1)
【文献】特開2009-082903(JP,A)
【文献】特開2004-050092(JP,A)
【文献】特開平11-262400(JP,A)
【文献】特開昭52-130931(JP,A)
【文献】国際公開第2004/085684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C13B
A23L5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味資源作物から原料糖を製造する原料糖の製造プロセスであって、
甘味資源作物を圧縮機にかけて搾り出し、ショ糖を含む糖液を精製する圧搾工程(A1)と、糖液に石灰を加える石灰清浄工程(A2)と、石灰を加えた糖液を連続沈殿槽に入れて不純物を沈殿させる連続沈殿工程(A3)と、連続沈殿槽の上澄み液を濃縮してシラップを精製する濃縮工程(A5)と、真空の結晶缶中でシラップを煮詰めてショ糖の結晶を作る結晶工程(A6)と、遠心分離機にかけてショ糖の結晶と蜜に分ける分離工程(A7)と、分離後のショ糖の結晶を乾燥させることにより原料糖が精製される乾燥工程(A8)と、を有し、
前記連続沈殿工程(A3)の後に、微細泡から成るオゾンを糖液中に溶け込ませることにより、前記糖液中に含まれる微細な濁質分であるセルロースやペクチン酸カルシウムを分解除去するオゾン処理工程(A4)を備えることを特徴とする原料糖の製造プロセス。
【請求項2】
甘味資源作物から原料糖を製造する原料糖の製造プロセスであって、
甘味資源作物を所定の形状に裁断する裁断工程(C1)と、裁断後の甘味資源作物から糖液を抽出する抽出工程(C2)と、糖液に炭酸ガスと石灰を加えて不純物を取り除く炭酸飽充工程(C3)と、糖液を加圧濾過することで炭酸カルシウムを分離した糖液を精製する濾過工程(C4)と、イオン交換樹脂によって糖液から色素が除去された糖液を精製するイオン交換樹脂工程(C6)と、前記糖液を真空の結晶缶の中で加熱・濃縮することでショ糖の結晶を精製する結晶工程(C7)と、遠心分離機にかけて蜜を分離してショ糖だけの結晶を取り出す分離工程(C8)と、前記分離工程(C8)で得た結晶を乾燥させることで原料糖が精製される乾燥工程(C9)と、を有し、
前記濾過工程(C4)の後に、微細泡から成るオゾンを糖液中に溶け込ませることにより、前記糖液中に含まれる微細な濁質分であるセルロースやペクチン酸カルシウムを分解除去するオゾン処理工程(C5)を備えることを特徴とする精製糖の製造プロセス。
【請求項3】
原料糖から精製糖を精製する精製糖の製造プロセスであって、
原料糖に高濃度の砂糖液を加えて溶解し、遠心分離機を使って原料糖の結晶表面を覆う蜜膜を分離することにより、蜜膜中に存在する不純物が除去された洗糖を精製する洗糖工程(B1)と、
前記洗糖に水を加えて所定濃度の糖液(ローリカー)を精製すると共に、必要に応じて脱色補助剤として粉炭を添加した糖液に石灰を加え、更に炭酸ガスを吹き込んで炭酸カルシウムを生成し、不純物を炭酸カルシウムに吸着させる炭酸飽充工程(B2)と、
該炭酸飽充工程(B2)後の糖液を加圧濾過し、該糖液から不純物が吸着している炭酸カルシウムを取り除いて分離する加圧濾過工程(B3)と、
該加圧濾過工程(B3)後の糖液を骨炭に通して脱色させる骨炭工程(B5)と、
糖液を濾過機に通すことで微粉炭が除去された糖液(ブラウンリカー)を精製する第1チェック濾過工程(B6)と、
前記糖液(ブラウンリカー)をイオン交換樹脂に通して色素を除去するイオン交換樹脂工程(B7)と、
該イオン交換樹脂工程(B7)後の糖液を濾過機を通すことで微細物を除去して透明な糖液(ファインリカー)を精製する第2チェック濾過工程(B8)と、
前記糖液(ファインリカー)を真空の結晶缶の中で加熱・濃縮することで無色透明なショ糖の結晶を精製する結晶工程(B9)と、を備え、
前記加圧濾過工程(B3)の後に、微細泡から成るオゾンを糖液中に溶け込ませることにより、前記糖液中に含まれる微細な濁質分であるセルロースやペクチン酸カルシウムを分解除去するオゾン処理工程(B4)を備えることを特徴とする精製糖の製造プロセス。
【請求項4】
骨炭工程(B5)が省略されている請求項3記載の製造プロセス。
【請求項5】
石灰清浄工程(A2)が省略されている請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項6】
炭酸飽充工程
(B2,C3)が省略されている請求項
2乃至4のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項7】
オゾン処理工程は、撹拌機を用いて糖液中にオゾンの微細泡を撹拌混合する処理である請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘味資源作物から原料糖を製造するプロセスに関し、更には原料糖から精製糖を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サトウキビ、サトウダイコン等の甘味資源作物から無色透明な精製糖を製造するには、一般に、甘味資源作物から赤茶色の原料糖を製造する原料糖の製造プロセスと、赤茶色の原料糖から無色透明な精製糖を精製する精製糖の製造プロセスに分けることができる。
【0003】
原料糖の製造プロセスは甘味資源作物が育成される農場の近くで行われることが多く、そこで製造された原料糖は世界各地の精製糖工場に運ばれ、各工場における精製糖の製造プロセスにおいて無色透明な精製糖に製造される(例えば、特許文献1)。
従来の原料糖の製造プロセスは、一般に、圧搾機を用いてサトウキビを圧搾して糖液(搾り汁)を精製する圧搾工程、糖液に石灰を加えて連続沈殿槽に入れ、不純物を沈殿させて除去する工程、沈殿後の上澄み液から水分を除去して高濃度のシラップを精製する濃縮工程、シラップを真空結晶缶の中で煮詰めてショ糖の結晶を精製する結晶工程、遠心分離機を用いて結晶(原料糖)と蜜とに振り分ける分離工程、分離された結晶を乾燥機に入れて乾燥させる乾燥工程などを有する。
【0004】
他方、従来の精製糖の製造プロセスは、一般に、原料糖に高濃度の砂糖液を加えて溶解し、遠心分離機を使って原料糖の結晶表面を覆う蜜膜を分離することにより、不純物が除去された洗糖を精製する洗糖工程、洗糖に水を加えて所定濃度の糖液(ローリカー)を作ると共に、必要に応じて脱色補助剤として粉炭を添加した糖液に石灰を加え、炭酸ガスを吹き込んで炭酸カルシウムを生成し、不純物を炭酸カルシウムに吸着させて取り除く炭酸飽充工程、炭酸飽充後の糖液を加圧濾過することで炭酸カルシウムと糖液に分離させる加圧濾過工程、更に骨炭に糖液を通すことで糖液を脱色させる骨炭工程、骨炭を通すことによって糖液中に含まれることとなった微粉炭を濾過機で除去する第1チェック濾過工程、イオン交換樹脂に通すことで糖液に含まれる色素の除去を行うイオン交換樹脂工程、イオン交換樹脂に通すことによって糖液中に含まれることとなった微細物を濾過機で除去して透明な糖液(ファインリカー)を精製する第2チェック濾過工程、透明な糖液(ファインリカー)を真空の結晶缶の中で加熱・濃縮することで無色透明なショ糖の結晶からなる精製糖を精製する結晶工程などを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、原料糖には、サトウキビを圧搾した際に、サトウキビの細胞壁や植物繊維質などが細かく分解することで生成される微細な濁質分として、セルロースやペクチン酸カルシウム等が多く含まれているが、このような微細な濁質分を上記洗糖工程又は炭酸飽充工程において除去することは困難であった。
【0007】
このため、特に精製糖の製造プロセスにおける第1チェック濾過工程では、微細な濁質分が濾過機に詰まって濾過圧が高くなってしまうという問題があった。この点、濾過圧が高くならないように、糖液の濃度を低くする対応が考えられるが、その場合には結晶工程において結晶化に要する蒸気使用量を増大させる必要が生じるため、結果としてエネルギーコストが高騰するという問題がある。
【0008】
更に微細な濁質分が、精製糖の製造プロセスにおける骨炭工程における骨炭、又はイオン交換樹脂工程におけるイオン交換樹脂に詰まることで脱色能力が大幅に低下しやくなることから、粉炭の使用量を増大させなければならなくなるという問題もある。
【0009】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、精製糖の製造プロセスの各工程への影響は勿論のこと、原料糖の製造プロセスの各工程にも大きな影響を与える微細な濁質分を微細な泡(マイクロバブルともいう、以下同様)から成るオゾンを用いて効率よく分解除去できるようにした原料糖及び精製糖の製造プロセスを創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる第1手段は、
甘味資源作物から原料糖を製造する原料糖の製造プロセスであって、
甘味資源作物を圧縮機にかけて搾り出し、ショ糖を含む糖液を精製する圧搾工程と、糖液に石灰を加える石灰清浄工程と、石灰を加えた糖液を連続沈殿槽に入れて不純物を沈殿させる連続沈殿工程と、連続沈殿槽の上澄み液を濃縮してシラップを精製する濃縮工程と、真空の結晶缶中でシラップを煮詰めてショ糖の結晶を作る結晶工程と、遠心分離機にかけてショ糖の結晶と蜜に分ける分離工程と、分離後のショ糖の結晶を乾燥させることにより原料糖が精製される乾燥工程と、を有し、
前記連続沈殿工程の後に、微細泡から成るオゾンを糖液中に溶け込ませることにより、前記糖液中に含まれる微細な濁質分であるセルロースやペクチン酸カルシウムを分解除去するオゾン処理工程を備えることを特徴とする、と云うものである。
本発明の第1の主たる手段では、原料糖の製造プロセスの糖液中に含まれる微細な濁質分を分解除去することができる。
【0011】
また本発明の主たる第2手段は、
甘味資源作物から原料糖を製造する原料糖の製造プロセスであって、
甘味資源作物を所定の形状に裁断する裁断工程(C1)と、裁断後の甘味資源作物から糖液を抽出する抽出工程(C2)と、糖液に炭酸ガスと石灰を加えて不純物を取り除く炭酸飽充工程(C3)と、糖液を加圧濾過することで炭酸カルシウムを分離した糖液を精製する濾過工程(C4)と、イオン交換樹脂によって糖液から色素が除去された糖液を精製するイオン交換樹脂工程(C6)と、前記糖液を真空の結晶缶の中で加熱・濃縮することでショ糖の結晶を精製する結晶工程(C7)と、遠心分離機にかけて蜜を分離してショ糖だけの結晶を取り出す分離工程(C8)と、前記分離工程(C8)で得た結晶を乾燥させることで原料糖が精製される乾燥工程(C9)と、を有し、
前記濾過工程(C4)の後に、微細泡から成るオゾンを糖液中に溶け込ませることにより、前記糖液中に含まれる微細な濁質分であるセルロースやペクチン酸カルシウムを分解除去するオゾン処理工程(C5)を備えることを特徴とする、と云うものである。
本発明の第2の主たる手段でも、原料糖の製造プロセスの糖液中に含まれる微細な濁質分を分解除去することができる。
【0012】
また本発明の主たる第3手段は、
原料糖から精製糖を精製する精製糖の製造プロセスであって、
原料糖に高濃度の砂糖液を加えて溶解し、遠心分離機を使って原料糖の結晶表面を覆う蜜膜を分離することにより、蜜膜中に存在する不純物が除去された洗糖を精製する洗糖工程と、
前記洗糖に水を加えて所定濃度の糖液(ローリカー)を精製すると共に、必要に応じて脱色補助剤として粉炭を添加した糖液に石灰を加え、更に炭酸ガスを吹き込んで炭酸カルシウムを生成し、不純物を炭酸カルシウムに吸着させる炭酸飽充工程と、
該炭酸飽充工程後の糖液を加圧濾過し、該糖液から不純物が吸着している炭酸カルシウムを取り除いて分離する加圧濾過工程と、
該加圧濾過工程後の糖液を骨炭に通して脱色させる骨炭工程と、
糖液を濾過機に通すことで微粉炭が除去された糖液(ブラウンリカー)を精製する第1チェック濾過工程と、
前記糖液(ブラウンリカー)をイオン交換樹脂に通して色素を除去するイオン交換樹脂工程と、
該イオン交換樹脂工程後の糖液を濾過機を通すことで微細物を除去して透明な糖液(ファインリカー)を精製する第2チェック濾過工程と、
前記糖液(ファインリカー)を真空の結晶缶の中で加熱・濃縮することで無色透明なショ糖の結晶を精製する結晶工程と、を備え、
前記加圧濾過工程の後に、微細泡から成るオゾンを糖液中に溶け込ませることにより、前記糖液中に含まれる微細な濁質分であるセルロースやペクチン酸カルシウムを分解除去するオゾン処理工程を備えることを特徴とする、と云うものである。
本発明の第3の主たる手段では、精製糖の製造プロセスの糖液中に含まれる微細な濁質分を分解除去することができる。
【0016】
また本発明の他の手段は、上記の手段に、
骨炭工程と炭酸飽充工程の少なくとも一方が省略される、との手段を加えたものである。
上記手段では、炭酸飽充工程や骨炭工程に要する製造コストを低減することができる。
【0017】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、
オゾン処理工程は、撹拌機を用いて糖液中にオゾンの微細泡を撹拌混合する処理である、との手段を加えたものである。
上記手段では、オゾンの微細泡を糖液中に練り込んで効率よく溶け込ませることができ、糖液中に含まれる微細な濁質分は分解するが、ショ糖については分解させないというオゾンの選択的反応を効率よく行わせることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
原料糖の製造プロセス及び精製糖の製造プロセスでは、オゾン処理工程を有することから、微細な濁質分を分解除去できるようになるので、炭酸飽充工程を省略することが可能となる。
【0019】
また精製糖の製造プロセスでは、濾過圧が高くならないように糖液の濃度を低くする必要がなくなるため、結晶工程における蒸気使用量が増大することを抑制できるようになり、結果としてエネルギーコストの高騰を防止できる。
更に、粉炭の使用量を大幅に減らすことが可能となることから製造コストを低減できる。
【0020】
更に、精製糖の製造プロセスでは、濾過機及びイオン交換樹脂において微細な濁質分の詰まりが抑制され、脱色能力を向上させることが可能となることから骨炭工程を省略することが可能となり、結果として製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施例として原料糖の製造プロセスの一例を示すフロー図である。
【
図3】本発明の第2実施例として精製糖の製造プロセスの一例を示すフロー図である。
【
図4】第1実施例の変形例として原料糖の製造プロセスの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例として原料糖の製造プロセスの一例を示すフロー図、
図2はオゾン処理工程を示す概略図である。
本発明は、甘味資源作物から最終精製物である精製糖を製造するためのプロセスであるが、以下においては甘味資源作物から原料糖を製造する原料糖の製造プロセスを第1実施例とし、原料糖から精製糖を精製する精製糖の製造プロセスを第2実施例として説明する。
【0023】
先ず、第1実施例として、甘味資源作物から原料糖を製造する原料糖の製造プロセスについて説明する。
図1は甘味資源作物がサトウキビの場合の例であり、ステップA1に示すように、刈り取ったサトウキビをカッターやシュレッダー等に通して細かく裁断した後、水を加えながら圧縮機にかけて搾り出し、ショ糖を含む糖液(搾り汁)を精製する(圧縮工程)。次に、ステップA2でその糖液に石灰を加え(石灰清浄工程)、更にステップA3の連続沈殿槽に入れて不純物を沈殿させる(連続沈殿工程)。
【0024】
次に、ステップA4に示すように、連続沈殿工程後の糖液にオゾン処理を行う(オゾン処理工程)。
オゾン処理工程は、糖液中にオゾン発生器1が発生したオゾンガスを溶け込ませる工程である。そこで、本発明では、
図2に示すように、オゾン発生器1が発生した濃度及び流量がコントロールされたオゾンガスを、マイクロバブル発生装置2を用いて50μm~100μmの微細泡に生成してタンク3内の糖液中に抽出すると共に、撹拌機4を用いて糖液中に微細泡を撹拌混合する。ここで撹拌機4を用いると、オゾンの微細泡を糖液中に分散させることが出来、より効率的となる。その結果、糖液中に含まれる微細な濁質分(セルロースやペクチン酸カルシウム等)は分解するが、ショ糖については分解させないというオゾンの選択的反応を効率よく行わせることが可能となる。これにより、分解した微細な濁質分は、オゾンの微細泡の表面に累積し、凝集化することで塊6となってタンク3の底部に沈降することになる。よって、塊6を含む糖液をストレーナー7に通して濾すことにより、微細な濁質分が除去された糖液を得ることができる。
【0025】
次に、オゾン処理された糖液をステップA5の濃縮工程において濃縮したシラップを精製する。
次のステップA6では、真空の結晶缶中でシラップを煮詰め、ショ糖の結晶を作り(結晶工程)、ステップA7の分離工程では遠心分離機にかけてショ糖の結晶と蜜に分けた後、ステップA8の乾燥工程においてショ糖の結晶を乾燥させることにより、赤茶色の原料糖が製造される。
このようにして製造された原料糖は、各地の精製糖工場において精製糖に精製される。
【0026】
図3は、本発明の第2実施例として原料糖から精製糖を精製する製造プロセスの一例を示すフロー図である。
原料糖の結晶表面は、不純物を多く含む蜜膜で覆われていることから、ステップB1の洗糖工程では、結晶表面から蜜膜を分離して不純物の除去を行う。具体的には、原料糖に高濃度の砂糖液を加えて結晶表面の蜜膜を溶解すると共に、遠心分離機を使って原料糖の結晶表面から蜜膜を分離除去した洗糖を精製する。
尚、骨炭工程(B5)、イオン交換樹脂工程(B7)、第1チェック濾過工程(B6)及び第2チェック濾過工程(B8)において脱色能力が不十分で、結晶化した砂糖の色価が規格に入らない場合は、ここで糖液中に脱色補助剤としての粉炭を必要に応じて添加する。ただし、後述するオゾン処理工程(B4)の効果により、上記工程における脱色の効果が顕著に発揮される場合には粉炭の添加を省略してもよい。
【0027】
次のステップB2の炭酸飽充工程では、洗糖に水を加えて作った所定濃度の糖液(ローリカー)中に石灰を加え、炭酸ガスを吹き込んで炭酸カルシウムを生成し、不純物を炭酸カルシウムに吸着させて取り除く。ステップB3の加圧濾過工程では、炭酸飽充処理後の糖液を加圧濾過することで炭酸カルシウムを分離した糖液を精製する。
【0028】
ステップB4のオゾン処理工程は、上記原料糖の製造プロセスのステップA4同様(
図2参照)であり、糖液中にオゾン発生器1が発生したオゾンガスを溶け込ませて微細な濁質分(セルロースやペクチン酸カルシウム等)を除去する。ただし、加圧濾過工程を経た糖液の糖濃度が高いため、通常のオゾンガスは糖液中に溶け込み難い。そこで、オゾン発生器1が発生したオゾンガスを、マイクロバブル発生装置2を用いて50μm~100μmの微細泡にしてタンク3内の糖液中に抽出すると共に、撹拌機4を用いて粘度の高い糖液中にオゾンの微細泡を撹拌混合し、オゾンの選択的反応を効率よく行わせることにより、微細な濁質分が除去された糖液を精製する。
【0029】
次のステップB5の骨炭工程では、牛骨を焼いて得られる多孔質の炭(骨炭)に糖液を通すことで糖液を脱色させる。続く、ステップB6の第1チェック濾過工程では、骨炭工程において骨炭を通すことによって糖液中に若干含まれることとなった骨炭の微粉炭が濾過機で除去された糖液(ブラウンリカー)を精製する。更にステップB7のイオン交換樹脂工程では、糖液(ブラウンリカー)をイオン交換樹脂に通し微細な不純物を吸着させ除去すると共にイオンレベルの色素を除去し、次のステップB8の第2チェック濾過工程では、イオン交換樹脂工程においてイオン交換樹脂に通すことによって糖液中に含まれることとなった微細物を濾過機で除去することにより、透明な糖液(ファインリカー:FL)を精製する。
【0030】
次に、透明な糖液を真空の結晶缶の中で加熱・濃縮するステップB9の結晶工程を経ることにより、最終物である精製糖が出来上がる。
【0031】
上記のオゾン処理工程は、原料糖の製造プロセスと精製糖の製造プロセスの少なくとも一方が備えていれば良い。すなわち、精製糖の製造プロセスのオゾン処理工程(ステップB4)は、オゾン処理工程(ステップA4)を有さない原料糖の製造プロセスを経て製造された原料糖から精製糖を製造する場合に特に有効であるが、原料糖の製造プロセスがオゾン処理工程(ステップA4)を有することで十分に微細な濁質分が除去されている場合には、精製糖の製造プロセスにオゾン処理工程(ステップB4)を有さない構成とすることも可能である。また原料糖の製造プロセスがオゾン処理工程(ステップA4)を有する場合であっても、精製糖の製造プロセスがオゾン処理工程(ステップB4)を備える場合には、二重にオゾン処理工程を行うことから、より完全に微細な濁質分が除去された糖液を精製することが可能となる。
【0032】
図4は第1実施例の変形例として原料糖の製造プロセスの一例を示すフロー図である。尚、
図4は甘味資源作物がサトウダイコン(甜菜、ビートともいう)の場合である。
ステップC1では収穫後に洗浄したサトウダイコンの根部を所定の形状に千切りして裁断し(裁断工程)、ステップC2では裁断後のサトウダイコンを温水に浸して糖分を抽出させた糖液を抽出する(抽出工程)。ステップC3では上記ステップB2同様に、炭酸ガスと石灰を用いて糖液から不純物を取り除き(炭酸飽充工程)、続くステップC4では、上記ステップB3同様に炭酸飽充後の糖液を加圧濾過することで炭酸カルシウムを分離した糖液を精製する(濾過工程)。
【0033】
そして、ステップC5では上記ステップA4及びB4同様に、糖液に対してオゾン処理工程を行い、微細な濁質分が除去された糖液を精製する。更に、ステップC6ではオゾン処理された糖液をイオン交換樹脂に通して不純物を吸着させると共に色素の除去を行って透明な糖液(ファインリカー)を精製する(イオン交換樹脂工程)。
【0034】
そして、ステップC7では透明な糖液を真空の結晶缶の中で加熱・濃縮することで無色透明なショ糖の結晶を作り(結晶工程)、ステップC8ではこれらを遠心分離機にかけて蜜を分離して、ショ糖だけの結晶を取り出し(分離工程)、最後のステップC9では、分離工程で得た結晶を乾燥させて最終物である原料糖が出来上がる。
【0035】
以上の説明のように、甘味資源作物から原料糖を精製する原料糖の製造プロセスを説明した第1実施例及びその変形例ではステップA4及びステップC5において、原料糖から精製糖を精製する精製糖の製造プロセスを説明した第2実施例ではステップB4において、それぞれオゾン処理工程を有することで微細な濁質分を分解除去できるようになるので、ステップA2の石灰清浄工程、ステップB2、C3の炭酸飽充工程を省略することが可能となる。尚、ステップC3の炭酸飽充工程を省略する場合には粉炭の添加は不可欠となる。
また第2実施例では、濾過圧が高くならないように糖液の濃度を低くする必要がなくなるため、結晶工程における蒸気使用量が増大することが抑制できるようになり、結果としてエネルギーコストの高騰を防止できると共に、粉炭の使用量を大幅に減らすことが可能となるため、この点でも製造コストを低減できる。
更に、第2実施例では、濾過機及びイオン交換樹脂において微細な濁質分の詰まりが抑制され、脱色能力を向上させることが可能となるため、ステップB5の骨炭工程を省略することが可能となる。
尚、第2実施例において、ステップB2(炭酸飽充工程)及びステップB5(骨炭工程)を省略しない場合には粉炭の添加を省略することができるが、ステップB2(炭酸飽充工程)及びステップB5(骨炭工程)を省略する場合には粉炭の添加を増量することが好ましい。
【0036】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、甘味資源作物として、サトウキビとサトウダイコンの場合を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば砂糖イネなどその他の甘味資源作物の場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、原料糖又は精製糖を精製する分野における用途展開を更に広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 : オゾン発生器
2 : マイクロバブル発生装置
3 : タンク
4 : 撹拌機
5 : 羽根
6 : 塊
7 : ストレーナー