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特許7281119炭素被膜の製造方法および被膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】炭素被膜の製造方法および被膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/198 20170101AFI20230518BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230518BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230518BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C01B32/198
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018564595
(86)(22)【出願日】2018-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2018002062
(87)【国際公開番号】W WO2018139473
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2017013184
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597147980
【氏名又は名称】株式会社寿ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】金子 克美
(72)【発明者】
【氏名】高城 壽雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 恭
(72)【発明者】
【氏名】村田 克之
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-082419(JP,A)
【文献】特開2002-346996(JP,A)
【文献】特開2016-114716(JP,A)
【文献】特開2011-121828(JP,A)
【文献】特表2015-501273(JP,A)
【文献】特表2005-521563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B01D 69/10
B01D 69/12
B01D 71/02
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状のメンブレンフィルターまたはポーラスガラスからなる支持体上に炭素を主成分とする被膜を形成する炭素フィルターの製造方法であって、
疎水性材料からなる基台の上に親水性材料からなる上記支持体を配置し、
炭素材料を誘電率が6以上の極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする炭素フィルターの製造方法。
【請求項2】
所定の形状のメンブレンフィルターまたはセラミックス焼結フィルターからなる支持体上に炭素を主成分とする被膜を形成する炭素フィルターの製造方法であって、
上記支持体の側周に外接する平面形状で且つ所定高さのパッキンを上記支持体の周囲に配置し、
炭素材料を高極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを含み、
前記パッキンは、シリコン、またはテフロン(登録商標)からなり、
前記高極性溶媒は、水、エタノール及びメタノールからなる群から選択される少なくとも一種からなる溶媒であることを特徴とする炭素フィルターの製造方法。
【請求項3】
所定の形状のメンブレンフィルターからなる支持体上に炭素を主成分とする被膜を形成する炭素フィルターの製造方法であって、
疎油性材料からなる基台の上に親油性材料からなる上記支持体を配置し、
炭素材料を誘電率が6未満の無極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする炭素フィルターの製造方法。
【請求項4】
所定の形状のメンブレンフィルターまたはポーラスガラスからなる支持体上に所定の被膜材料を主成分とする被膜を形成するフィルターの製造方法であって、
疎水性材料からなる基台の上に親水性材料からなる上記支持体を配置し、
上記被膜材料を誘電率が6以上の極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項5】
所定の形状のメンブレンフィルターまたはセラミックス焼結フィルターからなる支持体上に所定の被膜材料を主成分とする被膜を形成するフィルターの製造方法であって、
上記支持体の側周に外接する平面形状で且つ所定高さのパッキンを上記支持体の周囲に配置し、
上記被膜材料を高極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを含み、
前記パッキンは、シリコン、またはテフロン(登録商標)からなり、
前記高極性溶媒は、水、エタノール及びメタノールからなる群から選択される少なくとも一種からなる溶媒であることを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項6】
所定の形状のメンブレンフィルターからなる支持体上に所定の被膜材料を主成分とする被膜を形成するフィルターの製造方法であって、
疎油性材料からなる基台の上に親油性材料からなる上記支持体を配置し、
上記被膜材料を誘電率が6未満の無極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とするフィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の形状の支持体上に炭素を主成分とする薄い被膜を形成する方法に関する。
また、本発明は、支持体上に所定材料からなる薄い被膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン選択性を有する炭素フィルターを製造するためには、メンブレンフィルターなどの支持体上に炭素被膜を形成し、この炭素被膜に微細な孔を形成してフィルターとしていた。
従来、炭素被膜を形成するには、コート液として、カーボンナノホーンを所定の濃度でエタノールに分散させたOX-NHエタノール分散液を用意する。
図3に示すように、支持体2(図1参照)となるメンブレンフィルターをフィルターホルダー5にセットし、シリンジ6でコート液1を注入する。このとき、コート液1の濃度から決められる注入量を正確に注入することにより、炭素被膜の厚さを精密にコントロールすることができる。
【0003】
次いで、フィルターホルダー5ごと90℃のオーブンで乾燥させて支持体2上に炭素被膜を形成する。
この際、フィルターホルダー5内部からコート液1が逆流するのを防ぐため、オーブンの代わりに真空乾燥器を使用することはできない。
【0004】
その後、フィルターホルダー5から支持体2および炭素被膜を取り出し、炭素被膜を酸化処理等することで微細な孔を穿設して炭素フィルターとするなどして利用することができる。
このように形成した炭素フィルターのサンプルは、フィルターホルダー5に戻され、イオン溶液を通過させ、イオン選択性の測定試験等に用いられていた。
【0005】
従来の炭素被膜の製造方法では、コート液1の注入のため負圧を高くするのに時間がかかり、支持体2となるメンブレンフィルターのフィルターホルダー5への出し入れにも手間と時間がかかっていた。また、コート液1がフィルターホルダー5の中に保持されていたため、乾燥にも多くの時間を必要としていた。
【0006】
また、従来の方法によって形成された炭素被膜では、支持体2に接する面と逆の表面が、支持体2以外のフィルターホルダー5の部品の形状に沿った凹凸形状となってしまっていた。
そのため、炭素被膜の厚さに斑が生じて品質が低下してしまっていた。
また、炭素被膜の酸化処理等のためにフィルターホルダー5から支持体2および炭素被膜を取り出し、フィルターホルダー5に戻す際、炭素被膜(炭素フィルター)表面の凹凸がフィルターホルダー5の形状に合致するように取り付ける必要があり、手間がかかっていた。
【0007】
炭素被膜(燃料電池の触媒電極層)の製造方法として、特許文献1には、材料となる触媒担持粒子(白金担持カーボン)およびアイオノマーを溶媒に分散させて所望の粘度に調整した触媒インクを用意した上、この触媒インクをダイコート法によって支持体となる電解質膜上に塗布し、乾燥させて触媒電極層を形成する発明が開示されている。
特許文献1の方法では、炭素被膜(電極)の強度および性能を達成するために触媒インクを所望の粘度にする必要があり、手間がかかっていた。また、ダイコート法によって膜を形成していたため、触媒インクの塗布時に支持体をダイコータに対して一定速度で動かす必要があった。
【0008】
特許文献2には、塩基性高分子型分散剤を添加した溶媒に炭素材料を分散させ、この溶媒中で支持体を陽極として電圧を印加することにより炭素材料を電着させ、支持体上に炭素被膜を形成する発明が開示されている。
特許文献2の方法では、塩基性高分子型分散剤を使用したり、電圧を印加したりする必要があったため、炭素被膜の製造コストが高くなってしまっていた。また、膜厚を厚くするためには、電着、洗浄、乾燥の工程を繰り返す必要があったため、手間がかかっていた。
【0009】
特許文献3には、炭素粒子および樹脂を溶媒に分散させ、この分散液に電圧を印加しながら飛散させ(静電紡糸)、空中で溶媒を揮発させながら、支持体となる捕集体の上に不織布を形成する発明が開示されている。
特許文献3の方法では、分散液に電圧を印加しながら飛散させる特殊な装置が必要であり、製造コストが高くなってしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開WO2013/031060号公報
【文献】特開2007-258031号公報
【文献】国際公開WO2011/089754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、低コストで容易に均一な厚さの炭素被膜および他の被膜を形成する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、所定の形状の支持体上に炭素を主成分とする被膜を形成する炭素被膜の製造方法であって、疎水性材料からなる基台の上に親水性材料からなる上記支持体を配置し、炭素材料を極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、所定の形状の支持体上に炭素を主成分とする被膜を形成する炭素被膜の製造方法であって、上記支持体の側周に外接する平面形状で且つ所定高さのパッキンを上記支持体の周囲に配置し、炭素材料を分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、所定の形状の支持体上に炭素を主成分とする被膜を形成する炭素被膜の製造方法であって、疎油性材料からなる基台の上に親油性材料からなる上記支持体を配置し、炭素材料を無極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、所定の形状の支持体上に所定の被膜材料を主成分とする被膜を形成する被膜の製造方法であって、疎水性材料からなる基台の上に親水性材料からなる上記支持体を配置し、上記被膜材料を極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする。
【0016】
第5の発明は、所定の形状の支持体上に所定の被膜材料を主成分とする被膜を形成する被膜の製造方法であって、上記支持体の側周に外接する平面形状で且つ所定高さのパッキンを上記支持体の周囲に配置し、上記被膜材料を分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする。
【0017】
第6の発明は、所定の形状の支持体上に所定の被膜材料を主成分とする被膜を形成する被膜の製造方法であって、疎油性材料からなる基台の上に親油性材料からなる上記支持体を配置し、上記被膜材料を無極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、疎水性材料からなる基台の上に親水性材料からなる上記支持体を配置し、炭素材料を極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることにより、斑のない均一な厚さの炭素被膜を容易に形成することができる。
【0019】
第2の発明によれば、上記支持体の側周に外接する平面形状で且つ所定高さのパッキンを上記支持体の周囲に配置し、上記支持体上に炭素材料を分散させたコート液を供給して乾燥させることにより、斑のない均一な厚さの炭素被膜を容易に形成することができる。
【0020】
第3の発明によれば、疎油性材料からなる基台の上に親油性材料からなる上記支持体を配置し、炭素材料を無極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることにより、斑のない均一な厚さの炭素被膜を容易に形成することができる。
【0021】
第4の発明によれば、疎水性材料からなる基台の上に親水性材料からなる上記支持体を配置し、上記被膜材料を極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることにより、斑のない均一な厚さの被膜を容易に形成することができる。
【0022】
第5の発明によれば、上記支持体の側周に外接する平面形状で且つ所定高さのパッキンを上記支持体の周囲に配置し、上記被膜材料を分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることにより、斑のない均一な厚さの被膜を容易に形成することができる。
【0023】
第6の発明によれば、疎油性材料からなる基台の上に親油性材料からなる上記支持体を配置し、上記被膜材料を無極性溶媒に分散させたコート液を上記支持体上に供給して乾燥させることにより、斑のない均一な厚さの被膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第一実施形態に係る炭素被膜の製造方法を示す説明図であり、(a)はコート液供給前、(b)はコート液供給後である。
図2】第二実施形態および第三実施形態に係る炭素被膜の製造方法を示す説明図であり、(a)はコート液供給前、(b)はコート液供給後である。
図3】従来の炭素被膜の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態に係る炭素被膜の製造方法について説明する。
この方法は、図1に示すように、支持体2の側周をパッキン3で覆い、支持体上にコート液1を供給して層を形成し、乾燥させて炭素被膜を形成することを特徴とする。
【0026】
まず、炭素被膜を形成する炭素材料を所定の濃度で分散させたコート液1を用意する。
炭素材料としては、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブ、グラフェンオキサイド、などのカーボンナノ素材やカーボンブラックなどを用いることができる。
また、コート液1の溶媒としては高極性溶媒が条件となり、水、エタノール、メタノールなどを用いることができる。
第一実施形態では、コート液として、グラフェンオキサイドを超純水に分散させたグラフェンオキサイド(GO)水分散液を用いた。
このほかに、ナノホーンオキサイド(OX-NH)エタノール分散液、カーボンナノチューブ(CNT)エタノール分散液なども用いることができる。
【0027】
炭素被膜の支持体2としては、親水性で比較的そろった細孔を持つことが条件となり、メンブレンフィルター、セラミックス焼結フィルターなどを用いることができる。
このような支持体2として、第一実施形態ではポリカーボネイト製のメンブレンフィルターを用いた。
【0028】
パッキン3としては、水密であること、コート液が付着しづらいことが条件となり、シリコン、テフロン(登録商標)などを用いることができる。
パッキン3の形状は、支持体の即周に外接する形状でコート液1の漏れを防ぐとともに、コート液1の層を保持できる所定の高さを有する必要がある。
第一実施形態では、円形の支持体2に外接する環状のシリコンパッキン3を用いた。パッキン3の高さは支持体2の厚さよりも高く設定されている。
【0029】
炭素被膜を形成するには、図1(a)に示すように、まず支持体2の側周にパッキン3を配置した後、支持体2上にコート液1を供給する。
図1(b)に示すように、パッキン3によってコート液1の液漏れが防止されるとともに、支持体2の上方が開放されているため、コート液1の表面は表面張力で保持された状態となる。
【0030】
このままの状態で、コート液1を乾燥させる。
乾燥は、オーブンで90℃に加熱して行う。真空乾燥器による乾燥も可能である。
このようにして得られた炭素被膜は、イオン選択性を有するフィルターのほか、様々な用途に用いることができる。
【0031】
第一実施形態に係る炭素被膜の製造方法によれば、容易に斑のない均一な厚さの炭素被膜を形成することができる。
また、炭素濃度の低いコート液1や粘度の低いコート液1を用いる場合であっても、容易に炭素被膜を形成することができる。
【0032】
この炭素被膜から作ったフィルター上に過酸化水素水等の酸化剤水溶液を表面張力で保持することにより、フィルターを酸化処理することができる。その他にも、フィルター上に表面張力で溶液を保持することによって各種の処理を施すことができる。
【0033】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る炭素被膜の製造方法は、図2に示すように、疎水性材料からなる基台4と、親水性材料からなる支持体2と、炭素材料を極性溶媒に分散させたコート液1とを用いることを特徴とする。
【0034】
第二実施形態のコート液1には、第一実施形態と同様に炭素材料を所定の濃度で分散させる。
コート液1の溶媒としては、誘電率が6以上の極性溶媒である必要があり、水、エタノール、メタノールなどを用いることができる。
第二実施形態では、グラフェンオキサイドを超純水に分散させたグラフェンオキサイド水分散液を用いた。
【0035】
基台4は、疎水性材料からなり、支持体2に対して十分に広い面積を有する板材であることが好ましい。
疎水性材料とは表面で極性溶媒をはじく材料を意味し、支持体2よりも極性溶媒との親和性が低い材料のほか、表面処理等によって撥水性を備えたものも含む。
第二実施形態では、テフロン(登録商標)からなる基台4を用いた。
【0036】
支持体2は、親水性材料からなり、第一実施形態と同様に炭素被膜を保持する役目を有する。
親水性材料とは表面で極性溶媒をはじかず吸着させる材料を意味し、基台4よりも極性溶媒との親和性が高い材料などを用いることができる。親水性材料の例として、メンブレンフィルター、ポーラスガラスなどを用いることができる。
第二実施形態では、支持体2としてポリカーボネイト製メンブレンフィルターを用いた。
【0037】
炭素被膜を形成するには、図2(a)に示すように、まず基台4の上に支持体2を配置した後、支持体2上にコート液1を供給する。
図2(b)に示すように、コート液1は基台4にはじかれるため親水性材料からなる支持体2の外にこぼれ出ることはなく、表面張力によって支持体2上に保持される。
このままの状態で、コート液1を乾燥させる。乾燥工程については第一実施形態と同様である。
【0038】
第二実施形態に係る炭素被膜の製造方法によれば、容易に斑のない均一な厚さの炭素被膜を形成することができる。
また、支持体2と基台4との形状によって炭素被膜の形状をコントロールできるため、炭素被膜の形状の自由度が向上する。
面積の大きな基台4上に複数の支持体2を並べて配置することによって、同時に多数の炭素被膜を製造することもできる。
また、炭素濃度の低いコート液1や粘度の低いコート液1を用いる場合であっても、容易に炭素被膜を形成することができる。
そのため、炭素被膜の膜厚を薄くすることもできる。具体的には、炭素材料としてグラフェンオキサイドを用いた場合で、0.1μg/cmの炭素被膜を形成することができた。
【0039】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る炭素被膜の製造方法は、図2に示すように、第二実施形態とは逆に、疎油性材料からなる基台4と、親油性材料からなる支持体2と、炭素材料を無極性溶媒に分散させたコート液1とを用いることを特徴とする。
【0040】
第三実施形態のコート液1にも、第一実施形態と同様に炭素材料を所定の濃度で分散させる。
コート液1の溶媒としては、誘電率が6未満の無極性溶媒である必要があり、ヘキサン、ジエチルエーテルなどを用いることができる。
【0041】
基台4は、疎油性材料からなり、支持体2に対して十分に広い面積を有する板材であることが好ましい。
疎油性材料とは表面で無極性溶媒をはじく材料を意味し、支持体2よりも無極性溶媒との親和性が低い材料のほか、表面処理等によって無極性溶媒との親和性を低下させたものも含む。疎油性材料の例として、セルロース、ガラス、親水処理したメンブレンフィルターなどを用いることができる。
【0042】
支持体2は、親油性材料からなり、第一実施形態と同様に炭素被膜を保持する役目を有する。
親油性材料とは表面で無極性溶媒をはじかず吸着させる材料を意味し、基台4よりも無極性溶媒との親和性が高い材料などを用いることができる。親油性材料の例として、テフロン(登録商標)などを用いることができる。
【0043】
炭素被膜を形成するには、図2(a)に示すように、まず基台4の上に支持体2を配置した後、支持体2上にコート液1を供給する。
図2(b)に示すように、コート液1は基台4にはじかれるため親油性材料からなる支持体2の外にこぼれ出ることはなく、表面張力によって支持体2上に保持される。
このままの状態で、コート液1を乾燥させる。乾燥工程については第一実施形態とほぼ同様であるが、無極性溶媒の種類に応じて適切な温度および条件下で行う。
【0044】
第三実施形態に係る炭素被膜の製造方法によれば、容易に斑のない均一な厚さの炭素被膜を形成することができる。
また、支持体2と基台4との形状によって炭素被膜の形状をコントロールできるため、炭素被膜の形状の自由度が向上する。
面積の大きな基台4上に複数の支持体2を並べて配置することによって、同時に多数の炭素被膜を製造することもできる。
また、本方法によれば、炭素濃度の低いコート液1や粘度の低いコート液1を用いる場合であっても、容易に炭素被膜を形成することができる。
そのため、炭素被膜の膜厚を薄くすることもできる。具体的には、炭素材料としてグラフェンオキサイドを用いた場合で、0.1μg/cmの炭素被膜を形成することができた。
【0045】
本発明は、炭素被膜以外の被膜を製造することにも応用することが可能である。
第一実施形態から第三実施形態の方法において、炭素材料を分散させたコート液1の代わりに、炭素材料以外の材料を分散させたコート液を用いることで、様々な被膜を製造することができる。また、炭素材料および他の添加物を混合して溶媒に分散させたコート液を用いることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 コート液
2 支持体
3 パッキン
4 基台
5 フィルターホルダー
6 シリンジ
図1
図2
図3