(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】表面突起が形成された球状無機粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 17/235 20200101AFI20230518BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20230518BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230518BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230518BHJP
【FI】
C01F17/235
C09K3/14 550D
C09G1/02
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2021568911
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2021002502
(87)【国際公開番号】W WO2021172954
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0023993
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521504418
【氏名又は名称】ビード・オリジン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BEAD ORIGIN INC.
【住所又は居所原語表記】#27507, 2066, SEOBU‐RO, JANGAN‐GU, SUWON‐SI, GYEONGGI‐DO 16419, REPUBLIC OF KOREA
(73)【特許権者】
【識別番号】514293260
【氏名又は名称】リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション ソンギュンクァン ユニバーシティ
【住所又は居所原語表記】2066, SEOBU-RO, JANGAN-GU, SUWON-SI, GYEONGGI-DO, 16419, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ジェ‐ド
(72)【発明者】
【氏名】キム,ナ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,イン‐キュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウイソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンハク
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-052610(JP,A)
【文献】特開昭63-239109(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の
小球状粒子が凝集されて形成された
球状無機粒子であって、前記
小球状粒子は、結晶性相と無定形相とが混在されており、結晶化度が90%以下であ
り、
前記球状無機粒子および前記複数個の小球状粒子はCeO
2
からなり、前記球状無機粒子のCe
3+
/Ce
4+
イオン比が40%~60%である、球状無機粒子。
【請求項2】
前記
小球状粒子は、粒径が10nm以下である、請求項1に記載の
球状無機粒子。
【請求項3】
前記
球状無機粒子は、密度が3.0~5.0g/mlであり、平均粒径が30~1000nmであり、粒径の標準偏差が20以下である、請求項1に記載の
球状無機粒子。
【請求項4】
前記
球状無機粒子は、等電点がpH5~7である、請求項1に記載の
球状無機粒子。
【請求項5】
前記
球状無機粒子は、pH4の水分散液の状態で表面電荷が+30~+50mVまたは-30~-50mVのゼータ電位を有する、請求項1に記載の
球状無機粒子。
【請求項6】
(a)自己組立性界面活性剤を溶媒に溶解させる段階と、
(b)前記(a)段階を実施する前、後、または同時に、無機物前駆体を前記溶媒に溶解または分散させて無機物前駆体溶液を製造する段階と、
(c)前記無機物前駆体と前記界面活性剤との自己組立反応を通じて界面活性剤が形成するシェルの中で結晶性相と無定形相とが混在された
小粒子を形成し、複数個の
小粒子が凝集されて無機粒子を形成する段階と、を含む、請求項1~
5の何れか一項に記載の
球状無機粒子の製造方法。
【請求項7】
前記(c)段階で得た無機粒子を酸と塩基とで処理して表面電荷が制御された無機粒子を得る段階をさらに含む、請求項
6に記載の
球状無機粒子の製造方法。
【請求項8】
前記自己組立性界面活性剤は、前記無機物前駆体と結合することができる電荷を有する陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される1つ以上であって、縮合反応ないし架橋反応が可能な官能基を保有する、請求項
6に記載の
球状無機粒子の製造方法。
【請求項9】
前記縮合反応ないし架橋反応が可能な官能基は、アミド基、ニトロ基、アルデヒド基、及びカルボニル基からなる群から選択される1つ以上である、請求項
8に記載の
球状無機粒子の製造方法。
【請求項10】
前記自己組立性界面活性剤が、下記化学式1の構造を有する、請求項
6に記載の
球状無機粒子の製造方法:
[化1]
前記化学式1において、R
1及びR
3は、独立して水素原子、C
1~C
10アルキル基またはアルコキシ基であり、R
2は、下記化学式2の置換基であり、nは、2以上の数である。
[化2]
化学式2において、R
4及びR
5は、独立して水素原子、C
1~C
10アルキル基またはアルコキシ基であり、R
6は、C
1~C
10アルキレン基または単一共有結合であり、
*は、連結部品を示す。
【請求項11】
前記溶媒は、水または水と相溶性を有する溶媒と水との混合溶媒である、請求項
6に記載の
球状無機粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1~
5の何れか一項に記載の
球状無機粒子が水に分散されている、水分散液。
【請求項13】
前記水分散液は、CMP用スラリーである、請求項
12に記載の水分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年2月27日付の大韓民国特許出願10-2020-0023993号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、表面突起が形成された球状無機粒子及びその製造方法に係り、より具体的には、表面突起が形成されており、表面電荷が制御された球状無機粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
無機粒子は、多様な分野で原料ないし最終製品として使われており、特に、化学触媒、バイオ、半導体工程、強化ガラス加工などの広い範囲で活用されている。
【0004】
このような無機粒子を合成する工程は、非常に多様であり、合成方法は、製造接近方式によって原子を組み立てて行く方式(bottom up)と、大きな塊のサイズを減らして行く方式(top down)と、に分けられ、合成原理によって、物理的、機械的、化学的方法に分けられる。化学的方法のうち、液相での化学反応を用いる液相反応法は、セラミック原料粉末の合成法として最も幅広く用いられている方法である。液相化学反応を利用した粉末製造工程の種類としては、ゾル-ゲル法(sol-gel method)、熱分解法(pyrolysis method)、錯体重合法(polymerized complex method)、沈澱法(precipitation method)、水熱合成法(hydrothermal method)などが知られている。
【0005】
無機粒子が合成される過程で原子固有の組み立て特性によって粒子が成長し、それにより、無機粒子の最終形状が決定される。すなわち、無機粒子の形状ということは、無機粒子の固有性質であるために、同じ成分の無機粒子を他の形状に製造するということは非常に難しい。
【0006】
例えば、セリア(CeO2)結晶は、角状の六角構造のフローライト(fluorite)粒子形状を有している。セリア粒子は、半導体製造工程のうち、CMP工程に使われるスラリーに研磨粒子として含まれているが、セリア粒子の角状の構造によってスクラッチ(scratch)不良欠陥が発生している。したがって、それを解決するために、セリア粒子を球状に製造することができる方法が研究されている。しかし、角状のフローライト構造セリアの形状を球状に変えながら、サイズが均一であり、よく分散されるセリア粒子を合成することは非常に難しい。
【0007】
また、無機粒子の形状の変化によって粒子の比表面積は差が生じ、それにより、粒子表面での化学反応程度も変わりうる。例えば、無機粒子を触媒として使用する場合、粒子の比表面積は、触媒活性部位と直接的な関連があり、同一体積に比べて、比表面積が大きな粒子の反応性に優れている。
【0008】
無機粒子のさらに他の争点の1つは、分散安定性である。ナノサイズの無機粒子(以下、「ナノ粒子」とも称する)は、一般的に水溶液上で熱力学的に不安定であり、高い比表面積によって安定して分散されない難点がある。したがって、保管過程で粒子の凝集が起こり、それによって、形状や性質が変化される問題がある。したがって、ナノ粒子の分散性を向上させるための方法が要求される。
【0009】
これにより、ナノ粒子の分散性を向上させるために、ナノ粒子の表面電荷を制御する技術が必要である。特に、例えば、半導体CMP工程でスラリー内研磨粒子として使われるセリアまたはシリカナノ粒子の水溶液上での分散は非常に重要である。したがって、スラリー水溶液のpHを調節して研磨粒子と膜質との間にさらに強い引力を発生させる環境を提供することにより、研磨工程の効率を向上させようとする努力がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、角状ではない球状の形状を有しながら、水分酸性に優れて、特に、シリコン膜に対する研磨能力に優れ、同時にスクラッチ損傷が低い無機粒子を提供するところにある。
【0011】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記無機粒子を製造する方法を提供するところにある。
【0012】
また、本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記無機粒子が水に分散された分散液を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前述した技術的課題を果たすために、複数個の小粒子が凝集されて形成された無機粒子であって、前記小粒子は、結晶性相と無定形相とが混在されており、結晶化度が90%以下である無機粒子を提供する。
【0014】
一具現例によれば、前記小粒子は、粒径が10nm以下である。
【0015】
一具現例によれば、前記無機粒子の密度が3.0~5.0g/mlであり、平均粒径が30~1000nmであり、粒径の標準偏差が20以下である。一具現例によれば、前記無機粒子は、等電点がpH5~7である。
【0016】
一具現例によれば、前記無機粒子は、pH4の水分散液の状態で+30~+50mVまたは-30~-50mVのゼータ電位を有しうる。
【0017】
一具現例によれば、前記無機粒子は、Ga、Sn、As、Sb、Ce、Si、Al、Co、Fe、Li、Mn、Ba、Ti、Sr、V、Zn、La、Hf、Ni、及びZrからなる群から選択される1つ以上の元素の酸化物からなる。
【0018】
一具現例によれば、前記無機粒子は、CeO2粒子であり、Ce3+/Ce4+イオン比が40~60である。
【0019】
また、本発明は、前述した他の技術的課題を解決するために、(a)溶媒に自己組立性界面活性剤を溶解させる段階;(b)前記(a)段階を実施する前、後、または同時に、無機物前駆体を前記溶媒に溶解または分散させて無機物前駆体溶液を製造する段階;及び(c)前記無機物前駆体と前記界面活性剤との自己組立反応を通じて界面活性剤が形成するシェルの中で結晶性相と無定形相とが混在された小粒子を形成し、複数個の小粒子が凝集されて無機粒子を形成する段階;を含む方法を提供する。
【0020】
一具現例によれば、前記自己組立性界面活性剤は、前記無機物前駆体とイオン結合することができる電荷を有する陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される1つ以上であって、縮合反応ないし架橋反応が可能な官能基を保有するものである。
【0021】
一具現例によれば、前記縮合反応ないし架橋反応が可能な官能基は、アミド基、ニトロ基、アルデヒド基、及びカルボニル基からなる群から選択される1つ以上である。
【0022】
一具現例によれば、前記自己組立性界面活性剤が、下記化学式1の高分子である。
【0023】
【0024】
前記化学式1において、R1及びR3は、独立して水素原子、C1~C10アルキル基またはアルコキシ基であり、R2は、下記化学式2の置換基であり、nは、2以上の数である。
【0025】
【0026】
化学式2において、R4及びR5は、独立して水素原子、C1~C10アルキル基またはアルコキシ基であり、R6は、C1~C10アルキレン基または単一共有結合であり、*は、連結部品を示す。
【0027】
一具現例によれば、前記(c)段階で得た無機粒子を酸と塩基とで処理して表面電荷が制御された無機粒子を得る段階を含みうる。
【0028】
一具現例によれば、前記溶媒は、水または水と相溶性を有する溶媒と水との混合溶媒である。
【0029】
一具現例によれば、前記水と相溶性を有する溶媒は、アルコール、クロロホルム、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、及びブチルグリコールのうちから選択される1つ以上である。
【0030】
また、本発明によれば、前述した無機粒子が水に分散されている水分散液を提供する。
【0031】
一具現例によれば、前記水分散液は、CMP用スラリーである。
【発明の効果】
【0032】
本発明による無機粒子は、結晶性相と無定形相とが混在されており、結晶化度が90%以下である複数個の小粒子が凝集されて形成された無機粒子であって、前記小粒子が表面突起を形成している形状を有し、これにより、大きな比表面積を有することができ、pH調節による表面電荷の制御が容易である。その結果、シリコン膜との接触面積が増大し、研磨速度も向上するだけではなく、スクラッチ損傷が低くて、CMP研磨スラリーに含まれる研磨粒子として使用時に、研磨効率に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による無機粒子の形状を概略的に示した図である。
【
図2】実施例1及び比較例1によるCeO
2粒子に対する走査電子顕微鏡(scanning electron microscope)の写真図と高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM)の写真図である。
【
図3】比較例2による試料の走査電子顕微鏡の写真図である。
【
図4】実施例1及び比較例1のCeO
2粒子に対する粒度分布を分析したヒストグラムを示した図である。
【
図5】実施例1及び比較例1のCeO
2粒子に対するXRD分析結果を示した図である。
【
図6】実施例1及び比較例1によるCeO
2粒子のHR-TEMイメージと選択領域電子回折(SAED)パターンとを示す図である。
【
図7】実施例1及び比較例1によるCeO
2粒子のX線光電子分光分析(XPS)の結果を示した図である。
【
図8】実施例1及び比較例1によるCeO
2粒子の水分散液に対するゼータ電位の測定結果を示した図である。
【
図9】実施例1及び比較例1によるCeO
2粒子のスラリーを使用してシリコン膜の研磨率(Removal rate)を比較した結果を示した図である。
【
図10】実施例1によるCeO
2粒子(a)と比較例1による粒子(b)とをそれぞれ用いてCMP testを進行した後のウェーハ表面に対する原子間力顕微鏡(atomic force microscope)のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を多様な具現例を参照してより詳細に説明する。
しかし、これは、本発明を特定の実施形態に限定しようとするものではなく、本発明の技術思想及び範囲に含まれる変形物、均等物または代替物をいずれも含むものと理解しなければならない。
【0035】
第1、第2、A、Bなどの用語は、多様な構成要素の説明に使われるが、前記構成要素が、前記用語によって限定されるものではなく、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。
【0036】
「及び/または」という用語は、複数の記載の項目のうち、何れか1つまたはこれらの含む組み合わせを含む。
【0037】
ある構成要素が、他の構成要素に「連結されて」、または「接続されて」いるという記載は、その他の構成要素に直接に連結または接続されていても、または中間に他の構成要素が存在していても良いということを理解しなければならない。
【0038】
単数の表現は、取り立てて明示しない限り、複数の表現を含む。
【0039】
「備えた」、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数値、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在するということを称するものであり、言及されていない他の特徴、数値、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせの存在、または付加可能性を排除しない。
【0040】
本発明によれば、自己組立性界面活性剤を水系溶媒中で無機物前駆体と反応させることにより、無機物固有の原子組み立て特性による粒子形状ではない他の形状を有する無機粒子の合成が可能である。例えば、固有の原子組み立て構造によれば、角状のフローライト六角構造で形成されるしかないセリア(CeO2)無機粒子を突起を有する球状の粒子に製造可能である。
【0041】
本発明によれば、結晶性相と無定形相とが混在されており、結晶化度が90%以下である複数個の小粒子が凝集されて無機粒子を形成している。前記結晶化度は、小粒子の結晶化度でもあるが、小粒子が凝集されてナノクラスターの形態で無機粒子を形成しているために、無機粒子の結晶化度とも言及される。前記結晶化度は、また全体相中で結晶性相の比率を意味する。すなわち、結晶化度が90%であるということは、結晶性相が90%以下であり、無定形相が10%以上を占めているということを意味する。前記小粒子または無機粒子の結晶化度は、90%以下、85%以下、80%以下または75%以下であり、50%以上、60%以上、65%以上または70%以上である。
【0042】
結晶性相と無定形相とが一定の比率で混在されているために、CMP工程の研磨スラリーとして使用する場合、基板のスクラッチ、ディッシングなどの欠陥発生を最小化することができる。
【0043】
図1は、本発明による無機粒子の構造を概略的に図示する。すなわち、本発明による無機粒子は、非常に小さな
小粒子の集合体からなっており、
小粒子は、結晶性相と無定形相とが混在されており、表面突起を形成しているために、非常に独特な表面を有する。
【0044】
図1のように、無機粒子及び
小粒子は、いずれも実質的に球状である。ここで、球状とは、短径/長径の比で表現されるアスペクト比が0.8以上、0.9以上または0.95以上であり、1.2以下、1.1以下または1.05以下であることを意味する。したがって、本発明による無機粒子を称する時、以下、「球状突起無機粒子」または「球状突起粒子」とも称する。
【0045】
無機粒子が、その表面に球状突起を有することにより、同一質量基準に粒子の比表面積を増加させる効果がある。球状突起を形成する小粒子の直径は、無機粒子直径の2~25%である。望ましくは、5%以上、10%以上、15%以上、または20%以上である。
小粒子の粒径は、10nm以下、8nm以下、6nm以下または5nm以下であり、1nm以上、2nm以上、3nm以上、または4nm以上である。
【0046】
本発明による球状突起無機粒子は、30~1000nmの粒度分布を有し、均一なサイズに形成される。球状突起無機粒子のサイズは、数平均粒径を基準とし、望ましくは、50nm以上、100nm以上、110nm以上または120nm以上、そして、800nm以下、500nm以下、300nm以下、200nm以下または150nm以下である。無機粒子粒径の標準偏差は、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下または11以下である。
【0047】
図1は、本発明の実施例1によって製造されたセリア粒子の構造を概略的に図示するが、CeO
2単位体(サイズ0.54nm)が集まって
小粒子(粒径4.4nm)を形成し、
小粒子が集まってセリア粒子(粒径108nm)を形成することを示す。
【0048】
本発明による球状突起無機粒子は、自己組立性界面活性剤と無機物前駆体とを自己組立反応させて製造可能であり、その結果、本発明による無機粒子は、その密度が3.0~5.0g/mlである。密度は、TAP密度測定法(ASTM B527)で測定することができる。無機粒子の密度は、3.2g/ml以上、3.3g/ml以上、3.4g/ml以上または3.5g/ml以上であり、4.5g/ml以下または4.0g/ml以下である。
【0049】
一具現例によれば、前記1次粒子及び2次粒子は、それぞれ独立してGa、Sn、As、Sb、Ce、Si、Al、Co、Fe、Li、Mn、Ba、Ti、Sr、V、Zn、La、Hf、Ni、及びZrからなる群から選択される1つ以上の元素の酸化物からなるものである。望ましい実施例によれば、セリウム(Ce)、シリコン(Si)及びアルミニウム(Al)から選択される1つ以上の酸化物である。望ましい実施例によれば、無機粒子は、セリア(CeO2)からなりうる。
【0050】
一具現例によれば、前記球状突起無機粒子は、水分散液の状態で表面電荷が+30mV以上、または-30mV以下を少なくとも一回有することができ、特に、pH4条件で+30~+50mVまたは-30~-50mVの絶対値が高い表面電荷(ゼータ電位)を示す。ここで、「表面電荷」という用語は、「ゼータ電位」と同等な意味として使われる。
【0051】
また、本発明の実施例によれば、無機粒子の等電点がpH5~7である。望ましくは、等電点がpH5.5以上6.5以下である。水系で等電点が低いほど粒子表面にOH-基が多く存在することを意味するが、これは、直ちに粒子表面の活性部位が多いということを意味するので、CMP工程で研磨性能を向上させるのにおいて有利である。
【0052】
本発明は、また、前述した無機粒子が水に分散されている水分散液を提供する。
【0053】
本発明による無機粒子を半導体CMP工程でのスラリー内研磨粒子として使用すれば、角状の角のない球状でありながら、無定形相を含んでいるために、スクラッチ不良欠陥を補完することができ、粒子表面にある多様な突起によって比表面積が増加して、研磨しようとする膜質と接触する確率が高くなるだけではなく、粒子の表面性質の変化によって研磨速度を向上させうる。例えば、本発明で提示した方法で製造される球状突起セリア粒子の場合、粒子表面での元素欠陥によって、既存の六角フローライトセリア粒子に比べてCe(III)が多くなって、研磨速度を向上させうる。
【0054】
本発明によって製造されたセリア粒子は、Ce3+/Ce4+イオン比が40~60である。Ce3+/Ce4+イオン比が高いほど研磨速度が向上するが、本発明によれば、40以上、42以上、44以上または46以上のイオン比が得られる。前記イオン比は、60以下、55以下または50以下である。
【0055】
また、本発明で提示したpH調節を通じた無機粒子の表面電荷の制御方法を活用すれば、球状突起無機粒子の表面電荷をより容易に制御することができ、それを活用してCMP工程で研磨粒子と膜質との間に最適相互作用を発揮することができる水溶液のpH環境を造成することにより、さらに効率的かつ安定した研磨が可能である。
【0056】
以下、本発明による液相合成法を用いて球状突起無機粒子を製造する方法についてより具体的に説明する。
【0057】
〔液相合成法を利用した球状突起無機粒子の製造方法〕
本発明による球状突起無機粒子は、下記の段階を含む方法で製造可能である。
(a)溶媒に自己組立性界面活性剤を溶解させる段階;(b)前記(a)段階を実施する前、後、または同時に、無機物前駆体を前記溶媒に溶解または分散させて無機物前駆体溶液を製造する段階;及び(c)前記無機物前駆体と前記界面活性剤との自己組立反応を通じて界面活性剤が形成するシェルの中で結晶性相と無定形相とが混在された小粒子を形成し、複数個の小粒子が凝集されて無機粒子を形成する段階。
【0058】
本発明で提示する液相合成法を利用した球状突起無機粒子の製造過程で段階(c)の粒子形成過程は、(i)自己組立性界面活性剤と共に無機物前駆体が還元されながら、小粒子が形成される段階;及び(ii)自己組立性界面活性剤の自己組立反応が進行すると共に、複数の小粒子が凝集されながら、表面に突起を有する球状無機粒子に成長する段階;を含む。無機粒子形成と表面突起形成との2つの段階は、たとえ区分して説明したとしても、反応が連続して起こるので、1つの合成段階によって球状突起無機粒子が形成されるとも見られる。
【0059】
〔無機物前駆体〕
まず、製造しようとする無機物の前駆体溶液を製造する。無機物前駆体と自己組立性界面活性剤、溶媒とを混合して製造し、この際、溶媒に界面活性剤を先に溶解させた後に無機物前駆体を入れても、溶媒に無機物前駆体を先に溶解した後、界面活性剤を入れて混合しても、または、溶媒に無機物前駆体と自己組立性界面活性剤とを同時に添加して混合しても良い。この過程で無機物前駆体と界面活性剤との間の弱い結合がなされる。
【0060】
ここで、無機物前駆体としては、Ga、Sn、As、Sb、Ce、Si、Al、Co、Fe、Li、Mn、Ba、Ti、Sr、V、Zn、La、Hf、Ni、及びZrからなる群から選択される1つ以上の元素を含み、酸化物を形成することができる物質である。本発明で使用する無機物前駆体は、水溶液の状態で電荷を帯びている界面活性剤とイオン結合することができる化合物の形態であることが望ましい。例えば、硝酸塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、フッ化物、水酸化物、ヨウ化物、シュウ酸塩または硫酸塩であり、これらは、水化物または無水物の形態である。
【0061】
さらに具体例を挙げれば、Ammonium cerium(IV)nitrate、Cerium(III)bromide anhydrous、Cerium(III)carbonate hydrate、Cerium(III)chloride anhydrous、Cerium(III)chloride heptahydrate、Cerium(III)fluoride anhydrous、Cerium(IV)fluoride、Cerium(IV)hydroxide、Cerium(III)iodide anhydrous、Cerium(III)nitrate hexahydrate、Cerium(III)oxalate hydrate、Cerium(III)sulfate、Cerium(III)sulfate hydrate、Cerium(III)sulfate octahydrate、Cerium(IV)sulfate hydrateのようにセリウムが含まれた塩が使われる。
【0062】
他の例としては、tetraethyl orthosilicate(TEOS)、diethoxydimethylsilane(DEMS)及びvinyltriethoxysilane(VTES)のようなシリコン前駆体、Ti(OR)4の構造を有するチタン前駆体、Zr(OR)4構造を有するジルコニウム前駆体、Al(OR)4構造を有するアルミニウム前駆体などが使われる。ここで、Rは、水やアルコールと水和ないしアルコール化される官能基を意味し、例えば、メチル基、エチル基のような低級アルキル基である。それ以外にも、Ga、Sn、As、Sb、Mn、またはVの酸化物を形成することができる前駆体を使用することも可能である。
【0063】
〔自己組立性界面活性剤〕
自己組立を形成する界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性及び両性界面活性剤いずれもが使われ、無機物前駆体と結合することができ、溶媒に溶けながら、(+)または(-)、あるいは2種の電荷をいずれも有しながら、架橋反応によって粒子形成反応を誘導することができる官能基を保有したものである。このような官能基としては、アミド基、ニトロ基、アルデヒド基、カルボニル基などを例として挙げられる。
【0064】
本発明によれば、合成反応に使用する自己組立性界面活性剤の種類によって表面電荷が異なる粒子を製造することができる。すなわち、製造しようとする無機粒子の表面電荷によって自己組立性界面活性剤を選択的に使用することができる。例えば、(-)電荷を帯びる球状突起無機粒子を製造しようとする場合、陽イオン性界面活性剤を使用することができる。陽イオン性界面活性剤の(+)電荷を帯びる部分で無機物前駆体のイオンと結合して小粒子が作られ、反応が進行することによって自己組立のシェルが形成されながら、その中で無機粒子は、表面に突起がある球状の形状に成長する。同様の原理によって、逆に(+)電荷を有する球状突起無機粒子を製造しようとする場合、陰イオン性界面活性剤を使用することができる。このように、目標とする表面電荷を有する無機粒子を製造するためには、特定のイオン性を帯びる界面活性剤のシェルが必要であり、使用する自己組立性界面活性剤の種類によって、表面電荷が異なる粒子の製造が可能である。
【0065】
また、必要に応じて合成過程で一種またはそれ以上の界面活性剤を混合して使用可能である。自己組立性物質のうち、界面活性剤は溶媒に溶けながら、互いに架橋(crosslinking)を形成することができ、一定温度と一定時間以上で反応が進行することによって自己組み立てられる。この際、その界面活性剤と結合されていた小粒子の間の間隔が近くなって凝集しながら、粒子は成長するが、自己組み立てられた界面活性剤のシェルで取り囲まれて成長しながら、中実球状粒子に無機粒子が形成され、同時に表面に多様な突起を含む形状に育つ。突起は、球状粒子の表面で同時に成長しても、独自的に成長した突起が球状粒子の表面に表われながら、突起を形成しても良い。
【0066】
陰イオン性界面活性剤としては、Alkylbenzene sulfonates、Alkyl sulfates、Alkyl ether sulfates、Soapsなどが使われる。
【0067】
陽イオン性界面活性剤としては、alkyl quaternary nitrogen化合物、Esterquatsのようなquaternary ammonium化合物などが使われる。
【0068】
また、陽イオン性のquaternary ammonium ion基と陰イオン性のcarboxylate(-COO-)sulfate(-SO4
2-)またはsulfonate(-SO3-)基とをいずれも含む両性界面活性剤が使われる。
【0069】
それだけではなく、Picolinic acid、(carboxymethyl)dimethyl-3-[(1-oxododecyl)amino]propylammonium hydroxide、lauryl betaine、betaine citrate、sodium lauroamphoacetate、sodium hydroxymethylglycinate、(carboxymethyl)dimethyloleylammonium hydroxide、cocamidopropyl betaine、(carboxylate methyl)dimethyl(octadecyl)ammonium、PEO-PPO block copolymer、anionic siloxanes及びdendrimers、poly(sodium 10-undecylenate)、poly(sodium 10-undecenylsulfate)、poly(sodium undeconylvalinate)、polyvinylpyrrolidone、polyvinylalcohol、2-acrylamide-2-methyl-1-propanesulfonic acid、alkyl methacrylamide、alkyl acrylate、poly(allylamine)-supported phases、poly(ethyleneimine)、poly(N-isopropylacrylamide)、n-hydroxysuccinimideなどが使われる。
【0070】
望ましくは、前記自己組立性界面活性剤が、下記化学式1の高分子である。また、下記化学式1の高分子は、分子内(+)と(-)との性質をいずれも有する両性界面活性剤であると言える。
【0071】
【0072】
前記化学式1において、R1及びR3は、独立して水素原子、C1~C10アルキル基またはアルコキシ基であり、nは、2以上の数であり、R2は、下記化学式2の構造を有する置換基である。
【0073】
【0074】
化学式2において、R4及びR5は、独立して水素原子、C1~C10アルキル基またはアルコキシ基であり、R6は、C1~C10アルキレン基または単一共有結合であり、*は、連結部品を示す。
【0075】
前記化学式1の高分子は、分子量が500以上100,000以下であることが望ましい。ここで、分子量は、重量平均分子量であり、重量平均分子量とは、GPC法によって測定したポリスチレン換算分子量を意味する。前記分子量は、1000以上、5000以上、10,000以上、20,000以上または30,000以上であり、95,000以下、90,000以下、85,000以下、80,000以下、70,000以下、60,000以下、50,000以下または40,000以下である。
【0076】
自己組立性界面活性剤の使用量は、無機物前駆体100重量部当たり30~150重量部である。界面活性剤の使用量は、無機物前駆体100重量部当たり40重量部以上、50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、80重量部以上または90重量部以上であり、140重量部以下、130重量部以下、120重量部以下または110重量部以下である。
【0077】
〔溶媒〕
球状突起無機粒子の合成反応に使われる溶媒は、水または水と相溶性を有する溶媒と水との混合溶媒である。
【0078】
一具現例によれば、前記水と相溶性を有する溶媒は、アルコール、クロロホルム、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、及びブチルグリコールのうちから選択される1つ以上である。
【0079】
水と相溶性を有する溶媒を水と混合して使用する場合、水:相溶性溶媒の混合体積比は、100:50~200、または100:60~150、または100:70~120である。
【0080】
水や水と相溶性を有する溶媒と水との混合物を溶媒として使用して、無機物前駆体及び/または自己組立性界面活性剤を添加して溶解させる時には、撹拌機を使用することが良く、完全に溶解させた後に反応を進行させることが良い。そうでない場合、均一なモルフォロジー(morphology)の粒子の形成に妨害になるためである。
【0081】
〔球状突起無機粒子の合成反応〕
球状突起無機粒子の合成段階では、前記製造された無機物前駆体溶液を反応器に流入し、自己組立界面活性剤との合成反応を進行する。球状突起無機粒子の合成は、1~24時間、60~250℃の温度範囲でなされる。望ましくは、2時間以上、3時間以上、または4時間以上、そして、20時間以下、10時間以下、または8時間以下の間、70℃以上、80℃以上または90℃以上、そして、220℃以下、200℃以下、180℃以下、または160℃以下の範囲で進行しうる。
【0082】
自己組立性界面活性剤は、溶媒に溶けた後、一定温度と時間とで反応が進行することによって、無機物前駆体のイオンと結合される。ここで、自己組立とは、界面活性剤の(+)性質を有する部分と(-)性質を有する部分とが結合しながら、自発的に組織的な構造や形態を形成することを意味する。例えば、界面活性剤が分子構造内にアミド基を有するならば、窒素原子部分は(+)の性質を、酸素原子部分は(-)の性質を有して、自らネットワーク構造を形成しうる。それと同時に、このような自己組立性物質と共に溶媒に溶けていた小粒子の間の間隔が近くなって凝集しながら、粒子は成長する(ナノクラスター形成)。この過程で粒子が界面活性剤のシェルで取り囲まれて成長するために、球状粒子に作られ、粒子表面には突起が形成される。この際、突起は、球状粒子の表面で同時に成長しても、独自的に成長した突起が球状粒子の表面に表われながら、突起を形成しても良い。
【0083】
〔球状突起無機粒子の表面電荷の制御方法〕
本発明によれば、前記合成反応で得た無機粒子を酸及び/または塩基で処理して無機粒子の表面電荷を制御することができる。
【0084】
本発明で提示する球状突起無機粒子の表面電荷の制御方法は、基本的に粒子が含まれている水溶液のpHを制御するものである。例えば、水溶液内に正電荷を帯びる粒子がある場合、酸性物質を添加するほど粒子はさらに強い正電荷を帯び、逆に、塩基性物質を添加するほど粒子の表面電荷は次第に弱い正電荷を帯びていて、中性を帯びる点まで到達する。それよりもさらに過度に塩基を継続的に添加すれば、負電荷を帯びる。このような原理を用いて水溶液内のpHを調節することにより、無機粒子の表面電荷を制御することができる。
【0085】
水溶液のpHを下げるための酸性pH調節剤としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸などの酸性物質を1つまたはそれ以上混合して使用することができ、逆に、pHを高めるための塩基性pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア水などの塩基性物質を1つまたはそれ以上混合して使用することができる。この際、pHを調節すると共に、撹拌機を用いて水溶液の内部を均一に混合して初めて、正確なpH測定がなされうる。
【0086】
本発明による球状突起無機粒子は、表面電荷において、+30mV以上、または-30mV以下を少なくとも一回有する無機粒子であって、水溶液内で安定した状態で存在して表面特性をさらに効果的に発現することができる表面電荷の調節方法を含む。このように製造された粒子は、ガラス、シリコンのような多様な媒質との結合力に優れて、研磨粒子として使用が可能である。
【0087】
特に、本発明による無機粒子は、pH4の水分散液の状態で表面電荷が+30~+50mVまたは-30~-50mVである。すなわち、与えられたpH条件で絶対値が高いゼータ電位を有するために、研磨率がさらに向上する。ここで、「表面電荷」という用語は、「ゼータ電位」と同等な意味として使われる。
【実施例】
【0088】
以下の実施例を通じて、本発明の構成及び作用をさらに詳しく説明する。但し、これは、本発明の望ましい例示で提示されたものであり、如何なる意味でも、これにより、本発明が制限されると解釈されることはできない。また、本技術分野で熟練した者であれば、十分に技術的に類推することができる内容は、その説明を省略する。
【0089】
球状突起セリア粒子の製造
<実施例1>
エチレングリコール(99%)と水とを体積比100:100に混合した溶媒160mlに、自己組立性界面活性剤としてPoly(N-isopropylacrylamide)(アルドリッチ社、Mw:30,000)を2g入れ、マグネチック撹拌機で撹拌した。完全に溶解されたことを確認した後にセリウム前駆体としてアルドリッチ社(Aldrich社)のCerium nitrate hexahydrate(Ce(NO3)3・6H2O)2gを入れ、溶解させてセリウム前駆体溶液を製造した。
【0090】
そのセリウム前駆体溶液を温度が保持される液相反応器に入れ、90~140℃の温度範囲で約165分間合成反応を進行した。反応終了後、得られたセリア粒子溶液を遠心分離機を用いて4000rpmで1時間30分間遠心分離し、沈殿物を分離した後、水(H2O)で洗浄する過程を3回繰り返し、結果物であるセリア粒子を得た(以下、「BOC100」とも称する)。
【0091】
<実施例2>
水180mlにCerium chloride 2.4gを溶解させた水溶液に実施例1で使用したものとは分子量が異なるPoly(N-isopropylacrylamide)(アルドリッチ社、Mw:85,000)を2.4g添加して70~90℃で6時間撹拌して反応させた。以後、前記の実施例1と同じ方法で分離及び洗浄して球状突起を有するセリア粒子を得た。
【0092】
<比較例1>
フローライト六角構造のCeO2粒子(製造社:Solvay、製品名:HC60)を準備した。
【0093】
<比較例2>
水160mlにセリウム前駆体としてアルドリッチ社のCerium nitrate hexahydrate(Ce(NO3)3・6H2O)8gを入れ、溶解させてセリウム前駆体溶液を作り、マグネチック撹拌機で撹拌した。完全に溶解されたことを確認した後にSodium hydroxide(NaOH)4gを入れて、塩基状態の溶液で製造した。約1時間撹拌して沈澱法で合成されたCeO2粒子を準備した。
【0094】
モルフォロジー及び構造分析
実施例1及び実施例2と比較例1とのセリア粒子に対するモルフォロジー及び構造を走査電子顕微鏡(FE-SEM、JEOL JSM 7401F)、高解像度透過電子顕微鏡(HR-TEM、JEM-2100F)、X線回折分析器(Rigaku SmartLab SE X-ray diffractometer with Cu Kα radiation)及びX線光電子分光分析器(XPS、Thermo ESCALAB 250)を使用して分析した。
【0095】
図2のA及び
図2のBは、実施例1で製造したセリア粒子(BOC100)の形状を示すSEMイメージとTEMイメージとである。実施例1のセリア粒子がラウンドしており、柔らかい表面を有した球状であるということを示す。
【0096】
一方、
図2のD及び
図2のEによれば、比較例1のセリア粒子(HC60)は、鋭く角状のエッジと結晶格子面を保有したフローライト結晶の特徴的な形状を示す。
【0097】
図3は、比較例2によって、沈澱法によって製造された粒子のSEMイメージである。粒子の形状が不規則であり、凝集されていることを確認することができる。
【0098】
また、
図4は、実施例1及び比較例1のセリア粒子の粒度分布を示すヒストグラムである。実施例1のセリア粒子(BOC100)は、平均粒径は108nmであり、標準偏差10.3であるが、比較例1のセリア粒子(HC60)は、平均粒径が117nmであり、標準偏差は22.5である。実施例1のセリア粒子(BOC100)の標準偏差が比較例1のセリア粒子(HC60)よりも遥かに小さいという事実から、実施例1のセリア粒子が単分散性を示すということを確認することができる。
【0099】
球状を有し、単分散性を有する本発明によるセリア粒子は、鋭く角状のエッジがなしに丸くて緩やかな表面を有しているために、CMP工程で欠陥、スクラッチまたはディッシングフロー(dishing flaws)の減少側面でより望ましい。
【0100】
図1に示したように、実施例1によるセリア粒子は、非常に小さな微細ナノ粒子(粒径が約4.4nm)からなっているために、非常に独特な表面を有する。すなわち、本発明による無機粒子は、ナノ粒子または単位体の集合体として形成されるが、実施例1の場合には、CeO
2原子(0.54nm)が集まってナノ粒子(4.4nm)を形成し、ナノ粒子が集まって無機粒子(108nm)を形成すると言える。
【0101】
図5は、実施例1と比較例1とのセリア粒子に対するXRD分析結果である。2つの粒子いずれもフローライト結晶の特徴的なピークに該当する(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(400)、(331)及び(420)格子面に相応する28.55°、33.08°、47.47°、56.33°、59.08°、69.4°、76.7°及び79.07°でピークを有する。しかし、実施例1のセリア粒子(BOC100)のピークが遥かに広いものから比較例1のHC60粒子よりも結晶化度が低いということが分かる。
【0102】
また、結晶サイズの比較のために、(111)ピークを基準に結晶サイズを算出した。full-width-of-half-maximum(FWHM)を使用するScherrer equationによって平均結晶サイズ(Lc)を算出した(Monshi,A.,M.R.Foroughi,and M.R.Monshi,Modified Scherrer Equation to Estimate More Accurately Nano-Crystallite Size Using XRD.World Journal of Nano Science and Engineering,2012.02(03):p.154-160)。
【0103】
【0104】
前記式において、λは、X線波長(nm)、βは、FWHM(ラジアン)、Kは、結晶形状と関連した定数(0.9)である。
【0105】
粒子の結晶化度は、Ruland-Vonk法を使用してXRDピークの下の面積で算出した(Iulianelli,G.C.V.,et al.,Influence of TiO2 nanoparticle on the thermal,morphological and molecular characteristics of PHB matrix,Polymer Testing,2018.65:p.156-162)。
【0106】
【0107】
前記式において、Icは、結晶性ピークの下の面積の合計であり、Iaは、無定形ハロ面積の合計である。
【0108】
表1に整理されたように、実施例1のセリア粒子の結晶サイズ(Lc)は、4.4nmであり、結晶化度Xcは、70.5%である。
図1の概略図でナノ粒子サイズ4.4nmは、このようなXRD分析結果に基づいたものである。
【0109】
【0110】
一方、比較例1の粒子は、結晶サイズ(Lc)が45.5nmであり、結晶化度(Xc)は95.8%である。すなわち、本発明による実施例1の粒子の結晶サイズが比較例1の粒子に比べて遥かに小さく、結晶化度が遥かに低い。これにより、本発明による粒子は、無定形セリアを相当量含有しているということが分かる。無定形相は、結晶性相に比べて遥かにソフトであり、したがって、CMP工程でスクラッチやディッシング欠陥を緩和させるのに望ましい。
【0111】
図6のBと
図6のCは、実施例1による粒子のHR-TEMイメージと選択領域電子回折(SAED)パターンとを示す。実施例1の粒子は、d-spacingが3.10Åであり、これは、セリアの(111)格子面に相応する。
図6のCで相の境界を描いて得られた相のサイズは、2~5nmの範囲である。これは、
図1に記載の結晶サイズ4.4nmに相応する。拡散されたSAEDパターンを
図6のDに示したが、実施例1の粒子が結晶性相及び無定形相の混合物であるということを示す(スポットとリングとで表現)。
【0112】
図6のEないし
図6のGは、比較例1の粒子が境界線によって取り囲まれた一方向の(111)格子面で表示される大きな結晶性相を有するということを示す。これは、比較例1の粒子がほとんど1つまたは2つの単一結晶性相からなっているということを示し、これは、結晶サイズ45.5nmと結晶化度95.8%とによって裏付けられる。
【0113】
図7は、X線光電子分光分析(XPS)を実施して実施例1と比較例1との粒子に対してCe 3dとO 1sとに対する元素分析を実施した結果をそれぞれAとBグラフで示した。
図7のAは、Ce 3dピークがCe 3d
5/2とC3 3d
3/2とにスプリットされたことを示す。v
0、v
1、v
2、v
3及びv
4は、Ce 3d
5/2に属し、u
0、u
1、u
2、u
3及びu
4は、Ce 3d
3/2に属する(Thromat,N.,M.gautier-Soyer,and G .Bordier,Formation of the CeY2O3 interface:an in situ XPS study,Surface science,1996.345(3):p.290-302)。v
0、v
2、u
0及びu
2ピークは、Ce
3+イオンの特性を、v
1、v
3、v
4、u
1、u
3及びu
4ピークは、Ce
4+イオンの特性を示す(Zhang,C.and J.Lin,Visible-light induced oxo-bridged Zr IV-O-Ce III redox centre in tetragonal ZrO 2-CeO2 solid solution for degradation of organic pollutants,Physical Chemistry Chemical Physics,2011.13(9):p.3896-3905)。
【0114】
Ce3+とCe4+との濃度は、下記のように求めた。
【0115】
[Ce3+]=v0+v2+u0+u2
[Ce4+]=v1+v3+v4+u1+u3+u4
【0116】
表2は、XPSピーク割り当ての具体的な情報を示す。
【0117】
【0118】
前記結果によれば、実施例1の粒子が有するCe3+計算濃度は、32.6%であって、比較例1の粒子の28.3%よりも高い。また、Ce3+/Ce4+の比率は、実施例1の粒子が48.4であり、比較例1の粒子は、39.5であって、実施例1の粒子に含有されたCe3+の濃度がさらに高いということが分かる。
【0119】
水系で、セリア粒子表面に存在するCe3+イオンは、H2Oの解離を促進してCeO2表面に水酸基(OHgroup)を形成する。粒子表面の水酸基は、活性点として作用するだけではなく、他の物質の物理的吸着を助けるが、特に、CMP工程では、Ce-O-Si結合を形成する。
【0120】
実施例1及び比較例1の粒子に対して水酸基の濃度をO 1s XPS分析法で測定した(
図7のB参照)。528.83eVのピークは、格子酸素イオンO
2-、530.33eVのピークは、表面水酸イオンOH-に対するものである(表2参照)(Van den Brand,J.,et al.,Correlation between hydroxyl fraction and O/Al atomic ratio as determined from XPS spectra of aluminium oxide layers.Surface and Interface Analysis:An International Journal devoted to the development and application of techniques for the analysis of surfaces,interfaces and thin films、2004.36(1):p.81-88)。
【0121】
実施例1の粒子は、表面に69.4%のOH-を有するが、これは、比較例1の粒子が有する47.3%のOH-よりも遥かに多量である。また、実施例1の粒子は、表面に30.6%のO2-を有するが、これは、比較例1の粒子が52.7%のO2-を有するものに比べて遥かに低い濃度である。このような結果は、実施例1の粒子が比較例1の粒子よりも遥かに高い濃度のCe3+イオンを表面に有するものと相応する。したがって、表面のOH-濃度は、Ce3+が存在する量に比例すると言える。結果として、比較例1の粒子よりも多いCe-OH活性部位を有する実施例1の粒子がCMP工程でSiO2基板とCeO2粒子との間のCe-O-Si結合形成を促進させることができる。
【0122】
密度
実施例1及び実施例2と比較例1及び比較例2とによるCeO2無機粒子の密度をTAP密度測定法(ASTM B527)で測定した。
【0123】
【0124】
ゼータ電位の測定
ゼータ電位は、Malvern社のzeta potential analyzer(Nano ZS)を用いて測定した。
【0125】
図8は、製造例1による球状突起CeO
2粒子分散液のpHを硝酸溶液(酸性pH調節剤)とアンモニア水(塩基性pH調節剤)とを用いてpH2~10に調節した後、ゼータ電位(Zeta potential)を測定した結果である。
【0126】
図8に示されたように、実施例1及び比較例1のスラリーは、pH2で約60mVの高い正電荷を帯びていて、pHが上がるほど次第に弱い正電荷を示す。CMP工程条件に該当するpH4~4.5で2種のスラリーは、いずれもゼータ電位が>30mVであって、静電気的反発力によって安定した分散状態を保持した。一方、シリカ粒子は、pH2~10の広い範囲、特に、pH4近所では、ゼータ電位が負数であるために、シリカ基板とセリア粒子との互いに反対となる電荷による静電気的引力が発生する。脱イオン水内で実施例1の粒子の等電点(IEP)は、概略的にpH6近所であるが、比較例1の粒子は、pH9近所である。これは、実施例1の粒子は、XPS分析のように、OH-濃度が高いためであると判断される。
【0127】
研磨性能のテスト
脱イオン水に実施例1及び比較例1のセリア粒子を他の添加剤なしに、それぞれ0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0及び3重量%の濃度で分散させたスラリーを製造した。
【0128】
CMP testは、スラリー流量(Flow rate):150ml/min、固定ヘッド圧力(fixed head pressure):4psiの条件でGnP POLI-400Lを使用して1分間進行した。ベアウェーハ(bare wafer)上のSiO
2初期厚さは、30,000Åであり、屈折計(ST4000-DLX)を使用して研磨率(RR)を測定した(
図9参照)。
【0129】
比較例1の粒子を含むスラリーは、一般的に0.3重量%の濃度である時、最も高い研磨性能を示すと知られている。したがって、粒子の濃度が0.3重量%である時、RRを比較した結果、実施例1は、RR=3546Å/minであり、比較例1は、RR=2197Å/minに測定された。
【0130】
また、比較例1の粒子は、濃度が2重量%に増加するまでRRが次第に増加しながら、3重量%では減少した。一方、実施例1の粒子は、その濃度が増加するにつれてRRが増加し、3重量%で8904Å/minのRRを達成した。これは、比較例1の粒子が2重量%で達成したRRである3823Å/minの233%に至る高い値である。これにより、比較例1の粒子は、約2重量%で飽和されるが、実施例1の粒子は、3重量%までも飽和されないということが分かる。このような結果は、粒子表面に存在するCe3+イオンとOH-イオンとの濃度が高いためであると判断される。
【0131】
図10は、実施例1及び比較例1の粒子を脱イオン水に0.3重量%分散させたスラリーを利用したCMP test後のウェーハ表面を原子間力顕微鏡で観察した形状である。比較例1の粒子を含んだスラリーで進行されたCMP testでは、ウェーハ表面に深く、大きなスクラッチ欠陥が発生し(
図10の(b))、工程後に多量の粒子が表面上に残存することを通じて確認することができる。一方、実施例1の粒子を含んだスラリーとしては、CMP工程を経てもウェーハ表面にスクラッチ欠陥が生じず、残存するセリア粒子の量も、顕著に少ないことを確認することができる(
図10の(a))。
【0132】
以上の結果によれば、本発明による方法で製造された無機粒子は、サイズが均一であり、pHによって表面電荷が効率的に制御されるということが分かる。また、スラリー形態でCMP testを進行した結果、商用化されているフローライト六角構造セリア粒子を使用したスラリーよりも優れた研磨性能を示し、同時にウェーハ表面にスクラッチ欠陥は遥かに減ったことを確認することができる。
【0133】
以上、本発明の実施例を中心に説明したが、当業者のレベルで多様な変更や変形を加えることができる。このような変更と変形は、本発明が提供する技術思想の範囲を外れない限り、本発明に属するものと言える。したがって、本発明の権利範囲は、前記記載の特許請求の範囲によって判断されなければならない。